JPH1071428A - パイプの曲げ加工方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 回転引き曲げ方式でパイプを曲げ加工する方
法において、被加工パイプが長く薄肉の場合でも、曲げ
外周側の減肉率を低減できるようにすること。 【解決手段】 被加工用パイプＰの一端部側をベンドロ
ール１に保持させ、被加工用パイプＰの曲げ部の曲げ外
周側をダイ３の溝３１に係合させ、被加工用パイプＰの
他端部側の曲げ内周側と曲げ外周側のそれぞれを内側ク
ランプ４と外側クランプ５とに把持させた後、前記外側
クランプ５で前記被加工用パイプＰの曲げ部の曲げ外周
側に圧縮荷重をかけると共に、前記内側クランプ４で前
記被加工用パイプＰの曲げ部の曲げ内周側に引っ張り荷
重をかけた状態で前記ベンドロール１を回転させ、前記
被加工用パイプＰの曲げ部を前記ダイ３の溝３１から抜
き出して前記ベンドロール１に沿わせることでベンドロ
ール１の円弧に応じた曲げ半径に曲げ加工する方法とし
た。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、自動車の排気管等
の製造に適用されるパイプの曲げ加工方法の技術分野に
属する。

【０００２】

【従来の技術】自動車の排気管等の製造に適用されるパ
イプの曲げ加工方法のひとつとして回転引き曲げ方式と
呼ばれる方法がある。この方法は、回転可能に支持した
ベンドロールの溝内に被加工用パイプの一端側を係合さ
せてクランパにより保持し、その被加工用パイプの他端
側をダイの溝内に係合させた後、ベンドロールを所定方
向に回転させ、前記被加工用パイプの曲げ部を前記ダイ
の溝から抜き出して前記ベンドロールに沿わせることで
ベンドロールの円弧に応じた曲げ半径に曲げ加工する方
法である。

【０００３】しかしながら、上記のような回転引き曲げ
方式の曲げ加工方法にあっては、パイプの曲げ部が、軸
方向の応力により、応力の影響を受けない中立軸を境
に、曲げ内周側が増肉し、曲げ外周側が減肉する。これ
は、図４に示すように、パイプの曲げ加工時、中立軸Ｘ
−Ｘよりも曲げ内周側には圧縮荷重Ｆ１が作用し、中立
軸Ｘ−Ｘよりも曲げ外周側には引っ張り荷重Ｆ２が作用
するためで、引っ張り荷重Ｆ２が作用する範囲は、パイ
プの円周のほぼ２／３を占める。また、パイプの減肉化
ならびに増肉化は、パイプの曲げ角度と比例することも
解っている。

【０００４】ところで、要求成形特性を満足させるため
には、曲げ外周側の減肉化を低減させる必要がある。そ
して、そのためには、中立軸を曲げ外周側に移動させる
必要がある。

【０００５】そこで、本発明者は、例えば、特開昭６３
−２９５０２４号公報に記載されているように、パイプ
の軸心延長上にブーストシリンダを配置すると共に、そ
のブーストシリンダのピストンロッドの先端にパイプ押
具を連結し、このパイプ押具の先端ならびにパイプの一
端を斜めにカットすることで、パイプ押具でパイプの端
面の曲げ外周側を押圧できるようにし、このパイプ押具
でパイプの曲げ部の曲げ外周側に圧縮荷重をかけた状態
でパイプを曲げ加工することを試みた。すなわち、パイ
プの曲げ部の曲げ外周側に圧縮荷重をかけることで、曲
げ加工時に曲げ部の曲げ外周側に実質的に作用する引っ
張り荷重を緩和し、減肉化を低減しようとした。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、パイプ
の端面を押圧すると、パイプには、その一端からベンド
ロールに保持されている部分までの間の全長に圧縮荷重
が作用するため、図５に示すように、パイプ押具ａで押
圧されるパイプＰの一端から、ベンドロールｂに保持さ
れているパイプＰの曲げ部までの距離が長くパイプＰの
肉厚が比較的薄い場合には、パイプ押具ａによる圧縮荷
重Ｆ３によって、図５のイ部に示すような変形等の不具
合が生じる。そして、そのことにより、曲げ部の曲げ外
周側に必要とするだけの圧縮荷重をかけることができな
くなって、パイプＰの減肉を低減させることが困難とな
る。

【０００７】本発明が解決しようとする課題は、回転引
き曲げ方式でパイプを曲げ加工する方法において、被加
工用パイプが長く薄肉である場合でも適用することがで
き、曲げ外周側の減肉化の低減を達成できるようにする
ことにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

（解決手段１）上記課題の解決手段１（請求項１）は、
被加工用パイプの一端部側をベンドロールに保持させ、
被加工用パイプの曲げ部の曲げ外周側をダイの溝に係合
させ、被加工用パイプの他端部側の曲げ内周側と曲げ外
周側のそれぞれを内側クランプと外側クランプとに把持
させた後、前記外側クランプで前記被加工用パイプの曲
げ部の曲げ外周側に圧縮荷重をかけた状態で前記ベンド
ロールを回転させ、前記被加工用パイプの曲げ部を前記
ダイの溝から抜き出して前記ベンドロールに沿わせるこ
とでベンドロールの円弧に応じた曲げ半径に曲げ加工す
るようにしたことを特徴とする。

【０００９】（解決手段２）上記課題の解決手段２（請
求項２）は、請求項１記載のパイプの曲げ加工方法にお
いて、前記被加工用パイプを曲げ加工する時に、前記内
側クランプで前記被加工用パイプの曲げ部の曲げ内周側
に引っ張り荷重をかけるようにしたことを特徴とする。

【００１０】

【発明の実施の形態】

（実施の形態１）実施の形態１は、解決手段１ならびに
解決手段２に対応するパイプの曲げ加工方法である。

【００１１】図２は実施の形態１のパイプの曲げ加工方
法に使用する曲げ加工装置を示す側面図、図３は図２の
III−III 断面図で、まず、図２ならびに図３に基づい
て、この曲げ加工装置Ａの構成について説明する。

【００１２】図中１はベンドロールで、このベンドロー
ル１は、外形が円周面で形成された円弧部１１と、外形
が直角面で形成されたコーナー部１２を有しており、前
記円弧部１１の中心１１ｓを軸にして回転可能に支持さ
れている。また、この円弧部１１の円周面とコーナー部
１２の一面には、被加工用パイプＰの外径とほぼ一致す
る半円状の溝１３が連続的に形成されている。

【００１３】図中２は前記ベンドロール１のコーナー部
１２の溝１３に対向して設けられたクランプで、ベンド
ロール１の溝１３と対向する面には、被加工用パイプＰ
の外径とほぼ一致する半円状の溝２１を有していて、被
加工用パイプＰの一端部側をベンドロール１のコーナー
部１２の溝１３内に保持できるようになっている。

【００１４】図中３は被加工用パイプＰの曲げ加工する
部分、すなわち曲げ部をガイドするダイで、前記曲げ部
の曲げ外周側に配置されている。また、このダイ３に
も、被加工用パイプＰの外径とほぼ一致する半円状の溝
３１が形成されている。

【００１５】図中４，５は被加工用パイプＰの他端部を
把持する内側クランプと外側クランプで、それぞれ被加
工用パイプＰの曲げ内周側と曲げ外周側に設けられてお
り、互いに対向する面のそれぞれには、被加工用パイプ
Ｐの外径とほぼ一致する半円状の溝４１，５１が形成さ
れている。また、これら内側クランプ４ならびに外側ク
ランプ５は、クランプシリンダ６，７によってクランプ
位置からアンクランプ位置へ、あるいはアンクランプ位
置からクランプ位置へと移動可能になっており、更に、
圧縮加圧シリンダ８，９によって被加工用パイプＰの軸
方向に移動可能になっている。

【００１６】図１は実施の形態１のパイプの曲げ加工方
法を示す図であり、以下、図１に基づいて、パイプの曲
げ加工方法について説明する。

【００１７】まず、（ｉ）に示すように、被加工用パイ
プＰの一端部側をクランプ２によってベンドロール１に
保持させ、被加工用パイプＰの曲げ部の曲げ外周側をダ
イ３の溝３１に係合させ、被加工用パイプＰの他端部側
を内側クランプ４と外側クランプ５に把持させる。な
お、この時、ベンドロール１と内側クランプ４ならびに
外側クランプ５との間の距離は、曲げ加工に必要な被加
工用パイプＰの実質長さよりも長くする必要があるが、
必要以上に長くしない方が好ましい。すなわち、ベンド
ロール１と内側クランプ４ならびに外側クランプ５との
間の距離は、被加工用パイプＰの長さによって調節する
のではなく、曲げ角度や曲げ半径に応じて調節するのが
好ましい。

【００１８】次に、（ii）に示すように、前記ベンドロ
ール１を回転させ、前記被加工用パイプＰの曲げ部を前
記ダイ３の溝３１から抜き出して前記ベンドロール１の
溝１３に沿わせることでベンドロール１の円弧に応じた
曲げ半径に曲げ加工する。この時、ダイ３の溝３１から
の抜き出し速度よりも早い速度で外側クランプ５を矢印
方向に移動させることにより前記被加工用パイプＰの曲
げ部の曲げ外周側に圧縮荷重をかけ、かつ、ダイ３の溝
３１からの抜き出し速度よりも遅い速度で内側クランプ
４を矢印方向に移動させることにより被加工用パイプＰ
の曲げ部の曲げ内周側に引っ張り荷重をかける。これに
より、被加工用パイプＰは、曲げ加工時に曲げ部の曲げ
外周側に実質的に作用する引っ張り荷重が緩和されると
共に、曲げ部の曲げ内周側に実質的に作用する圧縮荷重
が緩和されるので、曲げ部の曲げ外周側の減肉化が低減
すると共に、曲げ部の曲げ内周側の増肉化が低減する。

【００１９】このように、本実施の形態１のパイプの曲
げ加工方法では、曲げ部の曲げ外周側の減肉化を低減さ
せることができるので要求成形特性を満足させることが
できる。

【００２０】また、被加工用パイプＰの曲げ外周側を把
持している外側クランプ５によって被加工用パイプＰの
曲げ部の曲げ外周側に圧縮荷重をかける方法としたた
め、外側クランプの位置によって、圧縮荷重を作用させ
る被加工用パイプＰの長さ方向の範囲を調節し、圧縮荷
重を作用させた時に変形等の不具合が生じないようにす
ることができる。つまり、長くて薄肉の被加工用パイプ
Ｐを曲げ加工する場合にも適用することができ、その場
合でも、十分に減肉化を低減できる。

【００２１】更に、曲げ部の曲げ内周側の増肉化を低減
することもできるので、曲げ部の曲げ内周側に皺や座屈
が発生したりせず、外観が向上する。

【００２２】（その他の実施の形態）実施の形態１で
は、被加工用パイプＰの外側にのみダイ３を設けて曲げ
加工するようにしたが、被加工用パイプＰの曲げ部の内
側に芯金を挿入した状態で被加工用パイプＰを曲げ加工
するようにしてもよい。また、図１では、被加工用パイ
プＰを９０度の角度で曲げ加工する例を示したが、被加
工用パイプＰの曲げ角度は９０度に限らず任意に設定す
ることができる。

【００２３】

【発明の効果】請求項１記載の発明にあっては、回転引
き曲げ方式でパイプを曲げ加工する方法において、被加
工用パイプの一端部側をベンドロールに保持させ、被加
工用パイプの曲げ部の曲げ外周側をダイの溝に係合さ
せ、被加工用パイプの他端部側を被加工用パイプの曲げ
内周側と曲げ外周側のそれぞれに設けた内側クランプと
外側クランプとで把持した後、前記外側クランプで前記
被加工用パイプの曲げ部の曲げ外周側に圧縮荷重をかけ
た状態で前記ベンドロールを回転させ、前記被加工用パ
イプの曲げ部を前記ダイの溝から抜き出して前記ベンド
ロールに沿わせることでベンドロールの円弧に応じた曲
げ半径に曲げ加工する方法としたため、曲げ加工時に被
加工用パイプの曲げ部の曲げ外周側に実質的に作用する
引っ張り荷重を緩和し、曲げ部の曲げ外周側の減肉化を
低減することができる。また、外側クランプで被加工用
パイプの曲げ部の曲げ外周側に圧縮荷重をかけるように
したので、外側クランプの位置によって、圧縮荷重を作
用させる被加工用パイプの長さ方向の範囲を調節し、圧
縮荷重を作用させた時に変形等の不具合が生じないよう
にすることができる。つまり、長くて薄肉の被加工用パ
イプを曲げ加工する場合にも適用することができ、その
場合でも、十分に減肉化を低減する効果を得ることがで
きる。

【００２４】請求項２記載の発明にあっては、請求項１
記載のパイプの曲げ加工方法において、被加工用パイプ
の曲げ部を曲げ加工する時に、内側クランプで被加工用
パイプの曲げ部の曲げ内周側に引っ張り荷重をかける方
法としたので、曲げ加工時に被加工用パイプの曲げ部の
曲げ内周側に実質的に作用する圧縮荷重を緩和し、曲げ
部の曲げ内周側の増肉化を低減することができる。従っ
て、上記効果に加え、曲げ部の曲げ内周側に皺や座屈が
発生しなくなり、美観が向上するという効果が得られ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施の形態１のパイプの曲げ加工方法を示す工
程図である。

【図２】実施の形態１のパイプの曲げ加工方法で使用す
る曲げ加工装置を示す側面図である。

【図３】図２の III−III 断面図である。

【図４】パイプの曲げ加工時の応力特性を示す図であ
る。

【図５】従来のパイプの曲げ加工方法における問題点を
示す図である。

【符号の説明】

Ｐ 被加工用パイプ １ ベンドロール ２ クランプ ３ ダイ ３１ 溝 ４ 内側クランプ ５ 外側クランプ

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 被加工用パイプの一端部側をベンドロー
   ルに保持させ、被加工用パイプの曲げ部の曲げ外周側を
   ダイの溝に係合させ、被加工用パイプの他端部側の曲げ
   内周側と曲げ外周側のそれぞれを内側クランプと外側ク
   ランプとに把持させた後、 前記外側クランプで前記被加工用パイプの曲げ部の曲げ
   外周側に圧縮荷重をかけた状態で前記ベンドロールを回
   転させ、前記被加工用パイプの曲げ部を前記ダイの溝か
   ら抜き出して前記ベンドロールに沿わせることでベンド
   ロールの円弧に応じた曲げ半径に曲げ加工するようにし
   たことを特徴とするパイプの曲げ加工方法。
2. 【請求項２】 前記被加工用パイプを曲げ加工する時
   に、前記内側クランプで前記被加工用パイプの曲げ部の
   曲げ内周側に引っ張り荷重をかけるようにしたことを特
   徴とする請求項１記載のパイプの曲げ加工方法。