JPH11117453A - 建築用板 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【課題】工業的生産に適し優れた防湿性能を有する建築
用板を提供する。 【解決手段】木質基板１の少なくとも片面に、アルミニ
ウム層３を芯層としその片面に紙層２を、他面に合成樹
脂フィルム層４を積層された積層体Ｓを、その紙層２が
木質基板１に接するように貼着されるとともに、合成樹
脂フィルム層４の表面に断熱材Ｓが貼着されてなる建築
用板。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、構造用パネルを始
め、壁材、床材、建具用又は家具用に使用可能な建築用
板に関する。

【０００２】

【従来技術】従来、木質系板材を使用した建築用板は様
々な用途に使用されるものの、水分の吸収放出に伴い板
材に収縮膨張を起し、得られた建築用板を用いた壁、
床、建具などにおいて、反りや曲がりなどの狂いを生じ
させる要因となる。

【０００３】また、住宅内において風呂場、台所などの
水回り付近の壁内、床下において、空気の流れが生じず
局所的に湿度が高いまま滞留する場所では、断熱材や木
質系板材などの建築用材に腐食が生じ易い。また、乾燥
した状態が長く続く場所では、木質系部材に収縮が生じ
接合部に隙間が発生し、予定しない部分から空気の移動
（すきま風）が盛んに行なわれることにより、冷暖房の
効率が低下するなどの問題が生じていた。

【０００４】このような問題を解決するために、防湿材
の表裏に紙を積層した防湿シートなどの防湿材を木質系
板材の表面に貼着することにより、水分が浸透するのを
防止する建築用板が提案された。

【０００５】しかしながら、これら防湿材は液体の水の
状態での浸透を抑制することはできるものの、気体中に
分散した水蒸気の浸透を防止することはできず、長期間
の間に徐々に水蒸気が浸透し、あるいは建築用板内の水
分が放出され、その結果として建築用板の収縮膨張およ
び腐食等の問題が依然発生していた。

【０００６】このような問題を解決するため、冷暖房に
要するエネルギーの節約と住み心地の良い居住空間の提
供を目的として、室内の空気および水分が勝手に壁裏、
床下等に移動しないように、部屋を構成する床、天井、
壁面の全てに防湿気密シートを張り、気密性能を付与し
た状態で計画的に２４時間換気を行なう高気密・高断熱
工法が実施されるようになった。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】しかし、高気密・高断
熱工法における、防湿気密シートの施工は部屋を構成す
る床、天井、壁面の外側全てに行なうものであり、施工
が煩雑で手間がかかり、施工途中に防湿気密シートを損
傷し易く、一か所でも傷又は穴を開けてしまうと気密性
能が低下してしまうという問題を有していた。

【０００８】その施工手間を解決するために、木質基板
の表面に防湿気密シートを貼着した建築用板による代用
が検討されたが、防湿気密シートとして一般に認められ
ている１００μｍ厚以上のポリエチレンフィルムや２０
０μｍ厚以上の塩化ビニルフィルムが持つ防湿性能、即
ち水蒸気透過率７ｇ／ｍ^２・２４ｈｒ以下と同等の防湿
性能を持たせるためには、防湿気密シートと同等の厚さ
のポリエチレン層を積層させる必要があり、木質基板の
表面にこのような層を安定して形成するにはコストが高
く、また、形成した層自体が強度的に弱く、建築用板と
しての運搬、施工時に容易に傷がつきやすい等の問題を
有していた。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明者はこのような問
題点を解決するため、工業的生産に適し優れた防湿性能
を有する建築用板を提供することを目的として鋭意研究
を重ねた結果、本発明に到達したものである。

【００１０】すなわち本発明は、木質基板１の少なくと
も片面に、アルミニウム層３を芯層としその片面に紙層
２を、他面に合成樹脂フィルム層４を積層された積層体
Ｓを、その紙層２が木質基板１に接するように貼着され
るとともに、合成樹脂フィルム層４の表面に断熱材Ｓが
貼着されてなる建築用板である。

【００１１】

【作用】本発明の建築用板によれば、紙層、アルミニウ
ム層、合成樹脂フィルム層の順で積層一体化された積層
体の紙層が、木質基板に貼着されることにより、高気密
・高断熱工法に用いられる防湿気密シートと同等以上の
防湿性能を有し、同時に優れた断熱性能をも有する建築
用板の提供を可能としたものである。

【００１２】

【実施の形態】図１は本発明の建築用板の断面図の一例
を示すものであり、紙層２、アルミニウム層３および合
成樹脂フィルム層４の順で積層された積層体Ｓの、紙層
２が木質基板１の片面に貼着されるように積層された状
態の建築用板を示す。

【００１３】本発明の建築用板を構成する木質基板１と
しては、例えば、合板、木削片板、木質繊維板、単板積
層板を単独で又は任意組み合わせ複合したものを用いる
ことができる。また、木質基板１の片面のみに積層体Ｓ
を貼着する場合、木質基板１の逆の面には用途に応じ任
意化粧層を形成することができる。

【００１４】この化粧層は、天然木材を切削して得られ
る天然突板、人工突板、および不織布、紙、合成樹脂シ
ートを裏打ちした突板シート、または、化粧紙、樹脂含
浸紙、不織布、紙、合成樹脂シート等の化粧シートを、
接着剤を用い接着することにより形成するか、あるいは
木質基板表面に直接塗装または印刷を施すことにより形
成される。

【００１５】また、化粧層の表面に、上塗り層を設ける
こともできる。このような化粧層を設けることにより、
表面側からの水分の浸透も防止されることとなり、湿度
変化に伴う反り、結露、腐食等の問題を解決することが
できるものである。

【００１６】木質基板１に貼着する積層体Ｓの紙層２と
しては、クラフト紙、薄葉紙、再生紙等を使用すること
ができる。この紙層２が配されることにより、紙層２の
投錨効果および紙層２内に接着剤が浸透しやすいため、
積層体Ｓを木質基板１に貼着する際の接着強度を十分に
確保することができる。

【００１７】また、合成樹脂フィルム層４としては、ポ
リエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、硬質塩
化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンデレフタレー
ト等の合成樹脂フィルムを使用することができる。合成
樹脂フィルムの厚さは１０μｍ以上のものを使用するこ
とができる。

【００１８】好ましくは１０〜３０μｍのものを使用す
る。合成樹脂フィルムの厚さが１０μｍより薄いとアル
ミニウム層を蒸着しても十分な防湿性能を得ることがで
きない。また、３０μｍより厚いものを用いても、アル
ミニウム層を蒸着した状態の防湿性能は同等の性能しか
得られず、単にコストが上昇するだけで好ましくない。

【００１９】本発明ではこれら合成樹脂フィルム層４に
アルミニウム層３を積層したものを使用する。アルミニ
ウム層３としては、アルミ箔またはアルミニウムを合成
樹脂フィルム層４の片面に蒸着したものを使用すること
ができる。アルミ箔を使用する場合は１０μｍ以上のも
のを使用する。

【００２０】これに対し、アルミ蒸着の場合には、アル
ミ層と合成樹脂フィルムの複合的防湿性能を発揮するた
め、４００Åの蒸着量でアルミ箔１０μｍと同等の防湿
性能を示すことができる。

【００２１】このため、アルミニウム蒸着の方が好まし
い。アルミニウムの蒸着は、例えば、１０^−４ｍｍＨｇ
程度の高度の真空下でアルミニウムを融点以上の温度に
加熱することにより、アルミニウムは蒸気となり飛散す
る。この蒸気中に冷却状態の合成樹脂フィルムをさらす
ことにより、アルミニウムの蒸気は合成樹脂フィルムの
表面に付着して分子状の微粒子で凝固する。

【００２２】このような方法により合成樹脂フィルム層
４の表面に非常に薄いアルミニウムコーティングを行な
うことができる。本発明における合成樹脂フィルム層４
に蒸着するアルミニウム層３の厚さは、４００Åから８
００Åの厚さに形成することが好ましい。

【００２３】４００Åより薄い層では高気密・高断熱工
法において要求される防湿性能を十分に発揮することが
できない。また８００Åより厚くアルミニウム層３を形
成してもそれ以上防湿性能は向上しない。

【００２４】尚、前記合成樹脂フィルム層４の中でも特
にポリエチレンテレフタレートは、その単独での水蒸気
透過率は１２μｍ厚さのシートで４０ｇ／ｍ^２２４ｈｒ
以上と水蒸気を通しやすいものであるが、アルミニウム
を蒸着することにより水蒸気透過率を格段と減少させる
ことができる。

【００２５】すなわち、単独のシート状態ではポリエチ
レンテレフタレートよりも水蒸気透過率が低い樹脂シー
トと比較して、同一厚さのアルミニウム層を形成した状
態では、ポリエチレンテレフタレートのシートの方がそ
の水蒸気透過率は低くなる。このため他の樹脂よりも薄
いシートで十分な防湿性能を発揮することができ特に好
ましい。

【００２６】尚、積層体Ｓは合成樹脂フィルム層４に蒸
着されたアルミニウム層３と紙層２とを貼着することに
より形成されるが、合成樹脂フィルム層４に蒸着された
アルミニウム層３と紙層２とは、ポリエチレン、塩化ビ
ニル、ポリプロピレン等の合成樹脂シートを介在させて
熱融着により貼着するか、あるいは接着剤を用いて貼着
される。（図示せず。）

【００２７】熱融着による貼着の例としては、紙層２の
上にポリエチレンシートを積層し、さらにアルミニウム
の蒸着した合成樹脂フィルム層４を積層した後、全体を
加熱圧着してポリエチレンシートを融着させ貼着するこ
とができる。

【００２８】尚、加熱圧着の際の加熱温度は、合成樹脂
フィルム層４の溶融温度より低い温度で行なう必要があ
る。加熱圧着により合成樹脂フィルム層４までが溶融し
てしまっては、アルミニウム蒸着により向上させた防湿
性能が低下してしまうためである。

【００２９】このため、熱融着によりアルミニウム層３
と紙層２とを貼着させるために用いる合成樹脂シート
は、合成樹脂フィルム層４の溶融温度より低いものを選
択することが好ましい。

【００３０】このように、熱融着により貼着することに
より、紙層２内の途中までポリエチレン樹脂が浸透硬化
した状態で貼着される。また、接着剤を用いて貼着する
場合、尿素樹脂系、フェノール樹脂系、メラミン樹脂
系、酢酸ビニル樹脂系、ビニールウレタン樹脂系の接着
剤を用い貼着することができる。いずれの方法により貼
着した積層体Ｓも、紙層２のアルミニウム層３との貼着
面側には、貼着に用いた接着剤または合成樹脂シートが
溶融した樹脂が、紙層２の内部まで浸透した浸透部分を
有するものである。

【００３１】さらに、本発明の建築用板は、該積層体Ｓ
を木質基板１に貼着することにより得られるが、両者の
貼着は接着剤を介して行なわれる。この際に用いる接着
剤は、前記積層体Ｓの紙層２とアルミニウム層３との貼
着に使用した接着剤と同様のものを使用することができ
る。

【００３２】こうして紙層２を木質基板１に貼着するこ
とにより、紙層２の木質基板１側から紙層２の内部に接
着剤が浸透し、前記アルミニウム層３と紙層２を貼着す
る際に紙層の内側に形成された接着剤または合成樹脂シ
ートが溶融した樹脂の浸透部分にまで至り、紙層２内に
紙層単独の層が残存しないことにより、紙層２の剥離強
度が非常に優れたものとなる。

【００３３】また、本発明の断熱材５としては、発泡ポ
リエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ウレタン等の合成
樹脂発泡体からなる板状体を用いることができる。尚、
合成樹脂に難燃剤を混合することにより、または、合成
樹脂発泡体の発泡剤としてフッ素系有機物を用いること
により難燃性を付与したものが好ましい。

【００３４】断熱材５は積層体Ｓの合成樹脂フィルム４
の表面に貼着される。両者の貼着は接着剤を介して行な
われる。この際用いる接着剤としては、尿素樹脂系、フ
ェノール樹脂系、メラミン樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、
ビニールウレタン樹脂系の接着剤を用いることができ
る。

【００３５】図１は積層体Ｓを貼着した木質基板１と断
熱材５との寸法が同一のものが貼着された状態を示して
いるが、本発明の建築用板を例えば住宅の壁材として用
いる場合には、柱材に建築用板を固定するための釘打ち
部、あるいは柱材に欠き込みを形成しそこに嵌合するた
めの嵌合部が必要となる。このため、断熱材５の寸法を
木質基板１および積層体Ｓの寸法より小さいものを用
い、建築用板の周縁の断熱材５より突出した木質基板１
および積層体Ｓ部分を釘打ち部または嵌合部とすること
が好ましい。

【００３６】また、図２に示すように、積層体Ｓを構成
する合成樹脂フィルム層４の表面に、さらに紙層５を貼
着することができる。紙層５を形成することにより、断
熱材５との貼着において、接着剤が紙層６内に浸透する
ことにより、優れた接着強度を確保することができる。

【００３７】尚、紙層５の貼着は、前記アルミニウム層
３と紙層２とを貼着するのと同様に、合成樹脂シートの
熱融着または接着剤により貼着することができる。さら
に、木質基板１の両側に積層体Ｓを貼着した場合に、本
発明の建築用板を運搬、施工する際に合成樹脂フィルム
層およびアルミニウム層に傷が付くのを防止することが
できる。

【００３８】さらに図３に示すように積層体Ｓは木質基
板１の片面だけでなく、両面に貼着することもできる。
このように、木質基板１の両側に積層体Ｓを貼着するこ
とにより、建築用板の表裏両方向からの、空気の移動お
よび水分の移動を完全に遮断することが可能となる。ま
た、木質基板の両面に加え四周木口面にも積層体Ｓを貼
着することにより、いずれの方向からの水分の移動を完
全に遮断することができる。

【００３９】また、図４は本発明の別の実施例を示すも
のであり、積層体Ｓを貼着した側とは逆の面に防水シー
トＡを貼着したものである。防水シートＡとしては、ポ
リエチレン、塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリウレタ
ン等の合成樹脂シート、アルミニウム、銅等の金属シー
ト、アスファルトフェルト、ルーフィング等の瀝青質シ
ート、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、
ポリスチレンフォーム、発泡ゴム等の発泡シート、ゴム
シートを防水層Ａ１として用い、その表裏に積層する紙
層Ａ２，Ａ３としては、クラフト紙、薄葉紙、再生紙な
どが用いられる。

【００４０】また、これら３層は、防水層Ａ１の表裏に
紙層Ａ２，Ａ３とを積層し熱融着あるいは接着剤を用い
て貼着される。この際用いる接着剤としては、尿素樹脂
系、フェノール樹脂系、メラミン樹脂系、酢酸ビニル樹
脂系、ビニールウレタン樹脂系等が用いられる。

【００４１】いずれの方法により得た防水シートも、防
水層の表裏に貼着した紙層の内側に防水層との接着に用
いた接着剤または防水層自体が溶融した樹脂が浸透した
部分を有するものである。

【００４２】このように防水シートＡを貼着することに
より、防水シートＡを貼着した側において液体の水の透
過は防止するが、気体の水蒸気は透過させることとな
り、建築用板の使用目的として一方の面が接触する部分
または部屋内の湿度の変化に対し、本発明の建築用板が
水蒸気を吸収または放出することにより、湿度の急激な
変化を抑制する機能を発揮することができる。

【００４３】

【効果】本発明の建築用板によれば、積層体Ｓを貼着し
た面においては、高気密・高断熱工法における、防湿気
密シートを貼着したのと同等の防湿気密性能を有するた
め、高気密・高断熱工法の構造パネルとして使用する場
合においては、パネルの枠材との嵌合部または接合部に
シール材、または気密テープを設けることにより、パネ
ル１枚が防湿気密性能および断熱性能を有するものとな
る。

【００４４】また、本発明の建築用板により壁面、床下
地面および天井面を形成する際にも、建築用板間あるい
は構造材との固定部においてのみ、気密テープあるいは
合成樹脂フォームの充填などの防湿・気密処理をするこ
とで、気密性能を確保することができ、施工期間が著し
く短くすることができる。また、構造パネル以外の用途
に用いても、気体の水蒸気の影響を全く受けることがな
く、基本的に収縮膨張も発生しないため、特に湿度の高
い場所に用いるのに適している。

【図面の簡単な説明】

【図１】 建築用板の断面図の一例、

【図２】 積層体Ｓの合成樹脂フィルム層４の表面に紙
層５を貼着した場合の断面図、

【図３】 積層体Ｓを木質基板１の両面に貼着した場合
の断面図、

【図４】 積層体Ｓを貼着した側とは逆の面と防水シー
トＡを貼着した場合の断面図、

【符号の説明】

１：木質基板、２：紙層、３：アルミニウム層、４：合
成樹脂フィルム層、５：断熱材、Ｓ：積層体。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 ＦＩ Ｂ３２Ｂ 15/12 Ｂ３２Ｂ 15/12 15/20 15/20 21/06 21/06 Ｃ２３Ｃ 14/14 Ｃ２３Ｃ 14/14 Ｂ Ｅ０４Ｂ 5/02 Ｅ０４Ｂ 5/02 Ｅ Ｅ０４Ｃ 2/26 Ｅ０４Ｃ 2/26 Ｔ Ｖ Ｅ０４Ｂ 5/02 2/50 Ｂ

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 木質基板の少なくとも片面に、アルミニ
   ウム層を芯層としその片面に紙層を、他面に合成樹脂フ
   ィルム層を積層された積層体を、その紙層が木質基板に
   接するように貼着されるとともに、合成樹脂フィルム層
   の表面に断熱材が貼着されてなる建築用板。
2. 【請求項２】 アルミニウム層が、合成樹脂フィルム層
   の片面に蒸着により設けられてなることを特徴とする請
   求項１記載の建築用板。
3. 【請求項３】 合成樹脂層の熱融着により合成樹脂の一
   部が紙層内に浸透した状態で貼着されていることを特徴
   とする請求項１記載の建築用板。