JPH1090697A - 液晶素子の製造方法 - Google Patents

液晶素子の製造方法

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JPH1090697A
JPH1090697A JP26561896A JP26561896A JPH1090697A JP H1090697 A JPH1090697 A JP H1090697A JP 26561896 A JP26561896 A JP 26561896A JP 26561896 A JP26561896 A JP 26561896A JP H1090697 A JPH1090697 A JP H1090697A
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liquid crystal
phase
temperature
fine particles
chiral nematic
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JP26561896A
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English (en)
Inventor
Takayuki Fujioka
隆之 藤岡
Nobue Kataoka
延江 片岡
Keiichi Nito
敬一 仁藤
Akio Yasuda
章夫 安田
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Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 注入性及び分散性に優れ、全面的に均一な線
形性の高い電圧−透過率曲線を持ち、表示特性に優れた
液晶素子の製造方法を提供すること。 【解決手段】 微粒子含有強誘電性液晶5をカイラルネ
マチック相を示す温度(矢印I)で一対の基板1a−1
b間に注入した後、カイラルスメクチックC相を示す温
度(矢印II)まで冷却し、更にカイラルネマチック相を
示す温度(矢印III)まで昇温する、液晶素子の製造方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一対の基体間に液
晶が配されており、この液晶をスイッチングするための
しきい値電圧の異なる領域が微細に分布している液晶素
子(例えば液晶表示素子又は液晶ディスプレイ)の製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液晶をディスプレイに用いた液晶ディス
プレイ(LCD)は、低消費電力で薄型軽量であるとい
う特長を有しており、これを生かして、時計、電卓から
コンピューターディスプレイ、テレビジョン受像機(T
V)へと応用が進んでいる。
【0003】こうしたLCDにおいて液晶として、従来
は、ネマチック液晶を使用していた。しかしながら、ネ
マチック液晶の限界としては、応答速度が遅く、単純マ
トリックス駆動では、ツイストネマチック液晶(TN)
で100ライン、スーパーツイストネマチック液晶(S
TN)でも240ラインが限界であり、またアクティブ
マトリックス駆動では、用いる薄膜トランジスタ(TF
T)による高価格化を考え合わせると、大画面化は難し
い等の問題点がある。
【0004】一方、強誘電性液晶(FLC:ferroelect
ric liquid crystal) を表示素子に応用しようとする研
究開発は、活発に進められてきている。FLCについて
は、1975年にメイヤーによって、はじめて強誘電性
液晶が合成され、また1980年にクラーク、ラガワー
ルによって、電界によりドメイン反転が可能な表面安定
化強誘電性液晶が発明された。FLCは、分子自身に永
久双極子モーメントを分子の長軸に対して垂直に有し、
自発分極を持ち、電界によりスイッチング可能な液晶の
ことであり、これを用いたFLCディスプレイは、主と
して次の(1)〜(3)の特徴を有する優れたものであ
る。
【0005】(1)スイッチング速度がμ秒オーダであ
り、TN液晶表示に比較して1000倍も高速に応答
し、高速応答性に優れている。 (2)分子配列に基本的にねじれ構造がなく、視野角依
存性が少ない。 (3)電源をオフしても画像が保持され、画像にメモリ
性があり、ハイビジョンにも対応できる1000本以上
の走査線に対しても単純マトリックス駆動が可能であ
る。
【0006】従って、FLCディスプレイは、高精細、
低コスト化、大画面化という性能を追求できるディスプ
レイである。
【0007】このようなFLCディスプレイ(強誘電性
液晶表示素子)は、例えば図9及び図10に概略的に示
すような構造からなっている。まず、透明ガラス基板
(コーニング7059、0.7mm厚)1a、1b上に
透明電極(100Ω/□のITO:Indium tin oxide)
2a、2bが設けられている。これらの透明電極はエッ
チングによりストライプ状にパターニングされ、互いに
マトリックス状に交差したデータ電極2aと走査電極2
bに形成されている。
【0008】各透明電極2a、2b上には、液晶配向膜
としてSiOの斜方蒸着膜3a、3bが形成されてい
る。SiOの斜方蒸着膜の形成においては、真空蒸着装
置内に、SiO蒸着源から鉛直上に基板を配し、鉛直の
線と基板法線のなす角度を85度として設置する。Si
Oを基板温度170℃で真空蒸着後、300℃、1時間
の焼成を行う。
【0009】このようにして作製した配向膜付きの一対
の基板1a、1bは、そのデータ電極2a側と走査電極
2b側の配向処理方向が対向面で反平行となり、かつデ
ータ電極2aと走査電極2bの電極配列が直交するよう
に組まれる。スペーサとして、目的ギャップ長に応じた
ガラスビーズ(真し球:直径0.8〜3.0μm(触媒
化成工業(株)製))4が用いられている。ここでは、
配向処理方向を反平行に組んだが、平行に組んでも構わ
ない。
【0010】スペーサ4は、透明基板1a、1bの大き
さにより、小さい面積の場合は周囲を接着するシール材
(UV硬化型の接着剤(フォトレック:セキスイ化学
(株)製))6中に0.3wt%程度分散させることに
より、基板間のギャップを制御する。基板面積が大きい
場合には、上記真し球を基板上に平均密度で100個/
mm2 散布したのち、ギャップをとり、液晶の注入孔を
確保してシール剤6でセル周囲を接着する。
【0011】一対の基板1a−1b間には、例えば強誘
電性液晶(チッソ社製のCS−1014)5を等方相温
度で超音波ホモジナイザを用いて均一に分散させた液晶
組成物が注入されている。この強誘電性液晶組成物は等
方相温度あるいはカイラルネマチック相温度のように流
動性を示す状態で減圧下で注入される。液晶注入後は、
徐冷され、注入孔周囲のガラス基板上の液晶が除去され
たのち、エポキシ系の接着剤で封止され、FLCディス
プレイ11が作製される。
【0012】このFLCディスプレイ11の駆動方式と
しては、X−Yマトリクス方式を使用する。1H(1水
平走査時間又は1ライン選択時間)は63.5μsであ
り、電圧はバイポーラで印加するため、各選択パルスは
63.5/2μs幅となる。ROW側(電極2b)から
はしきい値であるセレクトパルスを印加し、COLUM
N側(電極2a)からはデータパルスを印加する。
【0013】ところが、FLCディスプレイは上記の優
れた特長を有してはいるが、階調表示が難しいことが課
題として挙げられていた。即ち、従来の双安定モードを
用いた強誘電性液晶表示は2状態のみ安定であることか
ら、ビデオ等の階調表示には不適当であるとされてき
た。これは特に、配向膜との相互作用により螺旋構造を
解かれた、いわゆる表面安定化強誘電性液晶において顕
著であり、2状態のみしか安定状態が存在せず、白黒の
2値表示のみである。
【0014】即ち、従来の強誘電性液晶素子(例えば表
面安定化強誘電性液晶素子)は、外部印加電界E(Ps
は自発分極)に対して分子Mの配向方向が図11に示す
ように状態1と状態2の二つの状態間をスイッチングす
る。この分子配向の変化は、液晶素子を直交する偏光板
間に設置することによって透過率の変化として現れ、図
12のように印加電界に対して透過率がしきい値電圧V
thで0%から100%に急峻に変化する。この透過率が
変化する電圧幅は一般的に1V以下である。さらに、V
thがセルギャップの微小な変動によって変化する。従っ
て、従来のFLC液晶素子では、透過率−印加電圧のカ
ーブに安定な電圧幅を持たせることが困難であり、電圧
制御による階調表示は困難若しくは不可能である。
【0015】このため、サブピクセルを設けて画素面積
を調節することにより階調を行う方法(面積階調法)
や、強誘電性液晶の高速スイッチング性を利用して1フ
ィールドの間にスイッチングを繰り返すことにより階調
を行う方法(タイムシーケンシャル又はタイムインテグ
レーション階調法)などの方法が提案されている。しか
し、これらの方法では、未だ階調表示が不十分であると
いう問題がある。
【0016】面積階調法の場合、1つの画素(ピクセ
ル)を分割することにより、一画素分の面積をコントロ
ールし、中間調を表示するものである。しかしながら、
この方法でTV等に必要とされる64階調や256階調
を表示しようとすると、1つのピクセルをそれぞれ、6
分割、8分割に画素分割することが必要となる。
【0017】従って、実際に、この6分割、8分割の画
素分割を行おうとすると、配線がそれだけ増加すること
になり、実装や駆動回路が複雑(6分割ならば6倍、8
分割ならば8倍に外部接続本数が増す)化する。このた
め、1つのピクセルに必要な面積が制限され、高精細表
示には不向きであり、分割数が増すと画像に周期性が生
じ、画質が低下する。
【0018】タイムシーケンシャル階調法の場合は、強
誘電性液晶の高速応答性を生かして、1フィールドの間
にn回白黒でスイッチングすることにより、2n レベル
の階調表示ができることになる。しかしながら、パッシ
ブマトリックス(単純マトリックス)で駆動する場合
に、1ラインに割り当てられる時間は制限されており、
例えば、NTSC信号でのビデオ表示を行う場合には、
インターレースを行っているので、走査線の本数が25
6本であるならば、1つのラインに割り当てられる1H
は、63μ秒となる。電気分解を避けるために、バイポ
ーラパルスを用いると、パルス幅は30μ秒である。
【0019】従って、タイムシーケンシャルを行うため
には、この30μ秒の間にn回スイッチングを行わなけ
ればならない。しかし、温度が下がると、粘性の増加が
起こり、応答速度は低減するという傾向を持つので、広
い温度範囲で例えば6回以上のスイッチングを実現する
ためには、5μ秒以下の応答速度を広い温度範囲に亘っ
て実現しなければならないことになる。これは、非常に
困難であることは明らかである。
【0020】そこで、画素毎にアナログ階調表示を行う
方法として、一つの画素内で対向電極間の距離を変化さ
せたり、対向電極間に形成した誘電性層の厚みを変化さ
せることにより局所的に電界強度勾配をつける方法や、
対向電極の材質を変えることにより電圧勾配をつけるこ
とが提案されている。
【0021】しかしながら、実用レベルのアナログ階調
表示特性を有する液晶表示素子を製造することは、工程
的にも繁雑となり、また、製造条件のコントロールも非
常に困難となり、更に製造コストが高いという問題があ
った。
【0022】上述した問題点に対して、一対の基板の対
向面上に電極層が形成されている液晶表示素子におい
て、一つの画素内の液晶に印加される実効電界強度に分
布を持たせて、一つの画素内で液晶の双安定状態の間の
スイッチングのためのしきい値電圧幅を広げることによ
りアナログ階調表示を達成できることが見出され、本出
願人によって特願平5−262951号として既に提示
している(これを以下、先願発明と称する)。
【0023】この先願発明によれば、上記の「しきい値
電圧幅を広げる」ために、強誘電性液晶中に酸化チタン
等の超微粒子を添加、分散させる方法がとられている。
この超微細粒子の添加によって、一つの画素内におい
て、しきい値電圧(Vth)の異なる微細な領域(マイク
ロドメイン)が発現し、印加電圧の大きさに応じてマイ
クロドメインの透過率が変化するため、透過率が急峻に
変化するのではなく、比較的緩やかな変化を示し、アナ
ログ階調表示が可能となるのである。そして、一つのド
メイン内では、液晶分子が双安定であると、メモリ機能
を有し、しきい値電圧の異なるμmオーダのドメインか
ら一画素が形成されることから、連続階調表示が可能と
なる。
【0024】こうした微粒子含有の強誘電性液晶素子を
製造するに際しては、透明電極及び配向膜をこの順に設
けた一対の基板を所定の間隙を置いて対向配置して構成
した液晶セル(空セル)内へ、微粒子含有の強誘電性液
晶を、この液晶が等方相(Iso)を示す温度で注入す
る方法がある。
【0025】この注入方法によれば、図13に示すよう
に、微粒子含有強誘電性液晶をこの液晶が等方相(Is
o)を示す温度で液晶セル内に注入し(矢印V)、目的
状態であるカイラルスメクチックC相に冷却する(矢印
VI)。
【0026】しかしながら、この注入方法のように、微
粒子含有強誘電性液晶を等方相(Iso)を示す温度で
液晶セル内に注入すると、等方相(Iso)を示す温度
では液晶の粘性が低く、多くの場合には、液晶と微粒子
との比重が互いに異なるために、微粒子の沈澱や凝集等
が起こり易く、注入時に微粒子の分散性が悪化すること
がある。
【0027】また、図13に示すように、微粒子含有強
誘電性液晶をこの液晶がカイラルネマチック相を示す温
度で液晶セル内に注入し(矢印VII)、再配向のために等
方相(Iso)を示す温度に昇温した(矢印VIII)後、
目的状態であるカイラルスメクチックC相に冷却する
(矢印IX)方法もある。
【0028】この注入方法では、液晶をカイラルネマチ
ック相で注入する際に液晶分子の流動配向(流動方向に
沿った配向になること)が生じ易く、配向膜による配向
方向と一致しないことがあるから、注入後に再配向のた
めに等方相(Iso)を示す温度に昇温しているが、こ
の昇温によって、電圧−透過率曲線のグレーレベル(階
調表示レベル)において、ツイスト(ねじれ)構造を持
つドメインが発生する場合がある。このために、電圧−
透過率曲線における線形性が損なわれ、かつ、色純度の
低下が生じることがある。しかも、注入後に、等方相を
示す温度へ昇温しているため、上記した理由から、微粒
子の分散性が劣化し易い。
【0029】また、上記した2種の注入方法のいずれに
おいても、等方相に昇温されるために微粒子の分散性が
劣化すると同時に、等方相からカイラルネマチック相を
経てカイラルスメクチック相へと相転移する過程を通る
ために、配向が不十分な部分があるとこれがそのまま欠
陥として残ってドメイン自体のしきい値電圧が不安定と
なり、ばらつきが生じ易くなる。これらの原因によっ
て、電圧−透過率曲線の線形性が損なわれるのである。
【0030】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、一対
の基体間に液晶が配されており、前記液晶をスイッチン
グするためのしきい値電圧の異なる領域が微細に分布し
ている液晶素子において、液晶の注入性及び分散性を向
上させ、全面で均一な線形性の高い電圧−透過率曲線を
得ることのできる液晶素子の製造方法を提供することに
ある。
【0031】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、一対の
基体間に液晶が配されており、この液晶をスイッチング
するためのしきい値電圧の異なる領域が微細に分布して
いる液晶素子を製造するに際し、カイラルネマチック相
を示す温度で前記一対の基体間に前記液晶を注入した
後、カイラルスメクチックC相を示す温度まで冷却し、
更にカイラルネマチック相を示す温度まで昇温する、液
晶素子の製造方法(以下、本発明の製造方法と称す
る。)に係るものである。
【0032】本発明の製造方法によれば、図1に例示す
るように、液晶をこの液晶がN* (カイラルネマチック
相)を示す温度で一対の基体間に注入し(矢印I)、注
入終了後にSmC* (カイラルスメクチックC相)を示
す温度まで冷却し(矢印II)、更にN* (カイラルネマ
チック相)を示す温度まで昇温する(矢印III)ので、液
晶の粘性がある程度保持された状態での液晶の注入によ
って、液晶中の微粒子等の成分の分散性を向上させるこ
とができ、またSmC* への冷却後にN* へ昇温してい
るため、液晶の再配向を効果的に行え、等方相を経ない
こともあって、均一な配向性を全面において実現でき、
階調表示レベルでのツイスト構造の発生を抑制して、線
形性が良く、階調制御が容易な特性を得ることができ
る。
【0033】本発明の製造方法においては、液晶の注入
終了後、カイラルスメクチックC相を示す温度まで冷却
する際の冷却速度は、0.1〜10℃/minとするこ
とが好ましい。そして、カイラルスメクチックC相から
カイラルネマチック相へ昇温する際の昇温速度は、0.
5〜100℃/minとすることが望ましい。更に、温
度が安定してから、再びカイラルスメクチックC相(強
誘電相)まで0.1〜10℃/minの速度で冷却する
ことが好ましい。
【0034】図1は、本発明に使用可能な強誘電性液晶
(カイラルスメクチックC液晶)の相転移系列を温度の
高い順から、Iso(等方相)−N* (カイラルネマチ
ック相)−SmA(スメクチックA相)−SmC* (カ
イラルスメクチックC相)−Cry(結晶相)の順で表
すものである。
【0035】また、図2は、図1の相転移系列を模式的
に表したものであり、T1 は等方相とカイラルネマチッ
ク相との相転移温度、T2 はカイラルネマチック相とス
メクチックA相との相転移温度、T3 はスメクチックA
相とカイラルスメクチックC相との相転移温度、T4
カイラルスメクチックC相と結晶相との相転移温度を示
す。
【0036】ここで、例えば、相転移温度T1 では等方
相とカイラルネマチック相とが混在した状態であり、温
度が高くなると等方相の割合が多くなり、さらに高くな
ると等方相のみの状態になることを示し、温度が低くな
るとカイラルネマチック相の割合が多くなり、さらに低
くなり、T1 の温度範囲でカイラルネマチック相のみの
状態になることを示している。
【0037】即ち、図1及び図2において、t1 はカイ
ラルネマチック相のみを示す温度範囲、t2 はスメクチ
ックA相のみを示す温度範囲であり、t3 はカイラルス
メクチックC相のみを示す温度範囲である。
【0038】本発明の製造方法においては、図1及び図
2に示すように、実質的にカイラルネマチック相のみを
示す温度範囲(t1 )で液晶を注入し(矢印I)、カイ
ラルスメクチックC相を示す温度範囲(t3 )まで冷却
した(矢印II)後に、実質的にカイラルネマチック相の
みを示す温度範囲(t1 )まで昇温する(矢印III)こと
が好ましい。この後は、カイラルスメクチックC相を示
す温度範囲(t3 )まで冷却する(矢印IV)。
【0039】このように、実質的にカイラルネマチック
C相のみを示す温度範囲(t1 )での液晶の注入、同温
度範囲への昇温を行うことによって、液晶の配向が均一
になる。即ち、仮にカイラルネマチック相とスメクチッ
クA相又は等方相とが混在していると、後者の相が欠陥
部分として配向に乱れを生じさせるため、得られる強誘
電相のしきい値が変動し、安定しなくなり易い。
【0040】ここで、本発明に使用可能な強誘電性液晶
はカイラルスメクチックC(SmC* )液晶で代表され
る自発分極を示す一群のスメクチック液晶材料であるの
で、その分子構造によっては、スメクチックA相が存在
しない強誘電性液晶もある。このため、図1及び図2に
おいてスメクチックA相のない場合でも、本発明の製造
方法は適用できる。
【0041】また、本発明における強誘電性液晶は、実
際には、カイラルスメクチックC(SmC* )液晶と非
カイラルスメクチックC(SmC)液晶とを混合したも
のであるが、これらの液晶はそれぞれ一種のみから成る
ものであってもよいし、複数種を混合したものであって
もよい。
【0042】ここで、カイラルスメクチックC(SmC
* )液晶(強誘電性液晶)としては、ピリミジン系の、 CS−1017: Iso 68, N * 64, SmA 55, SmC * -20, Cry CS−1015: Iso 78, N * 68, SmA 57, SmC * -17, Cry CS−1014: Iso 81, N * 69, SmA 54, SmC * -21, Cry CS−3000: Iso 80, N * 71, SmA 60, SmC * -37, Cry 等が挙げられる。但し、これらの強誘電性液晶(いずれ
もチッソ社製)の相転移系列において、数値は液晶の相
転移温度を示す。
【0043】なお、上記したもの以外にも、公知のカイ
ラルスメクチックC(SmC* )液晶を使用できる。例
えば、ビフェニル系、フェニルベンゾエート系等(但
し、これらの強誘電性液晶は温度の変化によりカイラル
ネマチック相、スメクチック相等を示すことがある。)
のカイラルスメクチックC液晶(強誘電性液晶)であ
る。
【0044】また、使用可能な非カイラル液晶として
は、非カイラルネマチック(N)液晶としては、メルク
社製のZLI−2008−000(融点−6℃、ネマチ
ック相の温度範囲−20〜64℃)が挙げられる。この
液晶以外にも、公知の非カイラルスメクチック液晶を使
用できる。例えば、ビフェニル系、ターフェニル系、3
環シクロヘキシル系、シクロヘキシルフェニル系、ビフ
ェニルシクロヘキサン系、シクロヘキシルエタン系、エ
ステル系、ピリミジン系、ピリダジン系、エタン系、ジ
オキサン系等である。
【0045】本発明は、図9及び図10に示したディス
プレイと同様に、透明電極及び配向膜をこの順に設けた
一対の基板が所定の間隙を置いて対向配置され、前記間
隙内に強誘電性液晶が注入されている液晶素子に適用可
能である。
【0046】本発明の製造方法において、上述の「しき
い値電圧の異なる領域が微細に分布していること」と
は、反転ドメイン(例えば白の中に黒のドメイン又はそ
の反対)による透過率が25%であるときに2μmφ以
上の大きさのドメイン(マイクロドメイン)が1mm2
の視野の中に300個以上(好ましくは600個以上)
存在し、かつ、そのドメイン内でのしきい値電圧幅が透
過率10〜90%の範囲で1V以上、好ましくは2V以
上であることを意味する。
【0047】従って、図4に例示するように、本発明で
得られる液晶素子では、印加電圧によって透過率が図1
2のように急峻に変化するのではなく、比較的緩やかな
変化を示すものである。これは、上記したように、特
に、一つの画素内において、しきい値電圧(Vth)の異
なる微細な領域(マイクロドメイン)の発現により、印
加電圧の大きさに応じてマイクロドメインの透過率が変
化するためである。そして、一つのドメイン内では、液
晶分子が双安定であるとメモリ機能を有し、しきい値電
圧の異なるμmオーダのドメインから一画素が形成され
ることから、連続階調表示が可能となる。
【0048】図4では、透過率が変化するしきい値電圧
のうち、透過率10%のときをVth1 、透過率90%の
ときをVth2 とした場合、しきい値電圧の変化幅(△V
th=Vth2 −Vth1)が1V以上である。
【0049】マイクロドメインについては、図5(A)
に示すように、透過率25%のときに、2μmφ以上の
大きさのドメインMDが300個以上/mm2 の割合で
存在するものである。こうしたマイクロドメインによる
微細な光透過部分によって、全体として中間調の画面
(透過率)を実現できるが、このようなマイクロドメイ
ンによる構造は、いわば星空の如き様相を呈するので、
以下に「スターライトテクスチャ」と称することとす
る。
【0050】このスターライトテクスチャによれば、印
加電圧の大小に応じてマイクロドメインによる光透過部
分MDが図5(A)に一点鎖線で示す如くに拡大したり
(透過率上昇)、或いは縮小させる(透過率減少)こと
ができ、印加電圧によって任意に透過率を変化させるこ
とができる。これに反し、図9及び図10の素子では、
図5(B)に示すように、しきい値電圧幅が極めて小さ
いために、印加電圧による光透過部分Dが急激に増加し
たり、或いは消失してしまうだけであり、階調表示が極
めて困難である。
【0051】本発明の液晶素子の製造方法において、上
記のマイクロドメインを形成する手段として、液晶セル
において液晶5中に微粒子(又は、超微粒子)を分散さ
せることができる。
【0052】ここで、超微粒子によるしきい値電圧の変
化を図6について原理的に説明する。超微粒子10の粒
径をd2 、誘電率をε2 、超微粒子10を除く液晶5の
厚みをd1 、誘電率をε1 としたとき、超微粒子にかか
る電界Eeff は、次式(1)で表される。 Eeff =(ε2 /(ε12 +ε21 ))×Vgap ・・・・・(1)
【0053】従って、誘電率の値が液晶よりも小さい超
微粒子を添加すると(ε2 <ε1 )、液晶層の全厚dga
p(=d1+d2)よりも小さな微粒子(d2 )を入れること
により、 Eeff <Egap となり、液晶には、微粒子を入れない場合(Egap)に比
較して小さな電界Eeffが作用する。その反対に、誘電
率の値が液晶より大きな微粒子を添加することにより
(ε2 >ε1 )、 Eeff >Egap となり、液晶には、微粒子を入れない場合(Egap)に比
較して大きな電界Eeffが作用する。
【0054】以上をまとめると、次の通りとなる。 ε1 >ε2 のとき → Eeff <(Vgap/d1 +d2
=Vgap/dgap =Egap ε1 =ε2 のとき → Eeff =Egap ε1 <ε2 のとき → Eeff >Egap
【0055】いずれにしても、超微粒子の添加によっ
て、液晶自体に加わる実効電界Eeffは変化することに
なり、超微粒子が存在する領域とそうでない領域とで液
晶に加わる実効電界が異なることになる。この結果、同
じ電界Egap を作用させても、それら領域間では反転ド
メインが生じる領域と生じない領域が存在し、図5
(A)で示した如きスターライトテクスチャ構造を発現
できるのである。
【0056】このことから、スターライトテクスチャ構
造は連続階調を実現するのに好適なものとなり、超微粒
子の添加下で印加電圧(大きさ、パルス幅等)を制御す
る(即ち、2種類以上の電圧を印加すること)によって
多様な透過率(即ち、2種類以上の階調レベル)を得る
ことができる。これに反し、単に微粒子を存在させるだ
けでは、図5(B)の如きものしか得られず、特に微小
な(2μm程度の)ギャップ中に0.3〜2μmの微粒
子を存在させても目的とする表示性能が得られないこと
が明らかであり、また、微小なギャップでなくても微粒
子部分による色ムラが生じてしまう。本発明において
は、このような現象を生じることなく、目的とする性能
が得られる。
【0057】上述の発明の液晶素子において、液晶に添
加する微粒子としては、図9及び図10に示した対向す
る透明電極層2a、2bの間に存在する液晶5に印加さ
れる実効電界強度に分布を持たせることができるような
微粒子であればよく、例えば誘電率の異なる複数の材質
の微粒子を混合して使用することができる。このように
誘電率の異なる微粒子を存在させることにより、各画素
内に誘電率の分布が形成される。
【0058】この結果、上記したように、画素の透明電
極層2a、2b間に均一に外部電界を印加した場合で
も、その画素内の液晶に印加される実効電界強度には分
布ができ、液晶(特に強誘電性液晶)の双安定状態間を
スイッチングするためのしきい値電圧の分布幅を広げる
ことができ、一画素内でアナログ階調表示が可能とな
る。
【0059】また、使用する微粒子として、誘電率が同
じものを使用する場合には、大きさに分布をもたせれば
よい。このように、誘電率は異ならないが大きさが異な
る微粒子を存在させることにより液晶層の厚みに分布が
できる。その結果、一画素の透明電極層2a、2b間に
均一に外部電界を印加した場合でも、その画素内の液晶
に印加される実効電界強度には分布ができ、一画素内で
アナログ階調表示が可能となる。微粒子の大きさの分布
について、その分布の広がりはある程度大きい方が、優
れたアナログ階調表示ができるので好ましい。
【0060】本発明の液晶素子では、液晶に添加する微
粒子はpH=2.0以上の表面を有することが望ましい
が、これは、pH=2.0未満では酸性が強すぎ、プロ
トンにより液晶が劣化し易いからである。
【0061】また、この微粒子の量は、特に限定はな
く、所望のアナログ階調性等を考慮して適宜に決定する
ことができるが、50重量%以下、0.1重量%以上の
割合で液晶に添加されているのが望ましい。添加量があ
まり多いと、凝集してスターライトテクスチャ構造が発
現し難く、また液晶の注入が困難となり易い。
【0062】使用可能な微粒子はカーボンブラック及び
/又は酸化チタンからなっていてよく、またカーボンブ
ラックがファーネス法により作製されたカーボンブラッ
クであり、酸化チタンがアモルファス酸化チタンである
のがよい。ファーネス法により作製された熱分解カーボ
ンブラックは、微粒子の粒度分布が比較的広く、またア
モルファス酸化チタンは、表面性が良く、耐久性にも優
れている。
【0063】使用可能な微粒子は、凝集していない一次
微粒子の状態で、液晶セルギャップの半分以下の大きさ
(0.4μm以下、特に0.1μm以下)が好ましい。
また、その粒度分布によって階調表示特性をコントロー
ルできるが、粒度分布の標準偏差が9.0nm以上であ
ることが透過率の変化(トランスミタンス)を緩やかに
できる点で望ましい。微粒子の比重が液晶の0.1〜1
0倍であることが、液晶中に分散させた際の沈降防止の
点で望ましく、また、微粒子が良分散性を示すようにシ
ランカップリング剤等で表面処理されているのがよい。
【0064】上述のように、微粒子のサイズは極めて小
さいので、この微粒子を超微粒子と称してもよい。
【0065】本発明において、微粒子は対向する電極間
の液晶中に存在させることが望ましいが、これに加え
て、液晶配向膜中又は液晶配向膜上に存在させてもよ
い。微粒子を対向する電極間に存在させること以外の構
成は、図9及び図10の液晶表示素子(特に強誘電性液
晶表示素子)と同様にすることができる。
【0066】例えば、基板としては透明ガラス板を、電
極層としてはITO(Indium tin oxide)等を、液晶配
向膜としてはラビング処理されたポリイミド膜やSiO
斜方蒸着膜を使用することができる。また、駆動方式も
既述したものと同様であってよい。但し、上記したマイ
クロドメインのスターライトテクスチャでのグレーレベ
ルは、データパルスの電圧を変化させて得るため、常に
1フレーム全体にデータパルスは印加されている状態と
する。
【0067】上記した微粒子は、スターライトテクスチ
ャにおけるマイクロドメインを発現して階調表示を行う
上で重要な役割をなしているが、本発明の製造方法によ
って、強誘電性液晶の注入時に凝集を起こすことなく、
均一に分散可能であるため、微粒子添加の効果を十二分
に得ることができることになる。
【0068】上記の強誘電性液晶の注入は、図3に例示
したような液晶注入装置で行うことができる。
【0069】最初に、ベルジャー24の内部に、一対の
基板1a、1bで構成された空セル20と酸化チタン等
の超微粒子を添加混合した強誘電性液晶組成物5を収容
した液晶溜め21を配置して、空セル20の内部を排気
孔22から真空脱気すると共に液晶溜め21も真空脱気
する。
【0070】次に、空セル20を液晶溜め21に配され
ている液晶5に浸漬して、排気操作を停止し、空セルの
毛細管現象を利用して、その注入口23から液晶5を静
かに注入する。そして、液晶5が空セルの一部に充填さ
れたとき、ベルジャー24の内部に、乾燥した不活性ガ
スを導入して常圧に戻しながら液晶の注入を続行する。
【0071】この場合、液晶5の注入前及び/又は注入
時の雰囲気を熱伝導性の高い気体(例えばヘリウム)と
することが好ましい。熱伝導性の高い気体を雰囲気とし
て使用することによって、図3に例示したような液晶注
入装置を周囲のヒータ25で加熱するとき、装置内の温
度が早く均一になるため、注入時間が短縮されると共
に、空セル20の温度の均一性も良くなるために、均一
な配向をもつ液晶素子を製造することができる。
【0072】そして、上述したように、実質的にカイラ
ルネマチック相のみを示す温度範囲で液晶を注入し、冷
却後、再配向のために実質的にカイラルネマチック相の
みを示す温度範囲まで昇温することが好ましいので、そ
の際の雰囲気として上記の熱伝導性の高い気体を使用す
ることによって、上記温度範囲が狭い場合等でも、迅速
かつ均一に目的温度に設定することができ、効果的であ
る。
【0073】上記の熱伝導性の高い気体としては、ヘリ
ウムを使用することが好ましい。
【0074】
【実施例】以下、本発明を実施例について更に詳細に説
明する。
【0075】本実施例による強誘電性液晶(FLC)デ
ィスプレイにおいて、FLCとして、チッソ社製のCS
−1014を用いた。このCS−1014はピリミジン
系のカイラルスメクチックC液晶の一つである。スター
ライトテクスチャ構造を形成するための超微粒子として
は、平均粒径17nm(0.017μm)のアモルファ
ス酸化チタン(出光興産社製のIT−OA)を1重量%
FLCに添加し、アイソトロピック温度領域である12
0℃に温めて、超音波ホモジナイザで十分に分散した。
その後、徐冷した。
【0076】他方、厚さ3mm、25×60mmサイズ
の一対のガラス基板のそれぞれにITO電極(100Ω
/□)をコートし、ストライプ状にパターニングしてデ
ータ電極とセレクト電極を形成した。この上に、SiO
を抵抗加熱法によって入射角85°で真空蒸着した。こ
の蒸着膜厚は、60nmにコントロールした。この基板
を反平行にし、周辺には紫外線硬化樹脂(フォトレッ
ク:セキスイ化学(株)製)に1.6μmのシリカスペ
ーサ(真し球)を混合したものをスクリーン印刷して、
セルギャップを1.6μmにした。
【0077】上記の超微粒子を含有したFLCのセルへ
の注入を行うには、図3に示したように上記のFLCを
空セルの注入口に接触させ、図1に示したように、液晶
セル(空セル)を75℃まで加熱し、FLCをカイラル
ネマチック相を示す温度(75℃)まで上昇させ、ある
程度の粘性を保ったまま、一対の基板間のギャップ内に
注入した。
【0078】注入終了後、カイラルスメクチックC相を
示す温度(45℃)まで冷却速度3℃/minで冷却
し、更に、再配向のためにカイラルネマチック相を示す
温度まで昇温させ、その後、分子配向のために、カイラ
ルスメクチックC相を示す温度(25℃)まで徐冷し
た。
【0079】但し、上記のカイラルネマチック相を示す
温度とは、カイラルネマチック相のみを示す温度範囲t
1 中の温度である。また、液晶セル(空セル)に超微粒
子を含有したFLCを注入する前と注入した後とに、導
入する雰囲気としてヘリウムを使用した。
【0080】こうして作製されたFLCディスプレイパ
ネルについて、後述する比較例1、2及び3と共に、印
加電圧(V/μm)による透過率(相対値)の変化を図
7及び図8に示した。
【0081】図7において、 実線:カイラルネマチック相を示す温度(75℃)で空
セルに超微粒子含有FLCを注入した後、カイラルスメ
クチック相を示す温度(45℃)まで冷却し、更にカイ
ラルネマチック相を示す温度まで昇温してから、カイラ
ルスメクチックC相へ冷却して作製したFLCパネルの
電圧−透過率曲線(実施例1)。
【0082】破線:Iso(等方相)を示す温度(90
℃)で空セルに超微粒子含有FLCを注入し、カイラル
スメクチックC相を示す温度(25℃)まで冷却した他
は、実施例1と同様の組成成分で作製したFLCパネル
の電圧−透過率曲線(比較例1)。
【0083】一点鎖線:超微粒子を含有しない他は実施
例1と同様に作製したFLCパネルの電圧−透過率曲線
(比較例2)。
【0084】また、図8において、 実線:実施例1のFLCパネルの電圧−透過率曲線。
【0085】破線:カイラルネマチック相を示す温度
(75℃)で空セルに超微粒子含有FLCを注入した
後、等方相を示す温度(90℃)に昇温した他は、実施
例1と同様の組成成分で作製したFLCパネルの電圧−
透過率曲線(比較例3)。
【0086】なお、カイラルネマチック相を示す温度
(75℃)で空セルに超微粒子含有FLCを注入した
後、カイラルスメクチックC相を示す温度(45℃)ま
で冷却し、Iso(等方相)を示す温度(90℃)まで
昇温した他は、実施例1と同様の組成成分でFLCパネ
ルを作製した(比較例4)。
【0087】一点鎖線:比較例2のFLCパネルの電圧
−透過率曲線。
【0088】図7及び図8から分かるように、従来の方
法(比較例1、3)のFLCパネルでは、液晶注入時の
微粒子の分散性が悪く、またIso→N* を経る転移に
よって配向欠陥が生じ易く、電圧−透過率曲線のグレー
レベル(階調表示部分)において、ツイスト(ねじれ)
構造を持つドメインが発生し、電圧−透過率曲線におけ
る線形性が損なわれている。これは、比較例4でも同様
の傾向がある。また、超微粒子を含有しないFLCパネ
ル(比較例2)は、印加電界に対して透過率がしきい値
電圧Vthで0%から100%に急峻に変化するので、階
調表示には不向きである。
【0089】これに対して、実施例1のFLCパネルで
は、微粒子の分散が十分に行われ、また、N* へのアニ
ールによる再配向とIso→N* を経ることなく転移す
るために、配向も良好となるので、線形性の高い電圧−
透過率曲線が得られ、階調表示に好適である。
【0090】また、液晶セル(空セル)に超微粒子を含
有したFLCを注入する前と注入した後とに、その雰囲
気として熱伝導性の高いヘリウムを使用しているので、
雰囲気として窒素や空気を用いる場合に比べて、全体的
に均一な品質のFLCパネルが短時間に得られる。勿
論、窒素や空気を用いることは差し支えない。
【0091】以上、本発明の実施例を説明したが、上述
の実施例は本発明の技術的思想に基づいて更に変形が可
能である。
【0092】例えば、上述の液晶の種類や組み合わせ、
微粒子の材質や物性等、本発明の目的を左右する条件に
ついては、その目的を実現できる範囲で種々に変更して
よい。
【0093】また、上述の透明電極としては、上記のI
TO以外にも、酸化スズ、酸化インジウム等、公知の透
明電極を使用でき、透明基板、スペーサ、シール材等の
液晶素子の構成材料も従来公知の材料を使用できる。
【0094】また、上述の配向膜の材質や配向方法を種
々変化させることもできる。この配向膜とITO電極、
磁場配向と電場配向、配向膜と電場配向等、様々な組み
合わせで配向処理することが可能である。
【0095】さらに、駆動方式についても、単純マトリ
クス方式以外にも、アクティブマトリクス方式等、様々
な駆動方式においても使用することができる。
【0096】また、上述の実施例の素子には偏光板、偏
光子等を設けてもよい。この素子は、上述のディスプレ
イ以外にも、光シャッタ、光スイッチ、光ブラインド等
にも使用でき、さらに、電気光学素子等と組み合わせれ
ば、液晶プリズム、液晶レンズ、光路切替えスイッチ、
光変調器、位相回折格子、A/D変換器、光ロジック回
路等にも使用できる。
【0097】
【発明の作用効果】本発明は、上述した如く、一対の基
体間に液晶が配されており、この液晶をスイッチングす
るためのしきい値電圧の異なる領域が微細に分布してい
る液晶素子を製造するに際し、カイラルネマチック相を
示す温度で前記一対の基体間に前記液晶を注入した後、
カイラルスメクチックC相を示す温度まで冷却し、更に
カイラルネマチック相を示す温度まで昇温しているの
で、液晶の粘性がある程度保持された状態での液晶の注
入によって、液晶中の微粒子等の成分の分散性を向上さ
せることができ、また、カイラルスメクチックC相への
冷却後にカイラルネマチック相へ昇温しているため、液
晶の再配向を効果的に行え、等方相を経ないこともあっ
て、均一な配向性を全面において実現でき、階調表示レ
ベルでのツイスト構造の発生を抑制して、線形性が良
く、階調制御が容易な特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶素子の製造方法を液晶の相転移系
列と共に例示するフロー図である。
【図2】同、液晶の相転移状態を表す概略図である。
【図3】同、液晶の注入装置の概略断面図である。
【図4】同、強誘電性液晶素子のしきい値電圧特性を示
す電圧−透過率特性図である。
【図5】同、液晶素子のスイッチング時の透過率の変化
を説明するための概略図(A)、階調性のない場合の同
様の概略図(B)である。
【図6】同、液晶素子の液晶中での実効電界を説明する
ための概略図である。
【図7】本発明の実施例及び比較例の電圧−透過率特性
図である。
【図8】本発明の実施例及び比較例の電圧−透過率特性
図である。
【図9】従来から使用されている液晶素子をセレクト電
極側からみた概略平面図である。
【図10】図9のX−X線に沿う断面図である。
【図11】強誘電性液晶のモデル図である。
【図12】従来から使用されている液晶素子のしきい値
電圧特性を示す電圧−透過率特性図である。
【図13】従来の液晶素子の製造方法を液晶の相転移系
列と共に示すフロー図である。
【符号の説明】
1a、1b…基板、2a、2b…透明電極層、3a、3
b…SiO斜方蒸着層、5…液晶(FLC)、10…微
粒子、11…FLC素子、24…ベルジャー、22…排
気(脱気)口、21…液晶溜め、25…ヒータ、20…
空セル、23…注入口、Iso…等方相、N* …カイラ
ルネマチック相、SmA…スメクチックA相、SmC*
…カイラルスメクチックC相、Cry…結晶相、MD…
マイクロドメイン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 安田 章夫 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一対の基体間に液晶が配されており、こ
    の液晶をスイッチングするためのしきい値電圧の異なる
    領域が微細に分布している液晶素子を製造するに際し、
    カイラルネマチック相を示す温度で前記一対の基体間に
    前記液晶を注入した後、カイラルスメクチックC相を示
    す温度まで冷却し、更にカイラルネマチック相を示す温
    度まで昇温する、液晶素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 実質的にカイラルネマチック相のみを示
    す温度範囲で液晶を注入し、カイラルスメクチックC相
    を示す温度範囲に冷却した後に、実質的にカイラルネマ
    チック相のみを示す温度範囲まで昇温する、請求項1に
    記載した製造方法。
  3. 【請求項3】 しきい値電圧の異なる微細領域を形成す
    るために、微粒子を液晶に添加する、請求項1に記載し
    た製造方法。
  4. 【請求項4】 微粒子がpH=2以上の表面を有する、
    請求項3に記載した製造方法。
  5. 【請求項5】 微粒子を50重量%以下の割合で液晶に
    添加する、請求項3に記載した製造方法。
  6. 【請求項6】 微粒子がカ−ボンブラック及び/又は酸
    化チタンからなる、請求項3に記載した製造方法。
  7. 【請求項7】 透明電極及び配向膜をこの順に設けた一
    対の基板を所定の間隙を置いて対向配置し、前記間隙内
    に強誘電性液晶を注入して液晶素子を製造するに際し、
    反転ドメインによる透過率が25%以上であるときに、
    2μmφ以上の大きさのドメインが1mm2 の視野の中
    に300個以上存在し、かつ、そのドメイン内でのしき
    い値電圧幅が透過率10〜90%の範囲で1ボルト以上
    であり、これによって階調表示を行えるように前記液晶
    素子を構成する、請求項1に記載した製造方法。
  8. 【請求項8】 液晶の注入前及び/又は注入時の雰囲気
    を熱伝導性の高い気体とする、請求項1に記載した製造
    方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20010090771A (ko) * 2000-04-07 2001-10-19 미다라이 후지오 카이럴스멕틱액정소자
JPWO2006095437A1 (ja) * 2005-03-11 2008-08-14 富士通株式会社 液晶表示装置の駆動方法及び液晶表示装置

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