JPH11302945A - 吸湿性と制電性に優れた防風性ポリアミド系織物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は中衣として最適な優れた吸湿性と制
電性を兼備えた防風性ポリアミド系織物を提供する。 【解決手段】 構成糸の一部が非水溶性ポリエチレンオ
キシド変性物または前記変性物とポリアミドとの混合物
からなる芯成分とポリアミドからなる鞘成分であるポリ
アミド系マルチフィラメント糸織物であって、該織物の
３４℃×９０％ＲＨにおける水分率が７％以上でありか
つ、通気度が１５ cc/cm² ・秒以下でありかつ、摩擦帯
電圧が３０００Ｖ以下である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、防風性織物に関す
るものであり、詳しくはスポ−ツ等の運動量が比較的大
きいシ−ンでの着用に適した吸湿性に優れた防風性織物
に関するものであり、さらに詳しくは、外衣と内衣との
中間に着用する中衣に適した吸湿性と制電性に優れた防
風性ポリアミド系織物に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に冬場の防寒着といえばブルゾンや
コ−ト等であるが、比較的大きな運動を伴う場合、例え
ばスポ−ツや屋外作業等では動作を妨げないためにでき
るだけ嵩張らない物が良く、生地の強度のことを考慮し
て合成繊維が使用されることが多い。この場合、防風性
の面から着衣の形態はもっぱらウインドブレ−カ−のよ
うな外衣である。ところが、最近さらに動作を妨げない
ために薄手の織物を中衣として着用するケ−スが出てき
ている。合成繊維織物を中衣として着用する場合、防風
性の面では非常に良好であるものの、低吸湿性からくる
ムレ感や制電性が低いことによるまとわり付きあるいは
脱衣時の静電気によるパチパチ現象等の不快感を伴い、
改善が望まれていた。このような問題点に対して、不飽
和有機酸モノマ−のグラフト重合や制電・吸水加工が提
案されているが、コスト、風合い、耐久性の面で十分に
満足できるものではなかった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の現状
に鑑みて、外衣と内衣との中間に着用する中衣として最
適な優れた吸湿性と制電性を兼備えた防風性織物を提供
しようとするものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するもので、芯成分が非水溶性ポリエチレンオキシド
変性物または前記変性物とポリアミドとの混合物で、鞘
成分がポリアミドであるポリアミド系マルチフィラメン
ト糸を少なくとも構成糸の一部に用いた織物であって、
該織物の３４℃×９０％ＲＨにおける水分率が７％以上
であり、通気度が１５cc/cm²・秒以下であり、かつ摩擦
帯電圧が３０００Ｖ以下であることを特徴とする吸湿性
と制電性に優れた防風性ポリアミド系織物を要旨とする
ものである。

【０００５】

【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。まず、本発明にあっては、織物の構成糸の少なく
とも一部が非水溶性ポリエチレンオキシド変性物または
前記変性物とポリアミドとの混合物を芯成分とし、ポリ
アミドを鞘成分とするポリアミド系マルチフィラメント
糸であることを必須要件としている。

【０００６】ここでいう非水溶性ポリエチレンオキシド
変性物とは、水溶性ポリエチレンオキシド（その特性が
大きく損なわれない範囲で、プロピレンオキシド、ブチ
レンオキシド等の共重合成分を含有したものを含む。）
を適当な変性剤を用いて変性処理したもので、吸水、吸
湿性を有し、３００℃以下の温度で溶融加工可能なもの
をいう。変性剤としては、アルデヒド、ジアルデヒド、
ジアミン、ジイソシアネート、ビスエポキシ化合物等が
用いられ、変性処理によって着色したり、ポリエチレン
オキシドが有している吸水、吸湿性能を著しく低下させ
ないものを選定して使用すればよい。このような非水溶
性ポリエチレンオキシド変性物は、例えば、住友精化株
式会社から「アクアコーク」の商品名で市販されてい
る。

【０００７】また、この時、非水溶性ポリエチレンオキ
シド変性物と他のポリマーを混合して芯成分とする場合
は、ポリマ−自体の水分率が合成繊維の中では比較的高
く、染色性にも優れていることからポリアミドを用い
る。ここでいうポリアミドとはナイロン６、ナイロン６
６、ナイロン４、ナイロン１２等をいい、特に限定され
るものではないが、一般にナイロン６、ナイロン６６が
好ましい。鞘成分とするポリアミドとしてもナイロン
６、ナイロン６６、ナイロン４、ナイロン１２等を用い
ることができ、一般にナイロン６、ナイロン６６が好ま
しい。

【０００８】このポリアミド系マルチフィラメントの繊
維断面における芯成分と鞘成分の配置関係については、
非水溶性ポリエチレンオキシド変性物がフィラメント表
面に露出していると、その含有量にもよるが、一般的に
染色堅牢を低下させるため好ましくない。本発明におい
ては、非水溶性ポリエチレンオキシド変性物がフィラメ
ント表面に露出していなければよいのであって、芯成分
と鞘成分が図１のように同心円状のものはもちろん、図
２のような偏芯したタイプや図３のようないわゆる海島
型に配置されたものであってもよい。また、フィラメン
トの断面形状は特に限定されるものではなく、円形断面
の他に、楕円形断面、三角断面、星形断面等が挙げら
れ、必要に応じて着色剤、難燃剤、酸化防止剤等の添加
剤を含有させることができる。

【０００９】さらに、繊維の形態としても特に限定され
るものではなく、原糸、仮撚加工糸、エアージェット加
工糸、他糸条との混繊糸等が挙げられる。ポリアミド繊
維に非水溶性ポリエチレンオキシド変性物を含有せしめ
る際の含有率は、使用するポリアミドの種類や芯成分と
鞘成分の複合比により得られる繊維の吸放湿性が異なる
ため、本発明では特に限定されるものではないが、一般
にはポリアミド繊維重量に対して０．５〜６０重量％の
範囲にあることが好ましい。非水溶性ポリエチレンオキ
シド変性物の含有率が０．５重量％未満では、目的とす
る吸放湿性が得られない場合があり、含有率が６０重量
％を超えると、製糸性に問題が生じるおそれがあるので
好ましくない。

【００１０】本発明にあっては、少なくとも織物を構成
する糸条の一部として上記のポリアミド系マルチフィラ
メント糸を用いる。もちろんこの糸条のみで織物を構成
してもよいし、他の糸条を混用する場合、上記の糸条と
混繊として用いたり、経緯の何れか一方に上記の糸条を
用いたり、任意の割合で配列して用いたりすることがで
きる。

【００１１】いずれにしても、本発明の織物は、少なく
とも構成糸の一部を上記のポリアミド系マルチフィラメ
ント糸を構成糸条とすることによって、３４℃×９０％
ＲＨにおける水分率が７％以上となるように設計され
る。この３４℃×９０％ＲＨは、人間が発汗に至る前の
衣服内の状態であるとされている雰囲気であり、この状
態下における水分率が７％未満では吸湿性が不十分であ
る。上記水分率を得るためには、前記非水溶性ポリエチ
レンオキシド変性物を含有する上記のポリアミド系マル
チフィラメント糸を織物の１５重量％以上を占めている
のが好ましい。１５重量％未満では目的とする吸湿性が
得られないので好ましくない。

【００１２】次に、本発明にあっては、織物の通気度が
１５cc/cm²・秒以下であることが必要であり、１０cc/c
m²・秒以下であるのがより好ましい。通気度が１５cc/c
m²・秒を超えると十分な防風性が得られなくなる。この
ような通気度を有する織物を得る方法としては、特に限
定されるものはなく、織物を高密度化したり染色加工時
に目つぶし処理を施す方法が挙げられ、組織としては、
平、ツイル、サテンその他の組織で織製すればよいが、
織物を軽量にするためには、平織物、ツイル織物が有利
である。

【００１３】次に、本発明にあっては、摩擦帯電圧が３
０００Ｖ以下であることが必要であり、２０００Ｖ以下
がより好ましい。摩擦帯電圧が３０００Ｖを超えると外
衣との間でまとわり付きが生じたり、脱衣時にパチパチ
現象が発生するため好ましくない。

【００１４】

【作用】本発明のように、織物の構成糸の少なくとも一
部に非水溶性ポリエチレンオキシド変性物または前記変
性物とポリアミドとの混合物を芯成分とし、ポリアミド
を鞘成分とするポリアミド系マルチフィラメント糸を用
いることによってまた、織物の通気度を所定のレベルに
することによって冬期の中衣として良好な吸湿性、制電
性、防風性が得られるようになる。

【００１５】

【実施例】次に、実施例により本発明を具体的に説明す
る。なお、実施例における評価は下記の方法により行っ
た。 （ａ）ナイロン６の相対粘度 96％硫酸を溶媒とし、濃度1g／リットル、温度25℃で設
定した。 （ｂ）水分率 温度 105℃で２時間乾燥して重量Ｗを測定し、その後、
34℃、相対湿度90％の条件下で２時間調湿して重量Ｖを
測定し、下記式にて水分率を算出した。 水分率（％）＝〔（Ｖ−Ｗ）／Ｗ〕×１００ （ｃ）通気度 JIS L-1094,B法により測定した。 （ｄ）摩擦帯電圧 JIS L-1096により測定した。 （ｅ）着用試験 作成した織物を用いて、前あきのない上衣を縫製し、１
０人の着用モニターが綿１００％のポロシャツと羊毛１
００％のセーターの間に着用して、気温７℃、相対湿度
４５％の屋外で３０分間ランニングし、この時のムレ
感、防風性、まとわり付きを官能評価し、ランニング後
にセーターを脱いだときのパチパチ現象の有無を評価し
た。

【００１６】実施例１ 相対粘度が 2.6のナイロン６と吸水能力が 28g/gの住友
精化株式会社製「アクアコーク」とを重量比９：１で混
合して芯成分とし、相対粘度が 2.6のナイロン６を鞘成
分として、芯鞘複合比（重量比）１：１の同心円状に配
し、紡糸温度を250℃とし、24孔の紡糸口金を使用し
て、溶融紡糸し、15℃の空気を吹き付けて冷却し、油剤
を付与した後、 800ｍ／分の速度で引き取った。引き取
りローラと非加熱の延伸ローラとの間で 3.0倍に延伸し
て70ｄ／24ｆの芯鞘型複合繊維を得た。得られた芯鞘型
複合繊維を経緯糸に用いて、常法により染色し、仕上密
度 156本×97本／インチの本発明の織物を得た。

【００１７】実施例２ ナイロン６が１００％の70ｄ／24ｆを経糸に、実施例１
で用いた芯鞘型複合繊維を緯糸に用いて、常法により染
色し、仕上げ密度 160本×85本／インチの本発明の織物
を得た。

【００１８】比較例１ 実施例１で用いた芯鞘型複合繊維を経緯糸に用い、常法
により染色し、仕上げ密度 105×75本／インチの比較用
の織物を得た。

【００１９】比較例２ ナイロン６が１００％の70ｄ／24ｆを経緯糸に用いて、
常法によ染色した後、明成化学社製アニオン系帯電防止
剤デレクトールＬＭ−３の濃度10ｇ／リットル水溶液に
パディングし、乾燥後仕上げ密度 156×97本／インチの
比較用の織物を得た。得られた実施例１〜２及び比較例
１〜２の織物の性能評価及び着用テスト結果を表１に示
す。

【００２０】

【表１】

【００２１】表１より明らかなように、本発明の実施例
１及び２の織物はムレ感、まとわり付き、パチパチ現象
という合成繊維特有の不快感がなく、防風性にも優れ、
冬期の中衣素材として適していることが分かる。一方、
比較用の織物は、全ての項目を満足するものはなく、か
つ、例え制電性が優れていても加工初期のみで着用及び
洗濯耐久性の全くないものであった。

【００２２】

【発明の効果】本発明によれば、まとわり付き、パチパ
チ現象という合成繊維特有の不快感がなく、防風性にも
優れた冬期の中衣素材を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の芯鞘型マルチフィラメントにおける単
フィラメントの断面の具体例を模式的に示す図である。

【図２】本発明の芯鞘型マルチフィラメントにおける単
フィラメントの断面の具体例を模式的に示す図である。

【図３】本発明の芯鞘型マルチフィラメントにおける単
フィラメントの断面の具体例を模式的に示す図である。

【符号の説明】

ａ 非水溶性ポリエチレンオキシド変性物または前記変
性物とポリアミドの混合物からなる成分 ｂ ポリアミド成分

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 芯成分が非水溶性ポリエチレンオキシド
   変性物または前記変性物とポリアミドとの混合物で，鞘
   成分がポリアミドであるポリアミド系マルチフィラメン
   ト糸を少なくとも構成糸の一部に用いた織物であって、
   該織物の３４℃×９０％ＲＨにおける水分率が７％以上
   であり，通気度が１５cc/cm²・秒以下であり、かつ摩擦
   帯電圧が３０００Ｖ以下であることを特徴とする吸湿性
   と制電性に優れた防風性ポリアミド系織物。