JPH1046253A - 磁束密度が高い方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

磁束密度が高い方向性電磁鋼板の製造方法

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JPH1046253A
JPH1046253A JP8207093A JP20709396A JPH1046253A JP H1046253 A JPH1046253 A JP H1046253A JP 8207093 A JP8207093 A JP 8207093A JP 20709396 A JP20709396 A JP 20709396A JP H1046253 A JPH1046253 A JP H1046253A
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final
hot rolling
flux density
magnetic flux
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JP8207093A
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Ryutaro Kawamata
又 竜太郎 川
Takeshi Kubota
猛 久保田
Yoshiyuki Ushigami
神 義 行 牛
Kenichi Murakami
上 健 一 村
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁束密度が高い方向性電磁鋼板の製造法を提
供すること。 【解決手段】 鋼中に重量%で、 0.025% ≦ C ≦0.075% 2.5% ≦ Si ≦4.5 % S ≦0.015% 0.010% ≦ sol.Al ≦0.050% 0.0010%≦ N ≦0.0120% 0.050% ≦ Mn ≦0.45 % を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラ
ブ加熱を行う方向性電磁鋼板製造方法において、仕上熱
間圧延時に、最終パスもしくは最終2パスを歪み速度1
50s-1以上でかつ、最終2スタンド間の張力が1.5
kgf /mm2 以上で仕上げ熱延を実施することを特徴とす
る方向性電磁鋼板の製造法。さらに上記熱延で粗圧延後
のシートバーを接合し、連続して仕上熱延に供すること
を特徴とする製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電気機器の鉄心材料と
して用いられる、磁束密度が高い方向性電磁鋼板の製造
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】方向性電磁鋼板は、二次再結晶により鋼
板の結晶粒を特定方位に高度に結晶粒を配向させた成品
であることが特徴であり、圧延面に{100}面、圧延
方向に<100>軸を有するゴス方位を持つ結晶粒によ
り構成されている。また、方向性電磁鋼板の用途は、軟
磁性材料として主にトランスその他の電気機器の鉄心材
料に使用される。近年、省エネルギー、省資源への社会
的要求がますます厳しくなっている事から、一方向性電
磁鋼板の鉄損低減、磁化特性改善への要求も厳しくなっ
てきている。このため、磁気特性、特に良好な励磁特性
と鉄損特性が求められている。
【0003】方向性電磁鋼板の励磁特性を示す指標とし
ては、通常磁束密度B8(磁場の強さ800A/mにお
ける単位面積当たりの磁束の密度)が用いられている。
また鉄損特性を示す指標としては、W17/50 (50Hz
で1.7Tまで磁化させたときの単位重量当りの鉄損)
が用いられている。鉄損は、渦電流損とヒステリシス損
からなり、渦電流損は鋼板の電気抵抗率、板厚、結晶粒
度、磁区の形態、鋼板表面の皮膜張力等の因子により支
配されている。一方、ヒステリシス損は、磁束密度を支
配する鋼板の結晶方位、純度、内部歪等により支配され
る。
【0004】これらの因子を制御することによる鉄損低
減の試みとして、鋼板の電気抵抗を大きくするためにS
i含有量を高めることが行われてきたが、Si含有量を
高めると二次再結晶が不安定になるとともに、製造工程
及び製品での加工性が劣化するため限界にきているのが
現状である。
【0005】一方、鋼板の純度、内部歪については製造
工程において検討が重ねられてきており、これらの低減
による鉄損の低減については限界近くにまで到達してい
る。板厚を薄くして渦電流損を低減させる試みもなされ
てきているが、製造の立場からは薄手化に伴い二次再結
晶の制御が困難になり、需要家サイドでは変圧器製造時
のコストが増加するため、鉄損値が同等であれば厚手の
材料が好まれて使用されている。
【0006】鉄損低減の手段としては二次再結晶粒径を
小さくすることも有効であり、本出願人は特開昭57−
9419号公報を提案した。しかしながら二次再結晶粒
径を小さくすると、その方位集積度が低下して高磁束密
度を得にくいという課題があった。皮膜張力の効果と方
向性電磁鋼板の磁束密度の間には、J.Appl.Phys.,vol.4
1,no.7,p2981-2984(1970) に指摘されているように、磁
束密度B8の値が高いほどその鉄損低減効果が大きいこ
とが知られている。また磁区細分化による鉄損低減法は
特開昭58−5968号公報、特開昭58−26405
号公報に述べられているが、磁区細分化処理前のプレー
ン材の磁束密度が高いほどその効果が大きいことが知ら
れている。
【0007】このように鉄損を低減させる試みとして
は、その影響因子である電気抵抗率、板厚、結晶粒度、
純度、内部歪等の改善が従来技術において限界に近づい
てきていることから、二次再結晶方位の集積度を向上さ
せ、磁束密度を高めることにより、皮膜張力の効果、磁
区細分化の効果を一層向上させことで鉄損を低減するこ
とが重要となってきている。
【0008】二次再結晶を安定して発現させるとともに
その方位集積度を高め、磁束密度を向上させる因子とし
て、インヒビターの役割が重要である。この目的のた
め、従来技術ではMnS、AlN、MnSe等がインヒ
ビターとして用いられてきている。
【0009】従来の方向性電磁鋼板の製造法は、二次再
結晶方位制御に用いられるインヒビターの種類により大
きく3種類に大別される。まず第一は、M.F.Littmannに
より特公昭30−3651号公報に開示されている。こ
の方法はインヒビターにMnSを用い、二回冷延法で製
造することが特徴である。第二に、特公昭40−156
44号公報に田口、坂倉らにより開示された、MnSに
加えてAlNをインヒビターとする製造方法である。こ
のインヒビターにAlNを用いる方法により、方向性電
磁鋼板の磁束密度は1.870T以上に向上し、磁気特
性の改善による省エネルギーに多大な貢献を果たした。
第三に、特公昭51−13469号公報に今中等により
開示されたMnSとSbもしくはMnS、MnSeとS
bを用い、二回冷延法により製造する方法である。
【0010】これらの従来技術においては、良好な磁束
密度を得るためにはインヒビターの析出制御を目的とし
て、高温スラブ加熱により一旦インヒビターを構成する
析出物を溶体化し、これを熱延工程あるいは特公昭46
−23820号公報に開示されているように熱延板焼鈍
時に微細に析出させることが必要である。この高温スラ
ブ加熱時に、ノロが発生し、その処理が課題となってい
る。さらに製鋼段階での成分調整と熱延の段階でほぼ成
品の特性が決定されてしまい、後工程での磁気特性の調
整が困難であり、製造工程のフレキシビリティの点で課
題を残していた。
【0011】本発明者等は、従来の高温スラブ加熱法に
よる方向性電磁鋼板製造プロセスの課題を解決する手段
として、特公平6−86631号公報他に、1200℃
以下の低温スラブ加熱と脱炭焼鈍後二次差結晶開始まで
の間に窒化によりインヒビターを形成させる工程を旨と
する方法を開示している。この方法により、従来製鋼段
階での成分調整と熱延の段階でほぼその性質が決定し、
後行程での調整が困難であったインヒビターを後工程で
作ることが可能となり、高温スラブ加熱の課題が解決で
きただけでなく、磁気特性の向上により方向性電磁鋼板
の製造法において一つの確実な進歩をもたらした。
【0012】しかしながら、昨今の省エネルギーに対す
る市場の要請にはさらに厳しいものがあり、エネルギー
消費量を節約し環境改善に役立てるために鉄心として使
用される電磁鋼板に対しては磁束密度の向上、鉄損の低
減の要求が増してきている。
【0013】回転機等に使用される電磁鋼板と異なり、
トランス等の用途で使用される方向性電磁鋼板において
は、常に通電した状態で使用されるため、稼働率からみ
た損失低減の重要性は非常に重大である。このため、そ
の磁気特性改善による省エネルギー効果は非常に大きい
ものがあり、需要家はコストアップを出来るだけ押さえ
ながらも鉄心の高効率化のためにより磁束密度の高い成
品の供給が求められていた。
【0014】本発明者等は、この様な方向性電磁鋼板に
対する需要家の厳しい要請に応えるために、従来技術に
よる改良では行き詰まり状態にある低鉄損到達技術の限
界を打破すべく、仕上げ熱延技術に注目して鋭意検討を
重ねた。
【0015】方向性電磁鋼板の仕上熱延においては、自
動車の外板等のプレス成型や缶等の深絞り成形を行う薄
鋼板に比べて、高い成品板厚の精度が要求される。なぜ
なら、方向性電磁鋼板は鉄心として積層して使用に供さ
れるため、成品板厚のわずかな偏差が鉄心としての寸法
精度に大きな影響を及ぼすからである。このため成品の
板厚精度には厳しい管理が要求され、この目的のために
冷延のみならず熱延板においても厳しい板厚および形状
管理を行っている。そのため、仕上げ熱延最終パス付近
では形状調整のために圧下率を下げて軽圧下とし、その
歪み速度も小さいのが通常であり、磁気特性向上の観点
から仕上げ熱延の条件を検討する試みは従来ほとんどな
されなかった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
昨今の市場の要請に応え、従来技術における方向性電磁
鋼板製造上の課題を解決しつつ、さらに磁束密度が高い
方向性電磁鋼板の製造法を提供することを目的とするも
のである。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは、以下の通りである。 (1) 鋼中に重量%で、 0.025% ≦ C ≦0.075% 2.5% ≦ Si ≦4.5 % S ≦0.015% 0.010% ≦ sol.Al ≦0.050% 0.0010%≦ N ≦0.0120% 0.050% ≦ Mn ≦0.45 % を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラ
ブを、1200℃以下の温度に加熱した後、熱延し、熱
延板焼鈍を施し、1回または中間焼鈍をはさむ2回以上
の圧延で最終圧延率80%以上とし、次いで脱炭焼鈍
し、焼鈍分離材を塗布し、仕上焼鈍の二次再結晶開始ま
での間に鋼板に窒化処理を施す方向性電磁鋼板の製造法
において、仕上熱間圧延時に、最終パスもしくは最終2
パスを歪み速度150s-1以上でかつ、最終2スタンド
間の張力が1.5kgf /mm2 以上で仕上げ熱延を実施す
ることを特徴とする磁束密度の高い方向性電磁鋼板の製
造法。 (2) 粗圧延したシートバーを仕上熱延前に先行するシ
ートバーに接合し、当該シートバーを連続して仕上げ熱
延に供することを特徴とする請項(1) に記載の磁束密度
の高い方向性電磁鋼板の製造方法。
【0018】本発明者らは、インヒビター制御技術以外
の製造プロセス上の検討課題として、熱延条件を制御
し、熱延板の造り込みによる磁束密度の高い方向性電磁
鋼板の製造法について鋭意検討を行った。方向性電磁鋼
板は鉄心として積層して使用に供されるため、成品板厚
の厳重な管理が必要であり、この目的のために冷延のみ
ならず熱延板においても厳しい板厚管理が要求されてい
る。そのため、熱延最終パス付近では形状調整のために
圧下率を下げて軽圧下とし、その歪み速度も小さいのが
通常であった。
【0019】本発明者等は、従来技術のこのような操業
条件について見直しを行った結果、仕上熱間圧延時に、
圧延パスの最終側において、歪み速度を注意深く制御し
つつ、かつそのスタンド間の張力をも制御することによ
り、高歪み速度変形下での熱延板の板厚精度低下の課題
を解決し。形状の良好な熱延板の製造が可能となるとと
もに、成品における磁束密度が高く鉄損の低い方向性電
磁鋼板を製造することが可能であることを見い出した。
【0020】また、操業上の観点からは、本発明のごと
き張力負荷下での高速圧延を安定して実施するために、
粗圧延後のシートバーを先行するシートバーに接合し、
2本以上のシートバーを連続して仕上熱延に供すること
が有効であることも見い出した。本発明は、これらの知
見に基づくものであり、完成に至った。
【0021】以下に、本発明を詳細に説明する。まず、
鋼の成分について述べる。Si含有量は、電磁鋼板の固
有抵抗を介して鉄損特性を大きく左右するが、2.5%
未満では固有抵抗が小さく渦電流損が増大するので好ま
しくない。また、4.5%超では加工性が劣化するので
製造、製品加工が困難になり好ましくない。従って、S
i含有量は2.5%以上4.5%以下とする。
【0022】Cは、その含有量が0.025%未満にな
ると二次再結晶が不安定となり、磁束密度が著しく低下
するので0.025%以上とする。一方、0.075%
を超えると、脱炭焼鈍に要する時間が長くなりすぎ、不
経済であるので0.075%以下とする。
【0023】Sの含有量は、従来の方向性電磁鋼板製造
技術と異なる点の一つである。なぜなら、本発明ではイ
ンヒビターとしては主として(Al,Si)Nを用いる
ので、MnSは特に必要とせず、むしろ磁気特性上は有
害である。従って、S含有量は0.015%以下、好ま
しくは0.007%以下にする必要がある。
【0024】sol.Alは、Nと化合してインヒビタ
ーであるAlNを形成するが、本発明においては脱炭焼
鈍後から二次再結晶開始までの間に窒化を行い(Al,
Si)Nを形成させるので、フリーのAlNが一定以上
必要である。このため0.010%以上0.050%以
下添加する。
【0025】Nは、0.0120%以下にする必要があ
る。これを超えるとブリスターと呼ばれる鋼板表面の膨
れが発生するとともに、一次再結晶組織の調整が困難と
なるので0.0120%以下とする。一方、N含有量が
0.0010%未満であると、二次再結晶の発現が困難
になるのでN含有量は0.0010%以上とする。
【0026】Mn含有量は、0.45%を超えると成品
の磁束密度が低下し、一方0.050%未満であると二
次再結晶が不安定となるのでMn含有量は0.050%
以上0.45%以下とする。なお、二次再結晶の安定化
その他の目的のために微量のSn、Cu、Cr、P、T
iを鋼中に含有させることは本発明の効果を何ら損なう
ものではない。
【0027】次に、製造のプロセスについて説明する。
電磁鋼スラブは、転炉または電気炉等の溶解炉で鋼を溶
製し、必要に応じて真空脱ガス処理し、次いで連続鋳造
により、あるいは造塊後分塊圧延することによって得ら
れる。その後、熱間圧延に先立ちスラブ加熱が行われ
る。本発明のプロセスにおいては、スラブの加熱温度は
1200℃以下の低いものとして熱源単位を節約すると
ともに、鋼中のAlNを完全には固溶させずに不完全固
溶状態とする。このスラブを熱延して所定の厚みの熱延
板とする。
【0028】仕上熱延条件と成品磁束密度との関係につ
いて実験結果に基づき説明する。仕上熱延時の最終パス
の歪み速度と、最終2パスのスタンド間張力の成品磁気
特性に対する影響を調査するため下記の様な実験を行っ
た。 C:0.055%,Si:3.21%,Mn:0.12
%,S:0.007%,sol.Al:0.028%,
N:0.0081%,Cr:0.12%を含有し、残部
Feおよび不可避的不純物からなる電磁鋼スラブを11
50℃に加熱後粗圧延機により65mm厚のシートバーと
した。その後、このシートバーを仕上圧延機により2.
3mmに厚みの熱延板とした。その際、仕上熱延最終パス
の歪み速度と最終2スタンド間の張力を様々に変化させ
て磁気特性への影響を調査した。
【0029】得られた熱延板を1120℃×2分+90
0℃×2分の熱延板焼鈍を施し、100℃の湯中で冷却
し、その後酸洗し、0.27mmまで冷延し、次いで83
0℃120秒の脱炭焼鈍を実施した。次いで、窒化処理
をアンモニア1%を含む水素、窒素ガス中で750℃×
30秒行った。その後、MgOにTiO2 を混入した焼
鈍分離剤を塗布し、1200℃×20時間の仕上焼鈍を
行った。
【0030】図1は、最終2スタンド間の張力を3.2
kgf/mm2 に保って仕上げ熱延を行った場合の最終パスの
歪み速度に対する製品磁束密度の依存性を示すものであ
る。図1によれば、歪み速度150s-1以上で成品磁束
密度が上昇することがわかる。
【0031】歪み速度の計算は、下記の式によって行
う。 歪み速度=(2πn/(60r0.5 ))(R/ H0 )0.5
ln(1/(1−r)) ここで、rは圧下率(%)/100、nはロールの回転
数(rpm)、Rは圧延ロール半径(mm)、H0 は圧延
前の板厚(mm)である。
【0032】図2は、最終パスの歪み速度を325s-1
に保って仕上熱延時を実施した場合の最終2スタンド間
の張力と製品磁束密度の関係を示すものである。図2に
示されるとおり、仕上熱延の最終2スタンド間の張力が
1.5kgf /mm2 以上で成品磁束密度が上昇することが
わかる。
【0033】このように本発明者等は、最終パスの歪み
速度と最終2パスのスタンド間張力を適切な条件に設定
することにより、方向性電磁鋼板の磁気特性を向上する
手段を開発することに成功した。
【0034】以上の実験から分るように、仕上熱延の最
終パスの歪み速度は150s-1以上で、最終2パスのス
タンド間張力が1.5kgf /mm2 以上であればよい。こ
れらの値の上限は特に設けない。これは、熱延機の設備
能力および下工程での通板性から、歪み速度の上限は自
ずから決まるからである。すなわち、歪み速度は圧延速
度、熱延ロール径、圧下量により決まるが、圧延速度、
圧下量は熱延機の能力および後工程ラインの熱延板厚に
対する制約からその上限が自ずから決まり、この観点か
らは600s-1程度が限界である。
【0035】一方、最終の2スタンド間張力についても
鋼板を圧下するのに必要な圧延反力と摩擦係数から、通
板可能なスタンド間張力が自ずから決まる。本発明のご
とく仕上熱間圧延を高速かつ張力を負荷した状態で行っ
た場合、仕上熱延中にロールと鋼板の間にスリップが生
じ、圧延ロールの寿命を著しく縮めるとともに、鋼板表
層に深い圧延疵を生じせしめることがある。この様な課
題を解決し、安定的に操業を行う方法として、粗圧延後
のシートバーを、仕上熱間圧延前に先行するシートバー
に接合し、当該シートバーを連続して仕上熱間圧延に供
することが特に有効である。
【0036】熱延以降の行程については、析出物制御を
目的として熱延板焼鈍を行っても良い。酸洗後、一回も
しくは中間焼鈍をはさむ2回以上の冷間圧延を施して最
終板厚とするが、最終圧延率が80%未満であると磁束
密度B8の値が低下するので、冷延率は80%以上にす
る。特性はやや劣るものの、コスト低減のために熱延板
焼鈍を省略してもよい。最終製品の結晶粒径を小さくし
鉄損を低減するために中間焼鈍を含む2回以上の圧延で
最終板厚としてもよい。
【0037】次に、水素あるいは湿水素、窒素混合雰囲
気ガス中で脱炭焼鈍をする。このときの温度は特に本発
明では定めないが、800℃から900℃が好ましい。
【0038】次いで、焼鈍分離材を塗布し仕上げ焼鈍を
行い、二次再結晶および引き続いて純化を行う。このた
め焼鈍温度は通常1100℃から1200℃の高温とす
る。二次再結晶完了後の純化焼鈍は水素雰囲気中で実施
する。
【0039】本発明では脱炭焼鈍の完了後、仕上焼鈍の
二次再結晶開始までの間に鋼板に窒化処理を施し、微細
な(Al,Si)Nを鋼板内に形成させる。その実施形
態としては、脱炭焼鈍時均熱以降で窒化能のある気体の
雰囲気で窒化するか、または、脱炭焼鈍後別途設けたN
3 等の雰囲気を有する熱処理炉に通過せしめて窒化す
るか、あるいは仕上焼鈍の際に焼鈍分離材中にMnN、
CrN等を適量配合するか、仕上焼鈍の昇温過程におい
て窒化能のあるNH3 等の気体を雰囲気に含有せしめて
もよい。さらに、以上の方法の組み合わせによって窒化
を行ってもよい。
【0040】
【実施例】実施例1 表1に示す成分を含有し、残部Feおよび不可避的不純
物からなる電磁鋼スラブ(鋼種A)を1150℃に加熱
後、粗圧延機により65mm厚のシートバーとした。その
後、このシートバーを仕上圧延機により2.1mmの厚み
の熱延板とした。この際、スタンド間の張力制御を容易
にするため、シートバーを先行するシートバーに接合し
て、連続して仕上熱間圧延を行った。仕上げ熱延最終2
スタンド間の張力は2.9kgf /mm2 から3.2kgf /
mm2 に保って圧延を行った。
【0041】得られた熱延板に1200℃×2分+90
0℃×2分の熱延板焼鈍を施し、100℃の湯中で冷却
し、その後酸洗し0.23mmまで冷延し、次いで830
℃90秒の脱炭焼鈍を露点58℃の湿水素、窒素雰囲気
中で実施した。次いで窒化処理をアンモニア1%を含む
水素、窒素ガス中で750℃×30秒行った。その後M
gOにTiO2 を混入した焼鈍分離剤を塗布し、120
0℃×20時間の仕上焼鈍を行った。
【0042】仕上熱延時の最終スタンドの歪み速度と仕
上焼鈍後の磁気特性との関係を、表2に示す。表2から
分かるように、仕上げ熱延時の最終スタンドの歪み速度
を150s-1以上に高めれば、磁束密度の値が高く、鉄
損値の低い磁気特性の優れた方向性電磁鋼板を得ること
が可能である。
【0043】 表1 供試材成分(鋼種A) C Si Mn S sol.Al N (%) (%) (%) (%) (%) (%) 0.054 3.25 0.12 0.0071 0.027 0.0078
【0044】 表2 磁気測定結果 例 最終スタンド 磁束密度 B8 鉄損W17/50 歪み速度(s-1) (T ) (W/kg) 比較例 129 1.931 0.833 本発明例 178 1.941 0.822 本発明例 215 1.952 0.816 本発明例 255 1.952 0.816 本発明例 329 1.953 0.814
【0045】実施例2 表3に示す成分を含有し、残部Feおよび不可避的不純
物からなる電磁鋼スラブ(鋼種B)を1150℃に加熱
後、粗圧延機により70mm厚のシートバーとした。その
後、このシートバーを仕上圧延機により2.3mmに厚み
の熱延板とした。その際、仕上げ熱延最終パスの歪み速
度が150s-1以上となるように噛み込み時から注意深
く圧延速度、パススケジュールを制御し、コイル全長に
わたり最終パスの歪み速度を260〜280s-1にし
た。また、仕上熱間圧延時に鋼板とワークロール間にス
リッフ゜が生じ鋼板の表面に疵が形成されることを防止
するために、粗圧延後のシートバーを先行するシートバ
ーに溶接し、仕上熱間圧延を連続して行った。
【0046】得られた熱延板を1120℃×2分半+9
00℃×2分の熱延板焼鈍を施し、100℃の湯中で冷
却し、その後酸洗し0.30mmまで冷延し、次いで83
0℃120秒の脱炭焼鈍を露点58℃の湿水素、窒素雰囲
気中で実施した。次いで窒化処理をアンモニア1%を含
む水素、窒素ガス中で750℃×20秒行った。その後
MgOにTiO2 を混入した焼鈍分離剤を塗布し、12
00℃×20時間の仕上焼鈍を行った。
【0047】本発明例と比較例の磁気測定結果を、表4
に示す。表4から分るように、仕上げ熱延時の最終2ス
タンド間の張力を1.5kgf /mm2 以上に高めれば、磁
束密度の値が高く、鉄損値の低い磁気特性の優れた方向
性電磁鋼板を得ることが可能である。
【0048】 表3 供試材成分(鋼種B) C Si Mn S sol.Al N (%) (%) (%) (%) (%) (%) 0.055 3.25 0.11 0.0069 0.027 0.0079
【0049】 表4 磁気測定結果 例 最終2スタンド間張力 磁束密度 B8 鉄損W17/50 (kgf/mm2 ) (T ) (W/kg) 比較例 1.25 1.934 0.987 本発明例 1.91 1.945 0.975 本発明例 2.70 1.950 0.974 本発明例 3.31 1.950 0.972
【0050】実施例3 表5に示す成分を含有し、残部Feおよび不可避的不純
物からなる電磁鋼スラブ(鋼種C)を1150℃に加熱
後粗圧延機により70mm厚のシートバーとした。その
後、このシートバーを仕上圧延機により2.1mm厚みの
熱延板とした。仕上げ熱延最終2スタンド間の張力は
2.9kgf /mm2 から3.1kgf /mm2 に保って圧延を
行った。
【0051】得られた熱延板に1120℃×2分+90
0℃×2分の熱延板焼鈍を施し、100℃の湯中で冷却
し、その後酸洗し0.23mmまで冷延し、次いで830
℃90秒の脱炭焼鈍を露点57℃の湿水素、窒素雰囲気
中で実施した。次いで窒化処理をアンモニア1%を含む
水素、窒素ガス中で750℃×20秒行った。その後M
gOにTiO2 を混入した焼鈍分離剤を塗布し、120
0℃×20時間の仕上焼鈍を行った。
【0052】本発明例と比較例の磁気測定結果を、表6
に示す。表6から分るように、仕上げ熱延時の最終スタ
ンドの歪み速度を150s-1以上に高めれば、磁束密度
の値が高く、鉄損値の低い磁気特性の優れた方向性電磁
鋼板を得ることが可能である。
【0053】 表5 供試材成分(鋼種C) C Si Mn S sol.Al N Sn Cu (%) (%) (%) (%) (%) (%) (%) (%) 0.056 3.24 0.12 0.0071 0.027 0.0079 0.14 0.07
【0054】 表6 磁気測定結果 例 最終スタンド 磁束密度 B8 鉄損W17/50 歪み速度(s-1) (T ) (W/kg) 比較例 130 1.929 0.833 本発明例 170 1.942 0.821 本発明例 193 1.945 0.819 本発明例 230 1.946 0.818 本発明例 271 1.948 0.816
【0055】
【発明の効果】本発明によれば、磁束密度が高く、かつ
磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を製造することが可能
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】仕上熱延時の最終スタンドの歪み速度と成品の
磁束密度の関係を示すものである。
【図2】仕上熱延時の最終2スタンド間の張力と成品の
磁束密度の関係を示すものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 村 上 健 一 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋼中に重量%で、 0.025% ≦ C ≦0.075% 2.5% ≦ Si ≦4.5 % S ≦0.015% 0.010% ≦ sol.Al ≦0.050% 0.0010%≦ N ≦0.0120% 0.050% ≦ Mn ≦0.45 % を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラ
    ブを、1200℃以下の温度に加熱した後、熱延し、熱
    延板焼鈍を施し、1回または中間焼鈍をはさむ2回以上
    の圧延で最終圧延率80%以上とし、 次いで、脱炭焼鈍し、焼鈍分離材を塗布し、仕上焼鈍の
    二次再結晶開始までの間に鋼板に窒化処理を施す方向性
    電磁鋼板の製造法において、 仕上熱間圧延時に、最終パスもしくは最終2パスを歪み
    速度150s-1以上でかつ、最終2スタンド間の張力が
    1.5kgf /mm2 以上で仕上げ熱延を実施することを特
    徴とする、磁束密度の高い方向性電磁鋼板の製造法。
  2. 【請求項2】粗圧延したシートバーを仕上熱延前に先行
    するシートバーに接合し、当該シートバーを連続して仕
    上げ熱延に供することを特徴とする請求項1記載の磁束
    密度の高い方向性電磁鋼板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2018009244A (ja) * 2016-07-01 2018-01-18 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法

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