JPH10210594A

JPH10210594A - スピーカのボイスコイル

Info

Publication number: JPH10210594A
Application number: JP2003897A
Authority: JP
Inventors: Yasuyuki Suzuki; 康之鈴木
Original assignee: SUZUKI KANSHI KK
Current assignee: SUZUKI KANSHI KK
Priority date: 1997-01-17
Filing date: 1997-01-17
Publication date: 1998-08-07

Abstract

(57)【要約】【課題】円環状の精度の向上を図り、重量、厚さ、剛
性、接着性、耐熱性、耐腐食性等のすべての物理的性質
において、優れた特性を有するボイスコイルによって、
音圧感度の高い、優れた周波数特性の、かつ耐候性に富
んだ、歪み特性の優れたスピーカとする。【解決手段】ガラス繊維で平織りした織り布と、ポリ
イミド樹脂の薄膜とを、反応型接着剤で貼り合わせて円
形筒形に仕上げた構造のボイスコイルボビンに、ボイス
コイル導線を巻着した構成。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、新規の素材の組み
合わせによって、優れた性質を特有する、主にダイナミ
ック型スピーカに使用されるボイスコイルに関するもの
である。

【０００２】従来この種のスピーカのボイスコイル２０
は、図５，６，７，８に示した様に、紙、合成樹脂の薄
膜、あるいは金属箔のような一種類の素材１１ａを、短
冊状に切断した後、円形筒状に形成してボビン１６と
し、その上にボイスコイル導線１２を巻始め端１２ａか
ら巻終わり端１２ｂまで巻着して、尿素系その他の熱硬
化型接着剤で固着したものであって、その先端を振動板
１３の中心に固着して、磁気回路１４の円環状の磁気空
隙１５内にボイスコイル導線１２が位置するように支持
されて、ボイスコイル導線１２に音声出力回路の出力す
る音声信号を流して、音声電流の発生する磁束と、磁気
空隙１５内の磁束とがインタリンクして電磁誘導により
振動を発生し、その振動を振動板１３に伝達してスピー
カとして音声を発するようにしている。

【０００３】従来のボイスコイルボビン１６の中に、図
６に模型的に断面を示すような、ガラス繊維２を樹脂の
内部に含浸して、分散して配置して、一体の樹脂体状１
１ａとしたものはあるが、このような構成のボビン１６
は、密度が大き過ぎて、重く、真円保形性等の点から望
ましくない。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】したがって、従来のこ
の種ボイスコイル２０にあっては、ボビン１６に一種類
の素材を使用していたために、能率の点からボビン１６
の重量、磁気空隙１５のスペースファクタの面から厚
さ、ボビン１６の真円形保持性と音圧周波数特性、特に
高音域再生特性の面から、剛性において、耐入力の面か
らボイスコイル導線１２または振動板１３との接着性に
おいて、大電気入力に対する耐熱性、耐振動性におい
て、環境または耐候性の面において、耐腐食性等の物理
的性質において等、すべての面において優れたものとい
うものは見当たらなかった。

【０００５】このような従来のボイスコイル２０にあっ
ては、図５，６，７，８に示すように、せいぜい重量、
厚さ、剛性、耐熱性等を目途にアルミ箔の基体を用い、
その上に薄い紙を介してボビン１６を円形筒状に貼り合
わせて、ボイスコイル導線１２を巻着して接着剤１７を
塗布し、乾燥等の工程を経て、接着性、耐腐食性を補う
ものがあったが、短冊状に切断した後であるので、狭隘
な円環状磁気空隙１５の内部で振動するための真円形状
の精密な寸法に成形、保持するのが困難で、磁気空隙１
５の磁束密度を保持するために、寸法の大きな磁気回路
１４を必要とし、そのために大型の磁石を必要とするの
で、コスト的に不利であり、また、ボビン１６の全体的
に金属と紙という相互に接着面からみて接着剤と馴染み
難い材料を貼り合わせただけで、依然として接着性が十
分でなく、耐熱性等において剥離する等の問題があっ
た。また、このように接着剤塗布、ボイスコイル導線１
２の巻着等の手数がかかるという問題もあった。

【０００６】そこで、本発明は、このような従来のボイ
スコイル２０が有していた課題を解決するために、素材
の段階で、二種類の優れた物理的性質を有する素材を配
し、十分に密着性よく馴染む接着剤を使用して二層（接
着剤の層を含めると三層）に接着しておき、それを円形
筒状に成形することによって、精密な寸法を有する円筒
形状のボビンとすることによって、真円形状の精度の向
上を図ることを目的とし、重量、厚さ、剛性、接着性、
耐熱性、耐腐食性等のすべてのボイスコイルボビンとし
て要求される物理的性質において、優れた特性を有する
ボイスコイルを提供し、ひいては、音圧感度の高い、優
れた音圧周波数特性を有し、かつ歪み特性の優れたスピ
ーカを得んとするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】該目的を達成するための
本発明の構成を、実施例に対応する図１乃至図４を用い
て説明すると、本発明は、ガラス繊維２で平織りした織
り布２ａと、ポリイミド樹脂の薄膜３とを、反応型接着
剤４で貼り合わせて円筒形状に形成してボビン５に仕上
げた構造のボイスコイルボビン５に、ボイスコイル導線
６を巻始め端６ａから巻終わり端６ｂまで巻着したスピ
ーカのボイスコイル１である。

【０００８】また本発明は、前記基材の密度を０．９〜
１．２に保持した前記のスピーカ用のボイスコイル１で
ある。

【０００９】本発明は、このような構成としたものであ
るから、スピーカ組み立て工程で使用上は従来のボイス
コイル２０と全く同様にしてボイスコイル１に完成でき
る。従って、本発明のスピーカのボイスコイル１は、従
来と比較して特別の工程、熟練を要することなく、スピ
ーカ組み立て工程に組み入れることができる。その結
果、コストの低減にに好都合なばかりでなく、そのボイ
スコイル１の精度向上と、ひいてはスピーカの品質向上
を図ることができる。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下本発明の実施例について図面
に基づいて説明する。図中、図１は本発明のボイスコイ
ル１の１実施例の構成を模型的に示した横断面図、図２
は本発明のボイスコイル１を使用したスピーカと従来の
スピーカの周波数特性図、図３は本発明スピーカ用ボイ
スコイルの外観図、図４は本発明ボイスコイルを使用し
たスピーカの構造を示す断面図である。

【００１１】

【実施例】本発明のボイスコイル１は、素材として、ガ
ラス繊維２の織り布２ａと、ポリイミド樹脂の薄膜３を
使用して、厚さを薄く仕上げたボビン５である。すなわ
ち、本発明ボイスコイルに使用する構成素材の厚さは、
それぞれ、ガラス繊維２の織り布２ａが７５μ、ポリイ
ミド樹脂の薄膜３の厚さが２５μを標準とし、合計厚さ
は、６９μ〜８５μである。

【００１２】また、密度については、７５μ厚のポリイ
ミド樹脂の薄膜３単体の値が１．４１４ｇ／ｃｍ³、本
発明の合成した同様の厚さのボビンの密度は１．０６８
ｇ／ｃｍ³である。特に基材の密度を０．９〜１．２の
範囲内に保持した場合、同等の効果を奏することができ
る。従来例の紙の密度の０．８５／ｃｍ³に比較しては
るかに優れているといえる。

【００１３】また、ヤング率においては、７５μのポリ
イミド樹脂の薄膜３単体の値が２．９７×１０¹⁰ｄｙｎ
ｅ／ｃｍ²であり、本発明の構成によるボビンを同様の
厚さにした場合のヤング率は、５．２９×１０¹⁰ｄｙｎ
ｅ／ｃｍ²であり、２倍近く高い剛性値を示す。

【００１４】さらに、材料内を伝達する音速√Ｅ／ρ
は、７５μ厚のポリイミド樹脂の薄膜３単体の値が１，
４０４ｍ／ｓｅｃであるに対して、本発明の構成による
ボビンを同様の厚さにした場合の音速は２，２２５ｍ／
ｓｅｃであり、本発明品がはるかに大きい。

【００１５】総合して重量小さく、高い剛性は優れた特
性を有するボビンとして、性能の優れたボイスコイル１
として完成できる。

【００１６】そして、ガラス繊維２の織り布２ａと、ポ
リイミド樹脂の薄膜３の両者を接着するのに、ポリイミ
ド系、ポリアミド系又はポリアミド−イミド共重合接着
剤等の反応型接着剤４を用いて、ポリイミド樹脂の薄膜
３にコーティングしてガラス繊維２の織り布２ａに貼り
付けて、加圧、加熱して反応硬化させてあるので、柔軟
性に富んだ耐熱性の接着剤４となり、該接着剤４が反応
型接着剤であるので構成材料のガラス繊維２の織り布２
ａ及びポリイミド樹脂の薄膜３と密に馴染み易く、構成
材料と一体の材料と同化するに至る。このような処理に
より製造された反応型接着剤４によって、３００℃以上
の高温度にも耐え得られるボイスコイルボビン５とな
る。

【００１７】また、前記ほど、高温度でない２００℃前
後程度の耐熱性を要求されるときは、例えばポリアミド
−エポキシ共集合体のポリアミド変性ワニスを用いて、
貼り合わせて、加熱、加圧して反応させるだけで十分と
いえる。

【００１８】さらに、本発明の実施例として、ガラス繊
維２の織り布２ａは、打ち込み本数は縦５５、横５０で
重量が４４ｇ／ｍ²のものを用いた。その場合の糸の番
手はＥＣＤ−９００−１／２である。

【００１９】このように本発明のボイスコイル１を使用
したスピーカの音圧周波数特性は、図２に示すごとく、
ボイスコイル１のボビンのヤング率、剛性、密度、伝達
音速等の優れた性質により、高音再生限界周波数が高
く、高い周波数帯域の再生音圧も優れた特性を発揮し
て、スピーカとしての品質向上に資することができる。

【００２０】また、ボイスコイル導線６とボビン５を構
成する材料との接着について、ガラス繊維２の織り布２
ａの側あるいは、ポリイミド樹脂の薄膜３の側に巻着し
ても、接着剤４が反応型接着剤であるので、ポリイミド
樹脂の薄膜３の接合性が良好であり、また、前記円筒形
状のボイスコイル１基材をガラス繊維２の織り布２ａを
外側に、ポリイミド樹脂の薄膜３を内側に貼り合わせて
ある場合、ボイスコイル１の基材のガラス繊維２織り布
２ａ面にボイスコイル導線６を巻着してあるので、ガラ
ス繊維２の織り布２ａ内部に、ボイスコイル導線６の接
着剤の足が入り込んで固化するので、接着が強固になっ
て、大入力による大振幅大振動にも剥離することなく耐
えるとともに、大電気入力によってボイスコイル１自体
内部に発生する高い温度にも耐え得るボイスコイル１と
なる。

【００２１】いずれにしても、ボイスコイル導線６は、
ボビン５との接着性は極めて良好となる。この場合、ガ
ラス繊維２の縁の切断端において、ガラス繊維２のケパ
が出難いので、狭隘な磁気空隙１５内で振動するボイス
コイル１として好適である。

【００２２】以上述べたような、ボイスコイル導線６
を、ガラス繊維２の織り布２ａを外側に巻着した場合
も、ポリイミド樹脂の薄膜３側を外側にして巻着した場
合も、実験例によると、加熱温度２００℃の乾燥器中に
２４時間放置して、耐熱性は全く異常が無かった。

【００２３】また、不燃性試験においては、ＪＩＳＫ６
９１１−１９７９試験方法に基づく試験方法において、
長さ１２７ｍ／ｍ×幅１２．７ｍ／ｍの本発明品の試料
を、燃焼距離２５ｍ／ｍ以下において、水平方向に４５
°傾けて炎を先端に当てて、炎との境界においてポリイ
ミド樹脂の薄膜３の貼り合わせ接着は剥離せず、変化し
ないという結果を得ている。このように、本発明ボビン
５は燃焼試験の結果、２５ｍ／ｍ以下で不燃性材料とし
ての効果を奏する。

【００２４】次に、径２５．３８ｍ／ｍのボビンに、
０．１４ｍ／ｍφのボイスコイル１導線６を２層巻で６
５Ｔして抵抗値５．８Ωのボイスコイル１として完成
し、交流電圧をかけて耐熱テストを行った結果、１２ｖ
までガラス繊維２とポリイミド樹脂薄膜３の剥離無し、
ボイスコイル導線６とボビン５の浮き現象無し、基材の
伸縮による変形無しという良好な結果を得ている。

【００２５】このように、重重の軽量なボイスコイル１
は、スピーカに組み込んだ場合、振動系の質量を低下さ
せるとともに、材質の剛性と相侯って、ボイスコイルボ
ビン５の真円保形力が大きいので、磁気回路１４の磁気
利用効率が高くなって、従来の磁石よりも小さい磁石で
従来と同等以上の幅射能率を保持することができる。こ
のように、スピーカ全体の電気音響変換能率の向上に資
するところ大となり、特に高音域の幅射能率を引き上げ、
図４に示す周波数特性上再生高域眼界を高める（点線
は従来例を示す）とともに、高音域の再生音質において
著しく優れた特性を得られる効果がある。

【００２６】以上本発明の代表的と思われる実施例につ
いて説明したが、本発明は必ずしもこれらの実施例構造
のみに限定されるものではなく、本発明にいう前記の構
成要件を備え、かつ、本発明にいう目的を達成し、以下
にいう効果を有する範囲内において適宜改変して実施す
ることができるものである。

【００２７】

【発明の効果】以上の説明から既に明らかなように、本
発明ボイスコイルは、ボビンの素材の段階で、二種類の
優れた物理的性質を有する素材を、短冊状に切断して、
十分に密着性よく馴染ませることのできる接着剤を使用
して二層に接着しておき、それを円形筒状に成形するこ
とによって、精密な寸法を有する円筒形状のボビンとし
たものであるから、ボビンの仕上がりにおいて、剛性に
優れ、軽量、かつ、寸法精度が従来例に比して著しく向
上するので、スピーカに組み込んだ場合、ボイスコイル
導線に入力したき声電流によるボイスコイル導線の振動
を、能率良く振動板に伝達することができて、スピーカ
の音圧周波数特性において、全体的な幅射能率を高める
ことができ、特に、高音域再生限界を高めて歪みの少な
い、より忠実度再生を可能にすることができる。

【００２８】また、本発明ボイスコイルは、接着性、耐
熱性、耐腐食性等の他の物理的性質においても、優れた
特性を有するボイスコイルとして完成でき、ひいては、
かつ大入力に耐え、高温度、高湿度、に長時間使用され
る苛酷な環境条件にも耐える耐熱性、耐湿性、耐候性を
有するスピーカを得ることができるという従来のものに
は期待することが出来ない顕著な効果を有するに至った
のである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のボイスコイルの実施例の構成を模型的
に示した、一部拡大横断面図である。

【図２】本発明のボイスコイルを使用したスピーカと従
来のスピーカの周波数特性図である。

【図３】本発明のボイスコイルの外観図である。

【図４】本発明のボイスコイルを使用したダイナミック
スビーカの組み立て構造を示す断面図である。

【図５】短冊状に切断した素材を円形筒状に形成してボ
ビンに成形した外観図である。

【図６】従来例のボイスコイルの1例の構成を模型的に
示した、一部拡大横断面図である。

【図７】図６に示すボイスコイルボビンに導線を巻着し
たボイスコイルの外観を示す図である。

【図８】従来例のダイナミックスビーカの組み立て構造
を示す断面図である。

【符号の説明】

１本発明ボイスコイル２ガラス繊維２ａガラス繊維で平織りした織り布３ポリイミド樹脂の薄膜４反応型接着剤５本発明ボイスコイルボビン６本発明ボイスコイル導線６ａ本発明ボイスコイル導線の巻始め端６ｂ本発明ボイスコイル導線の巻終わり端１１従来のボイスコイルボビン１１ａ従来のボイスコイルボビン素材１２従来のボイスコイル導線１２ａ従来のボイスコイル導線の巻始め端１２ｂ従来のボイスコイル導線の巻終わり端１３一般のスピーカの振動板１４一般のスピーカの磁気回路１５一般のスピーカの磁気空隙１６一般のスピーカのボイスコイルボビン１７従来の接着剤２０一般のスピーカのボイスコイル

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】ガラス繊維(2)で平織りした織り布(2a)
と、ポリイミド樹脂の薄膜(3)とを、反応型接着剤(4)で
貼り合わせて円形筒形に仕上げた構造のボイスコイルボ
ビン(5)に、ボイスコイル導線(6)を巻着したスピーカの
ボイスコイル(1)。
【請求項２】前記ボビン(5)の密度を０．９〜１．２
に保持した請求項１に記載のスピーカのボイスコイル
(1)。