JPH10278738A - ３点式シートベルト装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 １つのベルトリトラクタでショルダーベルト
とラップベルトの巻取り・巻戻しを行え、かつ、１つの
プリテンショナーでこれら各ベルトのたるみをとって予
張力を付与できる３点式シートベルト装置の提供を図
る。 【解決手段】 ベルトリトラクタ１のハウジング３にシ
ョルダーベルト２Ａの巻取り・巻戻しを行う第１スプー
ル４と、ラップベルト２Ｂの巻取り・巻戻しを行う第２
スプール５とを設けて、これら第１，第２スプール４，
５をそれぞれロック機構１０で緊急ロックできるように
してあると共に、プリテンショナー１１でショルダーベ
ルト２Ａとラップベルト２Ｂのたるみを同時に巻取って
予張力を付与できるようにしてある。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は自動車等の車両に用
いられる３点式シートベルト装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】車両用３点式シートベルト装置にあって
は、ショルダーベルトとラップベルトとにそれぞれ最適
なベルト巻取り力を設定できることが望ましく、そのた
め、例えば米国特許明細書第３，３４８，８８１号に示
されているように、ショルダーベルトとラップベルトと
をそれぞれ専用のベルトリトラクタで巻取り・巻戻しす
るようにしたものが知られている。

【０００３】一方、ベルトリトラクタとしては、乗員の
着衣等によってシートベルトにたるみが生じていても、
乗員拘束時にはこのたるみをとって乗員を最適に拘束で
きるようにすることが望まれ、このため、該ベルトリト
ラクタに車両の衝突時に作動信号を受けることにより作
動して、スプールをベルト巻取り方向に回転させて、シ
ートベルトのたるみをとって、該シートベルトに予張力
を付与するプリテンショナーを付設することが行われて
る。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】前述のようにショルダ
ーベルトとラップベルトとにそれぞれ専用のベルトリト
ラクタを用いるようした場合、コスト的におよびレイア
ウト上不利となってしまうことは否めず、しかも、ショ
ルダーベルトおよびラップベルトのそれぞれによめ乗員
拘束を最適に行わせるためには、各専用のベルトリトラ
クタのプリテンショナーを付設しなければならず、益々
コスト的に不利となってしまう。

【０００５】そこで、本発明は１つのベルトリトラクタ
でショルダーベルトとラップベルトの巻取り・巻戻し機
能が得られると共に、１つのプリテンショナーでこれら
ショルダーベルトとラップベルトとに適切な予張力を付
与することができて、コスト的に有利に乗員を最適に拘
束することができる３点式シートベルト装置を提供する
ものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】請求項１にあっては、ベ
ルトリトラクタのハウジングにショルダーベルトを巻取
り・巻戻しする第１スプールと、ラップベルトを巻取り
・巻戻しする第２スプールとを併設すると共に、これら
第１スプールと第２スプールとにショルダーベルト，ラ
ップベルトの急激な引出しを阻止するロック機構をそれ
ぞれ設け、かつ、車両の衝突時に作動信号を受けること
により作動して、前記第１スプールと第２スプールとを
同時にベルト巻き取り方向に回転させて、ショルダーベ
ルトとラップベルトとに予張力を付与するプリテンショ
ナーを付設したことを特徴としている。

【０００７】請求項２にあっては、請求項１に記載のプ
リテンショナーは、車両の衝突時に作動信号を受けるこ
とにより点火作動してガスを発生させるガスゼネレータ
と、ガスゼネレータの発生ガス圧によりピストンを作動
させるシリンダー機構と、ピストンの直線運動を回転運
動に変換して第１スプールと第２スプールとに伝達する
駆動伝達機構とを備えていることを特徴としている。

【０００８】請求項３にあっては、請求項２に記載の駆
動伝達機構が、ピストンに設けられたラックとこのラッ
クに噛合したドライブピニオンとでピストンの直線運動
を回転運動に変換する駆動方向変換機構と、第１スプー
ルおよび第２スプールの各回転軸に設けられて、通常状
態ではこれら回転軸と非結合の状態を維持し、前記ドラ
イブピニオンの回転力が伝達されるとこれら回転軸と直
結されて第１スプールおよび第２スプールをベルト巻き
取り方向に回転させるクラッチギヤと、ドライブピニオ
ンの回転力を前記第１スプールと第２スプールの各回転
軸のクラッチギヤに伝達する差動歯車機構とを備えてい
ることを特徴としている。

【０００９】

【発明の効果】請求項１によれば、１つのベルトリトラ
クタでショルダーベルトとラップベルトとの巻取り・巻
戻しを行えると共に、該ベルトリトラクタに付設した１
つのプリテンショナーでこれらショルダーベルトとラッ
プベルトに予張力を付与することができて、コスト的に
およびレイアウト上有利に乗員の拘束を最適に行わせる
ことができる。

【００１０】請求項２によれば、請求項１の効果に加え
て、プリテンショナーは車両の衝突時の作動信号で作動
するカスゼネレータによりシリンダー機構のピストンを
作動させ、このピストンの作動により駆動伝達機構を介
して第１スプールと第２スプールを瞬時に回転駆動させ
ることができるため、応答性よく速かにショルダーベル
トとラップベルトとのたるみ分を巻取って適切な予張力
を付与することができる。

【００１１】請求項３によれば、請求項２の効果に加え
て、第１スプールと第２スプールの各回転軸にはクラッ
チギヤを設けてあるため、通常の状態では第１スプー
ル，第２スプールとも自由なベルト巻取り，ベルト巻戻
しの回転を行えて、ベルトリトラクタの機能に些かも支
障を来すことがない。

【００１２】しかも、これらクラッチギヤには差動歯車
機構を介してドライブピニオンの駆動力が伝達されるた
め、第１スプールに巻取られたショルダーベルトと、第
２スプールに巻取られたラップベルトとに、ベルトのた
るみに差が生じてプリテンショナー作動時に一方のスプ
ールが巻取り停止状態となっても、この差動歯車機構の
作用により他方のスプールのベルト巻取り回転を持続さ
せて、１つのプリテンショナーでもショルダーベルト，
ラップベルトの両方とも完全にたるみをとることができ
る。

【００１３】

【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面
と共に詳述する。

【００１４】図１〜４において、１はシートベルト２を
巻取り・巻戻しするベルトリトラクタを示し、該ベルト
リトラクタ１はセンタピラーＣ・Ｐの下側部内に配設し
てある。

【００１５】ベルトリトラクタ１のハウジング３にはシ
ートベルト２の一端を巻付けた第１スプール４と、シー
トベルト２の他端を巻付けた第２スプール５とを、それ
ぞれの回転軸４ａ，５ａを介して上下２段に回転自在に
併設してある。

【００１６】シートベルト２はセンタピラーＣ・Ｐの上
側部に配設したスルーリング６に通して該センタピラー
Ｃ・Ｐに沿って配索してあり、該シートベルト２のスル
ーリング６と第２スプール５との間の部分にスルータン
グ７を遊挿し、該スルータング７をフロアセンター側に
設けたバックル８に係合することにより、ショルダーベ
ルト２Ａとラップベルト２Ｂとして機能するようにして
ある。

【００１７】第１スプール４および第２スプール５の回
転軸４ａ，５ａの各一端とハウジング３との間には、こ
れら第１スプール４，第２スプール５にベルト巻取り方
向の回転力を付勢するリターンスプリングとしてのうず
巻ばね９，９をそれぞれ配設して、第１スプール４およ
び第２スプール５にそれぞれ適切なベルト巻取り力を設
定してある。

【００１８】また、これら回転軸４ａ，５ａの各他端と
ハウジング３との間には、ショルダーベルト２Ａ，ラッ
プベルト２Ｂの急激な引出しを阻止するロック機構１
０，１０を配設してある。

【００１９】このロック機構１０としては公知の緊急ロ
ック機構が用いられ、車両に衝突等により所定の減速度
が発生すると、この減速度を感知して第１スプール４，
第２スプール５のベルト巻戻し（引出し）方向の回転を
緊急にロックする機能と、ショルダーベルト２Ａ，ラッ
プベルト２Ｂが急に引出されようとすると慣性部材の慣
性作用によって第１スプール４，第２スプール５のベル
ト巻戻し（引出し）方向の回転を緊急にロックする機能
とを併有している。

【００２０】また、ハウジング３のうず巻ばね９を配設
した側の側部には、車両の衝突時に図外の衝突センサの
感知作用にもとづく作動信号を受けることにより作動し
て、前記第１スプール４と第２スプール５とを同時にベ
ルト巻取り方向に回転させて、ショルダーベルト２Ａと
ラップベルト２Ｂとのたるみをとってそれぞれに予張力
を付与するプリテンショナー１１を付設してある。

【００２１】このプリテンショナー１１は、前述のよう
に車両衝突時に作動信号を受けるとイグナイター１２ａ
が点火作動してガスを発生させるガスゼネレータ１２
と、ガスゼネレータ１２の発生ガス圧によりピストン１
３ａを下動させるシリンダー機構１３と、ピストン１３
ａの直線運動を回転運動に変換して第１スプール４の回
転軸４ａと第２スプール５の回転軸５ａとに伝達する駆
動伝達機構１４とを備えている。

【００２２】また、前記駆動伝達機構１４は、ピストン
１３ａに設けたラック１６とこのラック１６に噛合した
ドライブピニオン１７とでピストン１３ａの直線運動を
回転運動に変換する駆動方向変換機構１５と、第１スプ
ール４と第２スプール５の各回転軸４ａ，５ａに設けら
れたクラッチギヤ１８，１９と、ドライブピニオン１７
の回転力を各クラッチギヤ１８，１９に伝達する差動歯
車機構３０とを備えている。

【００２３】クラッチギヤ１８，１９は、何れも通常の
状態では前記各回転軸４ａ，５ａと非結合の状態を維持
するが、ドライブピニオン１７の回転力が差動歯車機構
３０を介して伝達されるとこれら回転軸４ａ，５ａと直
結されて、第１スプール４および第２スプール５をベル
ト巻取り方向に回転させるもので、複数個のアイドルピ
ニオン２２，２３により保持されて回転軸４ａ，５ａの
外周に同心的に離間状態に配置されたギヤ本体２０，２
１が、ドライブピニオン１７から駆動伝達されて一方向
に回転すると、内周のカム溝２４，２５に配置したクラ
ッチローラ２６，２７を回転軸４ａ，５ａに圧接させて
ギヤ本体２０，２１と回転軸４ａ，５ａとを直結するよ
うになっている。

【００２４】具体的には前記回転軸４ａ，５ａにはスリ
ーブ２８，２９を非回転に嵌合固定してあり、これらス
リーブ２８，２９の外周面に設けたセレーション２８
ａ，２９ａに前記クラッチローラ２６，２７が噛み込む
ことによって、ギヤ本体２０，２１と回転軸４ａ，５ａ
とが直結するれようになっている。

【００２５】一方、差動歯車機構３０はドライブピニオ
ン１７のピニオンシャフト３１に回転自在に遊挿されて
クラッチギヤ１８，１９の各ギヤ本体２０，２１に噛合
したサイドギヤ３２，３３と、ピニオンシャフト３１に
直交状態に固設したピニオンメートシャフト３４に回転
自在に軸支したピニオンメートギヤ３５と、サイドギヤ
３２，３３の各一側面に対向的に一体に設けられて、前
記ピニオンメートギヤ３５に噛合したクラウンギヤ３
６，３７とを備えている。

【００２６】この差動歯車機構３０はラック１６の下動
によりドライブピニオン１７が回転すると、ピニオンシ
ャフト３４と一体のピニオンメートシャフト３４に軸支
したピニオンメートギヤ３５とクラウンギヤ３６，３７
との噛合によって、サイドギヤ３２，３３が前記ピニオ
ンシャフト３４と一体的に回転して、クラッチギヤ１
８，１９にドライブピニオン１７の駆動力を伝達する
が、ショルダーベルト２Ａとラップベルト２Ｂとにベル
トのたるみに差が生じていて、例えば第１スプール４の
ショルダーベルト２Ａが先きに巻取り完了して巻取り停
止状態になると、クラッチギヤ１８によってサイドギヤ
３２の回転が拘束されるが、サイドギヤ３２に対してピ
ニオンシャフト１７と一体に回動するピニオンメートギ
ヤ３５が、クラウンギヤ３６上を回転して他方のサイド
ギヤ３３とクラッチギヤ１９の回転による第２スプール
５のベルト巻取り方向への回転伝達を継続して、第１ス
プール４および第２スプール５によるショルダーベルト
２Ａ，ラップベルト２Ｂのたるみを完全に巻取るように
作動する。

【００２７】図２，３中３８，３９，４０はベルトリト
ラクタ１のハウジング３の一側に、前記各ギヤからなる
駆動伝達機構１４を収納するギヤハウジングを構成する
ハウジングプレートを示す。

【００２８】以上の実施形態の構造によれば、シートＳ
に着座した乗員がシートベルト装着のためスルータング
７を把持してシートベルト２を牽引すると、ショルダー
ベルト２Ａおよびラップベルト２Ｂがベルトリトラクタ
１の第１スプール４および第２スプール５から引出され
る。

【００２９】これらショルダーベルト２Ａ，ラップベル
ト２Ｂを十分に引出してスルータング７をバックル８に
係着することにより、これら第１スプール４，第２スプ
ール５の巻取り力によってショルダーベルト２Ａ，ラッ
プベルト２Ｂの余長分が巻取られ、ショルダーベルト２
Ａ，ラップベルト２Ｂをそれぞれ適切な巻取り力で乗員
に着装することができる。

【００３０】車両の衝突時にはベルトリトラクタ１のロ
ック機構１０，１０がロック作動して、第１スプール４
および第２スプール５のベルト引出し方向の回転が緊急
にロックされる。

【００３１】これと同時に、図外の衝突感知センサーか
らの作動信号を受けてプリテンショナー１１が作動する
ことにより、第１スプール４および第２スプール５をベ
ルト巻取り方向に回転させて、乗員の着衣等により生じ
たショルダーベルト２Ａおよびラップベルト２Ｂのたる
みをとって予張力を付与できるため、これらショルダー
ベルト２Ａおよびラップベルト２Ｂにより乗員を最適に
拘束することができる。

【００３２】このように、本発明によれば１つのベルト
リトラクタ１によってショルダーベルト２Ａとラップベ
ルト２Ｂとの巻取り・巻戻しを行えると共に、該ベルト
リトラクタ１に付設した１つのプリテンショナー１１で
これらショルダーベルト２Ａとラップベルト２Ｂに予張
力を付与して乗員の拘束を最適に行わせことができるか
ら、ベルトリトラクタ１のレイアウトの自由度を高めら
れると共に部品点数を削減できてコスト的に有利に得る
ことができる。

【００３３】また、前述のプリテンショナー１１は車両
の衝突時の作動信号で作動するガスゼネレータ１２によ
りシリンダー機構１３のピストン１３ａを作動させ、こ
のピストン１３ａの作動により駆動伝達機構１４を介し
て第１スプール４と第２スプール５とを瞬時に回転駆動
させるとができるため、応答性よく速かにショルダーベ
ルト２Ａとラップベルト２Ｂとのたるみ分を巻取って適
切な予張力を付与することができる。

【００３４】特に、前記プリテンショナー１１の駆動伝
達機構１４は、第１スプール４，第２スプール５の各回
転軸４ａ，５ａに設けたクラッチギヤ１８，１９を備え
ていて、通常の状態では第１スプール４，第２スプール
５の自由なベルト巻取り，ベルト巻戻しの回転を行え
て、ベルトリトラクタ１の本来の機能に些かも支障を来
たすことがなく、しかも、これらクラッチギヤ１８，１
９には差動歯車機構３０を介してドライブピニオン１７
の駆動力が伝達されるようにしてあるから、第１スプー
ル４に巻取られたショルダーベルト２Ａと、第２スプー
ル５に巻取られたラップベルト２Ｂの各ベルトのたるみ
に差が生じていてプリテンショナー１１の作動時に一方
の第１スプール４又は第２スプール５が巻取り停止状態
となっても、差動歯車機構３０の作用により他方の第２
スプール５又は第１スプール４のベルト巻取り回転を持
続させて、１つのプリテンショナー１１でもショルダー
ベルト２Ａとラップベルト２Ｂの両方とも完全にたるみ
をとって最適な乗員拘束を行わせることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の３点式シートベルト装置の一実施形態
のレイアウト図。

【図２】同実施形態のベルトリトラクタの断面図。

【図３】同実施形態のベルトリトラクタのプリテンショ
ナーの分解斜視図。

【図４】同実施形態の駆動伝達機構のクラッチギヤを示
す断面図。

【符号の説明】

１ ベルトリトラクタ ２Ａ ショルダーベルト ２Ｂ ラップベルト ３ ハウジング ４ 第１スプール ４ａ 回転軸 ５ 第２スプール ５ａ 回転軸 １０ ロック機構 １１ プリテンショナー １２ ガスゼネレータ １３ シリンダー機構 １３ａ ピストン １４ 駆動伝達機構 １５ 駆動方向変換機構 １６ ラック １７ ドライブピニオン １８，１９ クラッチギヤ ３０ 差動歯車機構

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ベルトリトラクタのハウジングにショル
   ダーベルトを巻取り・巻戻しする第１スプールと、ラッ
   プベルトを巻取り・巻戻しする第２スプールとを併設す
   ると共に、これら第１スプールと第２スプールとにショ
   ルダーベルト，ラップベルトの急激な引出しを阻止する
   ロック機構をそれぞれ設け、かつ、車両の衝突時に作動
   信号を受けることにより作動して、前記第１スプールと
   第２スプールとを同時にベルト巻き取り方向に回転させ
   て、ショルダーベルトとラップベルトとに予張力を付与
   するプリテンショナーを付設したことを特徴とする３点
   式シートベルト装置。
2. 【請求項２】 プリテンショナーは、車両の衝突時の作
   動信号を受けることにより点火作動してガスを発生させ
   るガスゼネレータと、ガスゼネレータの発生ガス圧によ
   りピストンを作動させるシリンダー機構と、ピストンの
   直線運動を回転運動に変換して第１スプールと第２スプ
   ールとに伝達する駆動伝達機構とを備えていることを特
   徴とする請求項１記載の３点式シートベルト装置。
3. 【請求項３】 駆動伝達機構がピストンに設けられたラ
   ックとこのラックに噛合したドライブピニオンとでピス
   トンの直線運動を回転運動に変換する駆動方向変換機構
   と、第１スプールおよび第２スプールの各回転軸に設け
   られて、通常状態ではこれらに回転軸と非結合の状態を
   維持し、前記ドライブピニオンの回転力が伝達されると
   これら回転軸と直結されて第１スプールおよび第２スプ
   ールをベルト巻取り方向に回転させるクラッチギヤと、
   ドライブピニオンの回転力を前記第１スプールと第２ス
   プールの各回転軸のクラッチギヤに伝達する差動歯車機
   構とを備えていることを特徴とする請求項２記載の３点
   式シートベルト装置。