JPH10169035A - 吸音板及びその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】新規な構造で吸音性能に優れ、また強度が保持
され、更に簡単かつ容易に製造し得ること 【解決手段】本発明の吸音板は、押出成形セメント板の
凹部に軽量材を充填して敷き詰めた後、該表面にセメン
ト系ペーストを吹き付けて被覆層を形成したことを特徴
とする吸音板の製造方法及びそれにより得られた吸音板
であり、図１において、押出成形セメント板１の凹部１
１に軽量材としてパーライト（平均粒径２ｍｍφ）を充
填し、敷き詰めて空隙率２０％のパーライト層２３を得
た。ついでこのパーライト層２３の上にセメントペース
トを１．５ｍｍの厚さになるように吹き付けて被覆層３
を形成した後、硬化させて吸音板を得た。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、吸音板及びその製
造方法に関し、更に詳しくは建材に好ましく用いられ、
吸音性能に優れ、また強度が保持された吸音板及びその
製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】吸音板の一般的用途には、道路、鉄道の
防音壁、工場の外壁や建築物の外壁又は内壁、更には室
内の仕切り壁等があるが、近年、吸音板のうち、押出成
形セメント板にマブシコンクリートを打設して得られる
マブシコンクリートタイプがあり、吸音性能に優れてい
るので、注目されている。このマブシコンクリートタイ
プであるマブシコンクリート板は、一例として、図３に
示される構造を有しており、押出成形セメント板１の凹
部１１に軽量骨材２１に少量のセメント２２を加えて混
練した後、得られたマブシコンクリート２０を打設して
製造されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
如き、マブシコンクリート板は、吸音性能が、優れてい
るとはいうものの、今一つ十分とは言えず、特に建材用
に供するためには、いっそうの吸音効率が要望されると
共に、その表面の美観等も考慮に入れる必要があり、そ
の改良が望まれていた。このような現状に鑑み、本発明
者等は、前記のマブシコンクリート板に代わる新規な構
成を有し、簡単に製造することができ、いっそうの吸音
性能に優れ、また建材用に供するにたる強度を保持し得
る吸音板の製造方法を見出し、ここに本発明をなすに至
った。したがって、本発明が解決しようとする第１の課
題は、新規な構造で吸音性能に優れ、また強度の保持さ
れた吸音板を提供することにある。本発明が解決しよう
とする第２の課題は、新規な構造で吸音性能に優れ、ま
た強度が保持され、更に簡単かつ容易に製造し得る吸音
板の製造方法を提供することにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は、以
下の各発明によってそれぞれ達成される。

【０００５】（１）押出成形セメント板の凹部に軽量材
を充填して敷き詰めた後、該表面にセメント系ペースト
を吹き付けて被覆層を形成したことを特徴とする吸音
板。 （２）押出成形セメント板の凹部に軽量材を充填して敷
き詰めた後、該表面にセメント系ペーストを吹き付けて
被覆層を形成することを特徴とする吸音板の製造方法。 （３）軽量材として、パーライトを用いることを特徴と
する前記第１項又は第２項に記載の吸音板の製造方法。 （４）セメント系ペーストが、セメント単独又はモルタ
ルであることを特徴とする前記第１項乃至第３項のいず
れかに記載の吸音板の製造方法。 （５）凹部に充填して敷き詰めた軽量材は繊維質シート
で囲まれていることを特徴とする前記第１項乃至第４項
のいずれかに記載の吸音板の製造方法。

【０００６】以下に、本発明を更に詳しく説明すると、
本発明の吸音板は、押出成形セメント板の凹部に軽量材
を充填して敷き詰めた後、該表面にセメント系ペースト
を吹き付けて被覆層を形成したものからなり、このよう
な新規な構成により吸音性能に優れ、また建材用に供す
るにたる強度を保持し得る吸音板が得られる。本発明の
吸音板の製造方法は、押出成形セメント板の凹部に軽量
材を充填して敷き詰めた後、該表面にセメント系ペース
トを吹き付けて被覆層を形成することを特徴とするもの
で、このように吹き付けによりセメント系ペーストの被
覆を形成していることにより、簡単に吸音板が製造され
ると共に得られた吸音板は、吸音性能に優れ、また建材
用に供するにたる強度を保持し得る吸音板が得られる。
また本発明において、軽量材として、パーライトを用い
ることにより吸音率を向上させることができる。またセ
メント系ペーストが、セメント単独又はモルタルである
ことにより音の透過乃至吸収を良好なものにすることが
できる。更に本発明においては、凹部に充填して敷き詰
めた軽量材は繊維質シートで囲まれていることにより、
吸音板の製造時にパーライト層の取扱が容易になると共
にパーライトが溢れるのを防止する。上記において、
「充填して敷き詰める」という手段は、軽量材を凹部に
投入し、均一に振動等を加えて分散させながら、充填し
ていくことを意味する。

【０００７】本発明の吸音板を製造する際に用いられる
軽量材としては、パーライト、ゼオライト、発泡スチロ
ール等の粒状体を用いることが好ましく、特にパーライ
トが好ましい。この軽量材は、好ましくは粒子状であ
り、その粒径は、１ｍｍ〜１０ｍｍの範囲で用いられ、
好ましくは２ｍｍ〜４ｍｍがよく、更に好ましくは２ｍ
ｍ〜３ｍｍがよい。本発明において、押出成形セメント
板の凹部に軽量材を充填し敷き詰めることにより粒子間
の間隙が詰まる状態がよく、空隙率でいえば、１０％〜
４０％、好ましくは１０％〜３０％である。この空隙率
が１０％未満のときには、粒子同士の動きが困難となり
音の吸収性能が悪くなり、また４０％を超えると、音が
粒子を振動させても粒子同士の衝突が減り、衝突による
熱エネルギーへの変換が不十分となり吸収性能が上がら
ない。この粒子間の間隙を詰めるには、軽量材を充填し
た後、上面に振動を加えるか又は押圧する等を手段を用
いてもよい。また吸音板の製造に用いられる押出成形セ
メント板としては、特に限定されるものではなく、各種
のものが用いられ、特に吸音板の技術分野において用い
られるものが好ましい。

【０００８】本発明において、押出成形セメント板の凹
部に軽量材を敷き詰めた後、その上部にセメント系ペー
ストを吹き付けて被覆層を形成するが、このセメント系
ペーストとしては、セメント単独のもの又はモルタルが
用いられる。セメントとしては、ポルトランドセメン
ト、アルミナセメント、白色セメント、高炉セメント、
シリカセメント、フライアッシュセメント等が挙げられ
る。またモルタルに用いられる細骨材としては、砂、砕
石、ガラス、ビーズ、珪砂等が挙げられる。本発明にお
いて、表面の被覆層は、音が透過し易いように薄くする
ことが好ましく、１〜５ｍｍ、好ましくは１〜３ｍｍ、
更に好ましくは１〜２ｍｍである。この被覆層は、あま
り薄いと強度が不十分となり、破壊され易く、また被覆
層が厚いと音の透過が困難となり十分な効果が得られな
い。

【０００９】更に、本発明の吸音板の製造方法で製造さ
れた吸音板は、凹部に充填して敷き詰めた軽量材は繊維
質シートで囲まれていることを特徴としており、この軽
量材を囲む繊維質シートとしては、不織布、織布等のシ
ート状体を用いることができ、好ましくは不織布であ
る。このような繊維質シートは、押出成形セメント板の
凹部に沿って敷くことにより軽量材全体を囲む又は包む
方法や繊維質シートで袋状物を形成し、その中に軽量材
を充填する方法等適宜の方法が用いられる。

【００１０】また繊維質シートで軽量材を囲むことによ
り得られる吸音板の製造方法は、押出成形セメント板の
凹部に繊維質シートを敷き、その上に軽量材を敷き詰め
た後、更にその上部を繊維質シート覆い、ついでセメン
ト系ペーストを吹き付けで被覆層を形成することにより
製造される。この際、繊維質シートは、１枚で全体を囲
んでもまた２枚又は複数のシートで軽量材全体を囲んで
もよい。またこの繊維質シートで軽量材を囲む場合、繊
維質シート上に軽量材を敷き詰めて、更にセメント系ペ
ーストを吹き付けて被覆層を形成した後、これらの軽量
材及び被覆層を共に囲んでもよい。この場合は、表面に
繊維質シートが露出しているので、美観上の利点も有す
る。また不織布の表面に模様を付けることにより各種の
装飾性を有する吸音板を製造することができる。本発明
の製造方法において、セメント系ペーストの吹き付け
は、適宜の手段が用いられ、モルタル、壁材等を吹き付
ける吹き付け装置（ガン）が好ましいが、これらに限定
されるものではない。

【００１１】

【発明の実施の形態】更に本発明の実施の形態を挙げる
が、本発明は、この実施の形態のみに限定されるもので
はない。

【００１２】図１は、本発明の吸音板の製造方法によっ
て製造された吸音板を示す模式的略図の断面図である。
また図２は、本発明の別の吸音板を示す模式的略図の断
面図である。ここで、図３の吸音板の構成と同じ部分は
同一符号を用いている。図１において、厚さ８０ｍｍ、
底のコンクリートの厚みが２５ｍｍである押出成形セメ
ント板１の凹部１１に軽量材としてパーライト（平均粒
径２ｍｍφ）を充填し、敷き詰めて空隙率２０％のパー
ライト層２３を得た。ついでこのパーライト層２３の上
にセメントペーストを１．５ｍｍの厚さになるように吹
き付けて被覆層３を形成した後、硬化させて吸音板
〔１〕を得た。

【００１３】また同様に押出成形セメント板１の凹部１
１に軽量材としてパーライト（平均粒径２ｍｍφ）を充
填し、上部から振動を与えて密に敷き詰める。この時の
空隙率は、１５％であった。更にこのパーライト層２３
の上にセメントペーストを１．５ｍｍの厚さになるよう
に吹き付けて被覆層３を形成した後、硬化させて吸音板
〔２〕を製造した。得られた吸音板〔１〕及び〔２〕
は、従来のマブシコンクリート板に比べて平均吸音率が
それぞれ０．８２、０．８６と優れたものが得られた。
またこの吸音板は、新規な構造を有するもので、パーラ
イトはセメント被覆により封じ込められており、建材と
して使用し得る強度を有していた。本発明の吸音板の製
造方法では、このセメントペーストにかえてモルタルを
使用しても前述の如き効果のある吸音板を製造すること
ができた。

【００１４】図２は、本発明の別の吸音板を示す略図の
断面図である。図２に示される吸音板の製造方法は、ま
ず厚さ８０ｍｍ、底のコンクリートの厚みが２５ｍｍで
ある押出成形セメント板１の凹部１１の内面を覆うよう
にして不織布４を敷設し、この中にパーライト（平均粒
径２ｍｍφ）２１を充填して敷き詰め、押圧して空隙率
を１０％にした。ついで、パーライト層２３の上部にも
不織布４で覆われるように囲んだ。更にこの上にセメン
トペーストを１．０ｍｍの厚さになるように吹き付けて
被覆層３を形成した後、硬化させた。得られた吸音板Ｉ
Ｉは、従来のマブシコンクリート板に比べて平均吸音率
が０．８５と優れたものが得られた。またこの吸音板
は、新規な構造を有するもので、パーライト２１は不織
布４により封じ込められているので、製造時、溢れない
ばかりでなくパーライト粒子の不要な動きを抑制するこ
とができまた吸音板ＩＩの強度をいっそう良好にするこ
とができる。本発明の吸音板の製造方法では、このセメ
ントペーストにかえてモルタルを使用しても前述の如き
効果のある吸音板を製造することができた。

【００１５】

【作用】本発明において、押出成形セメント板１の凹部
１１に軽量材２１を充填し、敷き詰めることにより得ら
れる吸音板の吸音機構は、音波が吸音板の軽量材に入射
した場合、軽量材粒子内で多重反射して振動（微動振
動）し音のエネルギーが熱のエネルギーに変わって吸収
する作用を有する。またセメント又はモルタル被覆層３
は、パーライト層２３を保護すると共に吸音板に強度と
美観を与える。

【００１６】

【発明の効果】本発明の吸音板は、吸音性能に優れ、ま
た建材用に供するにたる強度を保持し得る吸音板が得ら
れる。また本発明の吸音板の製造方法によれば、軽量材
の投入が容易で簡単にできるので、手間が省けるという
優れた効果を奏する。また押出成形セメント板の凹部に
軽量材のみを投入して敷き詰めているので、軽量材同士
が自由に動くことができ、吸音効果が向上する。更にセ
メント系ペーストによる吹き付けで被覆層を形成してい
るので、簡単に吸音板が製造できるという優れた効果を
奏する。特に、軽量材として、パーライトを用いること
により吸音率を向上させることができる。またセメント
系ペーストが、セメント単独又はモルタルであることに
より音の透過乃至吸収を良好なものにすることができ
る。更に本発明においては、凹部に充填して敷き詰めた
軽量材は繊維質シートで囲まれていることにより、吸音
板に優れた強度が得られ、吸音板の製造時にパーライト
層の取扱が容易になると共にパーライトが溢れるのを防
止する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の吸音板の製造方法により得られた吸音
板を示す模式的断面図である。

【図２】本発明の別の吸音板を示す模式的断面図であ
る。

【図３】従来のマブシコンクリート板の模式的断面図で
ある。

【符号の説明】

１ 押出成形セメント板 １１ 凹部 ２０ マブシコンクリート ２１ 軽量材 ２２ セメント ２３ 軽量材層 ３ セメント系被覆層 ４ 繊維質シート Ｉ、ＩＩ 吸音板

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】押出成形セメント板の凹部に軽量材を充填
   して敷き詰めた後、該表面にセメント系ペーストを吹き
   付けて被覆層を形成したことを特徴とする吸音板。
2. 【請求項２】押出成形セメント板の凹部に軽量材を充填
   して敷き詰めた後、該表面にセメント系ペーストを吹き
   付けて被覆層を形成することを特徴とする吸音板の製造
   方法。
3. 【請求項３】軽量材として、パーライトを用いることを
   特徴とする請求項１又は請求項２に記載の吸音板の製造
   方法。
4. 【請求項４】セメント系ペーストが、セメント単独又は
   モルタルであることを特徴とする請求項１乃至請求項３
   のいずれかに記載の吸音板の製造方法。
5. 【請求項５】凹部に充填して敷き詰めた軽量材は繊維質
   シートで囲まれていることを特徴とする請求項１乃至請
   求項４のいずれかに記載の吸音板の製造方法。