JPH1025700A - 用紙及びフィルター - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】流体の流通抵抗が小さくその透過量を増大し、
微粒子捕捉能力を向上した用紙及びフィルターを提供す
ること。 【構成】断面形状が異なる複数の繊維を含有する混合物
から抄紙された用紙。その用紙を用いたフィルター。 【効果】用紙の細孔の孔径を小さく、かつ細孔壁面積を
大きくでき、空隙率を大きくできる。この用紙を用いる
と流体の流通抵抗を小さくしてその透過量を増大し、微
粒子捕捉能率を向上できる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、例えば空気清浄用フィ
ルター等の各種フィルターに用いられる用紙及びそのフ
ィルターに関する。

【０００２】

【従来の技術】例えば自動車分野、機械製造分野、機械
加工分野、工作機分野、船舶分野、下水廃水分野、水処
理分野、集塵機分野等の工業分野全体において各種フィ
ルターが用いられている。例えば燃焼用空気、あるいは
自動車のエンジンの空冷や、室内用等のクーラーの空冷
その他のために取り入れられる空気を清浄にする空気清
浄用フィルター、集塵器に用いられる雰囲気中の塵を濾
し取る集塵器用フィルター、水中の混濁物を濾過する水
濾過用フィルター、油中の混濁物を濾過する油濾過用フ
ィルター等各種フィルターが用いられている。これらフ
ィルターには繊維加工製品が用いられており、その一つ
として繊維を抄き上げた、いわゆる抄紙した用紙も用い
られている。このフィルター用に抄紙した用紙として
は、各種パルプのセルロース繊維を抄き上げた紙、パル
プの繊維に合成繊維やガラス繊維を混合して抄き上げ
た、いわゆる混抄紙等が知られている。これらの紙がフ
ィルターとして用いられるときは、例えば空気清浄用フ
ィルターの場合には、空気の取り入れ口に単層あるいは
多重に重ねられた状態で取り付けられ、吸引器等により
吸引された空気がこれらの単層あるいは重ねられたもの
に当たるようにされる。このようにすると、紙の組織は
繊維が絡み合った構造を有し、繊維と繊維の間に細孔を
有するので、その細孔より大きい空気中の混濁物である
塵は通過を阻まれ、また、細孔より小さい塵は細孔壁に
吸着されて除去される。このようにして取り入れられる
空気はフィルターを通ることにより混濁物を除去される
ことにより清浄化される。このように、フィルターは空
気や水、油等の流体の混濁物を捕らえるが、その性能は
その流体を通過させる抵抗を小さくすること、すなわち
流体を透過し易くすることと、どれだけ小さな混濁物を
捕えることができ、その結果捕集効率を向上できるかと
いうその細孔の細かさ、あるいは細孔壁面積の大きさに
依存する。前者は紙における細孔径や空隙率に大きく依
存し、後者は細孔径や細孔壁面積、厚み等に影響される
ため製品としてはこれらのバランスをとることが重要で
ある。これまで濾紙に用いられている濾過材料としての
用紙は、セルロースパルプのみからなるものと、セルロ
ースパルプ及び合成繊維あるいは無機繊維とを混抄した
ものの２つに大別できる。一般の用紙を製造する抄紙法
では繊維が密に充填され過ぎるためこれを濾紙に用いる
場合には流体の透過性が著しく低くなることから、抄紙
条件に特別の工夫がなされることは勿論であるが、素材
面についても木材パルプの種類とリンターパルプの種
類、それらの混合割合の調節等その用紙を濾紙に使用し
た場合に空隙率を増大させるような試みがいろいろなさ
れている。合成繊維を混抄する目的は、機械的強度の向
上、耐湿強度の向上、耐熱性の向上にある。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、混抄紙
の場合、混合する合成繊維としては、断面形状が円形の
ものが使用されているため繊維の充填密度が高くなり易
く、用紙の組織構造を大きく変えるようなことは困難で
あった。また、細孔壁面積を大きくするのも容易ではな
かった。

【０００４】本発明の第１の目的は、空隙率が大きく、
かつ細孔壁面積の大きい用紙及びフルターを提供するこ
とにある。本発明の第２の目的は、流体の流通抵抗が小
さくて透過量を増大しかつ微粒子捕捉能力を向上させた
捕集効率の良い用紙及びフィルターを提供することにあ
る。本発明の第３の目的は、機械的強度、耐湿強度、耐
熱性を向上することができる用紙及びフルターを提供す
ることにある。本発明の第４の目的は、安価に得られる
用紙及びフィルターを提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するために、（１）、断面形状が異形の複数の繊維を
含有する混合物から抄紙された用紙を提供するものであ
る。また、本発明は、（２）、断面形状が異形の複数の
繊維はセルロース繊維と断面形状が該セルロース繊維と
は異形の合成繊維であ上記（１）の用紙、（３）、合成
繊維の割合が繊維全体の５ないし５０重量％である上記
（２）の用紙、（４）、上記（１）ないし（３）のいず
れかの用紙から得られるフィルターを提供するものであ
る。

【０００６】次に本発明を詳細に説明する。本発明にお
いて、「断面形状が異形の複数の繊維」とは、円形、楕
円形、三角形や四角形等の多角形、Ｈ型、Ｙ型、扁平形
等あらゆる採りえる断面形状の中から選択される異なる
複数の繊維をいう。この繊維には、通常の濾紙の用紙に
用いられている例えば木材パルプ、リンタパルプ等のセ
ルロース繊維、例えばポリエステル系、ポリアミド系
（ナイロン系）、ポリイミド系、ポリエチレンやポリプ
ロピレン等のポリオレフィン系等の合成繊維が挙げられ
る。これらの繊維は１種又は２種以上混合して用いられ
るが、セルロース繊維と合成繊維を含有する混合物を抄
紙すると、機械的強度、耐湿強度、耐熱性等の点で好ま
しい。断面形状が異形の複数の繊維としては、セルロー
ス繊維と断面形状がこれとは異形の合成繊維が好まし
い。セルロース繊維の断面形状は円形、楕円形あるいは
扁平形が多いがその場合にはこれと混合する合成繊維等
はこれら以外の他の形状とすることが好ましい。上記の
繊維としては、ガラス繊維、鉱物繊維、炭素繊維、セル
ロース以外の他の天然繊維等も使用でき、これらも上記
と同様に用いることができる。

【０００７】断面形状の異なる複数の繊維は、断面形状
が異なり、かつその繊維径（繊維の断面の直径）が異な
る場合でも良く、繊維径が同じ又は異なり断面形状が異
なる複数の繊維と断面形状が同じで繊維径の異なる複数
の繊維の混合物でも良い。これらの繊維の混合物が抄紙
されて、同一種類の繊維を原料に用いた紙、異なる種類
の繊維を原料に用いた、いわゆる混抄紙が得られるが、
その厚さとしては例えば６０〜１００ｇ／ｍ² が挙げら
れるがこれに限らない。これらの用紙を得る際の、断面
形状の異なる複数の繊維は、一つの断面形状のものに対
し他のものが５ないし５０重量％混合されることが好ま
しく、例えばセルロース繊維に対してこれと断面形状の
異なる合成繊維を混合する場合が挙げられるが、５％よ
り少ないと空隙率を大きくする効果が少なく、５０重量
％より多いと従来の製造装置を使用した場合に作業性が
低下する。

【０００８】後述の実施例から明らかのように、このよ
うな断面形状の異なる繊維を含有する混合物の抄紙によ
り得られた紙は、断面形状が扁平形、円形で繊維径が同
じ範囲のものの空隙率の７１．１％〜７６．６％に比べ
て、空隙率を約８１％以上約８７％（８０．６％〜８
６．９％）にすることができ、約１０％向上させること
ができ、しかも断面形状が円形で繊維径が同じ範囲のも
のの細孔の孔径２５〜５５μｍに比べて、１６〜４６μ
ｍ（好ましくは１６〜３８μｍ）のように小さくするこ
とができる。このことから、本発明は、「断面形状が異
形の複数の繊維を含有する混合物から抄紙された用紙で
あって、上記断面形状が異形の複数の繊維は断面形状が
円形（又は楕円形又は扁平形）のセルロース繊維と断面
形状が円形（又は楕円形又は扁平形）でない合成繊維で
あり、かつ合成繊維の割合が繊維全体の５ないし５０重
量％である混合物から抄紙され、かつ空隙率が８０％以
上９０％以下とした（少なくとも８０％とした）用紙」
とすることもでき、また、「細孔の孔径を１６〜４６μ
ｍ（又は１６〜３８μｍ）とし、」の限定を加えても良
く、さらに「紙厚が６０〜１００ｇ／ｍ² （又はほぼ１
００ｇ／ｍ² ）」の限定を加えても良い。これら各発明
において細孔、空隙率は後述の実施例の好ましい範囲の
数値に限定することもできる。また、「用紙」は「フィ
ルター用紙」とすることもでき、「フィルター」はこれ
らの用紙、フィルター用紙を用いたものでも良い。

【０００９】本発明の用紙には、他の添加剤を加えても
良く、例えば繊維の水中における分散を良くするため
に、全原料繊維に対し、５重量％以下の界面活性剤等の
分散剤を用いても良く、また、紙の強度を増すために全
原料繊維に対し５重量％以下のポリアクリルアミド系樹
脂等の紙力増強剤その他の添加剤を加えても良い。ま
た、耐油性向上、機械的強度向上を目的として使用され
るフェノール樹脂、エポキシ樹脂等を３０重量％を越え
ない範囲で添加することも可能である。本発明の用紙を
製造するには、原料の繊維を水中に分散させた分散液を
通常の抄紙用装置を通常の方法により用いることにより
製造できる。

【００１０】本発明の用紙は、濾過器のケース等に例え
ば単層又は多重に重ねて収容され、フィルターとして用
いられる。その種類としては、上記の「従来の技術」の
項で述べた、空気清浄用フィルター、集塵器用フィルタ
ー、水濾過用フィルター、油中の混濁油濾過用フィルタ
ーその他が挙げられる。

【００１１】

【発明の実施の形態】詳細は以下の実施例で説明する
が、断面形状の異なる複数の繊維の混合物から得られる
用紙は、特にその断面形状の異なる繊維が繊維全体の５
〜５０重量％含有されている場合には、その繊維全体の
断面形状が同じ場合、特に円形である場合に比べ、充填
密度を低くすることができ、また、細孔壁面積を大きく
することができる。

【００１２】

【実施例】以下に実施例によって本発明をさらに詳細に
説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。また、各実施例における部はいずれも重量部であ
る。 実施例１ 木材パルプ（断面形状が扁平の繊維径（長径：２０〜３
０μ、短径：５〜２０μ）のセルロース繊維）９０重量
％と、ポリエステル繊維（断面形状がＨ型で繊維径（Ｈ
の内接円の直径、以下同様）２０〜３０μｍ）１０重量
％を水と混合した混合物を網上に展開させて水分を濾過
する通常の方法により抄紙を行ない、８０℃で乾燥させ
て厚さ１０３ｇ／ｍ² の混抄紙を製造した。この紙につ
いて調べたところ、紙厚０．３３ｍｍ、透気度１５．
９、細孔の孔径１８〜２４μｍ、空隙率８１．５％であ
った。

【００１３】なお、透気度とは、ＪＩＳ Ｐ８１３１
「紙及び板紙の透気度試験方法」に準じて行なう測定値
であって、直径１０ｍｍの円形試験片を３００ｃｃの空
気が通過する時間で表示される。また、孔径とは濾紙の
平面に垂直方向から撮影した電子顕微鏡写真を基に見掛
けの孔の大きさを物指しで測定した値である。また、空
隙率は次式で表現される。 空隙率＝〔（ｗ₃ −ｗ₁ ）／（ｗ₃ −ｗ₂ ）〕×１００ ここで、ｗ₁ は濾紙重量、ｗ₂ はブタノール中の濾紙重
量、ｗ₃ はブタノールと濾紙の合計重量である。

【００１４】比較例１ 実施例１において、ポリエステル繊維として通常のポリ
エステル繊維（断面形状が円形で繊維径２０〜３０μ
ｍ）を用いた以外は同様にして抄紙し、乾燥して１０２
ｇ／ｍ² の紙を得た。この得られた紙について実施例１
と同様に調べたところ、紙厚０．３９ｍｍ、透気度８．
３、孔径２７〜３５μｍ、空隙率７１．３％であった。

【００１５】実施例２ 木材パルプ（断面形状が扁平（実施例１と同様）の繊維
径のセルロース繊維）８０重量％と、ポリエステル繊維
（断面形状がＹ型で繊維径２０〜３０μｍ）１０重量％
を水と混合した混合物を網上に展開させて水分を濾過す
る通常の方法により抄紙を行ない、８０℃で乾燥させて
厚さ１０２ｇ／ｍ² の混抄紙を製造した。この得られた
紙について実施例１と同様に調べたところ、紙厚０．３
８ｍｍ、透気度９．８、細孔の孔径２５〜３１μｍ、空
隙率８２．９％であった。

【００１６】比較例２ 実施例２において、ポリエステル繊維として通常のポリ
エステル繊維（断面形状が円形で繊維径２０〜３０μ
ｍ）を用いた以外は同様にして抄紙し、乾燥して１０４
ｇ／ｍ² の紙を得た。この得られた紙について実施例１
と同様に調べたところ、紙厚０．３９ｍｍ、透気度６．
９、孔径２８〜３８μｍ、空隙率７６．６％であった。

【００１７】実施例３ 木材パルプ（断面形状が扁平（実施例１と同様）の繊維
径のセルロース繊維）６０重量％と、ナイロン繊維（断
面形状がＹ型で繊維径２０〜３０μｍ）４０重量％を水
と混合した混合物を網上に展開させて水分を濾過する通
常の方法により抄紙を行ない、８０℃で乾燥させて厚さ
１００ｇ／ｍ² の混抄紙を製造した。この得られた紙に
ついて実施例１と同様に調べたところ、紙厚０．４８ｍ
ｍ、透気度４．０、細孔の孔径４１〜４６μｍ、空隙率
８６．９％であった。

【００１８】比較例３ 実施例３において、ナイロン繊維として通常のナイロン
繊維（断面形状が円形の繊維径２０〜３０μｍ）を用い
た以外は同様にして抄紙し、乾燥して１０５ｇ／ｍ² の
紙を得た。この得られた紙について実施例１と同様に調
べたところ、紙厚０．４９ｍｍ、透気度３．４、孔径４
８〜５５μｍ、空隙率７１．１％であった。

【００１９】実施例４ 木材パルプ（断面形状が扁平（実施例１と同様）の繊維
径のセルロース繊維）９２重量％と、ナイロン繊維（断
面形状がＹ型の繊維径２０〜３０μｍ）８重量％を水と
混合した混合物を網上に展開させて水分を濾過する通常
の方法により抄紙を行ない、８０℃で乾燥させて厚さ１
０２ｇ／ｍ² の混抄紙を製造した。この得られた紙につ
いて実施例１と同様に調べたところ、紙厚０．３４ｍ
ｍ、透気度１５．４、細孔の孔径１３〜２０μｍ、空隙
率８０．６％であった。

【００２０】参考例１ 木材パルプ（断面形状が扁平（実施例１と同様）の繊維
径のセルロース繊維）９０重量％と、極細ナイロン繊維
（断面形状円形の繊維径０．２〜１μｍ）１０％を水と
混合した混合物を網上に展開させて水分を濾過する通常
の方法により抄紙を行ない、８０℃で乾燥させて厚さ９
９ｇ／ｍ² の混抄紙を製造した。この得られた紙につい
て実施例１と同様に調べたところ、紙厚０．３４ｍｍ、
透気度１５．４、細孔の孔径１２〜１８μｍ、空隙率７
５．３％であった。

【００２１】上記実施例１、２と比較例１、２の結果か
ら、孔径を小さくでき、また空隙率を大きくでき、した
がって細孔表面積を増大できることが窺われる。共に微
粒子捕捉に有利である。また、実施例３と比較例３の結
果から、透気度及び孔径を似た領域に合わせた場合でも
空隙率には大きな差が生じており、実施例の場合には細
孔表面積が大きいことが窺われる。これは微粒子捕捉に
有利である。また、実施例４と参考例１の結果から、合
成繊維混合比を調節することにより極細繊維混抄紙に似
た孔径、空隙率を得ることができことがわかる。なお、
合成繊維の断面形状Ｈ型、Ｙ型は繊維を溶融紡糸すると
き、その金型の断面形状によりその形状にすることがで
きる。極細繊維は断面形状が円形の繊維を縦割りして細
くするのでその分コスト高になる。

【００２２】

【発明の効果】本発明によれば、断面形状が異なる複数
の繊維を含有する混合物を抄紙して得られる用紙を提供
できるので、その用紙の空隙率を大きく、かつ細孔の孔
径を小さく、細孔壁面積を大きくでき、流体の流通抵抗
を小さくてその透過量を増大しかつ微粒子捕捉能力を向
上させて捕集効率の良い用紙及びフィルターを提供する
ことができる。また、合成繊維を混抄させると機械的強
度、耐湿強度、耐熱性を向上することができる用紙及び
フルターを提供することができる。また、極細繊維を混
抄する場合に比べ、安価で空隙率、細孔の性能がそれと
同等又はそれ以上の用紙及びフィルターを提供すること
ができる。

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 断面形状が異形の複数の繊維を含有する
   混合物から抄紙された用紙。
2. 【請求項２】 断面形状が異形の複数の繊維はセルロー
   ス繊維と断面形状が該セルロース繊維とは異形の合成繊
   維である請求項１記載の用紙。
3. 【請求項３】 合成繊維の割合が繊維全体の５ないし５
   ０重量％である請求項２記載の用紙。
4. 【請求項４】 請求項１ないし３のいずれかに記載され
   た用紙から得られるフィルター。