JPH11222496A - α−D−グルコピラノシルグリセロール類及びその製 造方法及びその用途 - Google Patents
α−D−グルコピラノシルグリセロール類及びその製 造方法及びその用途Info
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- JPH11222496A JPH11222496A JP3543498A JP3543498A JPH11222496A JP H11222496 A JPH11222496 A JP H11222496A JP 3543498 A JP3543498 A JP 3543498A JP 3543498 A JP3543498 A JP 3543498A JP H11222496 A JPH11222496 A JP H11222496A
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Abstract
びその効率の良い製造方法及びその用途を提供する。 【解決手段】 甘味物質であるα−D−グルコピラノシ
ルグリセロール類は低褐変性、低メイラード反応性、加
熱安定性、非う蝕性、難消化性、高い保湿性を有する。
グルコース、マルトースなどを含有する糖類とグリセロ
ールとの混合物にα−グルコシダーゼを作用させること
により、グリセロールにグルコシル基を転移させ、α−
D−グルコピラノシルグリセロール類を製造する。ま
た、さらに反応液に糖類を連続的に加えることでα−D
−グルコピラノシルグリセロール類の濃度を高め、効率
良く製造する。α−D−グルコピラノシルグリセロール
類は、食品、化成品、医薬品に有効に利用できる。 【化7】
Description
さを持ち、褐変性やメイラード反応性が極めて低く、優
れた加熱安定性があり、且つ、難消化性、非う蝕性、高
い保湿性等の機能性を有するα−D−グルコピラノシル
グリセロール類及びその効率的な製造方法及びその特性
を有効に利用した食品、化成品、医薬品に関するもので
ある。
アミラーゼ、グルコアミラーゼのようなアミラーゼ以外
にもα−グルコシダーゼを生産することが知られてい
る。α−グルコシダーゼはエキソ型アミラーゼで、グル
コシルトランスフェラーゼ、トランスグルコシダーゼと
も呼ばれ、マルトースやオリゴ糖からα−1 ,4結合し
たグルコース残基を他の物質に転移する作用を持つ。た
とえば、転移するグルコシル基の受容体が水、エチルア
ルコール、グルコース、マルトース、イソマルトースの
場合はそれぞれグルコース、エチル−α−グルコシド
(公開特許:平4−112798)、イソマルトース、
パノース、イソマルトトライオースを生成する。なお、
受容体が水の場合、グルコアミラーゼなどの作用に似た
加水分解とも見られるので、以後これを加水分解と呼
ぶ。
用に関する報告がこれまで多くされているが、本発明者
らは糖転移の受容体がグリセロールであるα−D−グル
コピラノシルグリセロール類(以後、GGと表記する)
を新たに発見し、さらに麹を用いた他の醸造物中、たと
えば、みそ、みりんなどもGGを含んでいることが判明
した。
−α−D−グルコピラノシルグリセロール、(2S)−
1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール、2−
O−α−D−グルコピラノシルグリセロールの三成分か
ら成るが、このうち2−O−α−D−グルコピラノシル
グリセロールだけは、藍藻類(シアノバクテリアとも呼
ばれる)、特に海洋などの高塩濃度環境で生息するもの
に存在し、本発明とは異なる酵素反応により菌体内で生
合成され、浸透圧調整に関わっていることが報告されて
いる(Carbohydr.Res.,73,193〜
202,1979;Science,210,650〜
651,1980;Mar.Biol.,73,301
〜307,1983;J.Gen.Microbio
l.,130,1〜4,1984;Planta,16
3,424〜429,1985;Arch.Micro
biol.,148,275〜279,1987;Mi
krobiologiya,60,596〜600,1
991;J.Gen.Microbiol.,140,
1427〜1431,1994など)。しかしこれらの
報告では、2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロ
ール自体の諸性質は述べられておらず、また1−O−α
−D−グルコピラノシルグリセロール類は本発明者らに
よって清酒醪中から初めて発見されたものである。下に
それぞれの環状構造を示す。
度の低レベルであるが、清酒中のGGは清酒のいわゆる
「幅のある味」、「押し味」といった効果をもたらし、
すっきりとした甘さを与えていることがわかった。GG
の甘味度はシュクロースの約0.55倍であり、またG
Gは加熱に対して安定で褐変し難く、メイラード反応を
起こし難い特性を有す。他にもGGには非う蝕性、難消
化性、高い保湿効果が認められ、清酒が飲料以外にも調
味料や化粧品として用いられているのは、少なからずこ
れらのGGの特性が反映していると予想される。
のGG濃度は低レベルで、清酒醸造の副産物である清酒
粕中のGG含量も低く、これらからの抽出、精製は効率
が悪い。また有機合成法としては、イソマルトース、マ
ルチトールなどを四酢酸鉛や過ヨウ素酸塩でグリコール
開裂したものを還元する方法、あるいはKoenigs
−Knorr反応により合成したβ−グルコシドをアノ
メリゼーションした後、β−グルコシダーゼでβ−グル
コシドを加水分解する方法などあるが、収率が極めて悪
く、精製等が非常に煩雑になる。このように、α−グル
コシド類の製造方法には優れた一般的合成方法がなく、
効率の良い生産技術が必要である。
意検討を重ねた結果、カビ類のα−グルコシダーゼを比
較的高濃度のグリセロール溶液中で特定の基質に作用さ
せると、優れた反応性を示し、GGを効率良く生産する
技術を確立することができた。すなわちα−グルコシダ
ーゼは比較的高濃度の、たとえば重量対容量百分率25
%(以下、各濃度は重量対容量百分率で表記する)以上
のグリセロール溶液中でも有効に反応し、またこの条件
下で基質、たとえばマルトースの加水分解は起こりにく
いことがわかった。以下、本発明を詳細に説明する。
外にも、グルコース、シュクロース、オリゴ糖の混合溶
液、水飴、α−アミラーゼなどによる澱粉分解物、マル
チトールのような還元性末端を水素添加した糖類を用い
ることができる。
ルコシル転移酵素と呼ばれるα−グルコシダーゼであ
る。酵母由来のα−グルコシダーゼはα−1,4−グル
コシル転移酵素がほとんどであるため、利用できるもの
は一部しかないが、カビ由来のα−グルコシダーゼは大
部分が利用でき、中でもAsp.oryzae、As
p.nigerなどの生産するα−グルコシダーゼが好
適である。精製酵素はもちろん、粗精製酵素でも使用で
きる。また、基質と酵素を同時に供給する点では、麹も
利用可能である。
温度はグリセロール37.5%で24時間反応させた場
合、40℃でGGの生産量は最大であったが、30℃に
おいてもその70%の生産量が認められ利用できる。ま
た、さらに低温で実施すると反応速度は低下するが、G
Gの生産には支障がない。作用pHは3〜6の範囲が好
適である。酵素添加量は、基質に5%マルトースを用い
て、基質グラム(g)当たり0.6〜50U(国際単
位)の範囲で実験したが、2.5U/gを添加すると充
分目的を達成する。また、この条件では基質(マルトー
ス)当たりの収率は66%と高いが、反応に使用された
グリセロールが少なく、後の精製過程の効率を上げるた
めにも、反応液中のGGの濃度を高める方が好ましい。
そこで、基質を24時間毎に添加していったところ、連
続10回の基質添加でも酵素は安定に作用しGGの濃度
を上げることができた。このような連続バッチ処理によ
り生産量を高める方法は、コストや操作性の面から有効
である。
リセロール、グルコース、オリゴ糖などが存在する。食
品などの甘味料、保湿剤、呈味改善剤としてはそのまま
使用できる。また、高純度のGGを使用する場合、活性
炭カラムクロマトグラフィーなどの精製方法が有効で、
溶出液を濃縮すればシロップ状のGGが得られる。さら
に、精製したGGの一部を比較的高濃度のアセトニトリ
ル、たとえば85%アセトニトリルを溶出液に用いアミ
ノカラムクロマトグラフィーを行うと、2−O−α−D
−グルコピラノシルグリセロールと1−O−α−D−グ
ルコピラノシルグリセロール類を分離、精製することが
できる。
調べたところ、GGはグルコース、マルトース、シュク
ロースに比べ、加熱に対し安定で褐変が少なく、メイラ
ード反応を起こし難いことがわかった。
ース、GGの各10%水溶液の、pH4または7におけ
る60分間加熱後の着色度と加熱温度の関係を示した。
横軸が加熱温度、縦軸が着色度(厚さ1cmのセルにお
ける420nmの吸光度から720nmの吸光度を差し
引き、希釈倍率を乗じた値)を示す。
ンを含むグルコース、マルトース、シュクロース、GG
の各10%水溶液の100℃、60分間加熱後の着色度
とpHの関係を示した。横軸がpH、縦軸が着色度(厚
さ1cmのセルにおける420nmの吸光度から720
nmの吸光度を差し引き、希釈倍率を乗じた値)を示
す。
ース、GGの各10%水溶液のpH4または7における
60分間加熱後の残存率をHPLCで測定した結果を示
す。横軸が加熱温度、縦軸が残存率を示す。
ュクロース水溶液のうち、5%GG水溶液の甘さに相当
するシュクロース濃度を8名のパネラーにより官能検査
したところ、シュクロース濃度2.5%の甘さに近いと
した者が4名、3%に近いとした者が4名という結果に
なった。よってGGの甘さはシュクロースの約0.55
倍であることがわかり、しかもすっきりとした甘さで、
多くの糖アルコールで問題になる苦味は感じられないと
いう良い評価が得られた。他にもGGには非う蝕性、難
消化性があり、さらに現在保湿剤として広く使用されて
いるグリセロールやソルビトールに比べ、高い保湿性が
認められた。
村(歯学,60,717〜731,1973)の方法に
準じ、水1mlまたは、各1.25%のグルコースまた
はGG水溶液1mlに、それぞれハートインフージョン
ブイヨン1mlと新鮮唾液3mlを添加した溶液につい
て、37℃におけるpHの経時変化を示した。
湿度約60%で平衡状態にあるグリセロール、ソルビト
ール、GGを、相対湿度約35%で放湿または相対湿度
約75%で吸湿させた時の重量変化を示す。横軸は時間
を、縦軸は重量変化を示す。
ら(日本栄養・食糧学会誌,43,23〜29,199
0)の方法に準じ、ヒト唾液、人工胃液、ブタ膵臓α−
アミラーゼ、ラット小腸粘膜酵素による消化性を示し
た。
のように多くの機能を持ち、たとえば甘味料、各種調味
料、和洋菓子類、酒類、各種飲料、果実野菜加工食品、
畜肉魚肉製品、乳製品、即席食品、冷凍食品、治療食品
などの飲食物や練り歯磨き、化粧品などの化成品やうが
い剤、内服液などの医薬品への甘味剤、呈味改良剤、矯
味剤、保湿剤として有効に利用できる。
5%の溶液にα−グルコシダーゼ2.5U/gを添加
し、40℃、24時間反応させた溶液についてGG、グ
ルコース、オリゴ糖をHPLCにより分離定量した。そ
の結果、イソマルトースなどの二糖類やパノース、イソ
マルトトライオースなどの三糖類以上のオリゴ糖はほと
んど生成しておらず、グルコースとGGが主な生成物と
して認められた。すなわち、このような濃度のグリセリ
ン溶液中では、α−グルコシダーゼによるグルコースや
マルトースなどへの糖転移反応が抑制され、新たにグリ
セロールへの糖転移反応が起こっていることがわかっ
た。
濃度37.5%の溶液に、α−グルコシダ−ゼをマルト
ースグラム当たり2.5U/g添加し、40℃、24時
間反応させた溶液の組成をHPLCにより測定した結果
を示す表である。
8〜885,1994)は、α−グルコシダーゼを用い
たエチル−α−グルコシド(以下α−EGと表記する)
の製造において、マルトースから2個のグルコースへの
加水分解作用と、マルトースからグルコースとα−EG
を生成する糖転移作用を比べた場合、後者の糖転移作用
が優先するとα−EG/グルコース比の値が大きくなる
と報告している。そこで同様に、本発明のα−グルコシ
ダーゼによるGG製造においても、基質の加水分解作用
よりもGGを生成する糖転移作用が優先した時にはGG
/G比(重量比)(以下GG/G比と表記する)が増加
すると思われる。加水分解作用と糖転移作用が同じ速さ
で起こると仮定すれば、2モルのマルトースを基質とし
て、水、グリセロールの各々1モルに作用し、グルコー
ス(分子量180)3モルとGG(分子量254)1モ
ルが生じ、GG/G比は254/(180×3)=0.
47となる。表2から求めたGG/G比は約1.3で、
0.47を越えており、基質の加水分解よりもグリセロ
ールへの転移反応が優先していた。また、このGG/G
比と、基質当たりのGGの収率を指標として、基質濃度
とグリセロール濃度について検討した。その結果、基質
濃度は低濃度で収率が良かったが、GG/G比は基質濃
度5%付近で高く、またグリセロール濃度が50%を越
えると収率は低下した。
の関係を示す図である。各濃度のマルトースを基質とし
て、25%のグリセロール溶液中でカビ由来のα−グル
コシダーゼ2.5U/gをpH5で50℃、24時間反
応させた溶液をHPLCによりGGとグルコースを定量
した結果を示した。横軸は基質濃度、左側の縦軸の数値
にて基質当たりのGGの収率を棒グラフで、右側の縦軸
の数値にて反応溶液中のGG/G比を折れ線グラフで示
す。
GG/Gの関係を示す図である。基質としてマルトース
を5%、各濃度のグリセロール溶液中でカビ由来のα−
グルコシダーゼ2.5U/gをpH5で50℃、24時
間反応させた溶液をHPLCによりGGとグルコースを
定量した結果を示した。横軸はグリセロール濃度、左側
の縦軸の数値にて基質当たりのGGの収率を棒グラフ
で、右側の縦軸の数値にて反応溶液中のGG/G比を折
れ線グラフで示す。
ず、マルターゼでグルコースとグリセロールに分解され
ることから、α−アノマーであることを確認した。さら
に、精製したGGをトリメチルシリル(以下、TMSと
表記する)化後、キャピラリーガスクロマトグラフィー
−質量分析装置(以下、GC−MSと表記する)を用い
て分析すると、3つのピークに分離した。後述のように
GGは2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール
(以下、GG−IIと表記する)、(2R)−1−O−α
−D−グルコピラノシルグリセロール(以下、R−GG
−Iと表記する)、(2S)−1−O−α−D−グルコ
ピラノシルグリセロール(以下、S−GG−Iと表記す
る)の三成分の混合物であり、これら三成分の比は、た
とえば10:49:41であった。
同定は、化学的に合成したGGを用い、溶出時間とマス
スペクトルから確認した。GG−IIの合成方法について
は、マルチトールの過ヨウ素酸塩による短時間のグリコ
ール開裂を利用した。すなわち、マルチトールのグルコ
ピラノシル基の2、3、4位の炭素に結合している水酸
基はそれぞれシス配置であり、またそのアグリコンであ
るソルビトールの炭素間の結合は自由に回転するので、
過ヨウ素酸塩によるグリコール開裂はソルビトールの炭
素間の方が速く進む。反応が進みすぎるとグルコピラノ
シル基も開裂が進むので、反応時間を制限する必要があ
る。そこで、4%マルチトール100μlに2%過ヨウ
素酸ナトリウム1mlを添加し、4分間室温で反応させ
た。反応終了後、塩化バリウムを添加し、生じた過ヨウ
素酸バリウムの沈殿をろ別、除去した。さらにイオン交
換カラムで脱塩後、水素化ホウ素ナトリウムで還元し、
活性炭クロマトグラフィー及びHPLCで精製した。合
成したGG−IIをTMS化しGC−MSで分析すると、
GGのTMS誘導体の3ピークのうちで初めに溶出する
ピークのみが認められ、GGのTMS誘導体のピークと
マススペクトルも一致した。S−GG−Iについては、
Kanedaら(Phytochemistry,2
3,795〜798,1984)がゲンチオビオースの
四酢酸鉛によるグリコール開裂により、リリオシドD
((2S)−1−O−β−D−グルコピラノシルグリセ
ロール)を合成した方法を参考にし、イソマルトースの
四酢酸鉛によるグリコール開裂を利用した。10%イソ
マルトース500μlに酢酸5mlと四酢酸鉛140m
g(イソマルトースの2モル当量)を加え反応させ、沃
素澱粉混液200μlに反応液20μlを添加した時、
沃素澱粉混液の色が変わらなくなったところを反応の終
点とした。この反応液の大部分の酢酸をロータリーエバ
ポレーターで除去し、さらにイオン交換カラムで脱塩
後、GG−IIと同様に還元し、精製した。合成したS−
GG−IをTMS化しGC−MSで分析すると、GGの
TMS誘導体の3ピークのうちで最後に溶出するピーク
のみが認められ、GGのTMS誘導体のピークとマスス
ペクトルも一致した。また上記S−GG−Iと同様に、
トレハルロースを四酢酸鉛(トレハルロースの1モル当
量)によるグリコール開裂後、還元、精製したものをT
MS化しGC−MSで分析すると、マススペクトルも一
致するS−GG−IのTMS誘導体のピークと、GGの
TMS誘導体の3ピークのうちでS−GG−IのTMS
誘導体の直前に溶出するピークが認められ、GGのTM
S誘導体のピークとマススペクトルが一致した。これら
2つのピークを与えるトレハルロースの四酢酸鉛による
分解物は1つの化合物(3−O−α−D−グルコピラノ
シル−2−オキソ−1−プロパナール)であるが、還元
反応の際にグリセロールの2位の炭素が(R)、(S)
−配置となる2種類の化合物を与える。この2種類の化
合物のTMS誘導体のマススペクトルに違いがないこと
から、GGのTMS誘導体の3つのピークのうちで2番
目のピークはR−GG−IのTMS誘導体であることが
わかった。
分析した時のトータルイオンクロマトグラムである。縦
軸はフラグメントイオンのトータルイオン強度、横軸は
分析時間を示した。各ピークに対応する成分の略号(G
G−IIは2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロー
ル、R−GG−Iは(2R)−1−O−α−D−グルコ
ピラノシルグリセロール、S−GG−Iは(2S)−1
−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール)と括弧
内に溶出時間(分)を示した。このクロマトグラムにお
ける三成分の比(溶出順)は、およそ10:49:41
であった。
り得たGG−IIのTMS誘導体のマススペクトルであ
る。縦軸はイオン強度、横軸はフラグメントイオンの質
量数を表す。
ークより得たR−GG−IのTMS誘導体のマススペク
トルである。縦軸はイオン強度、横軸はフラグメントイ
オンの質量数を表す。
ークより得たS−GG−IのTMS誘導体のマススペク
トルである。縦軸はイオン強度、横軸はフラグメントイ
オンの質量数を表す。
GG三成分の比は、たとえば6:66:28であった。
この三成分の比の違いについて検討したところ、α−グ
ルコシダーゼの作用によりマルトースとグリセロールか
ら生成するGG三成分のうち、先ずR−GG−I、GG
−IIが増加し、それより遅れてS−GG−Iが生成して
くる。また、精製したGGにα−アミラーゼ(Baci
llus subtilis由来)やグルコアミラーゼ
(Rizopus sp.由来)を作用させてもGGは
分解されないが、α−グルコシダーゼを作用させると、
先ずR−GG−I、GG−IIから分解が起こり、遅れて
S−GG−Iの分解が起こる。すなわち、基質であるマ
ルトースがなくなってくると、見かけ上GGがα−グル
コシダーゼの基質となり、GG三成分の比の変化が生じ
てくる。このようにα−グルコシダーゼの受容体結合部
位の選択性や基質認識の違いによって、GG三成分の比
が微妙に変化していると思われる。よって、本発明にお
いて、GG製造時に基質が減少した際、GG三成分の比
は変化するが、GGの加水分解による減少を抑えるため
に、グリセロール濃度は高めの方が望ましい。また、並
行複発酵の清酒醪中では、主に酵母の生産したグリセロ
ールへ麹のα−グルコシダーゼによる糖転移反応が生じ
GGが生成すると思われるが、同時にグルコースやアル
コールなどからイソマルトースやエチル−α−グルコシ
ドの生成などが起こりGGの生成と競合した結果、GG
三成分の比が本発明のものと異なっていると考えられ
る。
て具体的に示すが、本発明はこれらの実施例に限定され
るものではない。
物53g(マルトースとして50g)とグリセロール3
75gを水で溶解し1000mlとし、カビ(Asp.
niger)由来の市販α−グルコシダーゼ製剤(トラ
ンスグルコシダーゼL−アマノ、天野製薬製、50U/
ml)2.5mlを加え、40℃で24時間反応させ
た。反応液を80℃で10分間加熱して酵素を失活させ
た後、生じた浮遊物をろ紙(東洋ろ紙No.2)にてろ
過し、除去した。
ィー(以下、HPLCと表記する)で分析した。HPL
Cの条件はカラムにShim−pack SCR−10
1(N)(内径7.9mm、長さ30cm、島津製作所
製)を用い、カラム温度は50℃とし、溶出液には水を
用い、流速は毎分0.6ml、検出器に示差屈折率計を
用いた。GG濃度は後述の精製GGで約2%の水溶液を
作製し、この水溶液と、この水溶液にマルターゼ(酵母
由来、オリエンタル酵母製)を加え37℃で一晩反応さ
せた溶液を上記HPLCで測定し、マルターゼの作用に
よりGGが分解して生成したグルコース濃度と分解し減
少したGGのピーク面積とそれぞれの分子量から検量線
を作成し算出した。測定の結果、反応ろ液にはGGが
3.8%、グルコース3.0%、グリセロール29.5
%が含まれ、二糖類以上のオリゴ糖は微量であった。反
応ろ液のGG収量は38gで、収率は76%であった。
プ付き試験管にとり乾燥デシケーター中に一晩置いた
後、TMS化剤(TMSI−C、ジーエルサイエンス
製)を100μl加え、60℃で10分反応させた溶液
1μlをGC−MS(ヒューレットパッカード製HP5
890シリーズIIガスクロマトグラフ、モデル5971
A質量検出器)で分析した。GC−MS条件はキャピラ
リーカラムにDB−225(長さ30m、内径0.25
mm、膜厚0.15μm、J&W Scientifi
c製)を用い、キャリアガスにヘリウム(カラム背圧8
PSI)、スプリット法(スプリット比1:50)で注
入し、注入口温度は240℃、インターフェイス温度は
280℃、カラム温度は100℃から200℃まで1分
間に5℃の割合で昇温し、次に16分から20分の間に
溶出する成分を電子衝撃型イオン化法(電子ビームエネ
ルギー70eV)でイオン化し、質量数70〜650a
mu(原子質量単位)の範囲を1分間に約1.5回の速
さで走査し、マススペクトルを採集した。溶出時間と得
られたマススペクトルからそれぞれの成分を確認した。
また同時に得られるトータルイオンクロマトグラムのピ
ーク面積の測定結果から、反応ろ液中のGG−II、R−
GG−I、S−GG−Iの成分比を算出すると11:4
1:48であった。
バーライトMB−2、オルガノ製)を常法に従い、長さ
30cmまで充填した内径1.5cmのガラスカラムに
通し、除蛋白、脱塩した溶液を得た。この溶液をおよそ
半分の量までロータリーエバポレーターで濃縮した。こ
の濃縮液10mlを、クロマトグラフ用活性炭100g
及びセライト(No.535)100g(いずれも和光
純薬工業製)を常法に従い充填した内径5cmのガラス
カラムを用い、活性炭カラムクロマトグラフィーを行っ
た。適宜溶出液を上記HPLCで測定しながら、最初は
水で溶出し、グルコースとグリセリンを除去した後、続
けて2%アルコールをカラムに通し、GGが単独で溶出
した画分を集めた。この活性炭カラムクロマトグラフィ
ーを2回行い、GG溶出画分をロータリーエバポレータ
ーで濃縮すると、無色透明のシロップ状の精製GG約1
gが得られた。
間反応後の溶液1000mlに、さらにマルトース1水
和物53g(マルトースとして50g)のみを添加し、
同じ条件で反応させることを繰り返した。α−グルコシ
ダーゼは10日後も安定に作用し、10日間の繰り返し
の結果、GGの収量は164gとなり、1回の反応より
も約5倍増加した。
より、GGの収量が上がったことを示す図である。基質
としてマルトースを5%、37.5%グリセロール溶液
中でカビ由来のα−グルコシダーゼ2.5U/gをpH
5で40℃、24時間反応させた溶液1000mlにさ
らにマルトースを5%添加し、これを繰り返した。各反
応終了時に反応液の一部を取り、HPLCによりGGを
定量した結果を示した。横軸はマルトース添加回数と初
期反応液1000ml当たりのマルトース添加量の累
計、左側の縦軸の数値にて初期反応液1000ml当た
りのGGの収量を棒グラフで、右側の縦軸の数値にて基
質当たりのGGの収率を折れ線グラフで示す。
たGC−MSにて同様に分析するとGG−II、R−GG
−I、S−GG−Iの成分比は9:50:41であっ
た。また製造方法の実施例1で行った活性炭カラムクロ
マトグラフィー及びGG溶出画分の濃縮を繰り返すこと
で、無色透明のシロップ状の精製GG140gを得た。
2で得たシロップ状の精製GG約20gを水で30ml
とし、その一部をカラムにYMC−Pack Poly
amine II(内径1cm、長さ25cm、ワイエム
シイ製)を用いたHPLCに注入した。HPLCの条件
は、カラム温度35℃、85%アセトニトリルにより流
速毎分3mlで溶出し、示差屈折率計で検出した。溶出
してきた2つのピークをそれぞれ集め、ロータリーエバ
ポレーターで濃縮した。それぞれの溶出画分をTMS化
後、製造方法の実施例1で行ったGC−MSで分析する
と、最初の画分がGG−II、後の画分がR−GG−I、
S−GG−Iの混合物であった。このHPLCによる分
離及びそれぞれの画分の濃縮操作を繰り返し行い、それ
ぞれシロップ状の精製GG−IIを約1.5g、精製GG
−I類を約15g得た。
ル900ml、無水ブドウ糖50g、粉末水飴70g、
製造方法の実施例2で得たシロップ状のGG60g、7
5%乳酸0.4ml、コハク酸1.1g、グルタミン酸
ナトリウム0.2gを水で溶かして1200mlとし、
アルコール濃度30%のGG添加調味アルコール液を調
製した。また、対照として、40%アルコール900m
l、無水ブドウ糖80g、粉末水飴100g、75%乳
酸0.4ml、コハク酸1.1g、グルタミン酸ナトリ
ウム0.2gを水で溶かして1200mlとし、アルコ
ール濃度30%の調味アルコール液を調製した。GG添
加調味アルコール液1200mlと水500mlまたは
対照の調味アルコール液1200mlと水500mlを
それぞれ1250mlの清酒醪に添加し、遠心分離で酒
粕を分離し、アルコール約20%の増醸酒を得た。これ
ら各々を火入れ、滓下げ後、アルコール約15%になる
ように加水し火入れして、GG高含有清酒及び対照の清
酒を作製した。これらを5名のパネラーで官能検査した
結果、GG高含有清酒は対照の清酒に比べ、「こくがあ
る」、「木目細かく、ソフトである」、「ふくらみがあ
る」、「すっきりとした甘さである」といった良い評価
を得た。このように、GGはすっきりとした甘さで深み
のある風味を与えること以外にも、GGが難消化性物質
であるため、GG高含有清酒はカロリーをやや抑えたも
のとなった。
の実施例2で得たシロップ状のGG5gと第2りん酸カ
ルシウム15g、プルラン1g、ラウリル硫酸ナトリウ
ム0.5g、グリセロール7g、ポリオキシエチレンソ
ルビタンラウレート0.15g、防腐剤20mg、水4
mlを常法により混合し、練り歯磨きを作製した。GG
の甘さと非う蝕性を活かした本品は、とりわけ子供用の
練り歯磨きに適している。
法の実施例2で得たシロップ状のGG2gとモノステア
リン酸ポリオキシエチレングリコール2g、自己乳化型
モノステアリン酸グリセリン5g、α−グルコシルルチ
ン1g、流動パラフィン1g、トリオクタン酸グリセリ
ル10g、防腐剤50mgを常法により加熱溶解し、さ
らに1,3−ブチレングリコール5g、乳酸2g、精製
水66mlを添加し、ホモジナイザーにより乳化後、適
量の香料を加え混合し、化粧クリームを作製した。本品
はGGの保湿効果により、特に乾燥肌用化粧クリームと
して好適である。
ルシウム2gを乳鉢ですりつぶし、温湯(精製水)30
mlで溶解し、製造方法の実施例2で得たシロップ状の
GG4gを加え混合し、カルシウム剤を作製した。本品
は小児の発育期におけるカルシウム補給剤として利用で
きる。本品のように、服用時加温する必要がある内用液
剤、とりわけ小児用のものでは、加熱安定性が優れてい
る甘味剤としてGGは好適である。
転移反応の受容体であるエタノールのように、グルコー
スとの縮合部位が一個所しかない場合と比べ、グリセロ
ールでは三個所の縮合部位がある。立体選択的グリコシ
ル化反応、特にα−グルコシル化反応は、糖質化学の分
野では重要な研究課題の一つになっており、GGはα−
グルコシダーゼの受容体結合部位の選択性や基質特異性
など、酵素学的にも興味深い物質になる。
グリセロ糖脂質合成の基質になりうる。微生物のグリセ
ロ糖脂質は動植物のものと異なり、構成単糖や結合が多
様であり、生合成や分解については一部のものしか明ら
かになっておらず、これらの生理的役割を解明すること
は、微生物利用工業の発展につながるものである。さら
にGGの一成分である2−O−α−D−グルコピラノシ
ルグリセロールは単離精製が可能であり、一部の藍藻類
での浸透圧調整への関与が明確であることからも微生物
利用工業分野では興味深い物質となる。
ことができるようになった。GGは加熱に対し安定で褐
変し難く、メイラード反応を起こし難い。また、非う蝕
性、難消化性、高い保湿性が認められ、清酒醪などの麹
を用いた醸造物中に存在するGGは呈味物質以外にも機
能性物質として広範な利用が期待される。
す図である。
関係を示す図である。
のトータルイオンクロマトグラムである。
−IIのTMS誘導体のマススペクトルである。
たR−GG−IのTMS誘導体のマススペクトルであ
る。
たS−GG−IのTMS誘導体のマススペクトルであ
る。
収量が上がったことを示す図である。
Claims (8)
- 【請求項1】 式1及び式2 【化1】 【化2】 の(2R)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセ
ロールと(2S)−1−O−α−D−グルコピラノシル
グリセロールである1−O−α−D−グルコピラノシル
グリセロール類。 - 【請求項2】 式3 【化3】 の2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロールと請
求項1記載の1−O−α−D−グルコピラノシルグリセ
ロール類との混合物であるα−D−グルコピラノシルグ
リセロール類。 - 【請求項3】 グリセロールと糖類とを溶解した溶液中
の糖類にα−グルコシダーゼを作用させて、グリセロー
ルにα−D−グルコピラノシル基を導入することを特徴
とする請求項2記載のα−D−グルコピラノシルグリセ
ロール類の製造方法。 - 【請求項4】 糖類は、グルコース、マルトース、オリ
ゴ糖またはこれらを含有する物質である請求項3記載の
α−D−グルコピラノシルグリセロール類の製造方法。 - 【請求項5】 グリセロールの濃度として重量対容量百
分率10〜50%のものを使用する請求項3記載のα−
D−グルコピラノシルグリセロール類の製造方法。 - 【請求項6】 反応終了液にさらに糖類を少なくとも一
回以上添加する請求項3記載のα−D−グルコピラノシ
ルグリセロール類の製造方法。 - 【請求項7】 α−D−グルコピラノシルグリセロール
類をアミノカラムクロマトグラフィーにより2−O−α
−D−グルコピラノシルグリセロールおよび1−O−α
−D−グルコピラノシルグリセロール類に分離する2−
O−α−D−グルコピラノシルグリセロールおよび1−
O−α−D−グルコピラノシルグリセロール類の製造方
法。 - 【請求項8】 α−D−グルコピラノシルグリセロール
類を含有せしめた食品、化成品又は医薬品である組成
物。
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