JPH1110675A - 成形品の成形方法および成形用金型 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 肉厚部のある成形品も高精度で成形できる、
成形品の成形方法を提供する。 【解決手段】 固定金型（１）と、該固定金型（１）に
対して型締、型開される可動金型（１０）と、中子（２
０、２０）とを使用し、中子（２０、２０）によりキャ
ビテイ（２、２）を塞いで、キャビテイ（１１）に溶融
樹脂を射出して成形品の一部を一次成形し、次いで中子
（２０、２０）を抜き、抜いたキャビテイ（２、２）に
溶融樹脂を射出して成形品の残りの他の部分を、先に射
出して得られた部分と一体化して成形品を得る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、固定金型と、この
固定金型に対して型締、型開される可動金型と、中子と
を使用して、限定するものではないが、厚みの差が大き
い成形品を成形する成形品の成形方法およびこの成形方
法の実施に使用される成形用金型に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】射出成形機は、文献名を挙げるまでもな
く従来周知で、固定金型、この固定金型に対して型締、
型開される可動金型、これらの金型を型締めする型締装
置、樹脂材料を計量し、そして射出する射出ユニット等
から構成されている。したがって、 射出ユニットによ
り樹脂材料を計量し、そして計量された溶融樹脂材料を
型締めされた金型のキャビテイに、射出すると、所定形
状の成形品を得ることができる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】このように、一般的な
形状の成形品は、従来周知の射出成形機あるいは金型を
使用し、そして従来周知の方法で成形することはでき
る。しかしながら、成形品の一部に肉厚部あるいは複雑
な形状部があると、問題が生じることがある。例えば、
図３の（イ）に示されているように、略均一厚さの板状
部分Ｄと角柱状の２個の脚部Ｋ、Ｋとからなる成形品に
は、肉厚部Ｎ、Ｎが存在するので、このような肉厚部
Ｎ、Ｎがある成形品を得るときは、肉厚部の「ひけ」、
「ボイド」等は大きなものとなり、成形品の精度、品質
等を落とすことがある。さらに詳しく説明すると、充填
された溶融状態の樹脂材料は、冷却されることにより、
溶融状態から固体状態へ移行するが、この移行に伴い比
容積（密度）は変化する。この変化は、冷却状態にも影
響されるが、成形品の厚さに相関し、肉厚部のひけ、ボ
イド等は大きなものとなり、肉厚部のある成形品の精
度、品質等は一般に落ちることになる。さらには、可動
金型を開いて成形品を取り出すには、射出した溶融樹脂
の冷却固化を待たなければならなが、冷却固化時間は成
形品の厚さに比例して急激に長くなるので、これらの肉
厚部Ｎ、Ｎのために成形サイクルが長くなる。このよう
な成形品の品質の問題、成形サイクルの問題等は、成形
品に肉厚部がなるだけないようにデザインすると、ある
程度解決することはできる。しかしながら、成形品の形
状に制約を受けるという、別の問題が生じる。また、従
来の成形方法では、容量の大きい成形品を得るために
は、容量の大きい射出ユニットを必要とし、容量の大き
い成形品は安価に成形できないという、欠点もある。本
発明は、上記したような従来の問題点を解決した成形方
法および成形用金型提供を提供しようとするもので、具
体的には、肉厚部のある成形品も高精度で成形できる成
形品の成形方法およびこの方法の実施に使用される成形
用金型を提供することを目的としている。また、成形品
の形状デザインの自由度の大きい成形品の成形方法およ
び成形用金型を提供することも、さらには容量の大きい
成形品を容量の小さい射出ユニットで成形することがで
きる成形品の成形方法および成形用金型を提供するする
ことも目的としている。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、成
形品を部分に分けて成形することにより達成される。す
なわち、本発明は上記目的を達成するために、固定金型
と、該固定金型に対して型締、型開される可動金型と、
中子とを使用し、前記中子によりキャビテイの一部を塞
いで、塞がれていない部分に溶融樹脂を射出して成形品
の一部を成形し、次いで中子を抜き、抜いた部分に溶融
樹脂を射出して成形品の残りの他の部分を、先に射出し
て得られた部分と一体化して成形品を得るように構成さ
れる。請求項２に記載の発明は、請求項１に記載の成形
品の一部が、一次成形により、そして残りの他の部分が
二次成形により得られるように、そして請求項３に記載
の発明は、請求項１または２に記載の先に射出して得ら
れる成形品の一部が、均一な肉厚部分であるように構成
される。請求項４に記載の発明は、固定金型と、該固定
金型に対して型締、型開される可動金型と、中子とから
なり、前記固定金型と可動金型には、成形品を得るため
の所定形状のキャビテイが形成され、前記中子は前記キ
ャビテイに対して抜き差し自在に設けられている。請求
項５に記載の発明は、請求項４に記載のキャビテイは、
中子を挿入すると残ったキャビテイ部分は、均一厚さの
空間になるように構成される。

【０００５】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図
３の（イ）に示されている、略均一厚さの板状部分Ｄと
角柱状の２個の脚部Ｋ、Ｋとからなる成形品を、図３の
（ロ）に示されているように板状部分Ｄと、角柱状の２
個の脚部Ｋ、Ｋとに分けて、板状部分Ｄは一次成形によ
り、脚部Ｋ、Ｋは二次成形により成形する例について説
明する。図１の（イ）は、本実施の形態に係わる金型の
模式的断面図で、その（ロ）は図１の（イ）において矢
印ローロ方向に見た断面図で、その（ハ）は図１の
（イ）において矢印ハーハ方向に見た断面図で、その
（ニ）はランナー切換部の拡大斜視図である。本実施の
形態に係わる金型は、図１に示されているように、固定
盤に固定されている固定金型１と、この固定金型１に対
して型締め、あるいは型開き方向に駆動される可動金型
１０とから構成され、そして詳しくは後述するように中
子２０、（２０）も備えている。

【０００６】固定金型１には、脚部Ｋ、Ｋを成形するた
めの２個の第２のキャビテイ２、２が、パーティング面
に開口した形で形成されている。また、固定金型１に
は、射出時に射出ノズルがタッチされるスプルブッシ
ュ、溶融樹脂が流れるスプルー３等が設けられている。

【０００７】可動金型１０には、板状部分Ｄを成形する
ための第１のキャビテイ１１が設けられている。この第
１のキャビテイ１１は、パーティング面に開口し、固定
金型１の第２のキャビテイ２、２に対応している。本実
施の形態によると、第１のキャビテイ１１の深さは、一
定である。したがって、第１のキャビテイ１１で得られ
る成形品は均一な肉厚になり、高精度の板状部分Ｄが成
形されることになる。可動金型１０のパーティング面に
は、図１の（ロ）、（ハ）に示されているように、互い
に干渉しない位置に３個のランナー１２、４、４が設け
られている。これらのランナー１２、４、４の一方は、
固定金型１に設けられている１個のスプルー３に連通
し、ランナー１２の他方は図示されないゲートを介して
可動金型１０の第１のキャビテイ１１に、そしてランナ
ー４、４の他方は、同様に図示されないそれぞれのゲー
トを介して固定金型１の第２のキャビテイ２、２にそれ
ぞれ連通している。

【０００８】スプルー３は、上記のようにランナー１２
に連通し、またランナー、４、４にも連通しているの
で、その切り換えのためのランナー切換装置５が設けら
れている。ランナー切換装置５は、スプール６から構成
されている。スプール６には、図１の（ニ）に拡大して
示されているように、所定の間隔をおいて３個の凹溝
４’、４’、１２’が形成されている。これらの３個の
凹溝４’、４’、１２’は、いずれもパーティング面側
に開口している。したがって、可動金型１０を開くと、
スプルーランナーを簡単に取り出すことができる。この
ように構成されているスプール６は、ランナー１２、
４、４を横切るようにして可動金型１０の方に設けら
れ、そしてランナー切換シリンダユニット７により軸方
向に駆動されるようになっている。このランナー切換シ
リンダユニット７により、スプール６を第１の位置へ駆
動すると、図１の（ロ）に示されているように、スプー
ル６の凹溝１２’はランナー１２と整合し、第２の位置
へ駆動すると、図１の（ハ）に示されているように、ス
プール６の凹溝４’、４’は、今度はランナー４、４と
整合するようになっている。

【０００９】中子２０、２０は、固定金型１の第２のキ
ャビテイ２、２の大きさ、および長さに対応した大きさ
に形成され、そして中子切換シリンダユニット２１、２
１により、それぞれのキャビテイ２、２内で、図１にお
いて上下方向に駆動されるようになっている。すなわ
ち、中子２０、２０を固定金型１の第２のキャビテイ
２、２に挿入すると、第２のキャビテイ２、２が封鎖さ
れ、可動金型１０の第１のキャビテイ１１により板状部
分Ｄを成形することができ、抜くと、今度は第２のキャ
ビテイ２、２により脚部Ｋ、Ｋを成形することができる
ことになる。

【００１０】次に、上記金型を使用した成形方法を説明
する。中子切換シリンダユニット２１、２１により中子
２０、２０を下方へ駆動して、固定金型１の第２のキャ
ビテイ２、２を封鎖する。また、ランナー切換シリンダ
ユニット７によりスプール６を第１の位置へ駆動する。
そして、型締めする。そうすると、可動金型１０の第１
のキャビテイ１１のみが充填できる状態になる。この状
態は、樹脂材料を一部充填した状態で、図２の（イ）に
示されている。別途計量された溶融樹脂を射出する。溶
融樹脂は、スプルー３、ランナー切換装置５の凹溝１
２’、ランナー１２およびゲートを通って第１のキャビ
テイ１１に充填される。この１次成形により、板状部分
Ｄが成形される。

【００１１】冷却固化を待って、可動金型１０を、スプ
ルーランナーＳＲの切り落とし、中子２０、２０の移動
等に必要な間隔だけ開く。板状部分Ｄは、可動金型１０
の方に着いて開かれ、サイドゲートのときは、図には示
されていないがゲートカットが設けられているので、ス
プルーランナーＳＲが切り落とされる。この状態は、図
２の（ロ）に示されている。中子切換シリンダユニット
２１、２１により、図２の（ハ）に示されているよう
に、中子２０、２０を上方へ駆動して、固定金型１の第
２のキャビテイ２、２を開放する。また、ランナー切換
シリンダユニット７によりスプール６を第２の位置へ駆
動する。そして、型締めする。そうすると、固定金型１
の第２のキャビテイ２、２のみが充填できる状態にな
る。型締めして、新たに計量した溶融樹脂、あるいは一
次成形で残した溶融樹脂を射出する。溶融樹脂は、スプ
ルー３、凹溝４’、４’、ランナー４、４およびゲート
を通って第２のキャビテイ２、２に充填される。射出し
ている状態は、図２の（ニ）に示されている。この２次
成形により、脚部Ｋ、Ｋが、先に成形された板状部分Ｄ
と一体化されて成形される。冷却固化を待って、可動金
型１０を開いて、エジェクタ装置により成形品を取り出
す。以下、同様にして成形する。

【００１２】本発明は、上記実施の形態に限定されるこ
となく色々な形で実施できる。例えば、上記実施の形態
では２個の中子２０、２０に対して２個の中子切換シリ
ンダユニット２１、２１が設けられているが、中子の
数、中子切換シリンダユニットの数等は、実施の形態に
限定されることなく実施できることは明らかである。ま
た、上記実施の形態では成形品を２個の部分に分けて成
形しているが、成形品の肉厚が大きいときは、あるいは
形状的に複雑なときは、複数個の中子を使用して３次成
形以上の成形により、同様にして複数個の部分から成形
できることも明らかである。さらには、構造が複雑には
なるが、中子２０、２０を可動金型１０の方に設けて実
施できることも明らかである。

【００１３】

【発明の効果】以上のように、本発明によると、固定金
型と、該固定金型に対して型締、型開される可動金型
と、中子とを使用し、中子によりキャビテイの一部を塞
いで、塞がれていない部分に溶融樹脂を射出して成形品
の一部を成形し、次いで中子を抜いて抜いた部分に溶融
樹脂を射出して成形品の他の部分を、先に射出して得ら
れた部分と一体化して成形品を得るので、肉厚部のある
成形品も、ひけ、ボイド等のない、精度の高い、高品質
の成形品を得ることができるという、本発明特有の効果
が得られる。また、本発明によると、成形品を部分に分
けて成形するので、成形品の形状の自由度が大きく、複
雑な成形品も成形でき、そり、変形等の発生しやすい形
状に対しても効果も得られる。さらには、成形品を部分
に分けて成形するので、先に充填した溶融樹脂が固化す
る間に、他の部分を成形する樹脂材料を計量することが
でき、射出ユニットの容量よりも容量の大きい成形品を
得ることもできる。つまり、小さな射出成形機により大
容量の成形品を成形できる。また、成形品を部分に分け
て成形するので、肉厚部がなく、冷却固化時間が短くな
る。したがって、部分に分けて成形するにも拘らず全体
として成形サイクルを短縮することもできる。また、他
の発明によると、先に射出して得られる成形品の一部
が、均一な肉厚部分であるので、射出精度が要求される
部分を先に成形して、精度の高い成形品を得ることがで
きる効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の実施の形態を示す図で、図１の
（イ）は、金型の模式的断面図、その（ロ）は図１の
（イ）において矢印ローロ方向に見た断面図、その
（ハ）は図１の（イ）において矢印ハーハ方向に見た断
面図、その（ニ）はランナー切換部のスプールの拡大斜
視図である。

【図２】 本発明の実施の形態に係わる金型を使用して
成形している、各状態を示す図で、その（イ）は一次成
形を、その（ロ）は二次成形をしている状態を示す断面
図である。

【図３】 成形品の例を示す図で、その（イ）は全体の
斜視図、その（ロ）は２部分に分割して示す正面図であ
る。

【符号の説明】

１ 固定金型 ２、２ 第２のキャビテイ ４、４ ランナー ５ ランナー切換装置 ７ ランナー切換シリンダユニット １０ 可動金型 １１ 第１のキャビテイ １２ ランナー ２０、２０ 中子 ２１、２１ 中子切換シリンダユニット

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 固定金型（１）と、該固定金型（１）に
   対して型締、型開される可動金型（１０）と、中子（２
   ０、２０）とを使用し、前記中子（２０、２０）により
   キャビテイ（２、２、１１）の一部を塞いで、塞がれて
   いない部分（１１）に溶融樹脂を射出して成形品の一部
   （Ｄ）を成形し、次いで中子（２０、２０）を抜き、抜
   いた部分（２、２）に溶融樹脂を射出して成形品の残り
   の他の部分（Ｋ、Ｋ）を、先に射出して得られた部分
   （Ｄ）と一体化して成形品を得る、成形品の成形方法。
2. 【請求項２】 請求項１に記載の成形品の一部（Ｄ）
   が、一次成形により、そして残りの他の部分（Ｋ、Ｋ）
   が二次成形により得られる、成形品の成形方法。
3. 【請求項３】 請求項１または２に記載の先に射出して
   得られる成形品の一部（Ｄ）が、均一な肉厚部分であ
   る、成形品の成形方法。
4. 【請求項４】 固定金型（１）と、該固定金型（１）に
   対して型締、型開される可動金型（１０）と、中子（２
   ０、２０）とからなり、 前記固定金型（１）と可動金型（１０）には、成形品を
   得るための所定形状のキャビテイ（２、２、１１）が形
   成され、前記中子（２０、２０）は前記キャビテイ
   （２、２、１１）に対して抜き差し自在に設けられてい
   ることを特徴とする、成形品の成形用金型。
5. 【請求項５】 請求項４に記載のキャビテイ（２、２、
   １１）は、中子（２０、２０）を挿入すると残ったキャ
   ビテイ部分（１１）は、均一厚さの空間になる、成形品
   の成形用金型。