JPH10259872A

JPH10259872A - シリンダヘッドガスケット

Info

Publication number: JPH10259872A
Application number: JP9065993A
Authority: JP
Inventors: Hirokazu Hasegawa; 浩和長谷川
Original assignee: Nippon Reinz Co Ltd
Current assignee: Nippon Reinz Co Ltd
Priority date: 1997-03-19
Filing date: 1997-03-19
Publication date: 1998-09-29
Also published as: DE69812454D1; EP0866245A3; EP0866245B1; DE69812454T2; EP0866245A2; US6105971A; ES2196417T3

Abstract

(57)【要約】【課題】燃焼室穴を囲繞する凸形ビードの凹部に硬質
合成樹脂層を充填したシリンダヘッドガスケットにおい
て、硬質合成樹脂層が高温の燃焼ガスに曝され、劣化、
焼損する危険を解消する。【解決手段】複数の金属板を積層してなり、金属板の
１層例えば中間板４が燃焼室穴５を囲繞する凸形ビード
７を備え、該ビードの凹部８はその深さの一部を硬質合
成樹脂層９により充填されると共に他の金属板例えば上
板１により覆われる。ガスケットの外面に配設された金
属板例えば上板１が、他の金属板例えば中間板４の燃焼
室穴周縁部４１を包むように、燃焼室穴の周縁部を折り
返した折り返し部１０を備えている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は自動車用エンジン等
の内燃機関に用いられるシリンダヘッドガスケットに関
するものである。

【０００２】

【従来の技術】燃焼室穴、ボルト穴、冷却水通路穴、オ
イル通路穴等を備える金属板を積層してなるシリンダヘ
ッドガスケットにおいて、例えば上板１０１、中間板１
０４、厚さ調整板１０３を図９の断面図に示すように積
層するとともに上板１０１の厚さを調整板１０３の厚さ
より厚くし、中間板１０４に上板１の折り返し部１０６
の位置において燃焼室穴１０５を囲繞するビード１０７
を設けることは公知である。かかるシリンダヘッドガス
ケットにおいては燃焼室穴１０５の周縁部の折り返し部
１０６が位置する部分のガスケット厚さが他の部分のガ
スケット厚さより厚いので、この厚さの差により燃焼室
穴１０５の周縁部に高面圧のシール線が形成され、ま
た、この高いシール面圧に更にビード１０７の弾性力に
よるシール面圧が付加され、シール性能が優れている。

【０００３】然し、上記ガスケットにおけるビード１０
７は高面圧部に位置し、しかもビードを保護するストッ
パー部も存在しないので、ガスケットの使用中にへたり
易い難点がある。また、燃焼室穴１０５の周縁部とその
外側の部分との間のガスケット厚さの段差は金属板の厚
さの差で決まり、段差の大きさを自由に設定できない憾
みがある。更に、ガスケットを締め付けたときにガスケ
ットが受ける締付力はボルト穴からの遠近により異な
り、燃焼室穴周りのシール面圧もボルト穴からの遠近に
応じて位置により異なる。そこで、これを均等化するた
めに、前記のガスケット厚さの段差の大きさをボルト穴
からの遠近に応じて位置により異ならせることが望まれ
るが、前記の積層ガスケットにおいてはそのような調整
は実際上不可能である。

【０００４】本願の出願人は、図１０の断面図に示すと
おり、弾性金属板１００からなり、燃焼室穴１０５を囲
繞する凸形ビード１０８を備える金属ガスケットにおい
て、凸形ビード１０８の内部空間部すなわち凹部１０９
に硬質合成樹脂層１１０を充填してストッパー部を形成
し、しかも該硬質合成樹脂層１１０の高さをボルト穴
（図示せず）からの遠近により異ならせることを特願平
８−３８７８７号において提案した。

【０００５】上記出願の発明における硬質合成樹脂層１
１０は凸形ビード１０８に対してストッパー部として機
能するとともに、該硬質合成樹脂層が位置する部分のガ
スケット厚さを他の部分におけるガスケット厚さよりも
厚くさせる。そして、これにより燃焼室穴１０５の周り
に高面圧のシール線が形成される。硬質合成樹脂層１１
０の充填高さは自由に設定でき、しかも上記のようにボ
ルト穴からの遠近に応じ位置によって充填高さを変える
ことも比較的容易に行い得る。従って、上記出願の発明
は前記の公知の積層金属ガスケットにおける前記難点の
全てを解消し得るものと言うことができる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】然しながら、図１０に
示すガスケットは、これをシリンダヘッド及びシリンダ
ブロックの接合面間に装着し、ガスケットを締め付けた
とき、硬質合成樹脂層が接合面に当接するので、エンジ
ンの運転中におけるシリンダヘッドやシリンダブロック
の振動並びにエンジンの運転、停止に伴うシリンダヘッ
ド及びシリンダブロックの膨張収縮に基づいて、硬質合
成樹脂層がこれに当接する接合面によって擦られ、摩耗
して、ガスケットの長期使用中にその機能が損われ、シ
ール性能が劣化する危険がある。

【０００７】そこで、本願の出願人はこれを解決すべく
ビードの凹部を覆うように他の金属板を積層することを
特願平９−３６３６号により提案したが、なお改善が望
まれる下記のような問題があることがわかった。すなわ
ち、図１０に示す前記ガスケットにおいては燃焼ガスが
ビード１０８によってシールされている場合でも、燃焼
ガスがビード１０８の脚部Ａのシール線から漏れ、ビー
ド１０８の脚部Ｂのシール線により漏れが防止されてい
ることがある。この場合、ビード１０８の脚部Ａ及びＢ
において正常にシールされているときは高々２００°Ｃ
程度の温度に保たれる硬質合成樹脂層に３００°Ｃ乃至
４００°Ｃを越える高温の燃焼ガスが接触することにな
る。かかる状態においてエンジンの運転が続けられる
と、高い面圧を受けている硬質合成樹脂層が高温により
へたり、また劣化、損傷してシール性能を失う危険があ
る。

【０００８】本発明は上記問題点を解決するもので、本
発明の目的は燃焼室穴を囲繞する凸形ビードの凹部に充
填された硬質合成樹脂層が燃焼ガスに曝される危険が全
くないシリンダヘッドガスケットを提供することにあ
る。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明のシリンダヘッドガスケットは、少なくとも燃焼室穴
とボルト穴とを備える金属板を複数層積層してなり、該
金属板の少なくとも１層が燃焼室穴を囲繞する凸形ビー
ドを有し、該ビードの凹部はその深さの一部を硬質合成
樹脂層により充填されるとともに、前記金属板の他の層
により覆われ、ガスケット外面に配設された前記金属板
の１層が、他の金属板の少なくとも一層の燃焼室穴周縁
部を包むように、燃焼室穴周りの周縁部を折り返した折
り返し部を備えていることを特徴とするものである。

【００１０】本発明のシリンダヘッドガスケットにおい
ては、上記のとおり、ガスケットを構成する積層金属板
の少なくとも１層が燃焼室穴を囲繞する凸形ビードを備
え、該凸形ビードの凹部が耐熱性の合成樹脂層すなわち
応力を受けても殆ど圧縮されずまた殆ど変形しない或は
僅かしか圧縮されず、僅かしか変形しない、実質的に非
圧縮性、非変形性の合成樹脂層例えばエポキシ樹脂層に
より充填されている。従って、該硬質合成樹脂層が位置
する部分においては積層された金属板の厚さに硬質合成
樹脂層の厚さが付加され、ガスケットの厚さを他の部分
よりも厚くすることができ、この厚さの差すなわち段差
により燃焼室穴の周りに高い面圧のシール線が形成され
る。

【００１１】硬質合成樹脂層の充填高さは後記するよう
に任意に設定することができ、また燃焼室穴周りの位置
によって充填高さを変えることも比較的容易に行うこと
ができるから、ガスケットを構成する金属板の積層の仕
方、金属板の厚さの組合せと相俟って、ガスケット厚さ
の段差を適宜に設定することができ、その段差を燃焼室
穴周りの位置により異ならせるように調整することもで
きる。

【００１２】凸形ビードの凹部は硬質合成樹脂層により
完全には充填されず、凹部の深さの一部が充填されるの
で、前記の高面圧のシール線には凸形ビードの弾性力に
よる面圧も重畳され、優れたシール性能が得られる。そ
して充填された硬質合成樹脂層が凸形ビードの圧縮、復
元の変形の大きさを制限するストッパーとして機能し、
ビードのへたりを軽減する。

【００１３】本発明においては、ガスケットを構成する
積層金属板の少なくとも１層に形成された凸形ビードの
凹部に硬質合成樹脂層が充填され、該凹部は積層された
金属板の他の層により覆われているので、ガスケットを
エンジンに装着したとき、硬質合成樹脂層がシリンダヘ
ッド及びシリンダブロックの接合面と当接することがな
く、従ってエンジンの運転中のシリンダヘッド及びシリ
ンダブロックの振動並びにエンジンの運転、停止に伴う
シリンダヘッドやブロックの膨張収縮に基づいて硬質合
成樹脂層が接合面により擦られ、摩耗する危険は全くな
い。

【００１４】また、本発明によれば、ガスケットの外表
面に配設された金属板の１層が、積層された金属板の他
の層の燃焼室穴の周縁を包み込むように、燃焼室穴の周
縁部を折り返した折り返し部を備えているので、燃焼ガ
スが積層された金属板の板間に侵入することがなく、前
記凸形ビードの凹部が積層金属板の他の層により覆われ
ていることと相俟って、硬質合成樹脂層が高温の燃焼ガ
スに曝される危険は全くない。

【００１５】ガスケットを構成する積層金属板の少なく
とも１層に形成される燃焼室穴を囲繞する凸形ビードは
台形、半円形、山形等の種々の断面形状のものを採用す
ることができるが、ビードの頂部換言すればビードの凹
部の底部にフラットな面が存在する断面台形のビードが
好ましい。その理由は、凹部の底部にフラットな面が存
在すれば、硬質合成樹脂層の充填高さを正確に測定しか
つ調整することが容易になること、また高面圧のシール
線がある程度の幅をもつことが好ましいことによる。た
だし、台形ビードの頂部の幅が過大であると徒に面圧が
分散されるので、台形ビードの頂部の幅には好ましい範
囲があり、0.5mm〜3.0mm、好ましくは1.0mm〜2.0mmの範
囲に選ぶのが好ましい。

【００１６】

【発明の実施の形態】本発明の詳細並びに実施の形態を
図面に基づき以下に説明する。図１は本発明の第１実施
例のシリンダヘッドガスケットの平面図であり、図２は
図１のＡ−Ａ線による拡大断面図であり、図３は図１の
Ｂ−Ｂ線による拡大断面図である。ただし図１は図面を
簡略化するために冷却水通路穴、オイル通路穴及びこれ
らをシールするビード等のシール手段の図示を省略して
いる。図１〜図３において、また後記の各図面において
同一の符号は同一部分を示している。

【００１７】図１〜図３において、本発明の第１実施例
のシリンダヘッドガスケットＧ１は燃焼室穴５、ボルト
穴６及び図示を省略した冷却水通路、オイル通路等を備
えるステンレス鋼板等の金属板からなる３層の金属板す
なわち上板１、中間板４及び厚さ調整板３を積層して形
成されている。ガスケットＧ１の外表面に配設されてい
る上板１は、中間板４の燃焼室穴周縁部４１を包むよう
に、燃焼室穴５の周縁部を折り返した折り返し部１０を
備え、調整板３は該折り返し部１０に重ならないように
積層されている。

【００１８】中間板４の燃焼室穴周縁部４１には断面台
形で上板１の前記折り返し部１０に向かって突起する凸
形ビード７が燃焼室穴５を囲繞するように形成され、該
ビード７の凹部８はその深さの一部を硬質合成樹脂層９
により充填されるとともに、上板１の内面１１により覆
われている。なお、厚さ調整板３の厚さｔ₃は上板１の
厚さｔ₁に等しいか或は上板１の厚さｔ₁よりも小さく選
ばれている。

【００１９】上記第１実施例のガスケットＧ１において
は凸形ビード７が位置する部分のガスケットの厚さ、厳
密に言えば構成金属板及び硬質合成樹脂層の厚さの合計
厚さすなわち正味厚さＴ₁はその外側部分におけるガス
ケットの正味厚さＴ₂より大であり、その差（Ｔ₂−
Ｔ₁）は上板１の厚さｔ₁と調整板３の厚さｔ₃との差
と、硬質合成樹脂層の充填高さｈとの和ｈ＋（ｔ₁−
ｔ₃）に等しい。ガスケットＧ１をシリンダヘッドとシ
リンダブロックとの接合面の間に装着し締め付けたと
き、燃焼室穴５を囲繞する凸形ビード７の位置には上記
の厚さの差に基づく高い面圧とビード７の弾性力に基づ
く面圧とが重畳された高面圧のシール線が形成される。

【００２０】硬質合成樹脂層９の充填高さは、図２及び
図３に示すように、ガスケット締付力が小さいボルト穴
から離隔する位置（例えば凸形ビード７がＡ−Ａ線と交
わる位置）においては充填高さｈを高く、締付力が大き
いボルト穴に近接する位置（例えば凸形ビード７がＢ−
Ｂ線と交わる位置）においては充填高さｈ′を低くして
いる。このように燃焼室穴５周りの位置によって充填高
さを調整することにより燃焼室穴５の周りにおけるシー
ル面圧が均等化され、シール性能を向上させることがで
きる。

【００２１】また、シール条件が厳しい隣接する燃焼室
穴間のビード部分において、或はシリンダヘッドの湾曲
によりガス漏れを生じ易いガスケット長手方向両端部の
ビード部と上記の燃焼室穴間のビード部分とにおいて硬
質合成樹脂層の充填高さを高くしシール性能の向上を図
ることもできる。このように燃焼室穴周りの位置によっ
て硬質合成樹脂層の充填高さを異ならせるように調整で
きることは後記する第２実施例以下については説明を繰
り返さないが、本発明によるガスケットの顕著な効果で
ある。

【００２２】第１実施例のガスケットＧ１においては凸
状ビードを備える中間板４の燃焼室穴周縁部４１が上板
１の折り返し部１０によって包まれ、凸状ビード７の凹
部８は上板１の内面１１によって覆われているので、ガ
スケットＧ１をエンジンに装着したとき、凸状ビード７
の凹部８に充填された硬質合成樹脂層９は燃焼ガスから
完全に遮断され、燃焼ガスにより劣化、焼損される危険
はない。固より硬質合成樹脂層９がシリンダヘッド及び
シリンダブロックの接合面により擦られる危険もない。

【００２３】凸形ビード７の凹部８への硬質合成樹脂層
９の充填は、エポキシ樹脂或は充填剤、硬化剤等の添加
剤を混和したエポキシ樹脂等の液状コーティング材を例
えばスクリーンコーティング、ディスペンサーにより凹
部８に塗布もしくは注入して充填し、これを加熱乾燥或
は加熱硬化させることにより容易に行うことができる。
充填高さの調整は例えば液状コーティング材の固形分濃
度の調整、スクリーンコーティングのメッシュの大きさ
の選定、複数回塗布等により行うことができ、充填高さ
を任意に設定できる。また、燃焼室穴周りの位置によっ
て充填高さを異ならせることもスクリーンコーティング
による部分的多回塗布、ディスペンサーによる塗布量調
整、部分複数回塗装等により比較的容易に行うことがで
きる。

【００２４】また、上記のように予め形成された凸形ビ
ードの凹部に液状コーティング材を塗布もしくは注入す
ることにより硬質合成樹脂層を充填する代りに、凸形ビ
ードが未だ形成されていない平坦な金属板に液状コーテ
ィング材を塗布して所定形状、所定幅、所定高さのコー
ティング条帯を形成し、これを乾燥硬化或は加熱硬化さ
せたのちに、該条帯に沿って凸形ビードを立てることに
より所望の凸形ビードとその凹部に充填された硬質合成
樹脂層とを形成することもできる。

【００２５】図４は第１実施例の変形例についての図２
と同様な拡大断面図である。この変形例においては凸形
ビード７が折り返し部１０の位置ではなく、その外側の
隣接位置に設けられている。この点以外は第１実施例の
ガスケットＧ１と同様である。この変形例のガスケット
においては凸形ビード７が位置する部分のガスケットの
正味厚さＴ₂とその外側の部分におけるガスケットの正
味厚さＴ₃との差（Ｔ₂−Ｔ₃）は硬質合成樹脂層９の充
填高さｈに等しい。またビード７が位置する部分のガス
ケットの正味厚さＴ₂と折り返し部１０の位置における
ガスケットの正味厚さＴ₁との差（Ｔ₂−Ｔ₁）は上記高
さｈから上板１の厚さｔ₁と調整板３の厚さとの差を減
じた値ｈ−（ｔ₁−ｔ₃）となる。

【００２６】従って、図４に示す変形例のガスケットに
おいては上記した厚さの差により生じる面圧は凸形ビー
ド７が位置する部分において最も大であり、折り返し部
１０が位置する部分がこれに次ぐ。そして、凸形ビード
７が位置する部分には更に凸形ビードの弾性力による面
圧が重畳される。なお、図４に示す変形例のガスケット
のように凸形ビードを燃焼室に隣接する折り返し部１０
の位置に設置せずにその外側の部分に設置するのは、例
えば、シリンダブロックのシリンダの内壁にシリンダラ
イナを挿入しているライナタイプのエンジンに用いるガ
スケットの場合である。シリンダライナの落ち込み、割
れを防止するためにライナのつば部分において高面圧の
シール線が形成されるようにする。

【００２７】図５は本発明の第２実施例のシリンダヘッ
ドガスケットＧ２についての図２と同様な拡大断面図で
ある。第２実施例のガスケットＧ２は２層の金属板、上
板１と下板２とを積層してなり、上板１は、下板２の燃
焼室穴周縁部２１を包むように、燃焼室穴５の周縁部を
折り返した折り返し部１０を備えている。下板２の燃焼
室穴周縁部２１には断面台形で上板１の前記折り返し部
１０に当接するように突起する凸形ビード７が燃焼室穴
５を囲繞するように形成されている。該凸形ビード７の
凹部８はその深さの一部を硬質合成樹脂層９により充填
されるとともに、上板１の内面１１により覆われてい
る。

【００２８】従って実施例のガスケットＧ２において凸
形ビード７の凹部８に充填された硬質合成樹脂層９が燃
焼ガスに曝されたり、接合面により擦られる危険は全く
ない。ガスケットＧ２においては凸形ビード７が位置す
る部分のガスケットの正味厚さＴ₁とその外側の部分に
おけるガスケットの正味厚さＴ₂との差（Ｔ₁−Ｔ₂）は
硬質合成樹脂層９の充填高さｈと上板１の厚さｔ₁との
和に等しい。第２実施例のガスケットＧ２においても図
４に示すガスケットと同様に折り返し部よりも外側の位
置に凸形ビード７を設けてもよく、或は後記する図６に
示すガスケットと同様に折り返し部の位置とその外側の
位置との双方に凸形ビードを設けてもよい。

【００２９】図６は本発明の第３実施例のガスケットＧ
３についての図２と同様な拡大断面図である。第３実施
例のガスケットＧ３は３層の金属板を積層してなり、上
板１は、下板２の燃焼室穴周縁部２１を包むように、燃
焼室穴５の周縁部を折り返した折り返し部１０を備え、
上板１と下板２との間に厚さ調整板３が上板１の折り返
し部と重なり合わないように積層されている。下板２は
その燃焼室穴周縁部２１に断面台形で折り返し部１０に
当接するように突起する凸形ビード７１を備え、調整板
３は折り返し部１０に隣り合う位置に同じく断面台形で
下板２に向かって突起する凸形ビード７２を備えてい
る。

【００３０】凸形ビード７１の凹部８１はその深さの一
部を硬質合成樹脂層９１によって充填されるとともに、
上板１の内面１１により覆われている。凸形ビード７２
の凹部８２も同じくその深さの一部を硬質合成樹脂層９
２によって充填されるとともに、上板１の内面１１によ
り覆われている。従って、実施例３のガスケットＧ３に
おいても硬質合成樹脂層９１及び９２が燃焼ガスに曝さ
れたり、接合面によって擦られる危険は全くない。

【００３１】凸形ビード７１が位置する部分のガスケッ
トの正味厚さＴ₁と凸形ビード７２が位置する部分にお
けるガスケットの正味厚さＴ₂との差（Ｔ₁−Ｔ₂）は、
硬質合成樹脂９１及び９２の充填高さの差と、上板１の
厚さと厚さ調整板３の厚さｔ₃との差との和（ｈ₁−
ｈ₂）＋（ｔ₁−ｔ₃）となる。また正味厚さＴ₂とその外
側の部分のガスケットの正味厚さＴ₃との差（Ｔ₂−
Ｔ₃）は硬質合成樹脂層９２の充填高さｈ₂に等しい。凹
部８１もしくは８２が硬質合成樹脂層により充填されて
いない場合、すなわちｈ₁又はｈ₂が零の場合を含めて、
充填高さｈ₁及びｈ₂並びに上板１及び調整板３の厚さｔ
₁及びｔ₃を適宜に調整することにより、燃焼室穴５の周
りに多様な面圧分布を形成することができる。

【００３２】図７は本発明の第４実施例のガスケットＧ
４についての図２と同様な拡大断面図である。ガスケッ
トＧ４は上板１、中間板４及び下板２の３層の金属板を
積層してなる。上板１は中間板４の燃焼室穴周縁部４１
及び下板２の燃焼室穴周縁部２１を包むように、燃焼室
穴５の周縁部を折り返した折り返し部１０を備えてい
る。中間板４は折り返し部１０よりも外側の位置で燃焼
室穴５を囲繞する断面台形で下板２に向かって突起する
凸形ビード７を備え、該ビードの凹部８はその深さの一
部を硬質合成樹脂層９により充填されるとともに、上板
１の内面１１により覆われている。

【００３３】図８は本発明の第５実施例のガスケットＧ
５についての図２と同様な断面図である。第５実施例の
ガスケットＧ５は第２実施例のガスケットＧ２と同じく
２層の金属板、上板１と下板２とを積層してなり、ガス
ケットＧ２におけると同様な折り返し部１０並びに凸形
ビード７及びその凹部８を充填する硬質合成樹脂層９を
備えている。第５実施例のガスケットＧ５が第２実施例
のガスケットと異なるのは下板２の内面２３上に折り返
し部よりも外側の位置において燃焼室穴５を囲繞する硬
質合成樹脂の突条１２を有している点である。

【００３４】第５実施例のガスケットＧ５においては、
凸形ビードが位置する部分のガスケットの正味厚さＴ₁
と突条１２が位置する部分のガスケットの正味厚さＴ₂
との差（Ｔ₁−Ｔ₂）は硬質合成樹脂層９の充填高さｈ₁
と硬質合成樹脂の突条１２の高さｈ₂′との差と上板１
の厚さｔ₁との和（ｈ₁−ｈ₂′）＋ｔ₁に等しく、また正
味厚さＴ₂とその外側の部分のガスケットの正味厚さＴ₃
との差（Ｔ₂−Ｔ₃）は突条１２の高さｈ₂′に等しい。
ｈ₁及びｈ₂′の値を調整することにより燃焼室穴周りの
面圧分布を種々に調整できる。ガスケットＧ５において
も下板２の燃焼室穴周縁部２１が上板１の折り返し部１
０により包まれ、また凸形ビード７の凹部８及び突条１
２が上板１の内面１１により覆われているので、硬質合
成樹脂層９及び硬質合成樹脂の突条１２が燃焼ガスに曝
されたり、接合面により擦られる危険はない。

【００３５】上記説明した各実施例及び変形例において
は、図面及び説明の複雑化を避けるために図示及び説明
を省略したが、シリンダヘッドやシリンダブロックの接
合面と当接するガスケット上面及び下面を形成する金属
板の表面には、通常、接合面や金属板の傷、表面粗さ、
歪み等を補償し、吸収するために、ふっ素ゴム或はシリ
コーン樹脂等の耐熱性のシール材が被覆される。積層さ
れた金属板の互いに当接する表面の一方又は双方にも同
様な目的で、同様な被覆が施される。

【００３６】上記説明した実施例及び変形例は更に種々
変形することができ、例えば、ビード７の突出方向を反
対方向に変更し或はビード７を他の金属板に配設するよ
うに変更することは、かかる変更によってもビード７の
凹部内の硬質合成樹脂層９が他の金属板によって覆わ
れ、かつ燃焼ガスに曝される危険がない限り許容され
る。また第５実施例（図８）においてビード７、硬質合
成樹脂層９を折り返し部１０の外側に設け、硬質合成樹
脂の突条１２を折り返し部１０の位置に設けるように、
配設位置を入れ換えることもできる。更に、凹部に硬質
合成樹脂層を充填していないビードを並設することもで
き、例えば図５のガスケットＧ２の下板２の折り返し部
１０より外側の位置において燃焼室用穴５を囲繞し、図
の下方に突出する凸形ビードを設けることもできる。

【００３７】

【発明の効果】本発明のシリンダヘッドガスケットは、
上記説明した所から明らかなとおり、下記の顕著な効果
を奏することができる。燃焼室穴周りに形成するガスケット厚さが厚い部分と
その他の部分との厚さの段差を適宜に調整でき、また必
要に応じ該段差を多段に形成でき、燃焼室穴の周りに種
々の所望のシール面圧分布を形成できる。このシール面
圧には凸形ビードの弾性力による面圧も重畳され、しか
も、硬質合成樹脂層がストッパー部として機能するの
で、ビードのへたりが防止できる。上記のガスケット厚さの段差の大きさを燃焼室穴周り
の位置によって変えることができ、燃焼室穴周りにおい
てシール面圧を均等化できる等、シール性能を向上させ
ることができる。上記効果をもたらす硬質合成樹脂層が燃焼ガスに曝さ
れ、劣化、焼損する危険がなく、またシリンダヘッド及
びシリンダブロックの接合面により擦られ、摩耗する危
険がなく、ガスケットの信頼性が高い。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例のガスケットの平面図であ
る。

【図２】図１のＡ−Ａ線による拡大断面図である。

【図３】図１のＢ−Ｂ線による拡大断面図である。

【図４】第１実施例の変形例の断面図である。

【図５】本発明の第２実施例のガスケットの断面図であ
る。

【図６】本発明の第３実施例のガスケットの断面図であ
る。

【図７】本発明の第４実施例のガスケットの断面図であ
る。

【図８】本発明の第５実施例のガスケットの断面図であ
る。

【図９】従来のシリンダヘッドガスケットの断面図であ
る。

【図１０】先きの出願に係る発明の金属ガスケットの断
面図である。

【符号の説明】

１上板２下板３厚さ調整板４中間板５燃焼室穴７凸形ビード９硬質合成樹脂層１０折り返し部

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】少なくとも燃焼室穴とボルト穴とを備え
る金属板を複数層積層してなり、該金属板の少なくとも
１層が燃焼室穴を囲繞する凸形ビードを有し、該ビード
の凹部はその深さの一部を硬質合成樹脂層により充填さ
れるとともに、前記金属板の他の層により覆われ、ガス
ケットの外面に配設された前記金属板の１層が、他の金
属板の少なくとも一層の燃焼室穴周縁部を包むように、
燃焼室穴周りの周縁部を折り返した折り返し部を備えて
いることを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項２】前記凸形ビードの断面形状が台形である
請求項１に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項３】２層の前記金属板を積層してなり、一方
の金属板の前記折り返し部が前記の充填された凸形ビー
ドを備える他方の金属板の燃焼室穴周縁部を包んでいる
請求項１に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項４】３層の前記金属板を積層してなり、第１
の金属板の前記折り返し部が第２の金属板の燃焼室穴周
縁部を包み、第３の金属板が前記折り返し部に重ならな
いように積層され、前記第２の金属板及び該第２金属板
の内側に積層された第３金属板の少なくとも一方が前記
の充填された凸形ビードを備えている請求項１に記載の
シリンダヘッドガスケット。
【請求項５】３層の前記金属板を積層してなり、第１
の金属板の折り返し部が第２及び第３の金属板の燃焼室
穴周縁部を包み、前記第２及び第３の金属板の少なくと
も一方が前記の充填された凸形ビードを備えている請求
項１に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項６】前記の充填された凸形ビードを前記折り
返し部の位置に備えている請求項１、３、４又は５に記
載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項７】前記の充填された凸形ビードを前記折り
返し部の外側の隣接位置に備えている請求項１、３、４
又は５に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項８】前記凸形ビードを前記折り返し部の位置
及びその外側の隣接する位置の双方に備え、少なくとも
一方の位置の凸形ビードが硬質合成樹脂層により充填さ
れている請求項１、３、４又は５に記載のシリンダヘッ
ドガスケット。
【請求項９】前記折り返し部の位置及びその外側の隣
接する位置の何れか一方に前記の充填された凸形ビード
を備え、他方の位置に硬質合成樹脂層を他の金属板に覆
われるように備えている請求項１、３、４又は５に記載
のシリンダヘッドガスケット。
【請求項１０】前記凸形ビードにおける硬質合成樹脂
層の充填高さが燃焼室穴周りの位置によって異なってい
る請求項１に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項１１】硬質合成樹脂層がエポキシ樹脂からな
る請求項１に記載のシリンダヘッドガスケット。