JPH10184090A - 免震構造物 - Google Patents

免震構造物

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JPH10184090A
JPH10184090A JP35893996A JP35893996A JPH10184090A JP H10184090 A JPH10184090 A JP H10184090A JP 35893996 A JP35893996 A JP 35893996A JP 35893996 A JP35893996 A JP 35893996A JP H10184090 A JPH10184090 A JP H10184090A
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seismic isolation
base portion
isolation structure
damper
recess
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Seiichiro Maeda
清一郎 前田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 小規模の地震動や台風による風力の作用時に
おいては構造物の振動を極力抑制し、それを上回る地震
力が作用したときは、水平方向の振動エネルギーみなら
ず上下方向の振動エネルギーも効果的に減衰させ、構造
物の免震性を向上させる。 【解決手段】 地面を掘り下げて、高耐震性の凹所構造
体2を形成する。この凹所構造体2内に構造物の基礎部
3を収容し、この基礎部3を、凹所構造体の水平な底面
部分5に対して転動可能とする。基礎部3と凹所構造体
の内壁部6とを自動切断機7で剛に連結する。自動切断
機7は、小地震や台風発生時には切断されず、それを上
回る地震力が作用した時に自動的に切断される。自動切
断機7が切断された後における、水平方向及び上下方向
での基礎部の振動エネルギーをダンパーで減衰させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、免震構造物に関す
るものである。より詳しくは、小規模の地震動や台風に
よる風力の作用時においては構造物の振動を極力抑制で
きると共に、それを上回る地震力が作用したときは、水
平方向の振動エネルギーのみならず上下方向の振動エネ
ルギーも効果的に減衰させることができる免震構造物に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】構造物の従来における免震装置として
は、積層ゴム支承型の免震装置が多く実用に供されてい
る。この免震装置は、図25に示すように、ゴム弾性板
aと金属板bとを交互に鉛直方向に一体に積層して構成
した支承体cを、構造物の基礎部dと地盤(基礎コンク
リート)eとの間に介在させ、該支承体cの上部支持板
fを基礎部dに固定すると共に下部支持板gを地盤eに
固定してなるものであり、地震発生時に、地盤の水平方
向移動に追随して前記支承体cのゴム弾性板aが弾性変
形することにより、免震を図らんとするものであった。
【0003】なお構造物のその他の免震装置としては、
構造物の基礎部と地盤(基礎コンクリート)との間に、
上部構造物を水平方向に揺動自在に支持する転動体又は
滑り支承体を介在させ、上部構造物と地盤とを絶縁して
免震するタイプのものも提案されていた。しかしこのタ
イプのものは、大地震発生時における移動を規制するた
めの効果的な手段が存在しなかったために、又、小規模
の地震動や台風による風力に対する構造物の揺れを効果
的に抑制する手段についても有効なものが存在しなかっ
たために、余り実用化されていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来の積層ゴム支承型の免震装置によるときは、支承体c
の上下端を基礎部と地盤に夫々固定していたために、大
規模地震が発生した場合、大きな水平方向の地震動によ
って前記ゴム弾性板aが損傷して有効な免震機能を発揮
し難い問題があった。
【0005】又この免震装置は、軽量構造物に対しては
有効な免震効果が得られない欠点があった。
【0006】加えて、この免震装置は、水平方向の地震
動に対する有効性から、構造物本体だけを対象にした場
合には一定の効果を上げることができたが、上下方向の
地震動に対しては免震効果が薄かった。この点は、近年
大きな問題となっている。
【0007】なぜなら、近年は、コンピュータ等の電子
機器類が構造物内に数多く設置されるようになってきて
いるが、これらの電子機器類は不規則な振動に極めて弱
いため、これらを地震動から守るためには、水平方向の
地震動だけでなく上下方向の地震動も軽減できることが
要求されるからである。又居住者にとっても上下振動は
脅威であることから、上下方向の地震動軽減の要求は、
居住性の面からも当然のことと言えるからである。
【0008】本発明は、かかる要求に鑑み、前記絶縁方
式の免震装置に基本を置いて開発されたものであり、小
地震発生時や台風による風力の作用時には構造物の揺れ
を極力抑制できると共に、大地震発生時には、水平方向
の地震動だけでなく上下方向の地震動も軽減できる高い
免震性を発揮して、構造物のみならず居住者や設置機器
類をも地震動から守ることができる免震構造物の提供を
目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記従来の免
震構造物の問題点に鑑みて開発されたものであり、地面
を掘り下げて形成した耐震性の凹所構造体を免震装置の
基本構造として採用している点に大きな特徴がある。本
発明が、免震を図るべき構造物の支持母体を、地盤では
なく前記耐震性の凹所構造体に求めたのは次の理由によ
る。
【0010】 過去の地震災害においては、液状化現
象等の特殊な場合を除き、地下室の被害が少なかったこ
と。
【0011】 阪神大震災の被害状況報告によれば、
地下共同溝の被害例は殆どなく、地中埋設管は地上構造
物と比較して安全であると報告されていること。
【0012】 前記のように地下構造物の耐震性が極
めて高いこと、そして、地下に深く埋設される構造物ほ
ど地震動の影響が少ないことに鑑み、地中に深く設置さ
れた剛性の高い耐震性の凹所構造体内に構造物の基礎部
を収容すれば、該凹所構造体が破壊されない限り地上の
構造物の倒壊を防止できると考えられること。
【0013】 地上に構築した支持柱や支持壁、支持
梁等によって構造物を支持し、或いは吊下する方法も考
えられないではないが、このような地上の構築物を用い
る場合は、その耐震性に問題が生ずるばかりでなく構造
物全体としての美観面においても不適切であったこと。
【0014】本発明は、かかる観点から、地下設置の前
記凹所構造体を免震の基本構造として採用したのであ
り、具体的には次のような手段を採用している。
【0015】即ち本発明に係る免震構造物は、地面を掘
り下げて耐震性の凹所構造体を形成すると共に、該凹所
構造体内に構造物の基礎部を収容し、該基礎部を、前記
凹所構造体の水平な底面部分に対して転動可能又は滑動
可能としてなる。又、前記基礎部と凹所構造体の内壁部
とを、構造物に一定以上の地震力が作用したときに自動
的に切断される自動切断器で連結し、該自動切断器と基
礎部との接合点及び該自動切断器と凹所構造体の内壁部
との接合点を剛節としてなる。又、該自動切断器が切断
された後において前記基礎部が地震力の作用によって水
平方向で振動するときや上下方向で振動するときの振動
エネルギーを減衰させるためにダンパーを設けたことを
特徴とするものである。
【0016】前記免震構造物において、基礎部が水平方
向で振動するときの変位を一定範囲内に規制するため
に、基礎部を弾性的に受け止めるストッパーを凹所構造
体に設け或いは該ストッパーを凹所構造体の一部で構成
するのがよい。
【0017】前記各免震構造物において、地面を掘り下
げて形成した耐震性の凹所構造体は、その内周面及び底
面をコンクリートの被覆面として形成すると共に、該底
面の内、基礎部の下端が転動し或いは滑動する範囲にあ
る部分は水平面に形成するのがよい。
【0018】前記各免震構造物において、自動切断器が
切断された後において基礎部が地震力の作用により上下
方向で振動するときの変位を一定範囲内に規制するため
に、基礎部を弾性的に受け止めるストッパーを凹所構造
体に設けるのがよい。
【0019】前記自動切断器を、切欠きを有する板状又
は棒状をなす部材を以って構成し、その両端部分を、基
礎部及び凹所構造体の内壁部に固定状態に連結するのが
よい。この自動切断器は鋳鉄製とし、その両端部分を、
基礎部及び凹所構造体の内壁部に、着脱可能のボルト連
結手段により連結するのがよい。この場合切欠きは、板
状又は棒状をなす部材の両端側に設けるのがよい。
【0020】自動切断器をボルト連結手段により連結す
る場合、自動切断器を取り替えるための作業スペース
を、凹所構造体の内壁部と基礎部との間に形成するのが
よい。
【0021】前記各免震構造物において、上下方向の振
動エネルギーを減衰させるダンパーは、構造物の基礎部
の下端部分として構成し、上端が開放すると共に内部に
粘性体が収容されてなり且つ下面において凹所構造体の
水平な底面部分と滑り接触或いは転がり接触する内筒
と、下端が開放し且つ前記内筒に密接して外挿される外
筒とを具えるものとし、該外筒が最下降状態においても
内筒内に連通する通気孔を外筒に設け、又外筒の上端部
には、下方向に延び且つ下端の抵抗部が前記粘性体中に
常時存するロッドを突設し、前記外筒が上下動するとき
に該抵抗部が粘性体から受ける抵抗によって、上下方向
で振動する基礎部の振動エネルギーが減衰されるように
構成するのがよい。この場合、抵抗部は、下端開放の凹
部を有するものとして構成するのがよい。又、上昇した
外筒が最下降状態となったときの衝撃を緩衝材で緩和す
るように構成するのがよい。
【0022】本発明の免震構造物において、水平方向及
び上下方向の振動エネルギーを減衰させるダンパーを、
上端が開放し且つ内部に粘性体が収容された容体と、基
礎部の下端に設けられて常時前記粘性体中に存する抵抗
部とを具えるものとし、前記基礎部が水平方向及び上下
方向で振動するときに該抵抗部が粘性体から受ける抵抗
によって、これらの振動エネルギーが減衰されるように
構成するのがよい。又、水平方向及び上下方向の振動エ
ネルギーを減衰させるダンパーは、流体の乱流抵抗を利
用するオイルダンパーとして構成し、その両端を、基礎
部と凹所構造体の内壁部に夫々回動可能に連結するのが
よい。又、水平方向及び上下方向の振動エネルギーを減
衰させるダンパーは、基礎部の所要部位及び/又は凹所
構造体の所要部位に付設された、ゴム等の弾性圧縮可能
な緩衝材として構成するのがよい。
【0023】本発明の免震構造物において、地面を掘り
下げて上の凹所構造体を形成すると共に、その底面部を
更に掘り下げて下の凹所構造体を形成することにより、
耐震性の凹所構造体を上下複数段に構成し、各段の凹所
構造体に構造物の基礎部を収容するのがよい。
【0024】なお本発明において、上下方向の振動とは
ロッキング振動を含むものである。
【0025】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面に
基づいて説明する。図1〜2において本発明に係る免震
構造物1は、地面を掘り下げて形成した、大地震にも耐
え得る高耐震性の凹所構造体2内に構造物の基礎部3を
収容し、該基礎部3の下端を、前記凹所構造体2の水平
な底面部分(例えば、鉄板の上面として形成されてい
る)5に対して転動可能に構成すると共に、前記基礎部
3と凹所構造体2の内壁部6とを自動切断器7で連結し
てなる。
【0026】基礎部3が、前記凹所構造体の水平な底面
部分5に対して転動可能とされているため、小地震の発
生時や台風時において構造物が常時揺れることになるの
で、このような揺れを防止するために、基礎部3と凹所
構造体の内壁部6とを自動切断器7で連結しているので
ある。
【0027】そして、該自動切断器7が切断された後に
おいては、前記基礎部3が地震力の作用により水平方向
及び上下方向で振動することになるが、このような水平
方向や上下方向の振動エネルギーを減衰させるために第
1のダンパー9と第2のダンパー10を設けてなる。
【0028】又、前記水平方向で振動するときの変位を
一定範囲内に規制するために、基礎部3を弾性的に受け
止める第1のストッパー11を前記凹所構造体2に設け
ると共に、上下方向で振動するときの変位を一定範囲内
に規制するために、基礎部3を弾性的に受け止める第2
のストッパー12(図15)を凹所構造体2に設けてな
るものである。
【0029】なお前記第1のストッパー11としては、
凹所構造体2の入隅部分等の内壁部や後述する柱状スト
ッパー61が該当する。
【0030】そして前記耐震性の凹所構造体2は、自動
切断器7が切断された後における基礎部3の水平方向や
上下方向の振動を許容する一定の余裕ある空間13を有
している。これをより具体的に説明すれば次のようであ
る。
【0031】前記耐震性の凹所構造体2は、図1〜2に
示すように、本実施の形態においては2段式の凹所構造
体として形成されており、平面視で矩形状をなす上の凹
所構造体2aの底面中央部の左右部分を掘り下げて、平
面視で正方形状をなす下の凹所構造体2b,2bを設け
てなる。該上の凹所構造体2a及び下の凹所構造体2b
は、その底面部15,15及び内壁部6の全体が一連
に、鉄筋コンクリート製の被覆部とされており、極めて
高い剛性を有し、後述のように、大規模地震発生時にお
ける基礎部を確実に支持する基本構造体となる。
【0032】前記構造物の基礎部3は、支柱17と支柱
相互間を連結する縦横の梁19とで構成されている。そ
して該基礎部の四隅及び長辺側の中央部に配置されてい
る支柱17の下端部分は、前記第1のダンパー9として
構成され、該第1のダンパー9の下面側には転がり装置
20が設けられている。
【0033】該第1のダンパー9は、図3〜5に示すよ
うに、上端が開放すると共に内部に粘性体(油や、粘性
を有する高分子粘性体等)21が収容されてなる円筒状
の内筒22と、下端が開放し且つ前記内筒22に密接し
て外挿される外筒23とを具える。
【0034】該外筒23には、それが最下降状態におい
ても内筒22内に連通する通気孔25を設けてなり、外
筒23の上下動によって第1のダンパー9の内部が真空
状態や圧縮状態にならないようにしている。
【0035】又外筒23の上端部の下面中央部には、下
方向にロッド26を突設してなる。該ロッド下端の例え
ば板状をなす抵抗部27は、前記粘性体21中に常時存
する如くなされており、外筒23が上下動するときに前
記抵抗部27が粘性体21から受ける抵抗によって、上
下方向に振動する基礎部3の振動エネルギーを吸収する
ように構成されている。
【0036】外筒23が図5に示すように上昇すると
き、及び下降するときに、前記通気孔25を通して空気
の流通が行われる。なお前記板状の抵抗部27は、外筒
23が下降するときの粘性抵抗をより大きくするため
に、下端開放の凹部29を有する。
【0037】又内筒22の下端部分には、その全周に亘
って外方向に張り出す張出部30が設けられると共に、
外筒23の下端部分には、その全周に亘って外方向に張
り出す鍔部31が設けられており、前記張出部30の上
面には、内筒22を取り囲むように例えばゴム製の緩衝
材32が固定されている。従って、上昇した外筒23が
最下降状態となるとき、前記鍔部31が緩衝材32で受
け止められることによりその衝撃が緩和される。
【0038】又前記転がり装置20は、図4、図6〜7
に示すように、前記内筒22の水平な下面33の中央部
及び周縁部分に、ボールベアリング35を収容するため
の半球状凹部36が設けられている。この半球状凹部3
6にボールベアリング35が嵌合した状態で、前記半球
状凹部36の配置に合わせて円形孔37が設けられてな
る受板39が、その円形孔37に嵌合する前記ボールベ
アリング35の下側部分35aを受板39の下面側に突
出状態にして、内筒下面33にボルト40で固定されて
いる。然して、受板39の下方に突出する前記ボールベ
アリング35が、凹所構造体の水平な底面部分5に対し
てあらゆる方向に転動可能である。
【0039】又、前記基礎部の左右に位置する一纏まり
の四本の支柱17,17,17,17、17,17,1
7,17の下端側の部分は、図2、図8に示すように、
下面側に転がり装置41が設けられた転がり支承体42
として構成されている。そして、一纏まりをなす四個の
転がり支承体42,42,42,42は、前記下の凹所
構造体2bの底部分に設けられた上端開放の容体43内
に、該容体43の内周面45から稍離れるように納めら
れている。
【0040】前記転がり支承体42は、一本の柱状に構
成することも可能であるが、本実施の形態においては、
図8〜10に示すように、複数本の支柱44を間隔をお
いて配置して構成し、支柱間にも後述する粘性体が流動
できるようにしている。このように構成するときは、該
粘性体から受ける抵抗を支柱の本数に応じて所要に調節
できる利点がある。そして転がり支承体42は、その上
下端に、外方向に突出する板状鍔部47,47を有す
る。
【0041】又前記転がり装置41は、前記板状鍔部4
7の下面49の中央部及び周縁部分に、ボールベアリン
グ50を収容するための半球状凹部51が設けられてい
る。この半球状凹部51にボールベアリング50が嵌合
した状態で、前記半球状凹部51の配置に合わせて円形
孔52が設けられてなる受板53が、その円形孔52に
嵌合する前記ボールベアリング50の下側部分50aを
受板53の下面側に突出状態にして、板状鍔部47の下
面49にボルト55で固定されている。然して、受板5
3の下方に突出する前記ボールベアリング50が、前記
容体43の水平な底面56上においてあらゆる方向に転
動可能である。
【0042】そして前記容体43内には、図2に示すよ
うに、粘性体(油や、粘性を有する高分子粘性体等)5
7が所定深さに収容されており、この粘性体57内にお
いて転がり支承体42が水平方向及び上下方向で振動す
るときに、該転がり支承体42の一部分をなす抵抗部が
粘性体から受ける抵抗によって、これらの振動エネルギ
ーが吸収される。水平方向の振動に対しては、粘性体中
に存在する転がり支承体42の全体が抵抗部となり、一
方上下方向の振動に対しては、前記上下の板状鍔部4
7,47が抵抗部となる。このように、前記容体43に
貯留された粘性体57と転がり支承体42は、水平方向
及び上下方向の振動エネルギーを減衰させる前記第2の
ダンパー10を構成するのである。
【0043】なお前記支柱44を、例えば鏡筒式に上下
伸縮可能に構成することにより、前記転がり支承体42
が上下方向で振動する時、前記転がり装置41が容器の
底面56に載ったままで支柱が伸長できることとなる。
従って、転がり支承体42の全体が浮き上がる場合に比
し、上下方向の振動エネルギーの吸収がより安定的に行
われる利点が生ずる。
【0044】地震力の作用によって基礎部3が水平方向
や上下方向で振動するときの振動エネルギーの減衰が、
前記第1のダンパー9及び前記粘性体57から受ける抵
抗部の抵抗のみでは不十分である場合は、その減衰補助
手段として、図11に示すような、流体の乱流抵抗を利
用したオイルダンパー60を用い、その両端部60a,
60aを、基礎部(支柱17又は梁19)3と凹所構造
体(上の凹所構造体2a又は下の凹所構造体2b)の内
壁部6に、該基礎部3及び内壁部6と一体である台座5
8を介して、夫々回動可能に連結するのがよい。
【0045】又本実施の形態においては、前記基礎部3
の四隅に位置する支柱17,17,17,17の夫々に
対応する如く、直角に交わる梁19,19がなす入隅側
の凹所構造体の底面に、基礎部3が地震力の作用によっ
て水平方向で振動するときの変位を一定範囲内に規制す
るための柱状ストッパー61が立設されている。
【0046】該柱状ストッパー61は、前記自動切断器
7が切断された後における基礎部3の水平方向での振動
変位、特に水平面内における基礎部3の回転変位や基礎
部3の対角線方向の振動変位を、凹所構造体の内壁部6
にそれ程大きな衝撃を与えないで規制できるようにする
ためのものである。
【0047】そして前記基礎部3の振動によって、前記
第1のダンパー9や、直角に交わる梁19,19が柱状
ストッパー61に衝突するときの衝撃を緩和するため
に、その衝突が予想される部位にゴム等の弾性圧縮可能
な緩衝材62を付設している。又、上の凹所構造体2a
の入隅部分の内壁部にも、基礎部3の水平方向の振動変
位を一定範囲内に規制するために、ゴム等からなる前記
緩衝材62を付設している。
【0048】又図1に示すように、内壁部6と基礎部3
の対向部位にも、ゴム等の緩衝材62,62が付設され
ることがある。更に、下の凹所構造体2bにも、前記転
がり支承体42の水平方向の振動変位を一定範囲内に規
制するために、例えば、粘性体を貯留する前記容体43
の内壁面45(図1においては入隅部分)に、ゴム等の
前記緩衝材62が付設されることがある。
【0049】又前記自動切断器7は、脆性材料製、例え
ば鋳鉄製であり、図12〜14に示すように、例えば、
水平幅に比べて上下幅が大である矩形板状をなし且つそ
の両端部分の上下部が内方に傾斜する傾斜面66,66
に形成された連結板部67の両端に固定板部69,69
を突設してなり、前記連結板部67の両端部分の上下に
切欠き70が形成された形態を有する。
【0050】又、上の凹所構造体2aの内壁部6及び、
図示されてはいないが下の凹所構造体2bの内壁部6の
所要部位に固定台71が固着され、又基礎部(図におい
ては梁19)の外面側にも、前記固定台71と同様の固
定台72が固定されている。そして前記自動切断器7の
固定板部69,69の上下が、図13〜14に示すよう
に、対応の固定台71,72にボルト73で固定されて
いる。これによって自動切断器7は、基礎部3と凹所構
造体の内壁部6とに連結され、自動切断器7と基礎部3
との接合点74及び自動切断器7と凹所構造体の内壁部
6との接合点75は剛節になっている。
【0051】該自動切断器7は、小規模地震や台風時に
は剪断(切断)されず、中規模地震以上の地震が発生し
た場合等、設定された剪断耐力以上の地震力が作用した
ときには、前記切欠き70の存する両端の細幅部分7
6,76において剪断される。そして構造物の保有耐力
は、この自動切断器7の剪断(切断)耐力を上回るよう
に設計される。
【0052】なお、上の凹所構造体2aの内壁部6と梁
19の外面との間の距離L(図14)は、該自動切断器
が剪断された後における基礎部の水平方向での最大変位
を考慮し、且つ、大規模地震の発生により剪断された自
動切断器の破損物を取り外して新たな自動切断器を固定
する際の作業スペースが確保されるように設定してい
る。本実施の形態においては、前記のように、自動切断
器と凹所構造体との接合点をボルト固定手段により剛節
としてなるため、自動切断器の取り替えが容易である。
【0053】然して、小地震の発生時や台風時において
は、基礎部3が、自動切断器7を介して耐震性の凹所構
造体の内壁部6に支持されるため、上部構造物の振動が
極力抑制される。
【0054】なお図15に示すように、所要の梁19の
稍上側位置において、浮き上がり防止部材(ストッパ
ー)77を配置する場合がある。この浮き上がり防止部
材77の一端79は凹所構造体の内壁部6に固定される
と共に、その他端80は、凹所構造体の底面で立設固定
された支持柱81に連結されている。そして該浮き上が
り防止部材77には、浮き上がった基礎部3が衝突する
と予想される部位に、ゴム等の弾性圧縮可能な緩衝材6
2を付設しておく。
【0055】この浮き上がり防止部材77は、例えば、
龍巻等の予想外の外力を受けて基礎部が異常に浮き上が
るのを阻止するためのものであり、或いは、ガス管や水
道管、下水道管、電話線、電力線等のライフライン等が
凹所構造体を貫通して埋設されている場合に、基礎部の
浮き上がりに伴って、前記水道管等がその可撓域を越え
て損傷しないように規制するためのものである。或い
は、前記外筒23の異常な上昇による第1のダンパー9
の損傷や、前記オイルダンパー60の異常な伸長による
損傷等を防止するためのものである。
【0056】次に、前記構成を有する免震構造物の作用
を説明する。本発明においては、前記のように、免震の
基本構造として、地震動に対する影響が小さい地下設置
の耐震性の凹所構造体を採用している。前記のように、
基礎部3の下端が前記凹所構造体2の水平な底面部分5
に対して転動可能ではあるが、基礎部3と凹所構造体の
内壁部6とを自動切断器7で剛節で連結しているため、
小地震の発生時や台風時においては、前記自動切断器7
を介して、構造物の基礎部3と凹所構造体2の内壁部6
との一体化状態が保持されることとなる。従って、上部
構造物の振動を抑制でき、該構造物の安定性を確保でき
る。
【0057】中地震や大地震発生時の初期段階において
は、剛節状態の前記自動切断器7が変形して、振動エネ
ルギーを吸収すると共に、自動切断器の設定された剪断
(切断)耐力を上回る地震力が作用したときには、前記
切欠き70が存する両端の細幅部分76,76で剪断さ
れる。この剪断により、構造物は凹所構造体2から絶縁
され、構造物への振動エネルギーの進入が阻止される。
【0058】その後の基礎部3は、水平方向及び上下方
向に一定範囲内で自由に振動できるが、先ずこの振動に
よって、振動エネルギーが減衰される。そして、基礎部
3のこの水平方向での振動は、前記転がり支承体42が
容体43内の粘性体57の抵抗を受けながらのものであ
るため、その受ける粘性抵抗によって振動エネルギーは
更に減衰される。加えて、前記オイルダンパー60や前
記緩衝材62が付設されているときは、これらによって
も水平方向や上下方向の振動エネルギーが減衰される。
【0059】一方、基礎部3の前記上下方向の振動は、
第1のダンパー9の前記抵抗部27が、内筒22内に収
容された粘性体21の抵抗を受けながらのものであるた
め、その受ける粘性抵抗によって減衰されると共に、転
がり支承体42の前記抵抗部が粘性体57から受ける抵
抗によっても減衰せしめられる。なお本実施の形態にお
いては、抵抗部が、下端開放の凹部29を有するため、
外筒23の下降時(即ち基礎部3の下降時)における粘
性抵抗を増大させることができる。
【0060】又、水平方向や上下方向の振動が、予め設
定された変位を越える場合(この状態では、振動がかな
り減衰されている場合もある)は、前記柱状ストッパー
61や上下の凹所構造体2a,2bの入隅部分等におけ
る内壁部6が規制部となる。
【0061】即ち、水平方向で振動(回転を含む)する
基礎部3がこれらに衝突したとき、図16〜19に示す
ように、緩衝材62が基礎部3を弾性的に受け止め、水
平方向の振動変位を規制するのである。なお図16〜1
8において、第1のダンパー9及び転がり支承体42の
当初の位置を一点鎖線で示している。
【0062】又上下方向の振動変位が設定量を越えたと
きは、前記浮き上がり防止部材77(図15)がその変
位を規制することになる。結果的に、耐震性の凹所構造
体2が基礎部3の浮き上がりを所要に規制することにな
る。その際、付設された前記緩衝材62が図20に示す
ように、浮き上がり防止部材77に基礎部3(図21に
おいては梁19)が衝突したときの衝撃を緩和する。な
お図20において、第1のダンパー9の当初の位置を一
点鎖線で示している。
【0063】このように、自動切断器が剪断された後に
おいては、構造物は凹所構造体2と絶縁され、構造物へ
の地震力の進入が阻止されるため、前記水平方向や上下
方向の振動エネルギーの減衰等によって効果的な免震作
用が得られるのである。
【0064】なお凹所構造体内に雨水が進入するのを防
止し、又防火上、基礎部の周囲に生ずる上の凹所構造体
2aの外周側の上端開口をカバー82aで覆うと共に下
の凹所構造体2bの上端開口部をカバー82bで覆うも
のとする。この場合、各カバーは基礎部3に固定するも
のとし、例えば図2に示すように、上のカバー82aの
端部分83を、上の凹所構造体2aの上端を水平に曲げ
て形成した折曲部の上面84に対してスライド可能に構
成する。又下のカバー82bの端部分83を、下の凹所
構造体2bの上端に連なる、上の凹所構造体の底面85
に対してスライド可能に構成する。
【0065】〔その他の実施の形態〕 (1) 本発明で用いる耐震性の凹所構造体は、前記実施の
形態で示したものには限定されない。即ち、自動切断器
が切断されるまでの間、該自動切断器を介して基礎部を
剛に支持でき、又、自動切断器が切断された後における
基礎部のストッパーとなり或いはストッパーとなる部材
を支持できる剛性の高い構造を有するものであるなら
ば、例えば岩盤等で構成されてもよい。又、前記構成の
凹所構造体の内壁部を鋼鉄やチタン、炭素繊維等の素材
を用いて適宜補強することにより、一層の耐震性向上を
期しうる。
【0066】(2) 耐震性の凹所構造体に納装される基礎
部は、構造物の基礎部の全てであることの他、基礎部の
一部(隅角部分や中間部分等)であってもよい。要は、
構造物の免震の観点から設定されるものである。
【0067】(3) 自動切断器は、前記実施の形態で示し
た鋳鉄等の脆性材料で製作するのが好適であるが、その
他、アルミニウム等の非鉄金属やプラスチック等の高分
子化合物を用いて構成することも可能であり、部分的に
切断されやすい構造を具えておれば、前記実施の形態で
示したような切欠きを具えない場合もある。その形態も
板状をなすものには限定されず、棒状等をなすものでも
よい。又その内部構造をハニカム構造とすることによ
り、軽量でしかも強度的に安定した自動切断器を構成し
得る。このように自動切断器の材質や形態及び内部構造
は、自動切断器が前記した機能を発揮する限り、任意に
設定することができる。
【0068】(4) 構造物に一定以上の地震力が作用した
ときに自動的に切断される自動切断器は、前記した機械
的な切断によるものの他、例えば電気的に切断されるよ
うにも構成できる。例えば、電磁石の吸着作用による剛
な連結状態がその吸着解除によって切断されるようにも
構成され得る。
【0069】(5) 耐震性の凹所構造体は、上端が開放し
た剛性の高い耐震性を有しており、且つ、自動切断器が
切断された後における基礎部の水平方向での振動を一定
範囲内に許容するために、構造物の基礎部の下端を転動
可能又は滑動可能とする水平な底面部分を具えるもので
あれば、その平面視で見た形態は、前記矩形状をなすも
のの他、正方形状や円形状或いは楕円形状をなすもの
等、任意の形態に構成され得る。なお前記水平な底面部
分は、その全体が水平な底面として形成される必要はな
く、少なくとも、前記第1のダンパーや前記転がり支承
体の移動する範囲が水平面に形成されておればよい。
【0070】(6) 耐震性の凹所構造体を、前記実施の形
態におけるような2段階に、又はそれ以上の複数段階に
構成する場合、上の凹所構造体だけでなく下の凹所構造
体にも自動切断器を付設してよいのであるが、その切断
後における取り替え作業の容易化を図るため、自動切断
器7を上の凹所構造体2aにだけ付設するのがよい。
又、下の凹所構造体2bに収容した粘性体を利用してダ
ンパーを構成する場合は、この粘性体中への自動切断器
の破片の落下を防止する上からも、自動切断器7を上の
凹所構造体2aにだけ形成するのがよい。
【0071】(7) 自動切断器が切断された場合におい
て、その破片が凹所構造体内に落ち込むのを極力防止す
るために、例えば前記連結板部67を、凹所構造体や基
礎部に一端が固定された吊紐やワイヤの他端に連結して
おくのがよい。
【0072】(8) 前記実施の形態においては、耐震性を
向上させるために、耐震性の凹所構造体を二段式に構成
しているが、構造物の重心が低い場合や凹所構造体の深
さが深い場合は一段に構成されることもある。
【0073】(9) 自動切断器は、上下方向に複数個並設
される場合がある。
【0074】(10) 図21は、基礎部3を、耐震性の凹
所構造体2の水平な底面部分5に対して滑動可能とした
場合の一例を示すものであり、第1のダンパー9の下端
と水平な底面部分5との間に、テフロン等の摩擦係数の
小さい高分子素材からなる滑り板83,85を介在させ
ている。なお図21においては、下の滑り板83は、基
礎部3が滑動する範囲をカバーできるように広面積に形
成しているのに対し、上の滑り板85は、基礎部の下端
にのみ設けている。
【0075】(11) 通常、水平方向の振動よりも上下方
向の振動が小さいと言われていることに加え、本発明に
おいては、ダンパーによって上下方向の振動が抑制され
ることから、基礎部の上下振動によって地下埋設管等を
損傷する恐れのない場合は、上下方向の振動変位を規制
する前記浮き上がり防止部材77を省略してもよい。
【0076】(12) 粘性体を収容した内筒に外筒を外挿
して構成したダンパーを用いる場合、上昇した外筒が最
下降状態となったときの衝撃を緩和する緩衝材は、その
衝撃を緩和できる限り、その配置や構造は、前記実施の
形態で示したものに限定されない。
【0077】(13) 前記下の凹所構造体内に粘性体の貯
留部を設けると共に該貯留部に前記転がり支承体42を
設ける構成に代えて、前記第1のダンパー9を採用して
もよい。
【0078】(14) 図22〜24は、ボールベアリング
50を有する前記転がり支承体42を上下伸縮可能に構
成した他の態様を示し、図10に示すと同様の構成を有
する転がり装置41に、粘性体57を通過させるための
孔86の多数が周面部87に設けられた網状内筒89を
立設すると共に、該網状内筒89に、同様の孔86の多
数が周面部88に設けられた網状外筒90を外挿状態或
いは内挿状態(図22においては外挿状態)に嵌めてな
り、該転がり支承体42を鏡筒式に伸縮可能としてい
る。なお同図においては、前記孔86を、網状内筒89
については横長の矩形孔に形成し、網状外筒90につい
ては縦長の矩形孔に形成している。
【0079】これにより、転がり支承体42が粘性体5
7中で上下方向で振動する時、前記転がり装置41が容
器の底面56に載ったままで、前記網状外筒90が上昇
でき、従って、転がり支承体42の全体が浮き上がる場
合に比し、上下方向の振動エネルギーの吸収がより安定
的に行われる利点が生ずる。
【0080】そして、水平方向の振動に対しては、粘性
体中に存在する転がり支承体42の全体が抵抗部とな
り、前記孔(孔全体又は内外の孔の重なり部分に生ずる
連通孔部)86を通過する粘性体57の量に応じて所要
の粘性抵抗が得られる。又、上下方向の振動に対して
は、上の板状鍔部47が抵抗部となり、所要の抵抗が得
られる。
【0081】
【発明の効果】本発明は以下の如き優れた効果を奏す
る。 (1) 本発明に係る免震構造物は、地震動の影響が少ない
地下設置の耐震性の凹所構造体を免震の基本構造として
採用すると共に、この凹所構造体内に構造物の基礎部を
収容し、該基礎部と凹所構造体の内壁部とを自動切断器
で剛に連結する構成を採用している。又該自動切断器が
切断された後においては、基礎部の下端を、前記凹所構
造体の水平な底面部分に対してあらゆる方向に転動可能
又は滑動可能とすると共に、上下方向にも振動可能とし
ている。
【0082】従って本発明によるときは、小地震の発生
時や台風時においては、自動切断器を介して基礎部が凹
所構造体の内壁部に支持されているために、上部構造物
の振動が抑制される。そして大地震発生時の初期段階に
おいては、前記自動切断器が変形して振動エネルギーが
吸収されると共に、自動切断器の切断耐力を上回る地震
力が作用したときには該自動切断器が切断されて構造物
は凹所構造体から絶縁され、その後は、構造物への振動
エネルギーの進入が阻止される。然してその後の基礎部
は、水平方向及び上下方向に一定範囲内で自由に振動で
きるが、先ずこの振動によって振動エネルギーが減衰さ
れる。そして、この水平方向及び上下方向での基礎部の
振動は更にダンパーで減衰される。
【0083】それ故本発明によるときは、水平方向の地
震動に対する免震効果が十分に発揮されるのは元より、
従来の積層ゴム支承型の免震装置によっては不十分であ
った上下方向の地震動に対する免震効果も十分に発揮さ
れる。かかることから本発明によるときは、構造物を地
震から守ることができるだけでなく、構造物内の設置機
器類、例えば、振動に極めて弱いコンピュータ等の電子
機器類を地震から守ることができ、更に居住者に対して
は、上下方向の地震動を軽減して地震の脅威を緩和でき
ることになる。
【0084】(2) 本発明は、地下設置の耐震性の凹所構
造体によって免震を図るため、地上の構築物によって免
震を図る場合のように、構造物全体としての外観を損な
うといった問題が生じない。
【0085】(3) 基礎部が水平方向や上下方向で振動す
るときの変位を一定範囲内に規制するために、該基礎部
を弾性的に受け止めるストッパーを凹所構造体に設け或
いは該ストッパーを凹所構造体の一部で構成することに
より、水平方向の振動変位や上下方向の振動変位が設定
量を越えたとき(この状態では、振動エネルギーがかな
り減衰されている場合もある)、この振動変位を、前記
ストッパーを介して凹所構造体で確実に規制できる。か
かることから、大地震発生時における基礎部の水平方向
や上下方向の移動を一定範囲内に規制でき、構造物の損
傷を防止できる。特に上下方向の規制手段を講ずること
は、前記したように、例えば、龍巻等の予想外の外力を
受けて基礎部が異常に浮き上がることに伴う地下埋設の
ライフライン等や各種ダンパー等の保護を確実に図り得
る点で大きな利点をもたらす。
【0086】(4) 本発明によるときは、自動切断器の予
め設定された切断耐力を上回る程度に構造物の保有耐力
を設定すればよいため、過大な耐震設計が不要となり設
計が容易になると共に、設計の自由度が増して居住性向
上が図られることとなる。
【0087】(5) 特に、上下方向の振動エネルギーを減
衰させるダンパーとして、図3〜4に示すような、内部
に粘性体が収容されてなる内筒に外筒を密接に外挿させ
てなる密封型のものを採用するときは、粘性油が密封状
態にある故に耐火性に優れる利点がある。又小型に形成
できるため、施工現場への運搬や設置時等における取扱
性がよい。その上、大量生産が可能で、経済的に製造で
きる利点がある。
【0088】因みに、図2に示すような、上端開放で且
つ内部に粘性体が収容されてなる容体内に基礎部の下端
部分を沈めた構成の開放型ダンパーを採用するときは、
耐火性に対する配慮が必要であると共に、現場施工が多
くなり施工手間や施工コストが嵩む不具合がある。これ
に対して前記密封型のダンパーは、このような問題点を
解決している点でダンパーとして優れていると言える。
【0089】(6) 特に、上下方向の振動エネルギーを減
衰させるダンパーとして、図2に示すような、粘性体が
収容されてなる容体内に転がり支承体等としての抵抗部
を納める構成のものを採用するときは、該抵抗部が粘性
体から受ける抵抗によって、水平方向及び上下方向の振
動エネルギーの減衰が同時に図られ、より効果的な免震
効果が得られる利点がある。
【0090】(7) 凹所構造体を上下複数段に構成する場
合は、凹所構造体がそれだけ地中深くに設置されること
となるため、自動切断機を介して凹所構造体に剛に連結
された地上構造物が地震で振動する際の振幅をより効果
的に抑制できることとなる。
【0091】(8) 阪神大震災後、現在でも大きな問題と
なっているのは、大地震による倒壊を免れはしたが損傷
の著しい構造物の補修工事である。なぜなら、その補修
箇所が主要構造部に関するため、補修工事が困難で然も
莫大な補修費を必要とするからである。これに反し本発
明によるときは、上記した効果的な免震作用によって、
構造物に進入する地震力が大幅に低減されるために、大
地震の発生によっても構造物本体の損傷を軽微に抑制で
きることから、地震後の構造物の補修等の作業は、自動
切断器の取り替えと各種ダンパー等の点検作業で済ませ
ることができ、大掛りな補修工事を要することに伴う前
記問題点を解決し得ることとなる。
【0092】(9) 以上のような優れた諸効果をもたらす
本発明に係る免震構造物は、建築物の他、道路高架部や
橋梁等各種の構造物に対して応用できる。又、軽量の構
造物に対しても容易に応用され得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る免震構造物を説明する平面図であ
る。
【図2】その部分断面図である。
【図3】第1のダンパーを説明する斜視図である。
【図4】第1のダンパーを示す断面図である。
【図5】第1のダンパーの作用を説明する断面図であ
る。
【図6】第1のダンパーに付設した転がり装置を説明す
る部分断面図である。
【図7】第1のダンパーの転がり装置を説明する斜視図
である。
【図8】転がり支承体を説明する斜視図である。
【図9】その転がり装置を説明する断面図である。
【図10】その転がり装置を説明する斜視図である。
【図11】オイルダンパーの付設状態を説明する断面図
である。
【図12】自動切断器を説明する斜視図である。
【図13】凹所構造体の内壁部と基礎部とを自動切断器
で連結した状態を説明する断面図である。
【図14】その平面図である。
【図15】基礎部の上下方向の振動変位を一定範囲に規
制するストッパーを示す斜視図である。
【図16】ストッパーによる水平方向の振動変位の規制
を説明する平面図である。
【図17】ストッパーによる水平方向の振動変位の規制
を説明する平面図である。
【図18】ストッパーによる水平方向の振動変位の規制
を説明する平面図である。
【図19】ストッパーによる基礎部の水平方向の振動変
位の規制を説明する平面図である。
【図20】浮き上がり防止部材による基礎部の上下方向
の振動変位の規制を説明する説明図である。
【図21】第1のダンパーの他の態様を説明する側面図
である。
【図22】転がり支承体の他の態様をその伸長状態で示
す斜視図である。
【図23】その縮小状態を示す断面図である。
【図24】その伸長状態を示す断面図である。
【図25】積層ゴム支承型の従来の免震構造物を説明す
る側面図である。
【符号の説明】
1 免震構造物 2 凹所構造体 3 基礎部 6 内壁部 7 自動切断器 9 第1のダンパー 10 第2のダンパー 11 第1のストッパー 12 第2のストッパー 17 支柱 20 転がり装置 22 内筒 23 外筒 25 通気孔 26 ロッド 27 抵抗部 29 凹部 32 緩衝材 41 転がり装置 42 転がり支承体 43 容体 57 粘性体 60 オイルダンパー 61 柱状ストッパー 62 緩衝材 70 切欠き 77 浮き上がり防止部材

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 地面を掘り下げて耐震性の凹所構造体を
    形成すると共に、該凹所構造体内に構造物の基礎部を収
    容し、該基礎部を、前記凹所構造体の水平な底面部分に
    対して転動可能又は滑動可能とし、 又、前記基礎部と凹所構造体の内壁部とを、構造物に一
    定以上の地震力が作用したときに自動的に切断される自
    動切断器で連結し、該自動切断器と基礎部との接合点及
    び該自動切断器と凹所構造体の内壁部との接合点を剛節
    としてなり、 又、該自動切断器が切断された後において前記基礎部が
    地震力の作用によって水平方向で振動するときや上下方
    向で振動するときの振動エネルギーを減衰させるために
    ダンパーを設けたことを特徴とする免震構造物。
  2. 【請求項2】 基礎部が水平方向で振動するときの変位
    を一定範囲内に規制するために、基礎部を弾性的に受け
    止めるストッパーを凹所構造体に設け或いは該ストッパ
    ーを凹所構造体の一部で構成したことを特徴とする請求
    項1記載の免震構造物。
  3. 【請求項3】 地面を掘り下げて形成した耐震性の凹所
    構造体は、その内周面及び底面がコンクリートの被覆面
    として形成されると共に、該底面の内、基礎部の下端が
    転動し或いは滑動する範囲にある部分は水平面に形成さ
    れていることを特徴とする請求項1又は2記載の免震構
    造物。
  4. 【請求項4】 自動切断器が切断された後において基礎
    部が地震力の作用により上下方向で振動するときの変位
    を一定範囲内に規制するために、基礎部を弾性的に受け
    止めるストッパーを凹所構造体に設けたことを特徴とす
    る請求項1又は2記載の免震構造物。
  5. 【請求項5】 自動切断器は、切欠きを有する板状又は
    棒状をなす部材からなり、その両端部分が、基礎部及び
    凹所構造体の内壁部に固定状態に連結されることを特徴
    とする請求項1〜4の何れかに記載の免震構造物。
  6. 【請求項6】 自動切断器は鋳鉄製であり、その両端部
    分が基礎部及び凹所構造体の内壁部に、着脱可能のボル
    ト連結手段により連結されていることを特徴とする請求
    項5記載の免震構造物。
  7. 【請求項7】 切欠きは、板状又は棒状をなす部材の両
    端側に設けられていることを特徴とする請求項5又は6
    記載の免震構造物。
  8. 【請求項8】 自動切断器を取り替えるための作業スペ
    ースが、凹所構造体の内壁部と基礎部との間に形成され
    ていることを特徴とする請求項6記載の免震構造物。
  9. 【請求項9】 上下方向の振動エネルギーを減衰させる
    ダンパーは、構造物の基礎部の下端部分として構成され
    ており、上端が開放すると共に内部に粘性体が収容され
    てなり且つ下面において凹所構造体の水平な底面部分と
    滑り接触或いは転がり接触する内筒と、下端が開放し且
    つ前記内筒に密接して外挿される外筒とを具えるものと
    し、該外筒が最下降状態においても内筒内に連通する通
    気孔を外筒に設けてなり、又外筒の上端部には、下方向
    に延び且つ下端の抵抗部が前記粘性体中に常時存するロ
    ッドを突設してなり、前記外筒が上下動するときに該抵
    抗部が粘性体から受ける抵抗によって、上下方向で振動
    する基礎部の振動エネルギーが減衰されるように構成し
    たことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の免震
    構造物。
  10. 【請求項10】 抵抗部は、下端開放の凹部を有するこ
    とを特徴とする請求項9記載の免震構造物。
  11. 【請求項11】 上昇した外筒が最下降状態となったと
    きの衝撃を緩衝材で緩和することを特徴とする請求項9
    又は10記載の免震構造物。
  12. 【請求項12】 水平方向及び上下方向の振動エネルギ
    ーを減衰させるダンパーは、上端が開放し且つ内部に粘
    性体が収容された容体と、基礎部の下端に設けられて常
    時前記粘性体中に存する抵抗部とを具え、前記基礎部が
    水平方向及び上下方向で振動するときに該抵抗部が粘性
    体から受ける抵抗によって、これらの振動エネルギーが
    減衰されるように構成したことを特徴とする請求項1〜
    8の何れかに記載の免震構造物。
  13. 【請求項13】 水平方向及び上下方向の振動エネルギ
    ーを減衰させるダンパーは、流体の乱流抵抗を利用する
    オイルダンパーであって、その両端が、基礎部と凹所構
    造体の内壁部に夫々回動可能に連結されていることを特
    徴とする請求項1〜12の何れかに記載の免震構造物。
  14. 【請求項14】 水平方向及び上下方向の振動エネルギ
    ーを減衰させるダンパーは、基礎部の所要部位及び/又
    は凹所構造体の所要部位に付設された、ゴム等の弾性圧
    縮可能な緩衝材であることを特徴とする請求項1記載の
    免震構造物。
  15. 【請求項15】 地面を掘り下げて上の凹所構造体を形
    成すると共に、その底面部を更に掘り下げて下の凹所構
    造体を形成することによって、耐震性の凹所構造体を上
    下複数段に構成し、各段の凹所構造体に構造物の基礎部
    を収容したことを特徴とする請求項1〜14の何れかに
    記載の免震構造物。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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