JPH10125608A - 化合物半導体エピタキシャルウエハ - Google Patents

化合物半導体エピタキシャルウエハ

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JPH10125608A
JPH10125608A JP28252496A JP28252496A JPH10125608A JP H10125608 A JPH10125608 A JP H10125608A JP 28252496 A JP28252496 A JP 28252496A JP 28252496 A JP28252496 A JP 28252496A JP H10125608 A JPH10125608 A JP H10125608A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 バッファ層上に成長したIII 族窒化物層から
構成される化合物半導体エピタキシャルウエハにあっ
て、特に、素子特性の均一化を帰結する結晶性及び表面
状態に優れるIII 族窒化物成長層を提供する。 【解決手段】 結晶基板表面上に積層したIII 族窒化物
半導体からなるバッファ層と、該バッファ層上に積層し
たIII 族窒化物半導体からなるエピタキシャル層とから
構成される化合物半導体エピタキシャルウエハに於い
て、該バッファ層が単結晶粒の集合体からなり、前記バ
ッファ層を構成する単結晶粒は、as−grown状態
で相互に接合する側面を迂曲として合着し、かつ頂部の
天板部を略平担若しくは曲面状としてなるものとする。
また、該単結晶粒が、単結晶面の積層方向(配向方向)
が互いになす角度を30度以内として接合してなるもの
とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、III 族窒化物半導
体からなるエピタキシャル層を有する化合物半導体エピ
タキシャルウエハに係わり、特に、III 族窒化物半導体
の単結晶粒の集合体からなるバッファ層を具備する化合
物半導体エピタキシャルウエハに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、青色LEDに用いられるIII 族窒
化物半導体のエピタキシャル層を有する化合物半導体エ
ピタキシャルウエハにおいては、サファイア(α−Al
23単結晶)基板上にAlX GaY In1-X-Y N(但
し、0≦X+Y≦1、0≦X≦1、0≦Y≦l)からな
るエピタキシャル層を形成するに際し、サファイア基板
上にAla Ga1-a N(0≦a≦1)からなるバッファ
層(緩衝層)を設けるのが一般的であった(特開平2−
229476号公報参照)。基板とするサファイアとII
I 族窒化物半導体のエピタキシャル層とは格子不整合の
関係にあるため(「日本結晶成長学会誌」、Vol.1
(1988)、334頁参照)、該バッファ層は、基
板とエピタキシャル層との格子不整合を緩和することを
主たる目的として設けられるものである。換言すれば、
該バッファ層は、サファイア基板上に格子不整合系のII
I 族窒化物半導体エピタキシャル層を形成するにあたっ
て、格子不整合に起因するエピタキシャル層の表面状態
或いは結晶品質の劣化を低減する等、結晶学的に重要な
役目を担うものとなっている。
【0003】従来から、バッファ層が具備すべき結晶形
態に関しては「非晶質」である必要性が提示されてきた
(「日本結晶成長学会誌」、Vol.15、No.3&
4、74〜82頁)。さらに「非晶質」膜と云えども、
その内部に例えば単結晶粒が混在している膜が好ましい
バッファ層であるとされてきた(特開平2−22947
6号公報参照)。図1は従来より好ましいとされてきた
構成を有するバッファ層の断面模式図の一例である。従
来のバッファ層(102)の構成主体は、あくまでも非
晶質体(104)であり、単結晶粒(105)はその中
に疎らに散在しているものである。従来の非晶質からな
るバッファ層は、基板表面が単結晶粒で充分に被覆され
る程、多量の単結晶粒が非晶質膜内に混在しているもの
ではなかった。
【0004】非晶質バッファ層は、AlX GaY In
1-X-Y N(0≦X+Y≦1、0≦X≦1、0≦Y≦l)
からなる活性層等の素子特性の顕現を担う機能層の形成
が概ね1000℃程度或いはそれ以上の高温で行われる
のに対し、それよりも低温で成膜されている。例えば、
非晶質からなるバッファ層を成長させるための温度とし
て、従来から200℃若しくは400℃から900℃
(特開平4−297023号、特開平2−229476
号及び特開平7−3121350号公報参照)或いは4
00℃から800℃(特開平6−151962号公報参
照)の範囲が開示されている。最近では、もっぱら50
0℃前後という従来から開示されている温度範囲に於い
て比較的低い温度がバッファ層の成長温度として採用さ
れている(アプライド フィジクス レターズ(App
l.Phys.Lett.,68、No.20(199
6)、2867〜2869頁)。また、従来の非晶質バ
ッファ層の層厚は概ね、10nm〜50nmと薄く設定
されている(特開平2−229476号公報参照)。
【0005】上記の如く構成される従来の非晶質のバッ
ファ層とサファイア等の結晶基板との界面に於ける接合
状況を見ると、結晶基板(図1の(101)参照)の表
面(図1の(103)参照)は、大部分が非晶質体(図
1の(104)参照)で被覆されているものである。こ
の様に基板表面が非晶質体被膜により理想的に充分に被
覆されていればこそ、その被膜(バッファ層)が下地層
となり、高温で成長される成長層の2次元的な(平面的
な)成長が促進されると考えられてきた。低温バッファ
層上に高温でIII 族窒化物半導体層を成膜する場合に従
来より想像されている成長の模様を図2に模式的に示
す。非晶質膜内に散在する単結晶粒(105)を成長核
として発生した成長島(106)は、基板(101)を
覆う非晶質被膜を下地として2次元的(平面的に)に成
長する。成長が進行するに従い、上部がほぼ平坦な成長
島(106)は隣接する成長島(106)と相互に接合
して、やがて層状となる。図3は基板(101)を被覆
する非晶質膜が高温での成膜時に於いてもくまなく残存
し、下地層として作用することにより成長島相互の接合
が進行して、表面が平坦な層となる理想的な過程を模式
的に示したものである。
【0006】ところが実際は、非晶質のバッファ層上へ
高温でIII 族窒化物半導体層を成膜するために、非晶質
バッファ層を高温の成膜環境下に曝した場合に、バッフ
ァ層を構成する非晶質体は昇華等により消失してしま
う。高温成膜環境への移行する際のバッファ層の状態の
変化を図4に模式的に示す。非晶質体が昇華等により消
失した領域(108)では結晶基板(101)の表面が
露呈する。僅かに残存した非晶質体(104)の一部は
結晶化した粒体(109)となる場合もある。単結晶粒
(105)の多くはそのまま残存して成長核を提供す
る。非晶質からなるバッファ層の消失により基板表面が
露呈した領域が存在する場合の、高温での成膜時に於け
る成長島の発生、成長の模様を図5を基に説明する。単
結晶粒(105)を核として成長する成長島(106)
は、結晶基板が露呈している領域(108)では、単結
晶粒が存在せず、成長核がないため成長島の発達度合い
がそもそも小さい。この領域(108)ではまた、非晶
質体が存在しないため、成長島の横方向への2次元的な
成長が起こり難く、成長島は相互に接続して連続膜をも
たらすに充分な程、横方向には拡張しない。むしろ、成
長島(106)は縦(鉛直)方向に柱状に成長する傾向
を示す。即ち、縦方向の成長速度が横方向に比べて速く
なり、柱状結晶の成長が促進される。縦方向とは、サフ
ァイアC面上のGaNからなる成長島の場合、GaNの
結晶格子のc軸方向であり、横方向とはその結晶格子の
a軸方向である。一方、たまたま都合良く下地層が残存
した領域では、単結晶粒(105)を核として発生した
成長島(106)は2次元的な成長の様態を示して横方
向に成長する。即ち、横方向の成長速度が縦方向に比べ
て大きくなる。横方向の成長速度が大であると成長島の
底面(基板との接触面)は拡張され、相互に接合する機
会が増すため、都合良くバッファ層が残存した領域で
は、表面が平坦で連続性のある層が形成され易い。
【0007】上記の様に非晶質バッファ層による結晶基
板表面の被覆の有無は、バッファ層上に成長させるIII
族窒化物半導体層の成長様式の不均等化をもたらす。こ
の不均等な成長様式はIII 族窒化物半導体層の表面状態
の悪化を帰結するのみでなく、所望する電気的特性の獲
得をも阻害する。図6は非晶質からなるバッファ層上に
高温で成長したIII 族窒化物半導体層からなるエピタキ
シャル層の断面であって、特にエピタキシャル層の表面
にピット(細孔)の存在が認められる領域の断面模式図
である。このエピタキシャル層(110)はn形のバッ
ファ層(102)とp形の第一のエピタキシャル層(1
11)とn形の第二のエピタキシャル層(112)から
構成され、第一と第二のエピタキシャル層により構成さ
れるpn接合を含むものである。ピット(107)は、
結晶基板(101)上に堆積したバッファ層(102)
を構成する非晶質体が消失した領域(108)にほぼ対
応して発生する。同領域(108)では、横方向成長が
緩慢となり上記の様に柱状の結晶からなる成長島が発生
する。柱状結晶は互いに孤立して散在するため相互に合
着する機会が小さく、柱状結晶間は空隙(間隙)として
残存する。この空隙が成長層表面にピットを発生させる
原因と考えられる。このようなエピタキシャルウエハに
おいては、ピット(107)部で、バッファ層(10
2)と第二のエピタキシャル層(112)とが構造的に
も電気的にも接合される不具合な事態を招く。第二のエ
ピタキシャル層(112)とバッファ層(102)は同
一の伝導形を有する層であるため、両層間で電気的な導
通が発生する。非晶質被膜の消失が都合良く免れた領域
にあっては、第一及び第二のエピタキシャル層とで所望
するpn接合が形成され得る。しかし、基板の大部分の
面積を占める非晶質被膜が消失した領域では、電気的な
短絡により正常なpn接合がもたらされない。即ち、不
均一な接合特性がもたらされる。図7はピットを多く含
むエピタキシャル層から作製されたpn接合型III 族窒
化物半導体発光ダイオード(LED)の電流−電圧特性
の一例である。ピットが密集した領域で上記の様な電気
的な短絡をもたらす構成が形成されているため、整流性
を示す正常な電流−電圧特性が得られていない。この様
に、非晶質体を主体として構成される従来のバッファ層
にあっては、非晶質バッファ層の消失により結晶学的に
も電気的にも悪影響を及ぼすことが問題となっていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来の非晶質からなる
バッファ層を備えた化合物半導体エピタキシャルウエハ
に付随する問題点は、高温環境下に於けるバッファ層の
構成主体である非晶質体の消失に起因する、被堆積層
(基板)の表面の露呈にあった。従って、高温での成膜
環境下に於いても容易には消失しない構成要素を主体と
し、被堆積層の表面を充分に被覆できるバッファ層を形
成することにより、従来の非晶質バッファ層に関する問
題点を解決できると考慮される。非晶質体が容易に消失
するのはそれを構成する原子間の結合が軟弱であるから
である。従ってバッファ層は、高温環境下で受容する熱
エネルギーを勘案しても尚且、結合の切断が容易には生
じない強い結合力を保有する構成形態を具備することが
要求される。非晶質に比べ、より大きな構成原子間の結
合力を内包する結晶形態の一つには単結晶があることは
周知である。しかし、単結晶からなるIII族窒化物半導
体バッファ層は成長温度を900℃を越える温度とする
ことにより初めて得られることが知られてはいるもの
の、単結晶からなるバッファ(緩衝)層は、従来から良
好な表面モフォロジーを与えない等の理由からバッファ
層として不適であるとされてきた(特開平4−2970
23号及び特開平7−312350号公報参照)。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、基板表面を
被覆するバッファ層の材料として、単結晶の熱的耐性の
優位性に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、従来単結晶が得
られないとされた成長温度条件下でも、他の成長条件を
精密に調整さえすれば単結晶粒が容易に形成でき、且つ
その単結晶粒の形状並びに集合形態を規定すれば、従来
の非晶質からなるバッファ層に付随する欠点を払拭でき
る効用に優れた単結晶粒の集合体からなるバッファ層を
形成することができることを見出し本発明に至ったもの
である。即ち本発明は、結晶基板表面上に積層したIII
族窒化物半導体からなるバッファ層と、該バッファ層上
に積層したIII 族窒化物半導体からなるエピタキシャル
層とから構成される化合物半導体エピタキシャルウエハ
に於いて、該バッファ層が単結晶粒の集合体からなり、
前記バッファ層を構成する単結晶粒は、as−grow
n状態で相互に接合する側面を迂曲として合着し、かつ
頂部の天板部を略平担若しくは曲面状としてなることを
特徴とするものである。また、本発明は特に、上記のバ
ッファ層を構成する単結晶粒が、as−grown状態
で相互の積層方位の角度差を30度以内とすることを特
徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】まず、本発明に係わるバッファ層
を構成する材料を説明する。バッファ層は例えば、アル
ミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(I
n)若しくはホウ素(B)等の少なくとも一つのIII 族
元素と窒素とを含むIII 族窒化物半導体から構成する。
このIII 族窒化物半導体の例には、窒化ガリウム(Ga
N)、窒化アルミニウム(AlN)や窒化インジウム
(InN)等の2元化合物がある。また、窒化アルミニ
ウム・ガリウム混晶(Alx Ga1-x N:0<x<1
(以下、同じ))、窒化ガリウム・インジウム混晶(G
x In1- x N)、窒化アルミニウム・インジウム混晶
(Alx In1-x N)等の3元混晶や窒化アルミニウム
・ガリウム・インジウム(Ala Gab Inc N:0≦
a、b、c≦1、a+b+c=1)等の4元混晶などの
多元混晶がある。ホウ素を含むBd Ale Gaf Ing
N(0<d≦1、0≦e、f、g≦1、d+e+f+g
=1)からもバッファ層を構成できる。更に、窒素元素
以外のヒ素(元素記号:As)やリン(元素記号:P)
等の第V族元素を含むIII 族窒化物半導体からも本発明
に係わる低温バッファ層を構成することができる。この
複数の第V族元素を含むIII 族窒化物半導体には、化学
式GaNAs、GaNP、AlNAs、AlNP、In
NAs、InNP等の(III )・Nm ・V1-m ((III
)は第III 族元素を表す。Vは窒素以外の第V族元素
を表し、0<m<1である。)で総括される一つの第II
I 族元素と二つの第V族元素を含む3元系結晶がある。
また、AlGaNAs、AlGaNP、GaInNA
s、GaInNP、BGaNAs、BGaNP、BAl
NAs、BAlNP、BInNAs、BInNP、Al
InNAs、AlInNP、AlGaInNAs、Al
GaInNP、GaNPAs、AlNPAs、BGaN
AsP、InNPAs、AlGaInNPAs等の複数
の第III 族元素と窒素とヒ素とリン等の複数の第V族元
素からなる4元或いは多元結晶からもバッファ層を構成
できる。
【0011】本発明では、上記のIII 族窒化物半導体材
料からなる単結晶粒の集合体をもってバッファ層を構成
する。単結晶粒からバッファ層を構成する理由は、結晶
を構成する原子間相互の結合力が非晶質のそれに比較し
て強力であることによる。この結合力の強さにより前記
の如く高温でのバッファ層の消失が防止できる。即ち、
本発明では、バッファ層の構成要素を従来の非晶質とは
異にする単結晶粒とすることをもってバッファ層の消失
による基板表面の露呈を防止するものである。
【0012】本発明では、バッファ層の構成要素である
単結晶粒を、従来バッファ層の成長に供される温度範囲
の中から特に限定された温度範囲である約600℃から
約750℃に於いて、成長条件の精密な制御によりas
−grown状態で得るものである。その様にして形成
された単結晶粒の集合体から構成されるバッファ層は高
温下でも殆ど消失せず、従来の非晶質バッファ層に対し
て優位性がある。これに加え、バッファ層上に堆積する
III 族窒化物半導体層の表面モフォロジーの観点から優
劣を判断すれば、従来の高温で得られる単結晶バッファ
層上にエピタキシャル層を形成した場合と比較して良好
な表面モフォロジーが与えられる。この表面モフォロジ
ー上の差異を与える原因については断定は出来ないが、
単結晶粒を構成している単結晶格子の配列の相違にある
ものと推定される。例えば、サファイア基板上に基板と
は格子不整合の窒化ガリウム(GaN)からなるバッフ
ァ層を形成する場合を例にする。比較的低温でのバッフ
ァ層の形成では、pseudophorhismの概念
から発達したFrank−van derMerveの
理論(橋口 隆吉、近角 聡信著、「薄膜・表面現象」
(朝倉書店、昭和47年12月15日4版発行)、13
頁)に教示される様に、単結晶格子間の間隔が基板とバ
ッファ層との界面ではサファイアとGaNの中間的な値
となり、より上方ではGaNの格子間隔に向けて緩やか
に変化してバッファ層の表面側ではGaNの格子間隔に
復している可能性がある。一方、比較的高温での成膜で
は、例え基板との格子不整合性が存在してもガリウム
(Ga)原子或いは窒素(N)原子が受容する熱エネル
ギーが大きいため結晶基板との界面に於いても、成膜の
初期段階からGaN本来の格子間隔をもって成膜される
可能性がある。この様なGaN本来の格子間隔に近い単
結晶バッファ層はその上に例えばGaN層を設ける場合
に格子間隔がほぼ一致することから一見、下地層として
優位と思量されるが、格子間隔が基板との界面で急激に
変化するため内部に多量のミスフィット転位等を含むも
のとなっている。この多量の結晶欠陥の存在とその伝搬
により、高温で成膜した単結晶のバッファ層上に形成さ
れる成長層は表面モフォロジーに劣るものになるものと
推定される。
【0013】上記の如く、バッファ層を構成する単結晶
粒の形成条件によって、表面状態が影響を被る原因につ
いて、単結晶粒の形状や合着形態の微視的観点から検討
を加える。図8は本発明に係わる成長温度を620℃と
して(0001)サファイア面上に成長させた、as−
grown状態で既に単結晶となっている単結晶粒の集
合体から構成される窒化ガリウムバッファ層(102)
上に、温度1100℃でアンドープ窒化ガリウム層(1
17)を成長させてなるエピタキシャル層の断面TEM
像の模式図である。バッファ層(102)を構成する各
単結晶粒(113)の多くは水平幅が基板表面の鉛直方
向に変化する柱状の形態を採っている。単結晶粒(11
3)の側面(114)が曲面状に変化しているため、単
結晶粒(113)の合着接合面(114)は曲面状とな
っている場合が多い。各単結晶粒(113)の頂部の天
板部(115)の断面稜線は角錘状とはなっておらず、
むしろ緩やかに変化する曲面すなわち略平担若しくは曲
面状となっている。この様な構成からなるバッファ層上
に設けられた窒化ガリウム成長層の表面には、開口部を
略六角形状とし表面より深さ方向に断面積を減ずるピッ
ト(細孔)やピットとは逆に略六角形状の薄板が積み重
なり表面より突出している突起は殆ど観察されない。一
方、窒化ガリウムバッファ層を構成するために成長温度
を約800℃以上として形成した、従来の技術に係わる
単結晶粒の形状とそれらの合着状況は上記の場合とは顕
著に異なるものとなる。図9は成長温度を920℃とし
て成長させた、as−grown状態で既に単結晶とな
っている窒化ガリウムバッファ層(102)上に、11
00℃でアンドープ窒化ガリウム層(117)を成長さ
せてなるエピタキシャル層の断面TEM像の模式図であ
る。同図には、断面TEM像に黒色の線像として現れる
転位像も併せて掲示してある。同図においてバッファ層
(102)はやはり単結晶粒(113)から構成されて
いることに変わりはない。しかし、単結晶粒(113)
の断面形状は上記の場合と異なり、基板表面からの高さ
方向に断面積が殆ど変化せず、また、横幅も或る程度揃
った角柱である。しかも、外周囲側面(114)は基板
表面に対してほぼ垂直の鉛直上方に直線的に延在してい
る。このバッファ層から得られるRHEED像はスポッ
トパターンであって単結晶層であることを示した。即
ち、従来技術に於いてバッファ層としての作用を果たさ
ない単結晶のバッファ層が形成される900℃を越える
成長温度(特開平7−312350号公報参照)で得ら
れるバッファ層は、確かに単結晶層となっているが、そ
の層を構成する単結晶粒の形状は、600℃前後のより
低温で成長させたバッファ層のそれとは明らかに相違し
た。また、各単結晶粒(113)の頂部は角錘状とな
り、頂部上の表面の稜線も直線で構成されるものとなっ
た。この角錘状の突起の発生に対応するかの様に、バッ
ファ層上の成長層表面には六角形の板状結晶の重層から
なる突起が出現していた。更に、注目すべきは、単結晶
粒(113)の合着界面近傍から発生した転位(11
6)がほぼ直線状に発達してバッファ層(102)上の
窒化ガリウム成長層(117)の表面に至る迄、貫通し
ていることである。また、転位(116)が成長層(1
17)の表面に到達した領域にはピット(細孔)が形成
されているのが確認された。即ち、従来、単結晶からな
るバッファ層は表面状態に関して好ましい結果をもたら
さないとされるのは、この様に単結晶層を構成する各単
結晶柱が直線状の明瞭な外郭を有する角錘状の柱状結晶
である形状上の問題と、これらの単結晶柱の相互に合着
して出来る接合面を起源として鉛直上方方向に延びる転
位が多量に発生することに因るものである。従って本発
明では、例え単結晶粒からバッファ層を構成すると云え
ども、それを外郭が明瞭な角柱状(オベリスク状)の単
結晶粒の集合体から構成するのではなく、単結晶粒が相
互に側面を迂曲として合着し、上方へ直線的に伝搬する
転位の密度の低下を帰結する構成からなる単結晶粒から
バッファ層を構成するものである。
【0014】さらに本発明に係わる単結晶粒の集合体か
らなるバッファ層は、集合体を構成する各単結晶粒の相
互の配向性を規定している点に特徴がある。配向性とは
此処では、相互に合体して集合体を形成する各単結晶粒
の結晶の方位を云う。例えば、結晶基板表面上方への各
単結晶粒の配向性は単結晶粒を構成する単結晶の格子面
(結晶層)の配列方向から知ることができる。結晶層の
配列方位は、一例を挙げれば透過電子顕微鏡を利用する
結晶解析手法の一種である断面TEM(ransmi
ssion lectron icroscop
e)法による格子(面)像の観察から容易に計測するこ
とができる。図10は、アンモニア(NH3 )を窒素
(N)源とし、トリメチルガリウム((CH33
a)をガリウム(Ga)源として成長温度を600℃と
して成膜された膜厚を約5nmとする窒化ガリウム(G
aN)バッファ層の断面TEM像の模式図である。バッ
ファ層は垂直断面を紡錘状とする単結晶粒(113)を
主体として構成されるものとなっている。各紡錘状単結
晶粒(113)内部の格子像を観察すると結晶面(格子
面)が重層される方向(119)、所謂、結晶面の積層
方位がサファイア基板(101)の表面に対して必ずし
も統一されてないのが判る。即ち、格子面が重層してい
る方向(119)が本発明の云う配向方位を示すもので
あって、その配向方位の相違は格子面が重層している方
向(119)を示す格子面(格子像)の垂線が交差する
際の角度((121);以下、交差角度と称す)をもっ
て定量的に示される。この角度が0度であれば単結晶粒
間の配向方位は同一であるとする、即ち、一致するもの
と判断する。本発明の交差角度は、測定される交差角度
の平均値で表すものとする。図10に掲示される単結晶
粒の形状は、あくまでも一例であって、単結晶粒の形状
や密度などは、特に成長温度、原料の供給比並びにキャ
リア(搬送)ガスの流量によって変化するものである。
【0015】本発明では、上記の交差角度に規定を加え
この交差角度を30度以内とする。交差角度を30度以
内の狭い範囲に規定するのは、バッファ層上に成膜する
III 族窒化物半導体層の単結晶化を促進するためであ
る。単結晶化の程度は、例えば二結晶X線回折法(所
謂、略称XRC法)で測定される回折パターンの半値幅
の大小から知れる。図17に低温バッファ層を構成する
窒化ガリウム単結晶粒の交差角度と、同低温バッファ層
上に1100℃の高温で成長した窒化ガリウム成長層の
回折パターンの半値幅との関係を示す。回折パターンの
半値幅が大である程、バッファ層上に成膜するIII 族窒
化物半導体層の単結晶化の程度が低いことを表してい
る。図17に示す如く、低温バッファ層を構成する単結
晶粒間に特に大きな交差角度がなく、平均的な交差角度
がas−grown状態で30度以内であれば、高温で
成膜される成長層についてのXRC法で測定される回折
パターンの半値幅は小さく抑制される。すなわちこの場
合には一般に、III 族窒化物半導体層はその融点近傍の
高温で成膜されるため、多少の配向性の相違によって発
生する結晶粒界がバッファ層と高温成長層との極く界面
近傍の領域に残存する場合はあるものの、成長層の層厚
の増大と共に配向性の相違は全んど消滅して配向性は略
一様となると考慮される。これより、容易に単結晶の高
温成長層が得られるのである。一方、30度を境界とし
て、平均的な交差角度がそれ以上となると、X線回折パ
ターンの半値幅は急激に増大する。これは、低温バッフ
ァ層を構成する単結晶粒相互の交差角度が大であり、単
結晶粒を核として成長する成長層の配向が部分的に相互
に顕著に異なるため、例え高温での成膜に於いても粒界
の融合による配向性の画一化が成長層全般に及ぶに至ら
ないためと解釈される。交差角度が30度以内である領
域に交差角度が30度を越える領域が概ね、全領域の約
20〜約30%以上となると成長層全般を単結晶層とす
るのは難しい。
【0016】上記のIII 族窒化物半導体からなるバッフ
ァ層を、結晶基板上に直接堆積する際の成長方法に特に
制限はない。常圧或いは減圧方式のMOCVD成長法や
VPE成長法が利用できる。また、分子線エピタキシャ
ル(MBE)法や化学ビームエピタキシャル(CBE)
法等の成長方法も利用できる。MBE法には使用する原
料の形態に依って、ガスソース(略称:GS)MBEや
有機金属(MO)MBE等の方式が有るがいずれでも支
障はない。これらの成長方法に依りIII 族窒化物半導体
層を成長させるに当たって、例えばガリウム、アルミニ
ウム、インジウム或いは窒素原料についても制限はな
い。
【0017】本発明では、上記のIII 族窒化物半導体か
らなる単結晶粒を基板表面を被覆するが如く配置した単
結晶粒の集合体からバッファ層を構成する。上記した何
れの成長方式を利用するにしても、窒化ガリウム(Ga
N)を例にすれば、基板表面を被覆する単結晶粒からバ
ッファ層を構成するには、先ず成長温度を、概ね400
℃以上とする必要がある。得られる単結晶粒の形状は成
長温度にも依存して変化する。約400℃から約500
℃弱の比較的低い温度範囲では、単結晶粒の形状は、原
料の供給比(後述する所謂V/ III比)に依っても変化
するが、概して略球形或いは紡錘状などの外周が丸みを
帯びたものである。500℃を越えおおよそ600〜7
50℃の範囲では、単結晶粒は水平断面を六角形等の多
角形とし頂部の天板部を略平坦とする角柱状となる。更
に、高い成長温度である750℃を越えると角柱状の単
結晶粒はその天板部に角錘状の突起を冠したものとな
る。この角錘状の突起はバッファ層上に堆積する成長層
上に突起を発生する原因となるため、表面の平坦性に優
れる成長層を得るには好ましくはない。成長層の表面モ
フォロジーの良好さから判断すれば、単結晶粒の形状と
しては略球形、紡錘状若しくは天板部を平坦とする柱状
であることが望ましい。特に、頂部の天板部を略平坦と
する角柱状の単結晶粒は表面状態に優れる平滑な平坦な
成長層を与えるために好ましいものである。このことか
ら、窒化ガリウムバッファ層の成長温度としては約60
0℃〜750℃が好ましい。
【0018】上記の様に窒化ガリウムの場合、低温の約
400℃〜500℃弱の温度範囲に於いても単結晶粒は
形成される。比較的低温の範囲に於いて、V/ III比を
概ね103 以下に設定すれば略球状の、またおおよそ
1.5×104 以上とすれば紡錘状の単結晶粒が得られ
る。しかしながら、この様な比較的低温で得られるバッ
ファ層は被堆積物表面を被覆する単結晶層内に単結晶粒
が埋没した様な単結晶層と単結晶粒とが混在したものと
なる。一方、約600℃〜約750℃の好ましい成長温
度の範囲内では、結晶基板等の被堆積物の表面を形状の
揃った単結晶粒で均等に被覆できる。即ち、単一の構成
からなる単結晶粒の集合体からバッファ層を構成でき
る。単結晶粒は従来から成膜を促進する成長核として作
用することが知られている(「日本結晶成長学会誌」、
Vol.15(1988)、334頁)。従って、単一
の形態からなる単結晶粒からバッファ層を構成すること
は成長核の均質化がもたらされることを意味し、成長の
均質化が達成され得る。成長核の均質化は成長温度をこ
の範囲とすることでもたらされる一つの利点である。図
11は成長温度650℃でC面サファイア基板(10
1)上に成膜した本発明に係わる窒化ガリウムバッファ
層の断面TEM像の模式図である。同図に示される如
く、バッファ層(102)は頂部の天板部を略平坦と
し、水平断面形状を略六角形とする角柱状の単結晶粒
(113)の集合体から構成されている。角柱状単結晶
粒(113)の横幅はこの成長温度ではおおよそ、15
ナノメータ(nm)±5nmの範囲内にある。この横幅
は成長温度に主に依存して変化し、成長温度を高くする
程、拡大する傾向にある。横幅と共に角柱状単結晶粒の
高さも成長温度を高くするに伴い増す傾向にあるが、何
れにしても基板(被堆積物)の表面の全面は角柱状単結
晶粒で被覆されることに替わりはない。即ち、基板表面
は成長核となる単結晶粒の集合体で被覆された状態が創
出されている。
【0019】上記の好ましい成長温度範囲は窒化ガリウ
ムについてのものである。バッファ層を例えば、窒化ア
ルミニウム(AlN)から構成する場合、好ましい成長
温度は若干、高温側に移行し約650℃〜約800℃と
なる。アルミニウム(Al)とガリウムを構成要素とし
て含むIII 族窒化物混晶半導体からなるバッファ層を形
成する場合には、好ましい成長温度はアルミニウムの組
成比の増大とともに高温度側に移行する傾向がある。逆
にインジウム(In)を含有する、例えばインジウムが
添加(ドーピング)された窒化ガリウムをバッファ層と
する場合にあっては、インジウムのドーピング濃度が高
くなるに対応して最適な成長温度は低温側にずれる。一
例を挙げればインジウムのドーピング濃度が約1020
-3であれば、好ましい成長温度は概ね、500℃〜6
00℃である。
【0020】更に単結晶粒の配向性を一様とするには、
V/ III比を精密に制御して限定された条件に収納させ
る必要がある。V/ III比とは、成膜環境下(成長系)
に供給される第 III族元素原料に対する第V族元素の原
料の供給比である。窒化ガリウム(GaN)層の成長に
於いて、両構成元素の原料として一般的なアンモニア
(NH3 )とトリメチルガリウム(TMG:(CH3
3 Ga)等の有機ガリウム化合物などを例にすれば、V
/ III比は成長系に供給されるトリメチルガリウムの量
に対するアンモニアの量の比率で表される。例えば、C
面((0001)面)サファイアを基板として窒化ガリ
ウムからなるバッファ層を得る場合、V/ III比(アン
モニア/TMG供給比)を概ね、1.5×104 とすれ
ば各単結晶粒の配向性を画一とする効果がある。V/ I
II比を大とする、即ち、成長系内に於ける窒素原料の濃
度を第III 族元素の濃度に比し過多とすることによっ
て、配向性の画一化が達成される原因については未だ、
充分に解明は成されていない。しかし、窒素原料が過多
の条件下では、単結晶粒を成長核とした窒化ガリウムの
横(水平)方向への2次元的な成長が優勢となるのは事
実であって、この横方向の成長によって結局は等しい配
列方位をもった結晶面の占有する領域が拡張されると推
量される。即ち、横方向の成長が優勢となることによっ
て、同様の配向性を有する原子配列の様式が2次元的に
波及し拡張され、よって同一の配向性をもった格子面が
形成され易い成長環境が創出されるためと推定される。
【0021】上記の配向性は基板或いはエピタキシャル
成長層等の被堆積物表面に対して鉛直上方方向の配向性
についての規定であるが、本発明に係わるバッファ層を
構成する単結晶粒の集合体は、平面に於いても六角柱状
の単結晶粒が一様の方向性をもって配列されているのが
望ましい。端的に表現すれば、水平断面を六角形状とす
る六角柱状単結晶粒にあっては、該単結晶粒が六角柱の
一側面を互いに平行とする様に配列していれば平面的に
も配向が揃ったものとなる。単に一側面を平行として配
列しているのみではなく、加えて平行側面間の間隙を消
失させる如く側面が相互に密接に合着している状態とす
れば、この間隙の存在に起因する高温成長層表面のピッ
ト(細孔)の発生が抑制される。上記の好ましい成長条
件下では、形成される頂部の天板部を略平坦とする六角
柱状の単結晶粒は、六角形状単結晶柱の側面を平行か少
なくとも側面相互のなす角度を5度以内とする略平行に
配置され、且つ側面間の間隙が殆ど無く単結晶粒が相互
に密接に集合してなるバッファ層が得られる。
【0022】
【作用】結晶基板表面上に積層したIII 族窒化物半導体
からなるバッファ層と、該バッファ層上に積層したIII
族窒化物半導体からなるエピタキシャル層とから構成さ
れる化合物半導体エピタキシャルウエハに於いて、該バ
ッファ層が単結晶粒の集合体からなり、前記バッファ層
を構成する単結晶粒は、as−grown状態で相互に
接合する側面を迂曲として合着し、かつ頂部の天板部を
略平担若しくは曲面状としてなること、また特に、上記
のバッファ層を構成する単結晶粒が、as−grown
状態で相互の積層方位の角度差を30度以内とすること
により、バッファ層上に堆積される成長層の表面状態の
向上、結晶品質の劣化の低減がもたらされる。
【0023】
【実施例】
(実施例1)常圧MOCVD成長方法により、窒化ガリ
ウム(GaN)バッファ層を形成する場合を例にして、
先ず本発明に係わるバッファ層を説明する。基板には、
面方位を(0001)とするC面サファイアを使用し
た。基板は直径を50mmとする円形であって、厚さは
約330μmであった。この基板はCZ法で育成された
インゴットからスライスされ、ラッピング及び鏡面研磨
を経た後、水素気流中でアニール(焼き鈍し熱処理)さ
れたものである。同基板の表面を水酸化アンモニウム/
過酸化水素水/超純水からなる混合溶液で室温で約2分
間、撹拌しながら処理した。処理後、払水して更に基板
表面を赤外線ランプで加熱し乾燥させた。
【0024】然る後、該基板をステンレス鋼製の成長炉
内に配置されたセラミック加熱体を内蔵する抵抗加熱方
式の円形のヒータのほぼ中心部に載置した。載置後、反
応炉内を、吸着方式により精製された、露点を約マイナ
ス(−)90℃、ゲージ圧力を約1kg/cm2 とする
アルゴンガスにより、毎分約5リットルの流量をもって
約10分間換気(パージ:purge)した。その後、
反応炉へのアルゴンガスの供給を停止し、反応炉内を商
品名フォンブリンオイルを使用する一般の油回転式ベー
ン真空ポンプで排気した。真空度が約3×10-3Tor
r迄排気し、その真空度に約10分間保持した。然る
後、反応炉内にパラジウム−銀合金薄膜透過方式で精製
した後、更に深冷吸着方式で精製された露点を約マイナ
ス(−)95℃とする高純度水素ガスを流通して、反応
炉内の圧力を大気圧に復帰させた。大気圧に復帰させた
後、なお約10分間、毎分約3リットルの流量をもって
反応炉への水素の供給を継続した。
【0025】然る後、反応炉へ供給する水素の流量を毎
分3リットルから毎分9リットルに増量するに併せて、
上記のセラミック加熱体に通電してヒータ上の基板の温
度を室温近傍より先ず、第一段階として450℃に昇温
させ、基板を予備加熱した。450℃に約20分間保持
した後、第二段階として水素気流中で600℃の成長温
度に昇温した。同成長温度に到達する際の温度の過渡
(オーバーシュート)が納まってから20分間、基板を
同温度に保持しバッファ層の成長に備えた。
【0026】20分間経過後、内容積を約10リットル
とするアルミニウム合金製のボンベ内に収納された液化
アンモニアを気化させたアンモニア(NH3 )ガスを電
子式質量流量計(マスフローコントロラー:MFC)で
毎分1.00リットルの流量に精密に制御して反応炉に
供給した。窒素(N)供給原料としてのアンモニアガス
の反応炉への供給を開始してから1分間経過後、ガリウ
ム(Ga)供給原料としたトリメチルガリウム((CH
33 Ga)を反応炉に供給して、窒化ガリウム(Ga
N)バッファ層の成長を開始した。トリメチルガリウム
の反応炉への供給はステンレス鋼製バブラー(発泡)容
器に収納した同物質の前記の高純度水素ガスによるバブ
リング操作を介して実施した。このバブラー容器は電子
制御式の恒温槽によってマイナス(−)10℃±0.5
℃に保持した。同温度に維持された液状トリメチルガリ
ウムへの水素バブリングガスの流量はMFCにより毎分
3ミリリットル(ml)に精密に制御した。上記のアン
モニア流量並びにトリメチルガリウムのバブリング条件
からV/ III比を計算すると2×104 となる。この成
長温度並びにV/ III比下で20分間、原料ガスの供給
を継続して膜厚を約68nmとする窒化ガリウムバッフ
ァ層を形成した。
【0027】サファイア基板上の上記の条件をもって成
長させた窒化ガリウムバッファ層の断面構造を調査する
ために、同ウエハの細片をアルゴンイオンを利用した一
般的なイオンシニイング(ion−thinning)
法により薄層化した。薄層後、一般的な透過型電子顕微
鏡を用い電子ビーム加速電圧を200キロボルト(K
V)として、透過明視野法でバッファ層断面の微細構造
を観察した。この電子顕微鏡による観察は、本実施例1
に係わるバッファ層が垂直方向に横幅を変化させる単結
晶粒から構成されていることを示した。これらの単結晶
粒は間隙を発生させずに密集して相互に堅固に接合して
いると共に、サファイア基板の表面をほぼ全面に亘り被
覆する様に配置されていた。単結晶粒間の高さの差異は
単結晶粒の高さ、即ち、バッファ層の層厚(約68n
m)に対して大凡、3nm以下であった。また更に、電
子顕微鏡による微細構造観察時の倍率を上げ、単結晶粒
の格子像を撮像した。その結果、各単結晶粒の内部に観
察される格子像は基板表面の鉛直方向にほぼ平行に配列
されていた。また、隣接する単結晶粒は各単結晶粒を構
成する格子面がほぼ平行となる様に接合しているのが認
められた。ウエハの極く周縁部では隣接して接合する単
結晶粒間で格子像が完全に平行とはならず、交差角度に
して約1度から約2度の角度をもっているのが判別され
た。しかし、格子面の交差角度を約1度から約2度とし
て接合した単結晶粒の数量は概ね、5%にも満たないも
のであった。すなわち本実施例1に記載の条件下に依れ
ば、格子面がほぼ平行となる様に接合した単結晶粒の集
合体からなる、画一的な配向性を有する本発明に係わる
単結晶粒からなるバッファ層がas−grown状態で
提供できることが如実に提示された。
【0028】(実施例2)大気圧より約1000〜15
00ミリメートル水柱(mm H2 O)と僅かに減圧さ
れた成長環境を利用する減圧MOCVD成長方法によ
り、窒化アルミニウム・ガリウム(AlGaN)混晶か
らなるバッファ層を形成した。基板には、面方位(00
01)のC面サファイアを使用した。基板はリボン結晶
成長法で育成された長さ約25mm、幅約10mmの長
方形のもので、厚さは約350μmであった。この基板
はリボン状引き上げ結晶から切断され、ラッピング、端
面加工及び鏡面研磨を経た後、1000℃を越える温度
で水素気流中でアニール(焼き鈍し熱処理)されたもの
である。同基板の表面を約100℃でリン酸系溶液で約
2分間、撹拌しながら処理した。基板表面処理後、比抵
抗を約18メガオーム(MΩ)とする超純水で充分に水
洗した。払水した後、基板表面に赤外線を照射して加熱
して乾燥させた。
【0029】然る後、上記の手順に従い表面処理された
サファイア基板を半導体工業用の高純度石英製の角型成
長炉内に水平に配置された基板載置台(サセプター)の
ほぼ中心部に載置した。載置後、反応炉内を吸着方式に
より精製された露点を約マイナス(−)85℃とする窒
素(N2 )ガスにより換気(パージ:purge)し
た。すなわち、内面の接ガス部に鏡面研磨を施した清浄
な減圧弁を介してゲージ圧力が約0.7kg/cm2
調整された窒素ガスを毎分約3リットルの流量をもって
約5分間パージした。その後、反応炉への窒素パージガ
スの供給を停止し、反応炉内を一般のベーン式ロータリ
真空ポンプで排気した。真空度が約5×10-3トール
(Torr)に到達する迄排気し、その真空度に約15
分間保持した。然る後、反応炉を真空に排気するための
真空排気系への導通を遮断し、反応炉内に上記の窒素ガ
スを流入させ、反応炉を大気圧に復帰させた。暫時、窒
素ガスを反応炉内に流通させた後、反応炉内に流通する
ガスを窒素からパラジウム−銀合金薄膜透過方式で精製
した後、更に深冷吸着方式で精製された露点を約マイナ
ス(−)98℃とする高純度水素ガスに切り換えた。ガ
スを切り換えた後、更に約20分間、毎分約3リットル
の流量をもって反応炉への水素の供給を継続した。
【0030】然る後、反応炉へ供給する水素の流量を毎
分3リットルから毎分9リットルに増量するに併せて、
反応炉内の圧力を大気圧より約1000ミリメートル水
柱(mm H2 O)程、低い圧力とした。反応炉の減圧
度の調整は反応炉からブロワーによる反応炉内のガスを
吸引する機構を備えたアンモニア除害装置に通ずる配管
の中途に設けた開度調節弁(バタフライ弁)の開閉度を
調節することにより行った。この圧力調整は圧電(ピエ
ゾ)方式の精密圧力計から出力される感知圧力に応じた
電気信号を開度調節弁の開度を調節する弁体回転機構部
に入力することをもって自動的に制御した。次に、石英
反応管の周囲に配置した無酸素銅から構成した水冷式高
周波誘導コイルに高周波(最大周波数=13.56メガ
ヘルツ(MHz))電力を印加した。これより、載置台
上の基板の温度を室温近傍より先ず、第一段階として4
50℃に昇温させ、基板を予備加熱した。450℃に約
20分間保持した後、第二段階として水素気流中で68
0℃の成長温度に昇温した。450℃の基板予備加熱温
度から680℃に到達するには約5分を要した。同成長
温度に20分間、基板を保持しバッファ層の成長に備え
た。
【0031】20分間経過後、内容積を約10リットル
とするアルミニウム合金製のボンベ内に収納された液化
アンモニアを気化させたアンモニア(NH3 )ガスを電
子式質量流量計(マスフローコントロラー:MFC)で
毎分3.00リットルの流量に精密に制御して反応炉に
供給した。窒素(N)供給原料としてのアンモニアガス
の反応炉への供給を開始してから1分間経過後、ガリウ
ム(Ga)供給原料としたトリメチルガリウム((CH
33 Ga)及びアルミニウム(Al)供給原料とした
トリメチルアルミニウム((CH33 Al)を反応炉
に供給して、窒化アルミニウム・ガリウム(AlGa
N)混晶からなるバッファ層の成長を開始した。トリメ
チルガリウムの反応炉への供給はステンレス鋼製バブラ
ー(発泡)容器に収納した同物質の前記の高純度水素ガ
スによるバブリング操作を介して実施した。このバブラ
ー容器は電子制御式の恒温槽によって0℃±0.2℃に
保持した。同温度に維持された液状トリメチルガリウム
への水素バブリングガスの流量はMFCにより毎分8ミ
リリットル(ml)に精密に制御した。トリメチルガリ
ウムと同様にトリメチルアルミニウムもステンレス鋼製
バブラー容器に収納しておき、その容器は電子制御式恒
温槽により17℃の恒温に保持した。トリメチルアルミ
ニウムも高純度水素ガスによるバブリング操作を介して
成長系に添加した。水素バブリングガスの流量は毎分
3.6ミリリットルとした。このガリウム並びにアルミ
ニウム原料の供給比を一定に保持しながら、20分間に
亘り原料ガス等の成長系への供給を継続して、アルミニ
ウム組成比を6%とし、層厚を72ナノメータ(nm)
とするAl0.06Ga0.94N混晶からなるバッファ層を得
た。
【0032】同ウエハの細片をアルゴンイオンを利用し
た一般的なイオンシニイング(ion−thinnin
g)法により薄層化した後、一般的な透過型電子顕微鏡
により電子ビーム加速電圧を200キロボルト(KV)
として、透過明視野法でバッファ層断面の微細構造を観
察した。図12に断面の透過電子顕微鏡像を模式的に示
す。このバッファ層(102)は断面の横幅(122)
が基板表面からの上方の方向に変化する単結晶粒(11
3)から構成されていた。単結晶粒(113)の頂部の
天板部(115)は角錘状とはなっておらず、むしろな
だらかな曲面であって、このため、単結晶粒が密接に集
合してなるバッファ層の表面には角錘状の突起がなく、
滑らかな曲面状となっていた。また、各単結晶粒の側面
の外郭(稜線)は明瞭な直線ではなく曲面となっている
ため、単結晶粒の接合側面の輪郭は曲面状となった。更
に、単結晶粒(113)を構成する格子面の配向性を示
す格子面像(120)から各単結晶粒(113)の結晶
格子面は基板との界面(103)に互いにほぼ平行に配
列されていた。隣接する単結晶粒(113)の相互間に
於いても格子面像(120)はほぼ平行に配列している
のが認められた。単結晶粒相互間に於いて交差角度が約
1度を越えるのは希有であった。すなわち、本実施例2
に記載の条件下に依れば、格子面がほぼ平行となる様に
接合した単結晶粒の集合体からなる、画一的な配向性を
有する本発明に係わる窒化アルミニウム・ガリウム混晶
からなる単結晶粒からなるバッファ層がas−grow
n状態で提供できた。
【0033】(実施例3)常圧MOCVD成長方法によ
りインジウム(In)をドーピングした窒化ガリウム
(GaN)単結晶粒から構成されるバッファ層を形成し
た。基板として実施例1記載と同一の形状、面方位、厚
さ並びに熱処理を施したサファイアを使用した。同じく
実施例1に記載と同一の手順をもってインジウムドープ
窒化ガリウム単結晶粒からなるバッファ層を形成する準
備を施した。
【0034】その後、実施例1記載の窒化ガリウムバッ
ファ層の成長手順に準じて、窒化ガリウムバッファ層を
形成した。その際、実施例1記載の条件に変更を加えた
事項は(1)成長温度及び(2)インジウムのドーピン
グの追加操作の2点である。成長温度はインジウムを含
有するバッファ層を形成することを勘案して、実施例1
に比し50℃低い550℃とした。また、インジウムの
ドーピングは、トリメチルガリウムを搬送する水素バブ
リングガスを成長系に供給すると同時にインジウムのド
ーピング原料ガスを成長系内に添加することをもって実
施した。インジウムのドーピング源としては結合価を一
価とするシクロペンタジエニルインジウム(C55
n)を使用した。このインジウムドーピング源もガリウ
ム及びアルミニウム原料供給源と同じくステンレス鋼製
の小型蒸発容器内に収納し、同蒸発用容器は電子式恒温
槽により60±1℃に保持した。この蒸発用容器内に
は、昇華したインジウム源を搬送するための高純度水素
ガスを毎分120ミリリットルの流量で流通させた。こ
の流通量が変動すれば成長系内に搬送されるインジウム
の量に変動を来すため、MFCによりその流通量を精密
に制御した。アンモニアの流量は実施例1と同じく毎分
3.00リットルにMFCにより精密に制御した。よっ
て、V/III 比は約1.9×104 であった。これらの
流量条件を20分間維持して、約60nmの厚さのバッ
ファ層を得た。
【0035】成長系へのガリウム供給原料とインジウム
ドーピング原料の供給を停止してインジウムがドープさ
れた窒化ガリウムバッファ層の成長を終了させた後、更
に約1分経過後、サファイア基板を冷却するために抵抗
加熱体への電力の供給を停止した。降温を開始して、ヒ
ータの中央部で基板が載置される直下に配置されたクロ
メル・アルメル合金系熱電対(通称JIS−K熱電対)
の温度指示値が約500℃となった時点でアンモニアガ
スの成長系への供給を停止した。サファイア基板の温度
が室温近傍となった時点で、反応炉内への供給するガス
種を水素よりアルゴンガスに代替した。然る後、反応炉
内を排気操作及び大気圧へ復帰させるためのアルゴンガ
スによるパージ操作を交互に数回、反復して、最終的に
はアルゴンガスが流通する状態とした。この状態で基板
載置台を水冷方式の防塵型角型ゲート弁を通過させて反
応炉に付帯するインターロック室に搬送した。インター
ロック室と反応炉とを隔離する角型ゲート弁を閉とした
後、インターロック室内の真空排気並びにアルゴンガス
パージを数回繰り返し、最終的にアルゴンガスが室内に
充満している状態とした。この状態でインターロック室
内の基板載置台上からサファイア基板とインジウムドー
プ窒化ガリウムバッファ層とからなるエピタキシャルウ
エハを室外へと取り出した。
【0036】上記の成長により形成されたインジウムド
ープ窒化ガリウムバッファ層内のインジウムの原子濃度
はSIMS(2次イオン質量分析法)により約6×10
18cm-3と定量された。室温(291K(ケルビン)近
傍)、液体窒素温度(77K)及びより低温の10Kで
測定したフォトルミネッセンス(PL)スペクトル上に
は、窒化ガリウム・インジウム混晶のバンド端発光を示
す発光ピークの出現は認められなかった。前記したと同
様の透過型電子顕微鏡法による観察により、インジウム
がドーピングされた窒化ガリウムバッファ層は単結晶粒
が相互に間隙なく密集してなる集合体であることが示さ
れた。この集合体を構成する各単結晶粒間の格子配列も
ほぼ平行に揃っていた。すなわち、実施例1及び2に記
載の窒化ガリウム及び窒化アルミニウム・ガリウム混晶
からなるバッファ層の場合と格子配列の平行性について
は格別な差異は認められなかった。単結晶粒の頂部の天
板部から構成されるバッファ層の表面は窒化アルミニウ
ム・ガリウムバッファ層の場合と同様になだらかな曲面
状であった。しかしながら、倍率20×104 倍のより
高倍率下で基板/バッファ層間の界面近傍領域の断面明
視野像を観察した結果では、界面近傍の領域で横幅を大
とし、基板表面から鉛直上方に向けて幅を縮小する傾向
にある単結晶粒の存在が認められた。界面近傍に存在す
る単結晶粒の様呈は実施例1記載のアンドープ窒化ガリ
ウムバッファ層とは多少、異なるものとなった。
【0037】(比較例1)本比較例1では、単結晶から
なるバッファ層が成長層の表面状態の向上にもたらす効
用を、単結晶とはなっていないバッファ層の場合と対比
させて述べる。基板温度を380℃とし、それ以外は上
記の実施例1と全く同一の成長条件並びに成長操作によ
り窒化ガリウムからなるバッファ層を形成した。成長温
度が低下したため、成長時間は実施例1と同一としても
得られる層厚は2.5nmに減少した。RHEED法並
びに断面TEM法によりこのバッファ層の結晶性を評価
した。断面TEM法に依るバッファ層を構成する微細構
造の透過電子線回折像の観察から、本比較例1に係わる
バッファ層の構成要素は3種に大別された。一つは点状
の回折パターンを与えるものであり、他の一種は回折ス
ポットと回折環とが共存するパターンを与えるものであ
り、残りは回折環のみからなるパターンを与える構成要
素である。即ち、回折パターンから、一つの構成要素は
単結晶粒であり、他は多結晶体であり、三番目は非晶質
体であると常識的に解析される。一方、バッファ層の表
面から得られるRHEEDパターンに出現するのは、全
んど回折環のみであった。従って、このバッファ層は構
成要素として単結晶粒或いは多結晶体を含んではいるも
のの、全体として見れば非晶質体を主体として構成され
ているものであった。各単結晶粒或いは多結晶体は云わ
ば非晶質体の中に散在しており、相互に密接に合着して
密集している状態には程遠いものであった。また、単結
晶粒相互の格子配列を透過型電子顕微鏡の高分解能モー
ド下で観察したところ、不統一であった。例えば、或る
単結晶粒を構成する格子は基板表面にほぼ平行に配列し
ており、他の単結晶粒では、基板表面(水平面)に対
し、格子面は反時計方向に約30度の角度を保持しなが
ら互いに平行に配列していた。これより、このバッファ
層は主たる構成要素並びに結晶形態から判断しても従来
のバッファ層と同様であると見なされた(特開平2−2
29476号、特開平4−297023号、特開平6−
151962号及び特開平7−3121350号公報参
照)。更に、非晶質体を主たる構成要素としながらも、
(0001)−サファイア基板の一部領域では表面が非
晶質体にも被覆されずに露呈しており、基板表面のほぼ
全域が一律に単結晶粒で緻密に被覆されてはいなかっ
た。
【0038】付記するに本比較例1より更に低温の20
0℃から300℃強の間の温度では、本発明者が試行し
た限りでは多結晶からなるバッファ層すら形成されず、
単に液状の物質が付着するに過ぎなかった。この物質は
ガリウムの液滴であるのか或いは金属ガリウムとアンモ
ニアとの反応により約100℃以上の温度で生成すると
されるメタルガリウムアミド(Ga(NH23
(I.A.SHEKA、I.S.CHAUS and
T.T.MITYUREVA、”THE CHEMIS
TRY OF GALLIUM”、Chapter
6、133頁(ELSEVIER PUNBLISHI
NGCOMPANY,1966))の様な、或いはまた
トリメチルガリウムとアンモニアとの反応によって生成
する炭素(C)と水素(H)とガリウム(Ga)と窒素
(N)とを含む[C−H−Ga−N]ポリマー(J.E
lectrochem.Soc.,Vol.118、N
o.11(1971)、1864.)の様な化合物類で
あるのかは断定するに至らなかった。この様な低温で生
成する物質が何れであれ、300℃以下の低温では多結
晶のIII 族窒化物半導体層さえ形成するのが困難であっ
た。
【0039】380℃で成長させた上記のバッファ層上
に、1100℃でアンドープ窒化ガリウム成長層を以下
に述べる実施例4と全く同一の成長条件並びに操作をも
って形成した。しかし、成長層の表面は実施例4により
得られたように平滑とはならず、多数の間隙や突起が出
現した。図13はピットや突起の発生と、高温の成膜環
境下に曝した際の従来の非晶質バッファ層の変質との因
果関係を如実に示す断面TEM像である。バッファ層の
主たる構成要素である非晶質体のほとんどは窒化ガリウ
ム成長層の成長のための高温への昇温時に消失したが、
極く一部は(0001)−サファイア基板表面上にas
−grown時の結晶形態を変えることなく残存した。
残存する非晶質体(104)が基板温度の上昇により単
結晶化している傾向は明瞭には認められなかった。微小
な単結晶或いは幾つかの単結晶粒が集合した多結晶の粒
体(123)はそのまま乱雑に残存した。バッファ層
(102)の構成要素は僅かに残存した非晶質体(10
4)と多結晶の粒体(123)であった。as−gro
wn状態では非晶質体が存在したものの、成長温度への
昇温時に非晶質体が消失したために基板の表面が露呈し
た領域(108)では、C面サファイア基板に垂直なc
結晶軸方向への成長が優勢となり、高温(1100℃)
で成長させた窒化ガリウム成長層(117)内に角錘状
の単結晶柱(118)が乱立していた。単結晶柱(11
8)は相互に密接に合着せず、孤立して乱立しており、
単結晶柱(118)の側壁(129)間には空隙(ピッ
ト)(107)が存在していた。この空隙(107)が
存在する位置に対応して成長層(117)にピット(1
07)が発生していた。また、単結晶柱(118)の天
板部(130)を構成する角錘の頂部(131)が突出
して露呈して、成長層(117)には、突起(125)
が発生することとなった。この様に、間隙或いは突起の
発生を誘引する要素から構成されるバッファ層を下地層
とした場合、表面状態に優れる高温成長層を得るには至
らなかった。要約するに、従来の構成からなるバッファ
層を下地層とする限り、上記の実施例1の場合に比較し
て表面状態に優れる成長層を具備したエピタキシャル層
の形成は困難であった。
【0040】(実施例4)本実施例4では、本発明に係
わるバッファ層を備えたIII 族窒化物半導体のエピタキ
シャルウエハから青色発光ダイオード(LED)を形成
した。先ず、LED用途のエピタキシャルウエハの形成
について記述する。基板としては、スライス及び研磨工
程で発生する破砕層に多く含まれる酸素等の不純物を除
去するための水素気流中でのアニール処理が施された表
裏両面を鏡面研磨したサファイア結晶を用いた。基板厚
は表裏両面に鏡面研磨を施した時点で約85μmであっ
た。両面が研磨された基板を使用する主たる理由は、表
面の面粗度精度の向上によってヒータ等の加熱体表面と
の接触が均一化が果たされるからである。基板表面は面
方位を(0001)とするC面である。同基板はフッ化
アンモニウム水溶液に室温で約1分間、浸せきした後、
イオン交換樹脂透過法を利用して純化された超純水で水
洗した。水洗後、通常のスピンナーで遠心力を利用して
払水した後、更に表面に赤外線を照射して乾燥させた。
【0041】乾燥を終えたサファイア基板を半導体工業
用の純度グレードの石英材料を加工し作製したガスノズ
ルを備えた材料品番304のスレンレス鋼反応容器内に
収納された基板載置台(サセプター)上の中央部に載置
した。然る後、液化アルゴンから気化した後に分子篩
(モルキュラーシーブ)吸着方式により精製されたアル
ゴンガスを毎分5リットルの流量をもってガスノズル内
を通過させて反応炉内に供給した。これにより、基板表
面に優先的にアルゴンガスを供給すると共に反応炉内を
パージした。約20分間、アルゴンガスの反応炉への供
給を継続した。サファイア基板を載置したサセプター
は、外気(大気)の反応炉内への混入を防止するための
排気/パージ機能を備えたインターロック方式の予備室
(チャンバー)で、予め真空排気/パージを反復して実
施した後に反応炉内へ導入した。このため、反応炉内へ
の混入する外気の量は極めて微量であるとの判断から、
20分間のアルゴンガスによる反応炉内のパージ操作終
了後は、アルゴンガスを水素ガスに交換して直ちにサフ
ァイア基板の温度を上昇させた。
【0042】ガスノズルを介して反応炉内に流通する水
素ガスの流量をメタルシール方式のMFCにより毎分1
0.0リットルに精密に制御しながら、サファイア基板
を高純度のグラファイトからなるサセプターを介して、
円形の抵抗加熱型ヒータにより主に伝熱により加熱し
た。サファイア基板を一挙に成長温度の650℃に昇温
することはせず、先ず、450℃に予備加熱した。45
0℃で15分間維持した後、650℃に昇温した。65
0℃に到達した直後の温度過渡が収拾してから約18分
後、水素ガスを反応炉に導入するための外径1/4イン
チの材料品番316Lステンレス鋼チューブ配管内にア
ンモニアガスを導入した。このアンモニアの水素ガスの
添加を開始してから正確に2分後、今度はガリウム供給
原料としたトリメチルガリウムをアンモニアと同じく水
素ガスに添加した。アンモニア及びトリメチルガリウム
の使用形態並びに供給形態は実施例1に記載の通りであ
る。アンモニアの流量は最大流量を10リットル/分と
し、制御可能な最小流量を最大流量の2%とするMFC
により毎分2.80リットルに精密に制御した。一方の
トリメチルガリウムは最大流量を10ミリリットル/分
とし、同様の制御性能を有するMFCにより流量を毎分
3.00ミリリットルに制御された水素ガスでバブリン
グすることをもって供給した。V/III 比は1.2×1
4 となった。この原料ガス並びにキャリアガスとして
の水素ガスの流量を20分間継続して維持し、層厚を6
4nmとするアンドープの窒化ガリウムバッファ層を得
た。
【0043】同一条件下で得たアンドープ窒化ガリウム
バッファ層の断面TEM法に依る観察からは、このバッ
ファ層が横幅を概ね50nmとし、天板部を角錘ではな
く平面或いは曲面状に緩やかに変化する平滑面とする単
結晶粒の集合体から構成されているのが示された。これ
らの単結晶粒は相互に間隙なく緻密に密集しており、単
結晶粒相互の合着面(接合界面)は(0001)−サフ
ァイア基板表面に対して鉛直上方に直線的に延在するの
ではなく、曲線状であった。また、高分解能モード下で
径が絞り込まれた電子ビームをバッファ層を構成してい
る各単結晶粒に照射して撮像された各単結晶粒の透過回
折像はいずれもスポット(点)パターンであり、これよ
り各単結晶粒が窒化ガリウム単結晶であるのが明確とな
った。また、直径2インチのサファイア基板の中央部に
相当するバッファ層中央部の表面のRHEED像は円形
のスポットパターンから構成されていた。基板の周縁領
域に当たるバッファ層の周縁部からのRHEED像で
は、特に低ミラー指数面の回折スポットに円形からずれ
て多少楕円形となったスポットが認められたが、バッフ
ァ層全体としては単結晶であることが実証された。即
ち、本実施例の窒化ガリウムバッファ層はas−gro
wn状態で既に、窒化ガリウムの単結晶粒が相互に密に
集合してなる単結晶層となっていた。更に、高倍率での
格子像観察により、各単結晶粒は格子面を互いにほぼ平
行にして合着していることが判明した。格子面間の交差
角度(本文参照)は最大でも0.5度(°)に満たない
ものであった。
【0044】窒化ガリウム単結晶粒から構成するバッフ
ァ層の成長は水素キャリアガスへのトリメチルガリウム
を含む水素バブリングガスの供給を停止することをもっ
て終了させた。ガリウム原料供給源の成長系内への添加
を一旦停止した後、水素キャリアガスの流量を毎分1
0.0リットルから半分の毎分5.00リットルに減少
させた。これに併せて、アルゴンガスを成長系内に毎分
5.00リットルの流量をもって添加し、キャリアガス
の総量を毎分10.0リットルに保持した。併せて、ト
リメチルガリウムを収納するステンレス鋼製バブラー容
器の温度を電子式恒温槽により0℃から13℃へ変更し
た。
【0045】双方のキャリアガスの流量変更操作に伴う
流量変動が収拾するまで暫時待機した後、ヒータに印加
する電力を増加させて基板の温度を1100℃に昇温し
た。基板温度の指標となるサセプターと接触するヒータ
表面の直下に配置した白金−白金・ロジウム熱電対(J
IS規格R熱電対)の熱起電力値を基にした温度指示値
が1100℃を示すに至った時点で、アンモニアガスの
流量を毎分2.80リットルから毎分4.00リットル
に増量した。基板温度の指示値並びに流量の増量に伴う
アンモニア流量が安定してから正確に5分後にトリメチ
ルガリウムをバブリングした水素ガスを再び成長系内に
添加し始めた。これにより、アンドープ窒化ガリウム成
長層の形成を開始した。アンドープ窒化ガリウム成長層
は、1000℃を越える高温で成長させる層であること
から、上記の比較的低温で成長させるバッファ層に対比
させて高温バッファ層、或いは発光機構に及ぼす作用か
らクラッド層とも称される。アンドープ窒化ガリウム成
長層の形成にあたっては、トリメチルガリウムを供給す
る配管系統(ライン)を変更した。このトリメチルガリ
ウム供給ラインは最大流量を毎分30ミリリットルとす
るMFCを備えたものである。上記のバッファ層の形成
に利用したトリメチルガリウム供給ラインとは、備えら
れたMFCの制御可能な最大流量が相違する。この供給
ラインのMFCをもってバブリング用水素ガスの流量を
毎分20ミリリットルに制御し、トリメチルガリウムを
随伴する水素バブリングガスを水素・アルゴンキャリア
ガスに混合させ成長系に添加した。上記のアンモニア流
量、トリメチルガリウムのバブリング流量及びキャリア
ガスの流量を維持して、90分間に亘り原料ガスの供給
を継続して層厚を約3.5μmとするアンドープ窒化ガ
リウム成長層を形成した。この様な条件下で形成される
アンドープ窒化ガリウム成長層は、上記の単結晶粒から
なるバッファ層を下地として形成されているため、RH
EEDパターン上にディフーズでハローな楕円状の回折
スポットを生じない配向性の揃った単結晶層であった。
また、同層はn形の伝導形を呈し、ステップ(段階)エ
ッチング法を併用したHall効果測定に依れば、キャ
リア濃度はバッファ層との界面側から成長層の表面の方
向に漸次、減少していた。アンドープ窒化ガリウム成長
層表面でのキャリア濃度は約1.1×1017cm-3と測
定された。成長層表面は平面形状を略六角形とする突起
やピット(細孔)が殆ど認められない表面状態に優れる
ものとなった。
【0046】トリメチルガリウムを随伴する水素バブリ
ングガスの成長系への添加を停止することをもってアン
ドープ窒化ガリウム成長層の形成を終了させた後、アン
モニア及びキャリアガスの構成並びに流量をそのまま維
持して基板の温度を760℃に低下させた。760℃に
到達してから10分後、成長系内へトリメチルガリウム
を随伴する水素ガスの添加を開始した。トリメチルガリ
ウムの成長系への添加には、前記の窒化ガリウムバッフ
ァ層の成長時に使用したトリメチルガリウム用配管系を
使用した。トリメチルガリウムを収納するステンレス鋼
製容器は電子式恒温槽により0℃に保持し、バブリング
用水素の流量は毎分2.00ミリリットルとした。トリ
メチルガリウムの成長系への添加と同時に、昇華したシ
クロペンタジエニルインジウム(cyclopenta
dienyl indium)を含む水素ガスの成長系
へ添加した。結合価を1価とするシクロペンタジエニル
インジウム(C 55 In)を内壁面にも付着させたス
テンレ鋼製シリンダー容器は電子式恒温槽により65℃
に保持した。このシリンダー内に導入する昇華したイン
ジウム源を随伴する水素ガスの流量はMFCにより毎分
120ミリリットルとした。各々のIII 族原料の保持温
度に於ける蒸気圧或いは昇華圧値を基にして計算する
と、成長系内へ供給される原料ガスの濃度比、所謂この
分野の当事者が呼称する気相組成比は約0.20であっ
た。III 族原料の成長系への添加に時期を併せて、体積
濃度にして約100ppm(体積百万分率)のジエチル
亜鉛((C252Zn)を含む高純度水素ガスを同
希釈ガスを収納するマンガン鋼製高圧ボンベより毎分3
0ミリリットルの流量をもって供給した。アンモニアの
流量を毎分4.00リットルとし、各々、毎分5.00
リットルの流量の水素とアルゴンとから構成される成長
雰囲気内で、上記流量条件でIII 族原料を随伴する水素
ガスの成長系への添加を15分間継続した。ジエチル亜
鉛((C252 Zn)を含む水素ガスの流量は15
分間に亘り一定となる様にMFCで精密に制御、調整し
た。これにより、層厚を約50nmとする、インジウム
の原子濃度を約6.4%とし且つ亜鉛(Zn)がドーピ
ングされたインジウム含有窒化ガリウム層を得た。
【0047】この様な条件下で得られるインジウム含有
窒化ガリウム層は、アクセプターとして作用すると云わ
れる第II族の亜鉛をドーイングしてあってもn形を呈し
た。SIMS分析に依れば、亜鉛はインジウム含有窒化
ガリウム層内にほぼ一様に分布しているのが認められ
た。このインジウム含有窒化ガリウム層は発光機能を発
揮する活性層、即ち発光層として活用するため光学的な
評価を実施した。上記の層厚のインジウム含有窒化ガリ
ウム層に波長325nmのヘリウム−カドミウム(He
−Cd)レーザ光を照射した際には、室温に於いてピー
ク波長を約445nmとする青色のフォトルミネッセン
ス(PL)発光が出現した。一方、インジウムの添加に
よる混晶化により窒化ガリウム・インジウム混晶が形成
されていれば出現するはずの同混晶のバンド端発光の出
現は認められなかった。上記と同一の流量条件で、III
族元素の成長系への供給時間を延長して得た層厚をより
大とするインジウム含有窒化ガリウム層では、上記の青
色の発光スペクトルの波長は層厚が小さい(薄い)場合
に比較し、より短波長側に移行した。層厚が約200n
m程度と厚くなると、得られるPLスペクトルには波長
を約360nm近傍とする窒化ガリウムのバンド端発光
と共に、中心波長を約420〜430nmとする青色発
光スペクトルが出現した。窒化ガリウム・インジウム混
晶が形成されていれば出現するはずの同混晶のバンド端
発光は確認出来なかった。バンド端発光の確認の有無に
拘らず、同一成長条件下に於いても得られるPL発光波
長はインジウム含有窒化ガリウム層の層厚に強く依存す
る。層厚を逆に薄くするとPLスペクトルに出現する主
ピークは更に長波長側へと移行するものと推定された
が、薄層化によってより顕著となるのは表面のモフォロ
ジー上の差異である。層厚を小さくするに伴い、層表面
には半球状の突起(ヒロック)が発生し易くなる。この
球状の突起が上記の窒化ガリウム成長層とインジウム添
加窒化ガリウム層との界面で発生するIII 族元素の液滴
(droplet)に起因して発生するのか、他の原因
に因るのかは不明である。原因は何れにあるにせよ、表
面に半球状のヒッロクが少なく且つ視感度に優れる45
0nm近傍の青色発光を呈する発光層の形成を意図した
本実施例に於いては、取敢ず同層の層厚を上記の如く5
0nmとした。
【0048】インジウム添加窒化ガリウム層の成長は、
成長系内へのシクロペンタジエニルインジウムの添加を
停止することをもって終了した。このインジウムドーピ
ング源の供給を停止した後、尚も基板温度を760℃に
保持し、また、アンモニアガスの流量を不変として、正
確に1分間、ガリウム供給原料の成長系への添加を継続
した。その後、ガリウム原料供給源の成長系への添加を
も停止した状態でアンモニア流量に変更を加えずに基板
温度を再び1100℃に上昇させた。760℃から11
00℃へは、基板加熱用のヒータを構成する抵抗を6オ
ーム(Ω)前後とするセラミック製ヒータエレメントに
印加する電圧を瞬時に増加させて10分以内に昇温させ
た。1100℃に到達した直後に窒化ガリウム成長層の
形成に利用したトリメチルガリウムの供給配管系によ
り、トリメチルガリウムを随伴する水素ガスを成長系に
添加した。同時にトリメチルアルミニウムを随伴する水
素ガスを成長系に添加して窒化アルミニウム・ガリウム
混晶層の成長を開始した。同混晶層の成長の初期にあっ
ては、トリメチルガリウムとトリメチルアルミニウムの
成長系への供給比率をアルミニウム組成比を0.20と
する窒化アルミニウム・ガリウム混晶(Al0.20Ga
0.80N)が形成できる様に調整した。この調整はトリメ
チルアルミニウムを収納するステンレス鋼製バブラー容
器の電子式恒温層による温度調整と同バブラー容器内に
流通するバブリング用水素の流量をMFCで精密に制御
することをもって実施した。層厚が80nmとなる迄、
アルミニウムの組成比を0.20とする窒化アルミニウ
ム・ガリウム混晶層を与えるガリウム及びアルミニウム
原料を随伴するバブリング用水素ガスの流量条件を維持
した。その後、成長系へ添加するガリウム原料を随伴す
る水素ガスの流量を一定に維持する一方で、成長系内へ
の添加するアルミニウム原料を随伴するバブリング用水
素ガスの流量をMFCで漸次、減少させ最終的には成長
系への添加を停止した。アルミニウム原料供給用の水素
バブリングガスの流量を減少し始めてから成長系への添
加を中止するに至る迄に正確に3分を消費した。この3
分間に形成された云わばアルミニウム組成が漸次、減少
し、最終的に表面を窒化ガリウムとするアルミニウム組
成についての遷移領域層の層厚は50nmであった。即
ち、アルミニウム組成の遷移領域層を含めての窒化アル
ミニウム・ガリウム混晶層の合計の層厚は130nmで
あった。
【0049】上記の窒化アルミニウム・ガリウム混晶層
の形成をガリウム及びアルミニウム原料の成長系への添
加の停止をもって終了させて1分経過後、ヒータに供給
する電力を遮断して基板の冷却を開始した。冷却時には
ステンレス鋼製反応炉の周囲を構成する2重管の中空部
に流入させる冷却水の水量を故意に増加させ、且つ反応
管の外壁を小型の送風機で送風して強制的に冷却した。
基板の温度が600℃に強制的に冷却された時点で、成
長系へのアンモニアガスの添加を停止して、反応炉には
成長雰囲気を構成した水素とアルゴンのみが供給される
状態とした。更に、強制冷却が進行して基板温度が室温
近傍となった時点で反応炉内への水素ガスの供給を停止
し、反応炉内へはアルゴンのみが供給される状態とし
た。然る後、反応炉内の真空排気並びにアルゴンガスに
よるパージ操作を交互に各々、2回反復した。最後は反
応炉内を真空状態とし、前記の予備室でのアルゴンガス
による大気圧への復帰操作を経た後、基板を反応炉外へ
取り出した。
【0050】このエピタキシャル層の最表面には突起或
いはピット等の特異なモフォロジーは認められず、表面
は平滑性に優れたものとなった。これは、発光層の表面
に多少とも半球状の突起が存在したものの、同層上への
積層に伴い徐々に平坦化が進行したものと推量された。
また、最表層の窒化アルミニウム・ガリウム混晶層のR
HEED(反射電子線回折)パターンから、同層は単結
晶であることは勿論、積層欠陥の密度が小さい結晶性に
優れる単結晶層であると解析された。図14は、上記の
工程により形成されたエピタキシャル層の断面TEM
(透過電子顕微鏡)明視野像の模式図である。同図に示
す様に、窒化ガリウムバッファ層(102)に相当する
部分は暗像となって撮像されていた。これは、サファイ
ア基板(101)との格子不整合性に主に起因して発生
すると推定される転位や積層欠陥を主とする結晶欠陥
(126)のほとんどが窒化ガリウムバッファ層(10
2)内に吸収されていることを示すものである。また、
バッファ層に吸収されずに上部の窒化ガリウム成長層
(117)に伝搬する転位も認められるものの、その大
多数の転位は窒化ガリウム成長層(117)の中途でル
ープ(loop)を形成して水平方向に走行し逃避する
ものとなった。更に、積層欠陥に主に起因すると推定さ
れる線像も窒化ガリウム成長層(117)内の中途でそ
の殆どが消滅していた。このため、上記の工程により形
成されたエピタキシャル層は窒化ガリウム成長層上に堆
積したインジウム添加窒化ガリウム発光層並びに窒化ア
ルミニウム・ガリウム混晶層に迄貫通する転位が低減さ
れた結晶性に優れたものとなった。エピタキシャル層の
最表層表面に到達する貫通転位は表面にピットを発生さ
せる原因となる。従って、上記の窒化アルミニウム・ガ
リウム混晶層の様にピットの少ない表面状態に優れる成
長層が得られるのは、高温環境下に於いても非晶質体の
如く容易に消失せず、基板表面を万遍なく被覆でき、尚
且、画一的な配向性の格子配列によってもたらされる強
力な結合力をもって相互に合着してなる単結晶粒から構
成されるバッファ層が、転位を吸収し貫通転位を低減す
る働きを備えているためであると解釈された。
【0051】次にサファイア基板上に堆積された成長層
の表面に向けてマグネシウム(Mg)イオンを多段に注
入した。より詳細に記述すれば、このマグネシウムの多
段イオン注入は最大加速電圧を200キロボルトとする
イオン注入装置を用いて、高純度マグネシウムをマグネ
シウムイオン源とする固体ソース(source)法で
実施した。イオン注入時に基板を適度に加熱しても差し
支えはないが、ここでは敢えて基板を加熱せず注入を実
施した。窒化アルミニウム・ガリウム混晶層表面より最
も深部にマグネシウムイオンを注入するための第1段目
は加速電圧を160キロボルト(KV)とし、ドーズ
(dose)量を4.0×1013cm-2として実施し
た。続けてより表面側に第2段目のマグネシウムが注入
された領域を形成した。第2段目の注入は加速電圧を1
30キロボルトとしドーズ量を2.0×1013cm-2
して行った。窒化アルミニウム・ガリウム混晶層の表面
近傍のアルミニウム組成比が同表面側に向けて漸次、低
下する領域には加速電圧100キロボルト及びドーズ量
2.0×1013cm-2の条件下で第3段目のイオン注入
を施した。加速電圧を変化させて注入するのはマグネシ
ウム原子濃度が最大となる表面からの深さ、即ち投影飛
程(projection range)を制御するた
めである。ドーズ量に変更を加えるのは各投影飛程に於
ける最大到達濃度(ピーク濃度)を調節して、深さ方向
にほぼ平坦なマグネシウム原子の濃度分布を得るためで
ある。
【0052】イオン注入後、イオン注入処理した窒化ア
ルミニウム・ガリウム混晶層の表面に窒化チタン(Ti
N)薄膜を形成した。窒化チタン薄膜は通常のCVD
法、MOCVD法、高周波或いは電子サイクトロン励起
プラズマCVD法や高周波(マイクロ波)スパッタリン
グ法などにより形成できるが、本実施例では簡便な窒化
チタンターゲットを利用する窒素雰囲気内での反応性イ
オンスパッタリング法により形成した。膜厚は約100
nmで、比抵抗はおおよそ、10ミリオーム(mΩ)程
度であった。この窒化チタン薄膜はイオン注入された原
子を活性化するための高温でのアニール(熱処理)時に
於ける窒化アルミニウム・ガリウム混晶層の表面保護膜
として、また併せて後述するLEDの電極として用いる
ためのものである。
【0053】窒化チタン薄膜により窒化アルミニウム・
ガリウム混晶層の表面を保護膜した後、エピタキシャル
層を横型熱処理炉内で窒素雰囲気中で温度1080℃に
於いて30分間に亘り、アニール処理を施した。これに
より、as−grown状態でn形であった窒化アルミ
ニウム・ガリウム混晶層をキャリア濃度を平均して約2
×1017cm-3とするp形層に変換した。キャリア濃度
はアルミニウム組成を小さくした表面側のアルミニウム
組成の遷移領域では、アルミニウムの組成比0.20と
一定とする領域に比べて高くなっていた。
【0054】n形インジウム含有窒化ガリウム発光層と
イオン注入原子を活性化することによってp形化した窒
化アルミニウム・ガリウム混晶層とからなるpn接合を
備えた上記のエピタキシャルウエハに公知のパターニン
グ技術、アルゴン/メタン(CH4 )/水素混合ガスを
使用するプラズマエッチング等の加工技術を施して、L
EDを作製した。p形の電極(陽極)は上記の如くイオ
ン注入用保護膜を兼ねる窒化チタン薄膜とした。窒化チ
タン薄膜電極の一部領域にはチタン(Ti)を厚さ約8
00nmに被着して方形のボンディング用パッド部を構
成した。一方のn形電極(陰極)は、エッチング加工に
より一部を露呈させた上記のn形窒化ガリウム成長層上
にアルミニウムを真空蒸着することをもって形成した。
【0055】直径2インチの基板のほぼ全面に形成され
た約12000個の約350μm角のLEDチップにつ
き、電気的素子特性、特にpn接合特性を通常のプロー
ビング法により検査した。図15は抜き取り検査で得ら
れた本実施例に記載のLEDの代表的な電流−電圧(I
−V)特性であって、正常な整流性が得られている。順
方向電流の急激な増加を来す「しきい値」電圧、即ち、
順方向電圧(一般に記号Vf で表される)は検査(検
体)全数の90%を越える素子について3.70ボルト
から3.95ボルトの電圧値間に分布していた。抜き取
り検査対象とした約3000個のLEDの平均の順方向
電圧値は3.8ボルトとなった。順方向電圧が4ボルト
を上回るLEDはエピタキシャル層の極く周縁部(基板
の周縁部)に多く存在したが、エピタキシャル層の中央
部(基板の中央領域)に在るLEDの順方向電圧はほぼ
全数が上記の電圧の範囲内となった。また、許容電流を
10マイクロアンペア(μA)とした場合の逆方向の耐
圧(逆方向電圧)は5Vを越えていた。例えば、逆方向
電圧(記号Vで表されることが多い)が3〜4ボルトと
低い低耐圧のLEDも存在したが、それはエピタキシャ
ル層の周縁部(基板の周縁部に相当)に限られていた。
エピタキシャル層の中央部領域でのこの様な低いVr の
低耐圧のLEDの存在は希有であった。即ち、周縁部を
除くエピタキシャル層のほぼ全域に亘り正常なpn接合
特性を有するLEDが作製された。エピタキシャル層を
構成するエピタキシャル層構成層、特にpn接合を構成
する構成層が多数の間隙やピットを内在する様な表面状
態が劣悪なものであると、ピットを介した素子動作電流
の短絡のために正常な整流性を呈する良好なpn接合特
性が得難いのは周知の事実である。上記の検査結果によ
り、本発明によれば結晶性と表面状態の共々に優れるII
I 族窒化物半導体層からLED用途のエピタキシャル層
を形成することができることが明白に示された。
【0056】次に上記LEDに順方向電流を流通し発光
特性を評価した。順方向電流を20mAとした際の発光
中心波長は約445nmであり、発光色は青色であるこ
とが観察された。この発光中心波長は順方向電流値が5
mAでは約443nmであり、50mAでは440nm
と順方向電流値の増大により僅かに短波長側に移行する
ものの、順方向電流値に依る特に顕著な発光中心波長の
移動は認められなかった。発光波長の面内分布は小さ
く、例えば室温に於いて順方向電流を20mAとした場
合、445±2nmの範囲に検査対象としたLEDのほ
ぼ全数(>90%)が収納される程、均一であった。ま
たこの中心波長の青色発光に加え、波長を約380〜3
90nmとする近紫外領域の発光も観測された。順方向
電流が50mA以下ではこの近紫外領域の発光スペクト
ルの強度は上記の青色発光スペクトルの強度を上回るこ
とはなかった。また、発光中心波長は測定温度(LED
の温度)に依存して極端に変化することはなく、測定温
度を室温から液体ヘリウム(He)温度の4.2K(ケ
ルビン)に低下させても発光中心波長の移動量は僅か±
2nm程度であった。本発明に係わるバッファ層を具備
したIII 族窒化物半導体エピタキシャルウエハから得ら
れるLEDの特徴は、発光中心波長の均一性に加え、例
えば、順方向電圧を20mAとして室温で測定される波
長約445nmとする主発光スペクトルの半値幅(所
謂、略称FWHM値)等の発光特性の均一性にある。
【0057】(比較例2)電気的特性及び発光特性を比
較するため、実施例4とは形態を異にするバッファ層を
備えたIII 族窒化物半導体エピタキシャルウエハからL
EDを作製した。バッファ層以外のエピタキシャル層の
成長条件並びにそれらのエピタキシャル層を形成するた
めの成長手順及び操作は、p形化の手法以外は実施例4
記載の内容と全く同一とした。
【0058】比較例2に於けるバッファ層は実施例4と
同じくサファイアC面基板上に温度750℃で成長させ
た。成長時には電子式恒温槽により13℃に保持された
トリメチルガリウムを毎分5ミリリットルのバブリング
用水素ガスにより成長反応系に供給した。アンモニア
(濃度100%)ガスの成長反応系への供給量は毎分
0.7リットルとした。V/III 比は従って、2.3×
103 と実施例4に比較すれば約1/4となった。搬送
(キャリア)ガスとしては水素のみ使用し、その流量は
毎分8リットルとした。成長雰囲気は水素のみから構成
された。トリメチルガリウムを随伴する水素バブリング
ガスの成長反応系への添加を40分間継続して、層厚を
110nmとする窒化ガリウムバッファ層を得た。
【0059】同一条件下で得たアンドープ窒化ガリウム
バッファ層の断面TEM法に依る観察からは、このバッ
ファ層はas−grown状態で既に、天板部が角錘と
なった単結晶粒の集合体から構成されているのが示され
た。これらの単結晶粒は相互に間隙なく緻密に密集して
おり、結晶体相互の合着面(接合界面)は(0001)
−サファイア基板表面に対して鉛直上方に直線的に延在
していた。即ち、単結晶粒の合着による粒界面は基板表
面の鉛直上方にほぼ垂直に発達していた。更に、高倍率
での格子像観察により、各単結晶粒は格子面を互いにほ
ぼ平行にして合着していることが判明した。格子面間の
交差角度は不均一で、最大では25度(°)に達するの
も見受けられた。この様にバッファ層の成長温度の上昇
に伴って交差角度が大とする合着様式が出現する傾向が
ある原因は不明である。また、格子面の配列方向を他と
は異にする単結晶粒が混在する原因については、例えば
そもそも格子不整合の関係にあるサファイア結晶基板と
窒化ガリウムバッファ層との間に発生する格子歪がバッ
ファ層の成長温度の上昇に伴い増大する、或いは両者間
の熱膨張率の差異により導入される機械的な歪が成長温
度の上昇に伴い増大するため等が推量されるが、断定す
るに至ってはいない。本比較例に於けるバッファ層は実
施例4と同じく単結晶粒の集合体であることに替わりは
ないが、その集合体を構成する各単結晶粒の断面形状、
格子面の交差角度及び単結晶粒の合着面(粒界)の発達
の様態に於いて、実施例4に記載のバッファ層のそれら
とは明らかに相違するものであった。
【0060】このバッファ層上に実施例4記載の成長方
法に従いアンドープn形窒化ガリウム層、n形インジウ
ム含有窒化ガリウム発光層及びp形窒化アルミニウム・
ガリウム混晶層を順次、成膜した。p形窒化アルミニウ
ム・ガリウム混晶は、その成長時にビスシクロペンタジ
エニルマグネシウム(bis−cyclopentad
ienylmagnesium:((CH3 )C5
42 Mg)をマグネシウムのドーピング源として添加
した後、アルゴンガス雰囲気内で800℃で20分間ア
ニールする従来方法によって得た。得られたp形キャリ
ア濃度はドーピングされたマグネシウムの原子濃度3×
1020cm-3に対して、僅か5×1016cm-3程度であ
った。実施例4に記載の注入されたマグネシウムイオン
のp形キャリアとしての活性化率と比較すれば約1/4
の効率の低さであった。ちなみに、本比較例のバッファ
層上に同様の積層構成をもって形成されたアンドープ窒
化アルミニウム・ガリウム混晶層に実施例4と同じくマ
グネシウムをイオン注入したところで、注入したマグネ
シウム原子の濃度が1020cm-3を越えるにも拘らず、
p形キャリアとして電気的に活性化されるのは、やはり
4×1016cm-3程度と少量であった。
【0061】このエピタキシャル層の最表面は角錘状の
突起が多量に存在した。これらの角錘は底面を六角状と
するものであり、上記の単結晶粒の頂部を構成する角錘
とほぼ相似する形状を有していた。角錘状突起物の側壁
間は当然の事ながら窒化アルミニウム・ガリウムが存在
しないため、底面部が互いに密着していない突起が在る
領域では、窒化アルミニウム・ガリウム層の下地となっ
ているn形のインジウム含有窒化ガリウム発光層の表面
が露呈していた。また、角錘状の突起が存在しない表面
領域には、ピットが平面密度にして104 cm-2を越え
る程、多量に発生しているのが認められた。図16は本
比較例に係わるエピタキシャル層の断面TEM(透過電
子顕微鏡)明視野像の模式図である。同図に示す様に、
窒化ガリウムバッファ層(102)を構成する各単結晶
粒(113)は高温の成長温度に曝された後にあっても
その結晶形態を殆ど変えることなく密に集合して基板表
面を被覆していた。また、単結晶粒(113)が相互に
合着した境界側面(114)は基板(101)表面から
垂直方向に直線的に発達していた。その境界側面(11
4)を起源として転位(116)が発生し、これが基板
(101)表面に対して上方に延在しているのが認めら
れた。この転位(116)はバッファ層(102)上に
堆積されたアンドープ窒化ガリウム成長層(117)の
内部に浸透し、更に、同層上のインジウム含有窒化ガリ
ウム発光層(127)及びエピタキシャル層の最表層で
ある窒化アルミニウム・ガリウム混晶層(128)の表
面に迄、到達していた。ピットはこれらのエピタキシャ
ル層構成層を貫通して来た転位(116)が窒化アルミ
ニウム・ガリウム混晶層(128)表面の到達した領域
に対応して存在していた。これより、ピットがバッファ
層からエピタキシャル層構成層を貫通して伝搬してくる
転位に起因して発生するものであることが判明した。従
って、バッファ層を例え単結晶粒から構成するにして
も、上部のエピタキシャル層構成層への容易な転位の伝
搬をもたらす合着形態をもって集合した単結晶粒からな
るバッファ層は、それが表面状態の粗悪さを帰結するこ
とから好ましいものではなかった。
【0062】電極を実施例4記載の材料並びに方法で形
成し、一辺を約350μとする正方形のLEDチップを
構成した。通常の自動プローバーを使用したプロービン
グ(探針法)により約3000個のLEDチップについ
て接合特性の抜き取り検査を実施した。測定されたI−
V特性の大部分は図7に掲示した如くの印加電圧の極性
に無関係に電圧にほぼ比例して正・負両電極間に電流が
流通する整流性の無いないものとなった。即ち、電流の
流通する経路内には整流性をもたらす正常なpn接合が
形成されていないことを示した。このI−V特性はむし
ろ同一の伝導形の半導体層の接合によるオーミック(o
hmic)接触の形成を示唆した。上記の如く、本比較
例で得られるエピタキシャル層構成層の表面状態は粗悪
であって、最表層のp形の窒化アルミニウム・ガリウム
混晶層は突起やピットが発生するために連続性に欠ける
ものとなった。この様な領域では、p形の窒化アルミニ
ウム・ガリウム混晶層より下層の発光層などのn形半導
体層が露呈していた。これにより、最表層の表面上に配
置される電極材料がn形の発光層等に直接、接触する事
態を招く。従って、図7に示す様な異常な電流−電圧特
性は、最表層表面上にp形層用として敷設したはずの電
極がn形層に接触するため正・負両電極間にはn形の半
導体層のみが介在する状態となることに起因すると説明
できた。一方、正常な接合特性を呈する数少ないLED
からは、中心波長を約445nmとする青色光が発光さ
れた。順方向電圧も約3.8から4.0ボルト(V)で
あった。しかし、良好なpn接合特性を呈するチップが
数少ないため、正常な発光特性を呈するLEDは抜き取
り検査対象とした検体総数の10%程度であった。要約
すれば、同じ単結晶粒の集合体からバッファ層を構成す
ると云えども、本発明に係わる形状或いは格子面の平行
性を持ち合わせない単結晶粒の集合体からなるバッファ
層は、成長層の良好な表面状態も、また、正常な接合特
性を有する素子も提供できない。
【0063】
【発明の効果】本発明によれば、表面状態及び結晶性に
優れるIII 族窒化物半導体エピタキシャル層の形成が達
成される。その結果、表面状態及び結晶性に優れるIII
族窒化物半導体エピタキシャル層から構成される例えば
発光素子用途のエピタキシャルウエハから、均一な特性
の素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の非晶質から構成されるバッファ層の構成
要素を示す断面模式図である。
【図2】バッファ層内に散在する単結晶粒を核として成
長島が発生し、発達する模様を示す想像図である。
【図3】バッファ層上に発生した成長島が相互に合着し
て層となる模様を示す模式図である。
【図4】従来の技術に係わるバッファ層を高温の成長環
境下に曝した場合に非晶質体が消失して基板の表面が露
呈する模様を示す模式図である。
【図5】バッファ層を構成する非晶質体の消失により基
板表面が露呈した場合の、高温成膜時に於ける成長島の
実際の発生、成長の模様を示す模式図である。
【図6】表面にピットが密集して発生する領域に於ける
化合物半導体エピタキシャルウエハのエピタキシャル層
の断面模式図である。
【図7】ピット(間隙)を多く含むエピタキシャル層か
ら作製されたpn接合型III 族窒化物半導体発光素子の
電流−電圧特性の一例である。
【図8】成長温度を620℃として成長させた単結晶粒
から構成される本発明に係わる窒化ガリウムバッファ層
の断面TEM(透過電子顕微鏡)像を示す模式図であ
る。
【図9】従来から単結晶層が形成されるといわれる温度
(920℃)で成長させた窒化ガリウムバッファ層の断
面TEM像を示す模式図である。
【図10】アンモニア/トリメチルガリウム反応系によ
り600℃で成長した窒化ガリウムバッファ層の断面T
EM像の模式図である。
【図11】サファイアC面基板上に650℃で成長させ
た窒化ガリウムバッファ層の断面TEM像の模式図であ
る。
【図12】実施例2に係わる窒化アルミニウム・ガリウ
ム混晶バッファ層の断面TEM像の模式図である。
【図13】高温の成膜環境下に曝した際の従来の技術に
係わる非晶質バッファ層の変化とピットや突起の発生と
の因果関係を示すためのエピタキシャル層の断面TEM
像の模式図である。
【図14】実施例4に記載の本発明に係わる単結晶粒か
らなるバッファ層を具備したIII族窒化物半導体エピタ
キシャル層の明視野断面TEM像を示す模式図である。
【図15】実施例4に記載の本発明に係わる単結晶粒か
らなるバッファ層を具備したIII族窒化物半導体エピタ
キシャル層から構成された発光素子(LED)の代表的
な電流−電圧特性(I−V)特性を示す図である。
【図16】比較例2に係わるバッファ層を具備するエピ
タキシャル層の断面TEM像を示す模式図である。
【図17】バッファ層を構成する窒化ガリウム単結晶粒
の交差角度とバッファ層上に成長した窒化ガリウム成長
層の回折パターンの半値幅の関係を示す図である。
【符号の説明】
(101) 基板 (102) バッファ層 (103) 基板/バッファ層界面 (104) 非晶質体 (105) 単結晶粒 (106) 成長島 (107) 空隙(ピット、細孔) (108) 非晶質体が消失し、基板表面が露呈した領
域 (109) 非晶質体を高温環境下に曝した際に結晶化
を起こした領域 (110) III 族窒化物半導体層の重層からなるエピ
タキシャル層 (111) 伝導形をp形とする第一のエピタキシャル
層構成層 (112) 伝導形をn形とする第二のエピタキシャル
層構成層 (113) バッファ層を構成する単結晶粒 (114) バッファ層を構成する単結晶粒の外周囲側
面 (115) バッファ層を構成する単結晶粒の頂部の天
板部 (116) 転位 (117) 高温で成膜された窒化ガリウム成長層 (118) 単結晶柱 (119) 格子面が重層される方向(格子面像に垂直
な方向) (120) 断面TEM法により撮像される格子面像 (121) 格子面像に対する垂線が互いに交差する角
度(交差角度) (122) バッファ層を構成する単結晶粒の横幅 (123) 従来のバッファ層の一構成要素である多結
晶体 (125) 窒化ガリウム系成長層表面上に出現する突
起 (126) 積層欠陥を主とする結晶欠陥 (127) インジウム(In)を含有する窒化ガリウ
ム高温成長層 (128) 窒化アルミニウム・ガリウム混晶高温成長
層 (129) 単結晶柱の側壁 (130) 単結晶柱の天板部 (131) 角錐の頂部

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 結晶基板表面上に積層したIII 族窒化物
    半導体からなるバッファ層と、該バッファ層上に積層し
    たIII 族窒化物半導体からなるエピタキシャル層とから
    構成される化合物半導体エピタキシャルウエハに於い
    て、 該バッファ層が単結晶粒の集合体からなり、前記バッフ
    ァ層を構成する単結晶粒は、as−grown状態で相
    互に接合する側面を迂曲として合着し、かつ頂部の天板
    部を略平担若しくは曲面状としてなることを特徴とする
    化合物半導体エピタキシャルウエハ。
  2. 【請求項2】 上記のバッファ層を構成する単結晶粒
    が、as−grown状態で相互の積層方位の角度差を
    30度以内とすることを特徴とする請求項1記載の化合
    物半導体エピタキシャルウエハ。
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