JPH11116418A - カテキン類由来抗菌物質、その製造方法および微生物の増殖を抑制する方法 - Google Patents

カテキン類由来抗菌物質、その製造方法および微生物の増殖を抑制する方法

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JPH11116418A
JPH11116418A JP28908097A JP28908097A JPH11116418A JP H11116418 A JPH11116418 A JP H11116418A JP 28908097 A JP28908097 A JP 28908097A JP 28908097 A JP28908097 A JP 28908097A JP H11116418 A JPH11116418 A JP H11116418A
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green tea
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JP28908097A
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Masashi Asaga
昌志 朝賀
Yoshio Aoyama
好男 青山
Ritsuko Nakanishi
律子 中西
Keiko Murai
恵子 村井
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Toyo Seikan Group Holdings Ltd
Original Assignee
Toyo Seikan Kaisha Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 安全性が高く安価な天然物由来抗菌物質を提
供する。 【解決手段】 図1のA点とB点を結ぶ曲線より右側の
範囲内の加熱温度と加熱時間により加熱処理した茶抽出
液またはカテキン類抽出物溶液からカテキン類由来抗菌
物質を分離する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、茶抽出液またはカ
テキン類抽出物の溶液を加熱することにより得られるカ
テキン類由来抗菌物質およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】食品の安全性は大変重要である。従来、
食品保存のためにパラオキシ安息香酸、安息香酸、ソル
ビン酸などの化学合成品が広く用いられてきたが、化学
合成保存剤は毒性、皮膚刺激、アレルギーなどにおいて
必ずしも安全であるといえず、その使用に対して厳しい
規制が敷かれている。さらに、消費者の健康志向の高ま
りもあり、これまで以上に安全性の高い保存剤が望まれ
ている。これらの理由により安全な天然物由来の保存剤
の開発が望まれている。このため、天然保存剤の研究・
開発が多くなされてきた。
【0003】現在、天然抗菌物質としては、白子タンパ
ク質、リゾチーム、ペクチン分解物、茶抽出物、ヒノキ
チオール、キトサン、ラクトフェリンなどがある。しか
しながら、天然抗菌物質は抗菌力が弱いこと、経済的に
高価であることなどの問題点があり、合成保存剤の代用
としてはまだ満足のいく物でない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】茶抽出物は既に使用さ
れており、その安全性は極めて高い。茶抽出物の抗菌活
性は、それに含まれるカテキン類によるものである。し
かしながら、その抗菌力は合成保存剤に比べ低く、その
用途は限られているのが現状である。例えば、緑茶、ブ
レンド茶などの容器詰め茶飲料の場合、強い耐熱性を示
す芽胞形成菌が変敗の原因となるが、現状の茶抽出液で
は抗菌力が充分でないので、製品をレトルト殺菌する必
要がある。
【0005】本発明は、上記の事情にかんがみなされた
ものであって、より強い抗菌力を示す茶抽出物を製造す
ることにより、その用途を格段に拡げようとするもので
ある。
【0006】例えば、容器詰め飲料などでは、この物質
の使用により、殺菌条件が軽減され品質のより良い製品
を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するため研究と実験を重ねた結果、茶抽出液また
はカテキン類抽出溶液をある特定の加熱条件で加熱処理
すると、意外なことにこの加熱処理した茶抽出液または
カテキン類抽出物溶液の有する抗菌活性が高まり、この
加熱処理した茶抽出液またはカテキン類抽出物溶液から
抽出したカテキン類由来物質は加熱処理前のカテキン類
に比べて高い抗菌性を有していることを発見し、本発明
に到達した。
【0008】すなわち、請求項1記載のカテキン類由来
抗菌物質は、図1のA点とB点を結ぶ曲線より右側の範
囲内の加熱温度と加熱時間により加熱処理した茶抽出液
またはカテキン類抽出物溶液から分離される。
【0009】また請求項2記載のカテキン類由来抗菌物
質の製造方法は、茶抽出液またはカテキン類抽出物溶液
を図1のA点とB点を結ぶ曲線より右側の範囲内の加熱
温度と加熱時間により加熱処理した後該茶抽出液または
カテキン類抽出物溶液からカテキン類由来物質を分離す
ることを特徴とする。
【0010】また、請求項3記載のカテキン類由来抗菌
物質の製造方法は、前記茶抽出液またはカテキン類抽出
物溶液に酸素を供給添加した後前記加熱処理を行うこと
を特徴とする。
【0011】また、請求項4記載の方法は、図1のA点
とB点を結ぶ曲線より右側の範囲内の加熱温度と加熱時
間により加熱処理した茶抽出液またはカテキン類抽出物
溶液を他の飲料または食品に添加することにより微生物
の増殖を抑制するものである。
【0012】一般に、茶飲料は、茶に含まれるエピカテ
キン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピ
ガロカテキンガレート等のカテキン類が抗菌活性を有す
るために変敗しにくいことが知られている。しかし、通
常容器詰め飲料として60℃程度の温度で抽出した茶飲
料では細菌は増殖する。一方緑茶飲料を加熱殺菌すると
カテキン類が減少することが報告されており、茶飲料を
加熱処理すればカテキン類の減少に伴い茶飲料の抗菌活
性は減少することも予想される。
【0013】本発明者らの実験によれば、茶飲料の加熱
処理の結果、意外なことに、茶飲料の抗菌活性は有意に
増加することが判明した。
【0014】図1は、未加熱の緑茶飲料中で最も高い増
殖が認められるBacillus Subtilis菌を指標菌として選
び、茶抽出液を種々の加熱条件で加熱処理した後該指標
菌を接種し菌の増殖の有無を調べた結果を示すグラフで
あり(実験の詳細については後述する)、図1のA点と
B点を結ぶ曲線より右側の範囲内の加熱温度と加熱時間
により加熱処理した茶抽出液においては該指標菌の増殖
はまったく認められず、同曲線の左側の範囲の加熱処理
に比べて高い抗菌活性を有することが認められた。この
事実は、加熱処理により、カテキン類とは異なる抗菌活
性のより高い物質が生成したことを示すものである。
【0015】茶抽出液の加熱処理による成分変化を見る
と、カテキン類以外の茶抽出液成分であるアミノ酸およ
びカフエインはほとんど変化しないのに対し、カテキン
類は個々の成分が減少しているので、加熱処理により生
成した抗菌性の高い物質は、その分子構造は未同定であ
るが、カテキン類のエピマー等の異性体とカテキン類の
重合体等のカテキン類由来物質であると考えられた。
【0016】このカテキン類由来抗菌物質は、茶抽出液
ばかりでなく、茶抽出液から抽出精製したカテキン類の
水溶液を加熱処理することによって生成することができ
る。
【0017】実験の結果、茶抽出液中の溶存酸素の量が
増加するにつれて抗菌活性も増加することが判った。そ
の理由は不明であるが、カテキン類由来抗菌物質がカテ
キン類の酸化重合によって生じる重合物であるとすれば
溶存酸素量が抗菌物質の生成量に影響することも考えら
れる。いずれにせよ、茶抽出液中の溶存酸素量の多い方
が本発明のカテキン類由来抗菌物質の生成に有利である
ことが判ったので、同抗菌物質の製造に際しては、加熱
処理に先立ち茶抽出液またはカテキン類抽出物溶液中に
酸素を吹込む等の方法により液中の溶存酸素量を増加さ
せておくことがカテキン類由来抗菌物質の収率を高める
上に有利である。
【0018】このカテキン類由来抗菌物質は茶抽出液ま
たはカテキン類抽出物水溶液から、溶媒抽出法等の常法
により、加熱処理により変化していないカテキン類との
混合物として分離することができる。
【0019】この分離されたカテキン類由来抗菌物質
を、例えば、適当量だけ茶飲料に添加することにより、
または上記加熱条件で加熱処理された茶抽出液またはカ
テキン類抽出物水溶液を適当量だけ茶飲料に添加するこ
とにより、その高い抗菌活性のため、通常のホットパッ
クにより茶飲料を缶、ペットボトル等の容器に充填密封
するだけで足り、従来の缶詰茶飲料のようにレトルト殺
菌を行うことなく容器詰茶飲料を製造することができ
る。したがって茶飲料に加えられる熱履歴を従来の缶詰
茶飲料に比べて大幅に減少させることができ、茶特有の
フレーバーを保存させることができる。
【0020】また、果実食品や飲料など酸性食品や飲料
は通常低温殺菌しているが、酸性で増殖できる好酸性細
菌は低温殺菌では滅菌できない。酸性食品や飲料等に本
発明の抗菌物質を添加することにより好酸性細菌の増殖
を抑え食品や飲料等の保存性を高めることができる。そ
の他天然物由来の保存剤として各種の食品に広く使用す
ることができる。
【0021】本発明における茶抽出液の原料となる茶
は、緑茶のほか、紅茶、ウーロン茶等カテキン類を含有
する茶であれば使用することができる。また茶抽出液の
原料となる茶葉は抽出前の茶葉に限らず、容器詰茶飲料
製造のため抽出後の茶葉抽出かすでも利用可能であり、
飲料茶として加工前の生茶葉等も使用可能である。
【0022】
【発明の実施の形態】以下添付図面を参照して本発明の
形態について説明する。本実施形態においては緑茶飲料
を実験対象として選び、緑茶飲料における細菌増殖に対
するカテキン類抑制効果、すなわち抗菌効果が、加熱処
理によりどのように変化するかを実験により確めた。
【0023】〔実験例1〕まず、本実施形態において使
用した実験方法について説明する。
【0024】1.緑茶飲料の調製と加熱処理 緑茶は市販の煎茶(宇治産)を用いた。基本的に試験に
用いた緑茶飲料は、一度煮沸脱気した60℃の水に1/
100倍量の茶葉を加え、60℃で3分攪拌後、ナイロ
ン濾布で濾して調製した。
【0025】調製した緑茶飲料を容量200gの缶にホ
ットパックした後、120℃で1.5分と14分加熱し
た。
【0026】2.緑茶飲料からのカテキン類の除去 カテキン類はポリビニルポリピロリドンに吸着するの
で、比較のため緑茶飲料からカテキン類を除去する場合
は、ポリビニルポリピロリドンを加え、30分攪拌後濾
過することでカテキンを除去した。
【0027】3.緑茶飲料でのBacillus属細菌の増殖試
験 (1) 試験菌とその芽胞懸濁液の調製 試験に用いたB.subtilis(分離菌A)とB.stearothermo
philus(分離菌B)は財団法人 東洋食品研究所で缶詰
より分離した保存株である。B.subtilis(IAM121
18),B.licheniformis (IAM13417),B.st
earothermophilus(IAM11002とIAM1106
2)は、東京大学分子細胞生物学研究所細胞・機能高分
子総合センターより入手した。
【0028】B.subtilis(分離菌A)の芽胞は標準寒天
培地(ニッスイ)、37℃で培養して得た。その他の菌
の芽胞は、液体ブロス前培養後普通寒天培地(ニッス
イ)に移し、B.subtilis(IAM12118)は30
℃、B.licheniformis (IAM13417)は37℃、
B.stearothermophilus(IAM11002、IAM11
062と分離菌B)は55℃で培養して得た。培養後滅
菌水に懸濁した液を芽胞懸濁液として冷蔵保存した。
【0029】(2) 細菌増殖試験法 緑茶の抗菌活性の加熱に伴う変化を検討するために、細
菌増殖試験では緑茶飲料を加熱滅菌することができな
い。このため、試験に用いた緑茶飲料はすべて0.2μ
mのフィルターを用い濾過除菌した。また、予め接種す
る菌懸濁液は、試験検液の初期濃度が芽胞約104 個/
mlになるように希釈し、80℃、10分加熱処理し
た。
【0030】検液に接種後、所定温度で培養した。試料
中の菌濃度は、650nmの吸光度および普通寒天培地
を用いたコロニーカウント法による生菌数測定により求
めた。菌の増殖の判定は菌濃度が100倍以上になった
ものを増殖したとみなした。
【0031】なお、増殖の有無および速度を比較するた
めに、酵母エキス0.625g、ペプトン1.25g、
ブドウ糖0.25gを水に溶かし、pH7.0に調整後
1000mlに定容した液を加熱滅菌したものを比較培
地として用いた。これは標準寒天培地より寒天を除いた
組成液をカテキン除去した緑茶飲料の可溶性固形分と同
じ程度になるように希釈したものである。
【0032】(3) カテキン量の異なる緑茶飲料のBacill
us属細菌の増殖の有無 1%と4%茶葉で抽出した緑茶飲料を混合して、総カテ
キン量の異なる緑茶を調製し、濾過除菌した。この試料
に菌懸濁液1mlを接種後、所定温度で培養し、菌濃度
の変化を調べた。
【0033】(4) 加熱処理した緑茶飲料でのBacillus属
細菌の増殖 未加熱区はそのまま緑茶飲料を濾過除菌し、95℃加熱
区は95℃、5分保温し冷却した後濾過除菌した。12
0℃加熱区は濾過除菌した緑茶飲料をオートクレーブで
120℃、10分処理した後冷却した。これらの試料に
菌懸濁液1mlを接種後、所定温度で培養し、菌濃度の
変化を調べた。
【0034】(5) 緑茶飲料の抗菌活性に対する120℃
での加熱時間の影響 ホットパック(95℃加熱)と120℃で加熱した緑茶
飲料缶詰を試料として濾過除菌した。これらの試料にB.
subtilis (分離菌A)の菌懸濁液1mlを接種後、所
定温度で培養し、菌濃度の変化を調べた。
【0035】4.緑茶飲料成分の分析 試料のpHはpHメーター、可溶性固形分は示差濃度計
で測定した。試料中のカテキン類は、酒石酸鉄試薬によ
る比色法により市販緑茶カテキン抽出物を標品として総
カテキン量を求め、個々の成分は高速液体クロマトグラ
フィーにより分析した。カフェインはカテキン類と一緒
に高速液体クロマトグラフィーで、また、アミノ酸はア
ミノ酸分析装置を用いて定量した。
【0036】上記方法により行った実験の結果は次のと
おりである。 1.カテキン量の異なる緑茶飲料でのBacillus属細菌の
増殖 カテキン量の異なる緑茶飲料でBacillus属細菌が増殖で
きるかどうか検討した結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】B.subtilis(IAM12118、分離菌
A)の2菌株は総カテキンが156mg/100mlの
緑茶飲料で増殖が認められ,B.stearothermophilus(分
離菌B)は総カテキンが52mg/100mlの緑茶飲
料で増殖が認められた。一方、B.licheniformis (IA
M13417)とB.stearothermophilus(IAM110
62とIAM11002)の3菌株は、ほとんど増殖が
認められなかった。
【0039】2.加熱による緑茶飲料の抗菌活性の変化 次に、細菌として緑茶飲料で増殖が認められたB.subtil
is(IAM12118、分離菌A)とB.stearothermoph
ilus(分離菌B)の3菌株を用い、加熱した緑茶飲料で
のBacillus属細菌の増殖の有無を検討した。その結果を
表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】未加熱と95℃加熱した緑茶飲料では細菌
の増殖が認められたが、120℃加熱した緑茶飲料では
増殖は認められなかった。このことは、緑茶飲料の抗菌
効果が120℃の加熱処理により増加したことを示して
いる。
【0042】そこで、緑茶飲料で最も良く増殖したB.su
btilis(分離菌A)を用い、加熱に伴う緑茶飲料の抗菌
活性の増加について加熱時間の影響を検討した。加熱処
理時間の異なる緑茶飲料でのB.subtilisの増殖について
試験した結果を図2に示す。95℃加熱の緑茶飲料では
B.subtilisの増殖が認められたが、120℃で1.5分
および14分加熱処理した緑茶飲料では増殖は認められ
なかった。
【0043】これらのカテキン除去した緑茶飲料でのB.
subtilisの増殖について試験した結果を図3に示す。前
記のとおり120℃加熱処理した緑茶飲料ではB.subtil
isの増殖が認められなかったが、図3からカテキンを除
去することによりB.subtilisが増殖できるようになった
ことが判る。
【0044】これらのことは、加熱することで緑茶飲料
に抗菌活性の強い物質が生成し、この生じた物質は緑茶
カテキン類と同様にポリビニルポリピロリドンに吸着す
ることを示している。
【0045】3.加熱による緑茶飲料成分の変化 図2と3の試験に用いた緑茶飲料のpH、可溶性固形分
と総カテキン量を表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】緑茶飲料のpH、可溶性固形分と総カテキ
ン量は、加熱処理によりほとんど変化しなかった。一
方、カテキン除去によりpHが増加し、可溶性固形分と
総カテキン量は減少した。
【0048】これらの試料のカテキン成分を高速液体ク
ロマトグラフィーで分析した結果、カテキン類は加熱に
よりエピマー化等の異性化、重合、分解が起こっている
ことが示唆された。
【0049】一方、ポリビニルポリピロリドン処理する
と、エピガロカテキンガレートとカテキンガレートがわ
ずかに認められるだけで、総計で約99%が除去され
た。
【0050】カテキン類以外の代表的な緑茶成分である
カフェインおよびテアニンを含むアミノ酸の加熱に伴う
変化をそれぞれ表4と5に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】カフェインは、加熱処理によりほとんど変
化せず、ポリビニルポリピロリドン処理で除去されなか
った。
【0054】テアニンを含むアミノ酸を見ると、加熱処
理によりテアニンがわずかに減少したが、それ以外はほ
とんど変化せず、ポリビニルポリピロリドン処理でも変
化しなかった。
【0055】以上の実験の結果をまとめると、緑茶飲料
でのBacillus属細菌の増殖は菌種により異なり、最も増
殖したのはB.subtilis(IAM12118、分離菌
A)、次いでB.stearothermophilus(分離菌B)であっ
た。しかし、緑茶の濃度が高くなるとこれらの菌でも増
殖が抑えられた。これは緑茶カテキン類の抗菌効果によ
るものと考えられる。
【0056】B.subtilis(IAM12118、分離菌
A)とB.stearothermophilus(分離菌B)の増殖が可能
な緑茶飲料を120℃で加熱すると、これらの菌の増殖
を抑制する効果が強くなった。
【0057】加熱で生じた抗菌効果を示す成分は、緑茶
カテキン類と同じくポリビニルポリピロリドンに吸着
し、分析した成分の中で加熱で大きく変化したのがカテ
キン類であったことから、加熱で生成した抗菌活性物質
はカテキンの加熱生成物である異性体および重合物の可
能性が高い。いずれにせよ、以上の実験の結果は、加熱
処理により生じたカテキン類よりも高い抗菌活性を示す
物質がカテキン類由来の抗菌物質であることを示してい
る。
【0058】〔実験例2〕次に、実験例1と同一方法に
より、種々の温度、時間で加熱処理した緑茶飲料におけ
るB.subtilis(分離菌A)に対する抗菌活性の変化を調
べた。その結果を図1に示す。図1の結果から、A点と
B点を結ぶ曲線より右側の範囲内の加熱温度と加熱時間
で処理した緑茶飲料においてはB.subtilisの増殖は認め
られなかった。
【0059】〔実験例3〕緑茶飲料における溶存酸素量
が加熱処理によるカテキン類由来抗菌物質の生成におよ
ぼす影響について調べるため、実験例1の方法により調
製した緑茶飲料における溶存酸素量を0.1mM、0.
19mM,0.81mMに調節した3試料をそれぞれ1
15℃、1分と115℃、10分で加熱処理した後B.su
btilis(分離菌A)を接種してその増殖の有無を調べ
た。その結果を表6に示す。
【0060】
【表6】
【0061】表6から、加熱条件が同一であっても、緑
茶飲料中の溶存酸素の量が増加するにつれ抗菌活性が増
加することが判った。
【0062】〔実験例4〕次の溶媒抽出法により緑茶か
ら本発明にかかるカテキン類由来抗菌物質を分画した。
【0063】緑茶飲料は、実験1と同一方法により調製
した。この緑茶飲料について未加熱の試料(対照)と1
20℃、10分加熱処理した試料(各200ml)を準
備した。各試料200mlにクロロホルム100mlを
添加し15分間振とうして試料を水層とクロロホルム層
に分離した。この水層に酢酸エチル100mlを添加し
15分間振とうして試料を水層と酢酸エチル層に分離し
た。さらにこの水層にn−ブタノール100mlを添加
して15分間振とうして試料を水層とn−ブタノール層
に分離した。各溶媒による抽出は2回ずつ行った(計2
00ml)。各抽出区分は減圧乾固して溶媒を除き、水
に溶かした。
【0064】ポリビニルポリピロリドンによりカテキン
類を除去した60℃抽出緑茶に各抽出物を添加して、B.
subtilis(分離菌A)を接種し、増殖の有無を測定し
た。
【0065】各分画画分のB.subtilis(分離菌A)に
対する抗菌活性の測定結果は次表7のとおりであった。
【0066】
【表7】
【0067】そこで抗菌活性を示した酢酸エチル画分に
ついて抗菌活性の力価を測定したところ、測定結果は次
表8のとおりであり、120℃、10分加熱のものは対照に
比べて約2倍の力価を示した。
【0068】
【表8】
【0069】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、茶
抽出液またはカテキン類抽出物溶液を特定の加熱条件に
より加熱することにより抗菌活性の高いカテキン類由来
抗菌物質が得られるので、このカテキン類由来抗菌物質
を適当量だけ茶飲料に添加することにより、または上記
加熱条件で加熱処理された茶抽出液またはカテキン類抽
出物水溶液を適当量だけ茶飲料に添加することにより、
その高い抗菌活性のため、通常のホットパックにより茶
飲料を缶、ペットボトル等の容器に充填密封するだけで
足り、従来の缶詰茶飲料のようにレトルト殺菌を行うこ
となく容器詰茶飲料を製造することができる。したがっ
て茶飲料に加えられる熱履歴を従来の缶詰茶飲料に比べ
て大幅に減少させることができ、茶特有のフレーバーを
保存させることができる。
【0070】また果実食品や飲料など酸性食品や飲料は
通常低温殺菌しているが、酸性で増殖できる好酸性細菌
は低温殺菌では滅菌できない。酸性食品や飲料等に本発
明の抗菌物質を添加することにより好酸性細菌の増殖を
抑え食品や飲料等の保存性を高めることができる。その
他天然物由来の保存剤として各種の食品に広く使用する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】加熱条件と茶抽出液中でのB.subtilis菌の増殖
の関係を示すグラフである。
【図2】緑茶飲料のB.subtilis菌に対する抗菌効果にお
ける加熱の影響を示すグラフである。
【図3】カテキン類を除去した緑茶飲料でのB.subtilis
の増殖を示すグラフである。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 図1のA点とB点を結ぶ曲線より右側の
    範囲内の加熱温度と加熱時間により加熱処理した茶抽出
    液またはカテキン類抽出物溶液から分離されるカテキン
    類由来抗菌物質。
  2. 【請求項2】 茶抽出液またはカテキン類抽出物溶液を
    図1のA点とB点を結ぶ曲線より右側の範囲内の加熱温
    度と加熱時間により加熱処理した後該茶抽出液またはカ
    テキン類抽出物溶液からカテキン類由来抗菌物質を分離
    することを特徴とするカテキン類由来抗菌物質の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 前記茶抽出液またはカテキン類抽出物溶
    液に酸素を供給添加した後前記加熱処理を行うことを特
    徴とする請求項2記載のカテキン類由来抗菌物質の製造
    方法。
  4. 【請求項4】 図1のA点とB点を結ぶ曲線より右側の
    範囲内の加熱温度と加熱時間により加熱処理した茶抽出
    液またはカテキン類抽出物溶液を飲料または食品に添加
    することにより微生物の増殖を抑制する方法。
JP28908097A 1997-10-06 1997-10-06 カテキン類由来抗菌物質、その製造方法および微生物の増殖を抑制する方法 Pending JPH11116418A (ja)

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JP28908097A Pending JPH11116418A (ja) 1997-10-06 1997-10-06 カテキン類由来抗菌物質、その製造方法および微生物の増殖を抑制する方法

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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001087094A1 (en) * 2000-05-15 2001-11-22 Unilever Plc Ambient stable beverage
US7014876B2 (en) 2001-09-28 2006-03-21 Kao Corporation Packaged beverage
US7968139B2 (en) 2000-11-17 2011-06-28 Kao Corporation Packaged beverages
JP2012039940A (ja) * 2010-08-19 2012-03-01 Meiji Co Ltd 果実の保存方法

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