JPH10235054A - ミシンの生地折返し案内装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 生地の折返し部の折返し状態を安定保持する
ための噴出エアを有効に活用して、折返し部を形成する
ための生地端部の下側への折り込み及びその折り込み状
態の保持を自動化して、未熟練者でも所定の折返し状態
での縫製を容易、確実に行なえるようにする。 【解決手段】 生地Ｗの折返し部Ｗａを針落ち部まで送
り案内する生地折返し部送り案内部６に、そこに移入さ
れた生地Ｗの折返し部Ｗａの端縁部Ｗｅに向けエアを噴
出することでその折返し部Ｗａの折返し状態を保持する
ヘム用エア噴出口部１２を設けるとともに、生地折返し
部送り案内部６への入口付近には、移入直前の生地Ｗの
端部に対して斜め手前下方向に向けてエアを噴出するこ
とで、生地Ｗの端部を下方へ折込む補助用エア噴出口部
１６を設置している。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はミシンの生地折返し
案内装置に関するもので、詳しくは、例えば下着等の衣
類の袖口や裾口などの縫製用生地の適当幅の端部を針落
ち部の手前で下側に折返し、その生地の折返し部を生地
の裏面に重合させた状態で針落ち部にまで送って所定の
縫製を行なう際、上記生地の折返し部が定規との摩擦な
どによってずれ動いて、縫い外れや縫い皺などを生じる
ことのないように生地の折返し部を所定の折返し状態に
保持させて送り案内するように構成されたミシンの生地
折返し案内装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】この種のミシンの生地折返し案内装置と
して、従来、実公昭６２−４３５０４号公報等に開示さ
れているように、生地の折返し部を針落ち部まで送り案
内するために針落ち部の手前側に設置された定規の略つ
の字状屈曲案内面に、コンプレッサなどのエア源に配管
接続されたエア噴出口部を開口させ、このエア噴出口部
から生地の折返し部の端縁部に向けて縫製進行方向に対
し直交する方向にエアを噴出させることによって、生地
の折返し部を所定の折返し状態に安定よく保持させるよ
うにしたものが知られている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上記構成の先行技術に
よると、エア噴出口部から噴出されるエアによって生地
の折返し部に引き伸し力が働くことになり、この生地の
折返し部を定規との摩擦などによってずれ動かされるこ
となく、所定の折返し状態に安定保持して針落ち部まで
送り案内し、縫い外れや縫い皺などの発生を防止するこ
とが可能である。ところで、上記先行技術においては、
上記のように噴出エアにより折返し状態が安定保持され
る折返し部を形成するに当たって、縫製開始段階で生地
の縫い始め端側の端部を人手によって下側に折り込むと
いった面倒でかつ熟練を要する作業が必要であった。ま
た、縫製中は常に生地端部を下側へ折り込むように人手
を添えておくという面倒な作業を必要とする等の問題が
あった。

【０００４】本発明は上記のような実情に鑑みてなされ
たもので、生地の折返し部の折返し状態を安定保持する
ために用いられる噴出エアを有効に活用して、折返し部
を形成するための生地端部の下側への折り込み及びその
折り込み状態の保持を自動化し、未熟練者であっても縫
い外れや縫い皺などを生じることなく、所定の折返し状
態での縫製を容易、確実に行なうことができるミシンの
生地折返し案内装置を提供することを目的としている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項１の発明に係るミシンの生地折返し案内装置
は、ミシンの針落ち部の手前側に設置され、端部が下側
に折返された状態で縫製方向に送られる生地の折返し部
を上記針落ち部まで送り案内する生地折返し部送り案内
部と、この生地折返し部送り案内部により送り案内され
る生地の折返し部の端縁部に向けて縫製進行方向に対し
直交する方向にエアを噴出して該生地の折返し部の折返
し状態を保持する折返し保持用エア噴出口部と、上記生
地折返し部送り案内部への入口付近に配置され、その生
地折返し部送り案内部に移行する直前の生地の端部に対
してエアを噴出して該生地の端部を下方に折り込む生地
端部折込み用エア噴出口部とを備えていることを特徴と
するものである。

【０００６】上記のような構成の請求項１に記載の発明
によれば、生地の縫い始め端を該縫い始め側の端部が下
側に折返される状態にして生地折返し部送り案内部にセ
ットした上で、ミシンを作動開始するとともに各エア噴
出部からエアを噴出させることによって、上記生地折返
し部送り案内部に移入されている生地の折返し部はその
端縁部に向けて噴出されるエアにより所定の折返し状態
に安定よく保持されて縫製進行方向に送り案内される一
方、上記生地折返し部送り案内部の入口付近にある生地
の端部は該生地の端部に対し斜め手前下方向に向けて噴
出されるエアにより下方へ折り込まれながら生地折返し
部送り案内部に移行され、その生地折返し部送り案内部
に移入した段階で所定の折返し部が形成されることにな
る。このように、生地端部の下側への折り込みによる折
返し部の形成及びその形成された折返し部の折返し状態
の安定保持作用を共に噴出エアによって連続自動的に行
なえるために、人手による折り込み作業が不要になり、
縫製作業の省力化及び能率向上を図ることが可能であ
る。

【０００７】上記請求項１に記載の発明に係るミシンの
生地折返し案内装置において、請求項２に記載したよう
に、上記生地端部折込み用エア噴出部の位置を前後、上
下及び左右にそれぞれ調節自在に構成することによっ
て、縫製対象となる生地の柔軟性、可撓性などの性質、
厚み、折込み量に応じて噴出エアが生地に対して作用す
る位置や引き伸し力を適正に調整させて、いかなる生地
であっても、噴出エアによる折込み機能を適確に発揮さ
せることができる。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
にもとづいて説明する。図１は本発明に係るミシンの生
地折返し案内装置の要部を示す概略斜視図、図２は要部
の拡大正面図である。これら図１及び図２において、１
はミシンアーム（図示省略する）の先端部に上下に往復
運動可能に支持されている針棒２の下端部に取り付けら
れている針であり、これら針１が下降時に貫通状態に落
ち込む針落ち部を有する針板３が、ルーパ、布送り機構
等の縫いを構成するための部品（周知であるため、詳細
な説明および図示は省略する）を収納するミシンベッド
４上に水平姿勢で固定されている。５は上記ミシンアー
ムの先端部に昇降操作自在に支持されている押え金であ
る。

【０００９】６は上記針落ち部及び押え金５の手前側に
設置された生地折返し部送り案内部で、この生地折返し
部送り案内部６は、図２に明示されているように、縫製
対象生地Ｗを水平姿勢に載置可能で、その左端部が取付
台７に固定された平板状案内板８の右端、すなわち、縫
製進行方向ａに平行な遊端縁部８ａとこの案内板８の遊
端縁部８ａに適当間隔を隔てて平行状に対向位置する略
つの字形状の屈曲案内面９ａを有し固定取付台１０上に
上記縫製進行方向ａに対し直交する左右方向に摺動可能
な連結板２３に固定された定規９における上記の略つの
字形状屈曲案内面９ａとから構成されており、端部が下
側に折返された状態の生地Ｗの屈曲部Ｗｂを左右から挟
んで縫製進行方向ａに送られる生地Ｗの折返し部Ｗａを
上記針落ち部及び押え金５まで送り案内するように形成
されている。

【００１０】上記生地折返し部送り案内部６を構成する
案内板８は、上記取付台７と固定取付台１０との間に介
設されたシリンダ１１を介して上記縫製進行方向ａに対
して直交する方向ｂに往復摺動駆動可能に構成されてお
り、この案内板８の上記方向ｂへの往復摺動により、そ
の遊端縁部８ａを上記定規９の屈曲案内面９ａに接近さ
せた送り案内作用状態と屈曲案内面９ａから離間させた
送り案内非作用状態とに切換え可能に構成している。

【００１１】１２は生地Ｗの折返し部Ｗａの折返し状態
を保持するための折返し保持用（以下、ヘム用と称す
る）エア噴出口部であって、上記生地折返し部送り案内
部６により送り案内される生地Ｗの折返し部Ｗａの端縁
部Ｗｅに向けて縫製進行方向ａに対し直交する方向にエ
アを噴出するように、二つのヘム用エア噴出口部（図で
は１つのみを示している）１２が上記生地折返し部送り
案内部６を構成する案内板８の屈曲案内面９ａに縫製進
行方向ａに並列されて開口されている。これらヘム用エ
ア噴出口部１２に接続された各エアパイプ１３は二股状
継手１４及び後述するエア噴出速度調整器（以下、スピ
コンと称する）１５を経てコンプレッサー等のエア源
（図示省略する）に連通接続されている。

【００１２】１６は生地端部折込み用（以下、補助用と
称する）エア噴出口部であって、上記生地折返し部送り
案内部６への入口付近に設置されて、その生地折返し部
送り案内部６に移行する直前の生地Ｗの端部に対して斜
め手前下方向に向けてエアを噴出することにより、生地
Ｗの端部を下方へ折り込むように作用する。１７はこの
補助用エア噴出口部１６の手前で、かつ、該補助用エア
噴出口部１６よりも左側寄り位置に設置されたカール矯
正用エア噴出口部であって、上記生地折返し部送り案内
部６に移行する前の生地Ｗの端縁部Ｗｅに向けてエアを
噴出することにより、生地Ｗの折返し部Ｗａとなる端部
分に発生するカールを矯正するように作用する。これら
補助用エア噴出口部１６及びカール矯正用エア噴出口部
１７にそれぞれ接続されたエアパイプ１８及び１９は二
股状継手２０及び上記スピコン１５を経て上記と同一の
エア源に接続されており、上記共通のスピコン１５を介
して各エア噴出口部１２，１６，１７からのエア噴出速
度が同時に調整可能とされている。

【００１３】そして、上記補助用エア噴出口部１６に接
続されたエアパイプ１８の途中にはパイプ軸線方向に直
交する方向の筒状調節部材２１が貫通支持され、この調
節部材２１がネジ２５を介してその筒軸線の周りで回動
固定可能に構成されているとともに、この調節部材２１
から縫製進行方向ａに向けて延出した調節ロッド２２が
上記連結板２３の上面に固定された調節片２４にネジ２
６を介して縫製進行方向ａに沿って前後に摺動固定可能
に構成され、さらに、上記連結板２３がその側面板部２
３ａに形成の長孔２７とネジ２８を介して上記固定取付
台１０に対して左右に摺動固定可能に構成されており、
これら調節部材２１の筒軸線周りの回動固定と調節ロッ
ド２２の前後摺動固定と連結板２３の左右摺動固定とに
よって上記補助用エア噴出口部１６の位置が前後、上下
及び左右にそれぞれ調節自在とされている。

【００１４】次に、上記のように構成された生地折返し
案内装置を有するミシンを用いてエンドレスの筒状縫製
生地を折返し縫製する動作について、図３のタイミング
チャートを参照して説明する。なお、図３に示す操作ペ
ダル、膝スイッチはミシンに装備されている公知のもの
である。

【００１５】まず、案内板８をその遊端縁部８ａが定規
９の屈曲案内面９ａに接近した送り案内作用状態に切換
えた上で押え金５を上昇させて、生地Ｗの縫い始め端側
の右端部を下側へ折返される状態にして生地折返し部送
り案内部６にセットする。このとき、各エア噴出部１
２，１６，１７からはそれぞれ所定の方向に向けてエア
が噴出されており、この噴出エアによって上記生地折返
し部送り案内部６にセットされた生地Ｗの縫い始め端側
の端部は、図２に示すような所定の折返し状態に折返さ
れることになる。

【００１６】上記のセットが完了した図４の状態で、上
記押え金５を下降させた上、操作ペダルを踏み込んでミ
シンを作動させると、上記生地折返し部送り案内部６に
移入されている生地Ｗの折返し部Ｗａはヘム用エア噴出
口部１２からその端縁部Ｗｅに向けて噴出されるエアに
より所定の折返し状態に安定よく保持されて縫製進行方
向ａに送り案内される一方、縫製の進行に伴って上記生
地折返し部送り案内部６の入口付近に次々と達する生地
Ｗの端部には補助用エア噴出口部１６から該生地Ｗの端
部に対し斜め手前下方向に向けてエアが噴出されている
とともに、それよりも手前の生地Ｗの端縁部Ｗｅに向け
てもカール矯正用エア噴出口部１７からエアが噴出され
ており、これによって、カールが矯正された生地Ｗの端
部が図５に示すように、下方へ確実、自動的に折り込ま
れながら上記生地折返し部送り案内部６に移行され、そ
の生地折返し部送り案内部６に移入した段階で所定の折
返し部Ｗａが連続して形成されることになる。

【００１７】そして、生地Ｗの縫い終り端に近付いて時
点で、上記操作ペダルを中立に戻して各エア噴出口部１
２，１６，１７からのエアの噴出をそれぞれ停止すると
ともに、膝スイッチをプッシュして上記案内板８をその
遊端縁部８ａが定規９の屈曲案内面９ａから離間した非
送り案内作用状態に切換え、その直後、再び操作ペダル
を踏み込んでミシンの作動を再開することで縫い終り端
の縫製を行なう。この縫い終り端の縫製時には上記ヘム
用エア噴出口部１２からのエアの噴出を停止したまま、
補助用エア噴出口部１６およびカール矯正用エア噴出口
部１７からのエアの噴出を再開することで、縫い終り端
の折返し縫製が終了するまでの間の折り込みを保つ。

【００１８】上記のように、生地Ｗの端部の下側への折
り込みによる折返し部Ｗａの形成及びその形成された折
返し部Ｗａの折返し状態の安定保持作用が共に噴出エア
によって連続自動的に行なわれるために、人手による折
り込み作業が不要になり、縫製作業の省力化及び能率向
上を図ることが可能である。

【００１９】また、縫製対象となる生地Ｗの柔軟性、可
撓性などの性質、厚み、折込み量に応じて上記補助用エ
ア噴出口部１６の位置を、予め前後、上下及び左右に調
節して噴出エアが生地Ｗに対して作用する位置や引き伸
し力を適正に調整しておくことによって、いかなる生地
Ｗであっても、噴出エアによる折込み機能を適確に発揮
させることが可能であり、また、スピコン１５を介して
各噴出エアの噴出速度を縫製対象生地Ｗの性質に対応し
て予め調整しておくことによって、生地Ｗの性質に応じ
て折返し部Ｗａの折返し状態の安定保持、生地端部折込
み、カール矯正の各作用を適正に行なわせることが可能
である。

【００２０】なお、上記実施の形態では、エンドレスの
筒状縫製生地を折返し縫製する場合の動作について説明
したが、非エンドレスで帯状の縫製生地の折返し縫製に
適用しても同様な機能を奏するものである。ただし、こ
の場合は、縫製途中で上記案内板８をその遊端縁部８ａ
が定規９の屈曲案内面９ａから離間した非送り案内作用
状態に切換えたり、ヘム用エア噴出口部１２からのエア
噴出を停止したりする必要はなく、縫製完了まで案内板
８を送り案内作用状態に、かつ、ヘム用エア噴出口部１
２からのエア噴出を保てばよい。

【００２１】

【発明の効果】以上のように、請求項１に記載の発明に
よれば、生地の折返し部の折返し状態を安定保持するた
めのエア噴出口部と同一のエア源に接続させて生地折返
し部送り案内部への入口付近に生地端部折込み用エア噴
出口部を設置することによって、生地に折返し部を形成
するための生地端部の下側への折り込み作用及びその折
り込み状態の安定保持作用を自動的かつ連続的に行なう
ことができるので、人手による折り込み作業が必要なく
なり、未熟練者であっても縫い外れや縫い皺などを生じ
ることなく、所定の折返し状態での縫製を容易、確実か
つ迅速に行なうことができるという効果を奏する。

【００２２】また、請求項２に記載の発明によれば、上
記請求項１に記載の発明の効果に加えて、縫製対象とな
る生地の柔軟性、可撓性などの性質、厚み、折込み量に
応じて噴出エアが生地に対して作用する位置や引き伸し
力を適正に調整可能で、いかなる生地であっても、噴出
エアによる折込み機能を適確に発揮させることができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るミシンの生地折返し案内装置の要
部を示す概略斜視図である。

【図２】同上ミシンの生地折返し案内装置の要部の拡大
正面図である。

【図３】同上ミシンによるエンドレス縫製生地の折返し
縫製動作を説明するタイミングチャートである。

【図４】折返し縫製動作開始時の生地の状態を示す要部
の概略斜視図である。

【図５】折返し縫製動作途中の生地の状態を示す要部の
概略斜視図である。

【符号の説明】

６ 生地折返し部送り案内部 ８ 平板状案内板 ８ａ ８の遊端縁部 ９ 定規 ９ａ 屈曲案内面 １２ ヘム用エア噴出口部（折返し保持用エア噴出口
部） １５ スピコン（エア噴出速度調整器） １６ 補助用エア噴出口部（生地端部折込み用エア噴出
口部） １７ カール矯正用エア噴出口部 Ｗ 生地 Ｗａ 生地の折返し部

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ミシンの針落ち部の手前側に設置され、
   端部が下側に折返された状態で縫製方向に送られる生地
   の折返し部を上記針落ち部まで送り案内する生地折返し
   部送り案内部と、 この生地折返し部送り案内部により送り案内される生地
   の折返し部の端縁部に向けて縫製進行方向に対し直交す
   る方向にエアを噴出して該生地の折返し部の折返し状態
   を保持する折返し保持用エア噴出口部と、 上記生地折返し部送り案内部への入口付近に配置され、
   その生地折返し部送り案内部に移行する直前の生地の端
   部に対してエアを噴出して該生地の端部を下方に折り込
   む生地端部折込み用エア噴出口部とを、備えていること
   を特徴とするミシンの生地折返し案内装置。
2. 【請求項２】 上記生地端部折込み用エア噴出口部の位
   置が前後、上下及び左右にそれぞれ調節自在に構成され
   ている請求項１に記載のミシンの生地折返し案内装置。