JPH1045630A - 新規なグラフト共重合体、それを用いた薬剤、及びそれを用いて薬物を特定細胞に取り込ませる方法 - Google Patents

新規なグラフト共重合体、それを用いた薬剤、及びそれを用いて薬物を特定細胞に取り込ませる方法

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JPH1045630A
JPH1045630A JP8219305A JP21930596A JPH1045630A JP H1045630 A JPH1045630 A JP H1045630A JP 8219305 A JP8219305 A JP 8219305A JP 21930596 A JP21930596 A JP 21930596A JP H1045630 A JPH1045630 A JP H1045630A
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dna
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厚 丸山
Toshihiro Akaike
敏宏 赤池
Takeshi Goto
武 後藤
Keiji Yonemura
圭史 米村
Chikahide Nozaki
周英 野崎
Tetsuo Ueno
哲郎 上野
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 DNA、RNA及び陰イオン性化合物からな
る群から選択される薬物と安定な複合体を形成し、該薬
物を特定の細胞または組織へ送達することを可能とし、
さらには該薬物の細胞質内への移行性を向上させること
が可能な化合物を提供すること。 【解決手段】 ポリカチオン性アミノ酸に生体膜親和性
基を導入してなるポリカチオン性誘導体と、特定細胞に
対して標的性を示す標的リガンドとを含むことを特徴と
するグラフト共重合体。特に、下記一般式(I): 【化1】 [式中、Rはアルキル基、X1及びX2はそれぞれ水素原
子]で表わされるグラフト共重合体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なグラフト共
重合体、それを用いた薬剤、及びそれを用いて薬物を特
定細胞に取り込ませる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】遺伝子工学の急速な発展により、様々な
分子生物学的手法の開発が行われ、遺伝子情報の解析お
よび遺伝子の機能解明がなされている。さらに、このよ
うにして得られた成果を治療方法等に応用する試みが数
多く行われている。
【0003】その中でも、最も進歩の著しい分野の1つ
として遺伝子治療分野があげられる。種々の遺伝性疾患
における原因遺伝子の発見、解読が行われ、遺伝子治療
は基礎的実験の段階から、実際の臨床応用の段階までに
発展しつつある。例えば、米国においては、1995年
6月までに81の遺伝子治療プロトコールがNIHの組
換えDNA委員会(RAC)で承認され、先天性免疫不
全症、家族性高コレステロール血症、嚢胞性線維症等の
遺伝性疾患および各種の癌を対象とし、既に200人以
上の患者に対して臨床試験が行われている(実験医学V
ol.12,No.3,303−307(199
4))。
【0004】遺伝子治療は病気を細胞レベルの根本から
治療できる方法ではあるが、臨床応用における大きな技
術的課題の1つとして、外来遺伝子を効率良く安全に標
的細胞へ導入する方法についていくつかの問題が指摘さ
れている。即ち、遺伝子治療は、異常(病原)遺伝子を
そのままにして、新しい(正常)遺伝子を付け加える付
加遺伝子療法(Augmentation Gene
Therapy)と、異常遺伝子を正常遺伝子で置き換
える置換遺伝子療法(ReplacementGene
Therapy)に大別されるが、いずれの療法の場
合にも、正常遺伝子を効率良く安全に標的細胞へ導入す
る方法が必要とされる。
【0005】例えば、1980年代初期にはマイクロイ
ンジェクションなど物理的手法の応用が試みられたが、
遺伝子の導入効率が低く、安定に導入することができ
ず、さらには大量細胞培養技術の限界等の問題点があっ
た。
【0006】また、外来遺伝子を効率良く標的細胞に導
入するためのキャリアーとなる組換えウイルス(ウイル
スベクター)が開発され、初めて遺伝子治療の臨床応用
が可能となった。現在、遺伝子治療への使用が検討され
ているウイルスベクターには、以下に示すようにいくつ
かの種類が知られているが、これらは一般的に生産方法
が非常に複雑であると同時に、それぞれの安全性を保証
する方法が確立されていないという問題点がある。例え
ば、遺伝子治療に使用可能なウイルスベクターとして、
現在最も注目されているウイルスベクターは、マウス白
血病ウイルス(MoMLV:Moloney Muri
ne Leukemia Virus)由来のレトロウ
イルスベクターであり、本ウイルスの増殖様式の利点を
利用したものである。レトロウイルスは、エンベロープ
をもつRNAウイルスであり、そのエンベロープ蛋白と
宿主細胞側のレセプターが結合することにより細胞内に
侵入する。侵入後、単一鎖ウイルスRNAが逆転写酵素
により二重鎖DNAに変換され、感染細胞ゲノムDNA
に組み込まれる。しかしながら、このような組み込みが
起こるためには、細胞が***増殖していなければならな
い。従って、実用的に一番問題となるのは、非***細胞
に遺伝子導入できない点である。そのため、多くの先天
性代謝異常症で問題となる神経細胞の遺伝子修復が行え
ない。神経細胞以外にも、遺伝子治療の対象細胞となっ
ている造血幹細胞、肝細胞、筋細胞なども、通常はほと
んど静止期にあるため、遺伝子導入効率は低い。体外に
取り出した細胞については、遺伝子導入効率を高めるた
めに***を促進するような処理を行うことが可能である
が、生体内でこれらの細胞に遺伝子導入を行うことは難
しい。
【0007】また、アデノウイルスベクターは非***細
胞へも遺伝子が導入できるものとして最近注目されてい
る。しかし、アデノウイルスベクターでは外来遺伝子が
標的細胞ゲノムDNA内に組み込まれないため、数週問
から長くても数カ月で遺伝子導入の効果はなくなってし
まう。そのため遺伝子導入を頻繁に繰り返す必要があ
り、患者への肉体的、身体的な負担の増加、抗アデノウ
イルス抗体が産生されることによる遺伝子導入効率の低
下などが問題となっている。現在、嚢胞性線維症の治療
のためにアデノウイルスベクターを経気管支鏡的に肺に
投与する臨床試験が開始されているが、アデノウイルス
粒子の免疫原性および細胞毒性に起因するとみられる炎
症反応が発生する可能性が指摘されている。
【0008】さらに、へルペスウイルスベクターは神経
細胞への外来遺伝子導入が可能なベクターとして期待さ
れているが、細胞毒性が強く、さらにウイルス自体のゲ
ノムサイズが150kbと非常に大きいために開発は進
んでいない。さらに、HIVベクターはウイルス自体の
宿主特性により、CD4陽性Tリンパ球に対して特異的
遺伝子導入を可能とするベクターとして開発された(S
himada T.,et al.,J.Clin.I
nvest.,88,1043(1991))。しかし
ながら、HIVベクターには最大の欠点として野生株混
入の可能性という問題がある。また、AAV(Aden
o‐Associated Virus)ベクターに関
しては、野生型のAAVは第19染色体の特定の位置に
組み込まれることが見出され、遺伝子組み込み位置をタ
ーゲティングできるベクターとして注目された。しかし
最近の研究によると、組換えAAVベクターはこの特性
を失っており、外来遺伝子は染色体の非特異的位置に組
み込まれると指摘されている。さらにAAVベクターは
導入できる外来遺伝子のサイズに限界があり、5kb以
下の遺伝子しかベクター内にパッケージングできないと
いう欠点もある。
【0009】一方、ウイルスベクター以外にも、各種の
人工的な遺伝子導入システムを用いて遺伝子治療を行お
うとする試みが多くなされている。例えば、正電荷を有
する脂質による遺伝子−脂質複合体が遺伝子治療用非ウ
イルスキャリアーとして開発されている。しかしなが
ら、これらのキャリアーは、大量に用いた場合に細胞毒
性が高い等の問題点が指摘されている(Bioconj
ugate Chem.,Vol.3,323‐327
(1992)、Proc.Natl.Acad.Sc
i.USA,Vol.89,7934‐7938(19
92)、J.Biol.Chem.,Vol.269,
12918‐12924(1994)、特表平6‐50
5980、特表平6‐507158)。
【0010】また、核酸およびその誘導体が負電荷を有
することを利用し、正電荷を有する合成高分子誘導体と
の間で静電的複合体を形成させることにより、標的とな
る細胞もしくは細胞内へ遺伝子を送達させることを試み
た研究報告もなされている(Bioconjugate
Chem.,Vol.3,323‐327(199
2)、Proc.Natl.Acad.Sci.US
A,Vol.89,7934‐7938(1992)、
J.Biol.Chem.,Vol.269,1291
8‐12924(1994)、特表平6‐50598
0、特表平6‐507158)。しかしながら、従来の
正電荷を有する合成高分子誘導体は、単独で用いた場合
には細胞毒性が高いことが指摘されている(Bioco
njugateChem.,Vol.1,149‐15
3(1990))。それと同時に、これら従来の合成高
分子誘導体が生体内へ投与された場合は、異物として認
識されることにより、アナフィラキシーショック等の免
疫系への影響も問題点とされている。
【0011】さらには、異物として認識されにくいとい
う理由から、生体由来の核タンパク質を用いた試みも検
討されている。核タンパク質は、核酸およびその誘導体
と特異的に結合する性質を有していることから、静電的
複合体を形成することにより、遺伝子導入用ベクターと
なり得る可能性がある。核タンパク質であるヒストンタ
ンパク質を用い、それらをプラスミドDNA用のキャリ
アーとして研究をおこなっている例がある(Yasuf
umi Kaneda,et al.,Scienc
e,Vol.243,375‐378(1889)、M
irjam Breeuwer and David
S.Goldfarb,Cell,Vol.60,99
9‐1008(1990)、Jian Chen,et
al.,Human Gene Therapy,V
ol.5,429‐435(1994))。しかし、こ
れらの例においても、遺伝子を細胞に取り込ませる方法
についてのみ検討されており、必ずしも多くの細胞種に
おいて遺伝子の発現効率を向上させることを目的として
いるわけではなく、多くの細胞種において遺伝子を効率
よく細胞質内に導入するためのベクターとしては必ずし
も充分ではないという問題がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来は、
(1)DNA等と充分に安定な複合体を形成する点、
(2)DNA等を特定の細胞または組織へ選択性よく送
達させる点、及び(3)DNA等を細胞質内へ充分に取
り込ませる点の全ての要件を充分に満たすキャリアーは
未だ存在しなかった。
【0013】そこで、本発明の目的は、DNA、RNA
及び陰イオン性化合物からなる群から選択される薬物と
安定な複合体を形成し、該薬物を特定の細胞または組織
へ送達することを可能とし、さらには該薬物の細胞質内
への移行性を向上させることが可能な化合物を提供する
ことにある。
【0014】本発明の他の目的は、DNA、RNA及び
陰イオン性化合物からなる群から選択される薬物を特定
の細胞または組織へ送達しかつ細胞質内へ充分に取り込
ませることが可能な薬物を提供することにある。
【0015】また、本発明の更に他の目的は、DNA、
RNA及び陰イオン性化合物からなる群から選択される
薬物を特定の細胞または組織へ送達しかつ細胞質内へ充
分に取り込ませることが可能な方法を提供することにあ
る。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく鋭意研究した結果、特定の構造を有するグ
ラフト共重合体を用いることによって上記従来の問題点
を解決することが可能なことを見出し、本発明を完成す
るに至った。
【0017】すなわち、本発明は、ポリカチオン性アミ
ノ酸に生体膜親和性基を導入してなるポリカチオン性誘
導体と、特定細胞に対して標的性を示す標的リガンドと
を含むことを特徴とするグラフト共重合体にある。
【0018】また、本発明は、ポリカチオン性アミノ酸
に生体膜親和性基を導入してなるポリカチオン性誘導体
と、特定細胞に対して標的性を示す標的リガンドとを含
むことを特徴とするグラフト共重合体と、DNA、RN
A及び陰イオン性化合物からなる群から選択される薬物
とを含むことを特徴とする薬剤にある。
【0019】さらに、本発明は、ポリカチオン性アミノ
酸に生体膜親和性基を導入してなるポリカチオン性誘導
体と、特定細胞に対して標的性を示す標的リガンドとを
含むことを特徴とするグラフト共重合体を用いて、DN
A、RNA及び陰イオン性化合物からなる群から選択さ
れる薬物を特定細胞に取り込ませることを特徴とする方
法にある。
【0020】上記本発明のグラフト共重合体にあって
は、主としてポリカチオン性アミノ酸によってDNA、
RNA又は陰イオン性化合物といった薬物との安定な複
合体形成が達成され、主として生体膜親和性基によって
前記薬物の細胞質内への移行性向上が達成され、更に主
として標的リガンドによって特定の細胞または組織への
送達性が達成される。従って、このようなグラフト共重
合体を含有する本発明の薬剤並びにかかるグラフト共重
合体を用いる本発明の方法によれば、DNA、RNA又
は陰イオン性化合物といった薬物が安定な複合体の形で
特定の細胞または組織へ送達され、そして細胞質内へ充
分に取り込まれる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明のグラフト共重合
体、並びにそれを用いた本発明の薬剤及び方法をそれぞ
れの実施の形態に即してさらに詳しく説明する。
【0022】先ず、本発明のグラフト共重合体について
説明する。
【0023】本発明のグラフト共重合体は、前述のよう
に、ポリカチオン性アミノ酸に生体膜親和性基を導入し
てなるポリカチオン性誘導体と、特定細胞に対して標的
性を示す標的リガンドとを含む。
【0024】本発明にかかるポリカチオン性アミノ酸
は、治療用、診断用等のDNA、RNA又は陰イオン性
化合物とイオン性結合を形成するものであり、ポリリジ
ン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリアルギニ
ン、並びにリジン、ヒスチジン、オルニチン及びアルギ
ニンのうちの少なくとも一つを含むアミノ酸共重合体が
好ましいものとして挙げられ、特にリジンオリゴマー
(ポリリジン)が好ましい。ポリリジンを使用すると特
にDNA等と強力な結合が形成されかつDNA等のリン
酸基間のイオン反発が和らげられ、得られる複合体がよ
り安定化する傾向にあるからである。
【0025】また、前記ポリカチオン性アミノ酸は、数
平均重合度(アミノ酸数)が8〜100のものであるこ
とが好ましく、10〜40のものであることがより好ま
しい。上記数平均重合度が8未満ではアミノ酸のカチオ
ン量が少な過ぎるため、アニオン性であるDNA等との
複合体形成が困難となる傾向にあり、他方、100を超
えると複合体の立体障害が生じるため、薬物としての機
能を果たさなくなる傾向にあるからである。
【0026】本発明にかかる生体膜親和性基は、生体膜
親和性を向上させて薬物の細胞への導入を向上させる官
能基であり、炭素数が4〜18でありかつ不飽和数が0
〜4である脂肪族炭化水素基、コレステロール誘導体、
及びホスファチジルエタノールアミン誘導体が好ましい
ものとして挙げられ、特に炭素数が4〜18のアルキル
基が好ましい。上記炭素数が4未満では疎水性が低下
し、生体膜との親和性が低下する傾向にあり、他方、1
8を超えると逆に疎水性が過剰になり過ぎて生体膜との
親和性が低下する傾向にあるからである。
【0027】本発明にかかる標的リガンドは、特定の細
胞又は組織に対する特異性を示すものであり、抗体、酵
素、糖鎖、核酸、合成アミノ酸、ポリエチレングリコー
ル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、生体
由来多糖、及びそれらの修飾体(誘導体)が挙げられ、
更に好ましいものとしては以下のものが挙げられる。す
なわち、ガラクトース残基を有するポリスチレン誘導体
(対肝細胞特異性)、ヒアルロン酸誘導体(対肝細胞特
異性)、抗CD4抗体の誘導体(対リンパ球特異性)、
細胞接着因子の誘導体(対内皮細胞特異性)、抗CEA
抗体の誘導体(対ガン細胞特異性)、トランスフェリン
の誘導体(対血液脳関門特異性)等が挙げられる。
【0028】なお、本発明のグラフト共重合体は、上記
の生体膜親和性基を導入してなるポリカチオン性誘導体
と上記の標的リガンドとを含むグラフト共重合体であれ
ばよく、これらは好ましくは脂肪族炭化水素基、特に好
ましくはビニル基及び/又はメタクリロイル基、によっ
て結合される。
【0029】また、本発明のグラフト共重合体は、主鎖
部分の数平均重合度が10〜200であり、かつ側鎖部
分の数(分枝数)が1〜100であることが好ましい。
主鎖部分の数平均重合度が10未満ではリガンドの不足
によって細胞から認識されなくなる傾向にあり、他方、
200を超えると分子量が大きくなり、細胞への取り込
みが低下すること及び生体内での代謝が悪くなる傾向に
あるからである。また、側鎖部分の数が100を超える
と分子量が大きくなり、細胞への取り込みが低下するこ
と及び生体内での代謝が悪くなる傾向にあるからであ
る。
【0030】なお、本発明のグラフト共重合体において
上記標的リガンドの重合体とポリカチオン性誘導体のう
ちいずれが主鎖部分(幹重合体)となるかは特に制限さ
れないが、好ましくは標的リガンドの重合体が主鎖部分
(幹重合体)となり、ポリカチオン性誘導体が側鎖部分
(枝重合体)となる。
【0031】次に、本発明のグラフト共重合体として特
に好ましいものについて説明する。すなわち、下記一般
式(I):
【0032】
【化2】
【0033】[式中、Rは炭素数が4〜18のアルキル
基であり、X1及びX2はそれぞれ水素原子であり、aは
10〜200、好ましくは50〜100、の整数であ
り、bは1〜100、好ましくは1〜20、の整数であ
り、pは8〜100、好ましくは10〜40、の整数で
ある]で表わされるグラフト共重合体が特に好ましい。
上記一般式(I)で表わされるグラフト共重合体によれ
ば、実施例の説明で詳述するように、特定のDNAが安
定な複合体の形で肝細胞に選択的に送達され、そして同
細胞質内に充分に取り込まれる傾向にあるからである。
【0034】なお、上記一般式中のa及びbが上記範囲
外では細胞や組織に対する特異性が低下すること及び細
胞内への取り込みが低下する傾向にあり、またpが上記
範囲外ではDNA等との複合体形成及び薬物としての機
能を果たさなくなる傾向にある。
【0035】次に、本発明のグラフト共重合体を製造す
るための方法について説明する。
【0036】かかるグラフト共重合体の合成方法として
は、 i)幹重合体上の重合開始点から単量体を重合して枝重
合体を成長させる方法、 ii)枝重合体の片末端に重合性の基が導入されたいわゆ
るマクロモノマーと、幹重合体を生成するための単量体
との共重合による方法 のいずれも採用可能であるが、後者の方法が好ましい。
【0037】そして、上記ii)の合成方法において、上
記標的リガンドをチオール誘導体、マレイミド誘導体、
カルボン酸誘導体又はビニル誘導体とし、他方上記ポリ
カチオン性誘導体をチオール誘導体、マレイミド誘導
体、カルボン酸誘導体又はビニル誘導体とし(マクロモ
ノマー:反応中間物質)、これらを共有結合により共重
合せしめる方法が特に好ましい。この方法によれば、本
発明のグラフト共重合体を効率良く製造することが可能
な傾向にあるからである。
【0038】なお、本発明にかかるポリカチオン性アミ
ノ酸誘導体の合成方法は、望ましい重合度等に応じて適
宜選択されるが、例えば以下に示す重合方法が挙げられ
る。すなわち、例えば、ε−カルボオベンゾキシ−リジ
ン−N−カルボン酸無水物およびベンジル−セリン−N
−カルボン酸無水物を、片末端アミノ基のポリエチレン
オキシド(分子量200〜250,000)等の第1級
アミンを開始剤として重合させる方法である。この場
合、ポリエチレンオキシド−ポリアミノ酸ブロックコポ
リマーにおけるポリアミノ酸部分の分子量は、特には限
定されないが500〜50,000であることが望まし
い。
【0039】また、本発明にかかるポリカチオン性アミ
ノ酸に前記生体膜親和性基を導入する方法としては、次
に示す有機合成法により実施することも可能である。す
なわち、例えば、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミ
ン等のアルキルアミンを開始剤としてZ−リジンのN−
カルボン酸無水物(NCA)を重合させ、ついでN末端
をアシル化し、さらにアミノ基を脱保護して疎水的な末
端を持つポリリジンマクロモノマーを合成することが可
能である。
【0040】次に、本発明の薬剤、並びに薬物を細胞に
取り込ませる本発明の方法について説明する。
【0041】本発明の薬剤は、前述のように、前記本発
明のグラフト共重合体と、DNA、RNA及び陰イオン
性化合物からなる群から選択される薬物とを含むもので
ある。また、本発明の方法は、前記本発明のグラフト共
重合体を用いて、DNA、RNA及び陰イオン性化合物
からなる群から選択される薬物を前記特定細胞に取り込
ませる方法である。
【0042】本発明のグラフト共重合体によって細胞内
に導入可能な核酸(DNA及びRNA)の大きさ、種類
等は特に限定されないが、例えば、線状二本鎖DNA、
環状二本鎖DNA、オリゴヌクレオチド、RNAが採用
可能である。また、本発明のグラフト共重合体によって
細胞内に導入可能な陰イオン性化合物としては、プラバ
スタチン、ジゴキシン、フェニルブタゾン、ワルファリ
ン、クロルチアシド、インシュリン、カルシトニン等が
挙げられる。
【0043】また、本発明のグラフト共重合体を使用す
ることにより、細胞に有用なタンパク質をコードする構
造遺伝子を導入して、該遺伝子を発現させることが可能
になる。例えばアンチセンスを導入して特定の遺伝子の
制御を行うことが可能となる。さらに、本発明のグラフ
ト共重合体はリボザイム、トリプレックス、アプタマー
等のキャリアーとしても利用可能である。なお、オリゴ
ヌクレオチドとしては、ホスホジエステル体、ホスホロ
チオエート体、またはその他の誘導体を好ましく使用可
能である。
【0044】本発明のグラフト共重合体の使用量につい
ては特に限定されることなく、使用目的に応じて最適化
される。例えば、核酸1μmolに対して約0.1〜1
000μmolのグラフト共重合体を使用することが好
ましい。
【0045】本発明のグラフト共重合体は、さらに、患
者から標的細胞を体外に取り出し、目的とする遺伝子を
導入した後に再びその細胞を患者の体内に戻すという自
家移植による遺伝子治療(ex vivo 遺伝子治
療)にも、遺伝子を直接患者に投与する遺伝子治療(i
n vivo 遺伝子治療)にも好ましく使用できるも
のである。また、遺伝子治療方法として、異常(原因)
遺伝子をそのままにして、新しい(正常)遺伝子を付け
加える方法(Augmentation Gene T
herapy)と、異常遺伝子を正常遺伝子で置き換え
る方法(Replacement Gene Ther
apy)があるが、どちらにも好ましく使用できる。
【0046】本発明のグラフト共重合体を用いた薬剤
(調製剤)の投与方法は特に限定されず、経口的並びに
非経口的に投与することが可能であり、注射、経皮、経
粘膜、経鼻又は経口投与が好ましい。この場合、本発明
のグラフト共重合体の使用量は、その使用方法、使用目
的等により異なるが、例えば、核酸を含むキャリアーと
して注射投与して用いる場合には、例えば、1日量約
0.1μg/kg−100mg/kgを投与するのが好
ましく、より好ましくは、1日量約1μg/kg−50
mg/kgである。
【0047】なお、本発明の薬剤の剤形は特に制限され
ず、用途等に応じて注射剤、貼付剤、経口投与剤等の剤
形が適宜採用される。また、本発明の薬剤の剤形等に応
じて、薬理学的に許容される範囲の添加剤、例えば賦形
剤、安定化剤、溶剤、溶解助剤、分散剤、が前記グラフ
ト共重合体及び前記薬物に適宜加えられる。
【0048】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をより具体的
に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるもの
ではない。
【0049】実施例1[一方の末端にメタクリロイル
基、他方の末端にアルキルアミン基を有するリジンオリ
ゴマーの合成] 1−1:(アルキルアミン基をC末端に有するZ−保護
リジンオリゴマーの合成) 先ず、e−Z(カルボベンゾキシ)−リジン N−カル
ボン酸無水物(NCA:図1中の化合物(2))を既知
の手法により合成し、再結晶法により精製した。次に、
5.3g(17.3mmol)のNCAを脱水ジメチル
ホルムアミド(DMF)(20ml)に溶かし、所定量
(NCAの1/10、1/20あるいは1/40当量)
のn−ドデシルアミン(図1中の化合物(1))を重合
開始剤(I)として加え、室温で2日間反応させた。そ
の後、大過剰(約1リットル)のエチルエーテルに反応
後のDMF溶液を滴下し、リジンオリゴマーを沈殿物と
して得た。そして、得られたリジンオリゴマーをDMF
/エチルエーテル系で再結晶させて精製し、減圧下乾燥
させて、ドデシルアミン基をC末端に有するリジンオリ
ゴマーを得た。
【0050】なお、上記の反応過程におけるNCA/開
始剤比([M]/[I]比)を表1に示すように変える
ことにより、得られるリジンオリゴマーの数平均重合度
及び数平均分子量を制御した。
【0051】また、n−ドデシルアミンのかわりにn−
ブチルアミン、n−ヘキシルアミンを使用した以外は上
記方法と同様にして、それぞれブチルアミン基あるいは
ヘキシルアミン基をC末端に有するリジンオリゴマー
(図1中の化合物(3))を得た。
【0052】得られたリジンオリゴマーの数平均重合度
及び数平均分子量を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】1−2:(Z−保護リジンオリゴマーのN
末端へのメタクリロイル基の導入) 1−1で得られたリジンオリゴマー200mgを脱水D
MF5mlに溶解した。この溶液に、メタクリロイルク
ロライド75mgおよびトリエチルアミン148mgを
加え室温で3時間反応させた。その後、反応後のDMF
溶液を大過剰のエチルエーテル(約100ml)に加
え、沈殿したオリゴマーを回収した。さらに、得られた
オリゴマーをDMF/エチルエーテル系で再結晶させて
精製した。
【0055】得られたオリゴマーを1H−NMR(DM
SO−d6中)により測定したところ、表2に示すNM
Rシグナルが検出された。従って、得られたオリゴマー
は、C末端にアルキルアミン基、N末端にメタクリロイ
ル基が導入されたZ−保護リジンオリゴマー(図1中の
化合物(4))であることが確認された。
【0056】
【表2】
【0057】1−3:(アルキルアミン基をC末端に、
メタクリロイル基をN末端に有するZ−保護リジンオリ
ゴマーからのZ−基の脱保護) 1−2で得られたオリゴマー100mgを、1mlのト
リフロロ酢酸と0.25mlのチオアニソールとの混合
物に溶解し、室温で3時間反応させた。その後、反応溶
液を大過剰のエチルエーテル(約50ml)に加え、沈
殿したオリゴマーを回収した。さらに、得られたオリゴ
マーをDMF/エチルエーテル系で再結晶させて精製し
た。
【0058】得られたオリゴマーを1H−NMR(D2
中)により測定したところ、表3に示すNMRシグナル
が検出された。従って、得られたオリゴマーは、1−2
で得られたZ−保護リジンオリゴマー(図1中の化合物
(4))からZ基が脱保護されたリジンオリゴマー(図
1中の化合物(5))であることが確認された。また、
NMRシグナルからは、脱保護過程における副反応は検
出されなかった。
【0059】
【表3】
【0060】実施例2(機能性オリゴマーと肝特異性合
成高分子(PVLA)との共重合体の合成) ガラクトース残基を有するスチレン誘導体であるN−P
−ビニルベンジル−D−ラクトンアミド(VLA:図1
中の化合物(6))のポリマー(PVLA)を標的リガ
ンドとして用いた。そして、PVLAと実施例1で得ら
れたリジンオリゴマー(図1中の化合物(5))との共
重合体{PVLA−リジンオリゴマー誘導体(PVLA
/PLLグラフト共重合体)}を、実施例1で得られた
メタクリロイル基を末端に有するリジンオリゴマーのラ
ジカル重合性を利用し、合成標的リガンドPVLAのモ
ノマーであるVLAとの共重合反応により以下のように
して合成した。
【0061】先ず、重合管中にVLA 1gと実施例1
で得られたリジンオリゴマー0.1〜0.3gとをジメ
チルスルフォキシド5mlに溶解した。これにN、N’
−アゾビス(イソブチロニトリル)を最終濃度20mM
になるように加え、脱気後封管し、60℃で2日間反応
させた。その後、重合管を開管し、反応溶液を透析チュ
ーブに移して2週間水に対して透析し、内容物を凍結乾
燥して重合体を得た。得られた重合体を1H−NMR
(DMSO−d6中)により測定したところ、表4に示
すNMRシグナルが検出された。このようにリジンオリ
ゴマーおよびPVLA双方に由来するシグナルが観察さ
れ、PVLA/PLLグラフト共重合体(図1中の化合
物(7))が合成されていることが確認された。
【0062】また、1H−NMRにより各PVLA/P
LLグラフト共重合体中のリジン含量を測定した結果を
表5に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】 実施例3(PVLA/PLLグラフト共重合体のプラス
ミドDNAとの結合性評価試験) 実施例2で得られたPVLA/PLLグラフト共重合体
{B102(ブチル末端、PLL10量体、ポリリジン
含量14wt%)、B202(ブチル末端、PLL20
量体、ポリリジン含量14wt%)、H102(ヘキシ
ル末端、PLL10量体、ポリリジン含量14wt
%)}とプラスミドDNAとの複合体形成能を、以下の
ようにしてゲル電気泳動により観察した。
【0065】すなわち、6.8kbpのプラスミドDN
A(pSV:pSVβ−ガラクトシダーゼコントロール
プラスミド、プロメガ社製)とPVLA/PLLグラフ
ト共重合体とをさまざまな比(図2に示すチャージ比)
で混合した後、アガロースゲル電気泳動で解析した。得
られた電気泳動図(ゲルのバンドのトレース図)を図2
(a)〜図2(c)に示す。
【0066】複合体のバンドは、コントロール(プラス
ミドDNAのみ)のバンドよりも泳動距離が短いことよ
り、複合体が形成されていることが確認された。また、
図2(a)〜図2(c)から明らかなように、いずれの
PVLA/PLLグラフト共重合体においてもチャージ
比1以上で複合体のバンドが現れていることから、チャ
ージ比1以上でプラスミドDNAと完全に複合体を形成
していることが確認された。
【0067】実施例4(PVLA/PLLグラフト共重
合体のオリゴヌクレオチド(DNA)との結合性評価試
験) 実施例2で得られたPVLA/PLLグラフト共重合体
{B102(ブチル末端、PLL10量体、ポリリジン
含量14wt%)、B202(ブチル末端、PLL20
量体、ポリリジン含量14wt%)、H102(ヘキシ
ル末端、PLL10量体、ポリリジン含量14wt
%)}とオリゴヌクレオチドとの複合体形成能を、以下
のようにしてゲル電気泳動により観察した。
【0068】すなわち、オリゴヌクレオチド(40me
r)とPVLA/PLLグラフト共重合体とをさまざま
な比(図3に示すチャージ比)で混合した後、ポリアク
リルアミド電気泳動でフリーのオリゴヌクレオチド量を
解析した。得られた電気泳動図(ゲルのバンドのトレー
ス図)を図3(a)〜図3(c)に示す。
【0069】図3(a)〜図3(c)から明らかなよう
に、B102においてはチャージ比20のレーンでフリ
ーのオリゴヌクレオチド(複合体を形成していないも
の)が全く観察されなくなり、B202においてはチャ
ージ比10のレーンでフリーのオリゴヌクレオチドが全
く観察されなくなり、H102においてはチャージ比5
のレーンでフリーのオリゴヌクレオチドが全く観察され
なくなった。従って、いずれのPVLA/PLLグラフ
ト共重合体においてもオリゴヌクレオチドと完全に複合
体を形成しており、しかもヘキシル基を有するグラフト
共重合体はブチル基を有するものより更に結合性が高い
ことが確認された。
【0070】実施例5(PVLA/PLLグラフト共重
合体とオリゴヌクレオチド(DNA)との複合体の安定
性評価試験) オリゴヌクレオチドおよびPVLA/PLLグラフト共
重合体/オリゴヌクレオチド複合体をそれぞれ血清(F
CS(牛胎児血清)50%)で処理した。オートラジオ
グラフィのパターンから血清中の安定性を確認したとこ
ろ、オリゴヌクレオチド単独では30分でほとんど分解
されるのに対し、上記複合体ではかなり安定であること
が確認された。
【0071】また、PAGE(ポリアクリルアミドゲル
電気泳動)後のゲルを切り出し、液体シンチレーション
で上記複合体から解離されたオリゴヌクレオチドを直接
測定し、これを定量した。
【0072】なお、上記複合体から解離されたオリゴヌ
クレオチドを定量する際、複合体に関与していないフリ
ーのオリゴヌクレオチドをバックグラウンドとして除く
必要があるため、PAA(ポリアクリル酸)を添加した
場合のフリーのオリゴヌクレオチドの定量値からPAA
を添加しない場合の値を差し引いた値をインタクトのオ
リゴヌクレオチド量とした。
【0073】そして、血清(FCS50%)処理時間0
の時において上記複合体に結合しているオリゴヌクレオ
チド量を100%として、血清処理時間経過に伴うその
量の減少を観察し、得られた結果を図4に示す。
【0074】図4から明らかなように、複合体形成時間
(複合体を形成させるための反応時間)が3時間の場
合、B10−20(ブチル末端、PLL10量体、ポリ
リジン含量20wt%)を用いた複合体の安定性がやや
低かったものの、H10−20(ヘキシル末端、PLL
10量体、ポリリジン含量20wt%)を用いた複合体
及びB20−20(ブチル末端、PLL20量体、ポリ
リジン含量20wt%)を用いた複合体にあっては少な
くとも5時間程度まではオリゴヌクレオチドが多量に分
解されてしまうことはないことが確認された。
【0075】また、複合体形成時間を24時間にしてB
20−20/オリゴヌクレオチド複合体を得てみたとこ
ろ、得られた複合体は、形成時間が3時間の場合の複合
体と殆ど同様の安定性であった。
【0076】実施例6(PVLA/PLLグラフト共重
合体とオリゴヌクレオチド(DNA)との複合体の、肝
ガン由来細胞に対する相互作用評価試験) テキサスレッドで蛍光標識を付したオリゴヌクレオチド
とPVLA/PLLグラフト共重合体とを混合した後、
アシアロ糖タンパク質レセプター(ASGPR)を持つ
肝ガン由来細胞(Hep G2)培養系に加え、37℃
で2時間培養させた。その後、上記の細胞培養系を洗
浄、固定した後、共焦点レーザー走査顕微鏡によりテキ
サスレッドの発色による蛍光像を観察した。得られた蛍
光像及び透過光像の写真を図5(a)〜(f)に示す。
【0077】なお、図5(a)及び図5(b)はそれぞ
れオリゴヌクレオチドのみを用いた場合の蛍光像及び透
過光像であり、図5(c)及び図5(d)はそれぞれH
10−14(ヘキシル末端、PLL10量体、ポリリジ
ン含量14wt%)とオリゴヌクレオチドとの複合体を
用いた場合の蛍光像及び透過光像であり、図5(e)及
び図5(f)はそれぞれH40−14(ヘキシル末端、
PLL40量体、ポリリジン含量14wt%)とオリゴ
ヌクレオチドとの複合体を用いた場合の蛍光像及び透過
光像である。
【0078】図5(a)〜(f)から明らかなように、
PVLA/PLLグラフト共重合体の存在によりオリゴ
ヌクレオチドは細胞内に取り込まれ、その取り込み量は
10倍量のフリーオリゴヌクレオチドを細胞と相互作用
させたときと同様、あるいはそれより多かった。すなわ
ち、PVLA/PLLグラフト共重合体が、HepG2
細胞へのオリゴヌクレオチドの取り込みを促進すること
が確認された。
【0079】また、H20−14(ヘキシル末端、PL
L20量体、ポリリジン含量14wt%)とオリゴヌク
レオチドとの複合体(共重合体/DNA=1/1)を用
いた場合の平面蛍光像、断面蛍光像及び平面透過光像の
写真をそれぞれ図6(a)〜(c)に示す。
【0080】細胞の蛍光断面像を観察したところ(図6
(b))、細胞内に明るい赤色の発色が見られ、オリゴ
ヌクレオチドが細胞内部まで導入されていることが確認
された。
【0081】実施例7(PVLA/PLLグラフト共重
合体とオリゴヌクレオチド(DNA)との複合体の、細
胞選択性評価試験) 実施例6と同様に、テキサスレッドで蛍光標識を付した
オリゴヌクレオチドとPVLA/PLLグラフト共重合
体とを混合した後、ASGPRを持つHepG2細胞培
養系及びASGPRを持たないPANC細胞培養系にそ
れぞれ加え、37℃で2時間培養させた。その後、上記
の細胞培養系を洗浄、固定した後、共焦点レーザー走査
顕微鏡によりテキサスレッドの発色による蛍光像を観察
した。得られた蛍光像及び透過光像の写真を図7(a)
〜(d)に示す。
【0082】なお、図7(a)及び図7(b)はそれぞ
れHep G2細胞培養系に添加した場合の蛍光像及び
透過光像であり、図7(c)及び図7(d)はそれぞれ
PANC細胞培養系に添加した場合の蛍光像及び透過光
像である。また、共重合体としてはH40−12(ヘキ
シル末端、PLL40量体、ポリリジン含量12wt
%)を用い、DNA/共重合体の比率は2/1である。
【0083】図7(a)〜(d)から明らかなように、
PANC細胞に比べてHep G2細胞においてより強
い赤色の発色が観察されており、従ってPVLA/PL
Lグラフト共重合体によってオリゴヌクレオチドが細胞
特異選択的にHep G2細胞に送達されていることが
確認された。
【0084】
【発明の効果】以上、詳しく説明した通り、本発明のグ
ラフト共重合体によれば、DNA、RNA及び陰イオン
性化合物からなる群から選択される薬物と安定な複合体
が形成され、該薬物を特定の細胞または組織へ送達しか
つ細胞質内への移行性を向上させることが可能となる。
【0085】従って、このようなグラフト共重合体を含
有する本発明の薬剤並びにかかるグラフト共重合体を用
いる本発明の方法によれば、DNA、RNA又は陰イオ
ン性化合物といった薬物を安定な複合体の形で特定の細
胞または組織へ送達し、そして細胞質内へ充分に取り込
ませることが可能となる。
【0086】それゆえ、上記本発明のグラフト共重合体
は、その性質に基づき、各種遺伝子疾患、あるいはエイ
ズ等のウイルス病に対する遺伝子治療薬の生体内運搬体
として有用となる。また、本発明のグラフト共重合体
は、ウイルスをはじめとして、遺伝子工学技術による種
々の有用動植物の創出にも大きく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のグラフト共重合体の合成経路の一例を
示す化学反応式図である。
【図2】(a)〜(c)はぞれぞれ、本発明のグラフト
共重合体とプラスミドDNAとの結合性を解析した結果
を示すアガロースゲル電気泳動図である。
【図3】(a)〜(c)はぞれぞれ、本発明のグラフト
共重合体とオリゴヌクレオチド(DNA)との結合性を
解析した結果を示すポリアクリルアミド電気泳動図であ
る。
【図4】本発明のグラフト共重合体とオリゴヌクレオチ
ド(DNA)との複合体の血清処理時安定性を示すグラ
フである。
【図5】(a)及び(b)はそれぞれオリゴヌクレオチ
ドのみを肝ガン由来細胞(Hep G2)に取り込ませ
た状態を示す蛍光写真及び透過光写真であり、(c)〜
(f)はそれぞれ本発明のグラフト共重合体を用いてオ
リゴヌクレオチドをHep G2細胞に取り込ませた状
態を示す蛍光写真及び透過光写真である。
【図6】(a)〜(c)はそれぞれ本発明のグラフト共
重合体を用いてオリゴヌクレオチドをHep G2細胞
に取り込ませた状態を示す平面蛍光写真、断面蛍光写真
及び平面透過光写真である。
【図7】(a)及び(b)はそれぞれ本発明のグラフト
共重合体を用いてオリゴヌクレオチドをHep G2細
胞に取り込ませた状態を示す蛍光写真及び透過光写真で
あり、(c)及び(d)はそれぞれ本発明のグラフト共
重合体を用いてオリゴヌクレオチドをPANC細胞に取
り込ませた状態を示す蛍光写真及び透過光写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 後藤 武 茨城県つくば市観音台1−25−11 久光製 薬株式会社筑波研究所内 (72)発明者 米村 圭史 茨城県つくば市観音台1−25−11 久光製 薬株式会社筑波研究所内 (72)発明者 野崎 周英 熊本県熊本市武蔵ケ丘5−26−1 (72)発明者 上野 哲郎 熊本県菊池郡合志町豊岡すずかけ台2527− 108

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリカチオン性アミノ酸に生体膜親和性
    基を導入してなるポリカチオン性誘導体と、特定細胞に
    対して標的性を示す標的リガンドとを含むことを特徴と
    するグラフト共重合体。
  2. 【請求項2】 前記ポリカチオン性アミノ酸が、ポリリ
    ジン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリアルギニ
    ン、並びにリジン、ヒスチジン、オルニチン及びアルギ
    ニンのうちの少なくとも一つを含むアミノ酸共重合体か
    らなる群から選択されかつ数平均重合度が8〜100で
    あるアミノ酸であり、 前記生体膜親和性基が、炭素数が4〜18でありかつ不
    飽和数が0〜4である脂肪族炭化水素基、コレステロー
    ル誘導体、及びホスファチジルエタノールアミン誘導体
    からなる群から選択される基である、ことを特徴とする
    請求項1記載のグラフト共重合体。
  3. 【請求項3】 前記標的リガンドが、抗体、酵素、糖
    鎖、核酸、合成アミノ酸、ポリエチレングリコール、ポ
    リアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、生体由来多
    糖、及びそれらの修飾体からなる群から選択される少な
    くとも一つであることを特徴とする請求項1又は2記載
    のグラフト共重合体。
  4. 【請求項4】 前記グラフト共重合体の主鎖部分の数平
    均重合度が10〜100であり、該グラフト共重合体の
    側鎖部分の数が1〜50であることを特徴とする請求項
    1〜3のうちのいずれか一項記載のグラフト共重合体。
  5. 【請求項5】 前記ポリカチオン性アミノ酸がリジンオ
    リゴマーであり、前記生体膜親和性基が炭素数が4〜1
    8のアルキル基であり、かつ前記標的リガンドがガラク
    トース残基を有するポリスチレン誘導体であることを特
    徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項記載のグラ
    フト共重合体。
  6. 【請求項6】 下記一般式(I): 【化1】 [式中、Rは炭素数が4〜18のアルキル基であり、X
    1及びX2はそれぞれ水素原子であり、aは10〜200
    の整数であり、bは1〜100の整数であり、pは8〜
    100の整数である]で表わされることを特徴とする請
    求項1〜5のうちのいずれか一項記載のグラフト共重合
    体。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のうちのいずれか一項記載
    のグラフト共重合体と、DNA、RNA及び陰イオン性
    化合物からなる群から選択される薬物とを含むことを特
    徴とする薬剤。
  8. 【請求項8】 請求項1〜6のうちのいずれか一項記載
    のグラフト共重合体を用いて、DNA、RNA及び陰イ
    オン性化合物からなる群から選択される薬物を前記特定
    細胞に取り込ませることを特徴とする方法。
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