JPH10130785A - 熱間加工性に優れた油井用マルテンサイト系ステンレス鋼 - Google Patents

熱間加工性に優れた油井用マルテンサイト系ステンレス鋼

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JPH10130785A
JPH10130785A JP28193896A JP28193896A JPH10130785A JP H10130785 A JPH10130785 A JP H10130785A JP 28193896 A JP28193896 A JP 28193896A JP 28193896 A JP28193896 A JP 28193896A JP H10130785 A JPH10130785 A JP H10130785A
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stainless steel
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JP28193896A
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Takashi Amaya
尚 天谷
Masakatsu Ueda
昌克 植田
Kunio Kondo
邦夫 近藤
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】硫化水素と炭酸ガスの両方を含む環境下で優れ
た耐硫化物応力腐食割れ性を発揮し、低温で焼戻しても
軟化が容易で強度ばらつきが生じにくく、かつ熱間加工
性に優れた油井用マルテンサイト系ステンレス鋼を提供
する。 【解決手段】C、Si、Mn、P、S、N、O、V、C
r、Mo、Al、Ni、Cu、Tiを特定し、かつ下記
〜式を満たし、残部Feおよび不可避的不純物から
なるステンレス鋼。 30×%Cr+36×%Mo+14×%Si−(28×
%Ni+13×%Mn)≦455…… 21×%Cr+25×%Mo+17×%Si+35×%
Ni+17×%Mn≦731………… Ni≧(0.64×%Cu−0.15)…………… 上記の鋼には、Ca、Mg、LaおよびCeの1種以上
をそれぞれ0.001〜0.05重量%添加含有させる
ことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油井あるいはガス
井(以下、単に「油井」と総称する)に使用されるマル
テンサイト系ステンレス鋼に関し、特に炭酸ガス、硫化
水素、塩素イオンなどの腐食性不純物を同時に含有する
腐食環境下での使用に供して好適な耐食性と適正な強度
レベルを有し、さらに製造時における熱間加工性に優れ
た油井用マルテンサイト系ステンレス鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、石油または天然ガスを採取するた
めの井戸の環境がますます苛酷なものになっており、深
さの増加に加えて炭酸ガス、硫化水素を含む油井が増
え、それにつれて腐食などによる材料の脆化が大きな問
題となっている。
【0003】従来、一般の油井用鋼材の一つである油井
管には、炭素鋼や低合金鋼を使用するのが通常であっ
た。しかし、油井の腐食環境が苛酷になるにつれて、C
rなどの合金元素の添加含有量を高めた高合金鋼製の油
井管が用いられるようになってきている。
【0004】例えば、炭酸ガスを多く含有する油井で
は、鋼の耐食性を向上させる上でCrの添加が極めて有
効であることが知られており、Crを9%程度添加含有
させた9%Cr−1%Mo鋼や、Crを13%程度添加
含有させたSUS420に代表されるマルテンサイト系
ステンレス鋼製の油井管が多く用いられている。
【0005】しかし、Crを多く含有する鋼は、いわゆ
るステンレス鋼であるにもかかわらず、硫化水素に対す
る耐食性が不芳であり、さらに炭酸ガスと硫化水素とを
同時に含む環境下では、硫化物応力腐食割れが発生しや
すいので、その使用が制限されているのが実状である。
【0006】このような炭酸ガスと硫化水素とを同時に
含む油井には、現状ではCrやNiなどの合金元素の含
有量をより高めた2相ステンレス鋼やオーステナイト系
ステンレス鋼を用いざるを得ないが、これらの鋼は合金
元素の含有量が多いためにコスト高につくという問題が
ある。
【0007】そこで、特開平7−62499号公報に
は、上述のSUS420鋼をベースとし、これに特定量
のNiとMoを添加含有するとともに、C含有量を0.
02〜0.05%に制限することによって、100〜1
50℃の高温腐食環境中での耐全面腐食、耐硫化物応力
腐食割れ性を確保するようにしたマルテンサイト系ステ
ンレス鋼が提案されている。
【0008】また、特開平2−217444号公報に
は、上記と同様に、SUS420鋼をベースとし、その
C含有量を0.02%未満に制限するとともに、1.2
〜5%のCuを添加含有することによって、耐硫化物応
力腐食割れ性を向上させた高強度マルテンサイトステン
レス鋼とその製造方法が提案されている。
【0009】さらに、特開平5−287455号公報に
は、上記と同様に、SUS420鋼をベースとし、これ
に適量のNiとMoの添加含有する一方、C含有量を低
減させ、さらに適量のTi、Nb、Zr、Vを添加含有
することによって、安定した強度が得られるとともに、
良好な耐硫化物応力腐食割れ性を確保するようにしたマ
ルテンサイト系ステンレス鋼が提案されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記特開平7
−62499号公報に示されるマルテンサイト系ステン
レス鋼は、従来から使用されているSUS420鋼に比
べてAC1点が低い。このため、高温焼戻しが不可能で低
温焼戻しをせざるを得ないが、低温焼戻した場合の軟化
特性を考慮して成分設計がされておらず、容易に軟化し
ないという欠点を有している。
【0011】また、特開平2−217444号公報に示
されるマルテンサイト系ステンレス鋼は、多量のCuを
含むために、熱間加工性が悪いという欠点を有してい
る。
【0012】さらに、特開平05−287455号公報
に示されるマルテンサイト系ステンレス鋼は、低温焼戻
しで容易に軟化し、かつ強度ばらつきも小さく、工業的
生産性に優れるものの、熱間加工性が十分でないという
欠点を有している。
【0013】このため、低温焼戻しで容易に軟化して安
定した強度が得られ、しかも熱間加工性が良好な硫化水
素と炭酸ガスの両方を含む環境下で優れた耐硫化物応力
腐食割れ性を示すマルテンサイト系ステンレス鋼の開発
が望まれていた。
【0014】本発明は、上記の実状に鑑みてなされたも
ので、その課題は、硫化水素と炭酸ガスの両方を含む環
境下で優れた耐硫化物応力腐食割れ性を発揮し、かつ低
温焼戻しで容易に軟化して強度ばらつきが生じにくく、
さらに実際の工業的生産に適用して優れた熱間加工性を
示す油井用マルテンサイト系ステンレス鋼を提供するこ
とにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、次の
(1)および(2)の油井用マルテンサイト系ステンレ
ス鋼にある。
【0016】(1)重量%で、C:0.05%以下、S
i:1%以下、Mn:5%以下、P:0.04%以下、
S:0.0008%以下、N:0.05%以下、O:
0.005%以下、V:0.2%以下、Cr:7〜14
%、Mo:0.5〜7%、Al:0.001〜0.1
%、Ni:0〜8%、Cu:0〜5%、Ti:4×%C
〜{0.75−〔0.01/(%C+0.015)〕}
を含有し、かつ下記〜式を満たし、残部Feおよび
不可避的不純物からなることを特徴とする安定した強度
が得られる耐硫化物応力腐食割れ性および熱間加工性に
優れた油井用マルテンサイト系ステンレス鋼。
【0017】 30×%Cr+36×%Mo+14×%Si−(28×
%Ni+13×%Mn)≦455…… 21×%Cr+25×%Mo+17×%Si+35×%
Ni+17×%Mn≦731………… Ni≧(0.64×%Cu−0.15)…………… (2)残部Feの一部に代えて、重量%で、Ca:0.
001〜0.05%、Mg:0.001〜0.05%、
La:0.001〜0.05%およびCe:0.001
〜0.05%のうちの1種または2種以上を含有するこ
とを特徴とする上記(1)に記載の安定した強度が得ら
れる耐硫化物応力腐食割れ性および熱間加工性に優れた
油井用マルテンサイト系ステンレス鋼。
【0018】本発明者らは、多くの実験研究の結果、次
のことを知見し、本発明をなすにいたった。
【0019】すなわち、低C−Cr−Ni−Fe系鋼で
あるマルテンサイト系ステンレス鋼の強度挙動について
詳細に調査した。その結果、低C領域においては、焼戻
し後の強度上昇とばらつきが顕著に認められるが、鋼中
のV含有量を0.2%以下に制限した上で下式を満たす
量のTiを必須成分として添加含有させると、焼戻し後
の強度が異常に高くならず、かつそのばらつきも小さく
し得ることを見いだした。
【0020】4×%C≦Ti≦{0.75−〔0.01
/(%C+0.015)〕} また、安定した強度と耐硫化物応力腐食割れ性で代表さ
れる良好な耐食性を同時に確保する観点からは、マルテ
ンサイト単相鋼とするのが望ましく、通常のオーステナ
イト化温度である800〜1100℃でオーステナイト
単相鋼となり、冷却するとマルテンサイトに変態する鋼
でなければならない。そのためには、下記と式を同
時に満たすように成分調整する必要のあることを見いだ
した。
【0021】 30×%Cr+36×%Mo+14×%Si−(28×
%Ni+13×%Mn)≦455…… 21×%Cr+25×%Mo+17×%Si+35×%
Ni+17×%Mn≦731………… さらに、硫化水素と炭酸ガスの両方を含む環境中での耐
食性をより一層向上させるには、上記特開平2−217
444号公報に示されるように、Cuを添加含有させる
のが有効であることを確認した。しかし、Cuを添加含
有させると、熱間加工性が著しく悪化するが、鋼中に不
可避的に含有されるSとO(酸素)をそれぞれ0.00
08%以下、0.005%以下に低減する一方、下記
式を満たすNiを必須成分として複合添加含有させる
と、熱間加工性の改善が図れることを見いだした。
【0022】 Ni≧(0.64×%Cu−0.15)……………
【0023】
【発明の実施の形態】以下、各成分の限定理由について
説明する。なお、以下において「%」は「重量%」を意
味する。
【0024】C:0.05%以下 Cは、鋼中に不可避的に含まれる元素であり、その含有
量が0.05%を超えると、強度が高くなりすぎて耐硫
化物応力腐食割れ性が劣化する。また、炭化物が析出し
やすくなり、局部腐食が発生しやすくなる。よって、C
含有量は、0.05%以下とした。なお、Cは、耐食性
確保の観点からは少なければ少ないほどよく、好ましく
は0.025%以下、より好ましくは0.01%以下と
するのが望ましい。
【0025】Si:1%以下 Siは、通常の製鋼過程で脱酸剤として必要な元素であ
る。しかし、その含有量が1%を超えると、靭性が著し
く低下する。よって、Si含有量は、1%とした。な
お、好ましい上限は0.75%、より好ましい上限は
0.5%である。
【0026】Mn:5%以下 Mnは、熱間加工性の改善に寄与する元素である。しか
し、その含有量が5%を超えると、残留オーステナイト
が生成しやすくなり、マルテンサイト単相の確保ができ
なくなる。よって、Mn含有量は、5%以下とした。
【0027】なお、特に耐孔食性を向上させたい場合に
は、その含有量を1%未満にするのが望ましい。また、
Mnは、耐食性を向上させる観点からはその含有量が少
なければ少ないほどよく、好ましくは0.5%以下とす
るのが望ましい。
【0028】S:0.0008%以下 Sは、鋼中に不可避的に含まれる不純物元素であり、熱
間加工性を向上させる観点からは少なければ少ないほど
よい。しかし、過度の低減は、脱硫コストが嵩み経済的
でない。また、その含有量が0.0008%以下であれ
ば所望の熱間加工性が得られる。よって、S含有量は、
0.0008%以下とした。
【0029】なお、製管時における疵発生を極力少なく
する観点からは、その疵発生起点となる硫化物系の非金
属介在物の生成をできるだけ少なくするのが好ましく、
そのためにはS含有量を0.0005%以下、より好ま
しくは0.0003%以下とするのが望ましい。
【0030】P:0.04%以下 Pは、上記Sと同様に、鋼中に不可避的に含まれる不純
物元素であり、その含有量が0.04%を超えると、耐
硫化物応力腐食割れ性が著しく劣化する。よって、P含
有量は、0.04%以下とした。なお、好ましい上限は
0.03%、より好ましい上限は0.02%である。
【0031】Cr:7〜14% Crは、本発明にかかわるマルテンサイト系ステンレス
鋼の耐食性を確保するための主要な必須成分であり、炭
酸ガス環境中での実用上問題のない耐食性を確保する観
点からは7%以上の含有量が必要である。しかし、その
含有量が14%を超えると、耐食性の向上以上にコスト
上昇が著しく経済的でないのに加え、次に述べるMoと
の相乗作用によってδフェライトの生成を招き、耐食性
が低下するのみならず、熱間加工性も低下する。よっ
て、Cr含有量は、7〜14%とした。なお、好ましい
範囲は9〜14%、より好ましい範囲は10〜14%で
ある。 Mo:0.5〜7% Moは、耐硫化物応力腐食割れ性を顕著に向上させる元
素である。しかし、その含有量が0.5%未満ではその
効果が得られない。逆に、その含有量が7%を超える
と、Crとの相乗作用によってδフェライトの生成を招
き、耐食性が低下するのみならず、熱間加工性も低下す
る。よって、Mo含有量は、0.5〜7%とした。な
お、好ましい範囲は0.5〜5%、より好ましい範囲は
0.7〜4%である。
【0032】Al:0.001〜0.1% Alは、上記のSiと同様に、製鋼過程で脱酸剤として
必要な元素であるが、その含有量が0.001%未満で
は所望の脱酸効果が得られない。逆に、その含有量が
0.1%を超えると、非金属介在物が多くなって耐食性
が劣化する。よって、Al含有量は、0.001〜0.
1%とした。
【0033】N:0.05%以下 Nは、鋼中に不可避的に混入する不純物で、強度を高め
て硫化物応力腐食割れ感受性を高める元素であり、その
含有量が0.05%を超えると、強度が上昇しすぎて耐
硫化物応力腐食割れ性が著しく劣化する。よって、N含
有量は、0.05%以下とした。なお、好ましい上限は
0.02%、より好ましい上限は0.015%である。
【0034】V:0.2%以下 Vは、主としてCr源から混入して鋼中に不可避的に混
入する不純物で、工業的にその含有量を例えば0.01
%以下にするのは極めて難しい元素である。そして、C
含有量を低減した本発明にかかわるマルテンサイト系ス
テンレス鋼においては、微量のVが含有されると、焼戻
し後の強度(硬度)が著しく高くなる。
【0035】図1は、その一例を示す図であり、C含有
量の種々異なる13%Cr−5%Ni−2%Mo−残部
実質的にFeからなり、V含有量が0.1%と0.03
%の2種類の鋼を対象に、850℃に30分間加熱保持
後水冷する焼入れ処理を施した後、600℃に30分間
加熱保持後空冷する焼戻し処理した場合の硬度挙動を示
してある。
【0036】この図から明らかなように、C含有量が
0.05%以下、特に0.01〜0.03%の範囲で
は、V含有量が多くなるにつれて、焼戻し処理後の硬度
(強度)が著しく高くなることがわかる。これは、鋼中
の固溶Cが焼戻し処理時にCr炭化物およびV炭化物、
特にV炭化物となって微細析出するためである。
【0037】このため、本発明においては、鋼中の固溶
Cが焼戻し処理時にCr炭化物およびV炭化物、特にV
炭化物となって微細析出しないように、強度上昇に寄与
しない炭化物のTiCに固定すべく、次に述べるTiを
必須成分として添加含有させる。しかし、V含有量が
0.2%を超えると、下記量のTiを添加含有させても
焼戻し処理後の強度(硬度)上昇を防ぐことができな
い。よって、V含有量は、0.2%以下とした。なお、
好ましい上限は0.15%、より好ましい上限は0.1
%である。
【0038】Ti:4×%C以上、0.75−〔0.0
1/(%C+0.015)〕以下 Tiは、上述したように、鋼中に固溶しているCをTi
Cとして固定し、焼戻し処理後の強度(硬度)上昇を防
ぐために必須成分として添加含有させる。しかし、その
含有量が4×%C未満では、上記の効果が得られない。
逆に、その含有量が「0.75−〔0.01/(%C+
0.015)〕」を超えると、金属間化合物(TiN
i)が析出し、かえって焼戻し処理後の強度(硬度)上
昇を招く。よって、Ti含有量は、4×%C以上、
「0.75−〔0.01/(%C+0.015)〕」以
下とした。
【0039】O(酸素):0.005%以下 O(酸素)は、上記のSと同様に、鋼中に不可避的に含
まれる不純物元素であり、熱間加工性を向上させる観点
からは少なければ少ないほどよい。しかし、過度の低減
は、脱酸コストが嵩み経済的でない。また、その含有量
が0.005%以下であれば所望の熱間加工性が得られ
る。よって、O含有量は、0.005%以下とした。な
お、好ましい上限は0.003%、より好ましい上限は
0.002%である。
【0040】本発明のマルテンサイト系ステンレス鋼
は、上記の成分組成からなるが、さらに下記および
式を満たすものでなければならない。
【0041】 30×%Cr+36×%Mo+14×%Si−(28×
%Ni+13×%Mn)≦455…… 21×%Cr+25×%Mo+17×%Si+35×%
Ni+17×%Mn≦731………… すなわち、本発明鋼は、油井用であるので、安定した所
望の強度と優れた耐食性、特に所望の強度を確保するう
えでマルテンサイト単相鋼であることが望ましい。その
ためには、通常のオーステナイト化温度である800℃
〜1100℃でオーステナイト単相となり、冷却すれば
マルテンサイトに変態することが必要である。また、室
温にまで冷却した場合、残留オーステナイトを含まず、
マルテンサイト単相になることが必要である。
【0042】しかし、上記式を満たさないと、上記8
00℃〜1100℃の温度域でδフェライトが生成し、
オーステナイト単相にならない。また、上記式を満た
さないと、室温まで冷却した場合に残留オーステナイト
が生成し、マルテンサイト単相にならない。よって、本
発明では、上記および式を満たすように成分調整す
ることとした。
【0043】なお、場合によっては炭化物など他の相が
生成することもあるが、本発明鋼は上記および式を
満たすものであれば、何ら問題ない。
【0044】本発明鋼は、以上に述べた成分組成からな
るが、必要により下記の成分を添加含有させることがで
きる。
【0045】Cu:0〜5% Cuは、必ずしも添加含有させる必要はないが、炭酸ガ
スと硫化水素の両方を含む酸性環境中での耐食性を向上
させるのに有効な元素ある。したがって、その効果を得
たい場合には添加含有させることができる。しかし、そ
の含有量が0.05%未満では上記の効果が得られな
い。一方、5%を超えて添加含有させてもその効果は飽
和し、熱間加工性が著しく劣化する。よって、添加含有
させる場合のCu含有量は、0.05〜5%とする必要
がある。なお、添加含有させる場合の好ましい範囲は
0.1〜4%、より好ましい範囲は0.2〜3%であ
る。
【0046】また、Cu添加による熱間加工性の悪化
は、次に述べる目的で添加含有させることのできるNi
を、下記の2〜8%の範囲内で「0.64×%Cu−
0.15」%以上複合添加含有させることによって防ぐ
ことができる。
【0047】Ni:0〜8% Niは、必ずしも添加含有させる必要はないが、鋼の強
度と耐食性を向上させ、かつマルテンサイト単相とする
のに有効な元素である。したがって、それらの効果を得
たい場合には添加含有させることができる。しかし、そ
の含有量が2%未満では上記の効果が得られない。一
方、8%を超えて添加含有させると、残留オーステナイ
トが多くなって耐食性が低下する。よって、添加含有さ
せる場合のNi含有量は、2〜8%とする必要がある。
なお、添加含有させる場合の好ましい範囲は2.5〜
7.5%、より好ましい範囲は3〜7%である。
【0048】ただし、Niは、Cu添加時における熱間
加工性の悪化を防ぐためには、前述したように、上記の
2〜8%の範囲内で「0.64×%Cu−0.15」%
以上を必須成分として添加含有させる必要がある。
【0049】Ca、Mg、LaおよびCe:それぞれ
0.001〜0.05% Ca、Mg、LaおよびCeは、必ずしも添加含有させ
る必要はないが、いずれの元素も鋼の熱間加工性を向上
させるのに用いて有効である。したがって、その効果を
得たい場合には、これらのうちから1種または2種以上
を選んで添加含有させることができる。しかし、いずれ
の元素もその含有量が0.001%未満では上記の効果
が得られない。一方、0.05%を超えて添加含有させ
ると、粗大な酸化物が生成し、かえって耐食性が低下す
る。よって、添加含有させる場合のCa、Mg、Laお
よびCeの含有量は、いずれも0.001〜0.05%
とする必要がある。なお、いずれの元素も添加含有させ
る場合の好ましい範囲は、0.005〜0.04%、よ
り好ましい範囲は0.007〜0.035%である。
【0050】以上に説明したように、本発明のマルテン
サイト系ステンレス鋼は、V、SおよびO(酸素)の含
有量を低く規制するともに、所定量のTiを添加含有さ
せ、かつCu添加時には所定量のNiを添加含有させる
ことにより、焼戻し後強度の低位安定化と耐食性および
熱間加工性の向上を図ったことに特徴がある。
【0051】このマルテンサイト系ステンレス鋼は、通
常の工業的なステンレス鋼の製造方法によって製造する
ことができる。精錬については、アーク式電気炉による
溶解法、AOD(アルゴン−酸素脱酸)法、VOD(真
空酸素脱炭)法などが適している。例えば、Sの低減
(脱硫)については、脱炭の前工程で脱硫処理を行うの
が効果的である。また、Oの低減(脱酸)については、
所定の化学組成に成分調整された溶鋼に対して真空処理
を施し、これらの元素の成分調整精度を向上させる方法
が有効である。
【0052】成分調整された溶鋼は、連続鋳造法または
造塊法により、スラブ(丸ビッレトを含む)またはイン
ゴットに鋳造する。また、得られた丸ビッレトを除くス
ラブまたはインゴットは、分塊圧延などの熱間圧延工程
を経て丸鋼片あるいは熱延鋼板に成形し、通常の継目無
鋼管製造プロセスあるいは電縫溶接管製造プロセスに供
して所定寸法の継目無管あるいは電縫管に成形するが、
この時その製造工程に何ら特別な手段を加える必要はな
い。
【0053】また、成形後の継目無管あるいは電縫管
は、例えば、800〜950℃の温度範囲に30分〜2
時間加熱保持後水冷または空冷する焼入れ処理を施し、
次いで550〜750℃の温度範囲に30分〜2時間加
熱保持後炉冷または空冷する焼戻し処理を施すことによ
って所望の強度を有する油井管とすることができる。
【0054】
【実施例】表1に示す化学成分を有する15種類の鋼を
溶製した。そして、これらの鋼の焼戻し処理後の強度、
耐硫化物応力腐食割れ性(耐SSC性)および熱間加工
性を、それぞれ次に述べる方法に従って調べた。
【0055】<熱間加工性>1200℃に加熱後の一辺
50mmの角インゴットに熱間鍛造と熱間圧延を施して
厚さ8mmの板材とし、その表面の脱スケールを行った
後、ダイチェック法により表面欠陥の有無を調査した。
そして、表面欠陥がなかったものを「○」、表面欠陥が
あったものを「×」として評価し、熱間加工性(製管
性)の指標とした。
【0056】<耐硫化物応力腐食割れ性>850℃に3
0分間加熱保持後水冷する焼入れ処理に引き続いて、6
00℃に30分間加熱保持後空冷する焼戻し処理を施し
た上記各供試鋼の板材から、図2に示すように、長さ方
向の中央部にUノッチ2を形成した厚さ2mm、幅10
mm、長さ75mmの試験片1を2個づつ採取した。採
取した試験片1は、図3(a)に示す曲げ付与治具3を
用いて所定の曲げ量yを付与した状態で、温度が25℃
の「5%NaCl+0.003atmH2 S+30at
mCO2 」の腐食水溶液中に336時間浸漬した。しか
る後、試験片1を取り出し、その外観観察と試験片断面
を光学顕微鏡観察して割れの有無を調査した。そして、
取り出した試験片1に割れが認められなかったものを
「○」、割れが認められたものを「×」として評価し
た。
【0057】なお、各試験片1には、図3(b)に示す
各部の寸法に基づき、下式で表される曲げ応力σが、各
供試鋼の0.2%耐力になるように曲げ量yを付与し
た。
【0058】σ=Ety〔(2l1 2/3)+(l1 ×l
2 )+(l2 2/4)〕-1 ここで、Eはヤング率、y:曲げ量、l1 およびl2
曲げ支点間距離、tは試験片厚さである。
【0059】<焼戻し処理後の強度>上記耐硫化物応力
腐食割れ性の試験片を採取したのと同様の各供試鋼板材
から、硬度試験片を採取した。そして、ロックウエル硬
度計を用い、Cスケール硬度(HRC)を測定すること
で、その強度を調べた。
【0060】これらの結果を、表1に併記して示した。
【0061】
【表1】
【0062】表1に示す結果から明らかなように、本発
明例の鋼(No. 1〜10)は、いずれも熱間鍛造および
熱間圧延後の板材表面に疵の発生が認められず、熱間加
工性(製管性)が良好であった。また、焼戻し処理後の
硬度HRCは、23.1〜25.3と低位に安定してお
り、硫化物応力腐食割れも発生しておらず耐硫化物応力
腐食割れ性に優れていた。
【0063】これに対し、比較例のうち、No. 11の鋼
は、Tiの含有量が多すぎるためにTiNあるいは炭化
物が析出し、焼戻し後の硬度HRCが29.8と著しく
上昇した結果、耐硫化物応力腐食割れ性も不芳であっ
た。また、比較例のNo. 12〜14の鋼は、焼戻し処理
後の硬度と耐硫化物応力腐食割れ性は良好であるが、
S、OおよびCuのいずれかの含有量が多すぎるため
に、熱間鍛造および熱間圧延後の板材表面に疵の発生が
認められ、いずれも熱間加工性が悪かった。さらに、比
較例のNo. 15の鋼は、各成分は本発明の範囲内である
が、上記式を満たすように成分調整されていないため
にマルテンサイト単相とならず、耐硫化物応力腐食割れ
性に優れるものの、油井用材料としての強度を有してい
ないのみならず、熱間加工性も不芳であった。
【0064】
【発明の効果】以上実施例からも明かなとおり、本発明
鋼は塩化物イオンと炭酸ガスと硫化水素ガスが存在する
苛酷な環境中でも満足する耐食性を備え、油井用材料と
して使用するのに十分な強度が安定して得られ、かつ熱
間加工性が良好であることから工業的にも有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】V含有量が焼戻し処理後の強度(硬度)に及ぼ
す影響の一例を示す図である。
【図2】実施例の耐硫化物応力腐食割れ性試験に用いた
試験片の形状と寸法を示す図で、同図(a)は正面図、
同図(b)は平面図、同図(c)はノッチ部の拡大正面
図である。
【図3】実施例の耐硫化物応力腐食割れ性試験に用いた
曲げ付与治具と試験片の関係を示す図で、同図(a)は
曲げ付与前の状態を示す正面図、同図(b)は曲げ付与
後の試験片形状と曲げ支点との関係を示す正面図であ
る。
【符号の説明】
1:試験片、 2:Uノッチ、 3:曲げ付与治具。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.05%以下、Si:1
    %以下、Mn:5%以下、P:0.04%以下、S:
    0.0008%以下、N:0.05%以下、O:0.0
    05%以下、V:0.2%以下、Cr:7〜14%、M
    o:0.5〜7%、Al:0.001〜0.1%、N
    i:0〜8%、Cu:0〜5%、Ti:4×%C〜
    {0.75−〔0.01/(%C+0.015)〕}を
    含有し、かつ下記〜式を満たし、残部Feおよび不
    可避的不純物からなることを特徴とする安定した強度が
    得られる耐硫化物応力腐食割れ性および熱間加工性に優
    れた油井用マルテンサイト系ステンレス鋼。 30×%Cr+36×%Mo+14×%Si−(28×
    %Ni+13×%Mn)≦455…… 21×%Cr+25×%Mo+17×%Si+35×%
    Ni+17×%Mn≦731………… Ni≧(0.64×%Cu−0.15)……………
  2. 【請求項2】残部Feの一部に代えて、重量%で、C
    a:0.001〜0.05%、Mg:0.001〜0.
    05%、La:0.001〜0.05%およびCe:
    0.001〜0.05%のうちの1種または2種以上を
    含有することを特徴とする請求項1に記載の安定した強
    度が得られる耐硫化物応力腐食割れ性および熱間加工性
    に優れた油井用マルテンサイト系ステンレス鋼。
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