JPH10195530A - 高強度・高靱性フェライト+パーライト型非調質鋼鍛造品の製造方法 - Google Patents

高強度・高靱性フェライト+パーライト型非調質鋼鍛造品の製造方法

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JPH10195530A
JPH10195530A JP35756696A JP35756696A JPH10195530A JP H10195530 A JPH10195530 A JP H10195530A JP 35756696 A JP35756696 A JP 35756696A JP 35756696 A JP35756696 A JP 35756696A JP H10195530 A JPH10195530 A JP H10195530A
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JP
Japan
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ferrite
forging
temperature
mneq
pearlite
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Application number
JP35756696A
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English (en)
Inventor
Hiroaki Yoshida
広明 吉田
Hiroyuki Ijiri
裕之 井尻
Yukihiro Isogawa
幸宏 五十川
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Daido Steel Co Ltd
Original Assignee
Daido Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】安価であり且つ広い用途に用いられているフェ
ライト+パーライト型非調質鋼を用いて高い強度と靱性
のバランスを有する高強度・高靱性鍛造品を製造する方
法を提供する。 【解決手段】重量%でC:0.25〜0.55%,Si:≦1.6
%,V:0.08〜0.5%であり、且つMneq=Mn+C
r+Mo+Cu+V+Ni/2+10(Nb−0.02)で表
わされるマンガン当量Mneqが0.8〜2.0%,残部実質
的にFeから成る合金を一旦950〜1300℃に加熱した
後、冷却を行って一旦800〜1050℃に降温させてその温
度域で鍛造加工を行い、しかる後冷却によってフェライ
ト+パーライト変態させる。また必要に応じてNb,A
l,NをNb:0.02〜0.1%,Al:0.015〜0.010%,
N:0.010〜0.040%の範囲で含有させた上、NbCが固
溶できる1100℃以上に加熱した後800〜1100℃に一旦降
温させて鍛造加工し、その後冷却してフェライト+パー
ライト変態させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は自動車,建設機
械,各種車両等の部品の製造に適用して好適な高強度・
高靱性フェライト+パーライト型非調質鋼鍛造品の製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】フェラ
イト+パーライト型非調質鋼は安価であり且つ用途が広
いため、最も多く使用されている鋼種の1つである。し
かしながらこの鋼種は、材料特性的には強度と靱性のバ
ランスは決して高くなく、従来にあっては強度か靱性の
どちらかのみしか有効に高めることができなかったのが
実状である。
【0003】制御圧延の分野においては、圧延の際のパ
ス条件とか温度条件,冷却条件等を制御して緻密な組織
を得、高い強度と靱性バランスを得ることは実現されて
いる。但し制御圧延鋼は直接切削用の非調質鋼或いは冷
間加工用としてしか使用できない上、強度レベルを抑え
なければならないため、高強度部品への適用は困難であ
る。
【0004】従来、フェライト+パーライト型非調質鋼
を鍛造加工して上記自動車部品等の鍛造品を製造する場
合、1100〜1200℃程度の高温で鍛造加工してい
るのが通常である。
【0005】しかしながらこの場合得られる組織は粗い
ものとなってしまい、靱性の低下は免れない。1100
〜1200℃程度の高温で熱間加工したとき、加工後に
再結晶が進み、その後の冷却過程で組織が粗大化する。
【0006】これに対して鍛造加工温度を低下させた場
合、微細なフェライト+パーライト組織をより得やすく
なるが、鍛造温度の低下に伴いフェライト分率が増大
し、硬さの低下を招いてしまう。
【0007】フェライト+パーライト型非調質鋼の熱間
鍛造品を高靱性化する手法として、Nb添加によりオー
ステナイト粒の粗大化を防止する方法、或いはMn,C
r等を添加してフェライト,パーライトスタート点の低
下を図り、組織を微細化する方法が知られている。
【0008】しかしながらこのような成分調整のみによ
る手法では、得られる組織や靱性等に限界があり、強靱
鋼部品レベルの強度,靱性バランスを達成することは困
難である。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明はこのような事情
を背景とし、強度及び靱性に優れたフェライト+パーラ
イト型非調質鋼鍛造品を得ることを目的としてなされた
ものである。而して請求項1の鍛造品の製造方法は、重
量%でC:0.25〜0.55%,Si:≦1.6%,
V:0.08〜0.5%であり、且つMneq=Mn+
Cr+Mo+Cu+V+Ni/2+10(Nb−0.0
2)で表わされるマンガン当量Mneqが、Mneq:
0.8〜2.0%(但しMn≦2.0%,Cr≦2.0
%,Mo≦1.0%,Ni≦4.0%,Cu≦1.0
%,Nb≦0.1%)であって残部実質的にFeから成
る合金を一旦950〜1300℃に加熱した後、冷却を
行って一旦800〜1050℃に降温させてその温度域
で鍛造加工を行い、しかる後冷却によってフェライト+
パーライト変態させることを特徴とする。
【0010】請求項2の鍛造品の製造方法は、重量%で
C:0.25〜0.55%,Si:≦1.6%,V:
0.08〜0.5%,Nb:0.02〜0.1%であ
り、且つMneq=Mn+Cr+Mo+Cu+V+Ni
/2+10(Nb−0.02)で表わされるマンガン当
量Mneqが、Mneq:0.8〜2.0%(但しMn
≦2.0%,Cr≦2.0%,Mo≦1.0%,Ni≦
4.0%,Cu≦1.0%)であって残部実質的にFe
から成る合金を一旦1100〜1300℃に加熱した
後、冷却を行って一旦800〜1100℃に降温させて
その温度域で鍛造加工を行い、しかる後冷却によってフ
ェライト+パーライト変態させることを特徴とする。
【0011】請求項3の鍛造品の製造方法は、重量%で
C:0.25〜0.55%,Si:≦1.6%,V:
0.08〜0.5%,Nb:0.02〜0.1%,A
l:0.015〜0.10%,N:0.010〜0.0
40%であり、且つMneq=Mn+Cr+Mo+Cu
+V+Ni/2+10(Nb−0.02)で表わされる
マンガン当量Mneqが、Mneq:0.8〜2.0%
(但しMn≦2.0%,Cr≦2.0%,Mo≦1.0
%,Ni≦4.0%,Cu≦1.0%)であって残部実
質的にFeから成る合金を一旦1100〜1300℃に
加熱した後、冷却を行って一旦800〜1100℃に降
温させてその温度域で鍛造加工を行い、しかる後冷却に
よってフェライト+パーライト変態させることを特徴と
する。
【0012】請求項4の鍛造品の製造方法は、請求項
1,2,3の何れかにおいて、前記合金中に前記合金成
分に加えて更にS,Pb,Bi,Te,Caの何れか1
種若しくは2種以上を、S:0.03〜0.3%,P
b:≦0.3%,Bi:≦0.15%,Te:≦0.0
5%,Ca:≦0.05%の範囲で含有させることを特
徴とする。
【0013】
【作用及び発明の効果】上記のように請求項1の製造方
法は、焼入れ性を表わすマンガン当量を上記所定の範囲
に規制するとともに、合金成分としてCと共にVを含有
させ、かかる合金を950℃以上の高温に加熱してVC
を固溶化させた上で、一旦先ず800〜1050℃に降
温させてその温度領域で熱間鍛造加工を施し、しかる後
再び冷却してフェライト+パーライト変態させて所定の
鍛造品を得ることを骨子とするもので、これにより高強
度,高靱性の鍛造品を得ることができる。
【0014】尚本発明において、950℃若しくは11
00℃〜1300℃への加熱後の冷却手法として、空冷
或いは衝風冷却を用いることができ、また鍛造加工後に
おける冷却方法として空冷,衝風冷却,液体によるスプ
レー冷却,ガス冷却等の手法を用いることができる。
【0015】上記のように本発明において高強度,高靱
性の鍛造品の得られる理由は以下の点にある。本発明に
従って合金中にCと併せてVを含有させ、これを950
℃以上の高温に加熱したとき、VCをオーステナイト組
織に十分に固溶させることができる。Vはオーステナイ
トへの固溶量が極めて少ないが、含有量を上記範囲とし
たとき、950℃以上の加熱によって十分にこれをオー
ステナイト中に固溶させることができる。
【0016】オーステナイト中に固溶したVの炭化物V
Cは、そのまま冷却を行ったときには通常オーステナイ
トよりも更に固溶度の低いフェライト粒内に変態とほぼ
同時に析出し始める。この場合十分な組織の微細化,高
強度化は得られない。
【0017】しかるに本発明に従って加熱によりオース
テナイト化した上で、一旦フェライト変態の始まる80
0℃以上の温度に降温して塑性加工を加えると、加工誘
起現象によってV炭化物が析出を開始する。このとき析
出したV炭化物は、塑性加工によって導入される転位を
効果的にピンニングする。この結果フェライト変態まで
高い加工歪を保つことができる。而して加工歪の入った
オーステナイトから変態−析出するフェライトは極めて
微細となり、靱性の向上に大きく寄与するのである。
【0018】一般に、加工により歪が多量に導入された
オーステナイト粒では、フェライト変態の際、結晶粒界
だけでなく粒内にもバンド状に微細なフェライト変態の
核が形成されるため、粒内パーライトが分断され易い。
このときの結晶粒度は歪量に比例する。但し高温側での
鍛造加工は、熱拡散や再結晶により歪が消失し、その効
果は少なくなる。通常の鋼種では、冷却速度にもよるが
1000℃を超える温度で鍛造した場合、加工歪の効果
は著しく低下する。
【0019】しかるに本発明に従って鍛造加工を行った
場合、鍛造温度が高くても加工誘起析出したVCによる
ピンニング効果により、導入された多量の歪が熱拡散等
により消失するのが防がれ、より高い歪を保ちながらフ
ェライト変態できるため、微細な組織が得られるのであ
る。但しこの効果を得るためにはVCを一旦固溶させる
ことが必要であり、その温度の下限値は請求項1の場合
950℃である。尚本発明において、オーステナイト化
のための加熱温度の上限値を1300℃としているのは
バーニング防止のためである。
【0020】本発明では、また、焼入れ性を表わすマン
ガン当量を0.8〜2.0%に規定している。これは次
の理由に基づく。フェライト結晶粒を微細化する手法と
して、Mn,Cr等の焼入れ性向上元素の添加量を増す
方法がある。焼入れ性向上元素の添加量を増加させる
と、連続冷却線図におけるフェライト変態曲線は、より
低温側、変態開始時間がより長時間側に移動する。その
ため熱間鍛造後のフェライト変態開始温度が低くなり、
微細なフェライト粒が得られるようになる。しかしなが
ら焼入れ性向上元素の添加量を増やし過ぎるとベイナイ
トが析出し始める。
【0021】本発明においてマンガン当量の上限値を規
定しているのは以上の理由に基づく。而して本発明にお
いて許容できるマンガン当量の最大値は2.0%である
ことを確認した。
【0022】請求項2の製造方法は、上記合金成分に加
えてNbを0.02〜0.1%の範囲で含有させた上、
オーステナイト化のための加熱温度を1100℃〜13
00℃とし、また降温後の鍛造加工を800〜1100
℃で行うものである。
【0023】更に請求項3の製造方法は、それらV,N
bを上記範囲で含有させるのに加えて、更にAl,Nを
それぞれAl:0.015〜0.10%,N:0.01
0〜0.040%で含有させるようにしたものである。
【0024】本発明に従ってこれらNbやAl及びNを
合金中に含有させた場合、これらNbやAlは高温で安
定な複炭・窒化物を作るため、オーステナイト粒の粗大
化を防止し、より微細なフェライト+パーライト組織が
得られやすくなる。
【0025】また1100℃以上に加熱してNb(C,
N)、或いは(Nb,Al)(C,N)を固溶させた
後、800〜1100℃で鍛造した場合、Vと同様な理
由で900〜1100℃付近で加工誘起された(Nb,
Al)(C,N)が析出し、転位の増加を促し拡散によ
る消失を防ぐことができる。尚、Nbは一旦固溶させる
ことによって活性化エネルギーの増加や再結晶温度の上
昇効果も得られるので、微細結晶粒が得られる鍛造温度
域がより拡大する。
【0026】Nbを添加したものは、NbCの固溶温度
(1100℃以上)及び加工誘起析出温度(900〜1
100℃)がVCのそれよりも高いために、より高温鍛
造に対して有効である。但し800〜1000℃位の領
域では、VCの加工誘起析出が有効に微細化に寄与する
ため、Nb,Vの複合添加が好ましい。Al,Nの添加
は更に有効である。
【0027】本発明では、上記成分に加えてS,Pb,
Bi,Te,Caの何れか1種若しくは2種以上を、
S:≦0.03〜0.3%,Pb:≦0.3%,Bi:
≦0.15%,Te:≦0.05%,Ca:≦0.05
%の範囲で含有させることが望ましい(請求項4)。こ
れら成分を含有させることによって、被削性を効果的に
高めることができる。
【0028】次に本発明における各化学成分の限定理由
を以下に詳述する。 C:0.25〜0.55% Cはその添加量によって硬さが決定するものであり、本
発明では高強度を得るために0.25%以上含有させる
必要がある。但し0.55%を超えて含有させると靱性
が大幅に低下するため、上限値を0.55%に規定す
る。
【0029】Si:≦1.6% Siは脱酸剤として必要なものであり、また固溶強化に
よって強度を高める作用があるが、同時に鍛造時の変形
抵抗をも高めてしまうため、その上限を1.6%に規定
する。
【0030】Mn,Cr,Mo,Cu,Ni:Mneq
(Mn+Cr+Mo+Cu+V+Ni/2+10(Nb
−0.02))で0.8〜2.0% Mn,Crは焼入れ性を高める元素であるが1次炭化物
を作りやすく、鍛造時の変形能を下げる作用があるため
上限をそれぞれ2.0%とする。
【0031】これらMn,Cr及びMo,Cu,Ni等
の元素は連続冷却線図におけるフェライトノーズを長時
間側或いは低温側に移動させる作用があるため、フェラ
イト変態開始温度を下げ、フェライト粒の微細化に効果
がある。しかしこれらの元素を添加し過ぎると焼入れ性
が高くなり過ぎ、その結果ベイナイトが現われてしまい
様々な弊害が出てしまうため、総添加量をマンガン当量
(Mneq)に換算して0.8%以上2%以下に規定す
る。またMo,Cu,Niそれぞれ単独についてはM
o:≦1.0%,Cu:≦1.0%,Ni:≦4.0%
に規定する。
【0032】V:0.08〜0.5% Vは鍛造時にV炭化物が加工誘起析出することによっ
て、微細結晶粒が得られる鍛造温度領域を広げる作用が
ある。但しVは固溶度が低いため0.08〜0.5%の
範囲に含有量を規定する。
【0033】Nb:0.02〜0.1% NbもVと同様の理由から上限値を0.1%に規定す
る。またNbを積極的に利用するときにはその下限値を
0.02%とする。
【0034】Al:0.015〜0.10% AlはNbとともにNと結合して安定な窒化物を形成
し、結晶粒の粗大化を防止する。しかし添加量が多くな
ると鍛造性を悪化させるため、添加量の上限を0.10
%とする。
【0035】N:0.010〜0.040% NはNb,Alと結び付き、高温において安定した炭窒
化物を形成するため、オーステナイト粒の粗大化を防止
するために有効な元素である。従ってNb,Alを添加
したときに効果を発揮する。本発明においてNの必要な
含有量範囲は0.010〜0.040%である。
【0036】S:0.03〜0.3% Pb:≦0.3% Bi:≦0.15% Te:≦0.05% Ca:≦0.05% S,Pb,Bi,Te,Ca等の元素は被削性を高める
作用があるが、圧延性や鍛造性を阻害する元素でもあ
る。従って本発明では添加量の上限をそれぞれ上記のよ
うに規定する。
【0037】
【実施例】次に本発明の実施例を以下に詳述する。 [実施例1]表1に示す化学組成の合金を図1に示すプ
ロセス1,プロセス2に従って処理し、各種試験を行っ
た。尚、鍛造は前方押出法により減面率60%で24m
mφ×48mmLの試験片に加工形成した。このときの
冷却方法は試験片をケース内に入れて行うケース内空冷
で、鍛造してから400℃までの平均冷却速度は30〜
35℃/分である。
【0038】
【表1】
【0039】図2は焼入れ性向上元素の添加量をマンガ
ン当量に換算して、マンガン当量とフェライト粒度番号
との関係を、また図3はマンガン当量と冷却後硬さとの
関係をそれぞれ示したものである。尚、これらは何れも
図1のプロセス1に従って鍛造した結果である(加熱温
度:1100℃,鍛造温度:900℃)。これらの結果
から、微細なフェライト+パーライト組織を得るために
はマンガン当量を0.8%以上とすることが必要である
ことが分かる。
【0040】この結果によれば、マンガン当量の増加に
伴って結晶粒度は高くなっている。但しマンガン当量が
2.0%を超えるとベイナイトの析出により硬さが上昇
し始める。完全にフェライト+パーライト組織にするた
めにはマンガン当量の上限を2.0%に規定しなければ
ならない。
【0041】次に図4はオーステナイト化(γ化)温度
と冷却後の硬さとの関係を示している。通常、γ化加熱
温度が上昇するのに伴い結晶粒が粗大化し、パーライト
分率が高くなるため硬さが増加する。Vが添加されたも
のでは、加熱温度が900℃を超えてからVCが固溶し
始めるため、γ化温度が950℃以上になると硬さが上
昇する。一方Nbが添加されたものでは、NbCが固溶
し始める1100℃以上で硬さが上昇する。
【0042】V,Nbが添加されたものは一旦炭化物を
固溶させなければ冷却途中に微細な炭化物がフェライト
中に析出できないため、γ化温度を規定する必要があ
る。具体的には、Vが添加されたものについてはγ化の
ための加熱温度を950℃以上とする必要があり、また
Nbが添加されたものについてはγ化のための加熱温度
を1100℃以上とする必要がある。
【0043】図5は、1100℃に加熱した後に各温度
で鍛造したとき(プロセス1)の鍛造温度と硬さとの関
係を、また図6は鍛造温度とフェライト粒度番号との関
係を示している。
【0044】更に図7は、1200℃に加熱した後に各
温度で鍛造したとき(プロセス2)の鍛造温度と硬さと
の関係を、また図8は鍛造温度とフェライト粒度番号と
の関係をそれぞれ示している。
【0045】V,V+Nb,V+Nb+Al+Nを添加
したものは、鍛造温度の低下に伴う硬さ低下は見られ
ず、またフェライト粒も従来の鋼種Aからなるものより
も明らかに細かい。高温でより安定した炭窒化物を作る
元素を添加することによってその効果は更に高まってい
る。
【0046】図9は、オーステナイト化の加熱温度を1
100℃とし(プロセス1)、各種鍛造温度で鍛造した
ときの鍛造温度とシャルピー衝撃値との関係を示したも
ので、また図10はオーステナイト化のための加熱温度
を1200℃とし(プロセス2)、各種鍛造温度で鍛造
したときの鍛造温度とシャルピー衝撃値との関係をそれ
ぞれ示したものである。これらの結果においても、高温
での鍛造において本発明例の方が高いシャルピー衝撃値
が得られている。
【0047】前述したように、通常、鍛造温度が低下す
るのに伴いフェライト結晶粒は微細化する。しかし加熱
温度が高くなるとオーステナイト粒が粗大化してしまう
ため、たとえ低温で鍛造することによってフェライト粒
を微細化しても粗大なパーライトが混入することにな
り、結果として靱性の低下を招いてしまう。
【0048】その対策として高温で安定な炭・窒化物を
形成してオーステナイト粒の粗大化を防止することが有
効な手段とされているが、本発明では更に進んで鍛造条
件を制御することにより、鍛造時にVC,NbCなどを
加工誘起析出させ、その加工誘起析出を利用してフェラ
イト,パーライト粒の微細化を図ったもので、この効果
は特に図6及び図8において明瞭に表われている。
【0049】即ち図6,図8に見られるように、V或い
はNb等を添加したものについては800〜1050℃
ないし1100℃で鍛造しても十分に結晶粒の微細化が
達成されている。またこれらの結果に表われているよう
に、Nbを添加したものはNbCの固溶温度(1100
℃以上)及び加工誘起析出温度(900〜1100℃)
がVCのそれよりも高いためにより高温鍛造に対して有
効である。但し800〜1000℃位の領域ではVCの
加工誘起析出が有効に微細化に寄与するため、VとNb
の複合添加が特に効果的であり、Al,Nの添加は更に
有効である。
【0050】次に快削成分の添加による影響を見るた
め、表2に示す化学組成の合金を図1のプロセス1に従
って処理し、シャルピー衝撃試験を実施した。尚、鍛造
及び冷却方法については上記と同様とした。結果が図1
1に示してある。
【0051】
【表2】
【0052】この結果から、快削成分を通常レベルで添
加しても靱性への悪影響は小さく、従って鋼の特性を特
に損なわないで快削成分の添加により被削性を効果的に
高め得ることが分かる。
【0053】[実施例2]図12に示す形状のフランジ
コンパニオン10を図1のプロセス3,プロセス4の条
件で鍛造した。そして鍛造品における各部(1),
(2),(3),(4)の硬さ測定及びフェライト粒度
測定を行った。また併せて(イ),(ロ),(ハ)の位
置からJIS3号衝撃試験片(ハーフサイズ)を採取し
てシャルピー衝撃試験を行った。結果が図13,図1
4,図15,図16,図17に示してある。
【0054】このうち図13は加熱温度1100℃(プ
ロセス3)における硬さ測定の結果を、また図14は加
熱温度1200℃(プロセス4)における硬さ測定の結
果を示しており、更に図15は加熱温度1100℃(プ
ロセス1)におけるフェライト粒度の測定値を、また図
16は加熱温度1200℃(プロセス4)におけるフェ
ライト粒度の測定値を、更に図17はプロセス3及びプ
ロセス4におけるそれぞれのシャルピー衝撃値を表わし
ている。
【0055】図13及び14の結果に見られるように、
本発明例の場合、硬さ分布のばらつきは少ない。また図
15,16,17の結果に見られるように、本発明例の
場合、フェライト粒度番号,シャルピー衝撃値ともに明
らかに従来のものを上回っている。これらの値は強靱鋼
に匹敵するものである。
【0056】上記フランジコンパニオン10と同様に、
図18に示す形状のコネクティングロッド12に関して
もプロセス3,プロセス4に従って実体評価を行った。
その結果が図19,図20,図21,図22に示してあ
る。
【0057】これらの結果に見られるように、コネクテ
ィングロッド12においても、フランジコンパニオン1
0と同様に硬さ分布のばらつきは少なく、またフェライ
ト粒度も従来例のものに比べて十分細かいものであっ
た。以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一
例示であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲におい
て種々変更を加えた態様で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において採用した鍛造品の製造
プロセスのパターン例を示す図である。
【図2】本発明において得られたマンガン当量とフェラ
イト粒度番号との関係を表わす図である(図1のプロセ
ス1)。
【図3】本発明の実施例において得られたマンガン当量
と硬さとの関係を表わす図である(図1のプロセス
1)。
【図4】本発明の実施例において得られたγ化温度と硬
さとの関係を表わす図である。
【図5】本発明の実施例において得られた鍛造温度と硬
さとの関係を表わす図である(図1のプロセス1)。
【図6】本発明の実施例において得られた鍛造温度とフ
ェライト粒度番号との関係を表わす図である(図1のプ
ロセス1)。
【図7】本発明の実施例において得られた鍛造温度と硬
さとの関係を表わす図である(図1のプロセス2)。
【図8】本発明の実施例において得られた鍛造温度とフ
ェライト粒度番号との関係を表わす図である(図1のプ
ロセス2)。
【図9】本発明の実施例において得られた鍛造温度とシ
ャルピー衝撃値との関係を表わす図である(図1のプロ
セス1)。
【図10】本発明の実施例において得られた鍛造温度と
シャルピー衝撃値との関係を表わす図である(図1のプ
ロセス2)。
【図11】快削成分の添加による靱性への影響を表わす
図である。
【図12】本発明の他の実施例において製造したフラン
ジコンパニオンの形状を表わす図である。
【図13】図1のプロセス3に従って鍛造した図11の
フランジコンパニオンの硬さ測定の結果を表わす図であ
る。
【図14】図1のプロセス4に従って鍛造した図11の
フランジコンパニオンの硬さ測定の結果を表わす図であ
る。
【図15】図1のプロセス3に従って鍛造した図11の
フランジコンパニオンのフェライト粒度の測定結果を表
わす図である。
【図16】図1のプロセス4に従って鍛造した図11の
フランジコンパニオンのフェライト粒度測定結果を表わ
す図である。
【図17】図1のプロセス3及びプロセス4に従って鍛
造したフランジコンパニオンのシャルピー衝撃値の測定
結果を表わす図である。
【図18】本発明の他の実施例において製造したコネク
ティングロッドの形状を示す図である。
【図19】図1のプロセス3に従って鍛造した図17の
コネクティングロッドの硬さ測定の結果を表わす図であ
る。
【図20】図1のプロセス4に従って鍛造した図17の
コネクティングロッドの硬さ測定の結果を表わす図であ
る。
【図21】図1のプロセス3に従って鍛造した図17の
コネクティングロッドのフェライト粒度の測定結果を表
わす図である。
【図22】図1のプロセス4に従って鍛造した図17の
コネクティングロッドのフェライト粒度の測定結果を表
わす図である。
【符号の説明】
10 フランジコンパニオン 12 コネクティングロッド

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で C :0.25〜0.55% Si:≦1.6% V :0.08〜0.5% であり、且つ Mneq=Mn+Cr+Mo+Cu+V+Ni/2+1
    0(Nb−0.02) で表わされるマンガン当量Mneqが Mneq:0.8〜2.0%(但しMn≦2.0%,C
    r≦2.0%,Mo≦1.0%,Ni≦4.0%,Cu
    ≦1.0%,Nb≦0.1%) であって残部実質的にFeから成る合金を一旦950〜
    1300℃に加熱した後、冷却を行って一旦800〜1
    050℃に降温させてその温度域で鍛造加工を行い、し
    かる後冷却によってフェライト+パーライト変態させる
    ことを特徴とする高強度・高靱性フェライト+パーライ
    ト型非調質鋼鍛造品の製造方法。
  2. 【請求項2】重量%で C :0.25〜0.55% Si:≦1.6% V :0.08〜0.5% Nb:0.02〜0.1% であり、且つ Mneq=Mn+Cr+Mo+Cu+V+Ni/2+1
    0(Nb−0.02) で表わされるマンガン当量Mneqが Mneq:0.8〜2.0%(但しMn≦2.0%,C
    r≦2.0%,Mo≦1.0%,Ni≦4.0%,Cu
    ≦1.0%) であって残部実質的にFeから成る合金を一旦1100
    〜1300℃に加熱した後、冷却を行って一旦800〜
    1100℃に降温させてその温度域で鍛造加工を行い、
    しかる後冷却によってフェライト+パーライト変態させ
    ることを特徴とする高強度・高靱性フェライト+パーラ
    イト型非調質鋼鍛造品の製造方法。
  3. 【請求項3】重量%で C :0.25〜0.55% Si:≦1.6% V :0.08〜0.5% Nb:0.02〜0.1% Al:0.015〜0.10% N :0.010〜0.040% であり、且つ Mneq=Mn+Cr+Mo+Cu+V+Ni/2+1
    0(Nb−0.02) で表わされるマンガン当量Mneqが Mneq:0.8〜2.0%(但しMn≦2.0%,C
    r≦2.0%,Mo≦1.0%,Ni≦4.0%,Cu
    ≦1.0%) であって残部実質的にFeから成る合金を一旦1100
    〜1300℃に加熱した後、冷却を行って一旦800〜
    1100℃に降温させてその温度域で鍛造加工を行い、
    しかる後冷却によってフェライト+パーライト変態させ
    ることを特徴とする高強度・高靱性フェライト+パーラ
    イト型非調質鋼鍛造品の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1,2,3の何れかにおいて、前
    記合金中に前記合金成分に加えて更にS,Pb,Bi,
    Te,Caの何れか1種若しくは2種以上を S :0.03〜0.3% Pb:≦0.3% Bi:≦0.15% Te:≦0.05% Ca:≦0.05% の範囲で含有させることを特徴とする高強度・高靱性フ
    ェライト+パーライト型非調質鋼鍛造品の製造方法。
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