JPH11127890A - 糖蛋白質の生産方法 - Google Patents

糖蛋白質の生産方法

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JPH11127890A
JPH11127890A JP9301000A JP30100097A JPH11127890A JP H11127890 A JPH11127890 A JP H11127890A JP 9301000 A JP9301000 A JP 9301000A JP 30100097 A JP30100097 A JP 30100097A JP H11127890 A JPH11127890 A JP H11127890A
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JP
Japan
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glycoprotein
sugar chain
cells
producing
sugar
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JP9301000A
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English (en)
Inventor
Kazuo Shimada
一夫 嶋田
Yoshinori Tsukamoto
義則 塚本
Reiko Takahashi
禮子 高橋
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Nakano Vinegar Co Ltd
Original Assignee
Nakano Vinegar Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 ガラクトース残基転移制御物質を添加し
た培地で、糖蛋白質の産生細胞を培養し、糖蛋白質を産
生させることを特徴とする糖蛋白質の生産方法を提供す
る。 【効果】 糖蛋白質の生産において、糖鎖合成活性を制
御して、糖蛋白質糖鎖の構造を制御し、目的の種類及び
構造を持つ糖鎖及び糖蛋白質をより均一にかつ大量に取
得することが可能になる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、目的の糖鎖構造を
持つ糖蛋白質を高比率で含有する糖蛋白質の生産方法に
関する。さらに詳しくは、糖鎖中のガラクトース残基を
持たない糖蛋白質の比率を高めた糖蛋白質を生産するた
めに、ガラクトース残基の糖鎖への転移を制御する物質
を添加した培地で該糖蛋白質の産生細胞を培養すること
を特徴とする生産方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の糖鎖構造解析法の発達、糖鎖生合
成阻害剤の発見、及び遺伝子工学や細胞工学などによる
糖蛋白質の大量調製法の発展などに伴い、本来生体内に
極微量しか存在せず、これまでは不明な点の多かった糖
蛋白質の糖鎖の多様な構造とその機能が明らかにされつ
つある。その結果、糖蛋白質の糖鎖部分が、例えば、蛋
白質部分のアスパラギン残基に結合している糖鎖(以
下、Asn結合型糖鎖)が、生体にとって重要な機能を持
つことが知られつつある(竹内誠&竹内より子, バイオ
サイエンスとインダストリー, 47:44-47(1989))。
【0003】すなわち、Asn結合型糖鎖は、その共通の
母核構造として、図1に示すような枝分かれした5糖構
造(トリマンノシルコア)を含んでいる。本来、単糖は
多様な結合様式が可能であり、糖鎖においても非常に多
くの構造をとりうるものであって、実際、極めて多様な
構造のAsn結合型糖鎖が確認されている(佐藤武史 &古
川清, 蛋白質核酸酵素, 37:2082-2087(1992))。その一
例として、イムノグロブリンG(IgG)の糖鎖を挙げる
ことができる。IgGはH鎖のFc領域のN末端から297番目
のアスパラギン残基(Asn297)にこのようなAsn結合型
糖鎖を1対保有する糖蛋白質の1つである。そして、Ig
GのAsn結合型糖鎖は、例えば、マウスでは図2に示すよ
うな基本構造を有しており、また、ヒトでは図3に示す
ような基本構造である。すなわち、Asn結合型糖鎖の5
糖構造(トリマンノシルコア)は共通しているが、特
に、非還元末端の糖(ガラクトース残基(Gal)やN-ア
セチルグルコサミン残基(GlcNAc)の有無などに差異が
認められるのである。
【0004】一般に、IgGなどの糖蛋白質の糖鎖部分の
構造は基本的に単一ではなく、糖蛋白質の産生細胞がど
のような動物種に由来するのかといった相違などによっ
て異なることが多い。また、たとえ、糖蛋白質が同一の
産生細胞で生産されたとしても、糖鎖構造の面から見る
と基本的には不均一な状態となっている。これは、特
に、糖鎖の非還元末端に、糖(Gal、GlcNAc、フコース
(Fuc)、シアル酸(Sia)など)が付与された糖鎖を有
するものと付与されなかった糖鎖を有するものなどが混
在していることによる。そして、このようなIgGのAsn結
合型糖鎖の非還元末端におけるGalの存否が各種病態と
相関があることが示唆されており、その1例としては慢
性関節リウマチのIgG糖鎖異常(土屋尚之,蛋白質核酸
酵素,37:1935 -1939(1992))が挙げられる。
【0005】この病気の患者においては、Asn結合型糖
鎖1本あたり2残基存在し得るGalが2残基とも欠損し
たIgG〔このようなIgGをアガラクトシルIgGという、以
下、Gal(0)IgGと略記する〕が、血清中に高率で見出さ
れる。すなわち、健常人ではGal(0)IgGの割合が血清中
の総IgG量に対して約10%であるのに対して、慢性関節
リウマチ患者ではこの割合が約40%に上り、Gal(0)IgG
の増加と慢性関節リウマチの発症との間に相関があるこ
とが推測されている。
【0006】また、多発性骨髄腫やキャッスルマン病な
どでもGal(0)IgGの増加が認められ(西浦哲雄他, 蛋白
質核酸酵素, 37:1945-1950(1992))、この他に、筋緊張
性ジストロフィーでもIgG糖鎖のGalが少なくなっている
ことが知られていることから(Ito,K. et al., J. Cli
n. Biochem. Nutr., 14:61-69(1993))、各種病態と糖
鎖中のGalの有無との間に相関があることが示唆されて
いる。
【0007】なお、筋緊張性ジストロフィーではIgGの
血管外、すなわち体組織中への移行性が高くなることが
示唆されており(Suzumura, A. et al., Acta Neurol.
Scand., 74:132-139(1986); Hirase, T. & Araki, S.,
Brain & Development, 6:10-16(1984))、Gal(0)IgGの
増加がIgGの体組織への移行性を高めていると推定され
ている。
【0008】IgGを含むイムノグロブリン製剤は、免疫
性疾患に関連する各種病態に対する重要な投与薬の1つ
である。そして、上記のようにIgGは糖鎖末端におけるG
alの有無によって血管からの移行性を異にする。このた
め、イムノグロブリン製剤の投与に際しては、その作用
させたい部位によってGalの有無を考慮する必要があ
る。すなわち、主としてIgGを血管中で作用させたい場
合(敗血症、肝炎などの治療の場合)にはGalが付与さ
れたIgGが有利であり、血管から各種体組織への移行が
必要な場合(肺炎、髄膜炎、脳炎などの治療の場合)に
は、Gal(0)IgGの方が有利であると考えられる。したが
って、IgG糖鎖中のGalの付与の程度を制御する必要性が
生じてきているのである。
【0009】さらに、イムノグロブリン製剤はヒト由来
の血液を分離精製して調製されるのが一般的であるが、
これらは蛋白質製剤であることから、高温・高圧などで
の滅菌は不可能である。したがって、ヒト由来の血液製
剤の投与は、場合によっては、他の重大な病気の二次感
染を引き起こすことがあることから、このような可能性
を極力否定出来るような生産手段で調製したイムノグロ
ブリン製剤の開発が望まれている。そのための手段の一
例として、遺伝子工学や細胞工学的手段などによって作
製されたヒトのイムノグロブリン産生細胞を組織培養す
る方法やヒト以外の生体そのものを用いて生産する方法
などの、ヒト血液を直接使用しない生産方法が必要とな
っており、そのための技術開発が活発に進められてい
る。
【0010】しかし、これらの方法で作製されたIgG産
生細胞やヒト以外の生体における糖鎖の合成活性は、ヒ
トにおける本来的な糖鎖合成活性とは異なっている場合
が多い。したがって、ヒトで生産されたイムノグロブリ
ンとは異なる糖鎖構造を持つものが生産されてしまい、
ヒトで本来発揮されるはずの生物学的活性および/また
は生理学的活性が発揮されない場合が生じている。した
がって、ヒトのイムノグロブリンが本来有するべき糖鎖
を合成できるように、その生成を制御する必要が生じて
いるのである。
【0011】さらに、非還元末端におけるGalの有無な
どといった糖鎖構造の違いが、IgGの体組織への移行性
などの違いを生じさせる可能性があることなどからも、
糖鎖構造を自在に制御する糖鎖工学的手法の開発が求め
られている。しかし、糖鎖構造を制御する実用的な方法
は確立していないのが現状である。これまでに目的の糖
鎖あるいはこれを有する糖蛋白質を得るための方法とし
て、種々の方法が試みられてきている。
【0012】即ち、糖蛋白質を得た後に各種の酵素でこ
の糖蛋白質を処理し、直接糖鎖を修飾改変する方法(Ta
keuchi,M. et al., J. Biol. Chem., 265:12127-12130
(1990) )、糖蛋白質をコードする遺伝子を目的の糖鎖
を合成し得る宿主細胞に遺伝子工学的に導入して目的の
糖蛋白質を発現させる方法(Kingsley, D. M. et al.,C
ell, 44: 749-759 (1986))、蛋白質をコードする遺伝
子を改変して糖鎖の結合自体を制限する方法(William
s, A. M. & Enns, C. A., J. Biol. Chem., 266:17648-
17654(1991))、糖鎖近傍のアミノ酸を改変することで
生じる空間的影響によって糖鎖構造を変化させる方法
(林勇一郎他, 生化学, 62: 690 (1990))、糖蛋白質産
生細胞を変異させて糖鎖中の特定の糖を結合できない産
生細胞を取得して、目的の糖蛋白質を産生させる方法
(原孝彦&川喜田正夫, 蛋白質核酸酵素,36: 2200-2202
(1991))、糖蛋白質産生細胞と目的の糖鎖合成活性を備
えた細胞とを細胞融合させた細胞株を作製して生産させ
る方法(特開平8-336389)、培養条件で糖鎖合成に差異
が生じることを利用した方法(Goochee, C. F. & Monic
a,T., BIO/TECHNOLOGY, 8: 421-427(1990)) 等が知られ
ている。
【0013】しかし、これらの方法を用いても、目的の
糖鎖を有する糖蛋白質を得ることは非常に困難であり、
また、得られるとしても試行錯誤を伴う非常な努力を要
する。その上、操作が煩雑であったり、使用する試薬が
高価であるなどの欠点を有していた。理論的には、目的
の糖鎖を有する糖蛋白質が少量でも得られた場合は、他
の異なる糖鎖を持つ同種の糖蛋白質を何らかの方法で分
離・除去することができれば、目的の糖鎖だけを保有す
る糖蛋白質を精製することが可能であると考えられる。
【0014】しかし現状では、このような糖鎖の差異に
基づいて糖蛋白質をその活性を損なわない状態で分離精
製する実用的な手段は存在しない。したがって、目的の
糖鎖を有する糖蛋白質を出来るだけ高い比率で産生する
手段を開発することが現実的な手段として求められてい
る。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、目的の糖鎖
を持つ糖蛋白質を高比率で含有する糖蛋白質の効率的な
生産方法を提供するものである。より具体的には、糖蛋
白質産生細胞を培養して糖蛋白質を産生するにあたり、
イムノグロブリン、とりわけ、イムノグロブリンGなど
の糖蛋白質の産生において、特定の構造を有する糖鎖、
特に、糖鎖末端にガラクトース残基を持たない糖鎖を有
する糖蛋白質を高比率で含有する糖蛋白質を効率的に生
産する方法を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは糖蛋白質の
糖鎖構造に関する研究を進める過程で、糖蛋白質産生細
胞の培養による糖蛋白質の産生において、糖鎖の生合成
を制御する特定の物質を培地に添加して培養することに
よって目的とする糖鎖を高比率で含有する糖蛋白質を効
率的に産生させることが可能となることを見出し、簡便
かつ画期的な手法の開発に成功した。その結果、生物学
的および/または生理学的活性の高い目的の糖鎖構造を
有する糖蛋白質を高比率で含有した糖蛋白質を提供する
ことが可能になったのである。
【0017】本発明にかかわる糖蛋白質とは、蛋白質に
糖鎖が共有結合した一群の物質の総称をいい、糖鎖が二
糖繰り返し構造を有するプロテオグリカンとは区別され
る。糖鎖部分が2〜6種類の単糖から構成され、一定の
繰り返し構造を持たず、蛋白質と共有結合した複合糖蛋
白質を指す。
【0018】このような糖蛋白質としては、広く生物界
に存在する生物学的および/または生理学的活性を有す
るものが含まれる。このような蛋白質においては、蛋白
質のアミノ酸配列中のアスパラギン残基(Asn)又はセ
リン残基(Ser)若しくはスレオニン残基(Thr)などの
糖鎖が結合する可能性のあるアミノ酸残基のうち、すく
なくとも一ヶ所に糖鎖が結合している蛋白質を示してお
り、かつ糖鎖中にガラクトース残基(Gal)を保有する
糖鎖が共有結合した糖蛋白質が対象となる。これらの糖
蛋白質の糖鎖中では、ガラクトース残基(Gal)がN-ア
セチルグルコサミン(GlcNAc)とβ−1, 4結合している
ことが一般的であり、本発明はこのようなGalの糖鎖中
での結合を制御することを可能とする方法が提供され
る。
【0019】そのような糖蛋白質の代表例として、イム
ノグロブリン(Ig)G、M、EおよびA、セルロプラス
ミン、プロトロンビン、トランスフェリン、フィブリノ
ーゲンなどの血清蛋白質、グリコホリン、ロドプシン、
ミエリンA1蛋白質などの膜蛋白質、α−アミラーゼ、β
−グルクロニダーゼ、RNAseなどの諸酵素、組織プラス
ミノーゲン活性化因子(t-PA)、エリスロポエチン、イ
ンターフェロン−γ、インターロイキン−2などの各種
サイトカインが挙げられる。糖蛋白質がイムノグロブリ
ンの場合には、κ鎖保有抗体、λ鎖保有抗体のいずれで
あってもよい。
【0020】糖蛋白質の糖鎖は、糖鎖と蛋白質との結合
様式から2種類に大別される。1つは、ポリペプチド中
のAsn-X-Ser/Thrというアミノ酸配列のAsnにN-アセチル
グルコサミンがN-β-グリコシド結合したN-グリコシド
結合型糖鎖もしくはアスパラギン結合型糖鎖(Asn結合
型糖鎖)であって血清の糖蛋白質によく見出されること
から、血清型糖鎖とも呼ばれているものであり、他の1
つは、SerまたはThrにN-アセチルガラクトサミンがO-α
-グリコシド結合したO-グルコシド型糖鎖または粘液性
糖蛋白質であるムチンの中によく見出されることから、
ムチン型糖鎖とも呼ばれるものである。
【0021】各糖鎖は上述の結合可能部位で蛋白質中の
アミノ酸に結合していればよく、アミノ酸配列中におけ
るそれらの結合部位の位置は、その糖蛋白質の生物学的
活性および/または生理学的活性が保持され得る限り、
特に限定されない。したがって、糖蛋白質1分子あたり
の糖鎖の数は、1本でもよく、2本以上であってもよ
い。
【0022】糖鎖を構成する糖としては、 N-アセチル
グルコサミン(GlcNAc)、N-アセチルガラクトサミン(G
alNAc)、D-マンノース(Man)、D-ガラクトース(Gal)、L-
フコース(Fuc)、シアル酸(Sia)のほか、植物において
は、D-キシロース(Xyl)、D-アラビノース(Ara)が含まれ
る。これらの糖はいかなる順序で結合してもよい。
【0023】本発明に用いることのできる糖蛋白質を生
産する細胞は、真核生物由来のものであれば特に制限は
なく、例えば、動物の生体由来の初代培養細胞あるいは
その株化細胞のいずれであってもよい。このような細胞
は、付着細胞、浮遊細胞の何れであってもよく、市販の
細胞を購入し、改変して使用することもできる。また、
このような細胞は、糖蛋白質を細胞内に蓄積するもの、
膜表面に発現しているもの、もしくは細胞外に分泌する
もののいずれのものであってもよい。
【0024】具体的には、例えば、ヒトのB細胞に代表
される抗体産生細胞、インターフェロン(IFN)、イン
ターロイキン(IL)、t-PAなどの各種のサイトカインを
産生するヒトのT細胞、CHO細胞、ヒト由来の株化骨髄
腫細胞(ミエローマ)などの哺乳類の株化細胞等を挙げ
ることができる。また、上記の目的の糖蛋白質を産生す
る細胞は、細胞融合や遺伝子工学的に改変して作製した
ものであっても良く、特に制限されない。
【0025】しかし、抗体産生が可能な細胞、またはこ
れらの細胞をin vitroで継代可能にした株化細胞である
ことが好ましく、マウス、ラット、ハムスター、ヒトな
どに由来する種々の細胞が挙げられる。具体的には、例
えば、マウス抗プロゲステロン抗体IgG2b(κ)産生細胞7
D7.2.3株(本細胞株は、通商産業省工業技術院生命工学
工業技術研究所に寄託番号FERM BP-6150として寄託され
ている)等が好適に使用される。
【0026】細胞の培養は、細胞の増殖及び糖蛋白質の
生産を阻害しないものであれば、各種公知の方法を用い
ることができる。例えば、1回の培養ごとに培地を交換
するバッチ培養、連続的に培地を供給する連続培養のい
ずれの方法を使用してもよい。また、ローラーボトルや
タンクなどを用いる浮遊培養、細胞をスチレン製マイク
ロビーズ表面などに付着させて行う接着培養、培養フラ
スコを用いる静置培養などの各種の培養方法のなかか
ら、培養する細胞の性質に応じて上記のような培養法を
適宜選択して培養を行う。
【0027】培養期間は、バッチ法で培養する場合は細
胞が十分増殖して糖蛋白質が十分に生産されるまで実施
すれば良く、通常3日〜1ヶ月程度、好ましくは、5〜
10日、より好ましくは10日程度である。より高い産生性
能を発揮させるためには、細胞を2〜3日から1週間程
度予備培養または馴化培養しておくとよい。ここで、馴
化培養とは、血清添加培地で培養した細胞を無血清培地
に馴化させることなどをいう。
【0028】また、培養条件は、糖蛋白質を産生する細
胞を後述のような適当な培地に適当な量で播種した後、
適当な温度で、通気状態を制御し、培地のpHを所定の状
態に保ちながら該細胞を培養する。35〜39℃で、5〜10
%CO2インキュベーターを用いて培養することが好まし
い。より好ましくは、37℃で、5〜10%CO2インキュベ
ーターを使用する。
【0029】本発明で用いる抗体産生細胞の培養に使用
できる基本培地としては、市販されている各種の細胞培
養用の培地を用いることができる。このような培地とし
ては、例えば、Eagle's MEM(MEM)、DMEM、RPMI1640、Ma
cCoy5A(大日本製薬製)、NYSF404(日本水産製)など
の各種の培地を使用することができ、培養する細胞の性
質、培養目的などに応じて適宜選択して使用すればよい
が、なかでもNYSF404が好適である。
【0030】このような培地を用いて抗体産生細胞を培
養するにあたっては、上記の培地のうち、抗生物質を含
まないMEMなどを使用する場合には、例えば、ペニシリ
ンやストレプトマイシンなどの抗生物質を、それぞれ50
ユニット/mL、50μg/mL程度の量で添加しておくと、カ
ビなどによるコンタミを防止する上で好適である。血清
は添加してもしなくてもよいが、添加する場合には、通
常5〜25%(v/v)の範囲とする。細胞によって産生さ
れたIgGの精製が容易になることなどの理由から、血清
を添加せず、無血清培地として使用することが好まし
い。
【0031】本発明においては、抗体産生細胞の培養時
に、上記のような基本培地中にガラクトース残基の結合
を制御する物質を添加する。このような物質としては、
具体的には、N-アセチルグルコサミン若しくはグルコサ
ミンを使用することが、ガラクトース残基を持たない糖
鎖を有する糖蛋白質の比率が高い糖蛋白質を得ることが
できるなどの理由から好ましい。
【0032】このような物質の添加量は、具体的には0.
2mM以上、さらに好ましくは、N-アセチルグルコサミン
を添加する場合には2mM以上、また、グルコサミンを添
加する場合には0.5mM以上とすると、糖鎖中の末端ガラ
クトース残基を持たない糖蛋白質の比率が高い糖蛋白質
を、簡単且つ効率的に生産させることができる。なお、
これらの物質の添加量を増大させても、ガラクトース残
基を持たない糖蛋白質の比率の増加の程度が次第に減少
し、10mM程度の添加で頭打ちとなることから、10mM以下
の濃度で添加するのが好ましい。
【0033】上述のようにして得られた培養物からの糖
蛋白質の回収は、通常の精製、回収方法により分離精製
できる。即ち、例えば、糖蛋白質が細胞外に分泌生産さ
れる場合には、適宜培養液を交換する方法などにより培
養液を回収する。また、糖蛋白質が細胞内に蓄積される
場合には、培養液をろ過あるいは遠心分離する方法など
により細胞を回収する。
【0034】糖蛋白質が細胞内に蓄積されたものである
場合には、精製に先立って、界面活性剤、キレート化合
物、ある種の陰イオン化合物、もしくはアルカリ剤など
を用いた化学的方法、酵素などを用いた生化学的手段ま
たはソニケーションなどによる物理的な手段で、糖蛋白
質を膜から遊離させるか、または細胞を破砕する。細胞
破砕物を、例えば、遠心分離などによって除き、遠心上
清に含まれる糖蛋白質を回収する。
【0035】界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリ
ウムなどの陰イオン性界面活性剤、臭化セチルトリメチ
ルアンモニウムなどの陽イオン性界面活性剤、ドデシル
-N-ベタインなどの両性界面活性剤、ポリオキシエチレ
ン-p-tert-オクチルフェノールなどの非イオン性界面活
性剤およびコール酸ナトリウムなどを使用することがで
き、また、酵素としては、トリプシン、ナガーゼなどを
使用することができる。
【0036】糖蛋白質の精製は、目的の糖蛋白質の分子
量や性質に応じて各種の方法を組み合わせて行うことが
できる。例えば、上記の培養上清または遠心上清を限外
濾過し、アフィニティーカラムに吸着させて適当な塩濃
度の溶離液で目的の画分を溶出させ、この画分を濃縮し
て得ることができる。糖蛋白質の性質によっては、イオ
ン交換カラム、吸着クロマト用カラムあるいは疎水性ク
ロマト用カラムなどをさらに組み合わせて使用してもよ
い。
【0037】上記により得られた糖蛋白質より更に糖鎖
を得るためには、各種の公知の方法を利用することがで
きる。例えば、ヒドラジン分解法によって糖鎖を切り出
す方法、またはグリコペプチダーゼやN-グリカナーゼな
どの酵素を用いて糖鎖と蛋白質部分とを切断する方法な
どによって、糖鎖を得ることができる。ヒドラジン分解
法は蛋白質の高次構造の如何に関わらず、糖鎖を切り離
すことができる点で優れており、酵素法は操作が非常に
簡単で糖鎖に修飾が起こりにくい点で優れている。これ
ら2つの方法はいずれも目的に応じて適宜採用すればよ
く、またこれら2つの方法を併用することも可能であ
る。
【0038】また、糖蛋白質の特定部位に結合している
糖鎖だけを回収する場合は、トリプシン、キモトリプシ
ン、リジルエンドペプチダーゼなどの蛋白質分解酵素を
適宜用いて、予め目的の糖鎖を含む糖蛋白質を断片化
(糖ペプチド断片化)した後、糖蛋白質の精製に準じた
各種のクロマトグラフィーにより目的の糖ペプチド断片
を単離精製し、上記と同様の方法で糖鎖とペプチドとを
切断すればよい。
【0039】糖蛋白質あるいは糖ペプチド断片から上記
の方法で糖鎖を切り離した後の糖鎖の回収は、ゲル濾
過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティーク
ロマトグラフィーなどの各種のクロマトグラフィーを利
用した各種の精製方法を適宜組み合わせて実施すれば良
い。糖を含む画分の検出には、オルシノール硫酸法、フ
ェノール硫酸法等の糖特異的な発色法、電気化学的検出
法などを用いることができる。
【0040】このようにして得られた糖鎖の構造を分析
するためには、各種の公知の方法を適宜採用することが
できるが、検出感度向上のために得られた糖鎖を標識し
て、後述する様な高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
による解析を行うのが一般的である。
【0041】糖鎖を標識する方法としては、2−アミノ
ピリジン、フルオレセイン、1,2-ジアミノ-4,5-メチレ
ンジオキシベンゼン(DMB)などの蛍光化合物で蛍光標
識する方法や、3H、13Cなどの放射性標識化合物でラベ
ルする方法などがあるが、取り扱いが容易であり、HPLC
で分離がよくなり検出しやすいことなどから、蛍光化合
物で標識する方法が好ましく、特に2−アミノピリジン
で蛍光標識する方法が好適である。
【0042】2−アミノピリジンで蛍光標識する方法
は、長谷らが開発した2−アミノピリジン塩酸溶液を蛍
光標識剤として、水素化シアノホウ素ナトリウムを還元
剤として使用する方法(Hase,S. et al., J. Biochem.,
95:197-203(1984))と、近藤らが開発した2−アミノピ
リジン無水酢酸溶液を蛍光標識剤とし、ボラン−ジメチ
ルアミン複合体を還元剤として使用する方法(Kondo,
A. et al., Agric. Biol.Chem., 54: 2169-2170(1990))
などが挙げられる。何れの方法をも使用することができ
るが、長谷らの方法の方が、用意する装置も少なく、手
軽である。近藤らの方法を実施するために開発された装
置(宝酒造製)が市販されており、これを利用して近藤
らの方法を利用しても良い。
【0043】蛍光標識した糖鎖は、化学的に安定であ
り、糖鎖の分子量、電荷、親水性、疎水性、各種レクチ
ンに対するアフィニティーなどの特性に基づいて、HPLC
を利用して分析することが可能である。この結果、短時
間内に高感度で分析できるという利点がある。
【0044】代表例としては、シアル酸数の異なる糖鎖
を陰イオン交換カラムを利用して分析する場合を挙げる
ことができる。シアル酸数の異なる糖鎖を陰イオン交換
カラムにかけ、その電荷の違いを利用して分離定量し、
その後にシアル酸を除去して中性糖鎖を得る。得られた
中性糖鎖を、逆相クロマトグラフィー(ODS-シリカ)を
用いたHPLCで分離し、得られた各ピーク中の糖鎖を、さ
らに順相クロマトグラフィー(アミド−シリカ)を用い
たHPLCとを使用して分離する。こうして得られた各成分
の糖鎖構造を高橋らの二次元糖鎖マッピング(高橋禮
子, 生化学実験法23糖蛋白質糖鎖研究法, 学会出版セン
ター (1989))(高橋禮子&富谷昇, 蛋白質核酸酵素, 3
7:2117-2130(1992))によってフィンガープリントを行
い、同定する方法がある。この時シアル酸の除去には、
例えば、酸性条件下で酸加水分解を行う方法や微生物由
来のシアリダーゼを用いる方法を利用することができ
る。
【0045】HPLCに用いる溶離液としては、水もしくは
バッファーに、水混和性の有機溶媒、例えば、メタノー
ル、アセトニトリル、プロパノール、n−ブタノールな
どを添加したものが好適である。溶出は、有機溶媒の濃
度または塩濃度が一定の溶離液で行ってもよく、グラジ
エントをかけてもよい。また、必要に応じてカラムジャ
ケットなどを用いてカラム温度を一定に制御し、各糖鎖
の分離能を向上させることもできる。このような方法に
よってHPLCでの各ピーク中の糖鎖の構造を一旦同定して
しまえば、それ以後は、同一種の糖蛋白質の糖鎖の構造
を推定する場合には、例えば、同定に用いたと同じ条件
で逆相クロマトグラフィーによるHPLC分析を行い、その
結果得られたクロマトグラムから各ピークに含まれる糖
鎖の構造を簡易に同定することが可能になる。
【0046】その具体例として、図3に健常人のIgG糖
鎖のピリジルアミノ誘導体混合物の逆相クロマトグラフ
ィーによるHPLCの分離プロファイルと各ピークに含まれ
る糖鎖の構造とを示した。同一の条件でHPLCを行うと、
ここに示された各糖鎖は、図3のクロマトグラムに示さ
れた保持時間で溶出されるために、簡易同定が可能とな
る。
【0047】
【実施例】以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳細
に説明する。ここで示す実施例は、糖蛋白質の1例とし
て、IgG産生細胞株の培養によって産生されるIgGの糖鎖
を制御した場合を例示するが、何ら本発明を限定するも
のではない。
【0048】(実施例1)IgG産生細胞の作製 (1)IgG産生細胞7D7.2.3株の作製 マウス抗プロゲステロン抗体IgG2b(κ)産生細胞7D7.2.3
株を以下の手順で造成した(Sawada, J. et al., J. Ste
roid Biochem.,28:405-410(1987))。すなわち、17α-ヒ
ドロキシプロゲステロン(以下、17-OHPと略す)と蛋白
質との複合体を5回投与(50μg/マウス/1回投与、Fre
undの完全アジュバントと不完全アジュバントとを交互
に使用)して、BALB/cマウス(8週齢、雌、静岡実験動
物協同組合より入手)を、初回免疫から20日間隔で5回
免疫感作する。ここで用いた17-OHP蛋白質複合体は、17
-OHP-4-カルボキシエチルチオ-ウシ血清アルブミンであ
る。
【0049】最終免疫から3日後に、これらのBALB/cマ
ウス5匹から胸腺を摘出し、胸腺細胞を得た。この胸腺
細胞とP3/NS1/1-Ag4-1(NS1)細胞〔国立衛生試験所細胞
バンクにJCRB0009として保管〕とをポリエチレングリコ
ール4000(Sigma社製)を用いた方法(Galfre, G. et al.,
Nature, 266:550-552(1977))で細胞融合してハイブリ
ドーマを得た。以上のようにして得られたハイブリドー
マから、目的の抗体産生細胞をラジオイムノアッセイ法
(Sawada, J. et al., Molec. Immun., 23:625-630(198
6))を用いた以下の方法で選択し、クローニングした。
【0050】すなわち、PEG法で融合処理して得たハイ
ブリドーマをHAT培地(10%ウシ胎児血清, 2mMのグルタ
ミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、50μMの2−メルカ
プトエタノールを添加したRPMI1640培地(GIBCO社製)
に、さらに100μMのヒポキサンチン(H)、0.4μMのアミ
ノプテリン(A)、16μMのチミジン(T)を添加した培地)
を入れた24ウェルプレート(Costar社製, No.3024)に
約1×106個入れて培養し、最終的に432個のウェルでの
培養物を得た。
【0051】次に、これらの培養上清を、ラジオイムノ
アッセイ(RIA)にかけ、陽性を示した43個のウェルの
細胞を、さらに培養し、その結果35個の陽性細胞株が得
られた。これら35個の陽性株についてさらにRIAと免疫
交差活性とを指標として選択した結果、活性の高い6個
の陽性株を選択した。なお、陽性株は液体窒素中にて保
存した。これらの6株のうち、7D7.2.3株が比較的高い
抗体産生活性を示した(Sawada,J. et al., J. Steroid
Biochem., 28:405-410(1987))。この株はマウス抗17
−OHP抗体IgG2b(κ)を生産する細胞株(FERM BP-6150)
であり、以下この株を試験に用いた。
【0052】(2)7D7.2.3株によるIgG2b(κ)の生産 IgG2b(κ)を産生する培地としては、修正無血清培地NYS
F404(日本水産製;NaCl 6208mg 、 KCl 388mg、CaCl
2(無水) 97mg、Ca(NO3)2 (無水) 33.7mg、MgSO4(無水)
69.0mg、Na2HPO4(無水) 388.5mg 、NaH2PO4 ( 無水) 5
5.8mg、グルコース1955mg、コハク酸ナトリウム48.5m
g、コハク酸36.4mg、D-ビオチン0.11mg、D-パントテン
酸カルシウム0.61mg、塩化コリン26.5mg、葉酸0.97mg、
ミオイノシトール18.0mg、ニコチンアミド 0.97mg 、p-
アミノ安息香酸0.485mg 、ピリドキサール塩酸0.485mg
、塩酸ピリドキシン0.485mg 、リボフラビン0.146mg
、塩酸チアミン0.97 mg 、ビタミンB12 0.0037mg、グ
ルタチオン(還元) 0.485mg 、二酒石酸コリン0.873mg
、プトレシン・2H2O 0.0125mg 、ピルビン酸ナトリウ
ム110.0mg 、チミジン 0.0125mg 、ヒポキサンチン 0.0
25mg、亜セレン酸ナトリウム 0.0017mg 、硫酸ストレプ
トマイシン100mg 、ペニシリンGカリウム塩63.3mg、フ
ェノールレッド5.0mg 、ヒトトランスフェリン10.0mg、
ウシインスリン10.0mg、HEPES 3570mg、重炭酸ナトリウ
ム1400.0mg、L-塩酸アルギニン76.1mg、L-アルギニン 9
7.0mg 、L-アスパラギン・H2O 42.5mg、L-アスパラギン
酸9.7mg 、L-シスチン31.5mg、L-塩酸システイン・H2O
16.7mg、L-グルタミン酸9.7mg 、L-グルタミン 450.0m
g、L-ヒスチジン27.7mg、L-ヒドロキシプロリン9.7mg
、L-イソロイシン49.5mg、L-ロイシン49.5mg、L-塩酸
リジン54.8mg、L-メチオニン14.6mg、L-プロリン14.7m
g、L-セリン29.6mg、L-スレオニン48.0mg、L-バリン47.
0mg、L-フェニルアラニン22.8mg、L-トリプトファン 7.
3mg、L-チロシン27.2mg、グリシン9.9mg/Lを含む培地)
を用いた。
【0053】この培地5mlを入れた底面積25 cm2の組織
培養フラスコ(Corning社製)で7D7.2.3株を馴化培養
(37℃で3日間静置培養、5%炭酸ガスを含む加湿空気
中)した。この後、該修正無血清培地にN-アセチルグル
コサミン又はグルコサミン・HClを0〜約4.6mMの範囲で
段階的に濃度を変えて添加(表1)した本培養培地62.5
mlを入れた底面積150cm2の組織培養フラスコに、上記の
ように培養した細胞を約1×106個播種し、馴化培養と
同条件で10日間本培養を行い、該IgG2b(κ)を生産させ
た。
【0054】(実施例2)IgG2b(κ)の精製 IgG2b(κ)の精製はKim, H.らの方法(Kim, H. et al.,
J. Biol. Chem., 269:12345-12350(1994))に準じて行
った。すなわち本培養を終了した各フラスコ中の培地50
0mlを、限外ろ過(MilliporeMinitan ultrafiltration
system)にかけてIgG2b(κ)濃縮液約50mlを得た。その
後、この濃縮液をプロテインAカラム(Affi-Gel prote
in A column(Bio-Rad社製))にかけ、1.5mMのNaClを含
有する50mMのグリシンバッファー(pH2.8) にて溶出し、
1.5MのTris-HCl(pH8.5)を加えてpH7.0とし、IgG2b(κ)
精製画分約50mlを得た。
【0055】このIgG2b(κ)精製画分をセントリプレッ
プ30(アミコン社製)によって濃縮し、10mMリン酸ナト
リウム、150mM NaCl、 3mMアジ化ナトリウムを含むバッ
ファー(pH7.3)によって希釈し、この操作を繰り返して
バッファー液交換を行った。IgG2b(κ)の最終濃度は約
0.3%であった。その後、これらの試料を水に対して透析
し、さらに凍結乾燥してIgG2b(κ)画分を得た。
【0056】(実施例3)IgG2b(κ)糖鎖の構造解析 (1)糖鎖の切り出し IgG2b(κ)糖鎖の解析の為に、上記IgG2b(κ)画分(約3
mg)を0.1M Tris-HClバッファー (pH8.2)に溶解し、そ
の後pH7〜8に調整した。1M CaCl2を0.01 Mとなるよう
に添加し、トリプシン(Sigma製)及びキモトリプシン(Wo
rthington Biochemical Corporation製)を含有蛋白質量
の1%(w/w) 加えて酵素消化(37℃、一夜)した。
【0057】反応終了後に加熱(100℃、10分)して酵
素反応を停止させた後、この反応溶液を遠心濃縮機を用
いて濃縮乾固し、それを0.5Mクエン酸−リン酸バッファ
ー(pH4.0)に溶解した。この溶液をpH4〜6に調整した
後、グリコペプチダーゼA(生化学工業製)の10ミリユ
ニット/500μl溶液を0.3ミリユニット/糖鎖100nmolの
割合で加え、37℃、一夜反応させて糖鎖を遊離させた。
【0058】次にこの反応終了液に対して1M Tris-HCl
バッファー (pH8.2)を加えてpH7〜8に調整した後、プ
ロナーゼ(商品名:アクチナーゼE、科研製薬製)を含
有蛋白質量の2%(w/w) 加えてペプチドを分解させた
後、遠心上清を集めた。この上清を、予めイオン交換水
で平衡化させた陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂
各々1mLにかけて脱塩した。脱塩した溶液を遠心濃縮機
を用いて濃縮乾固して糖鎖画分を得た。
【0059】(2)糖鎖の蛍光標識 得られた糖鎖画分に対して2−アミノピリジン1gを56
0μlの濃塩酸に溶解した溶液40μlを加え、90℃で10分
間処理した。この後、20mgの水酸化シアノホウ素ナトリ
ウムを12μlの水に溶解させた水溶液4μlをこの溶液に
加え、90℃で1時間反応させた。その後セファデックス
G-15カラム(Pharmacia製、φ1cm×40cm(ベッド容積3
0ml))と溶離液(10mM重炭酸アンモニウム)とを用
い、280nmでモニターして糖鎖を精製した。2−アミノ
ピリジン−糖鎖画分を集め、乾固した後、以下のHPLC分
析に供した。
【0060】(3)HPLC分析条件 2−アミノピリジン−糖鎖画分のHPLC条件は下記の通り
である。 ・溶出液A:10mMリン酸一ナトリウム溶液(pH3.8) ・溶出液B:最終濃度0.5%のn-ブタノールを含む溶出液
A ・溶出条件:溶出液Bの濃度を分析開始から60分まで
に、20%から50%に上昇させるリニアグラジエント ・カラム:ODSカラムHRC-ODS (φ6.0mm×150mm、島津
製作所製) ・蛍光検出器:SHIMADZU RF-550(島津製作所製) ・検出:蛍光検出(励起波長:320nm、蛍光波長:400n
m) ・流速:1ml/ 分 ・カラム温度:55℃
【0061】(4)HPLC分析後の解析 HPLCによって検出されたクロマトグラムを、予め同定し
た糖鎖を分析したクロマトグラムと対比して、糖鎖の構
造を推定した。Gal(0)糖鎖の比率は、Gal(0)糖鎖のピー
ク面積とその他の全体の糖鎖のピークの面積との割合か
ら算出した。
【0062】(5)IgG2b(κ)糖鎖の解析結果 以上のようにして得られた結果を表1に示した。
【0063】
【表1】
【0064】以上の結果より、培地中にN-アセチルグル
コサミン又はグルコサミン・HClを添加した場合に、IgG
2b(κ)の中で糖鎖中にガラクトース残基を持たないアガ
ラクトシルな糖鎖の比率が増加した。また、その効果は
N-アセチルグルコサミン又はグルコサミン・HClのいず
れを添加した場合においても、約0.2mM以上の添加濃度
から認められた。さらに特にN-アセチルグルコサミンを
添加した場合は約2mM以上の添加濃度において、またグ
ルコサミン・HClの場合は0.5 mM程度以上の添加濃度に
おいて、65%以上と高い比率でガラクトース残基を持た
ないものの比率を増大させることが可能であった。
【0065】
【発明の効果】本発明によれば、糖蛋白質の生産におい
て、糖鎖合成活性を制御して、糖蛋白質糖鎖の構造を制
御し、目的の種類及び構造を持つ糖鎖及び糖蛋白質をよ
り均一にかつ大量に取得することが可能になる。すなわ
ち、糖鎖中のガラクトース残基を持たない糖鎖を有する
糖蛋白質を高い比率で含有する糖蛋白質を、比較的簡単
な手法で効率的に生産することが可能になる。その結
果、糖蛋白質を医薬として生産する場合などにおいて、
該糖蛋白質の内、目的の糖鎖を有する糖蛋白質を比較的
簡単な手法で、より均一に入手することが可能になり、
例えば、体組織への移行性などの活性が高まった優れた
糖蛋白質を、比較的容易に取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Asn結合型糖鎖に共通する5糖構造トリマンノ
シルコアを示す模式図である。
【図2】マウスIgGのAsn結合型糖鎖の構造を示す模式図
である。
【図3】健常人のIgG糖鎖のピリジルアミノ誘導体混合
物のHPLC(逆相クロマトグラフィー)による分離プロフ
ァイルと各ピークに含まれる糖鎖の構造を示す図である
(Takahashi, N., et al., Biochemistry,26:1137-1144
(1987))。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI (C12N 5/06 C12R 1:91)

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガラクトース残基転移制御物質を添加し
    た培地で、糖蛋白質の産生細胞を培養し、糖蛋白質を産
    生させることを特徴とする糖蛋白質の生産方法。
  2. 【請求項2】 糖蛋白質がイムノグロブリンである請求
    項1記載の糖蛋白質の生産方法。
  3. 【請求項3】 糖蛋白質がイムノグロブリンGである請
    求項1記載の糖蛋白質の生産方法。
  4. 【請求項4】 ガラクトース残基転移制御物質がN-アセ
    チルグルコサミン又はグルコサミンである請求項1〜請
    求項3のいずれかに記載の糖蛋白質の生産方法。
  5. 【請求項5】 ガラクトース残基転移制御物質として2
    〜10mMのN-アセチルグルコサミン又は0.5〜10mMのグル
    コサミンを添加した培地で糖蛋白質の産生細胞を培養す
    ることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記
    載の糖蛋白質の生産方法。
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