JPH11269074A

JPH11269074A - 脂質の消化吸収機能改善剤

Info

Publication number: JPH11269074A
Application number: JP10067962A
Authority: JP
Inventors: Seiichiro Aoe; 誠一郎青江; Miyako Tanaka; 都田中; Norinobu Matsubara; 範宜松原; Toshiaki Suguri; 俊朗須栗; Mototake Murakami; 元威村上; Katsumi Imaizumi; 勝己今泉
Original assignee: Snow Brand Milk Products Co Ltd
Current assignee: Snow Brand Milk Products Co Ltd
Priority date: 1998-03-18
Filing date: 1998-03-18
Publication date: 1999-10-05
Anticipated expiration: 2018-03-18
Also published as: JP3581010B2

Abstract

(57)【要約】【課題】脂質の消化吸収機能改善剤、あるいは、脂質
の消化吸収機能改善効果を賦与した医薬及び飲食品を提
供する。【解決手段】脂質の消化吸収機能改善剤の有効成分と
して、スフィンゴミエリン及び／又はスフィンゴミエリ
ン含有リン脂質を使用する。また、脂質の消化吸収機能
改善効果を医薬及び飲食品に賦与するために、スフィン
ゴミエリン及び／又はスフィンゴミエリン含有リン脂質
を使用する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、スフィンゴミエリ
ン及び／又はスフィンゴミエリン含有リン脂質を有効成
分とする脂質の消化吸収機能改善剤に関する。また、本
発明は、スフィンゴミエリン及び／又はスフィンゴミエ
リン含有リン脂質を配合して脂質の消化吸収機能改善効
果を賦与した医薬又は飲食品に関する。本発明の脂質の
消化吸収機能改善剤や脂質の消化吸収機能改善効果を賦
与した医薬及び飲食品は、脂質の消化吸収機能が低下し
た高齢者や各疾患治癒後の患者等の栄養補給に有用であ
る。

【０００２】

【従来の技術】日常的に摂取する飲食品中に含まれる脂
質等の脂溶性成分は、生体の恒常性や機能性の維持に重
要な役割を果たしていることが知られている。そして、
最近では、特に多価不飽和脂肪酸に関する研究が進展
し、ｎ−６系及びｎ−３系の必須脂肪酸についての有効
性が明らかになってきた。例えば、リノール酸が血清コ
レステロールの低下作用を有するということやエイコサ
ペンタエン酸（ＥＰＡ）、ドコサヘキサエン酸（ＤＨ
Ａ）が脳血栓予防効果を有するということ等である。ま
た、以前から、ビタミンＡやビタミンＥ等の脂溶性ビタ
ミンが有する生理的意義に関する研究もなされてきてい
る。

【０００３】これらの脂溶性成分については、バランス
のとれた食生活を営んでいる限り、不足するという事態
は生じないし、また、加齢に伴って脂溶性成分の吸収機
能が低下するということはないとされている。しかしな
がら、偏食傾向の食生活やストレスの多い社会生活を営
まざるを得ない現代においては、脂溶性成分の摂取に関
して、必ずしも問題がないという訳ではない。例えば、
高齢者や各疾患治癒後の患者等においては、脂溶性成分
の消化吸収機能が衰えている可能性が高く、脂溶性の必
須栄養素が慢性的に不足している状態が潜在していると
考えられる。したがって、何らかの理由で低下した脂溶
性成分の消化吸収機能を改善することにより、脂溶性の
必須栄養素の消化吸収性を改善するような医薬や飲食品
の開発が求められている。

【０００４】ところで、通常の食事により摂取された脂
質は、生体内において、胆汁酸の働きにより乳化され、
また、リパーゼの働きにより加水分解されて、消化吸収
される。したがって、脂質の消化吸収性を改善する方法
としては、まず、脂質が乳化され易いようにすることが
考えられる。例えば、ホスファチジルコリン、ホスファ
チジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール
等のリン脂質の混合物であるレシチンは、天然乳化剤と
して使用されているが、この乳化作用により、脂質や脂
溶性ビタミン等の脂溶性成分の消化吸収性が促進される
ことが知られている（菰田衛著, レシチン−その基礎と
応用, p107, 幸書房発行, 1991）。しかし、これは物理
的な乳化作用をレシチンが改善することによる効果であ
り、消化吸収機能が衰えた者に対すると同様の効果を健
常人に対しても示し、健常人においては、カロリーの過
剰摂取による肥満の原因となる可能性もある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、脂質の
消化吸収性を改善する方法として、乳化作用を改善する
という物理的な方法ではなく、衰えた脂質の消化吸収機
能を直接的に改善する方法を見出すべく、鋭意研究を進
めていたところ、リン脂質の一種であるスフィンゴミエ
リンに衰えた脂質の消化吸収機能を改善する効果がある
ことを見出した。そして、スフィンゴミエリンを含有す
るリン脂質においても同様の効果があることを見出し、
本発明を完成するに至った。

【０００６】したがって、本発明は、スフィンゴミエリ
ン及び／又はスフィンゴミエリン含有リン脂質を有効成
分とする脂質の消化吸収機能改善剤を提供することを課
題とする。また、本発明は、スフィンゴミエリン及び／
又はスフィンゴミエリン含有リン脂質を配合して脂質の
消化吸収機能改善効果を賦与した医薬又は飲食品を提供
することを課題とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明では、脂質の消化
吸収機能改善剤の有効成分として、スフィンゴミエリン
及び／又はスフィンゴミエリン含有リン脂質を使用す
る。また、本発明では、脂質の消化吸収機能改善効果を
賦与するために、スフィンゴミエリン及び／又はスフィ
ンゴミエリン含有リン脂質を使用し、これらを医薬や飲
食品に配合する。

【０００８】本発明で使用するスフィンゴミエリンは、
リン脂質の一種で、卵黄や乳中に多く存在しており、細
胞膜や血清リポタンパク質の構成成分として分布してい
る。そして、生体内でのスフィンゴミエリンは、情報伝
達系を介して細胞の増殖や分化に影響を及ぼしているこ
とが知られている。

【０００９】本発明においては、精製して純度を高めた
スフィンゴミエリンを使用しても良いし、また、スフィ
ンゴミエリンを含有するリン脂質の形態で使用しても良
い。なお、スフィンゴミエリンやスフィンゴミエリン含
有リン脂質については、次のような方法により調製する
ことができる。例えば、乳やホエータンパク質濃縮物
（ＷＰＣ）等の乳製品をエーテルやアセトンで抽出する
方法 (特開平3- 47192号公報) により得られる乳由来の
スフィンゴミエリン含有リン脂質 (リン脂質中スフィン
ゴミエリン約28％含有) を使用することができ、また、
バターを加温融解することにより得られるバターカード
やバターセーラムを含む水性画分をスフィンゴミエリン
含有リン脂質 (リン脂質中スフィンゴミエリン約９％含
有) として使用することができ、さらに、バターミルク
やバターセーラム中に含まれる乳脂肪球被膜画分をスフ
ィンゴミエリン含有リン脂質 (リン脂質中スフィンゴミ
エリン約９％含有) として使用することができる。そし
て、これらのスフィンゴミエリン含有リン脂質を透析、
硫安分画、ゲル濾過、等電点沈澱、イオン交換クロマト
グラフィー、溶媒分画等の手法により精製することによ
り純度を高めたスフィンゴミエリンを使用しても良い。
また、これらのスフィンゴミエリンやスフィンゴミエリ
ン含有リン脂質は、液体の状態で使用しても良いし、粉
末の状態で使用しても良い。

【００１０】ところで、表１に示したように、乳由来の
リン脂質の特徴は、その構成成分として、ホスファチジ
ルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びスフィ
ンゴミエリンを含有していることであり、特に、代表的
なリン脂質である大豆由来のリン脂質には殆ど含まれて
いないスフィンゴミエリンを比較的高い含有率で含んで
いることである（菰田衛著, レシチン−その基礎と応
用, p.160,幸書房発行,1991) 。

【００１１】

【表１】 ──────────────────────────────────── 牛乳由来のリン脂質大豆由来のリン脂質 ──────────────────────────────────── ホスファチジルコリン 35.3 45.0 ホスファチジルエタノールアミン 29.4 26.3 ホスファチジルイノシトール 5.9 14.1 ホスファチジン酸 − 5.0 スフィンゴミエリン 26.5 − ──────────────────────────────────── (単位：％)

【００１２】したがって、スフィンゴミエリン含有リン
脂質としては、乳由来のリン脂質を使用することが好ま
しいといえる。

【００１３】

【発明の実施の形態】本発明は、スフィンゴミエリン及
び／又はスフィンゴミエリン含有リン脂質を有効成分と
する脂質の消化吸収機能改善剤である。この脂質の消化
吸収機能改善剤の剤型は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、
散剤、粉剤等とすれば良い。また、こられの剤型は、従
来より知られている方法で製造することができ、例え
ば、製剤製造上許容されている担体や賦形剤等と混合し
て成型すれば良い。

【００１４】また、本発明は、スフィンゴミエリン及び
／又はスフィンゴミエリン含有リン脂質を配合して脂質
の消化吸収機能改善効果を賦与した医薬や飲食品であ
る。この脂質の消化吸収機能改善効果を賦与した医薬や
飲食品は、スフィンゴミエリン及び／又はスフィンゴミ
エリン含有リン脂質を錠剤や粉剤等の剤型の医薬に配合
したり、牛乳、乳飲料、コーヒー飲料、ジュース、ゼリ
ー、ビスケット、パン、麺、ソーセージ等の飲食品や栄
養食、さらには、必須脂肪酸や脂溶性ビタミンの補給を
目的とした栄養補給用組成物に配合したりしたものであ
る。

【００１５】なお、本発明で、脂質の消化吸収機能改善
効果を発揮させるためには、成人の場合、スフィンゴミ
エリンとして１日当たり 500〜2,500mg 摂取できるよう
に配合量等を調整すれば良い。

【００１６】次に、実施例及び試験例を示し、本発明を
さらに詳しく説明する。

【００１７】

【実施例１】ホエータンパク質濃縮物（ＷＰＣ）の10％
水溶液にプロテアーゼを作用させて得られた反応液をク
ロロホルム−メタノール（２：１）溶液で抽出した後、
濃縮し、さらに、アセトン抽出して複合脂質画分を得
た。次に、この複合脂質画分をフロロシリルカラムクロ
マトグラフィー処理し、クロロホルム−メタノール溶液
で段階抽出してリン脂質画分を得た。そして、このリン
脂質画分をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理
し、クロロホルム−メタノール溶液で段階抽出してスフ
ィンゴミエリンを得た。得られたスフィンゴミエリンに
ついては、凍結乾燥して脂質の消化吸収改善剤とした。
なお、このスフィンゴミエリンを薄層クロマトグラフィ
ー処理した後、ディットマー試薬で発色し、デンシトメ
トリー法で測定したところ、スフィンゴミエリンの含有
率は95.2％であった。

【００１８】

【試験例１】実施例１で得られたスフィンゴミエリンを
使用し、マウスによる動物実験で、脂質の消化吸収改善
効果を調べた。すなわち、11週齢の老化促進マウス（Ｓ
ＡＭＰ／８系）及び通常マウス（ＳＡＭＲ／１系）を各
群６匹ずつ実験動物として使用した。そして、表２に示
した配合の実験飼料で、スフィンゴミエリン添加量を0.
1％とし、その他の配合についてはAIN-76組成に準じた
実験飼料を28日間給餌した。

【００１９】

【表２】

【００２０】なお、脂質の消化吸収機能の評価について
は、実験飼料投与後、21〜28日目の１週間における脂質
摂取量と糞便への脂質***量から消化吸収率を算出する
ことにより行った。その結果を図１に示す。

【００２１】これによると、老化促進マウスの対照群に
おいて有意に低い消化吸収率を示したが、健常マウスの
対照群及び発明群においてスフィンゴミエリンの影響は
認められず、老化促進マウスの発明群においてのみスフ
ィンゴミエリンの効果で健常マウスと同等の消化吸収率
になるまで機能が改善されていた。したがって、スフィ
ンゴミエリンは、加齢に伴って低下する脂質の消化吸収
機能を改善し、消化吸収機能を健常なレベルまで高める
効果を有することが判った。

【００２２】

【実施例２】実施例１に示した方法と同様の方法により
リン脂質画分を調製し、このリン脂質画分をスフィンゴ
ミエリン含有リン脂質とした。そして、得られたスフィ
ンゴミエリン含有リン脂質については、凍結乾燥して脂
質の消化吸収改善剤とした。なお、このスフィンゴミエ
リン含有リン脂質のリン脂質組成について、薄層クロマ
トグラフィーで分析した結果を表３に示す。

【００２３】

【表３】

【００２４】

【実施例３】実施例２で得られたスフィンゴミエリン含
有リン脂質を配合して、脂質の消化吸収機能改善効果を
賦与した乳飲料を製造した。すなわち、牛乳20kg、脱脂
粉乳21.6kg及び水56kgを調合して乳ベースを調製した
後、この乳ベースに、グラニュー糖１kg及びスフィンゴ
ミエリン含有リン脂質0.37kgを添加し、ホモジナイザー
で均質圧 200kg/cm²として乳化した。そして、充填温度
90℃でこれを 200ml缶に充填し、巻締めした後、 121
℃、10分間のレトルト殺菌を行い、冷却して缶入り乳飲
料を製造した。なお、この缶入り乳飲料は、殆ど褐変し
ておらず、牛乳の風味を有するものであった。

【００２５】

【実施例４】実施例２で得られたスフィンゴミエリン含
有リン脂質を配合して、脂質の消化吸収機能改善効果を
賦与した経管・経口栄養食を製造した。すなわち、75℃
に加温した水 1.5 lに、デキストリン632g、カゼインナ
トリウム174g、脱脂粉乳 33g、ショ糖脂肪酸エステル6
g、パーム油分別油 62gとスフィンゴミエリン含有リン
脂質 45gとを混合した油脂混合物107g及び第３リン酸カ
リウム7gを水50mlに溶解した溶液を添加混合し、さら
に、塩化カルシウム4g/160mlの溶液、硫酸マグネシウム
7g/160mlの溶液、ビタミン混合物４g/53mlの溶液及びミ
ネラル混合物６g/53mlの溶液を添加混合した。次に、こ
の混合物をコロイドミルで予備乳化した後、ホモジナイ
ザーで均質圧 400kg/cm²として乳化した。そして、 121
℃、15秒で加熱殺菌した後、噴霧乾燥して、経管・経口
栄養食約１kgを得、アルミ箔製容器に92gずつ窒素充填
包装して経管・経口栄養食を製造した。なお、この経管
・経口栄養食を 340mlの水に溶解すると約1kcal/mlのエ
ネルギーを供給することができる。

【００２６】

【実施例５】脂肪率を50％に調整したクリームを３倍量
の水で洗浄し、４℃で一晩放置した後、バターチャーン
で処理して、バター粒とバターミルクに分離した。次
に、このバターミルクについて、硫安分画、遠心分離及
び透析を行って乳脂肪球被膜画分を調製し、この乳脂肪
球被膜画分をスフィンゴミエリン含有リン脂質とした。
そして、得られたスフィンゴミエリン含有リン脂質につ
いては、凍結乾燥して脂質の消化吸収改善剤とした。な
お、このスフィンゴミエリン含有リン脂質中に含まれる
スフィンゴミエリン含量は10.4％であった。

【００２７】

【実施例６】実施例５で得られたスフィンゴミエリン含
有リン脂質を配合して、脂質の消化吸収機能改善効果を
賦与した栄養補給用組成物を製造した。すなわち、溶解
水60kg中に、乳タンパク質 3.4kg及び大豆タンパク質1.
14kgを分散し、70℃まで加温して溶解した後、デキスト
リン12.4kgを添加し、さらに、大豆油、パーム油及び精
製魚油を混合した油脂類 2.4kg、スフィンゴミエリン含
有リン脂質 0.2kgを添加した。次に、TKホモミキサーで
予備乳化した後、濃縮し、噴霧乾燥して、原料粉末を調
製した。そして、この原料粉末に、適量のミネラル、ビ
タミン、香料等を添加し、混合して、粉末状の栄養補給
用組成物を製造した。

【００２８】

【発明の効果】スフィンゴミエリンやスフィンゴミエリ
ン含有リン脂質を有効成分として使用することにより、
脂質の消化吸収機能が低下した高齢者や疾病予後の患者
のみに脂質の消化吸収機能改善効果をもたらすことがで
きる。したがって、本発明の脂質の消化吸収機能改善
剤、あるいは、脂質の消化吸収機能改善効果を賦与した
医薬や飲食品を脂質や脂溶性ビタミンと共に摂取するこ
とにより、脂質の消化吸収機能が低下した高齢者や疾病
予後の患者に、必須脂肪酸や脂溶性ビタミン等の栄養補
給を行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】試験例１の各実験群における脂質の消化吸収率
を示す。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者須栗俊朗東京都荒川区西尾久７−14−７ (72)発明者村上元威埼玉県狭山市富士見１−９−23 ラピュタ武蔵野505 (72)発明者今泉勝己福岡県福岡市西区福重277−７

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】スフィンゴミエリン及び／又はスフィン
ゴミエリン含有リン脂質を有効成分とする脂質の消化吸
収機能改善剤。
【請求項２】スフィンゴミエリン及び／又はスフィン
ゴミエリン含有リン脂質を配合して脂質の消化吸収機能
改善効果を賦与した医薬又は飲食品。