JPH11200012A - 耐摩耗性及び摺動性に優れた硬質皮膜及びその形成方法 - Google Patents
耐摩耗性及び摺動性に優れた硬質皮膜及びその形成方法Info
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- JPH11200012A JPH11200012A JP568498A JP568498A JPH11200012A JP H11200012 A JPH11200012 A JP H11200012A JP 568498 A JP568498 A JP 568498A JP 568498 A JP568498 A JP 568498A JP H11200012 A JPH11200012 A JP H11200012A
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Abstract
残留応力による硬質皮膜剥離が生じ難く、密着性に優れ
ている硬質皮膜及びその形成方法を提供する。 【解決手段】 C,C−H,C−N,C−N−H,B−
Nの何れかを基礎とする硬質皮膜であって、前記皮膜中
にFe,Co,Ni,Cuの1種以上を0.1 〜30at%含有してな
ることを特徴とする耐摩耗性及び摺動性に優れた硬質皮
膜、並びに、かかる皮膜をアークイオンプレーティング
法により形成する方法及びイオンビーム法により形成す
る方法。
Description
性に優れた硬質皮膜及びその形成方法に関し、より詳細
には、工具や摺動部材等に用いられる耐摩耗性及び摺動
性に優れた硬質皮膜及びその形成方法に関する技術分野
に属する。
はB−Nを基礎とする硬質皮膜としては、立方晶BN
(以下、cBNという)、ダイヤモンド、ダイヤモンド
ライクカーボン(以下、DLCという)よりなる皮膜が
あり、又、最近ではダイヤモンドを上回る硬度を有する
と予想されるCN系化合物皮膜がある。これらの皮膜
は、ダイヤモンドを除くとその多くがスパッタリング、
イオンプレーティング、イオンビーム蒸着等のPVD
法、或いは、熱CVD法、プラズマCVD法、マイクロ
波CVD法により、その合成が検討されている。しかし
ながら、これらの硬質皮膜には、皮膜形成時に大きな残
留応力が存在し(発生し)、その残留応力によって皮膜
が基板より剥離するという問題点があることが知られて
おり、又、そのために厚膜化ができないという問題点が
あり、工業的な適用が進んでいない。
て、鉄基合金や超硬合金等よりなる基板材料よりも、上
記硬質皮膜との密着性に優れた物質を中間層として形成
すること、あるいは基材を硬質皮膜との密着性に優れた
物質に変更することにより、硬質皮膜の剥離を抑制しよ
うとする方法が提案されている。
善するために4、5、6A族の元素又はAlの窒化物、炭
化物を中間層として形成する方法(特開平4-120265号公
報に記載の方法)、超硬合金基材を窒化処理した後、ほ
う化処理し、その表面に硬質皮膜を形成する方法(特開
平4-124283号公報に記載の方法)、SiC を基材として使
用する方法(特開平5-39563 号公報に記載の方法)が提
示されている。DLC皮膜の場合には、AlあるいはSiを
中間層として形成する方法が公知である(仁平他:東京
都立工業センター研究報告第25号(1996), P13 )。
の4B族元素を添加して硬質皮膜と基材との密着性向上
を図る方法が開示されている(特公平6-952 号公報)。
又、硬質皮膜中にTi,Zr,Cr,Nb,Mo,Hf,Ta,W等の
元素を添加することにより、硬質皮膜と基材との密着性
向上を図る方法が開示されている(特開平6-212429号公
報)。
質皮膜形成時の残留応力による硬質皮膜剥離という問題
点を解消し得ず、硬質皮膜の密着性は不充分であり、厚
膜化ができず、工業的使用に耐え得る硬質皮膜は得られ
ない。特に、基板に入射する粒子のエネルギーがCVD
法に比べて高いPVD法により硬質皮膜を形成する場合
には、硬質皮膜形成時の残留応力が大きくなるので、残
留応力による硬質皮膜の剥離が起こり易く、硬質皮膜の
密着性が著しく損なわれ、不充分となり、工業的使用に
耐え得る密着性及び厚さを有する硬質皮膜の形成は全く
困難である。
情に着目してなされたものであって、その目的は、前記
従来技術における硬質皮膜に比較し、硬質皮膜形成時の
残留応力による硬質皮膜剥離が生じ難く、密着性に優れ
ている硬質皮膜及びその形成方法を提供しようとするも
のである。
めに、本発明に係る硬質皮膜及びその形成方法は、請求
項1記載の硬質皮膜、請求項2〜3記載の硬質皮膜の形
成方法としており、それは次のような構成としたもので
ある。即ち、請求項1記載の硬質皮膜は、C,C−H,
C−N,C−N−H,B−Nの何れかを基礎とする硬質
皮膜であって、前記皮膜中にFe,Co,Ni,Cuよりなる群
から選択される1種又は2種以上の元素を0.1 〜30at%
含有してなることを特徴とする耐摩耗性及び摺動性に優
れた硬質皮膜である(第1発明)。
e,Co,Ni,Cuよりなる群から選択される1種又は2種
以上の元素とC,C−H,C−N,C−N−H,B−N
の何れか1種とを含有する固体状蒸発源を用い、アーク
イオンプレーティング法により、Fe,Co,Ni,Cuよりな
る群から選択される1種又は2種以上の元素を0.1 〜30
at%含有する、C,C−H,C−N,C−N−H,B−
Nの何れかを基礎とする硬質皮膜を基材表面に形成する
ことを特徴とする耐摩耗性及び摺動性に優れた硬質皮膜
の形成方法である(第2発明)。
e,Co,Ni,Cuよりなる群から選択される1種又は2種
以上の元素を電子ビームにより蒸発させると共に、C,
C−H,C−N,C−N−H,B−Nの何れか1種を含
有するイオンビームを照射することにより、Fe,Co,N
i,Cuよりなる群から選択される1種又は2種以上の元
素を0.1 〜30at%含有する、C,C−H,C−N,C−
N−H,B−Nの何れかを基礎とする硬質皮膜を基材表
面に形成することを特徴とする耐摩耗性及び摺動性に優
れた硬質皮膜の形成方法である(第3発明)。
施する。アークイオンプレーティング用の固体状蒸発源
として、Fe,Co,Ni,Cuよりなる群から選択される1種
又は2種以上の元素(以下、本発明に係る添加元素とい
う)とC,C−H,C−N,C−N−H,B−Nの何れ
か1種(以下、硬質皮膜基礎成分という)とを含有する
固体状蒸発源を用い、アークイオンプレーティング法に
より、硬質皮膜を基材表面に形成する。このとき、固体
状蒸発源における本発明に係る添加元素と硬質皮膜基礎
成分との配合割合は、形成される硬質皮膜中における本
発明に係る添加元素の割合が0.1 〜30at%となるように
する。このようにすると、本発明に係る硬質皮膜を基材
表面に形成することができる。
C,C−H,C−N,C−N−H,B−Nの何れかを基
礎とする硬質皮膜であって、前記皮膜中にFe,Co,Ni,
Cuよりなる群から選択される1種又は2種以上の元素を
0.1 〜30at%含有してなることを特徴とする耐摩耗性及
び摺動性に優れた硬質皮膜である。即ち、本発明に係る
硬質皮膜は、硬質皮膜基礎成分を基礎とする硬質皮膜で
あって、この皮膜中に本発明に係る添加元素を0.1 〜30
at%含有してなるものである(第1発明)。
成時に生じる硬質皮膜の固有応力を大幅に低減させ、そ
のため硬質皮膜の残留応力を著しく低減させ、ひいては
残留応力による硬質皮膜剥離を抑制し、硬質皮膜の密着
性を著しく向上させる作用がある。従って、本発明に係
る硬質皮膜は、前記従来技術における硬質皮膜に比較
し、硬質皮膜形成時の残留応力による硬質皮膜剥離が極
めて生じ難く、密着性に著しく優れている。
種CVD法により形成される。これらのPVD法やCV
D法は気相からの蒸着法である。通常、かかる気相から
の蒸着法により形成される皮膜に発生する残留応力は、
成膜時の温度上昇による基板と皮膜との熱膨張率差に起
因する熱応力と、皮膜自身が有している固有応力とに分
類される。
C−N−H,B−Nの1種)を基礎とする硬質皮膜の場
合には、硬質皮膜自身が有している固有応力による残留
応力の占める割合が圧倒的に大きく、硬質皮膜自身の固
有応力に起因する残留応力が支配的である。そのため、
基板として硬質皮膜の熱膨張率に近い熱膨張率を有する
基板、例えばセラミック等を用いても、残留応力を低減
させることは困難である。従って、残留応力を低減させ
るためには、硬質皮膜形成時に生じる硬質皮膜の固有応
力を緩和し、低減させることが必要である。
を低減させて残留応力を低減させ、それにより硬質皮膜
の剥離を防止し、密着性を向上させることを目的とし
て、鋭意研究を重ねた。その結果、硬質皮膜基礎成分
(C,C−H,C−N,C−N−H,B−Nの1種)を
基礎とする硬質皮膜を形成する際に、硬質皮膜中に前記
本発明に係る添加元素(Fe,Co,Ni,Cuよりなる群から
選択される1種又は2種以上の元素)を0.1 〜30at%含
有させることにより、硬質皮膜形成時に生じる硬質皮膜
の固有応力を大幅に低減させ、そのため硬質皮膜の残留
応力を著しく低減させ、ひいては残留応力による硬質皮
膜剥離を抑制し、硬質皮膜の密着性を著しく向上させる
ことができ、従って、前記従来技術における硬質皮膜に
比較し、硬質皮膜形成時の残留応力が著しく小さく、硬
質皮膜形成時の残留応力による硬質皮膜剥離が極めて生
じ難く、密着性に著しく優れた硬質皮膜が得られること
を見出した。
成されたものであり、本発明に係る硬質皮膜は、前述の
如く、硬質皮膜基礎成分(C,C−H,C−N,C−N
−H,B−Nの1種)を基礎とする硬質皮膜であって、
この皮膜中に本発明に係る添加元素(Fe,Co,Ni,Cuよ
りなる群から選択される1種又は2種以上の元素)を0.
1 〜30at%含有してなるものとしている。従って、本発
明に係る硬質皮膜は、前記従来技術における硬質皮膜に
比較し、硬質皮膜形成時の残留応力が著しく小さく、硬
質皮膜形成時の残留応力による硬質皮膜剥離が極めて生
じ難く、密着性に著しく優れている。
元素の含有量を0.1 〜30at%としているのは、0.1 at%
未満にすると硬質皮膜形成時の残留応力の低減の程度が
小さくて不充分であり、ひいては硬質皮膜の密着性が低
下して不充分となり、一方、30at%超にすると硬質皮膜
の硬さが低下し、硬質皮膜の耐摩耗性が低下して不充分
となり、硬質皮膜として有するべき基本特性が損なわれ
るからである。
ては、0.1 〜10at%とすることが望ましい。それは、10
〜30at%の場合には硬質皮膜の耐摩耗性が不充分とはな
らないものの、硬質皮膜の耐摩耗性が比較的低下する傾
向にあり、これに対し、0.1〜10at%の場合は硬質皮膜
の耐摩耗性が低下する程度が小さく、殆ど低下せず、硬
質皮膜の耐摩耗性がより優れているからである。
C−N−H,B−Nの1種)を基礎とする硬質皮膜と
は、硬質皮膜基礎成分を主成分として含有してなる硬質
皮膜、換言すれば、マトリックスが硬質皮膜基礎成分よ
りなる硬質皮膜のことである。例えば、C−Hを基礎と
する硬質皮膜とはマトリックスがCとHとからなる硬質
皮膜のこと、B−Nを基礎とする硬質皮膜とはマトリッ
クスがBとNとからなる硬質皮膜のことである。
従来技術における硬質皮膜の中の特公平6-952 号公報に
記載の硬質皮膜や特開平6-212429号公報に記載の硬質皮
膜とは、密着性向上を目的として硬質皮膜中に該皮膜成
分以外の元素を添加する(含有させる)点において類似
し、共通している。しかしながら、本発明に係る硬質皮
膜と上記公報に記載の硬質皮膜とは、添加元素の種類が
相違し、そのため、添加元素の作用の仕方、即ち、添加
元素による硬質皮膜の固有応力の緩和(低減)のメカニ
ズムが異なり、本発明に係る硬質皮膜は上記公報に記載
の硬質皮膜に比較して硬質皮膜の固有応力の緩和の程度
が極めて大きく、残留応力が著しく小さくなる点におい
て顕著に相違する。この詳細を以下説明する。
2429号公報に記載の硬質皮膜とを比較すると、前者での
添加元素はFe,Co,Ni,Cuの1種以上であり、後者での
添加元素はTi,Zr,Cr,Nb,Mo,Hf,Ta,W(以下、Ti
等という)であるので、両者の添加元素の種類は明らか
に相違する。
素は、硬質皮膜基礎成分であるC、B、Nとの反応性が
比較的高く、炭化物、ほう化物、窒化物、或いは、これ
らの複合化合物を形成し易いので、硬質皮膜中に化合物
として存在していると考えられる。かかる化合物は比較
的硬度が高く、ヤング率が大きいので、硬質皮膜のヤン
グ率があまり低下せずに大きく、そのため、固有応力の
緩和効果が小さい。
膜での添加元素は、C、B、Nとの反応性が低いので、
硬質皮膜中に単体の金属に近い状態で存在していると考
えられる。かかる状態の金属は、硬質皮膜のマトリック
スを構成するcBN、DLC、CN系化合物等に比べて
硬度が低く、又、前記の如き化合物よりも著しく硬度が
低く、ヤング率が小さいので、硬質皮膜のヤング率が低
下して小さくなり、そのため、固有応力の緩和効果が極
めて高い。そのため、本発明に係る硬質皮膜は特開平6-
212429号公報に記載の硬質皮膜に比較して硬質皮膜の固
有応力の緩和の程度が極めて大きく、残留応力が著しく
小さくなる。
有応力が緩和されて残留応力が小さくなるのは、残留応
力はヤング率に反比例して小さくなるからである。即
ち、硬質皮膜の形成時に皮膜に弾性歪みが生じて残った
場合に残留応力が発生する。この残留応力は残った弾性
歪みとヤング率との積の値に相当する。従って、残留応
力はヤング率に反比例して小さくなり、ヤング率が低下
すると残留応力が小さくなるのである。
2 号公報に記載の硬質皮膜とを比較すると、前者での添
加元素はFe,Co,Ni,Cuの1種以上であり、後者での添
加元素はSi以外の4B族元素(Ge,Sn等)であるので、
両者の添加元素の種類は明らかに相違する。
素としてはSi以外のGe,Sn等があげられ、これらはいず
れも膜の内部応力を緩和し、金属に対する付着性をよく
する働きをする」という技術的思想が開示されている
(第2頁右欄第10〜14行目)。この中の「元素の添加に
より膜の内部応力を緩和し、付着性(密着性)をよくす
る」という技術的思想は、本発明での技術的思想と基本
的には類似している。しかしながら、この公報に記載の
硬質皮膜での添加元素は、硬質皮膜基礎成分であるC、
B、Nとの反応性が高く、炭化物、ほう化物、窒化物、
或いは、これらの複合化合物を形成し易いので、硬質皮
膜中に化合物として存在していると考えられる。かかる
化合物は硬度が比較的高く、ヤング率が大きいので、硬
質皮膜のヤング率があまり低下せずに大きく、そのた
め、固有応力の緩和効果が小さい。
添加元素は、前述の如く、C、B、Nとの反応性が低い
ことに起因して、固有応力の緩和効果が極めて高い。そ
のため、本発明に係る硬質皮膜は特公平6-952 号公報に
記載の硬質皮膜に比較して硬質皮膜の固有応力の緩和の
程度が極めて大きく、残留応力が著しく小さくなる。
皮膜は、特開平6-212429号公報記載の硬質皮膜や特公平
6-952 号公報記載の硬質皮膜とは構成及びその作用効果
が著しく相違し、これら公報記載の硬質皮膜では奏し得
ない顕著な作用効果を奏することができる。
(Fe,Co,Ni,Cuの1種以上)の中、特に、Co,Ni,Cu
は硬質皮膜基礎成分との反応性が低く、そのため硬質皮
膜の固有応力の緩和による残留応力の緩和の効果が大き
いので、Co,Ni,Cuの1種以上を選択して硬質皮膜に含
有させることが望ましい。
し、本発明に係る添加元素としてCuを選択し、C−Hを
基礎とする硬質皮膜中にCuを含有させることが望まし
い。C−HとCuとは特に反応性が低く、硬質皮膜の固有
応力の緩和による残留応力の緩和の効果が特に大きくな
るからである。
れるものではないが、0.1 〜5μmとするのがよい。0.1
μm 未満では、耐摩耗性の持続効果が小さくなる傾向
があり、5μm 超では、皮膜に発生する固有応力が大き
くなり、剥離しやすくなる傾向があるからである。更に
は、耐摩耗性と密着性の両立の観点より0.5 〜3μmと
することが望ましい。
着性の低下という問題は、CVD法に比べて蒸着粒子の
エネルギーが高いPVD法により硬質皮膜を形成する場
合に多く起こる問題であった。又、実用的な面よりもP
VD法はCVD法に比べて低温で硬質皮膜を形成し得る
ので、工業材料として多く用いられている鉄基合金等の
機械的強度を劣化させることなく、硬質皮膜を形成し得
る。これらの点から、本発明に係る硬質皮膜の形成に際
してはPVD法を適用した方が有利である。
プレーティング法、イオンビーム法等がある。この中
で、イオンプレーティング法の1種であるアークイオン
プレーティング法(AIP 法)は、蒸発源として固体状蒸
発源を使用することから、蒸発源の取り扱いが容易であ
り、又、他の成膜方法に比べて成膜速度が非常に速く、
蒸着原子のイオン化率が高いことから、基板との密着性
に優れた皮膜が得られるという特徴を有している。又、
本発明に係る硬質皮膜の如くB、C、Nと金属元素を含
む硬質皮膜を形成するに際して、B、C、Nと金属元素
との化合物あるいは混合物を蒸発源として使用すること
が可能であるため、安定した組成制御が可能である。こ
れらの点より、本発明に係る硬質皮膜の形成に際して
は、本発明に係る添加元素(Fe,Co,Ni,Cuの1種以
上)と硬質皮膜基礎成分(C,C−H,C−N,C−N
−H,B−Nの1種)とを含有する固体状蒸発源を用
い、アークイオンプレーティング法により、本発明に係
る硬質皮膜を基材表面に形成することが望ましい(第2
発明)。
用いる固体状蒸発源としては、電気伝導性を有すること
が必要であり、電気伝導性の高い方がよい。上記硬質皮
膜基礎成分の中、Cは電気伝導性が高く金属と同程度で
ある。かかる点からすると、Cを多量に含む固体状蒸発
源を用いることが望ましい。
オンプレーティング法に比べて、成膜速度は低いが、成
膜時に基板に入射するイオンのエネルギーを均一に且つ
高エネルギー側まで制御することが可能であるので、合
成イオンエネルギー領域が狭い場合にイオンビーム法の
方が有利となる場合がある。又、含有させる金属イオン
を電子ビームにより蒸着をして含有させるので、皮膜の
基板に近い側では金属濃度を高くし、皮膜の表面側では
金属濃度を低くし得て傾斜機能的な皮膜を形成すること
が可能である。従って、本発明に係る硬質皮膜の形成に
際し、合成イオンエネルギー領域が狭い場合や、傾斜機
能的な皮膜を得ようとする場合等には、本発明に係る添
加元素(Fe,Co,Ni,Cuの1種以上)を電子ビームによ
り蒸発させると共に、硬質皮膜基礎成分(C,C−H,
C−N,C−N−H,B−Nの1種)を含有するイオン
ビームを照射することにより、本発明に係る硬質皮膜を
基材表面に形成することが望ましい(第3発明)。
す組成のDLC膜(ダイヤモンドライクカーボン膜)を
基板上に形成した。
ト中に本発明に係る添加元素を混入させたものを用い、
スパッタリング法により、本発明の実施例1に係るDL
C膜を形成した(No.1〜4)。又、固体状蒸発源として固
体炭素と本発明に係る添加元素との混合物を用い、AIP
法(アークイオンプレーティング法)により、本発明の
実施例1に係るDLC膜を形成した(No.5〜9 、12〜1
5) 。又、本発明に係る添加元素を電子ビームにより蒸
発させると共にCを含有するイオンビームを照射すると
いうイオンビーム法(:IB+EB法)により、本発明の実
施例1に係るDLC膜を形成した(No.10〜11)。更に
は、比較のために比較例1に係るDLC膜として、添加
元素を含有させないDLC膜、及び、Cr,Ti又はGeを含
有するDLC膜を形成した(No.17 〜20) 。
に水素ガスを導入し、水素化ダイヤモンドライクカーボ
ン膜にした。スパッタリング法での代表的な成膜条件と
しては、雰囲気:Arガス、Arガス圧:3mtorr、温度:5
00℃、RF電力:300Wという条件等が挙げられる。AIP 法
での代表的な成膜条件としては、アーク電流:100A、基
板電圧:−300 V、基板温度:100℃という条件等が挙げ
られる。イオンビーム法(:IB+EB法)での代表的な成
膜条件としては、炭素ガス圧:2×10-4torr、基板温
度:550 ℃、炭素イオンのエネルギー:−500 V、C蒸
着速度:100 Å/min という条件等が挙げられる。基板
には、Siウェハ或いはJIS のSKD11 相当材を鏡面研磨し
たものを用いた。
15、17〜20)及びSKD11 相当材(No.16)について、半
径:200 μm Rの半球状のダイヤコーンを用いたスクラ
ッチ試験を行い、それにより密着力の評価を行った。
又、ピンオンディスク試験を行い、それにより摺動特性
の評価を行った。このとき、ピンオンディスク試験は、
DLC膜の中で基板にSKD11 相当材を用いたもの、及
び、SKD11 相当材(No.16)を供試し、相手材のピンには
SCM415を用い、荷重:50N、摺動速度:10mm/sec で摺
動距離:1kmになるまで摺動させ、1km摺動後の摩耗量
を測定する方法により行い、これにより耐摩耗性を評価
した。このピンオンディスク試験に供試したDLC膜の
厚みは、1.5 μm である。
る如く、本発明の実施例1に係るDLC膜(No.1〜15)
は、比較例1に係るDLC膜(No.17 〜20)に比較し
て、著しく密着力が大きくて密着性に優れ、又、耐摩耗
性に極めて優れており、極めて優れた密着性及び耐摩耗
性を兼ね備えている。
15)の中、No.1〜11のものは本発明に係る添加元素とし
てその中の1種のみを含有しており、No.12 〜15のもの
は本発明に係る添加元素としてその中の2種又は3種を
含有している。いずれの場合も同様に密着性及び耐摩耗
性が極めて優れている。
N膜を基板上に形成した。
ターゲット中に本発明に係る添加元素を混入させたもの
を用い、RF(高周波)スパッタリング法により、本発明
の実施例2に係るBN膜を形成した(No.21 〜24) 。
又、固体状蒸発源として固体ホウ素と本発明に係る添加
元素との混合物を用い、AIP 法により、本発明の実施例
2に係るBN膜を形成した(No.31 〜34) 。又、本発明
に係る添加元素を電子ビームにより蒸発させると共にB
を含有するイオンビームを照射するというイオンビーム
法(:IB+EB法)により、本発明の実施例2に係るBN
膜を形成した(No.25〜30)。更には、比較のために比較
例2に係るBN膜として、添加元素を含有させないBN
膜(cBN膜)を形成した(No.36)。
中で行い、スパッタリング時の代表的な成膜条件として
は、温度:500 ℃、N2+Ar圧:2mtorr 、RF電力:300
Wという条件等が挙げられる。AIP 法での代表的な成膜
条件としては、アーク電流:100 A、基板電圧:−300
V、基板温度:100 ℃という条件等が挙げられる。イオ
ンビーム法での代表的な成膜条件としては、窒素ガス
圧:2×10-4torr、基板温度:550 ℃、窒素イオンのエ
ネルギー:−500 V、B蒸着速度:100 Å/minという
条件等が挙げられる。基板には、Siウェハ或いはJIS の
SKD11 相当材を鏡面研磨したものを用いた。
30、36)及びSKD11 相当材(No.35)について、実施例1
の場合と同様の方法により、密着力の評価及び摺動特性
の評価(即ち、摩耗量の測定)を行った。
る如く、本発明の実施例2に係るBN膜(No.21 〜34)
は、比較例2に係るBN膜(No.36)に比較して、著しく
密着力が大きくて密着性に優れ、又、耐摩耗性に極めて
優れており、極めて優れた密着性及び耐摩耗性を兼ね備
えている。
34)の中、No.21 〜30のものは本発明に係る添加元素と
してその中の1種のみを含有しており、No.31 〜34のも
のは本発明に係る添加元素としてその中の2種又は3種
を含有している。いずれの場合も同様に密着性及び耐摩
耗性が極めて優れている。
膜に比べ、硬質皮膜形成時の残留応力による硬質皮膜剥
離が生じ難く、極めて密着性に優れている。従って、工
具や摺動部材等の如く耐摩耗性及び摺動性の必要な部材
の硬質皮膜として好適に用いることができ、これらの部
材の寿命の向上がはかれるようになるという効果を奏す
る。
ような密着性に優れた硬質皮膜を形成することができる
という効果を奏する。
Claims (3)
- 【請求項1】 C,C−H,C−N,C−N−H,B−
Nの何れかを基礎とする硬質皮膜であって、前記皮膜中
にFe,Co,Ni,Cuよりなる群から選択される1種又は2
種以上の元素を0.1 〜30at%含有してなることを特徴と
する耐摩耗性及び摺動性に優れた硬質皮膜。 - 【請求項2】 Fe,Co,Ni,Cuよりなる群から選択され
る1種又は2種以上の元素とC,C−H,C−N,C−
N−H,B−Nの何れか1種とを含有する固体状蒸発源
を用い、アークイオンプレーティング法により、Fe,C
o,Ni,Cuよりなる群から選択される1種又は2種以上
の元素を0.1 〜30at%含有する、C,C−H,C−N,
C−N−H,B−Nの何れかを基礎とする硬質皮膜を基
材表面に形成することを特徴とする耐摩耗性及び摺動性
に優れた硬質皮膜の形成方法。 - 【請求項3】 Fe,Co,Ni,Cuよりなる群から選択され
る1種又は2種以上の元素を電子ビームにより蒸発させ
ると共に、C,C−H,C−N,C−N−H,B−Nの
何れか1種を含有するイオンビームを照射することによ
り、Fe,Co,Ni,Cuよりなる群から選択される1種又は
2種以上の元素を0.1 〜30at%含有する、C,C−H,
C−N,C−N−H,B−Nの何れかを基礎とする硬質
皮膜を基材表面に形成することを特徴とする耐摩耗性及
び摺動性に優れた硬質皮膜の形成方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP00568498A JP3784953B2 (ja) | 1998-01-14 | 1998-01-14 | 耐摩耗性及び摺動性に優れた硬質皮膜及びその形成方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH11200012A true JPH11200012A (ja) | 1999-07-27 |
JP3784953B2 JP3784953B2 (ja) | 2006-06-14 |
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JP00568498A Expired - Lifetime JP3784953B2 (ja) | 1998-01-14 | 1998-01-14 | 耐摩耗性及び摺動性に優れた硬質皮膜及びその形成方法 |
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Country | Link |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4666241B2 (ja) * | 1998-12-25 | 2011-04-06 | 住友電気工業株式会社 | 摺動部材 |
JP2012137150A (ja) * | 2010-12-27 | 2012-07-19 | Nippon Piston Ring Co Ltd | ピストンリング |
-
1998
- 1998-01-14 JP JP00568498A patent/JP3784953B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JP4666241B2 (ja) * | 1998-12-25 | 2011-04-06 | 住友電気工業株式会社 | 摺動部材 |
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