JPH10237601A - 耐中性塩化物腐食性オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents

耐中性塩化物腐食性オーステナイト系ステンレス鋼

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JPH10237601A
JPH10237601A JP4404797A JP4404797A JPH10237601A JP H10237601 A JPH10237601 A JP H10237601A JP 4404797 A JP4404797 A JP 4404797A JP 4404797 A JP4404797 A JP 4404797A JP H10237601 A JPH10237601 A JP H10237601A
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JP
Japan
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steel
resistance
corrosion
corrosion resistance
sulfuric acid
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JP4404797A
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Hisanobu Hashizume
寿伸 橋詰
Yoshio Taruya
芳男 樽谷
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】中性塩化物環境下において優れた耐隙間腐食性
と耐応力腐食割れ性を備えるとともに耐硫酸露点腐食性
と熱間加工性にも優れるオーステナイト系ステンレス鋼
を提供する。 【解決手段】重量%で、C:0.05%以下、Si:1%以下、Mn:2%以
下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Cr:18〜24%、Ni:16〜26%、M
o:4〜6.5%、N:0.1〜0.3%、Cu:0〜3.0%、W:0〜3.0%、Al:0〜
0.05%、Ca:0〜0.005%、Mg:0〜0.005%、B:0〜0.002%含有す
るとともに、下記(1)、(2)式で示されるPI値とNi-bal.値
が35≦PI≦50、-2.5≦Ni-bal.≦1を満たし、残部がFeお
よび不可避的不純物からなる耐中性塩化物腐食性オース
テナイト系ステンレス鋼。 PI=Cr+3.3(Mo+0.5W)+16N ・・・(1) Ni-bal.=Ni+30
(C+N)+0.5Mn−1.1(Cr+1.5Si+Mo) ・・・(2)ここで、
上記(1)、(2)式中の元素記号は鋼中における各元素の重
量%示している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐中性塩化物腐食
性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼に関し、特に
火力発電プラントにおいて使用される石炭専焼ボイラー
の脱硫装置、煙道および煙突等の部材として好適なオー
ステナイト系ステンレス鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】火力発電プラントの石炭または重油の専
焼ボイラーの脱硫装置、煙道および煙突等では、排ガス
中に含まれるSOX に起因する硫酸露点腐食が発生する
ことが知られている。硫酸露点腐食とは、排ガスが装置
の表面に接して温度が低下し、排ガス中の水分が露点に
達して装置内側の表面で結露し、排ガス中のSOX と結
びつき、濃い硫酸となって装置の表面を激しく腐食する
現象である。
【0003】硫酸露点腐食を防止する鋼として、1重量
%程度(以下、化学組成の%表示は重量%とする。)の
Crを含有する低合金鋼にSやCu等を添加した耐硫酸
露点腐食鋼が実用化されている。しかし、耐硫酸露点腐
食鋼は低合金鋼であるため、鋼材表面には腐食生成物が
発生してしまう。この腐食生成物は、専焼ボイラーの煙
突等から外部に飛散して環境問題を引き起こす。
【0004】硫酸露点腐食を防止したその他の鋼とし
て、特開平4−346638号公報には、Cuを2%を
超え5%以下含有することで硫酸露点腐食を防止し、C
uの添加による熱間加工性の悪化をBの添加と、酸素含
有量を低くすることによって防止したオーステナイト系
ステンレス鋼が開示されている。特公平6−8485号
公報には、耐全面腐食指数と耐隙間腐食指数を規定する
ことにより、耐硫酸露点腐食、耐全面腐食および耐隙間
腐食に優れるオーステナイト系ステンレス鋼が開示され
ている。
【0005】一方、石炭を燃料として使用する火力発電
プラントの石炭専焼ボイラー内の脱硫装置、煙道および
煙突等では、前述した硫酸露点腐食の他に、高濃度の中
性塩化物環境下における隙間腐食や応力腐食割れが問題
となる。石炭専焼ボイラーの燃料は、主に海外からの輸
入石炭である。輸入石炭には、貯蔵中および運搬中の自
然発火を防止するために多量の海水が散布されている。
このような輸入石炭を燃焼すると、排ガス中の塩素濃度
が上昇する。この塩素は、排煙脱硫装置で発生する石灰
スラリー中に溶け込み濃縮する。そのため、排煙脱硫装
置の煙道や煙突の部材は、CaCl2やMgCl2を主体
とした中性塩化物水溶液環境下にさらされている。
【0006】中性塩化物水溶液環境下では、排煙脱硫装
置の煙道や煙突の部材同士の接続部分等に隙間腐食と応
力腐食割れが起こりやすくなる。隙間腐食は、隙間部の
溶存酸素が減少することにより起こる。隙間部で溶存酸
素が減少すれば、ステンレス鋼の不動態皮膜は局部的に
破壊され、Feイオンが溶出する。中性塩化物水溶液環
境下では隙間部にClイオンが存在しているので、電気
的中性を維持するためにFeイオンは一層溶出し、腐食
が進行する。一方、応力腐食割れは、材料の切り欠き部
から起こるので、隙間腐食が進行している部分は、同時
に応力腐食割れを起こしやすい部分となる。
【0007】前述した特開平4−346638号公報や
特公平6−8485号公報に記載されているオーステナ
イト系ステンレス鋼は、あくまで耐硫酸露点腐食性を改
善する目的で開発された鋼であって、石炭専焼ボイラー
のような中性塩化物環境下で使用する部材に発生する隙
間腐食や応力腐食割れを防止できない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、中性
塩化物環境下において優れた耐隙間腐食性と耐応力腐食
割れ性を備えるとともに耐硫酸露点腐食性と熱間加工性
にも優れるオーステナイト系ステンレス鋼を提供するこ
とである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記の
オーステナイト系ステンレス鋼にある。
【0010】『重量%で、C:0.05%以下、Si:
1%以下、Mn:2%以下、P:0.03%以下、S:
0.01%以下、Cr:18〜24%、Ni:16〜2
6%、 Mo:4〜6.5%、N:0.1〜0.3%、C
u:0〜3%、W:0〜3%、 Al:0〜0.05%、
Ca:0〜0.005%、Mg:0〜0.005%、
B:0〜0.002%含有するとともに、下記(1)、
(2)式で示されるPI値とNi-bal.値が35≦PI≦
50、−2.5≦Ni-bal.≦1を満たし、残部がFeお
よび不可避的不純物からなる耐中性塩化物腐食性オース
テナイト系ステンレス鋼。
【0011】 PI=Cr+3.3(Mo+0.5W)+16N ・・・・・・・ (1) Ni-bal.=Ni+30(C+N)+0.5Mn−1.1(Cr+1.5Si+Mo) ・・・・・・・(2) ここで、上記(1)、(2)式中の元素記号は鋼中にお
ける各元素の重量%を表す。』 本発明のオーステナイト系ステンレス鋼(以下、本発明
鋼ともいう。)では、下記の技術手段により、耐隙間腐
食性、耐応力腐食割れ性、耐硫酸露点腐食性および熱間
加工性を向上させている。
【0012】(A)耐隙間腐食性 本発明鋼は、前記(1)式のPI値を35以上に規定し
ているので、石炭専焼ボイラー等の中性塩化物水溶液に
接する部材に使用しても、十分な耐隙間腐食性を維持で
きる。これは、部材同士の接続部、すなわちフランジ部
や溶接部等の隙間部でも本発明鋼の表面が不動態化し続
けるからである。なお、本発明鋼でいうPI値とは、ス
テンレス鋼の耐食性を改善するCr、Mo、NおよびW
をCr当量として表した値である。
【0013】(B)耐応力腐食割れ性 石炭専焼ボイラー用部材には、数10N/mm2の応力がか
かる。このような応力負荷条件下であっても、本発明鋼
は、前記(1)式のPI値を35以上に規定するととも
に、Ni含有量を16%以上にすることによって、石炭
専焼ボイラー等の部材としての十分な耐応力腐食割れ性
を維持できる。PI値を35以上に規定すれば、上記
(A)で述べたように、耐隙間腐食性が向上する。応力
腐食割れは、隙間腐食を起こして切り欠き状になった部
分を起点として発生することが多いので、隙間腐食を未
然に防ぐことが応力腐食割れを防止することにもなる。
【0014】したがって、本発明鋼は、耐応力腐食割れ
性を向上させるためにPI値を35以上に規定する。ま
た、中性塩化物環境において応力腐食割れ抑制効果の大
きいNi量も併せて規定することで優れた耐応力腐食割
れ性を得ている。
【0015】(C)耐硫酸露点腐食性 本発明鋼は、SUS304やSUS316系鋼に比べ
て、鋼中のCr、NiおよびMoの含有量が高い。この
ために、硫酸浸漬環境での耐食性が優れており、石炭専
焼用ボイラー用等の部材として十分な耐硫酸露点腐食性
を備えている。また、鋼中にCuを含有させることによ
り、耐硫酸露点腐食性がさらに向上する。
【0016】(D)熱間加工性 Cr、NiおよびMoの含有量が多いステンレス鋼は、
熱間鍛造時や熱間圧延時に割れが生じ易い。しかし、本
発明鋼では、(2)式で定義するNi-bal. 値を−0.
25 から1までの範囲に規定することにより、熱間加
工性を向上させている。(2)式のNi-bal.値とは、
オーステナイト生成元素である、Ni、C、NおよびM
nの含有量にそれぞれの定数を乗したものの和からδ-
フェライトの生成元素であるCr、SiおよびMoの含
有量にそれぞれの定数を乗じたものの和を減じて求まる
値であって、オーステナイトの生成しやすさを表す指数
となる値である。Ni-bal.値が−0.25から1までの
範囲にあれば、数%のδ- フェライトと残部がオーステ
ナイトの相となり、熱間加工性が良好となる。
【0017】
【発明の実施の形態】中性塩環境下での耐隙間腐食性、
耐応力腐食割れ性、耐硫酸露点腐食性および熱間加工性
におよぼす本発明鋼の各合金元素の影響とその含有量に
ついて説明する。
【0018】C:0.05%以下 Cは、耐隙間腐食性と耐応力腐食割れ性を悪化させるの
で、0.05%以下とした。一方、Cは本発明鋼の用途
に必要な強度を確保することと商業規模での溶製の容易
さから、0.01%以上含有させるのが望ましい。
【0019】Si:1%以下 Siは、過剰に含有させると鋼の熱間加工性、靭性、溶
接性を悪化する元素なので含有量の上限を1%とした。
一方、Siには脱酸作用があり、その効果を発揮させる
ためには0.1%以上含有させるのが望ましい。
【0020】Mn:2%以下 Mnは、オーステナイトを安定化させる元素であり、同
様の効果がある高価なNiの量を低減させるためにも添
加するのが望ましい。しかし、過剰に含有させると鋼の
耐隙間腐食性と耐応力腐食割れ性を悪化させるので、含
有量の上限を2%とした。一方、MnはSiと同様に脱
酸作用があり、その効果を発揮させるためには、0.1
%以上含有させるのが望ましい。
【0021】P:0.03%以下 Pは、鋼の製造過程で完全に除去することが困難な不可
避的不純物の1つであり、耐隙間腐食性、耐応力腐食割
れ性および熱間加工性を悪化させる。したがって、含有
量を0.03%以下とした。
【0022】S:0.01%以下 Sも鋼の製造過程で完全に除去することが困難な不可避
的不純物の1つである。Sが鋼中に多く存在するとMn
と結びついてMnSとなる。MnSは、耐隙間腐食性を
著しく悪化させる。したがって、Sの含有量を0.01
%以下とした。
【0023】Cr:18〜24% Crは、中性塩化物環境における耐隙間腐食性、耐応力
腐食割れ性および耐硫酸露点腐食性を改善する元素の一
つである。中性塩化物環境下でも高い耐隙間腐食性を維
持するためには、Ni、MoおよびNを共存させてもC
rを18%以上含有させる必要がある。Crを含有させ
るほど耐食性は向上するが、24%を超えるとδ- フェ
ライトフェライト相が多量に生成して、熱間加工性が悪
化する。したがって、Crの含有量を18〜24%とし
た。
【0024】Ni:16〜26% Niは、オーステナイトを安定化させる元素である。ま
た、Niは、中性塩化物環境下での耐応力腐食割れ性や
耐硫酸露点腐食性を向上させる。中性塩化物環境下にお
いて必要な耐応力腐食割れ性を維持するためには、Ni
を16%以上含有させる必要がある。しかし、26%を
超えて含有させてもその効果は飽和し、製造コストが上
昇するだけなので、上限を26%とした。
【0025】Mo:4〜6.5% Moは、中性塩化物環境下における耐隙間腐食性と耐応
力腐食割れ性を改善する元素の一つである。本発明鋼の
使用環境である中性塩化物環境において必要な耐隙間腐
食性と耐応力腐食割れ性を維持するためには、Moを4
%以上含有させる必要がある。しかし、6.5%を超え
て含有させてもその効果は飽和し、製造コストが上昇す
るだけなので、上限を6.5%とした。
【0026】N:0.1〜0.3% Nは、Cr、Ni、Moと共存することにより耐食性を
向上させる。特に、中性塩化物環境における耐隙間腐食
性を向上させる。その効果は、0.1% 以上含有させる
ことにより発揮される。しかし、含有量が0.3% を超
えるとその効果が飽和するばかりか、ステンレス鋼の結
晶粒界で窒化物となり、耐隙間腐食性、耐応力腐食割れ
性や熱間加工性を悪化させるので、含有量の上限を0.
3% とした。
【0027】Cu:0〜3% Cuは、添加しなくてもよいが、耐硫酸露点腐食性、耐
隙間腐食性および耐応力腐食割れ性を向上させるので、
添加するのが望ましい。その効果を十分発揮させるに
は、0.5%以上含有させるのがよい。しかし、3%を
超えて含有させると熱間加工性や溶接性を悪化させる。
したがって、上限を3%とした。
【0028】W:0〜3% Wの添加も必須ではないが、耐隙間腐食性と耐応力腐食
割れ性を向上させるので、添加するのが望ましい。その
効果を十分発揮させるには、0.5%以上含有させるの
がよい。しかし、3%を超えて含有させてもその効果は
飽和し、製造コストを上昇させるだけである。したがっ
て、上限を3%とした。
【0029】Al:0〜0.05% Alは、脱酸作用があるので必要に応じて添加する。そ
の効果を十分発揮させるには、0.005%以上含有さ
せるのがよい。しかし、0.05%を超えて含有させて
も脱酸効果が飽和するばかりか、溶接性を悪化させるの
で、上限を 0.05%とした。
【0030】Ca:0〜0.005% Caは、脱酸、脱硫元素として必要に応じて添加する元
素である。また熱間加工性を改善する効果もある。これ
らの効果を十分発揮させるには、0.0002%以上含
有させるのがよい。しかし、0.005%超えるとその
効果が飽和する。したがって、含有量の上限を0.00
5%とした。
【0031】Mg:0〜0.005% Mgは、脱酸、脱硫元素として必要に応じて添加する元
素である。また熱間加工性を改善する効果もある。これ
らの効果を十分発揮させるには、0.0002%以上含
有させるのがよい。しかし、0.005%超えるとその
効果が飽和する。したがって、含有量の上限を0.00
5%とした。
【0032】B:0〜0.002% Bは、熱間加工性を改善するので、必要に応じて添加す
る元素である。その効果を十分発揮させるには、0.0
002% 以上含有させるのがよい。しかし、含有量が
0.002% を超えると炭化物の粒界析出を促進して耐
隙間腐食性と耐応力腐食割れ性を悪化させる。したがっ
て、Bの含有量の上限を0.002% とした。
【0033】PI値:35≦PI≦50 中性塩化物環境において必要な耐隙間腐食性と耐応力腐
食割れ性を維持するためには、本発明鋼の各元素の含有
量を上記の規定範囲内にする他に、前記(1)式で示さ
れるPI値が35以上50以下となるように各元素の含
有量を調整する必要がある。PI値が35未満では、耐
隙間腐食性と耐応力腐食割れ性が不十分である。一方、
PI値が50を超えると、原料コストを上昇させるばか
りか、熱間加工性も悪化させてしまう。したがって、P
I値の上限を50とした。
【0034】Ni-bal.値:−2.5≦Ni-bal.≦1 良好な熱間加工性を確保するためには、本発明鋼の各元
素の含有量を上記の規定範囲内にする他に、前記(2)
式で示されるNi-bal.値が−0.25以上1以下となる
ように各元素の含有量を調整する必要がある。Ni-ba
l.値が−0.25未満でも1を超えても熱間鍛造時や熱
間圧延時に割れが生じる。
【0035】
【実施例】本発明鋼を溶製し、厚板にした後、耐隙間腐
食性、耐応力腐食割れ性、耐硫酸露点腐食性および熱間
加工性を調査した。
【0036】表1に、真空溶解法により溶製した本発明
鋼と本発明鋼の組成とは異なる比較のための鋼(以下、
比較鋼と略す。)の化学組成を示した。この溶製鋼に通
常の方法で熱間鍛造を施した後、熱間圧延を行って厚さ
6mmの熱延板に成形した。熱間圧延の際には、熱延板
に発生した割れを目視で観察した。その後、熱延板に1
150℃で30分の固溶化熱処理を施した。
【0037】
【表1】
【0038】(a)耐隙間腐食性について 本発明鋼と比較鋼の熱延板から図1で示す2つのサイズ
の試験片を切り出し、#600番のエメリー紙まで湿式
研磨を施し、アセトン脱脂した。2つのサイズの試験片
をボルトで拘束することにより隙間部を再現した。な
お、ボルトにはテフロンワッシャーを咬ませて絶縁し
た。隙間腐食試験は、排煙脱硫装置の煙道や煙突部の実
際の乾燥、湿潤の繰り返し状況を想定して、塩水噴霧−
乾燥−湿潤を144サイクル(720h)で行った。塩水
は、石炭専焼ボイラーの排煙脱硫装置の石灰スラリー内
の塩素イオン濃度と同程度となるように、CaCl2
MgCl2を5:1の比率で蒸留水中に添加し、硫酸を
用いて溶液のpHを5に調整し、塩素イオン濃度を20
000ppmとした。
【0039】試験後の減重量を測定し、腐食は隙間部の
みで発生していると仮定して、減重量を隙間部の総面積
で割った値(以下、腐食減量という。)で耐隙間腐食性
を評価した。その結果を表2に示した。
【0040】
【表2】
【0041】本発明鋼は、腐食減量が全て3.2g/m
2 以下であり、良好な耐隙間腐食性を示した。一方、比
較鋼15〜18および20は、腐食減量が3.7g/m
2 を超えており、耐隙間腐食性に劣っている。
【0042】また、本発明鋼と比較鋼のPI値と腐食減
量の関係も調査した。その結果を図2に示した。PI値
が35以上になると、腐食減量が3.2g/m2 以下に
なることが分かった。
【0043】(b)耐応力腐食割れ性について Uベンド試験法にて応力腐食割れ試験を行った。試験片
は、図3で示すように、熱延板から横10mm、縦75
mmの形状に切り出し、#600番のエメリー紙まで湿
式研磨してアセトン脱脂し、2枚の試験片の間にテフロ
ンシートを挟んだ後、ポンチとローラーでU字に曲げ、
さらにボルトでU字の間隔を5mm狭めて応力を負荷した
ものとした。中性塩化物環境下での応力腐食割れは、隙
間部でより激しく発生するので、試験片に応力を負荷す
るとともに、隙間部も形成したのである。
【0044】上記(A)と同様の塩素イオン濃度が20
000ppm の塩水を使用して塩水噴霧−乾燥−湿潤を1
44サイクル(720h)行って、応力腐食割れの発生の
有無を調査した。あわせて、隙間部の腐食減量も測定し
た。結果を表2に示した。本発明鋼には、応力腐食割れ
は発生しなかった。隙間部の腐食減量も2g/m2 以下
と良好であった。一方、比較鋼1、19および20に
は、応力腐食割れが発生した。
【0045】(c)熱間加工性について 熱間圧延時に熱延板に発生する割れを観察した。結果を
表2に示した。本発明鋼の熱延板には割れが発生しなか
った。一方、比較鋼20、21の熱延板は、Ni-bal.
が−2.5を下回っているために割れが発生した。比較
鋼22の熱延板はNi-bal.が1を超えているので割れ
が生じた。
【0046】(d)耐硫酸露点腐食性について 本発明鋼と比較鋼の熱延板から試験片を切り出し、硫酸
に浸漬して耐硫酸露点腐食性を調査した。試験片は、熱
延板から横10mm、縦40mmの形状に切り出した
後、#600番のエメリー紙まで湿式研磨し、アセトン
脱脂したものとした。本発明鋼と比較鋼の試験片を80
%、140℃の硫酸水溶液に4h浸漬した後に腐食速度
を測定した。腐食速度は1h当たりの腐食減量[g/m2
h] で表している。試験結果を表2に示した。本発明鋼
の腐食速度は、全て100g/m2/h未満であり、良好な耐
硫酸露点腐食性を示した。一方、比較鋼15〜18、2
0および22は、腐食速度が100g/m2/hを超えてお
り、耐硫酸露点腐食性が不十分である。
【0047】
【発明の効果】本発明のオーステナイト系ステンレス鋼
は、中性塩化物環境下において優れた耐隙間腐食性と耐
応力腐食割れ性を備えるとともに耐硫酸露点腐食性と熱
間加工性を持つので、石炭専焼ボイラー用の部材等の中
性塩化物環境下で用いられる部材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】隙間腐食試験片を示す図である。
【図2】隙間腐食試験後の腐食減量とPI値との関係を
示す図である。
【図3】応力腐食割れ試験の試験片と応力負荷状態を示
す図である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.05%以下、Si:1
    %以下、Mn:2%以下、P:0.03%以下、S:0.
    01%以下、Cr:18〜24%、Ni:16〜26
    %、 Mo:4〜6.5%、N:0.1〜0.3%、Cu:
    0〜3%、W:0〜3%、 Al:0〜0.05%、C
    a:0〜0.005%、Mg:0〜0.005%、 B:
    0〜0.002%含有するとともに、下記(1)、(2)式
    で示されるPI値とNi-bal.値が35≦PI≦50、
    −2.5≦Ni-bal. ≦1を満たし、残部がFeおよび
    不可避的不純物からなることを特徴とする耐中性塩化物
    腐食性オーステナイト系ステンレス鋼。 PI=Cr+3.3(Mo+0.5W)+16N ・・・・・・・ (1) Ni-bal.=Ni+30(C+N)+0.5Mn−1.1(Cr+1.5Si+Mo) ・・・・・・・(2) ここで、上記(1)、(2)式中の元素記号は鋼中にお
    ける各元素の重量%を表す。
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JP (1) JPH10237601A (ja)

Cited By (6)

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