JPH11217655A - 高強度耐熱鋼およびその製造方法 - Google Patents

高強度耐熱鋼およびその製造方法

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JPH11217655A
JPH11217655A JP1614598A JP1614598A JPH11217655A JP H11217655 A JPH11217655 A JP H11217655A JP 1614598 A JP1614598 A JP 1614598A JP 1614598 A JP1614598 A JP 1614598A JP H11217655 A JPH11217655 A JP H11217655A
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less
resistant steel
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temperature
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JP1614598A
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Yoichi Tsuda
陽一 津田
Ryuichi Ishii
龍一 石井
Masayuki Yamada
政之 山田
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高温高圧環境下において長時間使用される部
品、例えば、高温蒸気タービン部品に適用される部材お
よびその製造方法に関する技術であり、高温高圧下にお
いて優れた強度、靭性および延性などの特性を有すると
ともに、これらの優れた特性を長時間にわたって維持で
きる高強度耐熱鋼およびその製造方法を提供する。 【解決手段】重量比で、C:0.05〜0.30%、S
i:0.20%以下(0を含まない)、Mn:0.20
%以下(0を含まない)、Cr:8.0〜14.0%、
Mo:0.5〜3.0%、V:0.10〜0.50%、
Ni:1.0%以下(0を含まない)、Nb:0.01
〜0.50%、N:0.01〜0.08%、B:0.0
01〜0.020%、Ru:0.5〜4.0%を含み、
残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴と
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高温高圧で長時間
使用される部品、例えば、高温蒸気タービン部品に適用
される高温高圧部材およびその製法についての技術であ
り、高温強度、靭性および延性などの特性が優れるとと
もに、これらの優れた特性を長時間にわたって維持でき
る高強度耐熱鋼およびその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】火力発電の高温高圧部材は、高温強度、
靭性および延性などの材料特性のバランスが優れている
と同時に、高温長時間にわたりその材料特性の変化が少
ないことが要求される。
【0003】このような高温高圧部材として、8〜12
%のCrを含有する高Crフェライト系耐熱鋼が利用さ
れている。
【0004】例えば、特公昭60−54385号公報に
掲載されている耐熱鋼は、化学組成が重量パーセントで
クロム10〜13%、マンガン0.3〜1.0%、モリ
ブデン0.5〜2.0%、シリコン0.2%以下、ニッ
ケル0.1〜1.5%、ニオブ0.01〜0.5%、バ
ナジウム0.1〜0.5%、タングステン0.5〜2.
0%、炭素0.05〜0.3%、窒素0.01〜0.1
%、残部鉄および付随的不純物より構成される。
【0005】また、特開平4−147948号公報に掲
載されている高温蒸気タービンロータシャフトは、化学
組成が重量%で、C0.05〜0.20%、Si0.5
%以下、Mn0.05〜1.5%、Ni0.05〜1.
0%、Cr9.0〜13.0%、Mo0.05〜0.5
0%(0.50%を含まず)、W2.0〜3.0%、V
0.05〜0.30%、Nb0.01〜0.20%、C
o2.1〜10.0%、N0.01〜0.1%を含み、
残部が実質的にFeおよび不可避の不純物より構成され
る。
【0006】一方、特開平8−3697号公報に掲載さ
れている耐熱鋼は、化学組成が重量%で、C0.05〜
0.2%、N1.0%以下、Cr9〜13%、Mo0.
05〜1%、V0.05〜0.3%、W1〜3%、Co
1〜5%、N0.01〜0.1%を含有し、さらに、N
b0.01〜0.15%、Ta0.01〜0.15%、
希土類元素0.003〜0.03%の一種以上を含有
し、残部がFeおよび不可避的不純物から構成される。
【0007】従来の上記したような高Crフェライト鋼
は、高温強度と靭性という相反する特性を両立させるこ
とを開発の最大の目的としていた。このため、母相の固
溶強化に加えて結晶粒内に均一微細に析出物を析出させ
ることにより高温強度の確保を図り、また靭性低下の原
因の一つである結晶粒界上への析出物の析出を回避する
ことにより、高温強度および靭性を両立させていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
高Crフェライト系耐熱鋼は600℃程度の高温で長時
間のクリープを受けると、金属組織の変化が著しくな
り、この組織変化に対応して耐衝撃性などの材料特性が
大きく低下してしまう等の問題を有していた。
【0009】従来の高Crフェライト系耐熱鋼は600
℃程度の高温で長時間のクリープを受けると、金属組織
の変化が著しくなり、不可避的に析出する析出物の大半
が結晶粒界あるいはマルテンサイトラス境界上に存在す
るため、マルテンサイトラス内は析出物の密度が低下
し、回復およびサブグレイン化が活発になる。その結
果、この組織変化に対応して耐衝撃性などの材料特性が
大きく低下してしまう。このため、従来の高Crフェラ
イト系耐熱鋼を用いて蒸気タービン部材を構成し、60
0℃以上の高温蒸気環境中で運転した場合、火力発電プ
ラントの信頼性が損なわれるという問題があった。
【0010】一方において、火力発電プラントでは、地
球環境保護の観点から、つまり限りある資源である石油
を有効利用するために、熱効率の向上が要求されてい
る。そのため、ボイラの運転温度、水蒸気の温度や圧力
をさらに高める必要があり、600℃以上の蒸気を用
い、従来よりも高圧化した高温高圧の火力発電プラント
が必要とされるとともに、このような高温高圧に絶える
高温高圧部材が要求されている。
【0011】本発明は、このような課題に対処するため
になされたものであり、添加する元素を調整して化学組
成を整えるとともに、製造時に焼入れおよび焼戻しの調
節熱処理を施す際の温度条件を規定することにより高温
高圧部材として適用でき、高温強度に優れるとともに、
高温強度、靭性および延性などの特性を長時間にわたっ
て維持できる高強度耐熱鋼およびその製造方法を提供す
ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の高強度耐
熱鋼は、重量比で、C:0.05〜0.30%、Si:
0.20%以下(0を含まない)、Mn:1.0%以下
(0を含まない)、Cr:8.0〜14.0%、Mo:
0.5〜3.0%、V:0.10〜0.50%、Ni:
1.0%以下(0を含まない)、Nb:0.01〜0.
50%、N:0.01〜0.08%、B:0.001〜
0.020%、Ru:0.5〜4.0%を含み、残部が
Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
【0013】なお、本発明において望ましくは、重量比
で、C:0.07〜0.25%、Si:0.20%以下
(0を含まない)、Mn:1.0%以下(0を含まな
い)、Cr:9.0〜13.0%、Mo:0.7〜2.
5%、V:0.10〜0.40%、Ni:1.0%以下
(0を含まない)、Nb:0.01〜0.30%、N:
0.01〜0.06%、B:0.003〜0.015
%、Ru:0.5〜3.0%を含む組成とする。
【0014】さらに望ましくは、重量比で、C:0.0
9〜0.20%、Si:0.20%以下(0を含まな
い)、Mn:1.0%以下(0を含まない)、Cr:
9.5〜12.0%、Mo:0.9〜2.0%、V:
0.15〜0.30%、Ni:0.7%以下(0を含ま
ない)、Nb:0.03〜0.20%、N:0.01〜
0.04%、B:0.005〜0.012%、Ru:
1.0〜2.0%を含む組成とする。
【0015】請求項2記載の高強度耐熱鋼は、重量比
で、C:0.05〜0.30%、Si:0.20%以下
(0を含まない)、Mn:1.0%以下(0を含まな
い)、Cr:8.0〜14.0%、W:0.5〜6.0
%、V:0.10〜0.50%、Ni:1.0%以下
(0を含まない)、Nb:0.01〜0.50%、N:
0.01〜0.08%、B:0.001〜0.020
%、Ru:0.5〜4.0%を含み、残部がFeおよび
不可避的不純物からなることを特徴とする。
【0016】なお、本発明において望ましくは、重量比
で、C:0.07〜0.25%、Si:0.20%以下
(0を含まない)、Mn:1.0%以下(0を含まな
い)、Cr:9.0〜13.0%、W:1.0〜5.0
%、V:0.10〜0.40%、Ni:1.0%以下
(0を含まない)、Nb:0.01〜0.30%、N:
0.01〜0.06%、B:0.003〜0.015
%、Ru:0.5〜3.0%を含む組成とする。
【0017】さらに望ましくは、重量比で、C:0.0
9〜0.20%、Si:0.20%以下(0を含まな
い)、Mn:1.0%以下(0を含まない)、Cr:
9.5〜12.0%、W:2.0〜4.0%、V:0.
15〜0.30%、Ni:0.7%以下(0を含まな
い)、Nb:0.03〜0.20%、N:0.01〜
0.04%、B:0.005〜0.012%、Ru:
1.0〜2.0%を含む組成とする。
【0018】請求項3記載の高強度耐熱鋼は、重量比
で、C:0.05〜0.30%、Si:0.20%以下
(0を含まない)、Mn:1.0%以下(0を含まな
い)、Cr:8.0〜14.0%、Mo:0.1〜2.
0%、W:0.3〜5.0%、V:0.10〜0.50
%、Ni:1.0%以下(0を含まない)、Nb:0.
01〜0.50%、N:0.01〜0.08%、B:
0.001〜0.020%、Ru:0.5〜4.0%を
含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを
特徴とする。
【0019】なお、本発明において望ましくは、重量比
で、C:0.07〜0.25%、Si:0.20%以下
(0を含まない)、Mn:1.0%以下(0を含まな
い)、Cr:9.0〜13.0%、Mo:0.2〜1.
5%、W:0.5〜3.0%、V:0.10〜0.40
%、Ni:1.0%以下(0を含まない)、Nb:0.
01〜0.30%、N:0.01〜0.06%、B:
0.003〜0.015%、Ru:0.5〜3.0%を
含む組成とする。
【0020】さらに望ましくは、重量比で、C:0.0
9〜0.20%、Si:0.20%以下(0を含まな
い)、Mn:1.0%以下(0を含まない)、Cr:
9.5〜12.0%、Mo:0.5〜1.2%、W:
2.0〜4.0%、V:0.15〜0.30%、Ni:
0.7%以下(0を含まない)、Nb:0.03〜0.
20%、N:0.01〜0.04%、B:0.005〜
0.012%、Ru:1.0〜2.0%を含む組成とす
る。
【0021】請求項4記載の高強度耐熱鋼は、請求項1
から請求項3までに記載の高強度耐熱鋼において、重量
比で、Coを0.5〜6.0%含有することを特徴とす
る。
【0022】請求項5記載の高強度耐熱鋼の製造方法
は、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の組成
範囲を有する合金材料を溶解して溶融材料とし、前記溶
融材料を鋳造して鋼塊を得た後、前記鋼塊に鍛造処理を
施し、その後、980〜1120℃の温度に加熱して焼
入れを行い、600〜740℃の温度範囲で焼戻しを1
回以上行う調質熱処理を施すことを特徴とする。
【0023】請求項6記載の高強度耐熱鋼の製造方法
は、請求項5記載の高強度耐熱鋼の製造方法において、
溶融材料にエレクトロスラグ再溶解法(ESR)による
溶解処理を施すことにより鋼塊を得ることを特徴とす
る。
【0024】本発明において、請求項1から4までのよ
うに高靭性耐熱鋼の成分を限定した理由、および前述し
た望ましい組成、さらに望ましい組成とする理由につい
て説明する。なお、以下の説明において組成を表す%
は、特に断らない限り重量比とする。
【0025】C(炭素)はCr(クロム)、Nb(ニオ
ブ)およびV(バナジウム)等と結合して炭化物を形成
して、析出強化に寄与する元素であり、またCは焼入れ
性の向上およびδフェライト生成の抑制に必要不可欠な
元素である。Cの含有量を0.05〜0.30%と規定
したが、0.30%を超えて添加すると炭化物の粗大化
を促進し、長時間でのクリープ破断強度が低下する。ま
た含有量が0.05%未満においては、所望のクリープ
破断強度を確保することができない。
【0026】請求項1〜3記載の発明においては、Cの
含有量を0.05〜0.30%と規定したが、さらに析
出強化および焼入れ性の向上を図るためには、0.07
〜0.25%として狭い範囲に限定するのが好ましく、
さらに好ましくは0.09〜0.20%の範囲に限定す
ると良い。
【0027】Si(ケイ素)は溶解時に脱酸剤として添
加される元素である。Siの含有量を0.20%以下と
したが、0.20%を超えて多量に添加するとSiの一
部が酸化物として鋼中に残留して、靭性が低下してしま
うためである。
【0028】Mn(マンガン)は溶解時に脱酸および脱
硫剤として添加される元素である。Mnの含有量を1.
0%以下と規定したが、1.0%を超えて多量に添加す
るとクリープ破断強度が低下してしまうためである。
【0029】Cr(クロム)は耐酸化性および耐食性を
向上させるとともに固溶強化ならびに析出強化に寄与す
るM23型析出物の構成元素として必要不可欠な元
素である。Crの含有量を8.0〜14.0%と規定し
たが、14.0%を超えると、靭性およびクリープ破断
強度に有害なδフェライトが生成しやすくなってしまう
ためである。また含有量が8.0%未満においては、所
望の特性効果が小さい。
【0030】請求項1〜3記載の発明においては、Cr
の含有量を8.0〜14.0%と規定したが、さらに析
出強化および焼入れ性の向上などを図るためには、9.
0〜13.0%として狭い範囲に限定するのが好まし
く、さらに好ましくは9.5〜12.5%の範囲に限定
すると良い。
【0031】Mo(モリブデン)は固溶強化および炭化
物を構成する元素として必要である。Moの含有量を
0.5〜3.0%と規定したが、3.0%を超えると靭
性を大きく低下させるとともに、δフェライトが生成し
やすくなるためである。また含有量が0.5%未満にお
いては所望の特性効果が小さい。
【0032】請求項1記載の発明においては、Moの含
有量を0.5〜3.0%と規定したが、固溶強化の向上
などを図るためには、0.7〜2.5%として狭い範囲
に限定するのが好ましく、さらに好ましくは0.9〜
2.0%の範囲に限定すると良い。
【0033】また、後述するW(タングステン)はMo
とほぼ同様の作用を持っており、MoとWとを複合添加
する場合にはMoの含有量を低下させる必要があり、こ
の場合にはMoの含有量を0.1〜2.0%と規定し
た。Moの含有量が2.0%を超えると靭性を大きく低
下させるとともに、δフェライトが生成しやすくなり、
一方、含有量が0.1%未満では固溶強化元素および炭
化物元素としての効果が小さいためである。
【0034】請求項3記載の発明においては、Moの含
有量を0.1〜2.0%と規定したが、靭性の向上など
を図るためには、0.2〜1.5%として狭い範囲に限
定するのが好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.2
%の範囲に限定すると良い。
【0035】V(バナジウム)は固溶強化および微細な
バナジウム炭窒化物の形成に寄与する元素である。Vの
添加量が0.10%以上であると、微細析出物がクリー
プ中、主としてマルテンサイトラス境界上に析出して、
回復を抑制するが、Vの含有量は0.10〜0.50%
と規定した。Vの含有量が0.50%を超えるとδフェ
ライトが生成しやすくなり、また含有量が0.10%未
満では固溶量および析出量ともに少なく、上述の効果が
得られないためである。
【0036】請求項1〜3記載の発明においては、Vの
含有量を0.10〜0.50%と規定したが、さらに靭
性の向上などを図るためには、0.10〜0.40%と
して狭い範囲に限定するのが好ましく、さらに好ましく
は0.15〜0.30%の範囲に限定すると良い。
【0037】Ni(ニッケル)は焼入れ性および靭性を
大きく向上させるとともにδフェライトの析出を抑制す
る元素である。Niの含有量を1.0%以下と規定した
が、含有量が1.0%を超えるとクリープ抵抗を低下さ
せるためある。
【0038】請求項1〜3記載の発明においては、Ni
の含有量を1.0%以下と規定したが、さらに焼入れ性
および靭性の向上を図るためには、含有量を0.7%以
下とすることが好ましい。
【0039】Nb(ニオブ)はC(炭素)およびN(窒
素)と結合してNb(C,N)の微細炭窒化物を形成す
ることにより析出分散強化に寄与する元素である。Nb
の含有量を0.01〜0.50%と規定したが、0.5
0%を超えると未固溶の粗大なNb(C,N)が生成し
やすくなり、延性および靭性を低下させるためである。
また、含有量が0.01%未満では析出密度が低いため
上述の効果が得られない。
【0040】請求項1〜3記載の発明においては、Nb
の含有量を0.01〜0.50%と規定したが、さらに
析出分散強化の向上を図るために、Nbの含有量を0.
01〜0.30%として狭い範囲に限定するのが好まし
く、さらに好ましくは0.03〜0.20%の範囲に限
定すると良い。
【0041】N(窒素)は窒化物あるいは炭窒化物を形
成することにより析出強化に寄与し、更に母相中に残存
しているNは固溶強化にも寄与する元素である。Nの含
有量を0.01〜0.08%と規定したが、0.08%
を超えると、窒化物あるいは炭窒化物の粗大化を促進し
クリープ抵抗が低下するとともに延性や靭性が低下する
ためである。また、含有量が0.01%未満では上述し
た効果を得られない。
【0042】請求項1〜3記載の発明においては、Nの
含有量を0.01〜0.08%と規定したが、さらに析
出強化および固溶強化の向上などを図るために、含有量
を0.01〜0.06%として狭い範囲に限定するのが
好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.04%の範
囲に限定すると良い。
【0043】B(ホウ素)は微量の添加により結晶粒界
への析出物の析出を促進するとともに、炭窒化物の高温
長時間安定性を高める元素である。Bの含有量を0.0
01〜0.020%と規定したが、含有量が0.020
%を超えると靭性を大幅に低下させ、更に熱間加工性を
損なうためである。また、含有量が0.001%未満で
は上述した効果を得ることができない。
【0044】請求項1〜3記載の発明においては、Bの
含有量を0.001〜0.020%と規定したが、さら
に析出物の析出を促進などの向上を図るために、Bの含
有量を0.003〜0.015%として狭い範囲に限定
するのが好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.
012%の範囲に限定すると良い。
【0045】Ru(ルテニウム)は固溶強化元素として
クリープ破断強度向上に著しく寄与する元素である。R
uの含有量を0.5〜4.0%を規定したが、4.0%
を超えると靭性を大きく低下させるとともに、δフェラ
イトが生成しやすくなるためである。また、含有量が
0.5%未満では上述した効果が得られない。
【0046】請求項1〜3記載の発明においては、Ru
の含有量を0.5〜4.0%を規定したが、さらにクリ
ープ破断強度を向上させるために、Ruの含有量を0.
5〜3.0%として狭い範囲に限定するのが好ましく、
さらに好ましくは1.0〜2.0%の範囲に限定すると
良い。
【0047】W(タングステン)は固溶強化元素および
炭化物元素として寄与し、またFe(鉄)、Crおよび
Wからなる金属間化合物の形成に寄与する元素である。
Wの含有量を0.5〜6.0%と規定したが、6.0%
を超えるとδフェライトが生成しやすくなるとともに、
靭性および加熱脆化特性を著しく低下するためである。
また、含有量が0.5%未満では、上述した効果が得ら
れないためである。
【0048】請求項2記載の発明においては、Wの含有
量を0.5〜6.0%と規定したが、さらに固溶強化の
向上を図るために、Wの含有量を1.0〜5.0%とし
て狭い範囲に限定するのが好ましく、さらに好ましくは
2.0〜4.0%の範囲に限定すると良い。
【0049】また、前述したMoもWとほぼ同様の作用
を持っており、MoとWとを複合添加する場合にはWの
添加量を低下させる必要がある。この場合には、Wの含
有量を0.3〜5.0%と規定した。5.0%を超える
と靭性を大きく低下させるとともに、δフェライトが生
成しやすくなり、一方、Wの添加量が0.3%未満では
固溶強化元素および炭化物元素としての効果が小さくな
るためである。MoとWとを複合添加する場合、請求項
3記載の発明においては、Wの含有量を0.3〜5.0
%と規定したが、さらに固溶強化などの向上を図るため
に、Wの含有量を0.5〜3.0%として狭い範囲に限
定するのが好ましく、さらに好ましくは1.0〜2.5
%の範囲に限定すると良い。
【0050】Co(コバルト)は固溶強化に寄与し、更
にδフェライトの生成を抑制する元素であり、必要に応
じて添加される元素である。Coの含有量を0.5〜
6.0%と規定したが、6.0%を超えると加工性を損
なうためである。また含有量が0.5%未満では上述し
た効果が得られないためである。
【0051】また、上述した成分ならびに主成分である
Feを添加する際に、付随的に混入する不純物は極力低
減することが望ましい。
【0052】本発明における高強度耐熱鋼の製造方法に
ついて、調質熱処理における熱処理条件の限定理由を説
明する。
【0053】焼入れは耐熱鋼に優れた強度を付与するた
めに必要な熱処理であり、本発明においては、焼入れの
加熱温度を980〜1120℃と規定した。加熱温度が
980℃未満ではオーステナイト化が十分ではなく焼入
れが不可能となる。一方、1120℃を超えるとオース
テナイト結晶粒が著しく粗大化し、延性を低下させてし
まうためである。
【0054】焼戻しは耐熱鋼を所望の強度に調整するた
めに、1回以上行うことが必要な熱処理であり、本発明
においては、焼戻しの加熱温度を600〜740℃と規
定した。本耐熱鋼の場合、その加熱温度が600℃未満
では主にFe、Cr、Mo、Wからなる金属間化合物が
マルテンサイトラス内に大量に析出し、高温長時間のク
リープ破断強度を支える結晶粒界あるいはマルテンサイ
トラス境界上の析出物の体積率が低下する。一方、加熱
温度が740℃を超えるとマルテンサイトラス内の主に
Nb、CおよびNからなる析出物の析出密度が低下する
とともに焼戻しが過剰になり、かつオーステナイトへの
変態点に接近するためである。
【0055】また、本発明の高強度耐熱鋼の製造方法に
おいて、耐熱鋼素体を構成する鋼塊をエレクトロスラグ
再溶解法を用いて製造する理由を説明する。
【0056】蒸気タービン用ロータに代表される大型素
材においては、鋼塊凝固時に添加元素の偏析や凝固組織
の不均一を生じやすい。特に、材料特性の向上を狙って
種々の元素を添加していくと、鋼塊中心部の偏析傾向が
高まり、耐熱鋼素体中心部の延性や靭性が低下する傾向
がある。本発明における高強度耐熱鋼の製造方法に係わ
る耐熱鋼素体を構成する鋼塊は真空カーボン脱酸などに
代表される通常の方法でも製造可能であるが、均質およ
び清浄な鋼塊を得るためにエレクトロスラグ再溶解法を
用いることが好ましい。
【0057】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る高強度耐熱鋼
およびその製造方法の実施形態について、実施例と比較
例とともに説明する。
【0058】第1実施形態(表1〜4;実施例1〜4、
従来例、比較例) 本実施形態においては、本発明の組成範囲にある材料か
ら製造された高強度耐熱鋼が優れた引張強さおよび長時
間組織安定性を有することの確認を行った。
【0059】本実施形態の実施例として、表1に示す化
学組成範囲の試料を用いた。
【0060】
【表1】
【0061】表1に示すように、試料No.1から試料
No.52までは本発明の組成範囲にある合金材料であ
る。
【0062】実施例1(表1〜2;試料No.1〜N
o.30) 本実施例では、表1の試料No.1〜No.30に示す
組成範囲の合金材料を用いた。具体的には、重量比で、
C:0.05〜0.30%、Si:0.20%以下、M
n:1.0%以下、Cr:8.0〜14.0%、Mo:
0.5〜3.0%、V:0.10〜0.50%、Ni:
1.0%以下、Nb:0.01〜0.50%、N:0.
01〜0.08%、B:0.001〜0.020%、R
u:0.5〜4.0%を含み、残部がFeおよび不可避
的不純物から構成される。
【0063】このような組成範囲にある試料No.1〜
No.30を50kgの真空高周波誘導電気炉にて溶解
および鋳造を行い、鋼塊を製造した。その後、1200
℃に加熱してプレス鍛造を行い、直径60mmの丸棒に
鍛伸した。それぞれの丸棒に対し、1070℃の温度で
焼入れを行い、690℃の温度で焼戻しを行う調質熱処
理を施した。
【0064】なお、温度1070℃での焼入れおよび温
度690℃での焼戻しを行う調質熱処理の条件は、後述
する表5に示す熱処理No.1である。
【0065】こうして得られた丸棒試料材より試験片を
切り出し、室温における引張試験、シャルピー衝撃試験
およびクリープ破断試験に供し、引張強さ、0.02%
耐力、伸び、絞り、後述するFATTおよび620℃に
おける105時間破断強度を求めた。また、各試料材に
対し620℃、3000時間の時効を施し、時効後のF
ATTも求めた。
【0066】なお、引張試験、シャルピー衝撃試験およ
びクリープ破断試験は、以下に説明するように、引張強
度、靭性、延性およびクリープ破断強度などの特性を評
価することができる。
【0067】引張試験は試験を行う試料の引張強さ、耐
力、伸びおよび絞りなどを求めることを目的とする材料
試験である。引張強さおよび耐力は供試材の引張強度
を、伸びおよび絞りは試料の延性を表し、それぞれの値
が大きい方が特性としては優れている。
【0068】クリープ破断試験は試験を行う試料のクリ
ープ破断強度などを求めることを目的とする材料試験で
ある。クリープ破断強度はクリープ破断時間と対応する
特性であり、クリープ破断時間が長ければ、それに応じ
てクリープ破断強度も高くなる。また、複数の試験片の
クリープ破断試験結果(試験温度、試験応力および破断
時間)をラーソン・ミラー・パラメータで整理すること
により、種々の温度におけるクリープ破断強度(105
時間破断強度など)を求めることができる。
【0069】シャルピー衝撃試験は試験を行う試料の衝
撃値およびFATT(衝撃試験片の破面率から求めた延
性−脆性遷移温度)などを求めることを目的とする材料
試験である。一般に「衝撃値」といった場合は、室温
(20℃)における特性をいう。衝撃値(衝撃的な力が
加わったときの壊れにくさ、すなわち靭性を表す)は引
張性質と同様に、値が大きい方が特性が優れている。ま
た、本発明における試料は温度によって衝撃値が変化
し、同一の試料においても、温度の高い領域では衝撃値
は大きく破面は延性破面を呈しているが、逆に温度の低
い領域では衝撃値は小さく、破面は脆性破面を呈してい
るこれらの中間温度域では、延性破面と脆性破面が混在
している。この両方の破面の面積率を計算し、ちょうど
50%−50%になるような温度を求め、この温度をF
ATTとしている。従って、FATTの値は小さい方が
靭性が高い。
【0070】本実施例における各種試験結果を表2の試
料No.1〜No.30に示す。
【0071】
【表2】
【0072】実施例2(表1〜2;試料No.31〜N
o.36) 本実施例では、表1の試料No.31〜No.36に示
す組成範囲の合金材料を用いた。具体的には、重量比
で、C:0.05〜0.30%、Si:0.20%以
下、Mn:1.0%以下、Cr:8.0〜14.0%、
W:0.5〜6.0%、V:0.10〜0.50%、N
i:1.0%以下、Nb:0.01〜0.50%、N:
0.01〜0.08%、B:0.001〜0.020
%、Ru:0.5〜4.0%を含み、残部がFeおよび
不可避的不純物から構成される。
【0073】このような組成範囲にある試料No.31
〜No.36を実施例1と同様の処理を施した後、丸棒
試料を得た。この丸棒試料より試験片を切り出し、室温
における引張試験、シャルピー衝撃試験およびクリープ
破断試験に供し、引張強さ、0.02%耐力、伸び、絞
り、FATTおよび620℃における105時間破断強
度を求めた。また、試料に対し620℃、3000時間
の時効を施し、時効後のFATTも求めた。その結果を
表2における試料No.31〜No.36に示す。
【0074】実施例3(表1〜2;試料No.37〜N
o.46) 本実施例では、表1の試料No.37〜No.46に示
す組成範囲の合金材料を用いた。具体的には、重量比
で、C:0.05〜0.30%、Si:0.20%以
下、Mn:1.0%以下、Cr:8.0〜14.0%、
Mo:0.1〜2.0%、W:0.3〜5.0%、V:
0.10〜0.50%、Ni:1.0%以下、Nb:
0.01〜0.50%、N:0.01〜0.08%、
B:0.001〜0.020%、Ru:0.5〜4.0
%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物から構成さ
れる。
【0075】このような組成範囲にある試料No.37
〜No.46を実施例1と同様の処理を施した後、丸棒
試料材を得た。この丸棒試料材より試験片を切り出し、
室温における引張試験、シャルピー衝撃試験およびクリ
ープ破断試験に供し、引張強さ、0.02%耐力、伸
び、絞り、FATTおよび620℃における105時間
破断強度を求めた。また、各試料材に対し620℃、3
000時間の時効を施し、時効後のFATTも求めた。
その結果を表2における試料No.37〜No.46に
示す。
【0076】実施例4(表1〜2;試料No.47〜N
o.52) 本実施例では、表1の試料No.47〜No.52に示
す組成範囲の合金材料を用い、特にCoを0.5〜6.
0%の範囲で添加したものである。
【0077】具体的には、表1の試料No.47では、
重量比で、C:0.13%、Si:0.09%、Mn:
0.19%、Cr:10.49%、Mo:1.15%、
Mo:1.15%、V:0.22%、Ni:0.17%
以下、Nb:0.07%、N:0.019%、B:0.
011%、Co:2.94%を含み、残部がFeおよび
不可避的不純物から構成される。
【0078】このような組成範囲にある試料を実施例1
と同様の処理を施した後、丸棒試料材を得た。この丸棒
試料材より試験片を切り出し、室温における引張試験、
シャルピー衝撃試験およびクリープ破断試験に供し、引
張強さ、0.02%耐力、伸び、絞り、FATTおよび
620℃における105時間破断強度を求めた。また、
各試料材に対し620℃、3000時間の時効を施し、
時効後のFATTも求めた。その結果を表2における試
料No.47〜No.52に示す。
【0079】従来例(表3〜4;試料No.61〜N
o.63) 次に、本実施形態の従来例として、表3の試料No.6
1〜No.63に示す組成範囲の合金材料を用いた。
【0080】
【表3】
【0081】表3に示す比較例のうち、試料No.61
は特公昭60−54385に開示されている組成範囲に
ある高Crフェライト系耐熱鋼である。また、試料N
o.62は特開平4−147948に、試料No.63
は特開平8−3697に開示されている組成範囲にある
高Crフェライト系耐熱鋼である。
【0082】これらの試料No.61〜No.63まで
の組成範囲にある試料を50kgの真空高周波誘導電気
炉にて溶解および鋳造後、1200℃に加熱してプレス
鍛造を行い、直径60mmの丸棒に鍛伸した。その後、
それぞれの丸棒に対し、1070℃の温度で焼入れを行
い、690℃の温度で焼戻しを行う調質熱処理を施し
た。
【0083】なお、温度1070℃での焼入れおよび温
度690℃での焼戻しを行う調質熱処理の条件は、後述
する表3に示す熱処理No.1である。
【0084】こうして得られた丸棒試料材より試験片を
切り出し、室温における引張試験、シャルピー衝撃試験
およびクリープ破断試験に供し、引張強さ、0.02%
耐力、伸び、絞り、FATTおよび620℃における1
05時間破断強度を求めた。また、各試料材に対し62
0℃、3000時間の時効を施し、時効後のFATTも
求めた。その結果を表4のNo.61〜No.63に示
す。
【0085】
【表4】
【0086】比較例(表3〜4;試料No.64〜N
o.84) 表2に示した試料No.64から試料No.84まで
は、組成範囲が本発明の範囲に入らない合金材料であ
り、比較例として挙げられている。
【0087】これらの試料No.64〜No.84の組
成範囲にある試料を50kgの真空高周波誘導電気炉に
て溶解および鋳造後、1200℃に加熱してプレス鍛造
を行い、直径60mmの丸棒に鍛伸した。その後、それ
ぞれの丸棒に対し、1070℃の温度で焼入れを行い、
690℃の温度で焼戻しを行う調質熱処理を施した。
【0088】なお、温度1070℃での焼入れおよび温
度690℃での焼戻しを行う調質熱処理の条件は、後述
する表3に示す熱処理No.1である。
【0089】こうして得られた丸棒試料材より試験片を
切り出し、室温における引張試験、シャルピー衝撃試験
およびクリープ破断試験に供し、引張強さ、0.02%
耐力、伸び、絞り、FATTおよび620℃における1
05時間破断強度を求めた。また、各試料材に対し62
0℃、3000時間の時効を施し、時効後のFATTも
求めた。その結果を表4のNo.64〜No.84に示
す。
【0090】本実施形態において、以下のことが判明し
た。
【0091】まず、本発明の組成範囲にある実施例のN
o.1から試料No.52までの合金材料から製造され
る高強度耐熱鋼と、従来例の試料No.61から試料N
o.63までの合金材料から製造される高Crフェライ
ト系耐熱鋼を比較する。
【0092】引張強さおよび0.02%耐力において、
試料No.1から試料No.52はいずれも試料No.
61から試料No.63と同等の値を示している。一
方、FATTにおいては、試料No.1から試料No.
52はいずれも試料No.61から試料No.63と同
等もしくはやや上回る値を示しており、靭性はやや劣る
ことがわかる。しかし、620℃、3000時間後のF
ATTを比較すると、試料No.1から試料No.52
はいずれも試料No.61から試料No.63と同等も
しくはやや下回る値を示しており、実際に高温雰囲気下
で長時間使用した場合でも靭性を高く維持できることが
わかる。また、クリープ破断強度においては、試料N
o.1から試料No.52はいずれも試料No.61か
ら試料No.63を上回る値を示し、非常に優れたクリ
ープ破断強度を有することがわかる。なお、伸びおよび
絞りにおいては、試料No.1から試料No.52は試
料No.61から試料No.63とほぼ同等の値を示し
ており、十分な延性を有していることがわかる。
【0093】表4に示すように、化学組成が本発明の範
囲に入らない比較例の合金材料から製造された耐熱鋼で
ある試料No.64から試料No.84までにおいて
は、引張強度、靭性およびクリープ破断強度ともに優れ
た試料は見られない。すなわち試料No.64、66、
67、68、70、72、73、75、77、79およ
び試料No.81はクリープ破断強度が低い。また、試
料No.65、67、69、71、74、76、78、
80、82、83および84は靭性が低く、試料No.
74および試料No.85は引張強度が低くなってい
る。
【0094】すなわち、本発明に係わる高強度耐熱鋼
は、従来より高温高圧部材して使用されている高Crフ
ェライト系耐熱鋼を上回るクリープ破断強度を有し、ま
た、優れた特性を長時間にわたって維持できる。
【0095】このことから、合金材料の組成を本発明の
化学組成の範囲に調整することにより、優れた特性を備
えた高強度耐熱鋼が得られることが明らかである。
【0096】第2実施形態(表5〜6;実施例1〜3、
比較例1〜3) 本実施形態においては、特に熱処理の影響について説明
する。
【0097】具体的には、本実施形態の製造方法におい
て、調質熱処理の温度を規定することにより、高強度耐
熱鋼が優れた引張強さおよび長時間組織安定性を有する
ことの確認を行った。
【0098】調質熱処理の条件としては、表5に示す焼
入れおよび焼戻しを行った。
【0099】
【表5】
【0100】表5の熱処理No.1から熱処理No.8
までに示すように、980〜1120℃の温度範囲に加
熱して焼入れを行い、600〜740℃の温度範囲で焼
戻しを1回あるいは2回行った。なお熱処理No.1〜
No.4は、本発明の温度範囲内の熱処理条件であり、
熱処理No.5〜No.8は、本発明の温度範囲内にな
い熱処理条件の比較例である。
【0101】また本実施形態においては、試料として、
第1実施形態における表1のなかで、試料No.1、試
料No.31および試料No.51の組成範囲を有する
合金材料を用いた。
【0102】実施例1(表5〜6;試料No.1) 実施例1では、表1に示す試料No.1を用いた。
【0103】試料No.1の組成範囲にある試料を50
kgの真空高周波誘導電気炉にて溶解および鋳造を行
い、鋼塊を製造した。その後、1200℃に加熱してプ
レス鍛造を行い、直径60mmの丸棒に鍛伸した。それ
ぞれの丸棒に対し、熱処理No.1〜No.4までの調
質熱処理を施した。
【0104】こうして得られた丸棒試料材より試験片を
切り出し、室温における引張試験、シャルピー衝撃試験
およびクリープ破断試験に供し、引張強さ、0.02%
耐力、伸び、絞り、FATT、620℃における105
時間破断強度を求めた。また、各供試材に対し620
℃、3000時間の時効を施し、時効後のFATTも求
めた。その結果を表6に示した。
【0105】
【表6】
【0106】実施例2(表5〜6;試料No.31) 実施例2では、表1に示す試料No.31を用いた。
【0107】なおその他の製造方法は、実施例1と同様
である。その結果を表6に示した。
【0108】実施例3(表5〜6;試料No.51) 実施例2では、表1に示す試料No.51を用いた。
【0109】なおその他の製造方法は、実施例1と同様
である。その結果を表6に示した。
【0110】比較例1(表5〜6;試料No.1) 比較例1では、表1に示す試料No.1を用いた。
【0111】試料No.1の組成範囲にある試料を50
kgの真空高周波誘導電気炉にて溶解および鋳造を行
い、鋼塊を製造した。その後、1200℃に加熱してプ
レス鍛造を行い、直径60mmの丸棒に鍛伸した。それ
ぞれの丸棒に対し、熱処理No.5〜8までの、本発明
に係わる高強度耐熱鋼の製造方法に記載の熱処理条件に
入らない調質熱処理を施した。
【0112】こうして得られた丸棒試料材より試験片を
切り出し、室温における引張試験、シャルピー衝撃試験
およびクリープ破断試験に供し、引張強さ、0.02%
耐力、伸び、絞り、FATT、620℃における105
時間破断強度を求めた。また、各供試材に対し620
℃、3000時間の時効を施し、時効後のFATTも求
めた。その結果を表6に示した。
【0113】比較例2(表5〜6;試料No.31) 比較例2では、表1に示す試料No.31を用いた。
【0114】なおその他の製造方法は、比較例1と同様
である。その結果を表6に示した。
【0115】比較例3(表5〜6;試料No.51) 比較例3では、表1に示す試料No.51を用いた。
【0116】なお、その他の製造方法は、比較例1と同
様である。その結果を表6に示した。
【0117】本実施形態によれば、熱処理No.1(1
070℃焼入れ、690℃焼戻し)により、本発明に係
わる高強度耐熱鋼において優れたクリープ破断強度が得
られ、優れた特性を長時間維持できることは第1実施形
態で述べたので、以下、熱処理No.2から熱処理N
o.4について述べる。
【0118】表5に示すように、熱処理No.2は熱処
理No.1(1070℃焼入れ、690℃焼戻し)に対
して、570℃における1回目の焼戻しを加えたもので
ある。熱処理No.1を施した場合と比較して、熱処理
No.2により、試料No.1、試料No.31、試料
No.45のいずれにおいても0.02%耐力が上昇
し、FATTおよびクリープ破断強度がほとんど変化し
ないことがわかった。すなわち、2回目の焼戻しは引張
強度を上昇させる効果を持っており、本発明に係わる高
強度耐熱鋼を製造する際には2回の焼戻しを行うことが
より好ましい。
【0119】熱処理No.3および熱処理No.4は、
熱処理No.2(1070℃焼入れ、570℃の1回目
焼戻し、690℃の2回目焼戻し)に対して、焼入れ温
度および2回目焼戻し温度を本発明に係わる高強度耐熱
鋼の製造方法に記載の熱処理条件の範囲で変化させたも
のである。熱処理熱処理No.3および熱処理No.4
を施した場合においても、熱処理熱処理No.2を施し
た場合とほぼ遜色のない優れた特性が得られることがわ
かる。
【0120】また、本発明の温度範囲内にない熱処理条
件である熱処理No.5〜No.8を施した場合、試料
No.1、試料No.31、試料No.51のいずれに
おいても引張強度、靭性およびクリープ破断強度ともに
優れたものは見られない。すなわち熱処理No.5およ
び熱処理No.8を施した場合は引張強度とともにクリ
ープ破断強度が低く、熱処理No.6を施した場合は靭
性が低く、熱処理No.7を施した場合はクリープ破断
強度とともに靭性が低い。
【0121】本実施形態によれば、焼入れおよび1回以
上の焼戻しにおける熱処理条件を本発明に記載の範囲に
調整することにより、優れた特性を有する高強度耐熱鋼
が得られることが明らかである。
【0122】第3実施形態(表7〜8;実施例、比較
例) 本実施形態においては、特に高強度耐熱鋼素体を形成す
る鋼塊をエレクトロスラグ再溶解法を用いて製造する効
果について説明する。
【0123】本実施形態では、表7に示す4種類の試料
No.91〜No.94を用いた。
【0124】
【表7】
【0125】表7に示すように、これらはすべて本発明
における鋼強度耐熱鋼の組成範囲の鋼であり、試料N
o.91は試料No.93とほぼ同一の化学組成を有
し、試料No.92は試料No.94とほぼ同一の化学
組成を有する。
【0126】実施例(表7〜8;試料No.91,N
o.92) 本実施例においては、試料No.91および試料No.
92の組成を有する合金材料を電気炉溶解後、エレクト
ロスラグ再溶解の電極用モールドに鋳込み、次いでその
鋳塊を消耗電極としてエレクトロスラグ再溶解を実施し
て鋼塊を製造し、1200℃に加熱してプレス鍛造を行
い、1000mmφ×800mmの大型丸棒素材を得
た。
【0127】こうして得られた試料材の表層部並びに中
心部より試験片を切り出し、室温における引張試験、シ
ャルピー衝撃試験及びクリープ破断試験に供し、引張強
さ、0.02%耐力、伸び、絞り、FATT、620℃
における105時間破断強度を求めた。その結果を表8
に示す。
【0128】
【表8】
【0129】比較例(表7〜8;試料No.93,N
o.94) 本比較例においては、試料No.93および試料No.
94の組成を有する合金材料を電気炉溶解後、真空カー
ボン脱酸を実施して鋼塊を製造し、1200℃に加熱し
てプレス鍛造を行い、1000mmφ×800mmの大
型丸棒素材を得た。これら試料No.93〜No.94
の大型丸棒素材に対し、1070℃における焼入れ、5
70℃における1回目の焼戻しおよび690℃における
2回目の焼戻しを施した。
【0130】こうして得られた試料材の表層部並びに中
心部より試験片を切り出し、室温における引張試験、シ
ャルピー衝撃試験およびクリープ破断試験に供し、引張
強さ、0.02%耐力、伸び、絞り、FATT、620
℃における105時間破断強度を求めた。その結果を表
8に示す。
【0131】本実施形態における実施例では、表層部と
中心部の引張強さ、0.02%耐力、伸び、絞り、FA
TTおよびクリープ破断強度はほぼ同等である。一方、
比較例では、表層部と中心部の引張強さ、0.02%耐
力、クリープ破断強度はほぼ同等であるが、伸び、絞り
は中心部において低下し、FATTは中心部において上
昇する傾向が見られる。また、この傾向は合金元素をよ
り多く添加した試料No.94において著しい。すなわ
ち、特に合金元素を多く添加した場合、本発明に係わる
高強度耐熱鋼素体を形成する鋼塊をエレクトロスラグ再
溶解法を用いて製造することにより、表層部と中心部の
引張強度、延性、靭性、クリープ破断強度に差がない均
質な大型耐熱鋼素材が得られることが明らかである。
【0132】
【発明の効果】以上で説明したように、本発明によれ
ば、高温高圧環境下において高強度耐熱鋼は、高いクリ
ープ破断強度、靭性および延性などの特性が優れるとと
もに、その優れた特性を長時間にわたって維持できるこ
とから、長時間にわたり高い信頼性を発揮し、蒸気ター
ビンの性能および運転性の向上に貢献できる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比で、C:0.05〜0.30%、
    Si:0.20%以下(0を含まない)、Mn:1.0
    %以下(0を含まない)、Cr:8.0〜14.0%、
    Mo:0.5〜3.0%、V:0.10〜0.50%、
    Ni:1.0%以下(0を含まない)、Nb:0.01
    〜0.50%、N:0.01〜0.08%、B:0.0
    01〜0.020%、Ru:0.5〜4.0%を含み、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴と
    する高強度耐熱鋼。
  2. 【請求項2】 重量比で、C:0.05〜0.30%、
    Si:0.20%以下(0を含まない)、Mn:1.0
    %以下(0を含まない)、Cr:8.0〜14.0%、
    W:0.5〜6.0%、V:0.10〜0.50%、N
    i:1.0%以下(0を含まない)、Nb:0.01〜
    0.50%、N:0.01〜0.08%、B:0.00
    1〜0.020%、Ru:0.5〜4.0%を含み、残
    部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とす
    る高強度耐熱鋼。
  3. 【請求項3】 重量比で、C:0.05〜0.30%、
    Si:0.20%以下(0を含まない)、Mn:1.0
    %以下(0を含まない)、Cr:8.0〜14.0%、
    Mo:0.1〜2.0%、W:0.3〜5.0%、V:
    0.10〜0.50%、Ni:1.0%以下(0を含ま
    ない)、Nb:0.01〜0.50%、N:0.01〜
    0.08%、B:0.001〜0.020%、Ru:
    0.5〜4.0%を含み、残部がFeおよび不可避的不
    純物からなることを特徴とする高強度耐熱鋼。
  4. 【請求項4】 請求項1から請求項3までに記載の高強
    度耐熱鋼において、重量比で、Coを0.5〜6.0%
    含有することを特徴とする高強度耐熱鋼。
  5. 【請求項5】 請求項1から請求項4までのいずれかに
    記載の組成範囲を有する合金材料を溶解して溶融材料と
    し、前記溶融材料を鋳造して鋼塊を得た後、前記鋼塊に
    鍛造処理を施し、その後、980〜1120℃の温度に
    加熱して焼入れを行い、600〜740℃の温度範囲で
    焼戻しを1回以上行う調質熱処理を施すことを特徴とす
    る高強度耐熱鋼の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の高強度耐熱鋼の製造方法
    において、溶融材料にエレクトロスラグ再溶解法による
    溶解処理を施すことにより鋼塊を得ることを特徴とする
    高強度耐熱鋼の製造方法。
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