JPH1057483A

JPH1057483A - 注射器及びその製造方法

Info

Publication number: JPH1057483A
Application number: JP8241054A
Authority: JP
Inventors: Kazuya Araki; 和也荒木
Original assignee: Material Engineering Technology Laboratory Inc
Current assignee: Material Engineering Technology Laboratory Inc
Priority date: 1996-08-23
Filing date: 1996-08-23
Publication date: 1998-03-03

Abstract

(57)【要約】【目的】オートクレーブ滅菌で完全な滅菌処理しなく
ても、外筒内に無菌処理した注射剤を確実に液密充填す
ることのできる注射器及びその製造方法を提供。【構成】予め外筒内に注射剤が無菌的に充填された注
射器において、上記外筒の少なくとも一部が樹脂製で、
該樹脂製部分の外筒に上記注射剤の充填通路を形成し、
該充填通路は、上記注射剤の充填後に熱溶着により該通
路が閉止されていることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、注射剤（薬液）が予め
充填された注射器（プレフィールドシリンジ）等に関す
るものであり、より詳細には、注射剤を無菌保証の高い
状態で充填した注射器及びその製造方法に関するもので
ある。

【０００２】

【従来の技術】最近、注射器内に予め投与薬液が無菌的
に充填されたもの（プレフィールドシリンジ）が提供さ
れている。かかる注射器は医療現場での院内感染の防止
及び投与ミス等を解消する点で期待されている。注射器
は一般に外筒とプランジャーとからなり、注射液はガス
ケットと栓体との間に無菌充填されたもの、或いは充填
後に外筒と共にオートクレーブ滅菌処理されたものがあ
る。また、栓体は外筒の射出口に取り付けられた構造の
もの、或いは外筒内に摺動可能な中栓体が設けられ、外
筒の内壁面と中栓体の外壁面との間にバイパス手段が設
けられた構造のもの等が提案されている。また、中栓体
を設けた構造の注射器にあっては、薬液とその混合薬
（固体又は液体）とを充填した２成分及びそれ以上の多
成分用注射器が提案されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
注射器においては以下の問題点がある。第一に、注射剤
の滅菌保証が困難な点である。注射器に無菌充填する場
合、栓体或いはガスケットの少なくとも一方を外筒に装
着し、他方の外筒充填口から注射剤を外筒内に除菌フィ
ルタを通して充填し、かかる充填口を栓体或いはガスケ
ットで液密に閉じている。かかる操作は常に無菌室、特
に、清浄度の高いクリーンルームで行われる。しかし、
かかる無菌充填であっても、その操作時に注射剤は外界
との接触期間が多く、無菌保証が確実になされない。特
に、二成分用の注射器で、一方の薬に凍結乾燥品を充填
する場合には無菌充填は必須とされるが、かかる凍結乾
燥品の充填後の更なる注射剤の無菌充填作業は困難を伴
う。第二に、外筒内に注射剤を液密充填した後、オート
クレーブ滅菌処理した場合、滅菌保証は十分になされる
が、充填薬が限られる。特に加熱処理に弱い薬剤の充填
は艱難である。また、最近、外筒は、ガラス製から樹脂
製に代わりつつある。これは、樹脂製外筒が軽量で、破
損が少なく、その廃棄焼却処理が容易であるからであ
る。しかし、樹脂製外筒では、オートクレーブ滅菌時の
加熱で変形するものがあり、用いることができない場合
がある。従って、本発明は、オートクレーブ滅菌で完全
な滅菌処理しなくても、外筒内に無菌処理した注射剤を
確実に液密充填することのできる注射器及びその製造方
法を提供することを目的としている。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、予め外筒内に
注射剤が無菌的に充填された注射器において、上記外筒
の少なくとも一部が樹脂製で、該樹脂製部分の外筒に上
記注射剤の充填通路を形成し、該充填通路は、上記注射
剤の充填後に熱溶着により該通路が閉止されていること
を特徴とする注射器を提供することにより、上記目的を
達成したものである。また、本発明は、上記注射器の製
造方法において、上記外筒に上記注射剤を液密充填する
ためのガスケット及び栓体を取付けて組み立てた後に外
筒内を滅菌処理し、次に上記充填通路に供給ノズルを接
続し、供給ノズルより上記注射剤を外筒内に無菌的に充
填して、該充填後に上記充填通路を熱溶着手段により閉
止することを特徴とする注射器の製造方法を提供するこ
とにより、上記目的を達成したものである。

【０００５】外筒は全部又は少なくとも一部が樹脂部材
からなる。例えば、外筒の全てが樹脂の射出成形によっ
て形成されていても良く、また、筒部がガラス製で、射
出口部が樹脂製であって良い。但し、本発明では樹脂製
部分に注射剤の充填用通路が形成されている。上記樹脂
部材は透明性を有した樹脂成形物からなり、樹脂成形物
は熱可塑性樹脂である。また樹脂成形物は単一構造でも
良く、また複数素材の積層構造でも良い。熱可塑性樹脂
としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、４−メチル
ペンテンー１、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ
塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢
酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合
体、ポリアクリロニトリル、環状ジェン系重合体、アク
リル系樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネ
ート、ポリアセタール、フッ素系樹脂等がある。特に、
薬剤を収容するため、塩素や金属等の溶出物のないオレ
フィン系樹脂が望ましく、中でも安全性及び透明性を備
えた、ポリエチレン、ポリプロピレン、４−メチルペン
テン−１、環状ジェン系重合体を最内層とする樹脂成形
物が望ましい。

【０００６】樹脂部材に形成される充填通路は、外筒内
と外筒外とを連通させている限り、その径の大きさ或い
は形状に制限はないが、熱溶断された時に通路が外部の
エア或いは治具などに接触することなく、該通路が液密
に閉止されるものである。またプランジャーなどが外筒
内に押し込まれた場合でも、その溶融閉止部が破壊され
ないことである。従って、充填通路は樹脂部材の外側に
溶断可能な範囲での一定の長さを有していなければなら
ない。かかる充填通路の長さは、通路の径及び形状にも
よるが、治具の接触を考えれば、少なくとも２．０ｍｍ
以上の長さが求められる。投与注射液は除菌フィルタな
どを通して無菌的に外筒内に充填され、注射剤は麻酔
剤、抗ガン剤、その他の頻用薬剤の他に、凍結乾燥品等
を溶解する溶解液であっても良い。注射剤が区分される
場合は、液−液、液−固体の充填薬液であっても良い。
プランジャーはロッドとガスケットとからなり、ガスケ
ット及び栓体は注射剤を液密に収納するためにゴム、エ
ラストマー等の弾性材からなる。

【０００７】本発明に係る注射器の製造方法において、
先ず、外筒、プランジャー及び栓体等を成形後に洗浄・
乾燥する。そして、外筒の所定位置にプランジャーのガ
スケット及び栓体を挿入或いは取り付ける。かかる組立
注射器を滅菌処理して、無菌充填室に供給する。組立注
射器の滅菌処理には、オートクーレブ滅菌などの加熱滅
菌処理、滅菌用ガス、滅菌用液体などに晒す化学滅菌処
理、或いは照射線滅菌処理等を挙げることができる。ま
た、滅菌用ガスとしてはエチレンオキサイド、過酸化水
素等が挙げられ、液体等にはアルコール、ホルマリン等
が挙げられる。また、照射滅菌処理としては、γ線、電
子線、紫外線等が挙げられる。かかる場合に予め充填通
路には除菌フィルタ等を設けて滅菌処理し、外筒の充填
用内部を無菌的に維持しておくことが望ましい。このよ
うな構成にすれば、無菌充填室に搬送する間に外筒内部
が外気で汚染されるおそれがない。

【０００８】滅菌処理後、組立注射器を無菌充填室に搬
送し、かかる充填室の供給ノズルを上記充填通路に無菌
的に接続する。そして、供給ノズルから注射剤をガスケ
ットと栓体との間の外筒内部に充填通路を介して充填す
る。充填通路に除菌フィルタがある場合には、供給ノズ
ルでかかる除菌フィルタを破壊して接続することがで
き、また除菌フィルタを間において供給ノズルを接続し
て薬液を充填する。次に、供給ノズルを取り付けたまま
でも良いが、充填通路の中間部を加熱切断治具等で熱溶
断し、充填通路を閉止する。熱溶断の際に充填通路内に
外気が触れず、また治具等も触れないように行う。これ
により本発明に係る注射器を製造することができる。こ
のように構成された注射器においては、外筒内が完全に
滅菌処理された後、出来る限り無菌的に注射剤が充填さ
れ、しかも、注射剤は一切外界との接触がないので無菌
的保証が更に確実なものとなる。また、その注射器を使
用する際には、ガスケットが押圧されても、充填通路は
確実に熱溶着により閉止されているため、その摺動時に
液漏れ等も全く生じない。

【０００９】本発明に係る請求項３記載の注射器の製造
方法は、注射剤の充填時の滅菌保証を更に高めことを目
的としている。即ち、請求項３記載の注射器の製造方法
は上記充填通路の開口に除菌フィルタを設け、上記供給
ノズルは該除菌フィルタを介して接続することを特徴と
する。このようなフィルタを設けることにより、注射剤
を充填するための外筒内は無菌充填室に入るまで確実に
無菌維持される。本発明に係る請求項４記載の注射器の
製造方法は、注射剤の充填時の外筒内のエア抜けを良く
することを目的としている。即ち、請求項４記載の製造
方法において、上記外筒に上記充填通路の他に、充填時
に該外筒内のガスを排出する排出通路を更に設け、該排
出通路は充填通路と同様に上記注射剤の充填後に該排出
通路を熱溶着手段により閉止することを特徴とする。本
発明に係る請求項５記載の注射器の製造方法は、組立外
筒内の具体的な滅菌処理をすることを目的としており、
請求項５記載の注射器の製造方法において、上記外筒内
の滅菌処理は、照射線滅菌処理、加熱滅菌処理或いは化
学滅菌処理であることを特徴とする。

【００１０】

【実施例】以下、本発明に係る注射器の好ましい実施例
を添付図面を参照しながら詳述する。図１は本発明に係
る注射器の第一実施例における側断面図である。図２
（Ａ）乃至（Ｃ）は第一実施例の注射器における各部材
の断面図である。図３乃至図６は第一実施例の注射器の
製造工程を示す断面図である。図１乃至図６に示す第一
実施例の注射器１は、予め外筒２内に注射剤３が無菌的
に充填された注射器である。注射器１において、外筒２
の少なくとも一部２Ｂが樹脂製で、樹脂製部分２Ｂの外
筒２に注射剤３の充填用通路１４を形成し、充填通路１
４は、注射剤３の充填後に熱溶着により通路１４が閉止
されている。

【００１１】第一実施例の注射器１を更に詳しく説明す
ると、注射器１は、外筒２、充填注射剤３、プランジャ
ー４、及び栓体５からなる。外筒２は先端筒部材２Ａと
基端筒部材２Ｂとからなり、両部材２Ａ、２Ｂはポリプ
ロピレンを素材とした射出成形物である。先端筒部材２
Ａには射出口１１が形成され、射出口１１には弾性材か
らなる栓体５が着脱可能に取付けられ、栓体５は射出口
１１を液密に閉止している。先端筒部材２Ａには接合口
１２が形成され、接合口１２には拡径された内壁面が形
成されている。基端筒部材２Ｂには指架け部１３が形成
され、指架け部１３は外筒２の基端部開口に配される。
基端筒部材２Ｂには充填通路１４及びガス排出通路１５
が形成され、両通路１４、１５はその中間部で溶断され
て閉止部１６、１６が形成されている。基端筒部材２Ｂ
には接合口１７が形成され、接合口１７には薄肉形成さ
れた外壁面が形成され、かかる外壁面と上述の接合口１
２の内壁面とは液密に熱溶着されている。外筒２にはプ
ランジャー４が挿入され、プランジャー４は弾性体から
なるガスケット４Ａと樹脂成形物からなるロッド４Ｂと
からなる。ガスケット４Ａは外筒２の各部材２Ａ、２Ｂ
の内壁面に液密に摺動され、非使用時は基端筒部材２Ａ
内に配されている。ロッド４Ｂは先端に螺合部が形成さ
れ、かかる螺合部を介してガスケット４Ａに着脱自在に
取り付けられる。ガスケット４Ａと射出口１１の栓体と
の間の外筒２内には充填通路１４からの注射剤３が無菌
的に充填されている。注射剤３は、治療薬の他に、ビタ
ミン、糖質等の栄養剤等も含まれる。

【００１２】次に、図２乃至図６に従って本発明に係る
注射器の製造方法を説明する。図２（Ａ）乃至（Ｃ）に
示す如く、注射器１の製造方法において、外筒２に注射
剤３を液密充填するためのガスケット４Ａ及び栓体５を
取付けて組み立てた後に外筒２内を滅菌処理し、次に充
填通路１４に供給ノズル１９を接続し、供給ノズル１９
より注射剤３を外筒２内に無菌的に充填して、充填後に
充填通路１４を熱溶着手段２０により閉止する。更に詳
しく説明すると、先端筒部材２Ａ及び基端筒部材２Ｂを
ポリプロピレンの射出成形により製造する。また、シリ
コンゴムからガスケット４Ａ及び栓体５を成形し、プラ
ンジャーロッド４Ｂをポリプロピレンの射出成形により
製造する。これらの各部材を洗浄、乾燥し、ガス滅菌に
より表面を無菌にする。次に、先端筒部材２Ａと基端筒
部材２Ｂを接合口１２、１７で接合し、超音波溶着によ
り接合口１２の内壁面と接合口１７の外壁面とを液密に
固着する。射出口１１に栓体５を被せ、基端筒部材２Ｂ
内にガスケット４Ａを挿入する。そして、充填通路１４
及びガス排出通路１５の先端開口に菌不透過のエアフィ
ルタ１８、１８を取付け、エアフィルタ１８で各開口を
覆い、エアのみを外筒２内に流通可能にする。図３に示
す如く、組み立てた外筒２をγ線滅菌室に搬送し、外筒
２にγ線照射を行い、その外筒２の表面及び内部を滅菌
処理する。滅菌処理後、外筒２を無菌充填室に搬送し、
外筒２の充填通路１４にエアフィルタ１８を破封しなが
ら加熱した供給ノズル１９を接続する。供給ノズル１９
から先ず図示しない除菌フィルタを通過した窒素ガスを
外筒２内に充填し、次に、図４に示す如く除菌フィルタ
を通過した注射剤３を外筒２内に充填する。この場合、
外筒２内の窒素ガスを充填時に排出通路１６から徐々に
排出する。図５に示す如く、外筒２への充填が完了した
とき、供給ノズル１９を接続したまま、充填通路１４及
び排出通路１５の中間部に溶断治具２０、２０をそれぞ
れ接近させる。溶断治具２０である程度充填通路１４及
び排出通路１５のそれぞれの中間部を加熱した後、中間
部に治具２０を押し付けて溶断による閉止部１６、１６
を形成し、図６に示す如く各通路１４、１５を液密に閉
じる。かかる処理後、プランジャーロッド４Ａを取付
け、注射器１の全体をガスバリアー性の包装体で包装
し、製品とする。

【００１３】このように製造される注射器１にあって
は、外筒２を組立て、ガスケット４Ａ及び栓体５を完全
に組み合わせた後、外筒２内を滅菌処理しており、ま
た、処理後の外筒２内に注射剤３を充填通路１４を介し
て無菌的に充填することができる。かかる充填の際に
は、注射剤３は全く外界に触れることなく、外筒２内に
無菌充填されるため、その滅菌保証が高まる。また、充
填通路１４などに除菌フィルタ或いはエアフィルタ１８
が取付られると、外筒２内は滅菌処理後も簡単に無菌状
態が維持され、充填時まで無菌保証がなされる。また、
第一実施例の注射器１の製造方法では、供給ノズル１９
を充填通路１４に接続する瞬間のみが外界の影響を受け
る可能性があるが、この場合も供給ノズル１９の先端部
を化学処理や加熱処理すれば全く問題が生じない。尚、
上記実施例では、外筒２の基端筒部材２Ａを樹脂製とし
たが、必要によりガラス製に替えても良い。ガラス製で
あれば、廃棄に問題がある点を除けば、注射剤３に悪影
響をあまり与えない点で好ましい。

【００１４】次に、図７乃至図１１に従って本発明に係
る注射器の第二実施例及びその製造方法を説明する。図
７は本発明に係る注射器の第二実施例の側断面図であ
る。図８乃至図１０は第二実施例の注射器の製造工程を
示す断面図である。第二実施例の注射器２１は、予め外
筒２２内に注射剤２３が無菌的に充填された注射器であ
る。注射器２１において、外筒２２の少なくとも一部２
２Ａが樹脂製で、樹脂製部分２２Ａに注射剤２３の充填
用通路２４が形成され、充填通路２４は、注射剤２３の
充填後に熱溶着により通路２４が閉止されている点は、
図１の第一実施例の注射器１と同様である。異なる点は
以下の部分に見られる。

【００１５】外筒２２の先端筒部材２２Ａは凍結乾燥用
容器として形成され、また充填用通路２４及び排出通路
２５が先端筒部材２２Ａに形成されている。図８（Ａ）
に示す如く、充填通路２４及び排出通路２５はその溶断
前に長さが１０ｍｍに形成されている。先端筒部材２２
Ａには射出口２７が形成され、射出口２７には液密用栓
体２８が着脱可能に取付られている。先端筒部材２２Ａ
には溝条部２９が形成され、溝条部２９、２９に後述の
中栓体が位置すると、液が中栓体４１の外側の溝条部２
９から流通できるようになっている。即ち、溝条部２９
は液流通のためのバイパス手段として形成されている。
また、先端筒部材２２Ａには接続口３０が形成され、接
合口３０は後述の基端部材２２Ｂの接合口と液密に固着
接合される。先端筒部材２２Ａ内には上述の中栓体３１
が内壁面と液密性を維持して摺動可能に挿入され、先端
筒部材２２Ａ内には凍結乾燥剤３２が充填されている。
凍結乾燥剤３２は注射剤２３に溶解可能となっている。
外筒２２の基端筒部材２２Ｂの基端には指架け部３３が
形成され、先端には上述の先端筒部材２２Ａの接合口３
０と接合する接合口３４が形成されている。基端筒部材
２２Ｂ内には摺動可能にガスケット３５が配され、ガス
ケット３５と中栓体３１との間に注射剤２３が無菌的に
充填されている。ガスケット３５にはプランジャーロッ
ド３６が取り付けられ、また、注射器２１の全体はガス
バリアーフィルムからなる包装材３７で包装されてい
る。

【００１６】次に、第二実施例に係る注射器２１の製造
方法について詳述する。先ず、外筒２の各部材、プラン
ジャーの各部材、及び栓体を所定の樹脂及び弾性材で成
形し、これらを洗浄、乾燥する。洗浄乾燥後、各部材を
ガス滅菌処理等をして無菌充填室に搬入する。図８
（Ａ）に示す如く、先端筒部材２２Ａの射出口２７に栓
体２８を取付け、先端筒部材２２Ａ内に凍結乾燥用の薬
液３２Ａを充填する。薬液３２Ａは前段で図示しない除
菌フィルタを通過して充填される。図８（Ｂ）に示し如
く、先端筒部材２２Ｂの接合口３０から中栓体３１を液
密且つ摺動可能に挿入し、充填通路２４及び排出通路２
５を塞がないように中栓体３１を配する。即ち、半打栓
状態にして中栓体３１を配する。そして、かかる状態で
凍結乾燥器に入れて薬液３２Ａの凍結乾燥を行う。図８
（Ｃ）に示す如く、薬液３２Ａの凍結乾燥が完了する
と、中栓体３１を先端筒部材２２Ｂ内に更に押し込み、
中栓体３１によって凍結乾燥剤３２の充填室と充填通路
２４及び排出通路２５との間を連通不可とする。また、
かかる状態で充填通路２４に除菌フィルタ３８を接続
し、排出通路２５に除菌エアフィルタ３９を取り付け
る。

【００１７】図９に示す如く、先端筒部材２２Ａの接合
口３０と基端筒部材２２Ｂの接合口３４と液密に熱溶着
して外筒２２を形成する。そして、基端筒部材２２Ｂの
所定位置にガスケット３５を液密且つ摺動可能に挿入す
る。次に、先端筒部材２２Ａの凍結乾燥剤３２を保護す
るため、先端筒部材２２Ｂの一部を遮蔽材で遮蔽して、
中栓体３１とガスケット３５の間の外筒２２内、充填通
路２４内、排出通路２５内及び各フィルタ３８、３９内
をγ線滅菌処理する。図１０に示す如く、充填通路２４
に供給ノズル４０を接続し、供給ノズル４０から溶解液
である注射剤２３を外筒２２内に所定量充填する。そし
て、充填後、供給ノズル４０を取り付けたまま、充填通
路２４及び排出通路２５のそれぞれの中間部を溶断治具
により溶断し、各通路２４、２５の閉止部２６を形成す
る。そして、溶断された通路破片から除菌フィルタ３
８、及びエアフィルタ３９を分離して再利用に供する。
一方、外筒２２内のガスケット３５にはプランジャーロ
ッド３６を取付け、注射器２１を完全に組み立てた後、
これをガスバリアー性フィルム３７で包装を行い、製品
とする。

【００１８】このよに構成された注射器２１は、外筒２
２の先端筒部材２２Ａを凍結乾燥剤３２の凍結乾燥容器
として利用しているため、経済面、及びその製造過程度
での省力化を容易に達成することができる。、また、外
筒２２を組立て、注射剤２３が充填される外筒２２内部
を滅菌処理してから、最終製造過程に至るまで外界との
接触をなしとしたので、充填注射剤２３の無菌保証がほ
ぼ完全になされる。尚、注射器２１の使用操作に際して
は、先ず、栓体２８を射出口２６から外して、注射針を
射出口２６に取り付ける。射出口２６を上にして注射器
２１を持ち、プランジャーロッド４１をゆっくり押し込
む。これにより、ガスケット３５が外筒２２内を摺動
し、中栓体３１が摺動する。中栓体３１がバイパス手段
である溝条部２９に位置したとき、中栓体３１は停止す
るが、ガスケット３５はそのまま摺動する。かかる摺動
により中栓体３１とガスケット３５との間が縮まり、先
ず、中栓体３１とガスケット３５との間に溜まったエア
が溝条部２９を介して射出口２７に流通し、次に、溶解
液である注射剤２３が射出口２７側に流れる。これによ
り、凍結乾燥剤３２が注射剤２３に溶解する。溶解後、
注射器２１内のエアを抜いた後、これを患者に適用す
る。従って、先端筒部材２２Ｂのバイパス手段は、本発
明では溝条部２９の構造に限らず、内壁面を拡径したも
のでも良く、中栓体３１の外周面を変形する突条部或い
は変形径であっても良い。また、中栓体３１は本実施例
のように１個に限らず、複数個設けて多成分用の注射器
としても良く、また、液−液成分用の注射器であっても
良い。また、上記各実施例では外筒２、２２内の滅菌処
理をγ線滅菌処理としたが、本発明では、エチレンオキ
サイドガスによる化学滅菌処理や、アルコール、ホルマ
リン等の液による化学滅菌処理でも良く、また、耐熱性
を有する部材を使用していれば加熱乾燥滅菌や加熱蒸気
滅菌処理でも良く、更に、上述のようにγ線滅菌処理に
限らず、電子線や紫外線による滅菌処理でも良い。

【００１９】

【発明の効果】以上説明したように本発明に係る予め外
筒内に注射剤が無菌的に充填された注射器において、上
記外筒の少なくとも一部が樹脂製で、該樹脂製部分の外
筒に上記注射剤の充填通路を形成し、該充填通路は、上
記注射剤の充填後に熱溶着により該通路が閉止されてい
るので、オートクレーブ滅菌で完全な滅菌処理しなくて
も、外筒内に無菌処理した注射剤を確実に液密充填する
ことのできる

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る注射器の第一実施例における側断
面図である。

【図２】（Ａ）乃至（Ｃ）は第一実施例の注射器におけ
る各部材の断面図である。

【図３】第一実施例の注射器の製造工程を示す断面図で
ある。

【図４】第一実施例の注射器の製造工程を示す断面図で
ある。

【図５】第一実施例の注射器の製造工程を示す断面図で
ある。

【図６】第一実施例の注射器の製造工程を示す断面図で
ある。

【図７】本発明に係る注射器の第二実施例の側断面図で
ある。

【図８】第二実施例の注射器の製造工程を示す断面図で
ある。

【図９】第二実施例の注射器の製造工程を示す断面図で
ある。

【図１０】第二実施例の注射器の製造工程を示す断面図
である。

【符号の説明】

１注射器２外筒２Ａ先端筒部材２Ｂ基端筒部材３注射剤４プランジャー４Ａガスケット４Ｂロッド５栓体１１射出口１４充填通路１６閉止部

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】予め外筒内に注射剤が無菌的に充填され
た注射器において、上記外筒の少なくとも一部が樹脂製
で、該樹脂製部分の外筒に上記注射剤の充填通路を形成
し、該充填通路は、上記注射剤の充填後に熱溶着により
該通路が閉止されていることを特徴とする注射器。
【請求項２】上記請求項１記載の注射器の製造方法に
おいて、上記外筒に上記注射剤を液密充填するためのガ
スケット及び栓体を取付けて組み立てた後に外筒内を滅
菌処理し、次に上記充填通路口に供給ノズルを接続し、
供給ノズルより上記注射剤を外筒内に無菌的に充填し
て、該充填後に上記充填通路を熱溶着手段により閉止す
ることを特徴とする注射器の製造方法。
【請求項３】上記充填通路の開口に除菌フィルタを設
け、上記供給ノズルは該除菌フィルタを介して接続する
ことを特徴とする請求項２記載の注射器の製造方法。
【請求項４】上記外筒に上記充填通路の他に、充填時
に該外筒内のガスを排出する排出通路を更に設け、該排
出通路は充填通路と同様に上記注射剤の充填後に該排出
通路を熱溶着手段により閉止することを特徴とする請求
項２又は３記載の注射器の製造方法。
【請求項５】上記外筒内の滅菌処理は、照射線滅菌処
理、加熱滅菌処理或いは化学滅菌処理であることを特徴
とする請求項２乃至４の何れかに記載の注射器の製造方
法。