JPH11100206A - 炭素材料 - Google Patents

炭素材料

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JPH11100206A
JPH11100206A JP9279351A JP27935197A JPH11100206A JP H11100206 A JPH11100206 A JP H11100206A JP 9279351 A JP9279351 A JP 9279351A JP 27935197 A JP27935197 A JP 27935197A JP H11100206 A JPH11100206 A JP H11100206A
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compound
copolymer
precursor
aromatic
oligomer
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JP9279351A
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Koji Akita
浩司 秋田
Hiroto Kobayashi
啓人 小林
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Honda Motor Co Ltd
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Honda Motor Co Ltd
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    • C04CEMENTS; CONCRETE; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES
    • C04BLIME, MAGNESIA; SLAG; CEMENTS; COMPOSITIONS THEREOF, e.g. MORTARS, CONCRETE OR LIKE BUILDING MATERIALS; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES; TREATMENT OF NATURAL STONE
    • C04B35/00Shaped ceramic products characterised by their composition; Ceramics compositions; Processing powders of inorganic compounds preparatory to the manufacturing of ceramic products
    • C04B35/515Shaped ceramic products characterised by their composition; Ceramics compositions; Processing powders of inorganic compounds preparatory to the manufacturing of ceramic products based on non-oxide ceramics
    • C04B35/52Shaped ceramic products characterised by their composition; Ceramics compositions; Processing powders of inorganic compounds preparatory to the manufacturing of ceramic products based on non-oxide ceramics based on carbon, e.g. graphite
    • C04B35/524Shaped ceramic products characterised by their composition; Ceramics compositions; Processing powders of inorganic compounds preparatory to the manufacturing of ceramic products based on non-oxide ceramics based on carbon, e.g. graphite obtained from polymer precursors, e.g. glass-like carbon material
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    • D01FCHEMICAL FEATURES IN THE MANUFACTURE OF ARTIFICIAL FILAMENTS, THREADS, FIBRES, BRISTLES OR RIBBONS; APPARATUS SPECIALLY ADAPTED FOR THE MANUFACTURE OF CARBON FILAMENTS
    • D01F9/00Artificial filaments or the like of other substances; Manufacture thereof; Apparatus specially adapted for the manufacture of carbon filaments
    • D01F9/08Artificial filaments or the like of other substances; Manufacture thereof; Apparatus specially adapted for the manufacture of carbon filaments of inorganic material
    • D01F9/12Carbon filaments; Apparatus specially adapted for the manufacture thereof
    • D01F9/14Carbon filaments; Apparatus specially adapted for the manufacture thereof by decomposition of organic filaments
    • D01F9/20Carbon filaments; Apparatus specially adapted for the manufacture thereof by decomposition of organic filaments from polyaddition, polycondensation or polymerisation products
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 補強高分子である剛直芳香族ポリマーとマト
リックスポリマーが微細にして均一に良好に分散してな
る3次元網目型分子複合材を焼成することにより、等方
性のバルク材であって、しかも、物理的特性、特に導電
性に優れた炭素材料を提供すること。 【解決手段】 マトリックスポリマーと複素環を形成す
る官能基の少なくとも1つを他の官能基で置換した芳香
族複素環コポリマーの前駆体を有機溶媒中で相溶させて
混合溶液となしたのち、脱溶媒して凝固させて複合材と
した3次元網目型分子複合材を焼成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱、耐蝕性や摺
動特性から過酷条件における構造材料として、また、導
電性やインターカレーション特性から電極材料として有
用な炭素材料に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、工業材料として重要な地位を占め
つつある炭素材料の製造方法として、各種の有機材料を
高温において焼成する方法が提案されている。例えば、
高分子材料を焼成することにより良質の炭素材料が得ら
れているが、グラッシーカーボンは堅く、単純形状の焼
成品から複雑形状の部品への加工は大変困難である(特
開昭61−275114号公報、特開昭61−2751
15号公報)。また、C/Cコンポジット材料も、繊維
にフェノール樹脂等のマトリックス樹脂を含浸させて焼
成し、次いで、減量した分量に相当する量のマトッリク
ス樹脂を含浸させさらに焼成するという多段階のプロセ
スを必要とするため、一般的な用途には用いられない
【0003】そこで、成形性に優れる熱可塑性高分子か
ら所望の形状をもったプリフォームを成形し、これを焼
成することが可能になれば、加工性、製造コストの面か
らも炭素材料の応用範囲を大きく広げることができると
考えられる。かかる観点からみると、三次元網目分子複
合材料は、熱時の安定性が他の材料に比して飛び抜けて
良好であり、このような特性が期待される。また、剛直
性高分子は、グラファイト化しやすい材料であることが
知られており、フィブリル構造が保持されるならば、一
工程の焼成で新種のC/Cナノコンポジットを形成し得
ると考えらえる。そうすれば、材料の微細構造や特性を
剛直性高分子の添加量により設計可能なユニークな機能
性炭素材料への発展が期待される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上のよう
な従来の技術的課題を背景になされたものであり、補強
高分子である剛直芳香族ポリマーとマトリックスポリマ
ーが微細にして均一に良好に分散してなる3次元網目型
分子複合材を焼成することにより、等方性のバルク材で
あって、しかも、物理的特性、特に導電性に優れた炭素
材料を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、マトリックス
ポリマーと複素環を形成する官能基の少なくとも1つを
他の官能基で置換した芳香族複素環コポリマーの前駆体
を有機溶媒中で相溶させて混合溶液となしたのち、脱溶
媒して凝固させて複合材とした3次元網目型分子複合材
を焼成することを特徴とする炭素材料を提供するもので
ある。また、本発明の他方は、炭素材料が等方性のバル
ク材であることを特徴とする炭素材料を提供するもので
ある。さらに、本発明は、マトリックスポリマーが、ポ
リアミドであることを好ましく、さらにまた、本発明
は、芳香族複素環コポリマーが、ポリベンゾチアゾール
コポリマーおよびポリベンゾオキサゾールコポリマーよ
りなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ま
しい。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明においてマトリックスポリ
マーとしては、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイ
ミド、アラミド系樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリエ
ーテルイミドなどが挙げられる。これらのマトリックス
ポリマーは、芳香族複素環コポリマーとの相溶性が良好
であり、機械的強度に優れた分子複合材を与えることが
できる。マトリックスポリマーとしては、特に芳香族ポ
リアミドが好ましい。
【0007】次に、芳香族複素環コポリマーについて説
明する。本発明において、分子複合材の補強高分子とな
る複素環を形成する官能基の少なくとも1つを他の官能
基で置換した芳香族複素環コポリマーは、複合材中で3
次元網目型構造を形成して均一に分散しており、もって
本発明の複合材は、優れた機械的特性を有するのであ
る。このような芳香族複素環コポリマーとしては、ポリ
ベンゾチアゾール(PBZ−T)あるいはポリベンゾオ
キサゾール(PBO−T)のランダムあるいはブロック
コポリマーが挙げられる。
【0008】本発明においては、マトリックスポリマー
とこれらの芳香族複素環コポリマーの複合は、マトリッ
クスポリマーと前記芳香族複素環コポリマーの前駆体を
混合して複合材とし、まず、これを金型ホットプレスに
てプリフォーム成形し、その後、金型内で所定の温度で
加熱して閉環反応を起こし、もって最終的にマトリック
スポリマーと芳香族複素環コポリマーからなるプリフォ
ーム3次元網目型分子複合材とする。
【0009】上記した分子内閉環反応を円滑に進行させ
るために、前記芳香族複素環コポリマーの前駆体は、そ
の閉環反応により複素環を形成する際に関与する官能基
の水素原子が、当該閉環反応を促進する置換基(官能
基)により置換されていることを必要とする。このよう
な官能基による置換がない場合、金型内でプリフォーム
成形し、最終的にマトリックスポリマーと芳香族複素環
コポリマーからなるプリフォーム3次元網目型分子複合
材を焼成して得られる炭素材料は等方性のバルク材とな
らない。
【0010】次いで、成形されたプリフォーム3次元網
目型分子複合材を、大気圧中、不活性ガス雰囲気下で焼
成する。不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、窒
素ガスなどを挙げることができる。焼成温度は2300
〜3000℃、好ましくは、2500〜2800℃であ
る。温度が2300℃未満では、グラファイト化(黒鉛
化)が不充分であり、一方、3000℃を超えても黒鉛
化に殆ど効果がない。また、焼成時間は0.5〜12時
間、好ましくは、2〜6時間である。0.5時間未満で
は、焼成温度により一概にいえないが、通常、黒鉛化が
不充分であり、一方、6時間を超えても、黒鉛化に殆ど
効果がない。
【0011】まず、縮合環としてチアゾール環をもつポ
リベンゾチアゾール(PBZ−T)コポリマーの前駆体
について説明する。PBZ−T前駆体コポリマーの製造 本発明において、分子複合材の補強高分子となるPBZ
−Tコポリマーの前駆体は、下記式(化1)
【0012】
【化1】
【0013】(ただし、ArおよびAr′は芳香族残基
であり、Rは置換または無置換のアルキル基であり、X
はジカルボン酸誘導体の残基であり、mおよびnはとも
に整数であり、m:nは0.01:99.99〜99.
99:0.01である)で表される。
【0014】この前駆体コポリマーは、(a)チオール
基の水素原子を置換または無置換のアルキル基で置換し
た芳香族ジアミノジチオール化合物、(b)芳香族ジア
ミノ化合物および(c)ジカルボン酸誘導体とから製造
することができる。
【0015】(a)チオール基の水素原子を置換または
無置換のアルキル基で置換した芳香族ジアミノジチオー
ル化合物 本発明において、(a)チオール基の水素原子を置換ま
たは無置換のアルキル基で置換した芳香族ジアミノジチ
オール化合物〔以下、化合物(a)ということがある〕
は、下記一般式(化2)で表されるものである。
【0016】
【化2】
【0017】〔ただし、Arは芳香族残基であり、Rは
置換または無置換のアルキル基である。〕 ここで、芳香族残基Arは、ベンゼン環に限らず2つ以
上のベンゼン環が縮合した芳香族環でもよく、またビフ
ェニルなどのように2つ以上のベンゼン環が結合したも
のでもよい。また、両側のアミノ基およびチオエーテル
基の位置は、芳香族残基を中心として左右対称でも点対
称でもよい。この化合物(a)の具体例としては、(化
3)などが挙げられる。
【0018】
【化3】
【0019】この化合物(a)は、芳香族残基の両側に
それぞれアミノ基およびチオール基を有する化合物であ
る芳香族ジアミノジチオール化合物より合成することが
できる。芳香族ジアミノジチオール化合物としては、上
述した(化3)に示す各化合物のアルキル基Rを水素原
子で置き換えたものを使用することができるが、この芳
香族ジアミノジチオール化合物は、劣化を防ぐためには
塩酸塩などの塩の形で使用する。
【0020】芳香族ジアミノジチオール化合物のチオー
ル基に結合するアルキル基Rは、置換または無置換のア
ルキル基である。無置換のアルキル基としては、イソプ
ロピル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、
sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられ
る。アルキル基としては、2級および3級のアルキル基
が特に好ましい。
【0021】また、置換アルキル基としては、カルボキ
シル基、エステル基、シアノ基またはベンゼン基などに
より置換されたアルキル基が好適である。なお、このよ
うな置換基を有する場合には、アルキル基は特に2級の
ものである必要はない。置換基を有するアルキル基とし
ては、例えば(化4)などが挙げられる。
【0022】
【化4】
【0023】なお、上記の6つの置換アルキル基のう
ち、上位に示す2つのエステル基を置換したものにおい
ては、エステル結合中の酸素原子に結合するアルキル基
がメチル基に限らず、炭素数2〜10のアルキル基であ
ってもよい。
【0024】特に、芳香族ジアミノジチオール化合物の
チオール基の水素原子を、シアノ基を有するアルキル基
またはエステル基を有するアルキル基で置換しておく
と、前駆体コポリマー〔上記した(化1)のポリマー〕
の、Nメチル−2−ピロリドン(以下「NMP」という
ことがある)などの有機溶媒への溶解度が向上する。
【0025】上記したアルキル基は、そのハロゲン化物
であるアルキルハライドとして用い、これと、さきに述
べた芳香族ジアミノジチオール化合物(の塩)とから、
以下に示す方法により化合物(a)を合成する。なお、
ハロゲン化物としては、上記したアルキル基の臭素化
物、塩化物、ヨウ化物などが使用できる。
【0026】化合物(a)の合成では、上述した芳香族
ジアミノジチオール化合物の塩およびアルキルハライド
とをアルカリ性水溶液中で反応させる。使用するアルカ
リ性水性溶媒としては、水、または水とアルコール(エ
タノールおよび/またはメタノール)との混合溶媒に、
水酸化ナトリウムなどの塩基性塩を溶解したものを使用
することができる。溶媒をアルカリ性とすることで、芳
香族ジアミノジチオール化合物の塩を容易に溶解するこ
とができる。また、チオール基の求核性を増大させ、置
換反応を助長する。なお、アルカリ性水性溶媒のアルカ
リ濃度は、30重量%以下とするのがよい。
【0027】この置換反応は、0〜100℃の範囲で行
うことができる。温度が0℃未満であると、反応速度が
遅くなり、一方、100℃を超えると、副反応が起こっ
てしまい、いずれの場合も好ましくない。より好ましい
反応温度は、0〜95℃である。反応時間は、特に制限
はないが、一般に2〜24時間程度でよい。なお、反応
速度を高めるために、溶液の攪拌を行うことが好まし
い。また、アルキルハライドの量を過剰にすることで、
反応速度を高めることができる。
【0028】さらに、セチルトリメチルアンモニウムク
ロライド、臭化n−ブチルトリフェニルホスホニウム、
臭化テトラフェニルホスホニウム、18−クラウン−6
などを相間移動触媒として加えると、反応速度を高める
ことができる。このような相間移動触媒は、芳香族ジア
ミノジチオール化合物の塩とアルキルハライドとの反応
を速やかに進行させる。
【0029】以上の条件で置換反応を行うことにより、
芳香族ジアミノジチオール化合物の塩のチオール基の水
素原子をアルキル基で置換したモノマー〔化合物
(a)〕を得ることができる。
【0030】化合物(a)を合成する反応において、芳
香族ジアミノジチオール化合物の塩とアルキルハライド
との反応は以下(化5)のとおり進行する。ここで、芳
香族ジアミノジチオール化合物の塩の例として、2,5
−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオール二塩酸塩を用
いる。また、式中、X−Rは、アルキルハライドを表
す。
【0031】
【化5】
【0032】(b)芳香族ジアミノ化合物 本発明で用いる(b)芳香族ジアミノ化合物〔以下「化
合物(b)」ということがある〕としては、屈曲可能な
構造を有する芳香族ジアミノ化合物が好ましく、ジフェ
ニルエーテル、ビフェニルなどの芳香族残基を有するジ
アミンを好適に用いることができる。芳香族ジアミノ化
合物としては具体的には(化6)で表される芳香族残基
を有するものを使用することができる。
【0033】
【化6】
【0034】上記した(化6)中の芳香族残基のうち、
上位に示すジフェニルエーテル基、トリフェニルエーテ
ル基が好ましい。このようなジフェニルエーテル基を用
いれば、得られる前駆体コポリマーに充分な屈曲性を付
与することができる。なお、芳香族複素環コポリマーと
マトリックスとなるポリマーとの相溶性を向上させるた
めに、この化合物(b)として、混合相手となるマトリ
ックスポリマーの一部と同一または類似の構造を有する
ものを選択するのがよい。
【0035】(c)ジカルボン酸誘導体 また、本発明において使用する(c)ジカルボン酸誘導
体〔以下「化合物(c)」ということがある〕として
は、各カルボキシル基を以下の(化7)のように置換し
たものが挙げられる。
【0036】
【化7】
【0037】また、上記ジカルボン酸誘導体の残基とし
ては、比較的短鎖(炭素数2〜10)のアルキレン基や
以下のような(化8)の芳香族系残基が挙げられる。な
お、ジカルボン酸の例としては、芳香族系のジカルボン
酸が好ましい。
【0038】
【化8】
【0039】なお、芳香族残基にはハロゲン、および/
または低級アルキル基、低級アルコキシル基、またはフ
ェニル基などの置換基を付加し得る。このような置換基
を導入することによって、反応性、溶媒への溶解性を向
上させることができる。
【0040】このような芳香族ジカルボン酸誘導体の中
では、特にテレフタル酸ジクロリド、またはそのハロゲ
ン置換体、イソフタル酸ジクロリドが好ましく、具体的
には2−クロロテレフタル酸ジクロリド、および2,5
−ジクロロテレフタル酸ジクロリドなどを好適に用いる
ことができる。なお、これらの芳香族ジカルボン酸誘導
体は、単独で用いても、あるいは2種以上混合して用い
てもよい。
【0041】(1)PBZ−T前駆体ランダムコポリマ
ーの製造 次に、前駆体ランダムコポリマーの製造方法について説
明する。ランダムコポリマーを製造する場合は、化合物
(a)、化合物(b)、および化合物(c)〔以下、
「化合物(a)〜(c)」と表記することがある〕を所
望の配合比で有機溶媒に溶解し、この三者を共重合す
る。好ましくは、化合物(a)と化合物(b)との均一
溶液をまず調製し、これに化合物(c)を加える。
【0042】有機溶媒を用いた溶液中の化合物(a)と
化合物(b)の配合比は、最終的に得られるPBZ−T
前駆体ランダムコポリマーにおいて、剛直鎖部位に変化
する部分と柔軟な鎖部分となる部分との比率〔すなわ
ち、上記した(化1)におけるmとnの比〕となるが、
PBZ−T前駆体ランダムコポリマーの使用目的に合わ
せて、化合物(a)と化合物(b)の配合比を適宜決定
する。本発明においては、m:nが0.01:〜99.
99〜99.99:0.01となるように化合物(a)
と化合物(b)を配合する。
【0043】また、化合物(c)の量は、化合物(a)
と化合物(b)の合計モル量と等量またはそれ以上とす
る。また、有機溶媒中における化合物(a)〜(c)の
合計量の濃度は、0.1〜2モル/l程度とするのがよ
い。化合物(a)〜(c)の合計量の濃度が、2モル/
lを超えると、各成分の溶解が難しくなり、好ましくな
い。
【0044】有機溶媒としては、アミド系有機溶媒を好
適に用いることができる。アミド系有機溶媒としては、
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ヘキサメチル
フォスフォリックトリアミド、N,N−ジメチルアセト
アミドなどが挙げられ、これらの単独または混合溶液を
使用することができる。また、反応性を高めるために、
最大限5重量%のLiCl、CaCl2 などの金属塩を
添加してもよい。
【0045】化合物(a)〜(c)を重合し、前駆体ラ
ンダムコポリマーを製造するが、このときの重合反応温
度は、−20〜50℃とするのがよい。重合温度が−2
0℃未満では、充分な重合反応が起こらず、また得られ
る前駆体ランダムコポリマーの重合度も低くなる。一
方、250℃程度の温度でチアゾール閉環反応が起こる
可能性があるので、安全をみて重合反応の温度の上限は
50℃とする。より好ましくは、−20〜30℃の範囲
である。
【0046】上記の重合反応では、その反応速度を高め
るために、溶液の攪拌を行うことが好ましい。また、反
応時間は特に制限はないが、一般に1〜24時間程度で
よい。以上の条件で重合反応を行うことにより、チアゾ
ール閉環反応を起こすことなく、大きな重合度を有する
前駆体ランダムコポリマーが得られる。得られる前駆体
ランダムコポリマーの固有粘度ηinh (NMP中、30
℃、0.5g/dl)は0.4以上が好ましく、さらに
好ましくは0.8〜1.6程度である。
【0047】この重合反応は、以下の(化9)のとおり
進行するものと考えられる。なお、下記の反応式(化
9)において、化合物(a)の例として、2,5−ジア
ミノ−1,4−ベンゼンジチオール二塩酸塩のアルキル
基置換体を用い、化合物(b)の例として4,4′−ジ
アミノジフェニルエーテル(4−アミノ−p−フェノキ
シアニリン)を用い、化合物(c)の例として2−クロ
ロテレフタル酸ジクロライドを用いている。なお、mお
よびnは重合度を表す。
【0048】
【化9】
【0049】得られた前駆体ランダムコポリマーは、公
知の方法により洗浄および乾燥することができる。
【0050】(2)PBZ−T前駆体ブロックコポリマ
ーの製造 本発明において、前駆体ブロックコポリマーは、上記の
ランダムコポリマーと同様に上記の(化1)で表され、
上記と同様の(a)チオール基の水素原子を置換または
無置換のアルキル基で置換した芳香族ジアミノジチオー
ル化合物、(b)芳香族ジアミノ化合物および(c)ジ
カルボン酸誘導体とから製造することができる。
【0051】具体的には、前駆体ブロックコポリマー
は、(i)化合物(a)および化合物(b)をそれぞ
れ、別々に有機溶媒中で化合物(c)と反応させること
により、2種類のオリゴマーを合成し、(ii)得られた
2種類のオリゴマーを有機溶媒中で反応させることによ
り製造することができる。
【0052】ここで、説明を簡単にするため、以下にお
いて、化合物(a)と化合物(c)とを反応させて得ら
れるオリゴマーをオリゴマー(I)と呼び、化合物
(b)と化合物(c)とを反応させて得られるオリゴマ
ーをオリゴマー(II) という。
【0053】(2)−1 PBZ−T前駆体ブロックコ
ポリマー用のオリゴマーの合成 (a)芳香族ジアミノジチオール化合物と(c)ジカル
ボン酸誘導体とを有機溶媒に溶解し、所定の温度で攪拌
してオリゴマー(I)を製造する。オリゴマー(I)の
合成において、化合物(a)のモル量と化合物(c)の
モル量とは基本的には等量とするが、オリゴマー(I)
の分子量を適切なものとし、また後述するオリゴマー
(II) との反応を良好にするために、化合物(c)の量
を多少調節してもよい。
【0054】また、有機溶媒中における化合物(a)と
化合物(c)の合計量の濃度は、0.5〜5モル/l程
度とするのがよい。濃度が5モル/lを超えると、各成
分の溶解が難しくなり好ましくない。有機溶媒として
は、ランダムコポリマーの製造の際に用いられるものと
同様のものが挙げられる。
【0055】(a)芳香族ジアミノジチオール化合物と
(c)ジカルボン酸誘導体とを重合してオリゴマー
(I)を合成するときの重合反応温度は、−20〜20
0℃とするのがよい。反応温度が−20℃未満である
と、充分な重合反応が起こらない。一方、250℃程度
の温度でチアゾール閉環反応が起こる可能性があるの
で、安全をみて重合反応の温度の上限は200℃とす
る。より好ましくは、−10〜50℃の範囲である。
【0056】上記のオリゴマー(I)の製造において
は、反応速度を高めるために、溶液の攪拌を行うことが
好ましい。また、反応時間は、1〜120分程度とする
のがよい。化合物(a)と化合物(c)との重合反応は
以下の(化10)のとおり進行するものと考えられる。
なお、下記の反応式(化10)において、化合物(a)
の例として、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチ
オール二塩酸塩のアルキル基置換体を用い、化合物
(c)の例として2−クロロテレフタル酸ジクロライド
を用いている。なお、mは重合度を表す。オリゴマー
(I)の固有粘度はηinh(NMP中、30℃、0.5
g/dl)は、0.1〜0.7程度である。
【0057】
【化10】
【0058】また、オリゴマー(II) も、上述したオリ
ゴマー(I)の合成方法と同様にして合成することがで
きる。オリゴマー(II) の合成の場合も、化合物(c)
の量は基本的には化合物(b)のモル量と等量とする
が、オリゴマー(I)の合成時の化合物(c)の量の調
節に合わせて、オリゴマー(II) の合成における化合物
(c)の量も調節するのがよい。
【0059】有機溶媒中における化合物(b)および化
合物(c)の合計量の濃度は、0.5〜5モル/l程度
とするのがよい。また、重合反応温度は、−20℃〜3
00℃、好ましくは−20〜200℃とするのがよい。
温度が−20℃未満であると、充分な重合反応が起こら
ない。一方、400℃程度の温度では熱分解が生じるの
で、安全をみて重合反応の温度の上限は300℃とす
る。より好ましくは、−10〜50℃の範囲である。
【0060】なお、オリゴマー(II) の合成において用
いる有機溶媒としては、上述のオリゴマー(I)の合成
に用いたものと同様のものが挙げられる。反応時間は、
特に制限はないが一般に1〜120分程度とするのがよ
い。
【0061】化合物(b)と化合物(c)との重合反応
は以下の(化11)のとおり進行するものと考えられ
る。なお、下記の反応式(化11)において、化合物
(b)の例として4、4′−ジアミノジフェニルエーテ
ル(4−アミノ−p−フェノキシアニリン)を用い、化
合物(c)の例として2−クロロテレフタル酸ジクロラ
イドを用いている。なお、nは重合度を表す。オリゴマ
ー(II) の固有粘度はηinh (NMP中、30℃、0.
5g/dl)は、0.1〜0.6程度である。
【0062】
【化11】
【0063】(2)−2 PBZ−T前駆体ブロックコ
ポリマーの製造 上述した方法により得られたオリゴマー(I)とオリゴ
マー(II) とを有機溶媒中で反応させ、前駆体ブロック
コポリマーを合成する。有機溶媒としては、上記のオリ
ゴマー(I)あるいは(II) の合成で用いたものを使用
することができる。
【0064】具体的には、オリゴマー(I)を溶解した
有機溶媒とオリゴマー(II) を溶解した有機溶媒を混合
し、−10〜50℃で攪拌して前駆体ブロックコポリマ
ーを合成する。−10℃未満では、重合が進まない。な
お、250℃を超す温度とすると、チアゾール閉環反応
が進行してしまうため、安全をみて重合反応の温度の上
限は50℃とする。
【0065】以上の条件で重合反応を行うことにより、
チアゾール閉環反応を起こすことなく、大きな重合度を
有する前駆体ブロックコポリマーが得られる。得られる
PBZ−T前駆体ブロックコポリマーの固有粘度ηinh
(NMP中、30℃、0.5g/dl)は、0.6〜
1.8程度である。
【0066】オリゴマー(I)とオリゴマー(II) との
重合反応は、以下の(化12)のとおりに進行し、前駆
体ブロックコポリマーが得られる。ここで、オリゴマー
(I)として先に(化10)で示した反応により得られ
たものを用い、オリゴマー(II) としては(化11)で
示したものを用いているが、本発明はこれに限定される
ものではない。
【0067】
【化12】
【0068】なお、mおよびnは、重合度を示してい
る。本発明においては、1つのコポリマー中のmの合計
(上記式でmによって括られている部位の前駆体コポリ
マー中における合計の重合度)とnの合計(上記式でn
によって括られている部位の前駆体コポリマー中におけ
る合計の重合度)の比m:nは、0.01:〜99.9
9〜99.99:0.01の範囲をとる。
【0069】得られた前駆体ブロックコポリマーは、公
知の方法により洗浄および乾燥することができる。
【0070】次に、縮合環としてオキサゾール環を有す
るポリベンゾオキサゾール(PBZ−O)コポリマーの
前駆体について説明する。PBZ−O前駆体コポリマーの製造 本発明において、PBZ−O前駆体コポリマーは、下記
式(化13)で表される。
【0071】
【化13】
【0072】(ただし、Arは芳香族残基であり、mお
よびnはともに整数であり、m:nは0.01:99.
99〜99.99:0.01である。)
【0073】このPBZ−O前駆体コポリマーは、
(d)アミノ基の水素原子を置換または無置換し、ヒド
ロキシル基の水素原子を置換した芳香族ジアミノジヒド
ロキシ化合物、(e)アミノ基の水素原子を置換または
無置換した芳香族ジアミノ化合物、および(c)ジカル
ボン酸誘導体とから製造することができる。
【0074】(d)アミノ基の水素原子を置換または無
置換し、ヒドロキシル基の水素原子を置換した芳香族ジ
アミノジヒドロキシ化合物 本発明における(d)ヒドロキシル基の水素原子を置換
した芳香族ジアミノヒドロキシ化合物〔以下「化合物
(d)」ということがある〕は、芳香族残基の両側にそ
れぞれアミノ基、置換ヒドロキシル基を有する化合物で
あり、芳香族残基はベンゼン環に限らず2つ以上のベン
ゼン環が縮合した芳香族環でもよく、またビフェニルな
どのように2つ以上のベンゼン環が結合したものでもよ
い。また、両側のアミノ基および置換ヒドロキシル基の
位置関係は、芳香族残基を中心として左右対称でも点対
称でもよい。このような芳香族ジアミノジヒドロキシ化
合物誘導体(芳香族ジアミノジ置換オキシ化合物)の例
としては、以下の(化14)などが挙げられる。
【0075】
【化14】
【0076】なお、本発明において、(d)ヒドロキシ
ル基の水素原子を置換した芳香族ジアミノジヒドロキシ
化合物(芳香族ジアミノジ置換オキシ化合物)は、その
アミノ基の水素原子は置換されたものでもよい。しか
し、ヒドロキシル基の水素原子は分子内閉環反応を円滑
ならしめる官能基Rにより置換されていることを必要と
する。このような官能基として、シリル基が好適に使用
でき、シリル基で置換されたシリル化物により前駆体コ
ポリマーを製造すると、高分子量のものを高い収率で得
ることができる。
【0077】また、上述した(d)芳香族ジアミノジ置
換オキシ化合物において、その芳香族残基にClなどの
置換基を有したものを用いてもよい。これらの芳香族ジ
アミノジ置換オキシ化合物は、劣化を防ぐために塩酸塩
などの塩の形で使用するのがよい。芳香族ジアミノジ置
換オキシ化合物としては、特に4,6−ジアミノ−1,
3−ジシリルオキシベンゼン(またはその塩)、が好適
に用いられる。
【0078】(e)アミノ基の水素原子を置換または無
置換した芳香族ジアミノ化合物 本発明で用いる(e)芳香族ジアミノ化合物〔以下「化
合物(e)」ということがある〕としては、屈曲可能な
構造を有する芳香族ジアミノ化合物が好ましく、ジフェ
ニルエーテル、ビフェニルなどの芳香族残基を有するジ
アミンを好適に用いることができる。芳香族ジアミノ化
合物としては、具体的には上記の(化6)で表される芳
香族残基を有するものを使用することができるが、これ
らの芳香族ジアミノ化合物のアミノ基の水素原子は置換
されたものであってもよい。特に、シリル化されたもの
が好ましい。上記した(化6)中の芳香族残基のうち、
上位に示すジフェニルエーテル基、トリフェニルエーテ
ル基が好ましい。このようなジフェニルエーテル基を用
いれば、得られる前駆体コポリマーに充分な屈曲性を付
与することができる。
【0079】なお、前駆体コポリマーと、マトリックス
となるポリマーとの相溶性を向上させるために、この化
合物(e)として、混合相手となるマトリックスポリマ
ーの一部と同一または類似の構造を有するものを選択す
るのがよい。
【0080】本発明のPBZ−O前駆体コポリマーは、
上記の化合物(d)、化合物(e)および化合物(c)
〔以下「化合物(c)〜(e)」と表記することがあ
る〕より得られるものであるが、コポリマーはブロック
コポリマーであっても、ランダムコポリマーであっても
どちらでも構わない。以下に、これらの製造方法につい
て説明する。
【0081】(3)PBZ−O前駆体ランダムコポリマ
ーの製造 PBZ−O前駆体ランダムコポリマーを製造するには、
化合物(d)として、芳香族ジアミノジ置換オキシ化合
物のアミノ基をシリル化し、ジ置換オキシ基の置換基が
シリル基である芳香族ジアミノジヒドロキシ誘導体を用
い、化合物(e)として、アミノ基をシリル化した芳香
族ジアミノ化合物を用い、これらと化合物(c)と反応
させるのがよい。上述したように、このように化合物
(d)、化合物(e)としてシリル化された化合物を用
いコポリマーを製造すると、高分子量のものを高い収率
で得ることができる。
【0082】化合物(d)を製造するために、原料とな
る芳香族ジアミノジヒドロキシ化合物のアミノ基および
ヒドロキシル基をシリル化するには、芳香族ジアミノジ
ヒドロキシ化合物またはその塩、特に塩酸塩を、窒素含
有シリル化剤を用いて、有機溶媒中または溶媒なしで、
80〜140℃で6〜72時間処理する。
【0083】このようなシリル化反応に有効な窒素含有
シリル化剤としては、ヘキサメチルジシラザン、N,N
−ジエチルアミノトリメチルシラン、N,O−ビス(ト
リメチルシリル)カーバメイト、N−トリメチルシリル
イミダゾールなどが挙げられる。
【0084】また、シリル化反応を行う有機溶媒とし
て、テトラヒドロフラン、四塩化炭素、N,N−ジメチ
ルアセトアミドなどを用いることができるが、有機溶媒
を省略することもできる。シリル化温度が、80℃より
低いと反応性が充分でなく、一方140℃より高いとア
ミン塩酸塩の分解が起こり、好ましくない。
【0085】同様にして、(e)芳香族ジアミノ化合物
も、シリル化することができる。上記の条件でシリル化
物を製造したならば、次に上記の化合物(c)〜(e)
を所望の配合比で有機溶媒に溶解し、−10〜40℃で
6〜24時間攪拌して、この3者を共重合する。好まし
くは、化合物(d)と化合物(e)との均一溶液をまず
調製し、これに化合物(c)を加える。重合温度は、−
20℃未満では重合が進まず、一方250℃を超す温度
とするとオキサゾール閉環反応が進行してしまうため、
安全をみて上記温度の範囲とする。
【0086】以上の条件で重合反応を行うことにより、
オキサゾール閉環反応を起こすことなく、オキサゾール
環を形成する水酸基の水素原子をシリル化した、大きな
重合度を有する前駆体ランダムコポリマーが得られる。
得られるPBZ−O前駆体ランダムコポリマーの固有粘
度ηinh (NMP中、30℃、0.5g/dl)は、
0.5〜1.8程度である。
【0087】有機溶媒を用いた溶液中の化合物(d)と
化合物(e)の配合比は、最終的に得られるランダムコ
ポリマーにおいて、剛直鎖部位に変化する部分と柔軟な
鎖部分となる部分との比率〔すなわち、上記した(化1
3)におけるmとnの比〕となるが、前駆体ランダムコ
ポリマーの使用目的に合わせて、化合物(d)と化合物
(e)の配合比を適宜決定する。本発明においては、
m:nは0.01:〜99.99〜99.99:0.0
1の範囲をとることができる。
【0088】また、化合物(c)の量は、化合物(d)
と化合物(e)の合計モル量と等量またはそれ以上とす
る。また、有機溶媒中における化合物(c)〜(e)の
合計量の濃度は、0.1〜2モル/l程度とするのがよ
い。濃度が2モル/lを超えると、各成分の溶解が難し
くなり、好ましくない。
【0089】有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメ
チルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N
−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系溶
媒、ピリジンなどの芳香族アミン系溶媒、ジメチルスル
ホキシド(DMSO)、テトラメチルスルホンなどのイ
オウ系溶媒、ベンゼン、トルエン、アニソール、ジフェ
ニルエーテル、ニトロベンゼン、ベンゾニトリルなどの
ベンゼン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキ
サンなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、トリクロル
エタン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素などの中
性溶媒(aprotic solvent)を挙げるこ
とができる。得られたランダムコポリマーは、公知の方
法により洗浄および乾燥することができる。
【0090】(4)PBZ−O前駆体ブロックコポリマ
ーの製造 本発明において、PBZ−O前駆体ブロックコポリマー
は、上記のランダムコポリマーと同様に上記の(化1
3)で表され、上記と同様な芳香族ジアミノジ置換オキ
シ化合物のアミノ基をシリル化し、ジ置換オキシ基をの
置換基がシリル基である(d)芳香族ジアミノジヒドロ
キシ誘導体を用い、シリル化した(e)芳香族ジアミノ
化合物、および(c)ジカルボン酸誘導体とから製造す
ることができる。
【0091】具体的には、PBZ−O前駆体ブロックコ
ポリマーは、(i)化合物(d)および化合物(e)を
それぞれ、別々に有機溶媒中で化合物(c)と反応させ
ることにより、2種類のオリゴマーを合成し、(ii)得
られた2種類のオリゴマーを有機溶媒中で反応させるこ
とにより製造することができる。ここで、説明を簡単に
するため、化合物(d)と化合物(c)とを反応させて
得られるオリゴマーをオリゴマー(III)と呼び、化合物
(e)と化合物(c)とを反応させて得られるオリゴマ
ーをオリゴマー(IV) と呼ぶ。
【0092】(4)−1 PBZ−O前駆体ブロックコ
ポリマー用のオリゴマーの合成 前述の条件でシリル化芳香族ジアミノジヒドロキシ化合
物を製造したならば、次にこのシリル化芳香族ジアミノ
ヒドロキシ化合物とジカルボン酸誘導体とを反応させ
て、オリゴマー(III)を製造する。シリル化芳香族ジア
ミノジヒドロキシ化合物とジカルボン酸誘導体との反応
は、有機溶媒中、実質的に無水、無酸素の条件下、乾燥
窒素またはアルゴンガス下で、使用する溶媒により多少
異なるが、−10〜100℃にて0.5〜2時間行えば
よい。反応温度が−20℃未満であると、反応性が充分
でなく、一方100℃を超えると上記反応物の酸化など
が起こる恐れがある。好ましくは、反応温度を−10〜
40℃とする。
【0093】化合物(d)のモル量と化合物(c)のモ
ル量とは、基本的には等量とするが、化合物(d)に対
し化合物(c)のモル量を適宜増減するのがよい。この
化合物(c)の量の調節については、後述する。また、
有機溶媒中における化合物(a)と化合物(c)の合計
量の濃度は、0.1〜2モル/l程度とするのがよい。
濃度が2モル/lを超えると、各成分の溶解が難しくな
り、好ましくない。
【0094】有機溶媒としては、ランダムコポリマーの
製造の際に用いられるものと同様のものが挙げられる。
化合物(d)と化合物(c)との重合反応は以下の(化
15)のとおり進行するものと考えられる。なお、下記
の反応式(化15)において、シリル化芳香族ジアミノ
ヒドロキシ化合物としては、ジアミノジヒドロキシベン
ゼンをシリル化したものを用いている。
【0095】
【化15】
【0096】(ただし、式中、Arは芳香族残基、Xは
ハロゲン、Meはメチル基を表す。)オリゴマー(IV)
の合成も、上述したオリゴマー(III)の合成と同様に
し、化合物(e)として芳香族ジアミノ化合物をシリル
化したものを用い、これをジカルボン酸誘導体と反応さ
せて行うことができる。
【0097】オリゴマー(IV) の合成の場合も、化合物
(c)の量は基本的には化合物(e)のモル量と等量と
するが、オリゴマー(III)の合成時の化合物(c)の量
の調節に合わせて、オリゴマー(IV) の合成における化
合物(c)の量も調節するのがよい。これについては、
後述する。
【0098】有機溶媒中における化合物(e)および化
合物(c)の合計量の濃度は、0.0〜2モル/l程度
とするのがよい。濃度が2モル/lを超えると、各成分
の溶解が難しくなり、好ましくない。また、重合反応
は、−10〜100℃にて6〜24時間行えばよい。反
応温度が−20℃未満であると、反応性が充分でなく、
一方100℃を超えると上記反応物の酸化などが起こる
恐れがある。好ましくは、反応温度を−10〜40℃と
する。
【0099】なお、オリゴマー(IV) の合成に用いる有
機溶媒としては、上述のオリゴマー(III)の合成に用い
たものと同様のものが挙げられる。化合物(e)と化合
物(c)との重合反応は、以下の(化16)のとおり進
行するものと考えられる。なお、下記の反応式(化1
6)において、(e)シリル化芳香族ジアミノ化合物と
しては、3、4′−ジアミノジフェニルエーテルをシリ
ル化したものを用いている。
【0100】
【化16】
【0101】(ただし、式中、Arは芳香族残基、Xは
ハロゲン、Meはメチル基を表す。)
【0102】次に、オリゴマー(III)およびオリゴマー
(IV) の合成における化合物(c)の量の調節について
説明する。それぞれのオリゴマーの合成においては、化
合物(d)または化合物(e)のモル量と化合物(c)
のモル量は基本的には等量とするが、以下の理由 オリゴマー(III)と、オリゴマー(IV) とが良好に反
応できるように、オリゴマー(III)、オリゴマー(IV)
のうちの一方における末端を−COClとし、他方のオ
リゴマーの末端を−NH2 とするため、および オリゴマー(III)あるいは(IV) の分子量を適切なも
のとするためにより、化合物(d)あるいは化合物
(e)に対して化合物(c)のモル量を適宜増減するの
がよい。
【0103】本発明者などの研究によれば、後述する前
駆体コポリマーの製造において、オリゴマー(III)を比
較的多く用いる場合には(すなわち、最終的に得られる
PBZ−Oコポリマー中に、ジヒドロキシル基を有する
剛直部位を多く導入する場合には)、オリゴマー(III)
の合成における化合物(c)の量を化合物(d)のモル
数より多少多めにするのがよい。一方、前駆体コポリマ
ーの製造において、オリゴマー(III)の量をオリゴマー
(IV) の量より少なくする場合には、オリゴマー(III)
の合成における化合物(c)の量を化合物(d)のモル
数よりわずかに少なめにするのがよい。ただし、一方の
オリゴマーの合成において化合物(c)の量を少々減じ
た場合には、その減じた分だけ、他方のオリゴマーの合
成において化合物(c)の量を増やす。
【0104】(4)−2 PBZ−Oブロックコポリマ
ーの製造 上述した方法により得られたオリゴマー(III)とオリゴ
マー(IV) とを有機溶媒中で反応させ、ブロックコポリ
マーを合成する。有機溶媒としては、上記のオリゴマー
(III)あるいは(IV) の合成で用いたものを使用するこ
とができる。
【0105】具体的には、オリゴマー(III)を溶解した
有機溶媒とオリゴマー(IV) を溶解した有機溶媒を混合
し、−10〜40℃で6〜24時間攪拌してブロックコ
ポリマーを合成する。−20℃未満では重合が進まず、
一方250℃を超す温度とするとオキサゾール閉環反応
が進行してしまうため、安全をみて上記温度範囲とす
る。
【0106】以上の条件で重合反応を行うことにより、
オキサゾール閉環反応を起こすことなく、大きな重合度
を有するブロックコポリマーが得られる。得られるPB
Z−O前駆体ブロックコポリマーの固有粘度ηinh (N
MP中、30℃、0.5g/dl)は、0.5〜1.8
程度である。
【0107】オリゴマー(III)とオリゴマー(IV) との
重合反応は、以下(化17)のとおりに進行し、ブロッ
クコポリマーが得られる。ここでオリゴマー(III)とし
て先に(化15)で示した反応により得られたものを用
い、オリゴマー(IV) としては(化16)で示したもの
を用いているが、本発明はこれに限定されるものではな
い。
【0108】
【化17】
【0109】式中、mおよびnは、重合度を示してい
る。m:nは、0.01:〜99.99〜99.99:
0.01の範囲をとることができる。得られたブロック
コポリマーは、公知の方法により洗浄および乾燥するこ
とができる。
【0110】分子複合材の製造方法 本発明の3次元網目型分子複合材を得るには、まず上述
のマトリックスポリマーと上記のようにして得られた芳
香族複素環コポリマー前駆体とを両者が良好に溶解する
有機溶媒中に溶解し相溶させたのち、脱溶媒して凝固さ
せ、マトリックスポリマーと前駆体コポリマーとからな
る分子複合材を得る。
【0111】このような有機溶媒としては、N−メチル
−2−ピロリドン、ジメチルスルフォキサイド、N,N
−ジメチルアセトアミドなどのアミド系の有機溶媒、D
MSOを好適に用いることができる。
【0112】前駆体コポリマーとマトリックスポリマー
との配合において、前駆体コポリマーの配合量が極めて
少なくても補強効果はあるが、最終的に芳香族複素環コ
ポリマーとマトリックスポリマーとの配合比が重量比で
1:100〜70:30の範囲となるように設定するの
が好ましい。補強高分子である芳香族複素環コポリマー
の配合比が多くなりすぎると、その存在が密になりす
ぎ、芳香族複素環コポリマーどうしが凝集して分子レベ
ルでの分散が悪くなり、それが分子複合材の機械的強度
を低下させると考えられる。より好ましい配合比は、
1:100〜60:40である。
【0113】前駆体コポリマーとマトリックスポリマー
の溶解は、均一溶液となる限りいかなる方法で行っても
よい。例えば、前駆体コポリマーおよびマトリックスポ
リマーの溶液をそれぞれ調製し、次にこれらを混合して
均一溶液としてもよいし、前駆体コポリマーを溶解した
溶液にマトリックスポリマーを加え均一溶液としてもよ
い。また、両者を一度に1種類の溶媒に溶解させてもよ
い。最終的な溶液の濃度は、10〜40重量%が好まし
い。さらに好ましくは、15〜30重量%である。
【0114】混合時間は、用いるマトリックスポリマー
および溶媒によって多少異なるが、6時間〜30日程度
がよい。また、混合時の温度は−15〜150℃とする
のがよいが、好ましくは室温〜80℃であり、さらに好
ましくは、室温〜60℃である。前駆体コポリマーとマ
トリックスポリマーの溶液の調製および混合は、チッ素
ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下、または
真空中で行うのがよい。
【0115】脱溶媒の方法としては、マトリックスポリ
マーと芳香族複素環コポリマー前駆体との相溶溶液を、
両者のポリマーの非溶媒中に投入する、あるいは乾燥し
てキャストフィルムにするなどの方法がある。非溶媒と
しては、メタノール、エタノールなどのアルコール、蒸
留水などが挙げられる。投入方法は、どのような方法で
もよく、ポリマー溶液を、非溶媒中へ、噴霧、滴下、繊
維状に流し込む、あるいは板状に広げて非溶媒中で凝固
させるなどの方法があるがこれらに限定されるものでは
ない。中でも、噴霧する方法が好ましい。
【0116】次に、上記で得られた前駆体コポリマーと
マトリックスポリマーとの複合体を金型ホットプレスで
特定の形状をもったプリフォーム(複合材)に成形す
る。このとき、繊維状のものを用いる場合には、これを
延伸して用いてもよく、また長い繊維状のまま金型に入
れ成形しても、2〜10mm程度に切断して金型に入れ
成形してもよい。
【0117】成形は、芳香族複素環コポリマー前駆体の
閉環反応が起こらない範囲で行う。成形温度は、200
〜400℃が好ましい。200℃未満では流動性が不足
しボイドが生じる恐れがあり、一方400℃を超えると
閉環反応が始まり好ましくない。また、圧力は10〜5
00Kgf/cm2 が好ましく、より好ましくは100
〜300Kgf/mm2 である。10Kgf/cm2
満では、複合材にボイドが残り、一方500Kgf/c
2 を超えると、複合材に残留応力がかかり好ましくな
い。また、成形は、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気グ
ローブボックス中で行うのが好ましい。
【0118】本発明においては、この金型ホットプレス
成形後、そのまま金型を昇温し、型内圧力下で加熱し、
プリフォームを構成する前駆体コポリマー中においてチ
アゾールあるいはオキサゾール閉環反応を起こさせ、芳
香族複素環コポリマーの複合材とする。
【0119】前駆体コポリマーとマトリックスポリマー
との均一混合物の加熱温度は、用いるマトリックスポリ
マーの種類によって異なるが、一般には250〜350
℃とする。250℃未満の温度では、チアゾール環ある
いはオキサゾール環の形成は見られない。いずれの場合
でも、成形後、1℃/分の加熱速度で320℃まで昇温
し、5分加熱を行うのが最適である。加熱速度、加熱温
度がこれらの値を超えると、材料の破壊を招くため好ま
しくない。加熱は一定の加熱温度によるものだけでな
く、段階的に温度を変える加熱プログラムによるもので
もよい。また、加熱は、不活性雰囲気中で行うことが好
ましい。また加熱時の圧力は、50〜300kgf/c
2 が好ましい。
【0120】この加熱において、PBZ−T前駆体コポ
リマーであればアルキル基R、PBZ−O前駆体コポリ
マーであればメタノールおよびメチルトリメチルシリル
エーテル等の保護基が離脱するとともに、その部位でチ
アゾール環あるいはオキサゾール環が形成され、芳香族
複素環コポリマーが形成される。
【0121】前駆体コポリマーとして上述の(化12)
に示す反応式で得られたもの(PBZ−T前駆体コポリ
マー)を用いれば、下記構造式(化18)の芳香族複素
環コポリマーが形成される。
【0122】
【化18】
【0123】また、前駆体コポリマーとして上述の(化
17)に示す反応式で得られたもの(PBZ−O前駆体
コポリマー)を用いれば、下記構造式(化19)の芳香
族複素環コポリマーが形成される。
【0124】
【化19】
【0125】閉環反応の際にはガスが発生するが、本発
明では閉環反応を金型内で行うため、このガスを抜きな
がら加熱することが好ましい。そこで、金型としては、
図9に示すベントホールなしのものよりも、図10に示
すような、ベントホールが設けられ、金型の成形面に多
孔性材料を用いているような金型を用いるのが好まし
い。
【0126】上述した方法によれば、マトリックスポリ
マー中に分子レベルで均一に分散した前駆体コポリマー
がそのまま芳香族複素環コポリマーになるので、芳香族
複素環コポリマーはマトリックスポリマー中に微細に均
一に分散することになり、良好な機械的特性を有するプ
レフォーム分子複合材となる。また、閉環反応時に、金
型の圧力により拘束することによって、強化材分子が粒
状に凝集することを防ぎ、補強材である芳香族複素環コ
ポリマーに3次元網目構造を形成させ、マトリックスポ
リマー中に微細に均一に分散させ複合させることができ
る。かくて、一般的な溶融成形が可能となり、成形時に
も大きな相分離を生じず、芳香族複素環コポリマーの凝
集もなく、機械的特性に優れたプレフォーム分子複合材
を得ることができる。
【0127】図2に、焼成前の相構造図として、PBZ
−Tコポリマー複合材の透過電子顕微鏡写真を例示し、
この比較として、図1に、微粒子分散型の分子複合材の
透過電子顕微鏡写真を例示する。図2から明らかなよう
に、PBZ−Tコポリマー複合材は、マトリックスポリ
マーリッチ相中に、強化材である芳香族複素環コポリマ
ーリッチ相が連続した3次元網目状の相として均一に存
在している。網目の平均径が1μm以下、芳香族複素環
コポリマーの連続相の径が200nm以下であることが
好ましい。
【0128】焼成前の複合材は、このように強化材であ
る芳香族複素環コポリマーが3次元網目構造を形成して
おり、非常に微細に均一にマトリックスポリマー中に分
散しているので、一般的な溶融成形が可能となり、成形
時にも強化材ポリマーの凝集などがなく、大きな相分離
を生じない。これにより、該複合材を焼成して炭素化し
た場合、得られた炭素材料は優れた機械的物性を有す
る。
【0129】炭素材料の製造方法 上述したマットリックスポリマーと剛直芳香族ポリマー
からなる3次元網目型分子複合材の焼成は、プリフォー
ムを形成させた金型から取り出して大気圧中において行
う。焼成は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気に
おいて、まず、1000℃まで100〜200℃/Hr
の昇温速度で加熱して炭化させる。昇温速度が100℃
/Hr未満では、炭化に時間がかかり過ぎ、一方200
℃/Hrを超えると、炭化が充分に終わらない恐れがあ
る。その場合には、1000℃付近に1〜2時間保持す
ればよい。
【0130】次いで、400〜600℃/Hrの昇温速
度で高温に加熱して、前記したごとくグラファイト化
(黒鉛化)を行う。黒鉛化は、2300〜3000℃
で、0.5〜12時間行うことが好ましい。特に、25
00〜2800℃で、2〜6時間行うことがより好まし
い。黒鉛化温度が、2300℃未満では、所望の黒鉛化
度の炭素成形材料が得られず、一方、3000℃を超え
ると、得られる炭素成形材料の硬さが低下する。
【0131】以上のように、本発明では、高い剛直性の
ために一般に溶解性に乏しく、強酸にのみ可溶であり、
熱により溶融することがなく、また相溶性にも劣り、成
形加工が困難な芳香族複素環コポリマーをマトリックス
ポリマーとともにプレフォーム複合材とする場合におい
て、複素環を形成する官能基の水素原子の少なくとも1
つを他の官能基で置換した芳香族複素環コポリマー前駆
体にマトリックスポリマーと同一または類似のフラグメ
ントを導入し共重合体とし、マトリックスポリマーとの
相溶性を向上させた。
【0132】そして、閉環反応時に、金型の圧力により
拘束することと相俟って、強化材分子が粒状に凝集する
ことを防ぎ、補強材である芳香族複素環コポリマーに3
次元網目構造を形成させ、マトリックスポリマー中に微
細に均一に分散させ複合させることができる。かくて、
一般的なプレフォーム溶融成形が可能となり、成形時に
も大きな相分離を生じず、芳香族複素環コポリマーの凝
集もなく、機械的特性に優れたプレフォーム分子複合材
を得ることができる。
【0133】次いで、上記プレフォーム分子複合材を高
温に加熱焼成処理することにより、炭化−黒鉛化して、
焼成前の形状を保持した状態で、等方性のバルク材とし
ての炭素材料を取得することができる。これにより、本
発明の炭素材料は、優れた機械的物性を有する。このよ
うにして得られた炭素材料は、電極、ブラッシ類、炭素
棒、耐火物、機械部品、原子炉材料、発熱体、構造材、
高温高圧用ガスケット、断熱材、耐蝕性シール材、ろ過
材などの様々な用途に用いることができる。
【0134】
【実施例】以下、実施例により、本発明をさらに詳しく
説明する。 I.PBZ−T前駆体ランダムコポリマーの合成 (1)ランダムコポリマーの合成 下記式(化20)
【0135】
【化20】
【0136】で表される化合物(a)8ミリモルと、下
記式(化21)
【0137】
【化21】
【0138】で表される化合物(b)2ミリモルとを、
アルゴン雰囲気下、N−メチル−ピロリドン(以下「N
MP」という)15mlに溶解し、均一な溶液を調製し
た。この溶液を容器ごと氷冷し、(c)ジカルボン酸誘
導体として2−クロロテレフタル酸ジクロライド10ミ
リモルを加えた。溶液を攪拌しながら、徐々に温度を上
げてゆき、室温に達したところで温度を保ち、さらに6
時間反応させた。得られたエメラルドグリーンの溶液を
大量のメタノール中に注いだ。なお、この操作はメタノ
ールを攪拌しながら行った。
【0139】30分間攪拌を続けたのち、ろ過し、さら
に水−メタノール溶液で一晩還流し、溶媒を除去した。
得られたポリマーを、真空中、100℃で24時間乾燥
した。収量は、99.8%であった。このポリマーの固
有粘度ηinh は、1.4(dl/g)であった。なお、
固有粘度の測定は、NMP中で、ポリマー濃度を0.5
g/dlとし、30℃にてウベローデ法により行った。
得られたランダムコポリマーの構造は、以下の(化2
2)のとおりであると思われる。なお、このポリマーに
おいて、m:nは、8:2となる。
【0140】
【化22】
【0141】(2)分子複合材の製造 (ア)実施例1〜2に供する3次元網目型分子複合材の
製造 上記のようにして得られた前駆体ランダムコポリマー
8.02gと、マトリックスポリマーとして下記の式
(化23)で表される芳香族ポリアミド31.97g
を、NMP160mlに溶解し、室温〜80℃で1週間
攪拌して混合し、均一な茶褐色の溶液を得た。
【0142】
【化23】
【0143】この溶液を大量のエタノール中にスプレー
して、前駆体ランダムコポリマーとマトリックスポリマ
ー複合凝固粉を得た。これをろ過し、得られた凝固粉を
100℃で真空乾燥した。この凝固粉を図10に示す金
型に充填し、圧力は60〜300kgf/cm2の条件
で、230℃にて金型ホットプレス成形を行ったのち、
そのまま金型を昇温し、320℃にて型内熱処理により
前駆体ランダムコポリマーを閉環した。このようにして
50×15×2t(mm)の平板成形品T/Pを得た。
このときの加熱プログラムを図5に示す。
【0144】なお、成形は、Ar雰囲気下、グローブボ
ックス中にて行った。また、加熱は、閉環反応に伴って
生じるガスのガス抜きをしながら、金型内で行った。得
られた成形品の曲げ物性は、弾性率が713kgf/m
2 、強度が2.2kgf/mm2 であった。
【0145】(イ)実施例3〜4に供する3次元網目型
分子複合材の製造 上記の前駆体ランダムコポリマー12.79gと、マト
リックスポリマーとして実施例1と同一の芳香族ポリア
ミド27.21gを、NMP160mlに溶解し、室温
〜80℃で1週間攪拌して混合し、均一な茶褐色の溶液
を得た。
【0146】この溶液を大量のエタノール中にスプレー
して、前駆体ランダムコポリマーとマトリックスポリマ
ー複合凝固粉を得た。これをろ過し、得られた凝固粉を
100℃で真空乾燥した。この凝固粉を実施例1と同
様、図10に示す金型に充填し、圧力は60〜300k
gf/cm2 の条件で、230℃にて金型ホットプレス
成形を行ったのち、そのまま金型を昇温し、320℃に
て型内熱処理により前駆体ランダムコポリマーを閉環し
た。このようにして50×15×2t(mm)の平板成
形品T/Pを得た。
【0147】得られた成形品の曲げ物性は、弾性率が
1,215kgf/mm2 、強度が6.0kgf/mm
2 であった。また、成形品の透過電子顕微鏡写真(倍率
56,000倍)を、図2に示す。この写真より、成形
品は、3次元網目構造をとる部分とその他の部分の2相
からなっていることが分かる。従って、成形品は、マト
リックスポリマー中にPBZ−Tコポリマーリッチ相が
連続した3次元網目状の相として均一に存在しているこ
とが分かる。また、網目の平均径は0.5μm以下であ
り、PBZ−Tコポリマー連続相の径は約60nmであ
った。
【0148】(エ)比較例1に供する分子複合材の製造 上記の実施例1〜4に供する分子複合材の製造に用いた
マトリックスポリマーのみから、100℃で真空乾燥し
た粉体を図9に示す金型に充填し、金型ホットプレス法
により、100〜300kgf/cm2 の条件で同様に
230℃に加熱処理して、50×15×2t(mm)の
平板成形品T/Pを得た。なお、図6に加熱プログラム
を示す。得られた成形品の曲げ物性は、弾性率が479
kgf/mm2 、強度が20.4kgf/mm2 であっ
た。このときの加熱プログラムを図6に示す。
【0149】(オ)比較例2〜3に供する微粒子分散型
分子複合材の製造 上記の前駆体ランダムコポリマー12.79gと、マト
リックスポリマーとして実施例1と同一の芳香族ポリア
ミド27.21gを、NMP160mlに溶解し、室温
〜80℃で1週間攪拌して混合し、均一な茶褐色の溶液
を得た。
【0150】この溶液を大量のエタノール中にスプレー
して、前駆体ランダムコポリマーとマトリックスポリマ
ー複合凝固粉を得た。これをろ過し、得られた凝固粉を
100℃で真空乾燥した。この凝固粉を真空中330℃
で30分間熱処理し、前駆体ランダムコポリマーを閉環
してPBZ−Tコポリマーとした。このようにして得ら
れる複合材を、図9に示す金型に充填し、圧力は100
〜300kgf/cm2 の条件で、350℃にて金型ホ
ットプレス成形を行って50×15×2t(mm)の平
板成形品T/Pを得た。なお、図7に加熱プログラムを
示す。得られた成形品の曲げ物性は、弾性率が479k
gf/mm2 、強度が20.4kgf/mm2 であっ
た。
【0151】II.PBZ−T前駆体ブロックコポリマー
の合成 実施例1の前駆体コポリマーと同様の構造式で示される
前駆体ブロックコポリマーを、以下のようにして製造し
た。(1) オリゴマー(I)およびオリゴマー(II) の合成 乾燥したアルゴン気流下で、よく乾燥した50mlのフ
ラスコにNMP5mlを採り、これに、上記の(化2
6)で表される化合物(a)8ミリモル(2.227
g)を加えて溶解し、均一なNMP溶液を調製した。
【0152】この溶液を容器ごと氷冷した状態で、さら
に(c)ジカルボン酸誘導体として2−クロロテレフタ
ル酸クロライド8.2ミリモル(1.947g)を加え
て5分間攪拌し、オリゴマー(I)を合成した。
【0153】上記したオリゴマー(I)の合成と同様
に、乾燥したアルゴン気流下で、よく乾燥した50ml
のフラスコにNMP10mlを入れ、これに上記の(化
27)で表される化合物(b)2ミリモル(0.400
4g)を加えて溶解し、均一なNMP溶液を調製した。
【0154】この溶液を容器ごと氷冷した状態で、さら
に(c)ジカルボン酸誘導体として2−クロロテレフタ
ル酸クロライド1.8ミリモル(0.427g)を加え
て5分間攪拌し、オリゴマー(II) を合成した。
【0155】(2)PBZ−T前駆体ブロックコポリマ
ーの合成 上記の操作で得られたオリゴマー(I)のNMP溶液
を、オリゴマー(II) のNMP溶液に加えた。なお、オ
リゴマー(I)のNMP溶液を、オリゴマー(II) のN
MP溶液に加えたのち、オリゴマー(I)のNMP溶液
のフラスコをさらに2mlのNMPで洗い、この洗った
NMPもオリゴマー(II) のNMP溶液に加えた。
【0156】混合したオリゴマー溶液を氷冷したまま1
時間攪拌し、さらに攪拌しながら温度を室温まで上げて
ゆき、室温に保持してさらに4時間攪拌を続けた。得ら
れた溶液を大量のメタノール中に注いだ。なお、この操
作はメタノールを攪拌しながら行った。
【0157】次に、このメタノール溶液をろ過し、得ら
れた沈澱(ポリマー)を真空中、100℃で24時間乾
燥した。収率は、99.8%であった。このポリマーの
固有粘度ηinh は、1.4であった。なお、固有粘度の
測定はNMP中で、ポリマー濃度を0.5g/dlと
し、30℃にてウベローデ法により行った。
【0158】なお、このポリマーにおいて、オリゴマー
(I)に由来し、剛直性を発現する部位の重合度mと、
オリゴマー(II) に由来し、柔軟性を発現する部位の重
合度nの分子全体における比(m:n、ここでmおよび
nはそれぞれポリマー全体での合計をとる)は、8:2
となる。
【0159】(3)分子複合材の製造 (カ)実施例5〜6に供する分子複合材の製造 上記の方法により得られた前駆体ブロックコポリマー1
2.81gとマトリックスポリマー27.18gのNM
P溶液を調製し、これを多量のエタノール中に注ぎ込
み、繊維状の凝固物を得、これを80℃で真空乾燥し
た。この繊維を250℃にて1.5倍に延伸し、2〜1
0mmに粉砕した。
【0160】これを、図10に示す金型に充填し、圧力
は100〜300kgf/cm2 の条件で、230℃に
て金型ホットプレス成形を行ったのち、そのまま金型を
昇温し、300℃にて型内熱処理により前駆体ランダム
コポリマーを閉環した。このようにして50×15×2
t(mm)の成形品T/Pを得た。なお、図8に加熱プ
ログラムを示す。
【0161】なお、成形は、Ar雰囲気下、グローブボ
ックス中にて行った。また、加熱は、閉環反応に伴って
生じるガスのガス抜きをしながら、金型内で行った。得
られた成形品の曲げ物性は、弾性率が731kgf/m
2 、強度が0.7kgf/mm2 であった。
【0162】III.PBZ−T前駆体ホモポリマーの合成 (1)PBZ−T前駆体ホモポリマーの合成 PBZ−T前駆体ホモポリマーは実施例5において用い
た次式(化30)に示す如くオリゴマー(I)と同一の
ものであり、前記した(1)オリゴマー(I)の合成法
に従い合成した。
【0163】
【化24】
【0164】(2)分子複合材の製造 (キ)実施例7に供する分子複合材の製造 上記のようにして得られた前駆体ホモポリマー12.7
6gと、マトリックスポリマーとして下記の式(化2
5)で表される芳香族ポリアミド27.23gを、NM
P160mlに溶解し、室温〜80℃で1週間攪拌して
混合し、均一な茶褐色の溶液を得た。
【0165】
【化25】
【0166】この溶液を大量のエタノール中にスプレー
して、前駆体ホモポリマーとマトリックスポリマー複合
凝固粉を得た。これをろ過し、得られた凝固粉を100
℃で真空乾燥した。この凝固粉を図10に示す金型に充
填し、100〜300kgf/cm2 の条件で、230
℃にて金型ホットプレス成形を行ったのち、そのまま金
型を昇温し、300℃にて型内熱処理により前駆体ホモ
ポリマーを閉環した。このようにして50×15×2t
(mm)の成形品T/Pを得た。なお、図8に加熱プロ
グラムを示す。得られた成形品の曲げ物性は、弾性率が
710kgf/mm2 、強度が3.2kgf/mm2
あった。
【0167】なお、PBZ−T前駆体ホモポリマーの凝
固粉を図9に示す金型に充填し、成形品T/Pを、図7
に示す加熱プログラムに従い350℃で閉環させた場
合、32.1重量%の重量減少が認められた。従って、
PBZ−T前駆体ホモポリマーは(化25)に示す反応
により閉環し、PBZ−Tホモポリマーを生成している
と推定される。
【0168】
【化25】
【0169】実施例1 上述したマットリックスポリマーと剛直芳香族ポリマー
からなる3次元網目型分子複合材ランダムコポリマー
(PBZ−Tコポリマーの添加量20重量%)の焼成
を、プリフォームを形成させた金型から取り出し、大気
圧中にて行った。すなわち、金型ホットプレスにより成
形された平板T/P(曲げ弾性率713kgf/mm
2 、曲げ強度2.2kgf/mm2 )を窒素雰囲気中で
100℃/Hrの昇温速度で加熱処理し700℃で2時
間保持した。これを室温まで放冷し焼成体の物性を測定
した。表面抵抗は、三菱油化製「MCP−試験機(MC
P−TESTER)」にて四端子法により測定した。測
定結果を表1に示す。
【0170】実施例2 実施例1と同様にして得られた平板T/Pを窒素雰囲気
中で100℃/Hrの昇温速度で1000℃まで昇温
し、その後は500℃/Hrの昇温速度で2600℃ま
で昇温し、この温度に2時間保持した。これを室温まで
放冷し焼成体の物性を測定した。測定結果を表1に示
す。
【0171】実施例3 上述したマットリックスポリマーと剛直芳香族ポリマー
からなる3次元網目型分子複合材ランダムコポリマー
(PBZTコポリマーの添加量30重量%)の焼成を、
実施例1と同様プリフォームを形成させた金型から取り
出し、大気圧中にて行った。すなわち、金型ホットプレ
スにより成形された平板T/P(曲げ弾性率916kg
f/mm2 、曲げ強度3.6kgf/mm2 )を窒素雰
囲気中で100℃/Hrの昇温速度で加熱処理し700
℃で2時間保持した。これを室温まで放冷し焼成体の物
性を測定した。測定結果を表1に示す。
【0172】実施例4 実施例3と同様にして得られた平板T/Pを窒素雰囲気
中で100℃/Hrの昇温速度で1000℃まで昇温
し、その後は500℃/Hrの昇温速度で2600℃ま
で昇温し、この温度に2時間保持した。これを室温まで
放冷し焼成体の物性を測定した。測定結果を表1に示
す。
【0173】実施例5 上述したマットリックスポリマーと剛直芳香族ポリマー
からなる3次元網目型分子複合材ブロックコポリマー
(PBZ−Tコポリマーの添加量30重量%)の成を、
実施例1と同様プリフォームを形成させた金型から取り
出し、大気圧中にて行った。すなわち、金型ホットプレ
スにより成形された平板T/P(曲げ弾性率731kg
f/mm2 、曲げ強度0.7kgf/mm2 )を窒素雰
囲気中で100℃/Hrの昇温速度で加熱処理し700
℃で2時間保持した。これを室温まで放冷し焼成体の物
性を測定した。測定結果を表1に示す。
【0174】実施例6 実施例5と同様にして得られた平板T/Pを窒素雰囲気
中で100℃/Hrの昇温速度で1000℃まで昇温
し、その後は500℃/Hrの昇温速度で2600℃ま
で昇温し、この温度に2時間保持した。これを室温まで
放冷し焼成体の物性を測定した。測定結果を表1に示
す。
【0175】実施例7 上述したマットリックスポリマーと剛直芳香族ホモポリ
マーからなる3次元網目型分子複合材コポリマー(PB
Z−Tホモポリマーの添加量30重量%)の焼成を、実
施例1と同様プリフォームを形成させた金型から取り出
し、大気圧中にて行った。すなわち、得られた平板T/
Pを窒素雰囲気中で100℃/Hrの昇温速度で100
0℃まで昇温し、その後は500℃/Hrの昇温速度で
2600℃まで昇温し、この温度に2時間保持した。こ
れを室温まで放冷し焼成体の物性を測定した。測定結果
を表1に示す。
【0176】比較例1 上述したマットリックスポリマーのみからなるマトリッ
クス単体の焼成を、同様にプリフォームを形成させた金
型から取り出し、大気圧中にて行った。すなわち、金型
ホットプレスにより成形された平板T/P(曲げ弾性率
479kgf/mm2 、曲げ強度20.4kgf/mm
2 )を窒素雰囲気中で100℃/Hrの昇温速度で加熱
処理し700℃で2時間保持した。これを室温まで放冷
したところ、成形品は溶融し、形状を失っていた。
【0177】比較例2 上述したマットリックスポリマーと剛直芳香族コポリマ
ーからなる微粒子分散型分子複合材コポリマー(PBZ
−Tホモポリマーの添加量30重量%)の焼成を、実施
例1と同様プリフォームを形成させた金型から取り出
し、大気圧中にて行った。すなわち、金型ホットプレス
により成形された平板T/Pを窒素雰囲気中で100℃
/Hrの昇温速度で加熱処理し700℃で2時間保持し
た。これを室温まで放冷し物性を測定した。測定結果を
表1に示す。
【0178】比較例3 比較例2と同様にして得られた平板T/Pを窒素雰囲気
中で100℃/Hrの昇温速度で1000℃まで昇温
し、その後は500℃/Hrの昇温速度で2600℃ま
で昇温し、この温度に2時間保持した。これを室温まで
放冷したところ、成形品は崩壊し、粉末状になってい
た。以上の結果を表1に纏める。なお、表中の3次元網
目型MCは3次元網目型分子複合材の略称である。
【0179】
【表1】
【0180】各種プレフォーム複合材の高温焼成処理の
結果、マトリックス高分子単体のプレフォーム複合材
は、比較例1に示すごとく700℃で焼成処理する段階
で、溶融し形状を喪失し、プレフォーム微粒子分散型分
子複合材は、比較例2に示すごとく700℃の焼成処理
では形状を保持しているが、比較例3に示すごとく26
00℃での焼成処理では崩壊し粉末状になる。一方、プ
レフォーム3次元網目型複合材は、実施例1〜6から明
らかなように、微粒子分散型複合材とは異なり、260
0℃で焼成処理しても平板形状を保った炭素材料を生成
することが明らかである。
【0181】次に、焼成処理温度と焼成品の表面抵抗の
関係を図3に示す。図3から明らかなように、導電率は
焼成温度に従って向上することが分かる。
【0182】
【図3】
【0183】さらに、PBZ−Tランダムコポリマーと
3,4′−ジアミノジフェニル−2−クロロテレフタラ
ミドとの分子複合材(実施例3)の2600℃焼成品の
超薄切片法透過電子顕微鏡写真を図4に示す。
【0184】
【図4】
【0185】マトリックス高分子である芳香族ポリアミ
ドは難グラファイト化材料であり、一方剛直高分子であ
るPBZ−Tは配向した状態ではグラファイト化し得る
材料であることが知られており、図4から、明らかに
3,4′−ジアミノジフェニル−2−クロロテレフタラ
ミドから生じた乱層構造炭素の中にPBZ−Tフィブリ
ルがグラファイト化したと推定される線状の層状構造炭
素が確認される。すなわち、C/Cナノコンポシットを
形成していることが分かる。
【0186】以上のように、プリフォーム3次元網目構
造型複合材は、炭化−黒鉛化の際にT/P形状を保つ効
果があることが確認された。また、700℃焼成処理デ
ータの比較から、プリフォーム3次元網目構造型複合材
より得られるプリフォーム炭素材料は微粒子分散型に比
べ導電率の向上の効果が認められる。また、導電率はP
BZ−T添加量の増加に伴って向上し、その添加量で特
性がコントロールできることが分かる。
【0187】
【発明の効果】本発明では、芳香族複素環コポリマーの
前駆体それぞれに対し、複素環を形成する官能基の水素
原子の少なくとも1つを他の官能基で置換したことによ
り、該前駆体を有機溶媒に可溶性にして、有機溶媒中で
よく混合することが可能となる上、その溶解度も高いも
のとなる。さらに、本発明では、補強高分子である芳香
族複素環ポリマーにマトリックスポリマーと同一または
類似のフラグメントを導入し共重合体としたため、芳香
族複素環コポリマーとマトリックスポリマーとの相溶性
を向上させている。このため、芳香族複素環コポリマー
をゆるやかなスピノーダル分解に導くことが可能となる
ため、一定の熱処理を施すことにより、芳香族複素環コ
ポリマーとマトリックスポリマーにより、3次元網目型
分子複合材ができる。
【0188】そして、補強材である芳香族複素環コポリ
マーを3次元網目構造とすることにより、マトリックス
ポリマー中に良好に均一に分散させ、複合させることが
できる。かくて、一般的な溶融成形が可能となり、成形
時にも大きな相分離を生じず、芳香族複素環コポリマー
の凝集もなく、機械的特性に優れた分子複合材を得るこ
とができる。
【0189】このようにして得られたマトリックスポリ
マーと剛直芳香族ポリマーからなる3次元網目型分子複
合材は、焼成前の形状(プリフォーム)を保持したまま
焼成することが可能であり、等方性の炭素材料を製造す
ることができる。さらに、本発明によれば、物理的特
性、特に電導率をマトリックスポリマーと剛直製芳香族
ポリマーの配合比で制御することができ、本発明の炭素
材料はバルク材として、電極、ブラッシ類、炭素棒、耐
火物、機械部品、原子炉材料、発熱体、構造材、高温高
圧用ガスケット、断熱材、耐蝕性シール材、ろ過材など
の様々な用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】微粒子分散型分子複合材の焼成前の相構造図を
示す透過電子顕微鏡写真(倍率30,000倍)であ
る。
【図2】本発明のPBZ−Tコポリマー複合材の焼成前
の相構造図を示す透過電子顕微鏡写真(倍率56,00
0倍)である。
【図3】本発明のPBZ−Tコポリマー複合材の焼成温
度と焼成品の表面抵抗の関係を示す関係図である。
【図4】本発明のPBZ−Tランダムコポリマーと3,
4′−ジアミノジフェニル−2−クロロテレフタラミド
との分子複合材の2600℃焼成品の表面構造を示す透
過電子顕微鏡写真写真(倍率44,000倍)である。
【図5】実施例1〜4に供する分子複合材製造における
金型の加熱プログラムである。
【図6】比較例1に供する分子複合材製造における金型
の加熱プログラムである。
【図7】比較例2〜3に供する分子複合材製造における
金型の加熱プログラムである。
【図8】実施例5〜7に供する分子複合材製造における
金型の加熱プログラムである。
【図9】比較例2〜3で用いられる金型の構成図であ
る。
【図10】実施例1〜7に供する分子複合材製造に用い
られるガス抜き可能な金型の構成図である。
【化25】
【化25】

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マトリックスポリマーと複素環を形成す
    る官能基の少なくとも1つを他の官能基で置換した芳香
    族複素環コポリマーの前駆体を有機溶媒中で相溶させて
    混合溶液となしたのち、脱溶媒して凝固させて複合材と
    した3次元網目型分子複合材を焼成することを特徴とす
    る炭素材料。
  2. 【請求項2】 炭素材料がバルク材であることを特徴と
    する請求項1記載の炭素材料。
  3. 【請求項3】 マトリックスポリマーがポリアミドであ
    ることを特徴とする請求項1または請求項2記載の炭素
    材料。
  4. 【請求項4】 芳香族複素環コポリマーが、ポリベンゾ
    チアゾールコポリマーおよびポリベンゾオキサゾールコ
    ポリマーよりなる群から選ばれる少なくとも一種である
    ことを特徴とする請求項1〜3、いずれか1項記載の炭
    素材料。
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