JPH1088273A - 希土類永久磁石用合金原料、希土類永久磁石用合金粉末及び希土類永久磁石の製造方法 - Google Patents

希土類永久磁石用合金原料、希土類永久磁石用合金粉末及び希土類永久磁石の製造方法

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JPH1088273A
JPH1088273A JP8266796A JP26679696A JPH1088273A JP H1088273 A JPH1088273 A JP H1088273A JP 8266796 A JP8266796 A JP 8266796A JP 26679696 A JP26679696 A JP 26679696A JP H1088273 A JPH1088273 A JP H1088273A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】低コストかつ安全、簡便な方法により、保磁力
に優れた永久磁石原料用合金粉末用原料、これを粉砕し
た合金粉末及びこれを用いた永久磁石を製造する方法を
提供すること。 【解決手段】一般式がRxFe100-x-u-vuCrvで表さ
れ、前記RはYおよびランタニド元素の中から選択され
る1種以上の元素でNd及びPrの一種以上がその50
%以上を占め、x、u、vが各々 3at%≦x≦7at%、 15at%<u≦25at%、 0.5at%≦v≦7at%、 を満たし、主たる構成相が準安定相R2Fe233型化合
物である合金を、真空中、窒素雰囲気中又は不活性ガス
雰囲気中で熱処理して、準安定相R2Fe233型化合物
の不均化反応を発生させる工程を含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】本発明は、希土類永久磁石用
合金原料、希土類永久磁石用合金粉末及び希土類永久磁
石の製造方法に関し、特に高性能ボンド磁石用の材料に
用いられる希土類永久磁石用合金粉末の製造方法に関す
る。
【従来の技術】
【0001】近年、高性能希土類ボンド磁石用合金粉末
に用いられる材料として、R2Fe14Bの化学量論組成
よりも低希土類元素、高ボロン領域の合金磁石粉末の実
用化研究が活発に行われている。この材料は、例えば
J.de Physique,49(1988)C8,
p.669やJ.Magn.Magn.Mat.80
(1989)p.101に示されているように、典型的
組成がNd4Fe8020で表される合金を溶湯急冷法で
非晶質化し、その後の熱処理によりFe3B、Nd2Fe
14Bおよび微量のFeを結晶化させることにより得ら
れ、1.6Tの飽和磁化、1.2Tの残留磁束密度と3
00kA/m(300/80=3.75kOe)程度の
保磁力が開示されている。
【0002】この材料は飽和磁化の高いFeやFe3
等のソフト磁性相を含むため、Nd2Fe14B相のみで
構成される永久磁石材料よりも高い飽和磁化及び残留磁
束密度を有する。一般にハード磁性相の中にソフト磁性
相が存在すると、保磁力や角型性などの永久磁石特性が
著しく劣化することが知られているが、ソフト相の結晶
粒径が数十nm程度まで微細化すると、ハード磁性相の
結晶粒子とソフト磁性相の結晶粒子との結晶界面を通し
て働く粒子間相互作用によってあたかも単一のハード磁
性相で構成された永久磁石のように振る舞う。またこの
粒子間交換相互作用は“レマネンスエンハンスメント”
と呼ばれる効果を誘発し、残留磁束密度の向上に寄与す
る。
【0003】このような微細構造組織を実現するため、
製造にあたっては上の例のように溶湯急冷法により非晶
質化した合金を熱処理することによって目的とする結晶
相を晶出させる方法や、メカニカルアロイング、メカニ
カルグラインディングによって非晶質化した合金を熱処
理することによって目的とする結晶相を晶出させる方法
が用いられる。こうして得られた合金を用いた合金磁石
粉末は、ハード磁性相のみによって構成された合金磁石
粉末よりも高い飽和磁化、残留磁束密度を有するという
特徴に加えて、希土類元素に富んだハード磁性相の結晶
がFeに富むソフト磁性相の微細結晶に取り囲まれてい
るため、耐候性に優れている。さらに高価な希土類元素
の含有量がハード磁性相のみで構成されている磁石合金
に比べて少ないためコストの面でも有利である。従って
この合金磁石粉末は、圧縮成型や射出成型によって作製
される希土類ボンド磁石やホットプレスによって作製さ
れる希土類磁石用の磁石粉末原料として大きな期待がか
けられている。
【0004】しかし上に挙げた数々の特徴にも拘わら
ず、比較的低い保磁力のため、この合金粉末を用いて作
製した永久磁石の用途、使用温度が著しく限定されてし
まい、実用化にあたっての大きな障害になっている。こ
の問題を解決するための試みが幾つかなされている。そ
の1つはハード磁性相であるNd2Fe14Bの異方性エ
ネルギーを高めるためにNdの一部をDy、Tbなどの
重希土類元素に置換する方法であり、もう1つはCr、
Si、Ga、Vなどの添加元素を添加することで結晶化
後の組織を微細均一にする方法である。
【0005】保磁力を改善するための根本的対策として
上記方法以外に、得られた組織に占めるハード磁性相す
なわちNd2Fe14B相の体積比率を増すことが考えら
れる。そのためには合金の希土類元素量を増す必要があ
る。しかしJ.Magn.Magn.Mat.80(1
989)p.101で示されているように、組成(Fe
3B)1-x(Nd2Fe14B)xの非晶質合金を加熱し昇温
する過程で、Nd量が4at%を越える合金では、準安
定体心立方晶Nd2Fe233相が晶出する。このNd2
Fe233相は強磁性であるものの立方晶系に属するた
め磁気異方性が小さく、保磁力の向上には寄与しない。
このNd2Fe233相の晶出がNd2Fe14B相に代わ
って優勢となるため、Nd量が5at%を越えると保磁
力が急激に低下する。
【0006】また、特開平8−41502号公報には、
Nd2Fe233に近い組成領域の非晶質あるいは準安定
結晶相組織、あるいは非晶質と準安定結晶相の両方を含
む組織に水素を吸蔵させ、その後高温中で水素を放出さ
せることによってNd2Fe14B型化合物を含む組織を
生成する方法が提案されている。この公報には、R2
233近傍組成の非晶質を単に加熱した場合と、この
非晶質を水素雰囲気中で熱処理し水素を吸蔵させ、さら
に水素を含まない雰囲気で熱処理し水素を放出させた場
合とを対比して下記の通り記載されている。
【0007】すなわち前者の場合については下記の通り
である。「 なお、R2Fe233相からなる組織を十分
加熱すると主にα−FeとNdFe44相からなり、少
量のR2Fe14B相を含む組織となるが、Nd2Fe14
相の体積率が低いため、保磁力が1kOe以下であるこ
とは本発明者が確認している。」、「一方、先に触れた
ようにR2Fe233近傍組成の非晶質を単に加熱した際
の変化は以下の通りである。Am(非晶質相)→R2Fe
233→α・Fe+RFe44+R2Fe14B…(1)こ
のようにR2Fe14B相を生成するものの生成量は極少
量であり、Rの大部分はRFe44相生成に費やされ
る。したがって、水素吸脱処理と比較してR2Fe14
相の体積比率が低いため保磁力が低下し、RFe44
は非磁性であるため磁化も低下する。」
【0008】後者の場合(水素吸脱処理)については下
記の通りである。「水素吸蔵反応によって例えばR2
233近傍の組成においては、非晶質相(Am)は以
下のように変化する。Am→(Am−H)→(R2Fe
233)→(R2Fe233−H)→R−H+α−Fe+
Fe2B…(2)、ここで括弧内の状態の有無は組成に
依って変化するものと推定される。なお“−H”は水素
固溶状態を示す。」
【0009】さらに脱水素工程に関して、「上記水素吸
蔵状態から水素が放出するのに、水素分圧が十分に低い
雰囲気中で加熱する。」、「この脱水素反応によって、
上記R2Fe233近傍の組成の水素吸蔵状態が以下のよ
うに変化する。R−H+α−Fe+Fe2B→R2Fe14
B+α−Fe+Fe2B…(3)、このように水素吸脱
処理によってR2Fe233相の消失、ハード磁性相R2
Fe14相の生成によって磁石化が可能となる。」
【0010】また、この公報には水素吸蔵工程の処理温
度について、「処理温度は水素吸蔵によってRの水素化
物を生成する範囲内で低温の方が好ましい。処理温度の
上昇は組織の粗大化を招き、脱水素後の組織肥大化につ
ながり磁気特性が低下する。」、「具体的には600〜
750℃程度で30分以内が適当である。」と記載さ
れ、脱水素工程における処理温度について、「処理温度
は脱水素が可能な範囲内で低温の方が好ましい。」、
「処理温度の上昇は水素吸蔵処理と同様に組織の粗大化
を招き、磁気特性が低下する。」、「具体的には600
〜750℃程度で30分以内が適当である。」と記載さ
れている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、R2
14Bの化学量論組成よりも低希土類元素、高ボロン組
成の領域であり、かつ微細なハード磁性相の結晶粒子と
ソフト磁性相の結晶粒子から成る合金磁石粉末材料にお
いて、保磁力を向上させるための努力が種々なされた
が、希土類元素の一部をDyやTbといった重希土類元
素で置換する方法と組織を微細均一化する方法にはその
効果に限界があった。また他に提案された方法は、水素
吸蔵と脱水素の工程を経る必要があって水素ガス爆発の
おそれがある。
【0012】詳細には、重希土類元素によるNdの置換
は飽和磁化の急激な低下を招き、この永久磁石用合金粉
末の特徴を失わせる結果となる。一方、組織を微細均一
化する方法は飽和磁化の低下はないものの、保磁力の向
上に対しての効果には限界がある。また、前記特開平8
−41502号公報に記載の発明は、水素吸蔵工程及び
脱水素工程を必須とするものであり、この公報に提案さ
れた方法では水素ガスを用いるために常に爆発の危険が
つきまとい、さらに高コストであるから、水素ガスを使
用しない製造工程が望まれる。
【0013】上記問題点に鑑み、本発明は低コストかつ
安全、簡便な方法により、保磁力に優れた永久磁石原料
用合金粉末用原料、これを粉砕した合金粉末及びこれを
用いた永久磁石を製造する方法を提供することを課題と
する。
【0014】
【課題を解決するための手段】課題を解決するにあたっ
て本発明者は、3元系R・Fe・Bと、さらにCrおよ
び他の添加元素を含む多元系の非晶質合金の結晶化過程
と生成した組織とを詳細に調査した。その結果に鑑み、
本発明は所定の組成でかつその主たる構成相が準安定体
心立方晶R2Fe233型化合物である合金を、真空中ま
たは窒素中または不活性ガス雰囲気中で熱処理する工程
を経て、R2Fe14B型化合物を含む均一かつ微細な組
織と優れた保磁力を持つ合金磁石粉末用原料、これを用
いた粉末、この粉末を用いた永久磁石を製造する方法を
提供する。
【0015】本発明の第1の視点における手段は、一般
式がRxFe100-x-u-vuCrvで表され、前記RはYお
よびランタニド元素の中から選択される1種以上の元素
でNd及びPrの一種以上がその50%以上を占め、
x、u、vが各々; 3at%≦x≦7at%、 15at%<u≦25at%、 0.5at%≦v≦7at%、 を満たし、主たる構成相が準安定相R2Fe233型化合
物である合金を、真空中、窒素雰囲気中又は不活性ガス
雰囲気中で熱処理して、準安定相R2Fe233型化合物
の不均化反応を発生させる工程を含むことを特徴とする
希土類永久磁石用合金原料の製造方法である。
【0016】本発明の第2の視点における手段は、一般
式がRxFe100-x-z-u-vzuCr vで表され、前記R
はYおよびランタニド元素の中から選択される1種以上
の元素でNd及びPrの一種以上がその50%以上を占
め、MはSi、Ga、V、Pb、Cu、Al、Mn、A
g及びAuから選ばれた1種以上の元素で、x、z、
u、vが各々; 3at%≦x≦7at%、 z≦10at%、 15at%<u≦25at%、 0.5at%≦v≦7at%、 を満たし、主たる構成相が準安定相R2Fe233型化合
物である合金を、真空中、窒素雰囲気中又は不活性ガス
雰囲気中で熱処理して、準安定相R2Fe233型化合物
の不均化反応を発生させる工程を含むことを特徴とする
希土類永久磁石用合金原料の製造方法の製造方法であ
る。
【0017】本発明の第3の視点における手段は、一般
式がRx(Fe100-yCoy100-x-u-vuCrvで表さ
れ、前記RはYおよびランタニド元素の中から選択され
る1種以上の元素でNd及びPrの一種以上がその50
%以上を占め、x、y、u、vが各々; 3at%≦x≦7at%、 y≦50at%、 15at%<u≦25at%、 0.5at%≦v≦7at%、 を満たし、主たる構成相が準安定相R2Fe233型化合
物である合金を、真空中、窒素雰囲気中又は不活性ガス
雰囲気中で熱処理して、準安定相R2Fe233型化合物
の不均化反応を発生させる工程を含むことを特徴とする
希土類永久磁石用合金原料の製造方法である。
【0018】本発明の第4の視点における手段は、一般
式がRx(Fe100-yCoy100-x-z-u-vzuCrv
表され、前記RはYおよびランタニド元素の中から選択
される1種以上の元素でNd及びPrの一種以上がその
50%以上を占め、MはSi、Ga、V、Pb、Cu、
Al、Mn、Ag及びAuから選ばれた1種以上の元素
で、x、y、z、u、vが各々; 3at%≦x≦7at%、 y≦50at%、 z≦10at%、 15at%<u≦25at%、 0.5at%≦v≦7at%、 を満たし、主たる構成相が準安定相R2Fe233型化合
物である合金を、真空中、窒素雰囲気中又は不活性ガス
雰囲気中で熱処理して、準安定相R2Fe233型化合物
の不均化反応を発生させる工程を含むことを特徴とする
希土類永久磁石用合金原料の製造方法である。
【0019】本発明の第5の視点における手段は、R
(Yおよびランタニド元素の中から選択される1種以上
の元素)、Fe、B、Crを含む合金から溶湯急冷法に
よって非晶質合金を作製し、前記非晶質合金を熱処理し
て前記主たる構成相が準安定相R2Fe233型化合物で
ある合金を作製し、前記熱処理温度よりも高温で熱処理
して前記準安定相R2Fe233型化合物を不均化反応さ
せてR2Fe14B、α−Fe及びFe3Bが混在かつ微細
に析出した組織を形成させることを特徴とする希土類永
久磁石用合金原料の製造方法である。
【0020】本発明の第6の視点における手段は、前記
第1〜5の視点における手段の希土類永久磁石用合金原
料を粉砕することを特徴とする希土類永久磁石用合金粉
末の製造方法である。
【0021】本発明の第7の視点における手段は、上記
第6の視点における手段の希土類永久磁石用合金粉末に
バインダを添加してバルク化することを特徴とする希土
類永久磁石の製造方法である。
【0022】
【発明の実施の形態】次に本発明を詳しく説明する。
【0023】[出発原料の金属組織]ハード磁性相結晶
粒子ソフトと磁性相結晶粒子が混在した組織において良
好な永久磁石特性を得るためには、結晶粒子間に作用す
る量子力学的交換結合力を高める必要がある。そのため
には、各々の結晶粒子を数十nm程度に均一微細化しな
ければならない。これを実現するには、均一な準安定状
態を不均化させて目的の組織を得る方法が簡便で工業的
に優れる。ここでいう準安定状態には非晶質も含まれ
る。
【0024】R2Fe14Bの化学量論組成よりも低希土
類元素、高ボロン組成の領域において保磁力に優れた永
久磁石合金(永久磁石用粉末、永久磁石)を製造する場
合、この準安定状態として体心立方晶R2Fe233相、
非晶質相が考えられる。本発明の第1〜4の視点におい
て所定の組成を有する非晶質相は熱処理によって容易に
準安定R2Fe233相に遷移する。従って本発明の第1
〜4の視点における出発原料は、主たる構成相が準安定
2Fe233型化合物である合金とする。この出発原料
として、一部又は全体が非晶質のものから作成された主
たる準安定R2Fe233型化合物である合金が含まれ
る。
【0025】出発原料に、安定な化合物で100nm以
上にまで粗大化した結晶が含まれると、この出発原料を
熱処理しても組織の微細化が期待できないため望ましく
ない。
【0026】好ましくは、一部又は全体が非晶質相の合
金から簡便な方法で、R2Fe233相を主たる構成相と
する合金が得られるが、R2Fe233相を主たる構成相
とする合金は他のいかなる物、方法で作製してもよい。
【0027】好ましくは、溶湯急冷法においてロール回
転速度等により溶湯急冷速度を調節して準安定相である
2Fe233相を直接晶出させ、主たる構成相とする合
金を得ることが可能である。また溶湯急冷法によって合
金を完全に非晶質化した後に、熱処理を加えることによ
ってもR2Fe233相を主たる構成相とする合金を作製
することができる。
【0028】R2Fe233相を主たる構成相とする出発
合金において、その他の構成相は非晶質でも、準安定あ
るいは安定な化合物であっても構わない。しかし安定な
化合物で、しかも粗大化した結晶が出発合金に含まれる
と、本発明の熱処理工程によって組織を微細化すること
が期待できないため望ましくない。
【0029】[合金組成]本発明における、主たる構成
相が準安定R2Fe233型化合物である合金の組成につ
いて、好ましい範囲及びその理由を述べる。なお、この
数値範囲の記載には上下限のみならず任意の中間値も含
むものとする。
【0030】希土類元素(R)含有量を表すxが3〜7
at%で、ハード磁性相とソフト磁性相の存在比率が好
ましい範囲に収まり、実用上、望ましい飽和磁化と残留
磁束密度が得られる。3at%未満であれば熱処理後に
生成するハード磁性相であるR2Fe14B化合物の体積
比率が小さくなり、実用的な保磁力が得られない傾向が
ある。また7at%を越えるとソフト磁性相の体積比率
が減少し飽和磁化および残留磁束密度が低下する傾向が
ある。また希土類元素に占めるNd及びPrの一種以上
の割合が50%以下であればやはり飽和磁化および残留
磁束密度の低下を招く傾向がある。
【0031】B量が15at%未満の場合、準安定Nd
2Fe233の形成と同時に、安定相であるα−Feの粗
大結晶が生成し易くなり、以降のプロセスにおいて、微
細な組織が得られなくなる傾向がある。また25at%
を超えると、得られる合金磁石の磁化が低下する傾向が
あるので望ましくない。従ってB量を15at%以上、
25at%以下とする。好ましくは磁気特性上、B量は
15at%以上、20at%以下である。
【0032】本発明における合金はCrを必須元素とし
て含む。というのも、本発明によって得られる永久磁石
用合金原料はNd2Fe14B相を含む微細組織を有して
いる。このNd2Fe14B相は、準安定Nd2Fe233
相が熱処理の過程で次の不均化反応を起こすことで生成
する。
【0033】 R2Fe233→R2Fe14B+Fe3B+α・Fe…(4)
【0034】しかし、合金がCrを含まない場合、上式
の反応に替わって次式の反応が優勢となる。
【0035】 R2Fe23B→α・Fe+RFe44+R2Fe14B…(5)
【0036】この場合、R2Fe233相に含まれる希土
類元素RはRFe44相とR2Fe14B相に分配される
ため、生成するR2Fe14B相は微量であり、得られた
合金磁石粉末は良好な保磁力を示さない。
【0037】Crは、(4)式と(5)式とを比較し
て、R2Fe23Bの分解(消失)に際して非磁性のRF
44が生成しないように、下記の所定量添加する。
【0038】Cr量が0.5at%未満であると、前者
の不均化反応によるNd2Fe14B相の生成が十分に起
こらない傾向がある。一方、Cr量が7at%を超える
と得られる合金の磁化が著しく低下する傾向がある。従
ってここではCr量を0.5at%以上、7at%以下
にする。磁気特性上さらに好ましくは、5at%以下で
ある。
【0039】本発明の第2の視点は、第1の視点の合金
原料を基礎とした展開例であって、一般式がRxFe
100-x-zuCrvで表される合金にM元素を添加する。
M元素として、Si、Ga、V、Pb、Cu、Al、M
n、Ag、Auの中から1種以上選ばれる元素は、本発
明により得られる合金磁石の組織を微細均一化してレマ
ネンスエンハンスメント効果によって残留磁束密度を向
上させるのに寄与する。特にSi、Ga、V、Pbはこ
の添加効果が顕著である。しかし添加量が10at%を
超えると合金の磁化が低下する傾向があるので、その添
加量は10at%以下にする。
【0040】本発明の第3の視点は、第1の視点の合金
原料を基礎とした展開例であって、一般式がRxFe
100-x-u-vuCrvで表される合金においてFeの一部
をCoで置換したRx(Fe100-yCoy100-x-u-vu
Crvの組成を有する。Feの一部をCoで置換すると
キュリー温度が上昇することで熱安定性が向上し、同時
に残留磁束密度も向上する。また、Coによって磁化曲
線の第2象限(減磁曲線)の角形性が改善され、その結
果BH(max)が向上する。また、着磁特性も向上す
る。しかし置換量が50at%を超えると、かかる効果
が得られ難くなりかえって磁気特性の低下を招来する傾
向がある。従って、Coの範囲を50at%以下にす
る。
【0041】好ましくは、Coが0.01at%以上で
icの温度係数が改善される。また、30at%を超え
ると8kG以上のBrが得がたいので、好ましくは7a
t%以下とする。
【0042】本発明の第4の視点は、第3の視点の展開
であって、一般式がRxFe100-x-u-vuCrvで表され
る合金においてFeの一部をCoで置換し、M元素を添
加する。そして、第2又は第3の視点における理由と同
様の理由によって、Co、M元素の好ましい組成範囲を
以下の通りとする。
【0043】従って、本発明の第4の視点におけるより
好ましい組成範囲は、一般式が Rx(Fe100-yCoy100-x-z-u-vMzBuCrv で表される合金において、 3.5at%≦x≦5.5at%、 y≦50at%、 z≦5at%、 15at%<u≦20at%、 0.5at%≦v≦5at%、 である。
【0044】[熱処理]合金が本発明において規定する
組成を有する場合、熱処理によって準安定R2Fe233
相は次の不均化反応に従って分解する。
【0045】 R2Fe233→R2Fe14B+Fe3B+α・Fe…(6)
【0046】このように結果としてR2Fe14B相を含
む均一微細組織が得られる。
【0047】この不均化反応が起こる温度は組成によっ
て変化するがおよそ900K以上である。熱処理はこれ
以上の温度で行われなければならないが、1100K以
上では結晶の粒成長やさらに別の安定相への不均化が起
こる。したがって熱処理温度は、R2Fe233相の不均
化が確実に進行し、かつ微細組織が保たれるように選択
されなければならず、より好ましくは1000K以下で
ある。
【0048】すなわち、(6)式で示す不均化反応を起
こすための最適な熱処理温度は、組成によって異なる
が、R2Fe233相の不均化が確実に進行し、かつ微細
組織が保たれるように、好ましくは900〜1100K
の温度範囲で選択する。なお、本発明の各視点において
規定する組成の範囲であれば、熱処理温度をそれほど厳
密に設定しなくとも、即ちある幅をもった所定の温度範
囲内であれば(6)式の不均化反応が進行する。
【0049】熱処理時間は、(6)式の不均化反応が起
きる時間を確保すればよく、結晶粒子の過度の成長を防
止するため約30分以下が好ましく、10分程度でも十
分である。
【0050】熱処理に際しては、該温度において被処理
合金と容易に反応しない雰囲気の中で行われなければな
らない。具体的には、真空中、窒素中、あるいは不活性
ガス雰囲気中である。
【0051】なお、本発明において表示する熱処理の温
度は、被熱処理体(例えば、急冷薄体)の温度を示して
いる。また、被熱処理体の温度でもって熱処理温度を表
示することに代えて、例えば炉の設定温度でもって熱処
理温度を表示することも可能である。但し、(6)式の
不均化反応は発熱反応であるため、炉の設定温度と被熱
処理体の温度が数十℃異なる場合がある。しかしなが
ら、明細書及び図面に開示された事項を鑑みれば、この
ように炉の設定温度でもって熱処理温度を表示した本発
明の原理に従う方法も本発明に含まれることは明らかで
ある。
【0052】本発明の一実施形態において、好ましく
は、出発原料である主たる構成相が準安定相R2Fe23
3型化合物である合金は、以下のように作成する。な
お、本発明では主たる構成相が準安定相R2Fe233
化合物である合金の組成を規定するが、この合金の原
料、例えばこの合金が原料溶解工程、溶湯急冷工程及び
熱処理工程を経て作製される場合、これらの工程におい
て実質的に組成は変動しないから、溶解前の原料の組成
と主たる構成相が準安定相R2Fe233型化合物である
合金の組成とは実質的に同一である。
【0053】先ずR、Fe、B、Crを少なくとも含む
組成の合金を溶解し、溶湯急冷法によって急冷し、一部
又は全部が非晶質相である急冷薄帯を作成する。溶湯急
冷法としては、単ロール法、双ロール法などのロール
法、スプラット急冷法、ガスアトマイズ法等の周知の急
冷法を用いることができる。工業的にはロール法が好ま
しい。また、これらの溶湯急冷法において、例えばロー
ル回転速度を変えることにより溶湯急冷速度を変えて、
全体が非晶質相又は一部が非晶質相等の組織を有する合
金を目的に応じ適宜選択して作製することができる。
【0054】なお、上記所定の組成の合金溶湯を単ロー
ル法又は双ロール法において、ロール周速度を5m/s
以上として急冷して成る実質的に非晶質化された薄帯
を、750〜900Kで30分間以下の熱処理して、R
2Fe233相が体積比で50%以上結晶化した、主たる
構成相が準安定相R2Fe233型化合物である合金を得
ることができる。
【0055】この急冷薄帯合金を、R2Fe233型化合
物の不均化反応が起きる熱処理温度において該合金と容
易に反応しない雰囲気ガス、即ち真空中、窒素中又は不
活性ガス雰囲気中で熱処理する。この熱処理温度はR2
Fe233→R2Fe14B+Fe3B+α・Feの反応が
起こる温度であればよく、組成によって変動するが、お
よそ900〜1100Kの範囲が好ましい。例えば、組
成Nd5Fe74Cr318では953K付近で熱処理する
のが好ましい。1100Kを超えると結晶粒子が肥大化
して磁気特性が低下する傾向がある。また、上記R2
233の不均化反応は瞬時に完了するので、最適熱処
理温度に保持する時間は数十秒でもよい。典型的な熱処
理パターンは室温から953Kまで約3分間で昇温し、
953Kで約10分間保持し、その後急冷する。
【0056】このようにR2Fe233の不均化反応が発
生した急冷薄帯を、粉砕スタンプミル、ボールミル等の
慣用の粉砕手段によって、1段又は多段階で粉砕して合
金粉末を得る。この合金粉末の組織も、急冷薄帯の組織
と同様に、ハード磁性相粒子とソフト磁性相粒子とが混
在し、各々の結晶粒子は数1〜数10nmオーダー程度
の微細な結晶粒子である。
【0057】高残留磁束密度、高保磁力及び良好な角形
性を得るために、ハード磁性相粒子及びソフト磁性相粒
子の平均結晶粒径は1〜30nm程度が好ましい。この
平均結晶粒径が30nmを超えると特に角形性が低くな
り、1nm未満の平均結晶粒径を得ることは工業的生産
上困難であるからである。
【0058】なお、急冷薄帯を粉砕後に熱処理して、合
金粉末の状態でR2Fe233の不均化反応を発生させて
もよい。
【0059】この合金粉末に、エポキシ樹脂等のバイン
ダ、カップリング剤、潤滑剤等を適宜添加し、成型し、
成型体を硬化してボンド磁石を得ることができる。成形
方法は、射出成形、押出成形、圧延成形、樹脂含浸法等
の周知の成型方法から適宜選択できる。合金粉末の粒径
については、大きすぎると高精度の成型が困難であり、
小さすぎると比表面積増大に伴い多量のバインダを必要
として磁性粉末の充填密度が低下するため、粉末粒径は
3〜500μmが好ましい。
【0060】なお、急冷薄帯ではなく、急冷薄帯を粉砕
した粉末を真空中、窒素中又は不活性ガス雰囲気中で所
定の温度で熱処理して、上記R2Fe233→R2Fe14
B+Fe3B+α・Feの不均化反応を起こしてもよ
い。
【0061】合金粉末は、ボンド磁石原料としての他、
ホットプレス等の焼結磁石原料とも成り得る。
【0062】出発原料である合金は、工業上不可避の不
純物、例えば、O.P.Sを1%程度許容する。
【0063】また、本発明の作用効果を奏する範囲内
で、本発明の出発原料である合金は、種々の元素、合
金、化合物の添加を許容する。本発明の合金粉末、永久
磁石についても同様である。
【0064】
【実施例】以下図面を参照して本発明の実施例を説明す
る。なお、以下の実施例及び比較例においては、特に断
らない限り、所定の組成を有する合金をオリフィス径
0.8mm、石英製のノズルに入れ高周波加熱によって
溶解し、次いで単ロール250mm径、圧力200To
rr、ノズルとCuロールの間隔は約0.5mm、噴射
圧力約0.8kgf/cm2の条件でCu単ロール法に
より急冷薄体試料を得る。
【0065】[実施例1]組成Nd5Fe74Cr318
表される合金インゴットを高周波溶解によって得た。こ
のインゴットからCu単ロール法によって急冷薄帯試料
を得た。ロール周速度を20m/sとしたところ、得ら
れた薄帯試料の組織は非晶質であった。この試料を87
3Kで熱処理して、X線回折パターンを調べたところ図
1に示すように、その主要部分がR2Fe233相で他に
Fe3B相が混在した組織であった。この薄帯試料をア
ルゴン雰囲気中で953K、10分間熱処理した後、そ
の磁気特性を振動試料型磁力計(VSM)で測定したと
ころ、残留磁束密度9.3kG、保磁力5.1kOeの
磁気特性が得られた。この粉末のX線回折パターンは図
2に示すように、R2Fe14B相、Fe3B相、α・Fe
相が混在したものであった。
【0066】[比較例1A]組成がNd3.5Fe78.5
18で表される合金インゴットを高周波溶解によって得
た。このインゴットからCu単ロール法によって急冷薄
帯試料を得た。ロール周速度を20m/secとしたと
ころ、得られた薄帯試料の組織は非晶質であった。この
薄帯試料を種々の温度で熱処理して粉砕し、その組織を
X線回折で調べたところ、いずれもR2Fe233相の生
成が認められなかった。もっとも磁気特性が良好であっ
たのは923K、10分間アルゴン雰囲気で熱処理を施
した試料で、残留磁束密度12.4kG、保磁力3.0
kOeであった。このように、準安定相R2Fe233
の不均化反応を経ずに作製したものは、低い保磁力しか
得られず、永久磁石用原料として有用な保磁力を得るこ
とができなかった。なお、比較例1Aの急冷薄帯の製造
方法は実施例1のそれと同一である。
【0067】[比較例1B]組成がNd5Fe7718
表される合金インゴットを高周波溶解によって得た。こ
のインゴットからCu単ロール法によって急冷薄帯試料
を得た。ロール周速度を20m/secとしたところ、
得られた薄帯試料の組織は非晶質であった。この試料を
873Kで熱処理して粉砕し、X線回折パターンを調べ
たところ図3に示すように、大部分がR2Fe233相で
他にFe3B相が混在した組織であった。この試料をア
ルゴン雰囲気中、種々の温度で熱処理し磁気特性を測定
したところ、0.5kOeを越える保磁力は得られなか
った。X線回折で1003Kで熱処理した試料の組織を
調べたところ、図4に示すようにその組織が主にα・F
e相とRFe44相で構成されるものに変化していた。
なお、比較例1Bの急冷薄帯の製造方法は実施例1のそ
れと同一である。
【0068】このように比較例1Bでは、R2Fe23
→α・Fe+RFe44+R2Fe14B…(5)の反応
が優勢となり、非磁性相RFe44が生成するため永久
磁石用原料として有用な保磁力を得ることができなかっ
た。
【0069】[実施例2]Cr3at%置換したNdx
Febal.Cr318.5合金を用いて実施例1と同様の方
法で非晶質急冷薄帯を作製した後、各温度で熱処理し、
それらの磁気特性及びX線回折パターンを測定した。図
5にx=5at%の合金を各温度で熱処理した急冷薄帯
を粉砕したもののX線回折パターンを示し、図6に95
3Kで熱処理した急冷薄帯について、上記合金中のNd
量による保磁力の変化を示す。以下に、図5及び図6を
参照して上記合金の結晶化過程を、図5を参照して保磁
力のNd量依存性を夫々説明する。
【0070】図5を参照して、3at%CrがFeの一
部を置換した合金の場合、試料を加熱していくとNd−
Fe−B3元系の場合と同様に、Nd2Fe233、Fe
3Bの順番に結晶化した。さらに加熱すると、Nd2Fe
233からNd2Fe14B、Fe3B、α−Feへの分解
が起きた。なお、Nd量が5.5at%の試料では保磁
力の低下が認められるが、これは上述の分解モードが十
分に起こらないためであって、Cr置換量を5at%と
するとこの分解モードが十分に起こり高保磁力が得られ
ることが確認された。
【0071】[比較例2]Crを含まないNdxFe
bal.18.5合金を用いて実施例2と同様の方法で非晶質
薄帯を作製した後各温度で熱処理し、それらの磁気特性
及び粉砕したもののX線回折パターンを測定した。図7
にx=5at%の合金を各温度で熱処理した急冷薄帯の
X線回折パターンを示し、図8に953Kで熱処理した
急冷薄帯についてNd量による保磁力の変化を示す。以
下に、図7及び図8を参照して上記合金の結晶化過程
を、図8を参照して保磁力Nd量依存性を夫々説明す
る。
【0072】図7を参照して、Crを含まない上記合金
の場合、試料を加熱していくと非晶質相からソフト磁性
相であるNd2Fe233が晶出した。続いて少し高い温
度において、残った非晶質からFe3Bが結晶化し、試
料全体がほぼこの2相で占められた状態となる。さらに
温度をあげるとこれら2相は、Fe(ソフト相)とNd
Fe44(非磁性相)に分解する。以上の結晶化過程を
通じて、ハード相であるNd2Fe14B相は全く現れな
かった。従って、いずれの熱処理温度においても高保磁
力を得ることができなかった。また、図8を参照して、
Nd量を変化させてもCrを含まない合金は4kOe未
満の保磁力しか得られなかった。
【0073】[実施例3及び比較例3]表1に示す組成
の合金から(sample1,3が実施例、sampl
e2,4は比較例)、実施例1と同一方法で急冷薄帯を
作製して、948Kで10分間Ar雰囲気中で熱処理を
施してsample1〜4を得た。そして、実施例1と
同一の方法でsample1〜4の磁気特性を測定し、
実施例1と同一の方法でそれらを粉砕したものの結晶構
造をCu/Kα線を用いた粉末X線回折法によって調べ
た。表1にsample1〜4の磁気特性、図9及び図
10にsample1、sample3のX線回折パタ
ーンを夫々示す。なお、図中“○”はFe3B相、
“▽”はR2Fe14B相、“×”はα−Fe相の主回折
ピークを夫々示す。また、図11にsample1〜4
と同様の方法で作製したNd5.5Febal.Co3Cr5X
のB量(x)に対する保磁力依存性を示す。
【0074】
【表1】
【0075】図9に示すsample1(Nd5Fe
69.5Co5Cr218.5)のX線回折パターンからは、F
3B相と正方晶R2Fe14Bからの強い回折パターン
が、また図10に示すsample3(Nd5.5Fe68
Co3Cr518.5)からは、α−Feと正方晶R2Fe
14Bからの強い回折パターンが認められる。いずれの結
晶相も準安定R2Fe233相の不均化反応の結果生成し
たものであって、sample1及びsample3に
おいては、この不均化反応を利用しないsample2
及びsample4に比べるとR2Fe14B相の回折強
度が著しく強くなっていることが分かった。表1に示す
sample1〜4に示す磁気特性を参照して、実施例
であるsample1、3は比較例であるsample
2、4に比較して残留磁化Br及び保磁力iHcが共に
優れていることが分かった。また、同量のNd、Co、
Crを含むsample1と2及びsample3と4
とを比較すると、実施例である高ボロンのsample
1あるいはsample3の方が高保磁力の材料である
ことが分かった。また、図11を参照して、Nd5.5
bal.Co3Cr5Xの合金においてB添加量が多いほ
ど保磁力が高くなる傾向があることが分かった。
【0076】
【発明の効果】R2Fe14Bの化学量論組成よりも低希
土類元素、高ボロン組成の領域であり、かつ微細なハー
ド磁性相の結晶粒子とソフト磁性相の結晶粒子とから成
る永久磁石用合金原料の製造において、準安定R2Fe
233を主たる構成相とする合金を真空中、窒素中ある
いは不活性ガス雰囲気中で熱処理することでR2Fe23
3を不均化反応させ、合金に占めるハード磁性相R2
14Bの割合が増し保磁力の優れた材料を得ることが可
能になる。これによって、従来狭い範囲に限定されてい
たこの種の合金磁石粉末を用いて作製したボンド磁石等
の用途が、本発明によって拡大するものである。また高
価な希土類元素の添加量が従来のR2Fe14B相を主相
とする永久磁石に比べて削減できコスト面で有利であ
る。また工程中水素ガスを使用しないため安全かつ簡便
な装置で本発明の永久磁石用原料を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に係り、R2Fe233を主た
る構成相とするNd5Fe74Cr318合金薄帯の873
K熱処理後のX線回折パターンを示す図である。
【図2】本発明の実施例1に係り、R2Fe233を主た
る構成相とするNd5Fe74Cr318合金薄帯の953
K熱処理後のX線回折パターンを示す図である。
【図3】比較例1Aに係り、R2Fe233を主たる構成
相とするNd5Fe7718合金薄帯の873K熱処理後
のX線回折パターンを示す図である。
【図4】比較例1Bに係り、R2Fe233を主たる構成
相とするNd5Fe7718合金薄帯の1003K熱処理
後のX線回折パターンを示す図である。
【図5】本発明の実施例2に係り、FeをCr3%置換
した4元系Nd5Fe73.5Cr318.5非晶質薄帯の結晶
化過程を説明するための、該合金の各熱処理温度におけ
るX線回折パターンを示す図である。
【図6】本発明の実施例2に係り、FeをCr3%置換
した4元系Nd−Fe−Cr−B合金急冷薄帯の953
K熱処理後における保磁力のNd量依存性を示す図であ
る。
【図7】比較例2に係り、Nd5Fe76.518.5非晶質
薄帯の結晶化過程を説明するための、該合金の各熱処理
温度におけるX線回折パターンを示す図である。
【図8】比較例2に係り、3元系Nd−Fe−B合金急
冷薄体の953K熱処理後における保磁力のNd量依存
性を示す図である。
【図9】本発明の実施例3に係り、sample1のNd5
69.5Co5Cr218.5合金(急冷後948K熱処理し
た薄帯)のX線回折パターンを示す図である。
【図10】本発明の実施例3に係り、sample2のNd
5.5Fe68Co3Cr518.5合金(急冷後948K熱処
理した薄帯)のX線回折パターンを示す図である。
【図11】本発明の実施例4に係り、B量によるNd
5.5Febal.Co3Cr5x合金(急冷後953K熱処
理)の保磁力の変化を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H01F 1/053 B22F 9/04 E 1/06 H01F 1/04 H // B22F 9/04 1/06 A

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式がRxFe100-x-u-vuCrvで表さ
    れ、前記RはYおよびランタニド元素の中から選択され
    る1種以上の元素でNd及びPrの一種以上がその50
    %以上を占め、x、u、vが各々 3at%≦x≦7at%、 15at%<u≦25at%、 0.5at%≦v≦7at%、 を満たし、主たる構成相が準安定相R2Fe233型化合
    物である合金を、真空中、窒素雰囲気中又は不活性ガス
    雰囲気中で熱処理して、準安定相R2Fe233型化合物
    の不均化反応を発生させる工程を含むことを特徴とする
    希土類永久磁石用合金原料の製造方法。
  2. 【請求項2】一般式がRxFe100-x-z-u-vzuCrv
    で表され、前記RはYおよびランタニド元素の中から選
    択される1種以上の元素でNd及びPrの一種以上がそ
    の50%以上を占め、MはSi、Ga、V、Pb、C
    u、Al、Mn、Ag及びAuから選ばれた1種以上の
    元素で、x、z、u、vが各々 3at%≦x≦7at%、 z≦10at%、 15at%<u≦25at%、 0.5at%≦v≦7at%、 を満たし、主たる構成相が準安定相R2Fe233型化合
    物である合金を、真空中、窒素雰囲気中又は不活性ガス
    雰囲気中で熱処理して、準安定相R2Fe233型化合物
    の不均化反応を発生させる工程を含むことを特徴とする
    希土類永久磁石用合金原料の製造方法。
  3. 【請求項3】一般式がRx(Fe100-yCoy100-x-u-v
    uCrvで表され、前記RはYおよびランタニド元素の
    中から選択される1種以上の元素でNd及びPrの一種
    以上がその50%以上を占め、x、y、u、vが各々 3at%≦x≦7at%、 y≦50at%、 15at%<u≦25at%、 0.5at%≦v≦7at%、 を満たし、主たる構成相が準安定相R2Fe233型化合
    物である合金を、真空中、窒素雰囲気中又は不活性ガス
    雰囲気中で熱処理して、準安定相R2Fe233型化合物
    の不均化反応を発生させる工程を含むことを特徴とする
    希土類永久磁石用合金原料の製造方法。
  4. 【請求項4】一般式がRx(Fe100-yCoy
    100-x-z-u-vzuCrvで表され、前記RはYおよびラ
    ンタニド元素の中から選択される1種以上の元素でNd
    及びPrの一種以上がその50%以上を占め、MはS
    i、Ga、V、Pb、Cu、Al、Mn、Ag及びAu
    から選ばれた1種以上の元素で、x、y、z、u、vが
    各々 3at%≦x≦7at%、 y≦50at%、 z≦10at%、 15at%<u≦25at%、 0.5at%≦v≦7at%、 を満たし、主たる構成相が準安定相R2Fe233型化合
    物である合金を、真空中、窒素雰囲気中又は不活性ガス
    雰囲気中で熱処理して、準安定相R2Fe233型化合物
    の不均化反応を発生させる工程を含むことを特徴とする
    希土類永久磁石用合金原料の製造方法。
  5. 【請求項5】前記主たる構成相が準安定相R2Fe233
    型化合物である合金の前記熱処理を、900〜1100
    Kの温度範囲で行うことを特徴とする請求項1〜4のい
    ずれか一に記載の希土類永久磁石用合金原料の製造方
    法。
  6. 【請求項6】前記主たる構成相が準安定相R2Fe233
    型化合物である合金が、溶湯急冷法によって作製された
    急冷合金を原料として成ることを特徴とする請求項1〜
    4のいずれか一に記載の希土類永久磁石用合金原料の製
    造方法。
  7. 【請求項7】前記主たる構成相が準安定相R2Fe233
    型化合物である合金が、溶湯急冷法とそれに続く熱処理
    によって作製されて成ることを特徴とする請求項1〜4
    のいずれか一に記載の希土類永久磁石用合金原料の製造
    方法。
  8. 【請求項8】前記溶湯急冷法に続く熱処理を750K〜
    900Kの温度範囲で行うことを特徴とする請求項7に
    記載の希土類永久磁石用合金原料の製造方法。
  9. 【請求項9】前記主たる構成相が準安定相R2Fe233
    型化合物である合金が、 単ロール又は双ロールを用いたロール法による溶湯急冷
    法で、ロール周速度が5m/s以上の条件で非晶質合金
    を作製し、 前記非晶質合金を750〜900K以上で熱処理し、前
    記準安定相R2Fe233型化合物を体積比で約50%以
    上結晶化させて成るものであることを特徴とする請求項
    7記載の希土類永久磁石用合金原料の製造方法。
  10. 【請求項10】R(Yおよびランタニド元素の中から選
    択される1種以上の元素)、Fe、B、Crを含む合金
    から溶湯急冷法によって非晶質合金を作製し、前記非晶
    質合金を熱処理して前記主たる構成相が準安定相R2
    233型化合物である合金を作製し、前記熱処理温度
    よりも高温で熱処理して前記準安定相R2Fe233型化
    合物を不均化反応させてR2Fe14B、α−Fe及びF
    3Bが混在かつ微細に析出した組織を形成させること
    を特徴とする希土類永久磁石用合金原料の製造方法。
  11. 【請求項11】請求項1〜10のいずれか一に記載の希
    土類永久磁石用合金原料を粉砕することを特徴とする希
    土類永久磁石用合金粉末の製造方法。
  12. 【請求項12】請求項11に記載の希土類永久磁石用合
    金粉末にバインダを添加してバルク化することを特徴と
    する希土類永久磁石の製造方法。
JP26679696A 1996-09-17 1996-09-17 希土類永久磁石用合金原料、希土類永久磁石用合金粉末及び希土類永久磁石の製造方法 Expired - Lifetime JP3516820B2 (ja)

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US6471786B1 (en) * 1999-09-16 2002-10-29 Sumitomo Special Metals Co., Ltd. Method for preparing nanocomposite magnet powder and method for producing nanocomposite magnet
JP5201144B2 (ja) * 2007-09-04 2013-06-05 日立金属株式会社 R−Fe−B系異方性焼結磁石

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