JPH1042580A - 圧電応用素子 - Google Patents

圧電応用素子

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JPH1042580A
JPH1042580A JP18724996A JP18724996A JPH1042580A JP H1042580 A JPH1042580 A JP H1042580A JP 18724996 A JP18724996 A JP 18724996A JP 18724996 A JP18724996 A JP 18724996A JP H1042580 A JPH1042580 A JP H1042580A
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JP
Japan
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elastic body
piezoelectric
layer
piezoelectric layer
oxide layer
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Application number
JP18724996A
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English (en)
Inventor
Etsuo Tamura
恵都夫 田村
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Nikon Corp
Original Assignee
Nikon Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶射により圧電素子を形成した超音波アクチ
ュエータでは、圧電素子のペロブスカイト化のために熱
処理を行うと、圧電素子と弾性体との間に酸化物層が生
成し、圧電効果が低下する。 【解決手段】 駆動信号により励振される圧電素子5が
溶射によって表面に形成された弾性体3を備える圧電応
用素子7であって、弾性体3と圧電素子5との間に、高
い電気伝導性を有する酸化ルテニウム層4が形成され
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気機械変換素子
が表面に形成された弾性体を備える圧電応用素子に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、振動アクチュエータ等のアクチュ
エータ,メカニカルフィルタさらにはジャイロ等の圧電
効果を利用した圧電応用素子を構成する弾性体の表面
に、例えば圧電素子や電歪素子といった圧電特性を有す
る電気機械変換素子を形成するには、電気機械変換素子
を、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる別
部品により薄板状に形成しておき、形成した電気機械変
換素子を弾性体の表面に例えば接着により装着してい
た。
【0003】しかし、このように電気機械変換素子を弾
性体の表面に装着する場合、接着時のハンドリングによ
り割れてしまうために、電気機械変換素子の厚さをある
所定値以下に小さくすることができない。そのため、前
述の圧電応用素子の出力を所望の値に確保するために
は、高い駆動電圧を印加する必要があった。このため、
周辺機器を含めた装置全体の小型化を図ることが極めて
難しかった。
【0004】そこで、例えば特開昭63−28279号
公報には、チタン酸ジルコン酸鉛からなる圧電素子を、
蒸着,スパッタリング等の薄膜形成技術により弾性体表
面に薄膜状に成膜した振動アクチュエータが提案されて
いる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、弾性体の表
面に薄膜形成技術により成膜された電気機械変換素子が
圧電特性を有するためには、圧電素子をチタン酸ジルコ
ン酸鉛により構成する場合には、チタン酸ジルコン酸鉛
の結晶構造をペロブスカイト型とする必要がある。
【0006】すなわち、薄膜形成技術により電気機械変
換素子を形成するには、通常は、高温域で薄膜を成膜す
るか、又は低温域で非晶質の薄膜を成膜した後に熱処理
を行う。この際、電気機械変換素子の成膜温度や熱処理
温度の高低によって、得られる結晶構造が著しく異な
る。
【0007】図14には、成膜温度又は熱処理温度の違
いに基づく結晶構造の違いをグラフで示す。同図に示す
ように、熱処理温度が(室温〜300℃)程度又は熱処
理しないままでは殆どが非晶質となり、成膜温度又は熱
処理温度が400℃程度になると主にパイロクロア型と
なり、成膜温度又は熱処理温度が500℃程度になると
パイロクロア型とペロブスカイト型の混在となり、さら
に、成膜温度又は熱処理温度が600℃以上になると主
にペロブスカイト型となる。
【0008】このように、成膜又は熱処理が高温域で行
われ結晶相が600℃以上の高温で形成された場合に
は、圧電特性を有するペロブスカイト相だけが生成す
る。しかし、熱処理が低温域で行われ結晶相の形成が6
00℃以上の高温でなされなかった場合には、ペロブス
カイト相とともに、圧電特性を全く有さないパイロクロ
ア相も生成してしまう。
【0009】そのため、薄膜形成技術によって形成され
た電気機械変換素子が圧電性を有するためには、圧電体
層の形成を、例えば600℃以上の高温域で行うか、又
は、低温で成膜された薄膜層に600℃以上の高温域で
熱処理を行うことが必要となる。
【0010】また、現在実用化されている圧電体の殆ど
のものが、印加電界当たりの変位量が大きいために、P
ZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表されるような鉛系
の酸化物材料である。このチタン酸ジルコン酸鉛は、陽
イオンの半分近くが還元され易い鉛イオンである。その
ため、高温で成膜する場合にも熱処理をする場合にも、
充分に酸素のある雰囲気で行わなくてはならない。
【0011】ところで、圧電体を圧電応用素子に利用す
るためには、圧電体の両面、すなわち圧電体の弾性体側
及び反対側の表面に電極を配置する必要がある。圧電体
の弾性体側の表面に配置される電極(以下、この電極を
「下部電極」といい、他方の電極を「上部電極」とい
う。)を形成するには、一般的には、 弾性体が導電性を有する場合には、弾性体を下部電極
とすること 弾性体と圧電体層との間に電極層を形成し、下部電極
とすること が行われる。
【0012】しかし、下部電極である弾性体や電極に、
鉄,アルミニウム合金,ステンレス鋼等の金属材料を用
いると、圧電特性を有するペロブスカイト型結晶を形成
するために行われる高温域での圧電体層形成や熱処理に
より、下部電極の表面に、圧電体層よりも低誘電率であ
る酸化物層(絶縁層)が形成されてしまう。
【0013】このような圧電体層は、見かけ上、上部電
極及び下部電極の間に、高誘電率の圧電体層と低誘電率
の酸化物層とが直列に配列された形となる。そのため、
実質上、圧電体層には上部電極及び下部電極の間にかけ
られる電圧の一部しか印加されない。すなわち、圧電体
層に実質的に印加される電圧は、下記式により算出さ
れる。
【0014】 V1 =ε2 ・Vd1 /(ε1 ・d2 +ε2 ・d1 ) ・・・・・・・ ただし、V1 :圧電体層に実質的に印加される電圧 V :外部から上部電極及び下部電極間に印加される全
電圧 ε1 :圧電体層の比誘電率 ε2 :酸化物層の比誘電率 d1 :圧電体層の厚さ d2 :酸化物層の厚さ である。
【0015】ここで、圧電体層の比誘電率ε1 を100
0とし、酸化物層の比誘電率ε2 を10とするととも
に、酸化物層の厚さd2 が圧電体層の厚さd1 の1%で
あるとすると、圧電体層に実質的に印加される電圧V2
は上部電極及び下部電極の間に印加している電圧Vの半
分に低下してしまう。したがって、形成された圧電体層
が化学組成的にも結晶構造的にも完全であっても、酸化
物層が存在することにより、圧電体層が本来有する圧電
特性の一部しか取り出すことができない。
【0016】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、駆動
信号により励振される電気機械変換素子が溶射によって
表面に形成された弾性体を備える圧電応用素子であっ
て、弾性体と電気機械変換素子との間に、高い電気伝導
性を有する酸化物層が形成されることを特徴とする。
【0017】請求項2の発明は、請求項1に記載された
圧電応用素子において、酸化物層が、酸化ルテニウムか
らなることを特徴とする。
【0018】請求項3の発明は、請求項1又は請求項2
に記載された圧電応用素子において、電気機械変換素子
が、溶射により形成された後に熱処理されてなることを
特徴とする。
【0019】請求項4の発明は、請求項1から請求項3
までのいずれか1項に記載された圧電応用素子におい
て、電気機械変換素子の両面又は片面に、電気エネルギ
ーの入力又は出力のための電極が形成されることを特徴
とする。
【0020】請求項5の発明は、請求項4に記載された
圧電応用素子において、酸化物層が、電気機械変換素子
と弾性体との間に配置される電極をなすことを特徴とす
る。
【0021】請求項6の発明は、請求項1から請求項5
までのいずれか1項に記載された圧電応用素子におい
て、電気機械変換素子が、鉛系強誘電材料からなる圧電
材料又は電歪材料であることを特徴とする。
【0022】本発明において、「圧電応用素子」とは、
圧電効果を利用した素子全般を意味しており、例えばア
クチュエータやセンサー等を例示することができる。
【0023】本発明における「電気機械変換素子」と
は、電気エネルギーを機械的変位に変換することができ
る素子を意味し、圧電素子や電歪素子等を包含する。
【0024】また、請求項1の本発明における「高い電
気伝導性を有する酸化物層」とは、電気伝導度が102
(1/Ωcm)以上、又は抵抗率が10-2(Ωcm)以
下の特性を有する酸化物層を意味する。具体的には、T
iO,VO,V2 3 ,ReO2 ,ReO3 ,SrFe
3 ,CrO2 ,MoO2 ,WO2 ,RuO2 ,OsO
2 ,SnO2-X (ネサ膜),ITO等が包含される。
【0025】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)以下、本発明にかかる圧電応用素子の
実施形態を、添付図面を参照しながらさらに詳細に説明
する。
【0026】図1は、本発明にかかる圧電応用素子を、
振動アクチュエータの一例である超音波アクチュエータ
7に適用した第1実施形態を示す分解斜視図であり、図
2は、図1に示す超音波アクチュエータ7の構成要素で
ある、白金上部電極6が形成された弾性体3を示す平面
図である。
【0027】図1に示すように、第1実施形態の超音波
アクチュエータ7は、円環状の弾性体3と、弾性体3の
一方の端面に加圧接触する相対運動部材である円環状の
移動子1とにより構成される。
【0028】弾性体3の一方の平面には、その円周方向
に多数の溝部3bが連設され、この溝部3bによって区
切られることにより多数の突起部3aが連続して形成さ
れる。これらの突起部3aは、弾性体3の端面に発生す
る進行波の振幅を増幅するとともに、移動子1との接触
により発生した摩耗粉を溝部3b内に落下させることに
より、接触部に残存させないために、形成される。
【0029】本実施形態では、弾性体3はニッケル合金
を用いて、鋳造を行ってさらに必要に応じて機械加工を
施すことにより、構成される。弾性体3の他方の平面に
は、図2に示すように、弾性体3に圧電体層5を形成す
るための酸化ルテニウム層4がスパッタリングにより成
膜される。本実施形態では、この酸化ルテニウム層4
は、下部電極としても機能する。
【0030】酸化ルテニウム層4の表面には圧電体層5
が形成される。この圧電体層5は、後述するように、弾
性体3の表面に溶射により形成される。一方、移動子1
の弾性体3との接触面側の平面には、環状の摺動材2が
貼付されて装着される。この摺動材2を介して、移動子
1は図示しない加圧機構により弾性体3に加圧接触され
る。
【0031】溶射によって形成されたチタン酸ジルコン
酸鉛(PZT)の圧電体層5の表面には、円周方向に多
数連続して形成された略矩形の平面形状の白金上部電極
6が配置される。
【0032】酸化ルテニウム層4のスパッタリング条件
は、基板温度:300℃,RFパワー:3W/cm2 ,スパ
ッタガス:Ar/O2=90/10 ,1Paである。次に、酸化ル
テニウム層4への圧電体層5の溶射による形成の方法に
ついて説明する。
【0033】仮焼,粉砕及び造粒により、二次粒子の粒
径を5〜40μmに調整した、Pb,Zr,Tiのモル
比が1:0.52:0.48のチタン酸ジルコン酸鉛
(PZT)に、溶射の際の鉛の揮発分を考慮して過剰の
Pbを酸化物(PbO)の形で添加した混合物を、原料
粉末として用いた。
【0034】この原料粉末を用いてプラズマ溶射装置に
より、酸化ルテニウム層4の表面に100μmの厚さで
PZTからなる圧電体層5を成膜した。プラズマジェッ
トの作動ガスとしては、アルゴン,(アルゴン及び水素
の混合ガス)、又は(アルゴン及びヘリウムの混合ガ
ス)を用いた。
【0035】本実施形態では、弾性体3の表面に対する
原料粉末の付着効率を上げるため、溶射時には、抵抗体
ヒータを用いて弾性体3の表面温度を300〜650℃
の範囲にコントロールした。
【0036】さらに、溶射後に、圧電体層5の溶射によ
る形成に伴う弾性体3の変形を修正するため、弾性体3
に対して研削加工及び研磨加工を施した。さらに、この
後、形成した圧電体層5を完全なペロブスカイト層にす
るとともに弾性体3の加工歪みを取り去るため、650
℃に5時間加熱保持する熱処理を行った。
【0037】このようにして、弾性体3の表面に圧電体
層5を形成し、この圧電体層5の表面に白金上部電極6
を成膜した。本実施形態では、白金上部電極6はスパッ
タリングにより成膜した。
【0038】この白金上部電極6は、スパッタリング時
にマスキングを行うことにより、図2に示すように、弾
性体3の円周方向について約20°ピッチで多数連設さ
れて形成される。
【0039】このようにして形成された白金上部電極6
に対し、リード線を接続する配線用銅箔を接合するため
に、白金上部電極6と銅箔(図示しない。)との間には
んだ箔を挟み、加圧した状態で高周波炉中で400℃に
加熱保持することにより、白金上部電極6と銅箔とを接
合した。
【0040】その後に、白金上部電極6に、図2に示す
ように隣接する電極同士で符号が逆向きになるように駆
動電圧を印加することにより、圧電体層5の分極処理を
行った。分極処理の条件は、150℃,300Vで大気
中において1時間行った。
【0041】このようにして、第1実施形態の超音波ア
クチュエータ7は、構成される。ここで、形成された圧
電体層5のキューリ温度Tcは約240℃であった。こ
の超音波アクチュエータ7の圧電体層5に、入力A相と
入力B相との間で(π/2)の位相差を設けて実効電圧
で±5Vの交流電界を印加したところ、弾性体3の表面
に形成された突起部3aの先端に進行波が発生し、弾性
体3に加圧接触されている移動子1が回転駆動されるこ
とが確認された。
【0042】したがって、本実施形態によれば、溶射に
より形成された圧電体層5が充分な圧電特性を発揮して
いることがわかる。このように、本実施形態では、弾性
体3と圧電体層5との間に、高い電気伝導性を有する酸
化ルテニウム層4を形成するため、高温での層形成や熱
処理を行っても下部電極である酸化ルテニウム層4の表
面に低誘電率の絶縁層が生成せず、圧電体層5の能力を
十分に確保することが可能である。
【0043】なお、溶射法によれば、ステンレス鋼等の
金属材料の表面にセラミックスを直接形成することが可
能である。そのため、Al2 3 ,ZrO2 といった高
温用材料等への応用例がある。しかし、圧電性セラミッ
クスを金属表面に直接形成することによる圧電応用素子
への適用例はこれまで存在しない。
【0044】(第2実施形態)図3は、本発明の第2実
施形態の超音波アクチュエータ105を示す斜視図であ
る。
【0045】本実施形態にかかる超音波アクチュエータ
105は、ニッケルからなる矩形平板状の弾性体101
の平面に、スパッタリングにより成膜した酸化ルテニウ
ム層102を挟んで、PZTからなる圧電体層103を
溶射により成膜し、圧電体層103に駆動電圧を印加す
ることにより弾性体101を励振し、弾性体101に縦
振動1次モードと屈曲振動4次モードとを調和的に発生
させることにより、弾性体101に加圧接触する移動子
(図示しない)との間で相対運動を発生させるものであ
る。
【0046】酸化ルテニウム層102の形成のためのス
パッタリング条件,及び圧電体層103形成のための溶
射条件は、第1実施形態と同じである。本実施形態の超
音波アクチュエータ105では、圧電体層103の形成
に伴って弾性体101に発生する縦振動1次モードと屈
曲振動4次モードとの関係にずれが生じる。そこで、本
実施形態では、縦振動及び屈曲振動それぞれの周波数を
一致させるために、圧電体層103を形成した後に、弾
性体101に加工を行った。
【0047】さらに、この加工による加工歪みを除去す
るとともに圧電体層103の完全なペロブスカイト化を
図るため、第1実施形態と同様に、650℃に5時間加
熱保持する熱処理を行った。
【0048】また、このようにして溶射により成膜した
圧電体層103の表面には、白金上部電極104a,1
04bがスパッタリングにより成膜される。白金上部電
極104a,104bは、スパッタリングの際のマスキ
ングにより2分割されて、成膜される。
【0049】このようにして成膜された白金上部電極1
04a,104bに対し、配線用の銅箔を接合するため
に、白金上部電極104a,104bと銅箔との間には
んだ箔を挟み、加圧した状態でリフロー式はんだ付け炉
中において400℃に加熱保持した。
【0050】なお、弾性体101の他方の平面であって
発生する屈曲振動4次モードの腹位置の2ヵ所には、弾
性体101の幅方向に突起状に駆動力取出部101a,
101bが形成されており、図示しない移動子はこの駆
動力取出部101a,101bの先端面を介して弾性体
101に加圧接触する。
【0051】このように構成された本実施形態の超音波
アクチュエータ105に対し、白金上部電極104aに
交流電圧A相を、白金上部電極104bにA相と位相が
90°異なる交流電圧B相を、それぞれ実効電圧で±5
V印加したところ、弾性体101の駆動力取出部101
a,101bの先端面に楕円運動が発生し、駆動力取出
部101a,101bの先端部を介して加圧接触する移
動子との間で相対運動が発生することが確認された。
【0052】このことから、本実施形態によれば、溶射
により形成された圧電体層103が充分に圧電特性を奏
することがわかる。
【0053】(第3実施形態)図4は、第3実施形態の
超音波アクチュエータ205の構成を示す斜視図であ
る。
【0054】本実施形態は、基本的な構成は、第2実施
形態の超音波アクチュエータ105と同一であり、本実
施形態では第1実施形態において100番代を付した図
中符号を200番代に置換することにより、それらに関
する説明は省略する。
【0055】第2実施形態の超音波アクチュエータ10
5との相違点は、高温の環境下での使用に対応するた
め、圧電体層203の構成材料として、キューリ温度T
cが490℃であって高温環境下においても分極処理の
劣化が起こり難いチタン酸鉛(PT)を用いた点であ
る。
【0056】したがって、以下、PTからなる圧電体層
203の溶射による形成方法について説明する。仮焼,
粉砕及び造粒によって二次粒子の粒径を5〜40μmに
調整した、Pb,Tiのモル比が1:1のチタン酸鉛
(PT)に、溶射によるPbの揮発を考慮して過剰のP
bを酸化物(PbO)の形で添加した混合物を原料粉末
とした。
【0057】弾性体201の表面に、第2実施形態と同
様に、酸化ルテニウム層202を下部電極として形成し
た。この酸化ルテニウム層202の表面に、前述した原
料粉末を用いてプラズマ溶射装置により、100μmの
厚さでPTからなる圧電体層203を形成した。プラズ
マジェットガスの作動ガスとしては、アルゴン,(アル
ゴン及び水素の混合ガス)又は(アルゴン及びヘリウム
の混合ガス)を用いた。
【0058】また、弾性体201に対する原料粉末の付
着効率を上げるため、抵抗体ヒータを用いて溶射時の弾
性体201の表面温度を300〜650℃の範囲にコン
トロールした。
【0059】この後、本実施形態においても、PTから
なる圧電体層203の形成に伴って弾性体201の縦振
動1次モードと屈曲振動4次モードとの関係にずれが生
じるため、縦振動及び屈曲振動それぞれの周波数を一致
させるために、PTからなる圧電体層203の形成後に
弾性体201の加工を行った。
【0060】さらに、この加工による加工歪みを除去す
るとともに、PTからなる圧電体層203の完全なペロ
ブスカイト化を図るため、第1実施形態と同様に、65
0℃に5時間加熱保持する熱処理を行った。
【0061】このようにして形成した圧電体層203に
対して、配線用の銅箔を接合するために、白金上部電極
204a,204bと銅箔との間にはんだ箔を挟み、加
圧した状態でリフロー式はんだ付け炉中で、400℃に
加熱保持する熱処理を行った。
【0062】なお、圧電体層203のポーリング(分極
処理)は、200℃,450Vで大気中で1時間行っ
た。この超音波アクチュエータ205においても、白金
上部電極204aに交流電圧A相を印加するとともに、
白金上部電極204bに交流電圧A相と位相が90°異
なる交流電圧B相を、実効電圧で±10Vそれぞれ印加
したところ、弾性体201の駆動力取出部201a,2
01bの先端面を介して加圧接触する移動子との間で相
対運動が発生することが確認された。
【0063】このことから、本実施形態の超音波アクチ
ュエータ205は、充分な圧電特性を有することがわか
る。
【0064】(第4実施形態)図5は、第4実施形態の
超音波アクチュエータ307の説明図であって、図5
(a)は斜視図,図5(b)は図5(a)におけるA−
A断面図,図5(c)は図5(a)におけるB−B断面
図である。
【0065】本実施形態の超音波アクチュエータ307
は、円柱状の弾性体301の両端(一端でもよい。)
を、弾性体301の表面に溶射により形成した圧電素子
302,303により二次元的に加振することにより、
振動面が回転しながら進行する進行性振動波を弾性体3
01上に発生させ、これにより弾性体301に加圧接触
する移動子306に直進運動及び回転運動の両方を同時
に発生させる。
【0066】本実施形態の超音波アクチュエータ307
では、弾性体301の両端において、第1実施形態〜第
3実施形態と同様に、酸化ルテニウム層302a,30
3aを形成し、形成した酸化ルテニウム層302a,3
03aの表面に、溶射により圧電体層302,303を
円筒状に形成し、励振を行う。
【0067】本実施形態の超音波アクチュエータ307
は、円筒状の弾性体301の両端側の外周面に溶射によ
り圧電体層302及び303が成膜される。さらに、こ
れらの圧電体層302及び303は、それぞれ直方体型
の固定子304及び305によって保持される。さら
に、弾性体301には、中空円柱状の移動子306の内
周面が加圧された状態で接触する。
【0068】本実施形態では、円筒状の弾性体301は
ニッケル合金からなる。圧電体層302及び303は、
円筒形のニッケル弾性体301の両端部側301a,3
01bに、溶射によって形成される。
【0069】圧電体層302,303の表面には、弾性
体301の円周方向に4分割された上部銀電極302c
1,302c2,302c3,302c4及び303c
1,303c2,303c3,303c4が形成され
る。
【0070】圧電体層302及び303の溶射による形
成条件は、第1実施形態と同様である。また、上部銀電
極302c1〜302c4及び303c1〜303c4
の形成は、スクリーン印刷により行った。上部銀電極3
02c1〜302c4及び303c1〜303c4への
配線処理は、はんだ付けにより行った。さらに、圧電体
層302及び303の分極処理は、150℃,300V
の条件で大気中で1時間行った。
【0071】このように構成された超音波アクチュエー
タ307において、一方の圧電素子302の上部銀電極
302c1〜302c4に、この順番で隣り合う上部銀
電極間の位相差が(π/2)になるように、それぞれ実
効電圧で±5Vの交流電界を印加したところ、圧電素子
302は首振り運動を行うことが確認された。
【0072】このような首振り運動であって、かつ圧電
素子302に発生する首振り運動に対して(π/2)の
位相差を有する首振り運動を、圧電素子304に発生さ
せたところ、棒状の弾性体301に振動面を回転させな
がら進行する進行性振動波が発生し、これにより移動子
306が回転しながら弾性体301の軸方向に直進する
ことが確認された。
【0073】さらに、圧電素子302のみにより弾性体
301を励振し、圧電素子303により進行波を吸収す
るようにしたところ、前述した場合と同様に、移動子3
06は回転せずに弾性体軸方向への直進運動のみを行う
ことが確認された。
【0074】(第5実施形態)図6は、第5実施形態の
超音波アクチュエータ403を示す説明図であって、図
6(a)及び図6(b)は、いずれも、超音波アクチュ
エータ403の分解斜視図である。
【0075】本実施形態にかかる超音波アクチュエータ
403は、円環状の弾性体401の面内屈曲振動のうち
の非軸対称屈曲振動を行い、内周にテーパ状の変径部を
有する円環型の振動子401と,振動子401の変径部
を介して加圧接触する回転子402とを備える。
【0076】ここで、振動子401は、ニッケル合金か
らなる円環型の弾性体401aの両面に、前述した第1
実施形態〜第4実施形態と同様に形成された酸化ルテニ
ウム層401b,401eと、酸化ルテニウム層401
b,401eそれぞれの表面に溶射により形成されたP
ZTからなる圧電体層401c,401fと、さらにそ
のそれぞれの表面にスパッタリングにより円周方向に4
分割された状態で形成された白金上部電極401d1,
401d2,401d3,401d4及び401g1,
401g2,401g3,401g4とから構成され
る。なお、圧電体層401c,401fの形成条件は、
第1実施形態と同様である。
【0077】このようにして形成された白金上部電極4
01d1〜401d4,401f1〜401f4に対
し、配線用の銅箔(図示しない。)を接合するため、白
金上部電極401d1〜401d4,401f1〜40
1f4と銅箔との間にはんだ箔を挟み、加圧した状態で
高周波炉中で400℃に加熱保持した。
【0078】その後に、白金上部電極401d1〜40
1d4,401f1〜401f4に、図2に示す白金上
部電極と同様に、隣接するもの同士で符号が逆向きにな
るように電圧を印加することにより、白金上部電極40
1d1〜401d4,401f1〜401f4の分極処
理を行った。分極処理の条件は、150℃で300Vで
大気中において1時間行った。
【0079】ここで、白金上部電極401d1〜401
d4,401g1〜401g4の2グループの電極群
に、この順番で隣り合う電極間の位相差が(π/2)に
なるように実効電圧で±5Vの交流電界を印加した。す
ると、振動子401の内周面及び外周面に面内方向に振
動面を有する進行性振動波が発生し、内周面に接触する
回転子402が回転運動を行うことが確認された。
【0080】(第6実施形態)図7は、第6実施形態の
ユニモルフ型アクチュエータ506を示す斜視図であ
る。
【0081】このユニモルフ型アクチュエータ506
は、圧電体層503の電界印加方向に関する垂直方向の
変位を利用する。ユニモルフ型アクチュエータ506
は、ステンレス鋼(SUS304)からなる弾性体50
1と、第1実施形態〜第5実施形態と同様に弾性体50
1の表面に形成された酸化ルテニウム層502と、酸化
ルテニウム層502の表面に溶射により形成されたPZ
Tからなる圧電体層503と、圧電体層503の表面に
スパッタリングにより形成された白金上部電極504
と、弾性体501を支持する支持体505とにより構成
される。圧電体層503の形成条件は、第1実施形態と
同様である。
【0082】スパッタリングにより形成された白金上部
電極504に対し、配線用の銅箔を接合するため、白金
上部電極504と銅箔との間にはんだ箔を挟み、加圧し
た状態でリフロー式はんだ付け炉中で400℃に加熱し
た。圧電体層503のポーリングは、第1実施形態と同
様に、150℃,300Vの条件で大気中で1時間行っ
た。
【0083】このように構成された本実施形態のユニモ
ルフ型アクチュエータ506において、白金上部電極5
04と下部電極である酸化ルテニウム層502との間
に、駆動電圧を印加したところ、圧電体層503の面方
向に関して発生する変位により、弾性体501の板状の
部分が上下方向に変位することが確認された。
【0084】(第7実施形態)図8は、第7実施形態の
ユニモルフ型メカニカルフィルタ用振動子606を示す
斜視図である。
【0085】本実施形態のユニモルフ型メカニカルフィ
ルタ用振動子606は、圧電体層603の電界印加方向
に垂直な方向に関する変位を利用する。ユニモルフ型メ
カニカルフィルタ用振動子606は、クロム合金からな
る弾性体601と、第1実施形態〜第6実施形態と同様
に、弾性体601の表面に形成された酸化ルテニウム層
602と、酸化ルテニウム層602の表面に溶射により
形成されたPZTからなる圧電体層603と、圧電体層
603の表面にスパッタリングにより形成された白金上
部電極604a,604bとにより構成される。
【0086】圧電体層603の形成条件は、第1実施形
態と同様である。また、白金上部電極604a,604
bに対して、配線用の銅箔を接合するため、白金上部電
極604a,604bと銅箔との間にはんだ箔を挟み、
加圧した状態でリフロー式はんだ付け炉中で400℃に
加熱した。圧電体層603のポーリングは、第1実施形
態と同様に、150℃,300Vで大気中で1時間行っ
た。
【0087】ここで、白金上部電極604a,604b
と下部電極である酸化ルテニウム層602との間に交流
電界を印加したところ、圧電体層603の面方向に関す
る変位により、弾性体601の板状の部分に片持ち梁の
共振が励振された。
【0088】さらに、この片持ち梁の共振振動により圧
電体層603の表面に誘起電荷が発生することを利用し
て、白金上部電極604bと酸化ルテニウム層602と
から発生信号を検出したところ、信号は片持ち梁の共振
周波数に等しい周波数の正弦波であった。
【0089】このことから、本実施形態における振動子
606は、入力信号からある一定の周波数の出力信号の
みを取り出すための周波数フィルタとして機能すること
が確認された。
【0090】(第8実施形態)図9は、第8実施形態の
振動角速度計705を示す斜視図である。図9に示す振
動角速度計705では、ニッケル−クロム合金からなる
直方体振動子701の一つの側面に、第1実施形態〜第
7実施形態と同様に酸化ルテニウム層702を形成す
る。この酸化ルテニウム層702の表面に、プラズマ溶
射により、PZTからなる圧電体層703を形成する。
【0091】酸化ルテニウム層702をグランド電極と
して用い、PZTからなる圧電体層703上に、スパッ
タリング法により、振動子701の軸方向に3分割され
た電極704を形成する。
【0092】中央の電極704bは駆動用電極であり、
両側の電極704a,704bは検出用電極である。振
動子701の軸方向に垂直な断面は、駆動方向とコリオ
リ力方向との共振周波数を一致させるため、略正方形と
してある。圧電体層703の形成条件は、第1実施形態
と同様である。また、電極704a〜704cに対し、
配線用の銅箔を接合するため、電極704a〜704c
と銅箔との間にはんだ箔を挟み、加圧した状態でリフロ
ー式はんだ付け炉中で400℃に加熱した。圧電体層7
03のポーリングは、第1実施形態と同様に150℃,
300Vで大気中で1時間行った。
【0093】図10(a)〜図10(c)は、いずれ
も、図9に示した圧電振動角速度計706の動作原理を
示す説明図である。図10(a)に示すように、駆動用
電極704bに振動子701の共振周波数に近い交流電
圧を印加すると、振動子701は無拘束条件で振動し、
振動の節点705を境に振動子701の中央部と端部と
は、反対の向きに速度を有する。
【0094】図10(b)に示すように、この時、振動
子701の軸回りに回転が発生すると、発生する速度の
方向が反対であるため、振動の節点を境に反対の向きに
コリオリ力が発生する。
【0095】図10(c)に示すように、発生するコリ
オリ力により、振動子701は電極面内方向において屈
曲する。外側に配置された二つの検出用電極704a,
704cには、駆動振動(図10(a)参照)に起因す
る圧電信号と、コリオリ力による変形(図10(c)参
照)に起因する圧電信号とが同時に発生する。
【0096】このうち、コリオリ力に起因する圧電信号
は、二つの電極704a,704c間で略位相が反対と
なる。これは、例えば図10(c)に示す変形状態で
は、電極704a側には圧縮応力が作用するとともに電
極704c側には引張応力が作用することになり、二つ
の電極704a,704cの間では反対向きの応力が作
用する。
【0097】一方、起動に起因した圧電信号は、両電極
704a,704c間で略同じであるため、両電極70
4a,704cから差動信号をとれば、略コリオリ力に
起因する圧電信号だけを取り出すことができる。
【0098】本実施形態では、振動子701の断面を正
方形とするとともにコリオリ力方向及び駆動方向それぞ
れの共振周波数を一致させてあるため、検出用電極70
4a,704cからの出力を帰還することにより、簡単
な発振回路で振動子701を共振周波数付近で駆動する
ことができ、したがってコリオリ力に基づく振動も共振
状態となり、検出感度が向上する。
【0099】このように、二方向の共振周波数を合わせ
るためには、振動子701の形状精度に対する要求は極
めて高い。したがって、第2実施形態及び第3実施形態
と同様に、本実施形態においても、圧電体層形成後に共
振合わせのための加工を行い、さらに、この加工による
加工歪みを取るための熱処理を650℃で行った。
【0100】なお、本実施形態における振動子701で
は、必ずしも、駆動方向及びコリオリ力方向それぞれの
共振周波数が一致している必要はない。例えば、駆動に
は共振状態でなくとも大きな変位が得られるユニモルフ
振動を用い、振動検出だけにコリオリ力方向の共振を用
いることも可能である。
【0101】このためには、コリオリ力方向の共振周波
数によって、振動子701をユニモルフ駆動させればよ
い。このような振動子701を用いれば、共振合わせ加
工の工程を省略することが可能となる。
【0102】図11は、図9に示す振動子701の無拘
束条件を実現するための振動子701の支持形態の一例
を示すものである。振動の節点に相当する位置で、シリ
コーン系接着剤を使用して支持台706に固定してあ
る。また、簡便な方法として、振動子701全体を比較
的弾性定数の低い接着剤に埋め込んで固定することも可
能である。
【0103】(第9実施形態)図12は、第9実施形態
の超音波アクチュエータ805を示す斜視図である。
【0104】本実施形態の超音波アクチュエータ805
は、第2実施形態と同様に、圧電体803により弾性体
801を励振し弾性体801の縦振動1次モードと屈曲
振動4次モードとを調和的に発生させることにより、弾
性体801に加圧接触する移動子(図示しない。)を駆
動する。
【0105】本実施形態の超音波アクチュエータ805
では、第2実施形態と同様に、圧電体803により弾性
体801を励振し弾性体801の縦振動1次モードと屈
曲振動4次モードとを調和的に発生させることにより、
弾性体801に加圧接触する移動子(図示しない。)を
駆動するものである。
【0106】本実施形態の超音波アクチュエータ805
では、弾性体801はステンレス鋼(SUS304)か
らなるとともに、第1実施形態〜第8実施形態と同様に
酸化ルテニウムからなる下部電極802が形成される。
下部電極802の表面には、ガスフレーム溶射法によ
り、PZTからなる圧電体層803の形成を行った。圧
電体層803の表面には、白金上部電極804a,80
4bが形成される。
【0107】ガスフレーム溶射法による圧電体層803
の溶射条件は以下の通りである。仮焼,粉砕及び造粒に
より、二次粒子の粒径を5〜40μmに調整した、Pb
とZrとTiのモル比が1:0.52:0.48のチタ
ン酸ジルコン酸鉛(PZT)に、溶射の際のPb揮発分
を考慮して、過剰のPbを酸化物(PbO)の形で添加
したものを原料粉末とした。
【0108】この原料粉末を用いてガスフレーム溶射装
置により、酸化ルテニウム層802を形成した弾性体8
01の表面に、100μmの厚さで成膜した。ガスフレ
ーム溶射の燃料ガスとしては、本実施形態では、アセチ
レンガス(プロパンガスでもよい。)を用いた。
【0109】また、弾性体801に対する原料粉末の付
着効率を上げるため、抵抗体ヒータを用いて弾性体80
1の表面温度を300〜650℃の範囲にコントロール
した。
【0110】本実施形態においても、第2実施形態及び
第3実施形態と同様に、圧電体層803のガスフレーム
溶射による形成に伴って、弾性体801の縦振動1次モ
ードと屈曲振動4次モードとの関係にずれが生じるた
め、両モードの周波数を一致させるため、圧電体層80
3の形成後に弾性体801の加工を行った。
【0111】また、この加工による加工歪みを除去する
とともに圧電体層803の完全なペロブスカイト化を図
るため、第1実施形態と同様に、650℃で5時間の熱
処理を行った。
【0112】さらに、圧電体層803の表面における白
金上部電極は、スパッタリングにより白金上部電極80
4a,804bに2分割されて成膜される。このように
して形成された白金上部電極804a,804bに対し
て配線用の銅箔を接合するために、白金上部電極804
a,804bと銅箔との間にはんだ箔を挟み、加圧した
状態でリフロー式はんだ付け炉中で400℃の処理を行
った。
【0113】このように構成された超音波アクチュエー
タ805において、電極804aに交流電圧A相を、電
極804bにA相と位相が90°異なる交流電圧B相
を、それぞれ実効電圧で±5V印加したところ、弾性体
801に突起状に形成された駆動力取出部801a,8
01bの先端に楕円運動が発生し、駆動力取出部801
a,801bを介して加圧接触する相対運動部材である
移動子(図示しない。)が駆動されることが確認され
た。
【0114】(第10実施形態)図13は、第10実施
形態の超音波アクチュエータ905を示す斜視図であ
る。
【0115】図13に示す超音波アクチュエータ905
は、溶射により形成された圧電体層903によりステン
レス鋼(SUS304)からなる弾性体901を励振
し、弾性体901の縦振動1次モードと屈曲振動4次モ
ードとを調和的に発生させて、弾性体901に加圧接触
する移動子(図示しない。)を駆動するものである。
【0116】本実施形態では、圧電体層903としてチ
タン酸バリウム(BaTiO3 )系の圧電組成を用い
た。チタン酸バリウムは、構成元素であるバリウム及び
チタンがともに高融点であるとともに蒸気圧も接近して
いる。そのため、PZTにおけるPb成分のような一成
分の揮発による組成ずれの心配が少なく、組成のコント
ロールが比較的容易であって溶射条件を決定し易いとい
う特徴がある。本実施形態では、室温付近に存在するチ
タン酸バリウムの第2変態点を下げるため、バリウムを
10重量%程度カルシウムに置換した組成を用いた。
【0117】弾性体901の表面には、第1実施形態〜
第9実施形態と同様に、下部電極として酸化ルテニウム
層902が形成されており、この酸化ルテニウム層90
2の表面にはチタン酸バリウム系圧電体層903が形成
されており、さらにその表面には白金上部電極904
a,904bがスパッタリングにより2分割されて成膜
される。
【0118】本実施形態においても、第1実施形態と同
様に、圧電体層903はプラズマ溶射により形成され
る。チタン酸バリウムからなる圧電体層903の溶射に
よる形成の方法について述べる。
【0119】仮焼,粉砕及び造粒により、二次粒子の粒
径を5〜40μmに調整した、BaとCaとTiのモル
比が0.9:0.1:1のチタン酸バリウム系組成を原
料粉末とした。
【0120】この原料粉末を用いてプラズマ溶射装置に
より、弾性体901の表面に100μmの厚さでチタン
酸バリウム系圧電体層903を形成した。溶射の際のプ
ラズマジェットガスの作動ガスとしては、アルゴン,
(アルゴン+水素)の混合ガス、又は(アルゴン+ヘリ
ウム)の混合ガスを用いた。
【0121】また、弾性体901に対する粉末の付着効
率を上げるため、抵抗体ヒータを用いて弾性体901の
表面温度を、300〜650℃の範囲にコントロールし
た。本実施形態においても、圧電体層903の形成に伴
って弾性体901の縦振動1次モードと屈曲振動4次モ
ードとの関係にずれが生じるため、両モードの周波数を
一致させるように、圧電体903の形成後に弾性体90
1の加工を行った。
【0122】さらに、この加工による加工歪みを除去す
るとともに圧電体層903の結晶化度を増加させるた
め、第1実施形態と同様に、650℃に5時間加熱保持
する熱処理を行った。
【0123】また、白金上部電極904a,904bに
対して、配線用の銅箔を接合するために、白金上部電極
904a,904bと銅箔との間にはんだ箔を挟み、加
圧した状態でリフロー式はんだ付け炉中で400℃に加
熱する処理を行った。さらに、圧電体層903に対する
ポーリングは、200℃,450Vで大気中で1時間行
った。
【0124】本実施形態の超音波アクチュエータ905
においても、電極904aに交流電圧A相を、また電極
904bにA相と位相が90°異なる交流電圧B相を、
それぞれ実効電圧で±10V印加したところ、弾性体9
01に突起状に形成された駆動力取出部901a,90
1bの先端に楕円運動が発生し、駆動力取出部901
a,901bを介して加圧接触する移動子(図示しな
い。)との間で相対運動を発生することが確認された。
【0125】なお、溶射ガスパワーと成膜時の加熱によ
る弾性体表面温度との組み合わせのうちの幾つかのもの
は、成膜後の熱処理を行う前に、ペロブスカイト相の生
成が十分に行われ、熱処理を行わなくとも所望の圧電性
能を確保することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる圧電応用素子を、振動アクチュ
エータの一例である超音波アクチュエータに適用した第
1実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】第1実施形態の超音波アクチュエータの構成要
素である、上部電極が形成された弾性体を示す平面図で
ある。
【図3】第2実施形態の超音波アクチュエータの構成を
示す斜視図である。
【図4】第3実施形態の超音波アクチュエータの構成を
示す斜視図である。
【図5】第4実施形態の超音波アクチュエータの説明図
であって、図5(a)は斜視図,図5(b)は図5
(a)におけるA−A断面図,図5(c)は図5(a)
におけるB−B断面図である。
【図6】第5実施形態の超音波アクチュエータの構成を
示す説明図であって、図6(a)及び図6(b)は、い
ずれも、超音波アクチュエータの分解斜視図である。
【図7】第6実施形態のユニモルフ型アクチュエータの
構成を示す斜視図である。
【図8】第7実施形態のユニモルフ型アクチュエータ用
振動子の構成を示す斜視図である。
【図9】第8実施形態の振動角速度計の構成を示す斜視
図である。
【図10】図10(a)〜図10(c)は、いずれも、
第8実施形態の圧電振動角速度計の動作原理を示す説明
図である。
【図11】第8実施形態で用いる振動子の無拘束条件を
実現するための振動子の支持形態の一例を示す説明図で
ある。
【図12】第9実施形態の超音波アクチュエータの構成
を示す斜視図である。
【図13】第10実施形態の超音波アクチュエータの構
成を示す分解斜視図である。
【図14】成膜温度又は熱処理温度の違いに基づく結晶
構造の違いを示すグラフである。
【符号の説明】
1 移動子 2 摺動材 3 弾性体 3a 突起部 3b 溝部 4 圧電体層 5 白金上部電極 6 圧電素子 7 超音波アクチュエータ(圧電応用素子)

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 駆動信号により励振される電気機械変換
    素子が溶射によって表面に形成された弾性体を備える圧
    電応用素子であって、 前記弾性体と前記電気機械変換素子との間に、高い電気
    伝導性を有する酸化物層が形成されることを特徴とする
    圧電応用素子。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載された圧電応用素子にお
    いて、 前記酸化物層は、酸化ルテニウムからなることを特徴と
    する圧電応用素子。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載された圧電
    応用素子において、 前記電気機械変換素子は、前記溶射により形成された後
    に熱処理されてなることを特徴とする圧電応用素子。
  4. 【請求項4】 請求項1から請求項3までのいずれか1
    項に記載された圧電応用素子において、 前記電気機械変換素子の両面又は片面に、電気エネルギ
    ーの入力又は出力のための電極が形成されることを特徴
    とする圧電応用素子。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載された圧電応用素子にお
    いて、 前記酸化物層は、前記電気機械変換素子と前記弾性体と
    の間に配置される前記電極をなすことを特徴とする圧電
    応用素子。
  6. 【請求項6】 請求項1から請求項5までのいずれか1
    項に記載された圧電応用素子において、 前記電気機械変換素子は、鉛系強誘電材料からなる圧電
    材料又は電歪材料であることを特徴とする圧電応用素
    子。
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