JPH10143845A - 磁気記録媒体およびその製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体およびその製造方法

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JPH10143845A
JPH10143845A JP29285496A JP29285496A JPH10143845A JP H10143845 A JPH10143845 A JP H10143845A JP 29285496 A JP29285496 A JP 29285496A JP 29285496 A JP29285496 A JP 29285496A JP H10143845 A JPH10143845 A JP H10143845A
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magnetic recording
layer
magnetic
coating
thin film
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JP29285496A
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English (en)
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Kikuji Kawakami
喜久治 川上
Taketoshi Sato
武俊 佐藤
Tomoe Ozaki
知恵 尾崎
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Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 長期間におよぶ保存後や、高温多湿等の過酷
な使用条件下においても、ドロップアウト特性や走行特
性に優れた磁気記録媒体およびその製造方法を提供す
る。 【解決手段】 磁気記録媒体のバックコート層を多層と
し、非磁性支持体側には塗布バックコート層を、表面側
には真空薄膜形成法による薄膜バックコート層を採用す
る。 【効果】 塗布バックコート層中の有機バインダの化学
的変質による剥離が防止され、これに起因するドロップ
アウトや摩擦係数の上昇、テープダメージ等が抑制され
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はバックコート層に特
徴を有する磁気記録媒体に関し、さらに詳しくは、長期
間の記録保存安定性を得るためにバックコート層の層構
成を特定した高密度磁気記録テープ等の磁気記録媒体に
関する。
【0002】
【従来の技術】オーディオ装置、ビデオ装置あるいはコ
ンピュータ装置等に付随する磁気記録装置で用いられる
磁気記録テープ等の磁気記録媒体として、薄膜型と塗布
型のものが主として用いられている。薄膜型は、非磁性
支持体上にCo等の強磁性金属薄膜をスパッタリング、
蒸着あるいはめっき等の薄膜形成技術により被着したも
のである。また塗布型のものは、磁性粉末、有機バイン
ダおよび各種添加剤等を有機溶媒に分散、混練して調整
される磁性塗料を、非磁性支持体上に塗布、乾燥、硬化
することにより形成される磁気記録層を用いたものであ
る。
【0003】これらの各種磁気記録装置においては、近
年ますます小型軽量化、高画質化、長時間化あるいはデ
ィジタル記録化等が進展し、磁気記録媒体に対しても高
密度記録化が強く要望されるようになっている。この要
望に応えるため、近年の磁気記録媒体は、その磁気記録
層表面を鏡面に近い状態にまで平滑化し、磁気ヘッド/
磁気記録層間の間隙を狭め、スペーシングロスを可及的
に低減する方向にある。
【0004】一方、磁気記録テープにおいては、その使
用形態から各種ガイドピン等の摺動部材と摺動しつつ走
行する。一例として8ミリビデオテープレコーダの場
合、磁気記録テープは10個以上のステンレス等からな
る固定ガイドピンを通過して磁気ドラムに巻き付けら
れ、ピンチローラ、キャプスタンおよびリールモータに
より、テープテンションは約20g、走行速度は0.5
cm/secと、共に一定に保持されつつ走行する。磁
気記録テープレコーダの走行系では、摺動部材/磁記録
テープ間の摩擦力が大きくなると、磁気テープがスティ
ックスリップと呼ばれる自励振動によるテープ鳴きを起
こし、再生画面の歪みを発生する。また摺動部材への磁
気記録媒体の凝着現象、いわゆる張り付き等が起き易
く、走行性や耐久性に解決すべき問題点を発生する。
【0005】これら諸問題を解決するために、従来より
非磁性支持体の裏側、すなわち磁気記録層の形成面と反
対側にバックコート層を形成して、摩擦係数や走行性を
改善する方策が採られている。バックコート層は非磁性
粒子を有機バインダに分散させた塗料を塗布して形成す
る方法が一般的である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、記録した画
像、音声あるいは情報データ等の長期保管および長期間
におよぶ特性保持が要求される分野等においては、磁気
記録システムの一部に大きな経時変化を起こす構成部材
が存在すると、システム全体の信頼性を低下する虞れが
ある。直接的には、例えば薄膜形の磁気記録テープにお
ける強磁性金属薄膜の酸化による磁気特性や出力レベル
の低下、あるいは強磁性金属薄膜の表面に設けられるト
ップコート層、すなわち潤滑層の劣化による走行性の低
下等がその例である。
【0007】これに加え、バックコート層の剥離防止の
問題も重要である。この問題を図13(a)〜(b)を
参照して説明する。図13(a)は磁気記録テープをリ
ール等に巻回して保管している状態の概略断面図であ
り、隣接するn層目とn+1層目の接触状態を拡大して
示している。ここに示す磁気記録テープは、非磁性支持
体1の一方の面に磁気記録層2およびトップコート層3
を形成し、非磁性支持体1の他方の面、すなわち裏側に
はバックコート層4を形成したものである。磁気記録テ
ープの保管中は、バックコート層4は隣接するトップコ
ート層3と常時接触した状態となっている。
【0008】従来のバックコート層4は、非磁性粒子を
有機バインダ中に分散させた塗料をコーティングした塗
布膜からなっている。したがって、一方の構成材料であ
る有機バインダが経年変化により化学的な分解を起こし
て劣化した場合には、図13(b)に示すようにこのバ
ックコート層4の一部が剥離し、剥離物5となってトッ
プコート層3の表面に付着する。この状態で磁気記録テ
ープを走行させると、瞬間的な出力減衰、すなわちドロ
ップアウトが増加したり、動摩擦係数の不規則化による
走行性の低下の問題が発生する。
【0009】実際の磁気記録テープにおいては、このバ
ックコート層4は経時変化による剥離耐久性と、摩擦係
数や走行特性等の実用特性との兼ね合いにより設計され
る。一例として、25℃、50%RHの通常条件下で、
最低15〜30年程度は両特性とも満足しうるバックコ
ート層の設計がなされる。しかしながら、半永久的なデ
ータ保存が要求される磁気記録システム、例えば統計処
理、情報ドキュメンテーションの分野のみならず、実際
に磁気記録システムが使用される環境が例えば40℃、
80%といった高温多湿環境や、40℃30%といった
高温低湿環境といった過酷な環境の場合には、従来のバ
ックコート層を用いた磁気記録テープでは、その特性維
持が困難となる場合が発生する。
【0010】本発明はかかる現状に鑑み提案するもので
あり、通常の使用環境条件下のみならず、長期間保存後
や過酷な使用環境下においてもバックコート層の剥離が
発生せず、摩擦係数や走行特性等の実用特性が維持され
る磁気記録テープ等の磁気記録媒体およびその製造方法
を提供することをその課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気記録媒体
は、上述した課題を解決するために提案するものであ
り、非磁性支持体の一方の面に磁気記録層を有し、他方
の面に多層バックコート層を有する磁気記録媒体におい
て、この多層バックコート層の非磁性支持体側は、非磁
性粒子と有機バインダを主体とした塗布バックコート層
からなり、多層バックコート層の表面側は、真空薄膜形
成法による薄膜バックコート層からなることを特徴とす
る。
【0012】また本発明の磁気記録媒体の製造方法は、
非磁性支持体の一方の面に磁気記録層を形成し、他方の
面に多層バックコート層を形成する工程を有する磁気記
録媒体の製造方法において、この多層バックコート層の
非磁性支持体側は、非磁性粒子と有機バインダを主体と
した塗布バックコート層を塗布法により形成し、多層バ
ックコート層の表面側は、薄膜バックコート層を真空薄
膜形成法により形成することを特徴とする。このとき、
塗布バックコート層の厚さは、0.3μm以上1.0μ
m以下であるとともに、薄膜バックコート層の厚さは、
3nm以上100nm以下であることが望ましい。塗布
バックコート層の厚さが0.3μm未満では塗布厚の均
一性が充分でなく、1.0μm以上では磁気記録媒体の
厚さが増大する結果、カセット内に収容できる磁気記録
テープ長が短くなる等、記憶容量が減少する。また薄膜
バックコート層の厚さが3nm未満では連続膜として形
成することが困難で塗布バックコート層の剥離防止の効
果が薄く、また100nmを超えると塗布バックコート
層の剥離防止の効果は飽和し、磁気記録テープの剛性が
必要以上に高まり磁気ヘッドの当たり特性が低下する等
の問題が発生する。
【0013】本発明の多層バックコート層のうち、塗布
バックコート層に用いる非磁性粒子の材料としては特に
限定されないが、ヘマタイト、ベーマイト、溶融アルミ
ナ、α,β,γ−アルミナ等の各種アルミナ、雲母、カ
オリン、タルク、粘土、シリカ、酸化マグネシウム、酸
化チタン(ルチルおよびアナターゼ)、酸化亜鉛、硫化
亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウ
ム、硫酸バリウム、硫酸鉛、硫化タングステン等の無機
化合物、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、
ポリテトラフフルオロエチレン等の高分子樹脂、デンプ
ン、あるいは非磁性金属等が例示される。非磁性粒子
は、平均粒子径0.05〜1μm、好ましくは0.1〜
0.7μmの大きさのものが使用され、有機バインダ1
00重量部に対して通常1〜20重量部の範囲で添加さ
れる。また粒子形状は塗料適性や耐久性等の観点から、
略球形、略正多面体等の等方的な形状を有するものが好
ましい。
【0014】また塗布バックコート層に用いる有機バイ
ンダ材料としては、これも特に限定されないが、従来よ
り使用されている熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型
樹脂等のすべてが使用可能である。熱可塑性樹脂は、熱
硬化性樹脂や反応型樹脂等と混合して用いることが望ま
しい。樹脂の分子量としては、平均分子量5,000な
いし200,000のものが好適であり、10,000
ないし100,000のものがさらに好適である。熱可
塑性樹脂としては、例えば塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル
樹脂、フッ化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重
合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニ
ル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニ
ル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン−アク
リロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリル
ニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニル−
塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化
ビニル共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニリデ
ン共重合体、メタクリル酸エステル−エチレン共重合
体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン
−ブタジエン共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステ
ルポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネ
ートポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリア
ミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース誘導
体(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイ
アセテート、セルローストリアセテート、セルロースプ
ロピオネート、ニトロセルロース等)、スチレンブタジ
エン共重合体、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、各種合
成ゴム系等があげられる。また熱硬化性樹脂および反応
型樹脂の例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、
ポリウレタン硬化型樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、
メラミン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリ
アミン樹脂、高分子量ポリエステル樹脂とイソシアネー
トプレポリマの混合物、ポリエステルポリオールとポリ
イソシアネートの混合物、低分子量グリコールと高分子
量ジオールとイソシアネートの混合物等、およびこれら
樹脂の混合物が例示される。これらの樹脂のうち、柔軟
性を付与するとされるポリウレタン樹脂、ポリカーボネ
ート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリロニトリル−ブタ
ジエン共重合体等の使用が好ましい。これらの樹脂は、
非磁性粒子の分散性を向上するために−SO3 M、−O
SO3M、−COOM、あるいは −PO(OM’)2
等の極性官能基を含有していてもよい(但し、MはHま
たはLi、Ka、Na等のアルカリ金属、M’はHまた
はLi、Ka、Na等のアルカリ金属またはアルキル基
をあらわす)。極性官能基としてはこの他に−NR1
2 、−NR1 2 3 + - の末端基を有する側鎖型の
もの、>NR1 2 + - の主鎖型のもの等がある(こ
こでR1 、R2 、R3 は水素原子または炭化水素基であ
り、X- はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンイ
オンあるいは無機、有機イオンをあらわす)。この他に
−OH、−SH、−CN、エポキシ基等の極性官能基で
あってもよい。これら極性官能基の含有量は10-1〜1
-8mol/gであり、好ましくは10-2〜10-6mo
l/gである。これら有機バインダは単独で用いること
も可能であるが、2種類以上を併用することも可能であ
る。塗布バックコート層中におけるこれら有機バインダ
の量は、非磁性粒子100重量部に対して1〜200重
量部、好ましくは10〜50重量部である。
【0015】上述した有機バインダを架橋硬化する硬化
剤として、例えばポリイソシアネート等を添加すること
が可能である。ポリイソシアネートとしては、トリメチ
ロールプロパンと2,4−トリレンジイソシアネート
(TDI)の付加体(例えば商品名コロネートL−5
0)が一般的であるが、4,4−ジフェニルメタンジイ
ソシアネート(MDI)やヘキサンジイソシアネート
(HDI)等のアルキレンジイソシアネートの付加体を
使用してもよい。この他、テトラグリシジルメタキシレ
ンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメ
チルシクロヘキサン、テトラグリシジルアミノジフェニ
ルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール等の
ポリグリシジルアミン化合物、2−ジブチルアミノ−
4,6−ジメルカプト置換トリアジン等のポリチオール
化合物、トリグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ
化合物、エポキシ化合物とイソシアネート化合物の混合
物、エポキシ化合物とオキサゾリン化合物との混合物、
イミダゾール化合物とイソシアネート化合物の混合物、
無水メチルナジン酸等、従来より公知のものはいずれも
使用可能である。これら硬化剤の有機バインダへの配合
割合は、有機バインダ100重量部に対し5〜80重量
部、好ましくは10〜50重量部である。
【0016】塗布バックコート層と非磁性支持体との間
に、塗布バックコート層の接着性向上等の目的で、下部
塗布バックコート層を形成してもよい。下部塗布バック
コート層は、有機バインダ単独、あるいはカーボン粉末
および必要に応じて他の非磁性粉末および有機バインダ
を溶剤に溶解し塗料化し、これを非磁性支持体上に塗
布、乾燥することにより形成される。
【0017】塗布バックコート層形成用の塗料に用いら
れる溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メ
チルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン
類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノー
ル等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プ
ロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル、エチレングリコール
モノアセテート等のエステル類、ジエチレングリコール
ジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジ
オキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ベンゼ
ン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチレン
クロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロ
ホルム、ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等が
使用される。
【0018】磁性塗料の調製は、非磁性粒子、有機バイ
ンダおよび有機溶剤等を混合、分散および混練の各工程
を経ることによりおこなわれる。分散および混練には、
ニーダ、アジタ、ボールミル、サンドミル、ロールミ
ル、エクストルーダ、ホモジナイザ、超音波分散機等が
用いられる。非磁性支持体上に塗布バックコート層を形
成するための塗布方法は特に限定されず、エアドクタコ
ート、ブレードコート、エアナイフコート、スクィズコ
ート、含浸コート、リバースロールコート、トランスフ
ァロールコート、グラビアコート、キスコート、キャス
トコート、エクストルージョンコート、スピンコート等
従来の方法はいずれも採用可能である。非磁性支持体上
に形成された塗布バックコート層は、加熱空気等により
乾燥して有機溶剤を除去し、必要に応じて硬化処理を施
す。
【0019】薄膜バックコート層に採用される材料とし
ては、例えばカーボン、SiO2 、Si3 4 、SiO
N、SiC、Al2 3 、AlN、TiO2 、Cr2
3 、TiN、TiC、ZrO2 、MgO、BN、CoO
あるいは非磁性金属等を単独あるいは複合膜として使用
される。さらにはポリパラキシリレン(商品名パリレ
ン)やフッ素樹脂等、真空薄膜形成技術を適用可能な有
機高分子を用いることもできる。これら材料を単層ある
いは積層で用いてもよい。
【0020】薄膜バックコート層の形成方法は、真空薄
膜形成法すなわちDCスパッタリング法、RFスパッタ
リング法、イオンビームスパッタリング法、マグネトロ
ンスパッタリング法、反応性スパッタリング法等の各種
スパッタリング法や、蒸着法、反応性蒸着法、イオンプ
レーティング法等が採用される。プラズマCVD法やE
CRプラズマCVD法、減圧CVD法等を採用してもよ
い。有機高分子薄膜の場合には、蒸着法や原料モノマガ
スのプラズマ重合により形成することができる。いずれ
の方法においても、非磁性支持体やこの上に設けられた
塗布バックコート層が熱変形しないように非磁性支持体
等を冷却しながら形成することが望ましい。
【0021】上述した多層バックコート層を形成する非
磁性支持体としては、通常の塗布型および薄膜型磁気記
録媒体で用いられるものはいずれも使用可能であり、ポ
リエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナ
フタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテ
ート、セルロースダイセテート等のセルロース誘導体、
ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン
等のビニリデン樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドイ
ミド、ポリイミド等の有機高分子が例示される。これら
非磁性支持体の表面には接着性向上のために、有機バイ
ンダからなる下地材料層を設けてもよい。また、磁気記
録層が金属磁性薄膜形の場合には、この下地材料層中や
非磁性支持体中に、SiO2 やラテックス等のフィラー
を含有させ、微細な表面突起を形成してもよい。これら
表面突起は、金属磁性薄膜の表面性を制御して、磁気記
録テープの走行性の向上に寄与する。
【0022】磁気記録層としては、金属磁性薄膜形、塗
布形いずれでもよい。このうち、金属磁性薄膜形の磁気
記録層は、強磁性金属を蒸着やスパッタリングあるいは
めっき等の薄膜形成技術により非磁性支持体上に形成し
たものである。強磁性金属の材料としては、Co、Fe
あるいはNi等の単体強磁性金属や、Co−Ni系合
金、Co−Ni−Pt系合金、Co−Cr合金、Co−
Cr−Ta合金、Co−Cr−Pt合金等のCo系合
金、Fe−Co−Ni合金、Fe−Ni−B合金、Fe
−Co−B合金、Fe−Co−Ni−B合金等のFe系
合金等や、これら強磁性材料中や粒界に酸化物、窒化物
あるいは炭化物等が析出した構造からなるものが例示さ
れる。特に、面内磁化モードによる薄膜型磁気記録媒体
では、非磁性支持体表面に対し斜め蒸着等で磁性層を形
成して磁化容易軸を磁性層の略面内に配向する。非磁性
支持体上にBi、Sb、Pb、Sn、Ga、In、G
e、SiあるいはTi等の非磁性下地層を形成してお
き、ここに非磁性支持体表面の垂直方向環から強磁性金
属を蒸着あるいはスパッタリングしてもよい。かかる非
磁性下地層を介在させることにより、非磁性金属を磁性
層中に拡散したり、磁性層のモホロジ(morphology) を
制御して面内等方性磁化を付与するとともに、抗磁力を
向上することができる。磁気記録層は単層あるいは積層
で用いられる。積層の場合には、中間層として非磁性層
を介在させてもよい。また磁気記録層の表面に保護層を
設けてもよい。保護層の材料としては、カーボン、Si
2 、Si3 4 、SiON、SiC、Al2 3 、A
lN、TiO2 、Cr2 3 、TiN、TiC、ZrO
2 、MgO、BN、CoOあるいは非磁性金属等を単独
あるいは複合膜として使用される。これら材料を単層あ
るいは積層で用いてもよい。
【0023】塗布型の磁気記録層を形成する場合には、
磁性粉末を有機バインダ中に分散させた磁性塗料を非磁
性支持体上に塗布して形成する。このうち磁性粉末の材
料は特に限定はなく、金属磁性粉末、酸化物磁性粉末あ
るいはその他の化合物磁性粉末がいずれも採用される。
金属磁性粉末系としてはFe、Co、Ni等の金属やこ
れらの合金、あるいはこれら金属や合金にAl、Si、
Ti、Cr、V、Mn、Cu、Zn、Mg、Bi、希土
類、P、B、N、C等の元素が一種あるいは複数種添加
されたものがいずれも用いられる。これらのうち、Fe
あるいはFe−Co合金が飽和磁化の点から好ましく用
いられる。またこれら金属磁性粉末の表層に、Al、S
i、PあるいはB等の焼結防止元素あるいは形状保持元
素を含有していてもよい。酸化鉄系磁性粉末としてはγ
−Fe2 3 、Fe3 4 、γ−Fe2 3 とFe3
4 との中間体であるベルトライド化合物、Co含有γ−
Fe2 3 、Co含有Fe3 4 、Co含有γ−Fe2
3 とCo含有Fe3 4 との中間体であるベルトライ
ド化合物等の各種スピネル型酸化鉄、M型、W型、Y
型、Z型等の各種バリウムフェライト、カルシウムフェ
ライト、鉛フェライト、これら各種マグネトプランバイ
ト型酸化鉄に保磁力を向上する目的で、Co、Ti、Z
n、Nb、CuあるいはNi等を添加したマグネトプラ
ンバイト型酸化鉄が例示される。鉄の化合物としては酸
化鉄系の他に窒化鉄、炭化鉄、硼化鉄が挙げられる。酸
化物系としては他にCrO2 あるいはこれにTe、S
b、Fe、B等を微量添加したものでもよい。これら各
種磁性粉末は単独あるいは複数種を混合して使用するこ
とも可能である。
【0024】磁性粉末の形状としては、長軸長が例えば
0.05μm〜0.5μm程度、軸比(アスペクト比)
が3〜30程度、好ましくは5〜15程度であって、針
状、柱状、紡錘状あるいは棒状の外形を呈するものが好
ましい。長軸長が0.05μm未満であると、磁性塗料
の分散が困難であり、長軸長が0.5μmを超えるとノ
イズ特性が劣化する虞れがあり好ましくない。軸比が3
未満では個々の磁性粒子の磁場配向性が劣化して角型比
と残留磁束が低下する結果、出力が低下する。また軸比
が30を超えると、特に短波長信号が低下する虞れがあ
り好ましくない。マグネトプランバイト型酸化鉄の場合
には微細な六角板状のものが採用される。これは板径が
0.01〜0.5μm、板厚が0.001〜0.2μm
程度のものが好ましい。長軸長、軸比、板径、板厚等
は、透過型電子顕微鏡写真から無作為に抽出した100
サンプル以上の粒子の平均値から求めることができる。
これら磁性粉末の比表面積は30m2 /gから80m2
/g、特に40m2 /gから70m2 /gの範囲のもの
が好ましい。比表面積をこの範囲に選ぶことにより、磁
性粉末の微粒子化に伴う高密度記録化と、ノイズ特性に
優れた磁気記録媒体を得ることができる。
【0025】塗布型の磁性層に採用される有機バイン
ダ、分散剤、研磨剤、マット剤、潤滑剤およびこれらを
磁性塗料化する際の溶剤等は特に限定はなく、いずれも
従来の塗布形磁気記録テープに採用されるものでよい。
塗布、乾燥、硬化、カレンダ処理等についても同様であ
る。
【0026】金属薄膜形、塗布形いずれの磁気記録層に
おいても、磁気記録層表面あるいは保護層表面に潤滑性
を高めるトップコート層を形成してよい。トップコート
層材料としてはフルオロカーボン、アルキルアミン、ア
ルキルエステル等が例示される。
【0027】本発明の磁気記録媒体を磁気記録テープに
適用した例の概略断面図を図1に示す。図1は磁気記録
テープをリール等に巻回して保管している状態の概略断
面図であり、隣接するn層目とn+1層目の相互関係を
示している。ここに示す磁気記録テープは、非磁性支持
体1の一方の面に磁気記録層2およびトップコート層3
を形成し、非磁性支持体1の他方の面、すなわち裏側に
は多層バックコート層40を形成したものである。多層
バックコート層40は、非磁性支持体1側の塗布バック
コート層41およびこの上に形成した薄膜バックコート
層42からなっている。図では説明のためにn層目とn
+1層目は離間しているが、実際の磁気記録テープの保
管中は、薄膜バックコート層42は隣接するトップコー
ト層3と常時接触した状態となっている。また各層の厚
さは、必ずしも実際の磁気記録テープの各層の厚さに比
例したものではない。
【0028】薄膜バックコート層42はその膜厚を3n
m以上に選んだことにより、ほぼ連続的に切れ目なく形
成されており、塗布バックコート層41表面が直接露出
することはない。したがって、塗布バックコート層41
中の構成材料である有機バインダが経年変化により化学
的な分解を起こして劣化する虞れは少なく、また劣化が
発生したとしても、その一部が剥離して、トップコート
層3の表面に付着する虞れも少ない。このため、瞬間的
な出力減衰、すなわちドロップアウトが増加したり、動
摩擦係数の不規則化による走行性の低下の問題は発生し
ない。
【0029】なお多層バックコート層を用いた従来技術
として、例えば針状形状のヘキサゴナル磁性粉体を含む
塗料を下塗り層に、カーボンを含む塗料を上塗り層に用
いる方法が例えば特開平6−282836号公報に開示
されている。これは針状形状の短軸方向に磁化容易軸を
有するバリウムフェライト磁性粉を、非磁性支持体の面
方向に配列することにより、薄い非磁性支持体の機械的
強度を向上しようというものである。また真空薄膜形成
法による多層バックコート層を用いるものとして、アル
ミニウムやシリコンを蒸着後、この表面を酸化して多層
化する方法が特開平7−098853号公報に開示され
ている。これはバックコート層の表面性や機械的特性を
制御するものである。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明の磁気記録媒体およ
びその製造方法につき、金属薄膜形の磁気記録テープを
例にとり、比較例を交えながら詳細な説明を加える。
【0031】磁気記録テープの製造 一例として、厚さ9.5μm、幅150mmのPET
(ポリエチレンテレフタレート)フィルムからなる非磁
性支持体の片面に、アクリル酸エステルを主成分とする
水溶性ラテックスを分散させたエマルジョン溶液を塗布
し、粒子密度1000個/mm2 の表面突起を形成し
た。このPETフィルムの表面突起を形成した側の表面
に、リールツーリール方式の連続巻き取り蒸着装置を用
いて、磁気記録層を形成した。蒸着条件の一例を下記に
示す。 インゴット材:Co90Ni10 重量% 入射角 45〜90 ° 酸素導入量 3.3×10-63 /sec 蒸着時真空度 7×10-2 Pa 膜厚 200 nm この磁気記録層の磁気特性は保磁力Hc=1220O
e、残留磁束密度4300Gであった。
【0032】次にPETフィルムの他方の面(裏面)に
塗布バックコート層を形成した。塗布バックコート層用
の塗料は、一例として下記組成によった。 カーボン粒子 100 重量部 (旭カーボン社製 カーボンブラック#60) 有機バインダ 100 重量部 (ポリカーボネートを主成分とする) 溶剤 250 重量部 (メチルエチルケトン/トルエン/シクロヘキサノン=
2/2/1) この組成物をボールミルで混合し、塗布直前に硬化剤
(コロネートL)を5重量部添加した。この塗料をグラ
ビアコータにより、乾燥塗布厚が0.5μmとなるよう
に塗布した。
【0033】このように形成した塗布バックコート層の
上に、一例として連続巻き取りDCマグネトロンスパッ
タリング装置により、カーボンからなる薄膜バックコー
ト層を形成した。スパッタリング条件は、例えば下記条
件を採用した。 ターゲット材:カーボン 100 % Arガス圧 0.7 Pa パワー密度 6.8 W/cm2 ターゲット/基板間距離 80 mm 薄膜バックコート層の厚さは、1〜50nmの範囲で変
化させた。
【0034】多層バックコート層を形成後、磁気記録層
表面にトップコート層を形成した。このトップコート層
は、潤滑剤としてフルオロカーボンを主骨格とし、これ
がジメチルデシルアミン構造となるように変成した化合
物のトルエン溶液を塗布することにより形成した。この
後、8mm幅に裁断してカセットに収納することにより
比較例2および実施例1〜4の磁気記録テープを作製し
た。なお比較例1としては、薄膜バックコート層を設け
ずに、塗布バックコート層のみを設けた磁気記録テープ
も作製した。このようにして作製した6種類の磁気記録
テープを〔表1〕に示す。
【0035】
【表1】
【0036】これら6種類の磁気記録テープにつき、各
種試験環境条件下で保存日数を変えたサンプルを用意
し、保存環境から取り出し、室内環境下で一日間保存
後、市販の8mmビデオテープレコーダを改造した試験
機、および後述するステンレスガイドピンを有する摩擦
試験機を用いて特性を評価した。評価項目は、ドロップ
アウト特性の寿命推定、摩擦係数の寿命推定、およびス
クラッチ傷によるダメージの寿命推定の3項目である。
以下、各測定項目の測定評価方法を示す。
【0037】ドロップアウト特性の寿命推定方法 測定系のブロック図を図2に示す。信号発生機200か
らの信号を市販の8mmビデオテープレコーダを改造し
たVTR201に入力し、各種試験環境条件下で保存し
た比較例および実施例の磁気記録テープに記録し、この
記録済み磁気記録テープを同じVTR201で再生す
る。VTR201の再生出力はオシロスコープ202お
よびドロップアウトカウンタ203に入力し、ドロップ
アウト数を計数するとともに、再生画像はモニタ204
でも監視した。カセットに収納された磁気記録テープの
測定位置は、カセットリールに巻回された磁気記録テー
プの最内周部の残り5分相当部分を使用した。この部位
は経験則上、バックコート層が最も剥離し易い個所であ
る。ドロップアウトの測定は、−6dB以上の再生信号
減衰について10μsecおよび50μsecの2種類
のゲートサイズを用いており、この場合−6dB10μ
secのゲートサイズは小さなドロップアウトを、−6
dB50μsecのゲートサイズは大きなドロップアウ
トの検出基準となる。画質・音質が問題となるドロップ
アウトのしきい値は、各ゲートサイズで−6dB10μ
secが50個/分(平均)、−6dB50μsecが
1個/分(平均)であることから、このしきい値を超え
る保存日数をドロップアウト特性の寿命と推定した。
【0038】摩擦係数の寿命推定方法 測定装置の概略を図3に示す。ステンレス製のガイドピ
ンDを水平に配置し、この外周面に角度θにわたって磁
気記録テープPのバックコート層側を案内させる。磁気
記録テープPの一端に、おもりWを係合し、このおもり
WによりテンションT1をかける。磁気記録テープPの
他端は、一定速度で移動する力測定装置Mの検出端に係
合し、ガイドピンDと磁気記録テープPとの摺動時のテ
ンションT2の測定をおこなう。このとき下式(1)の
関係が成り立つ。 T2/T1=exp(μ・θ) (1) (1)式より、摩擦計数μは下式(2)により求められ
る。 μ=(1/θ)ln(T2/T1) (2) 実際の測定は、各種試験環境条件下で保存した比較例お
よび実施例の磁気記録テープについて、W=10gf、
θ=90°、V=20mm/secの条件を用い、25
℃50%RHの測定環境下でおこなった。磁気記録テー
プの走行が問題となるレベルは、摩擦計数μが0.37
を超える場合であり、これを摩擦係数における寿命と推
定した。
【0039】ダメージの寿命推定方法 摩擦係数測定後の磁気記録テープのバックコート層表面
のスクラッチ傷によるダメージは、光学顕微鏡を用いた
目視で確認した。ダメージ評価は、スクラッチ傷が全く
見られなかったものを○、わずかに1本程度のスクラッ
チ傷が見られたものを△、数本以上のスクラッチ傷が見
られたものを×として表し、△以上にスクラッチ傷が発
生したものをダメージ発生における寿命と推定した。
【0040】いずれの測定項目の寿命推定においても、
実際に長時間の保存は不可能であるため、保存環境と保
存日数を変えて寿命を推定する方法、いわゆるアレニウ
ス法(経年変化の加速試験法)を採用した。
【0041】比較例1 まず塗布バックコート層のみを設けた比較例1の磁気記
録テープにつき、各種保存環境下で保存日数を変えた試
料を作製し、上述した方法により測定した。測定結果を
〔表2〕に示す。
【0042】
【表2】
【0043】〔表2〕の測定結果より、ドロップアウト
の寿命をアレニウス法により推定した。図4および図5
は、保存環境の相対湿度を90%に固定し、温度をパラ
メータとした保存日数とドロップアウト数の相関グラフ
である。このうち図4はドロップアウトのゲートサイズ
が−6dB10μsec、図5は−6dB50μsec
のものである。こららの図より、いずれの保存温度にお
いても保存日数の増加とともにドロップアウトが増加す
る傾向が明らかである。
【0044】先述したように、各ゲートサイズに対応す
るドロップアウト数のしきい値を超える保存日数が各グ
ラフ図より読み取れる。例えば図4のゲートサイズ−6
dB10μsecにおいては、65%90RHでは4
日、図5のゲートサイズ−6dB50μsecにおいて
は、65%90RHでは6日である。これらの日数を各
加速試験環境下での寿命とし、この寿命日数を絶対温度
の逆数でプロットしたグラフを図6に示す。
【0045】図6には、前述の90%RHの保存環境下
のデータの他に、80%RHおよび50%RHの保存環
境下のデータもプロットしてある。このグラフをもと
に、例えば50%RH、各温度の保存環境下でのドロッ
プアウト寿命や、25℃、各相対湿度の保存環境下での
ドロップアウト寿命を推定することができる。すなわ
ち、40℃80%RHでのドロップアウト寿命はおよそ
0.5年と推定される。また25℃50%RHでのドロ
ップアウト寿命はおよそ20年と推定される。
【0046】つぎに同じく〔表2〕の測定結果より、摩
擦係数の寿命をアレニウス法により推定した。図7は、
保存環境の相対湿度を90%に固定し、温度をパラメー
タとした保存日数と摩擦係数の相関グラフである。この
図から、摩擦係数は保存日数の増加とともに上昇するこ
とが明らかである。先述したように、磁気記録テープの
走行上問題が発生する、摩擦係数が0.37を超える日
数が図7のグラフから読み取れる。例えば65℃90%
RHの場合は22日である。これらの日数を各保存環境
での摩擦係数の寿命とし、この寿命日数を絶対温度の逆
数でプロットしたグラフを図8に示す。図8には、90
%RHの保存環境下で求めたデータの他に、80%RH
および50%RHでの寿命データも載せている。このグ
ラフをもとに、例えば50%RH、各温度の保存環境下
での摩擦係数寿命や、25℃、各相対湿度の保存環境下
での摩擦係数寿命を推定することができる。すなわち、
40℃80%RHでの摩擦係数寿命はおよそ3.6年と
推定される。また25℃50%RHでの摩擦係数寿命は
およそ520年と推定される。
【0047】つぎに同じく〔表2〕の測定結果より、ス
クラッチ傷によるダメージの寿命をアレニウス法により
推定した。図9は、先述したように△印をダメージ寿命
とし、同様の方法によりこの寿命日数を絶対温度の逆数
でプロットしたグラフである。このグラフをもとにし
て、40℃80%RHでのダメージ寿命はおよそ0.5
年と推定される。また25℃50%RHでのダメージ寿
命はおよそ26年と推定される。
【0048】以上のドロップアウト寿命、摩擦係数寿命
およびダメージ寿命の3種の寿命のうち、ドロップアウ
ト寿命が最も短く、磁気記録テープの総合的な寿命を決
定していることがわかる。すなわち、塗布バックコート
層のみを設けた比較例1の磁気記録テープの寿命は、4
0℃80%RHでおよそ0.5年、また25℃50%R
Hでは20年と推定される。しかしながら、例えば40
℃80%RHという高温多湿の条件下で使用される磁気
記録システムにおいては、0.5年という磁気記録テー
プ寿命は必ずしも充分ではない。
【0049】この理由は先に述べたように、塗布バック
コート層の剥離、すなわち塗布バックコート層の構成要
素である有機バインダの経年変化による化学的な分解に
起因する。有機バインダの分解および剥離を防止する方
法として、(1)有機バインダを経年変化の少ない材料
に変更する、(2)バックコート層を有機バインダを含
まないもの、例えば真空蒸着によるカーボン薄膜に変更
する、(3)塗布バックコート層の表面に有機バインダ
を含まないもの、例えば真空蒸着によるカーボン薄膜を
設けて磁気記録層と塗布バックコート層との接触を避け
る、多層バックコート層を採用する、等の方法が考えら
れる。このうち、(1)の方法は経年変化による化学的
な分解の少ない有機バインダを選択すること自体が容易
でなく、また例えそのような有機バインダを選択して
も、塗布バックコート層としての他の諸特性とのバラン
ス、例えば機械的強度や摩擦係数等の問題が別に発生す
る。(2)の方法はバックコート層に必要な膜厚を得る
ためには、真空薄膜形成装置の成膜速度の点で長時間を
要し、スループットの低下やコスト上昇の問題がある。
(3)は本発明によるものであり、この方法であれば、
薄膜バックコート層の厚さは例えば最低3nmあれば充
分であり、スループット低下の要因とはならない。そこ
で以下の実施例ではこの(3)の方法による多層バック
コート層を採用した磁気記録テープを作製し、その保存
安定性についての評価をおこなった。
【0050】実施例1 前述した〔表1〕に示した試作磁気記録テープのうち、
薄膜バックコート層の厚さが3nmのものについて、各
種保存環境下で保存日数を変えた試料を作製し、保存安
定性を測定した。測定結果を〔表3〕に示す。
【0051】
【表3】
【0052】〔表3〕の測定結果より、ドロップアウト
の寿命をアレニウス法により推定した。図10および図
11は、保存環境の相対湿度を90%に固定し、温度を
パラメータとした保存日数とドロップアウト数の相関グ
ラフであり、比較例1において説明した図4、図5に対
応するものである。ただし図10および図11のグラフ
は、両対数表示である点が異なる。このうち図10はド
ロップアウトのゲートサイズが−6dB10μsec、
図11は−6dB50μsecのものである。こららの
図より、いずれの保存温度においても保存日数の増加と
ともにドロップアウトが増加する傾向があるものの、比
較例1の磁気記録テープと比べると、この傾向は極端に
少ないことが明らかである。
【0053】先述したように、各ゲートサイズに対応す
るドロップアウト数のしきい値を超える保存日数が各グ
ラフ図より読み取れる。例えば図10のゲートサイズ−
6dB10μsecにおいては、65%90RHでは6
0日、図11のゲートサイズ−6dB50μsecにお
いては、65%90RHでは56日である。これらの日
数を各加速試験環境下での寿命とし、この寿命日数を絶
対温度の逆数でプロットしたグラフを図12に示す。
【0054】図12には、前述の90%RHの保存環境
下のデータの他に、80%RHおよび50%RHの保存
環境下のデータもプロットしてある。このグラフをもと
に、例えば50%RH、各温度の保存環境下でのドロッ
プアウト寿命や、25℃、各相対湿度の保存環境下での
ドロップアウト寿命を推定することができる。同図に
は、すでに図6で説明した比較例1の磁気記録テープの
ドロップアウト寿命のデータも細実線により合わせて示
してある。各保存環境下での実施例1と比較例1の磁気
記録テープの寿命推定線は、いずれもその切片は異なる
ものの、傾きはほぼ同一である。このことから、塗布バ
ックコート層上に薄膜バックコート層を設けた実施例1
の磁気記録テープは、ドロップアウト寿命の推定値が大
幅に増加することが判る。すなわち、40℃80%RH
でのドロップアウト寿命はおよそ5.8年と推定され
る。また25℃50%RHでのドロップアウト寿命はお
よそ820年と推定される。
【0055】つぎに〔表3〕の測定結果から、摩擦係数
およびテープダメージについて着目すると、保存環境お
よび保存日数に対してほとんど一定の値をとることが判
る。すなわち、調べた保存日数の範囲では、経年変化の
加速試験による差は見られない。
【0056】比較例1において検討を加えたように、ド
ロップアウト寿命、摩擦寿命およびテープダメージ寿命
のうち、ドロップアウト寿命が経年変化による特性維持
に最も弱いことが判明している。このことから、実施例
1の磁気記録テープの摩擦寿命およびダメージ寿命は、
ドロップアウト寿命より長期間、すなわち、40℃80
%RHでおよそ5.8年以上と推定される。また25℃
50%RHでおよそ820年以上と推定される。
【0057】実施例2〜4、比較例2 つぎに、先に〔表1〕に示したように、多層バックコー
ト層のうちの薄膜バックコート層の厚さを変えた実施例
2〜4、および比較例2の磁気記録テープにつき、比較
例1と同様にして保存環境による加速試験をおこなっ
た。65℃90%RHの保存環境下で60日間保存した
各磁気記録テープの測定結果を、実施例1の測定結果と
併せて〔表4〕に示す。
【0058】
【表4】
【0059】すでに前実施例1における各特性の寿命推
定で説明したように、多層バックコート層の磁気記録テ
ープの例えばドロップアウト特性では、65℃90%R
Hの保存環境下で60日間保存して特性上問題がなけれ
ば、すなわちドロップアウトの各ゲートサイズが画音質
に影響を及ぼさない範囲であれば、磁気記録テープの総
合的な寿命として40℃80%RHの保存環境でおよそ
5.8年以上、25℃50%RHでおよそ820年以上
と推定される。
【0060】〔表4〕の測定結果からは、実施例の磁気
記録テープを65℃90%RHの保存環境下で60日間
保存したもののドロップアウト特性は、各ゲートサイズ
とも画音質維持のしきい値以下の条件を満たしている。
同様に、摩擦係数およびテープダメージにおいても問題
がないことが判る。これらの測定結果から、実施例の磁
気記録テープの寿命はいずれも40℃80%RHの保存
環境でおよそ5.8年以上、25℃50%RHでおよそ
820年以上と推定される。しかしながら、薄膜バック
コート層の厚さが1nmである比較例2の磁気記録テー
プは、ドロップアウト数が激増して測定が不可能であっ
た。また65℃90%RHの保存環境下で5日間だけ保
存した試料についても、許容しきい値を超えるドロップ
アウト数であった。すなわち、多層バックコート層の上
層側の薄膜バックコート層の厚さは、3nm以上必要で
あることが判る。
【0061】以上、本発明の磁気記録媒体およびその製
造方法につき詳細な説明を加えたが、これらは単なる例
示であり、本発明はこれら実施例に何ら限定されるもの
ではない。
【0062】実施例では薄膜バックコート層の材料とし
てカーボンを採用したが、前述したように各種非磁性化
合物や金属、あるいは有機高分子樹脂を用いても同様の
効果を収めることができる。またその形成方法もスパッ
タリング以外に各種真空薄膜形成技術を用いることがで
きる。
【0063】また、実施例は磁気記録媒体としてCo−
20%Niの合金組成による薄膜型の磁気記録テープを
例示したが、この合金組成にかかわらず各種の薄膜型磁
気記録テープに適用が可能である。また薄膜型以外に
も、塗布型磁気記録媒体にも適用できる。塗布型磁気記
録媒体の磁性粉末、有機バインダおよび各種添加剤等の
種類は特に限定されないが、一例としてFe系金属磁性
粉末を用いた磁気記録テープの製造方法を以下に示す。
【0064】まず下記の組成により、磁性塗料を作成し
た。塗料化は常法に準じ、磁性粉末、有機バインダ、各
種添加剤、有機溶剤を混合しニーダ等により混練後、サ
ンドミルで5時間分散した。 磁性粉末 100 重量部 (Fe系金属磁性粉末、保磁力160kA/m、飽和磁
化135Am2 /kg、比表面積51m2 /g、長軸長
0.12μm、針状比8) ポリ塩化ビニル樹脂 17 重量部 (重合度200、極性官能基として、−SO3 Naを含
む) カーボン粉末 2 重量部 アルミナ粉末 5 重量部 ミリスチン酸 1 重量部 ブチルステアレート 1 重量部 シクロヘキサノン 300 重量部
【0065】得られた磁性塗料に硬化剤としてポリイソ
シアネートを3重量部加え、厚さ6μmのPETフィル
ム上にダイコータを用いて塗布した。ソレノイドコイル
により磁場配向処理、乾燥、カレンダ処理後、硬化処理
を施した。この後、前実施例に準じてPETフィルムの
裏面側に多層バックコート層を形成した。この後、8m
m幅に裁断し、専用カセットに収納して塗布型の磁気記
録媒体を完成した。磁気記録層の厚さは、最終的に1.
7μmであった。
【0066】このようにして作製した塗布型の磁気記録
テープにおいても、薄膜型の磁気記録テープと同様に長
期の保存寿命を得ることができた。
【0067】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば特定構造の多層バックコート層の採用により、
磁気記録媒体の長期保存寿命等を向上することができ
る。したがって、半永久的なデータ保存を要求される磁
気記録システム、例えば統計処理、情報ドキュメンテー
ションの分野で有用であるばかりでなく、磁気記録シス
テムが稼働に供される環境が、例えば高温多湿のような
過酷な場合に適用して大きな効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録媒体を磁気記録テープに適用
した例の概略断面図である。
【図2】ドロップアウト測定系のブロック図である。
【図3】摩擦係数の測定装置の概略を示す図である。
【図4】比較例1の磁気記録テープの保存日数とドロッ
プアウト数の相関グラフであり、ゲートサイズが−6d
B10μsecの場合である。
【図5】比較例1の磁気記録テープの保存日数とドロッ
プアウト数の相関グラフであり、ゲートサイズが−6d
B50μsecの場合である。る。
【図6】比較例1の磁気記録テープのドロップアウト数
がしきい値を超える日数を絶対温度の逆数でプロットし
たグラフである。
【図7】比較例1の磁気記録テープの保存日数と摩擦係
数の相関グラフである。
【図8】比較例1の磁気記録テープの摩擦係数が0.3
7を超える日数を絶対温度の逆数でプロットしたグラフ
である。
【図9】比較例1の磁気記録テープのテープダメージが
発生する日数を絶対温度の逆数でプロットしたグラフで
ある。
【図10】実施例1の磁気記録テープの保存日数とドロ
ップアウト数の相関グラフであり、ゲートサイズが−6
dB10μsecの場合である。
【図11】実施例1の磁気記録テープの保存日数とドロ
ップアウト数の相関グラフであり、ゲートサイズが−6
dB50μsecの場合である。
【図12】実施例1の磁気記録テープのドロップアウト
数がしきい値を超える日数を絶対温度の逆数でプロット
したグラフである。
【図13】従来の磁気記録テープの問題点を示す概略断
面図である。
【符号の説明】
1…非磁性支持体、2…磁気記録層、3…トップコート
層、4…バックコート層、5…剥離物、40…多層バッ
クコート層、41…塗布バックコート層、42…薄膜バ
ックコート層

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体の一方の面に磁気記録層を
    有し、他方の面に多層バックコート層を有する磁気記録
    媒体において、 前記多層バックコート層の非磁性支持体側は、非磁性粒
    子と有機バインダを主体とした塗布バックコート層から
    なり、 前記多層バックコート層の表面側は、真空薄膜形成法に
    よる薄膜バックコート層からなることを特徴とする磁気
    記録媒体。
  2. 【請求項2】 前記塗布バックコート層の厚さは、0.
    3μm以上1.0μm以下であるとともに、前記薄膜バ
    ックコート層の厚さは、3nm以上100nm以下であ
    ることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 非磁性支持体の一方の面に磁気記録層を
    形成し、他方の面に多層バックコート層を形成する工程
    を有する磁気記録媒体の製造方法において、 前記多層バックコート層の非磁性支持体側は、非磁性粒
    子と有機バインダを主体とした塗布バックコート層を塗
    布法により形成し、 前記多層バックコート層の表面側は、薄膜バックコート
    層を真空薄膜形成法により形成することを特徴とする磁
    気記録媒体の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記塗布バックコート層の厚さは、0.
    3μm以上1.0μm以下であるとともに、前記薄膜バ
    ックコート層の厚さは、3nm以上100nm以下であ
    ることを特徴とする請求項3記載の磁気記録媒体の製造
    方法。
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WO2023100873A1 (ja) * 2021-12-02 2023-06-08 富士フイルム株式会社 磁気テープカートリッジおよび磁気記録再生装置
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