JPH10194828A - 低温焼成セラミックス多層基板とその製造方法 - Google Patents

低温焼成セラミックス多層基板とその製造方法

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JPH10194828A
JPH10194828A JP9082806A JP8280697A JPH10194828A JP H10194828 A JPH10194828 A JP H10194828A JP 9082806 A JP9082806 A JP 9082806A JP 8280697 A JP8280697 A JP 8280697A JP H10194828 A JPH10194828 A JP H10194828A
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glass
ceramic
quartz
multilayer substrate
layer
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JP9082806A
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English (en)
Inventor
Yoshiaki Yamade
善章 山出
Ichiro Uchiyama
一郎 内山
Yoichi Moriya
要一 守屋
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Sumitomo Metal SMI Electronics Device Inc
Original Assignee
Sumitomo Metal SMI Electronics Device Inc
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Publication date
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  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)
  • Glass Compositions (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 信号伝達速度が速く、低温焼成が可能で、曲
げ強度が20 kgf/mm2以上、ピール強度が2kgf 以上のセ
ラミックス多層基板を提供する。 【解決手段】 内層のセラミックス絶縁体層を、ホウケ
イ酸ガラス30〜69wt%、石英5〜55wt%、石英ガラス5
〜55wt%、およびアルミナ1〜5wt%からなり、かつ石
英と石英ガラスの合計が25〜65wt%である原料粉末の焼
成により得られた、比誘電率4.5 以下のガラスセラミッ
クス材料から構成し、表層のセラミックス絶縁体層を、
コーディエライト結晶化ガラスまたはアノーサイト結晶
化ガラス60〜40wt%とアルミナ40〜60wt%とからなる、
曲げ強度が25 kgf/mm2以上のガラスセラミックス材料か
ら構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主にセラミックス
パッケージにおいて電子部品を搭載するための基板とし
て利用される、表層と内層とで異なるセラミックス材料
から構成された、低温焼成セラミックス多層基板とその
製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高集積化されたLSIや各種電子
部品を搭載する多層基板としては、小型化、高信頼性等
の要求を満たすため、絶縁体層にセラミックス材料を用
いたセラミックス多層基板が用いられるようになってき
た。セラミックス多層基板は、セラミックス絶縁体層と
信号配線層とを交互に積層し一体化したものであり、周
知のように、グリーンシート多層積層法または厚膜ペー
スト印刷法により製造することができる。セラミックス
材料としては、熱伝導率、強度、電気絶縁性、価格とい
った要因から、主にアルミナが使用されてきた。
【0003】しかし、アルミナは比誘電率が9前後と大
きいため、信号伝達が遅く、信号遅延時間が大きくなる
という欠点がある。また、アルミナの焼成温度は1550℃
前後と高いため、多層基板をグリーンシート積層法によ
り一括焼成する場合には、多層基板の信号配線層にWや
Mo等の高融点金属を用いる必要がある。しかし、これら
の金属は電気抵抗率が高いので、信号の伝送損失が大き
くなり、配線パターンの微細化にも限界がある。アルミ
ナ基板のこれらの欠点は、LSIの動作周波数が著しく
上昇した現在では大きな問題となっている。
【0004】この問題を解決する手段として、比誘電率
が小さく、かつ低温焼成が可能で、Ag、Ag−Pd、Cu、Au
等の低融点で電気抵抗率の低い金属材料を信号配線層に
使用できる、低温焼成セラミックス材料を用いた多層基
板が開発された。
【0005】代表的な低温焼成セラミックス材料は、無
機バインダーとして機能するガラス粉末と強度保持用の
骨材として機能する無機粉末とを混合し焼成することに
より製造された、ガラスセラミックスとも呼ばれる材料
である。焼成中にガラス粉末が軟化し、骨材の無機粉末
を結合することにより焼結体が得られるため、焼成温度
はガラスの軟化点よりやや高温であればよく、一般には
1100℃以下である。
【0006】ガラスと骨材 (無機粉末) は共に種類や組
成範囲が広く、それらの組合わせは無数にある。そし
て、両者の組み合わせや焼成時の反応により、得られる
セラミックス基板の特性が変化するため、目的とする特
性を安定して実現できる成分の最良の組合わせや焼成条
件を見出すことは非常に困難である。
【0007】例えば、低温焼成セラミックス基板の比誘
電率を低下させるには、骨材として比誘電率が低い酸化
ケイ素 (SiO2) を使用することが効果的であり、このよ
うなガラスセラミックス材料も既に提案されている。
【0008】その例として、特公平4−12639 号公報に
は、骨材が石英ガラス、石英、クリストバライト、トリ
ジマイトから選んだ少なくとも2種類の酸化ケイ素から
なり、ガラスが好ましくはホウケイ酸バリウム系または
ホウケイ酸マグネシウム系ガラスからなる、比誘電率が
4.0〜6.0 のガラスセラミックス材料が開示されてい
る。熱膨張率が異なる2種以上の酸化ケイ素を混合する
ことで、基板の熱膨張率が制御できる。
【0009】特開平3−141153号公報には、ホウケイ酸
ガラスに骨材として石英および/または石英ガラスを添
加した、1000℃以下で低温焼成できる低比誘電率のガラ
スセラミックス材料が開示されている。
【0010】しかし、ガラスセラミックス材料は、比誘
電率が低くなると、力学的な強度も同時に低下する傾向
がある。そのため、この材料から製造した多層基板は、
ハンドリングや電子部品の搭載に必要な十分な強度を備
えておらず、例えば、基板に搭載した電子部品に外力が
加わると、接続部ではなく、基板が破壊する結果とな
り、外部接続の信頼性に劣る。その結果、用途が非常に
限られていた。
【0011】この問題を解消する改善策として、特公平
4−51078 号公報には、表層が引張強度4kgf/mm2 以上
の高強度のガラスセラミックス材料、内層が比誘電率6.
0 以下 (具体的には 5.2〜5.5 程度) の低誘電率のガラ
スセラミックス材料からなる多層基板が提案されてい
る。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】信号伝送を行う内層の
低誘電率材料が、特公平4−51078 号公報に開示されて
いるように比誘電率5〜6のものでは、伝送特性が不十
分になってきており、エポキシ樹脂やポリイミド等の有
機材料と同等以上の性能にするためにも、比誘電率を4.
5 以下にする必要がある。比誘電率を4.5 以下にするに
は、特公平4−12639 号公報および特開平3−141153号
公報に開示されるように、比誘電率が低い酸化ケイ素を
骨材に用いることが考えられる。しかし、酸化ケイ素を
骨材とする場合に、次の問題点があることが判明した。
【0013】酸化ケイ素鉱物は一般に低温型結晶相
(α) と高温型結晶相 (β) という2種類の結晶相を持
ち、昇温または冷却中にこの転移温度を通過して、α→
βまたはその逆の転移が起こると、急激な体積膨張また
は収縮を生ずる。この転移温度がトリジマイトは約117
℃、クリストバライトは約230 ℃と比較的低い。セラミ
ックス基板への電子部品の搭載には一般に半田が使用さ
れるが、最近はリフロー法が普及してきたため、基板全
体が半田の溶融温度に加熱されることになり、場合によ
っては300 ℃を超すような高温にさらされる。その場
合、基板のセラミックス材料がトリジマイトやクリスト
バライトを含有していると、上記の相転移によって急激
な体積膨張・収縮を生じ、基板にマイクロクラックが発
生することがあり、基板の信頼性が大きく低下する。
【0014】一方、石英は上記転移温度が約573 ℃と高
く、電子部品搭載時に受ける加熱では相転移が起こらな
い。また、石英ガラスは非晶質であり、300 ℃程度の温
度では全く変化を受けない。従って、比誘電率が低い骨
材として酸化ケイ素を用いる場合、石英や石英ガラスが
好ましく、クリストバライトやトリジマイトは不適当で
ある。
【0015】この知見に基づき、石英と石英ガラスを骨
材とするガラスセラミックス材料を調製したところ、焼
結体中に好ましくないクリストバライトの結晶相が生成
する場合があることが認められた。この原因は解明でき
ていないが、焼成中に骨材がガラスと反応して生成した
ものと考えられる。特開平3−141153号公報には、ホウ
ケイ酸ガラス、石英および石英ガラスからなる原料を10
00℃以下で焼成してもクリストバライトの結晶化が起こ
らないと説明されているが、これは、骨材の配合量が少
ないといった特殊な要因によるものと考えられる。
【0016】また、酸化ケイ素を骨材とする、比誘電率
の低い低温焼成セラミックス基板は曲げ強度が10 kgf/m
m2前後と低いため、特公平4−51078 号公報に示される
ように、表層に高強度材料を配して強化することが有効
である。しかし、表層と内層のそれぞれのガラスセラミ
ックス材料の組合わせが無数にあり、しかも、例えば一
括焼成で反りを生じないように表層と内層のセラミック
ス材料の熱膨張率を近づける、表層と内層が低温焼成で
十分に密着して一体化する、といった新たな要件も加わ
るため、各材料の選定はさらに困難となる。
【0017】低温焼成セラミックス多層基板の信号配線
層材料としては、前記のようにAg、AuやAg合金といった
貴金属とCuが使用されているが、コスト面からは安価な
Cuを使用することが有利である。Cuは基板と反応しにく
く拡散制御が容易になるという利点もある。しかし、貴
金属と異なり、Cuは空気のような酸化性雰囲気中で加熱
すると容易に酸化するため、グリーンシート多層積層法
において大気中で基板との同時焼成によりCu配線を形成
することができないという問題点がある。
【0018】本発明の目的は、表層と内層とで異なるセ
ラミックス材料を用いたセラミックス多層基板におい
て、表層と内層にそれぞれ最適で、かつ互いに適合した
材料を選定することにより、基板全体の実効比誘電率が
4.5 以下と低く (従って、信号伝送速度が速く) 、多層
基板に要求される十分な強度 (20 kgf/mm2以上) および
ピール強度 (2kgf 以上、絶縁体層間、特に表層絶縁体
層と内層絶縁体層の間での剥離強度) とを備えたセラミ
ックス多層基板およびその製造方法を提供することであ
る。
【0019】本発明の別の目的は、上記の性能を備え、
さらに信号配線層がCuである場合でも、グリーンシート
多層積層法による同時焼成において低抵抗のCu配線を形
成することができるセラミックス多層基板とその製造方
法を提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記目的は、一般的に
は、セラミックス絶縁体層と信号配線層とを交互に積層
し一体化したセラミックス多層基板であって、表層の絶
縁体層が曲げ強度25 kgf/mm2以上のセラミックス材料か
らなり、内層の絶縁体層がクリストバライトを含まず、
比誘電率4.5 以下のセラミックス材料からなることを特
徴とする、セラミックス多層基板により実現される。
【0021】ここで、曲げ強度は三点曲げ試験法により
求めた値である。また、「クリストバライトを含まな
い」とは、X線回折により調べた時にクリストバライト
相が検出されないという意味である。
【0022】本発明のセラミックス多層基板は、基板の
実効比誘電率が4.5 以下、曲げ強度が20 kgf/mm2以上、
ピール強度が2kgf 以上という目標の特性を満たすこと
ができ、信号の伝送速度が速く、しかもハンドリングや
実装面から望まれる十分な強度を有している。
【0023】ここで、基板の実効比誘電率とは、基板中
の配線を通過する電気信号の伝播時間と配線長との関係
から算出される誘電率であり、基板の曲げ強度およびピ
ール強度は、表層と内層の絶縁体層のみを積層し、信号
配線層を介在させずに焼成した多層基板について測定し
た値を意味する。
【0024】表層および内層とも、1または2以上の絶
縁体層から構成することができる。即ち、表層絶縁体層
とは、最表層の絶縁体層だけを意味するのではなく、場
合によって最表層の絶縁体層に続く1または2以上の絶
縁体層も含む。換言すると、基板の両面において、最表
層を含む1または2以上の表層側の絶縁体層が上記の高
強度セラミックス材料から構成され、それより内部の1
または2以上の絶縁体層 (通常は複数の層) が内層絶縁
体層となり、この絶縁体層は上記の低誘電率のセラミッ
クス材料から構成する。好ましくは、内層絶縁体層は少
なくとも片面が信号配線層層に接している層であり、表
層絶縁体層は両面とも信号配線層に接していない層であ
る。
【0025】比誘電率が4.5 以下である内層のセラミッ
クス絶縁体層は、ホウケイ酸ガラスと石英と石英ガラス
と少量のアルミナからなるガラスセラミックス材料から
形成できる。一方、表層の高強度セラミックス材料とし
ては、コーディエライト系またはアノーサイト系の結晶
化ガラスとアルミナとからなるガラスセラミックス材料
から形成できる。
【0026】より具体的には、内層の低誘電率のガラス
セラミックス材料は、ホウケイ酸ガラス30〜69wt%、石
英5〜55wt%、石英ガラス5〜55wt%、およびアルミナ
1〜5wt%からなり、かつ石英と石英ガラスの合計が25
〜65wt%である原料粉末の焼成により形成される。
【0027】このガラスセラミックス材料に用いるホウ
ケイ酸ガラスの組成は、SiO2:60〜75wt%、B2O3:15〜
30wt%、Al2O3:5wt%未満、アルカリ金属酸化物:合計
5wt%未満、その他の不純物:合計5wt%未満であるこ
とが好ましい。
【0028】一方、表層の高強度のガラスセラミックス
材料は、コーディエライト結晶化ガラスまたはアノーサ
イト結晶化ガラス60〜40wt%とアルミナ40〜60wt%とか
らなる原料粉末の焼成により形成することができる。
【0029】本発明のセラミックス多層基板は、グリー
ンシート多層積層法に従い、少なくとも一部のグリーン
シートが表面に導体ペーストのパターンを有している複
数のグリーンシートを積層し、積層体を 800〜1050℃で
一括焼成することにより製造される。従って、表層と内
層の各セラミックス材料は、いずれも低温焼成が可能な
ガラスセラミックス材料であることが好ましい。
【0030】本発明のセラミックス多層基板は、少なく
とも一部の信号配線層をCuから形成しても、グリーンシ
ート多層積層法による一括焼成により絶縁体層と一体化
し、平坦なセラミックス多層基板とすることができる。
その場合には、Cuおよび/またはCu化合物を主成分とす
る導体ペーストを使用し、焼成を非酸化性ガス雰囲気中
で行う。
【0031】この場合の好適態様にあっては、導体ペー
ストはCu、Cu2OおよびCuO から選ばれた少なくとも1種
を主成分として含有し、また非酸化性雰囲気中での焼成
前に、各グリーンシートの焼結温度より低温において、
酸化性雰囲気中での熱処理による有機物除去と、還元性
雰囲気中での還元処理とを行う。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。
以下の説明において、セラミックス材料の組成に関する
%は、全てwt%である。
【0033】本発明のセラミックス多層基板は、表層絶
縁体層のセラミックス材料と、内層絶縁体層のセラミッ
クス材料が異なる。内層は、比誘電率が4.5 以下の低誘
電率のセラミックス材料からなる。信号伝送を行う配線
のほとんどが基板の内部に形成されるので、信号伝達速
度は基板内部のセラミックス材料の比誘電率に強く影響
される。換言すると、表層のセラミックス絶縁体層の比
誘電率は信号伝達速度に大きく影響しないので、ある程
度高くても構わない。内層のセラミックス絶縁体層の比
誘電率が4.5 以下であると、多層基板全体の実効比誘電
率も4.5 以下となり、現時点でLSI等に要求される信
号の伝達速度を満たすことができる。内層絶縁体層およ
び基板全体の実効比誘電率は、いずれも4.2 以下である
ことが好ましい。
【0034】一方、表層絶縁体層は曲げ強度が25 kgf/m
m2以上、好ましくは27 kgf/mm2以上の高強度のセラミッ
クス材料からなる。電子部品の実装やハンドリングに要
求される基板の曲げ強度は20 kgf/mm2以上である。内層
に強度の低いセラミックス材料を使用していることによ
る強度低下を考慮すると、表層のセラミックス材料の曲
げ強度が25 kgf/mm2以上あれば、表層絶縁体層を特に厚
くしなくても、基板全体として目標とする20 kgf/mm2
上、好ましくは23 kgf/mm2以上の曲げ強度を確保でき
る。その結果、基板の外部接続の信頼性が増し、ハンド
リングも容易となる。この高強度の表層絶縁体層を厚く
すれば、基板全体の強度を高くすることはできるが、内
層信号配線を形成しない表層絶縁体層を過度に厚くする
ことは、基板の厚みを増すので好ましくない。好ましい
表層絶縁体層の厚みは 0.1〜1.0 mmである。
【0035】また、本発明のセラミックス多層基板は、
2kgf 以上、好ましくは3kgf 以上というピール強度の
目標値も確保することができる。これは、表層絶縁体層
の強度が高く、同時に絶縁体層間の密着性が高いためで
あるためである。
【0036】内層の比誘電率が4.5 以下という低誘電率
の絶縁体層は、ホウケイ酸ガラスに、石英と石英ガラス
という2種類の酸化ケイ素材料および少量のアルミナか
らなる骨材を配合した原料粉末の焼成により形成するこ
とができる。石英ガラスには、溶融法により製造された
比較的安価なもの (溶融石英、溶融シリカとも呼ばれ
る) と、四塩化ケイ素の熱分解等の気相法により製造さ
れた、より高純度で高価なものがある。いずれも使用で
きるが、溶融法で製造された石英ガラス (即ち、溶融石
英) で十分である。
【0037】骨材が主に比誘電率の低い酸化ケイ素から
なり、ガラスにも比誘電率が低いホウケイ酸ガラスを使
用することで、比誘電率が4.5 以下と低く、しかも低温
で焼成でき、表層の高強度の絶縁体層との密着性も高
い、セラミックス材料になる。このガラスセラミックス
材料の焼結温度は、骨材の総添加量によって制御するこ
とができる。
【0038】骨材の酸化ケイ素として、石英と石英ガラ
スという2種類を併用するのは、熱膨張率が石英は約12
〜15×10-6/℃、石英ガラスは1×10-6/℃弱と大きく
異なることから、この2種類の材料の配合割合によっ
て、内層絶縁体層の熱膨張率を、表層の高強度の絶縁体
層の熱膨張率に近くなるように調整することができるか
らである。骨材に、上記2種類の酸化ケイ素に加えて、
少量のアルミナを配合するのは、焼成中に酸化ケイ素質
骨材とホウケイ酸ガラスとの反応によってクリストバラ
イトが生成するのを防止するためである。
【0039】石英が5%未満であるか、または石英ガラ
スが55%を超えると、内層絶縁体層の材料の熱膨張率が
小さくなりすぎる。逆に、石英が55%を超えるか、石英
ガラスが5%未満になると、内層絶縁体層の熱膨張率が
高くなりすぎる。それにより、表層のセラミックス材料
と一緒に一括焼成する場合に、反りを生じ易くなり、外
部接続が不安定になる。
【0040】この両者の総和が25%を下回るか、ホウケ
イ酸ガラスの量が69%を上回ると、基板材料が軟化し過
ぎ、内部に形成された配線が切断される可能性がある。
また、焼成温度が低くなり過ぎて、表層のセラミックス
材料との一括焼成が困難となる。一方、石英と石英ガラ
スの総和が65%を超えるか、ホウケイ酸ガラスの量が30
%を下回ると、焼成時に充分緻密化しないため、絶縁抵
抗の劣化等につながる可能性がある。
【0041】アルミナの配合量が1%より少ないとクリ
ストバライトの析出が起こり、5%より多いと、絶縁体
層の比誘電率が高くなり、比誘電率が4.5 以下という条
件を満たすことが困難となって、信号伝送特性に悪影響
を及ぼす。アルミナに代えて、或いはアルミナの一部と
して、ムライト、窒化アルミニウムなどのアルミニウム
含有無機材料を使用することもでき、その場合の添加量
はアルミナ換算で1〜5%であればよい。
【0042】好ましくは、内層絶縁体層は、ホウケイ酸
ガラス38〜55%、石英20〜50%、石英ガラス10〜30%お
よびアルミナ2〜4%からなり、かつ石英と石英ガラス
の合計が30〜65%である原料粉末の焼成により形成さ
れ、室温から350 ℃の範囲での平均熱膨張係数が 4.5〜
8×10-6/℃である。
【0043】ホウケイ酸ガラスは、軟化点が 600〜800
℃の範囲にあり、かつ比誘電率が低ければ、その組成は
特に制限されない。好ましいホウケイ酸ガラスは、アル
カリ土類金属酸化物(MgO, CaO, BaO等) を実質的に含有
しない (不純物量以下) のものである。アルカリ土類金
属酸化物を含有するホウケイ酸ガラスは、比誘電率が高
くなる傾向がある。
【0044】好ましいホウケイ酸ガラスの組成は上述し
た通りである。SiO2はB2O3と共にホウケイ酸ガラスの主
となる構造を構成するが、75%を超えるとガラスの軟化
点が高くなる傾向があり、60%を下回ると、それにより
増える多成分系の影響により、比誘電率が上昇したり、
耐湿性が悪くなることがある。B2O3が15%を下回ると、
ガラスの軟化点が上昇し、30%を超えるとガラスの作製
中に分相が生じ易く、均一なガラスとならないばかり
か、耐湿性も低下する。
【0045】ホウケイ酸ガラスに添加した微量のAl2O3
は、ガラス作製における分相の抑制、冷却中の結晶化の
抑制等に効果があるが、その量が5%以上になると、ガ
ラスの比誘電率が高くなる。また、アルカリ金属酸化物
(Li2O, Na2O, K2O) はガラスの軟化点を下げる効果があ
るが、その合計量が5%以上になると、ガラスの絶縁耐
圧、誘電正接等が劣化する。その他の不純物は、ガラス
の特性を劣化させない範囲で存在し得るが、合計が5重
量%以上になるとガラスの特性に及ぼす影響が大きくな
りすぎる。
【0046】より好ましいホウケイ酸ガラスの組成は、
SiO2:65〜74%、B2O3:22〜28%、Al2O3:2%未満、ア
ルカリ金属酸化物:合計3%未満、その他の不純物:合
計4%未満である。
【0047】一方、表層の高強度のセラミックス材料
は、低温焼成が可能で、かつ曲げ強度が25 kgf/mm2以上
であればよい。このような条件を満たすセラミックス材
料として、ガラス成分がコーディエライト結晶化ガラス
またはアノーサイト結晶化ガラスからなり、骨材がアル
ミナからなる、ガラスセラミックス材料がある。コーデ
ィエライト結晶化ガラスまたはアノーサイト結晶化ガラ
スは、アルミナとの相互作用で部分的に結晶化すること
により、結晶化を生じないホウケイ酸ガラス等のガラス
材料を使用した場合より高い強度が得られる。但し、こ
の材料の強度は、アルミナの配合量に依存し、アルミナ
の量が40%を下回ると充分な強度が得られない。また、
アルミナの量が60%を超えると、低温焼成では焼結が不
十分となり、やはり強度が低下する。より好ましいアル
ミナの配合量は45〜55%である。
【0048】好ましくは、コーディエライト結晶化ガラ
スは、 MgO: 10〜20%、 Al2O3: 10〜20%、SiO2: 40〜
55%、B2O3: 10〜20%、R2O: 0.5〜5%(Rはアルカリ金
属)、不純物: 5%以下の組成からなり、アノーサイト
結晶化ガラスは CaO: 10〜55%、SiO2: 45〜70%、Al2O
3:0〜30%、B2O3: 0〜30%、不純物: 10%以下の組成
からなる。
【0049】この表層に用いるコーディエライト結晶化
ガラスまたはアノーサイト結晶化ガラスは、いずれも焼
成中に結晶化が起こるので、焼成前に予め結晶化させて
おく必要はない。従って、表層の形成に用いる原料粉末
は、上記範囲内の組成を持つガラス化した非晶質の粉末
でよい。
【0050】本発明のセラミックス多層基板は、厚膜印
刷法でも製造できるが、好ましくは周知のグリーンシー
ト多層積層法により製造する。前述したように、表層絶
縁体層と内層絶縁体層とで異なるセラミックス材料を使
用する。表層と内層のいずれも、2種以上のセラミック
ス材料を使用してもよいが、通常はそれぞれ1種類づつ
を使用すればよい。
【0051】表層絶縁体層と内層絶縁体層のいずれに対
しても、前述した原料粉末からドクターブレード法等の
周知の方法により適当な厚みのグリーンシートを形成す
る。適当な大きさに裁断した各グリーンシートに対し
て、ビア (スルーホール) の孔あけ、導体ペースト (導
体またはその前駆物の微粉末をビヒクルと混合してペー
スト状にしたもの) によるその充填を行う。内層絶縁体
層用のグリーンシートには、信号配線層を形成するよう
に導体ペーストを印刷し、表層絶縁体層形成用のグリー
ンシートにも、必要に応じて表層電極を形成するように
導体ペーストを印刷する。
【0052】その後、常法に従って、両面に1枚以上の
表層絶縁体層用のグリーンシート、内部に通常は複数枚
の内層絶縁体層用のグリーンシートを配した積層体を形
成する。この積層体は、例えば、複数のグリーンシート
を上記のように重ね、100 ℃前後で熱プレスすることに
より得ることができる。この積層体を一括焼成 (即ち、
グリーンシートと内層配線とを同時焼成) して、セラミ
ックス材料を焼結させると、導体ペーストから形成され
た信号配線層とグリーンシートから形成された絶縁体層
とが一体化した本発明のセラミックス多層基板が得られ
る。
【0053】表層絶縁体層と内層絶縁体層の熱膨張率が
近くなるように、各セラミックス材料の組成を選定して
おけば、焼成中の反りや歪みはほとんど起こらない。し
かし、場合によっては、反り等を解消するために、積層
体を厚み方向に加圧しながら焼成を実施してもよい。こ
の加圧は、焼成中に積層体に融着しないか、或いは融着
しても、得られた基板から容易に除去できる治具を介し
て、積層体を厚み方向(Z方向) に 加圧することによ
り行うことができる。
【0054】焼成温度は 800〜1050℃の範囲とする。好
ましい焼成温度は 850〜950 ℃である。表層と内層のい
ずれのセラミックス材料も、この温度で十分に焼結し、
表層のセラミックス材料の部分結晶化もこの焼成温度で
起こる。それにより、信号配線層の金属として、低抵抗
のAg、Au、Ag−Pd、Ag−Pt等の貴金属やCuといった金属
が適用可能となり、信号の伝送損失が最小限に抑えられ
る。焼成雰囲気は、信号配線層の金属がCuである場合に
は非酸化性雰囲気とするが、貴金属の場合には非酸化性
とする必要はなく、大気雰囲気でよい。
【0055】信号配線層がCuである場合には、この配線
層の形成に用いる導体ペーストは、Cu金属および/また
はCu化合物の粉末を主成分とするものを使用できる。Cu
化合物としては、酸化銅、即ち、Cu2Oおよび/またはCu
O が好ましいが、硫化物や銅塩といった他のCu化合物の
使用も可能である。特に内層配線信号層をCuから形成す
る場合には、積層体の焼成は次のように行うことが好ま
しい。
【0056】まず、グリーンシートや導体ペースト中の
有機物の除去 (脱バインダー) のために、酸化性雰囲気
中で熱処理する。この熱処理の加熱温度は、各グリーン
シートの焼結温度より低温であればよいが、通常は 400
〜700 ℃の範囲内が好ましい。酸化性雰囲気は酸素含有
ガス、例えば、空気でよい。この加熱を、例えば不活性
ガス雰囲気中で行うと、焼成後の多層基板中に有機物や
カーボンが残留して、基板の焼成密度の低下や曲げ強度
の低下と基板の変色を生ずることがある。なお、この脱
バインダーのための熱処理は、Ag等の貴金属の粉末を含
む導体ペーストを使用した場合にも行ってもよいが、そ
の場合は焼成雰囲気が一般に大気であるので、大気中で
焼成温度まで昇温する間に脱バインダーを行ってもよ
い。
【0057】この酸化性雰囲気での加熱により、導体ペ
ーストがCu金属を含有している場合には、酸化銅に酸化
される。従って、導体ペーストが最初からCu化合物を含
有している場合だけでなく、金属Cuを含有している場合
でも、脱バインダーのための酸化性雰囲気での加熱後
に、還元性雰囲気中で加熱して、Cu化合物を金属Cuに還
元する。この還元のための加熱温度も各グリーンシート
の焼結温度より低温であればよいが、通常は 250〜500
℃の範囲内が好ましい。還元性雰囲気としては、水素と
不活性ガス (例、窒素) との混合ガスを使用するのが一
般的である。最後に、還元したCuを酸化させないように
非酸化性雰囲気 (即ち、N2 またはArなどの不活性ガ
ス雰囲気または還元性雰囲気) 中で焼成する。
【0058】
【実施例】
(実施例1)低誘電率のセラミックス材料として、石英25
%、溶融石英 (溶融法で製造された石英ガラス) 25%、
アルミナ2.5 %、残部がホウケイ酸ガラス (SiO2: 70
%、B2O3: 25%、Al2O3: 0.2%、K2O: 0.9%、Li2O: 0.
7%) からなる原料粉末の焼成で得たガラスセラミック
ス材料を使用した。このセラミックス材料の特性を調べ
るため、上記原料粉末から調製したグリーンシートを1.
2 mm厚みに積層し、大気中900 ℃で1時間焼成して、ガ
ラスセラミックス基板を作製した。この基板の比誘電率
は4.1 であり、室温から350 ℃までの平均熱膨張率は
5.2×10-6/℃、曲げ強度は10 kgf/mm2であった。ま
た、この基板に存在する結晶相を粉末X線回折法により
同定したが、クリストバライトは存在していなかった。
このセラミックス材料を、以下では「低誘電率材料」と
いう。
【0059】同様にして、ホウケイ酸ガラス30〜69%、
石英5〜55%、溶融石英5〜55%、アルミナ1〜5%か
らなり、かつ石英と溶融石英の合計が25〜65%の範囲内
で配合割合を変化させ、組成に応じて焼成温度を 800〜
1050℃の範囲内で変化させて各種のガラスセラミックス
基板を作製したが、いずれも比誘電率は4.5 以下 (多く
は4.2 以下) であり、前記の平均熱膨張率は3〜8×10
-6/℃の範囲内であるが、石英の量が20%以上の場合に
は 4.5〜8×10-6/℃の範囲内となった。曲げ強度は5
〜13 kgf/mm2の範囲内であり、クリストバライトはいず
れの焼成基板にも存在していなかった。
【0060】高強度のセラミックス材料として、下記A
〜Cの高強度材料を選んだ。高強度材料A :コーディエライト結晶化ガラス(MgO: 1
5.6%、 Al2O3: 11.7%、SiO2: 50.7%、B2O3: 18.0
%、R2O: 4.0%) 50%とアルミナ50%からなるガラスセ
ラミックス材料。上と同様に、ガラス化させた非晶質の
原料粉末から調製したグリーンシートを大気中900 ℃で
1時間焼成して焼結・結晶化させた焼成基板を用いて特
性を調べたところ、曲げ強度は30 kgf/mm2であり、比誘
電率は8.0 、室温から350 ℃までの平均熱膨張率は 6.0
×10-6/℃であった。
【0061】高強度材料B:アノーサイト結晶化ガラス
(CaO: 27.3%、SiO2: 50%、Al2O3:13.6%、B2O3:9.1
%) 50%とアルミナ50%からなるガラスセラミックス材
料。上と同様に、ガラス化させた非晶質の原料粉末から
調製したグリーンシートを大気中900 ℃で1時間焼成し
て焼結・結晶化させた焼成基板を用いて特性を調べたと
ころ、曲げ強度は28 kgf/mm2であり、比誘電率は8.9 、
室温から350 ℃までの平均熱膨張率は 5.7×10-6/℃で
あった。
【0062】高強度材料C:低誘電率材料に用いたのと
同じホウケイ酸ガラス50%とアルミナ50%からなるガラ
スセラミックス材料。上と同様に、原料粉末から調製し
たグリーンシートを大気中900 ℃で1時間焼成して焼結
させた焼成基板を用いて特性を調べたところ、曲げ強度
は24 kgf/mm2であり、比誘電率は5.8 、室温から350℃
までの平均熱膨張率は 5.3×10-6/℃であった。即ち、
この高強度材料Cは、曲げ強度が25 kgf/mm2に達しない
ので、比較用の材料である。
【0063】図1に示すように、必要な枚数の低誘電率
材料のグリーンシートを重ねて1.2mm厚となるように
し、その両面に同一の組成の高強度グリーンシートA〜
Cのいずれかを、それぞれ0.2 mm厚さになるように積層
し、熱プレス法で100 ℃、100kgf/cm2 の条件で圧着し
て、一体化した。得られた積層体を大気中900 ℃で1時
間焼成して、セラミックス多層基板を作製した。
【0064】このセラミックス多層基板の曲げ強度とピ
ール強度の測定結果を表1に示す。ピール強度の測定
は、図2に示すように、多層基板の表面に2mm角のCuパ
ッドを後付けCu導体により形成し、直径0.6 mmの錫メッ
キ銅線を低温半田により半田付けした後、この銅線を上
方に垂直に引っ張り、Cuパッドまたはその下のセラミッ
クスから引き剥すのに要する力を測定する、セラミック
ス厚膜回路基板で一般に採用される方法により行った。
【0065】
【表1】
【0066】上記の結果より、本発明に従って、表層絶
縁体層の曲げ強度が25 kgf/mm2以上であれば、内層絶縁
体層の曲げ強度が10 kgf/mm2と低くても、多層基板全体
の曲げ強度は目標とする20 kgf/mm2以上を十分に確保で
き、またピール強度も2kgf以上となり、実装強度面か
ら本発明の有効性が証明された。
【0067】(実施例2)実施例1の番号1と同じ材料の
組合わせ (即ち、内層が低誘電率材料、表層が高強度材
料A) で、信号配線層としてAg導体を用い、図3に示す
ストリップライン構造のセラミックス多層配線基板のサ
ンプルを作製した。使用した導体ペーストはAg粉末 (平
均粒径約2μm) を含有し、表層および内層の各絶縁体
層の厚みは表層が0.4 mmづつ、内層が2.0 mmであり、積
層時の熱プレス条件は実施例1と同じであり、大気中60
0 ℃で1時間熱処理して脱バインダー処理した後、大気
中900 ℃で1時間焼成して、基板を得た。
【0068】比較のために、内層にも表層と同じ高強度
材料Aを用いて、同様の構造のセラミックス多層配線基
板を作製した。これらの配線基板の配線を通過する電気
信号の伝播時間を測定し、配線長との関係から、信号伝
達速度と実効比誘電率を算出した。表2にその結果を示
す。
【0069】
【表2】
【0070】上記結果から信号を伝送する配線の周囲が
低誘電率材料で構成された本発明の多層基板では、表層
の比誘電率が高くても、配線を通る信号伝達速度が高
く、実効比誘電率が内層の低誘電率材料と同じになっ
た。即ち、基板全体を低誘電率材料から構成した場合と
同じ信号伝達速度が達成されることになり、LSIデバ
イス等の高速化に対応できることが証明された。
【0071】(実施例3)市販の酸化銅 (Cu2O) 粉末 (平
均粒径約8μm) 100 重量部にビヒクルを30重量部を添
加して混合し、Cu導体ペーストを作製した。これを、実
施例1と同じ低誘電率材料のグリーンシートの表面およ
び高強度材料Aのグリーンシートの表面に所定のパター
ンにスクリーン印刷した。
【0072】次いで、低誘電率材料のグリーンシートを
重ね1.2 mmとなるようにし、その両面に高強度材料Aの
グリーンシートをそれぞれ0.2 mm厚さになるように積層
し、熱プレスにて100 ℃、100 kgf/cm2 の条件で圧着し
て一体化した。その後、表3に示す条件で脱バインダ
ー、還元、焼成の各加熱処理を行い、図3に示すのと同
様のストリップライン構造のセラミックス多層配線基板
のサンプルを作製した。この基板の配線抵抗を四端子法
で、残留炭素をガス分析法でそれぞれ測定し、基板と配
線の外観を目視で検査した。これらの結果も表3に併せ
て示す。
【0073】
【表3】
【0074】内層信号配線層がCuである場合には、焼成
雰囲気が大気雰囲気であったり、還元処理を省略した
り、脱バインダーを不活性ガス雰囲気中で行うと、必要
な特性を有するセラミックス多層基板が得られないこと
がわかる。例えば、脱バインダーを不活性ガス雰囲気中
で行うと、基板中にカーボンが多く残留し、その結果基
板が灰色になり、また配線が変色し、抵抗値が高くなっ
た。還元処理をしない場合にも、配線が黒色を呈し、一
部剥離し、抵抗が測定不能となった。焼成を大気中で行
うと、配線の酸化により黒色を呈し、かつ配線が一部剥
離し、抵抗が測定不能となった。
【0075】実施例1〜3の結果から、本発明により、
信号配線層がAg等の貴金属、またはCuのいずれであって
も、実装強度と伝送特性の両方を兼ね備えた優れたセラ
ミックス多層基板が提供されることが証明された。
【0076】
【発明の効果】本発明のセラミックス多層基板は、 ・配線回りの内層のセラミックス材料の比誘電率が4.5
以下と低いので、LSI等の高速化に対応できる信号伝
達速度が実現でき、 ・ 800〜1050℃の低温で焼成できるため、電気抵抗率が
低く、従って信号の伝送損失の少ないAg、Cu、Au等の導
体で信号配線層を形成でき、 ・表層に高強度のセラミックス材料を一体化したことに
より、基板全体で曲げ強度20 kgf/mm2以上、ピール強度
2kgf 以上とすることができ、 ・信号配線層がCuであっても、以上の効果を得ることが
でき、るので、優れた電気的特性と実装信頼性をもつ基
板である。
【0077】さらに、内層のセラミックス材料を表層の
セラミックス材料と熱膨張率が近くなるように調整でき
るので、焼成時のトラブルが少なく、加圧しなくても反
りの少ない多層基板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るセラミックス多層基板の1例の説
明図である。
【図2】実施例で採用したピール強度の試験法を示す説
明図である。
【図3】実施例で信号伝達時間の測定に用いたストリッ
プライン多層基板の構造を示す説明図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H05K 3/46 H05K 3/46 H

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セラミックス絶縁体層と信号配線層とを
    交互に積層し一体化したセラミックス多層基板であっ
    て、表層の絶縁体層が曲げ強度25 kgf/mm2以上のセラミ
    ックス材料からなり、内層の絶縁体層がクリストバライ
    トを含まず、比誘電率4.5 以下のセラミックス材料から
    なることを特徴とする、セラミックス多層基板。
  2. 【請求項2】 基板の実効比誘電率が4.5 以下、曲げ強
    度が20 kgf/mm2以上、ピール強度が2kgf 以上である請
    求項1記載のセラミックス多層基板。
  3. 【請求項3】 信号配線層が貴金属および/または銅か
    らなる請求項1または2記載のセラミックス多層基板。
  4. 【請求項4】 内層の絶縁体層が、ホウケイ酸ガラス30
    〜69wt%、石英5〜55wt%、石英ガラス5〜55wt%、お
    よびアルミナ1〜5wt%からなり、かつ石英と石英ガラ
    スの合計が25〜65wt%である原料粉末から得られたガラ
    スセラミックス材料からなる、請求項1ないし3のいず
    れか1項に記載のセラミックス多層基板。
  5. 【請求項5】 内層の絶縁体層が、ホウケイ酸ガラス38
    〜55wt%、石英20〜50wt%、石英ガラス10〜30wt%、お
    よびアルミナ2〜4wt%からなり、かつ石英と石英ガラ
    スの合計が30〜65wt%である原料粉末から得られた、室
    温から350 ℃の範囲での平均熱膨張係数が 4.5〜8×10
    -6/℃のガラスセラミックス材料からなる、請求項4記
    載のセラミックス多層基板。
  6. 【請求項6】 ホウケイ酸ガラスの組成が、SiO2: 60〜
    75wt%、B2O3: 15〜30wt%、Al2O3:5wt%未満、アルカ
    リ金属酸化物:合計5wt%未満、その他の不純物:合計
    5wt%未満である請求項4または5記載のセラミックス
    多層基板。
  7. 【請求項7】 表層の絶縁体層が、コーディエライト結
    晶化ガラスおよび/またはアノーサイト結晶化ガラス60
    〜40wt%とアルミナ40〜60wt%とからなる、請求項1な
    いし6のいずれか1項に記載のセラミックス多層基板。
  8. 【請求項8】 コーディライト結晶化ガラスの組成が、
    MgO:10〜20wt%、Al2O3:10〜20wt%、SiO2: 40〜55wt
    %、B2O3: 10〜20wt%、アルカリ金属酸化物:合計 0.5
    〜5wt%であり、アノーサイト結晶化ガラスの組成が、
    CaO:10〜55wt%、SiO2: 45〜70wt%、Al2O3:0〜30wt
    %、B2O3:0〜30wt%、不純物10wt%以下である、請求項
    7記載のセラミックス多層基板。
  9. 【請求項9】 少なくとも一部のグリーンシートが表面
    に導体ペーストのパターンを有している複数のグリーン
    シートを積層し、積層体を 800〜1050℃で一括焼成する
    ことからなる、請求項1ないし8のいずれか1項に記載
    のセラミックス多層基板の製造方法。
  10. 【請求項10】 導体ペーストの少なくとも一部が、Cu
    および/またはCu化合物を主成分とするものであり、焼
    成を非酸化性ガス雰囲気中で行う、請求項9記載のセラ
    ミックス多層基板の製造方法。
  11. 【請求項11】 Cu化合物がCu2OおよびCuO から選ばれ
    た少なくとも1種である、請求項10記載のセラミックス
    多層基板の製造方法。
  12. 【請求項12】 非酸化性雰囲気中での焼成前に、各グ
    リーンシートの焼結温度より低温で、酸化性雰囲気中で
    の熱処理による有機物除去と、還元性雰囲気中での還元
    処理とを行う、請求項10または11記載のセラミックス多
    層基板の製造方法。
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