JPH0955316A - 平面型磁気素子およびその製造方法 - Google Patents

平面型磁気素子およびその製造方法

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JPH0955316A
JPH0955316A JP20968095A JP20968095A JPH0955316A JP H0955316 A JPH0955316 A JP H0955316A JP 20968095 A JP20968095 A JP 20968095A JP 20968095 A JP20968095 A JP 20968095A JP H0955316 A JPH0955316 A JP H0955316A
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JP20968095A
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Katsuhisa Honma
克久 本間
Toshiro Sato
敏郎 佐藤
Hiroshi Tomita
宏 富田
Naoki Shudo
直樹 首藤
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F41/00Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties
    • H01F41/02Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties for manufacturing cores, coils, or magnets
    • H01F41/04Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties for manufacturing cores, coils, or magnets for manufacturing coils
    • H01F41/041Printed circuit coils
    • H01F41/046Printed circuit coils structurally combined with ferromagnetic material

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  • Manufacturing & Machinery (AREA)
  • Coils Or Transformers For Communication (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 保磁力や飽和磁化などの磁気特性に優れ、高
周波領域での渦電流損失を抑えるこのできると共に、加
工性に優れ、設計の自由度がおおきく、かつ安価に製造
できる。 【解決手段】 Feを含む磁性体層と、この磁性体より
比抵抗の大きい陽性元素の窒化物からなる絶縁体層との
積層膜と、磁性体層に磁界を印加するコイル導体部とを
具備する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薄膜インダクタ、
薄膜トランス等として使用できる平面型磁気素子および
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、各種電子機器の小型化、軽量化が
進められている。これに伴ない、電子機器に搭載される
スイッチング電源に対しても小型化の要求が高まってい
る。
【0003】従来、この様なスイッチング電源に使用さ
れている磁気素子、即ちチョークコイルやトランスに
は、フェライトを用いて形成されたEIコアやPQドラ
ムなどの各種形状のもの、或いはアモルファス磁性合金
薄帯を巻き回したコアを用いたものなどが使用されてい
た。
【0004】従来のバルクフェライトを用いた磁気素子
に対して、近年、特に小型化、軽量化、薄型化の要求に
答えるべく、薄膜プロセスを利用した平面型磁気素子が
開発されてきている。これらの平面型磁気素子は、コイ
ルの形態やコイルと磁性体層との相対関係等に関する構
造、および磁性体層の材料および成膜技術、更に、異方
性制御技術の開発により、高周波使用においてバルクイ
ンダクタに対する優位性が得られている。したがって、
この特長を生かし、磁性材料で生じる高周波使用時の損
失をいかに低減できるかが平面型磁気素子を開発する際
の一つの重要な課題となっている。また、以上述べた特
性面に加え、磁性体層や絶縁体層の加工性は素子の構造
設計やプロセスを制約する大きな要因である。そのため
磁気素子としての出来上りの特性のみだけでなく、加工
性にも優れた磁性体層や絶縁体層が強く求められてい
る。
【0005】従来の平面型磁気素子の例として平面型イ
ンダクタの断面模式図を図3に示す。本従来例は、コイ
ル導体部3aを上下各 4層の磁性体層1でサンドイッチ
した構造である。磁性体層の下地としてAl2 3 (ア
ルミナ)基板4を、磁性体層1の層間絶縁にはSiO2
(酸化ケイ素)層5を、そして磁性体層1とコイル導体
部3の絶縁にはポリイミド層6を用いている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した様
な薄膜インダクタや薄膜トランスにおいては、磁性体層
を成膜する基板、或いは磁性体層とコイル間の絶縁体層
により、保磁力や飽和磁化等の磁性体層の磁気特性が大
きく左右されるという問題がある。
【0007】この様な、磁性体層と接する絶縁体層の影
響は、磁性体層成膜時や磁性体層上への絶縁体層成膜
時、加熱処理を伴うプロセス中、磁性体層の磁気異方性
のための熱処理工程等で生じる。特に、Fe(鉄)を主
成分とする磁性体層材料は、隣接する絶縁体層からの影
響を受け易い。この特徴は、酸素との化合力が大きいと
いうFe自体の特性に因る所が大きいと考えられる。一
般に、Feを主成分として含む磁性体層は、低保磁力や
高飽和磁化といった軟磁性材料としての優れたポテンシ
ャルを有する。しかしその半面、平面型磁気素子への応
用に際しては、前述の様な特性劣化の影響で、本来有す
る特性を充分に生かすことが難しいという問題がある。
【0008】ところで、磁気素子を高周波領域で動作さ
せる場合には渦電流による損失が大きな問題となる。こ
の様な渦電流損失を低減する為に、磁性体層を薄層に分
離し、層間絶縁体層を介した積層構造とする方法が一般
的に知られ、よく用いられる。この様な積層多層膜構造
の場合には、磁性体層の層間絶縁体層によっても、先に
のべたと同様の磁性体層に対する悪影響が生じる。
【0009】更に、磁性層と絶縁層を交互に積層した場
合でも、リフトオフ法や一括エッチング法によって加工
したパターン端部において各磁性層が電気的にショート
すると、渦電流が端部で各磁性層に渡って流れ、損失増
大の大きな原因となる。
【0010】平面型磁気素子の製造に関しては、素子の
構造設計やプロセスの自由度に対し、磁性体層と絶縁体
層の加工性が大きな制約となる。Feを主成分とする磁
性体層は、酸によって容易にウェットエッチングが可能
である。一方、これまで用いられている絶縁体層材料
は、酸等によるエッチングが一般に困難である。したが
って、特にFe系磁性体層との組み合わせで用いられる
絶縁体層についてはウェットエッチング性も強く望まれ
ている。
【0011】本発明は、このような課題に対処するため
になされたもので、請求項1ないし請求項7、請求項1
0および請求項11の発明は、保磁力特性や飽和磁化特
性などの磁気特性に優れた平面型磁気素子および高周波
領域での渦電流損失を抑えるこのできる平面型磁気素子
を提供することを目的とする。
【0012】請求項8および請求項9の発明は、磁気特
性に優れた平面型磁気素子の製造にあたって、磁性膜へ
の垂直磁束による渦電流損低減のためのウェット加工な
どのパターニングに好適な製造方法を、加えて請求項9
の発明は、加工性に優れ、設計の自由度がおおきく、か
つ安価に製造できる平面型磁気素子の製造方法を提供す
ることを目的とする。
【0013】請求項12の発明は、上述の請求項1ない
し請求項7、請求項10および請求項11の平面型磁気
素子に用いることのできる積層構造体を提供することを
目的とする。
【0014】請求項13の発明は、上述の請求項1ない
し請求項7、請求項10および請求項11の平面型磁気
素子を用いたDC/DCコンバータを提供することを目
的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】請求項1の平面型磁気素
子は、Fe(鉄)を含む磁性体層と、この磁性体より比
抵抗の大きい材料からなる絶縁体層との積層膜と、磁性
体層に磁界を印加するコイル導体部とを具備してなる平
面型磁気素子において、絶縁体層は、陽性元素の窒化物
からなることを特徴とする。
【0016】請求項2の平面型磁気素子は、請求項1の
平面型磁気素子において、陽性元素の窒化物は、実質的
に酸素を含まない窒化物であることを特徴とする。
【0017】請求項3の平面型磁気素子は、請求項1ま
たは請求項2の平面型磁気素子において、陽性元素の窒
化物はAl(アルミニウム)を主要元素とする窒化物で
あることを特徴とする。
【0018】請求項4の平面型磁気素子は、請求項1の
平面型磁気素子において、積層膜は複数の磁性体層と窒
化物の層間絶縁体層とを積層してなる構造であることを
特徴とし、かつ積層膜を構成する絶縁体層の層厚が 0.3
μm から 3.0μm の範囲にあることを特徴とする。
【0019】請求項5の平面型磁気素子は、請求項1な
いし請求項4のいずれか1つの平面型磁気素子におい
て、窒化物を構成する陽性元素をM、窒素をNで表した
とき、その元素組成比M/Nが、実質的な化学量論組成
比から 2.0の範囲にあることを特徴とする。
【0020】請求項6の平面型磁気素子は、請求項1な
いし請求項4のいずれか1つの平面型磁気素子におい
て、窒化物を構成する陽性元素をM、窒素をNで表した
とき、その元素組成比M/Nが、実質的な化学量論組成
比から 1.2の範囲にあることを特徴とする。
【0021】請求項7の平面型磁気素子は、請求項1な
いし請求項4のいずれか1つの平面型磁気素子におい
て、元素組成比M/Nが、 1.2を超えて3.0 の範囲にあ
ることを特徴とする。
【0022】請求項8の平面型磁気素子の製造方法は、
基板と、この基板上にFeを含む磁性体層と、この磁性
体より比抵抗の大きい材料からなる絶縁体層との積層膜
を形成する工程と、積層膜の所定のパターン部分を除去
する工程と、磁性体層に磁界を印加するコイル導体部を
形成する工程とを具備する平面型磁気素子の製造方法に
おいて、絶縁体層は、陽性元素をM、窒素をNで表した
とき、0.95≦M/N≦1.2 の範囲にある元素組成比を有
する陽性元素の窒化物から形成され、積層膜の所定のパ
ターン部分の除去はリフトオフ法を用いることを特徴と
する。
【0023】請求項9の平面型磁気素子の製造方法は、
基板と、この基板上にFeを含む磁性体層と、この磁性
体より比抵抗の大きい材料からなる絶縁体層との積層膜
を形成する工程と、積層膜の所定のパターン部分を除去
する工程と、磁性体層に磁界を印加するコイル導体部を
形成する工程とを具備する平面型磁気素子の製造方法に
おいて、絶縁体層は、陽性元素をM、窒素をNで表した
とき、1.2 <M/N≦3.0 の範囲にある元素組成比を有
する陽性元素の窒化物から形成され、積層膜の所定のパ
ターン部分の除去は酸による積層膜の一括エッチング法
を用いることを特徴とする。
【0024】請求項10の平面型磁気素子は、Feを含
む磁性体層と、陽性元素の窒化物からなる前記磁性体よ
り比抵抗の大きい絶縁体層との積層膜と、磁性体層に磁
界を印加するコイル導体部とを具備してなる平面型磁気
素子であって、平面型磁気素子は請求項8または請求項
9の平面型磁気素子の製造方法により製造され、磁性体
層と絶縁体層との積層膜の加工後のパターン端部は、磁
性体層に対して各絶縁体層が突出する構造であることを
特徴とする。
【0025】請求項11の平面型磁気素子は、請求項1
ないし請求項7、および請求項10のいずれか1つの平
面型磁気素子において、Feを含む磁性体層は、主成分
としてFe、またはFe−Co(鉄−コバルト)、また
はFe−Co−B(鉄−コバルト−硼素)と4B族元素
からなる系のヘテロアモルファス膜であることを特徴と
する。
【0026】請求項12の積層構造体は、Feを含む磁
性体層と、陽性元素の窒化物からなる磁性体より比抵抗
の大きい絶縁体層との積層構造体であって、積層構造体
は、磁性体層に磁界を印加するコイル導体部を具備して
平面型磁気素子形成し、Feを含む磁性体層は、主成分
としてFe、またはFe−Co、またはFe−Co−B
と4B族元素からなる系のヘテロアモルファス膜である
ことを特徴とする。
【0027】請求項13のDC/DCコンバータは、チ
ョークコイルとして動作する薄膜インダクタを回路上に
有するDC/DCコンバータにおいて、薄膜インダクタ
は、請求項1ないし請求項7、請求項10および請求項
11のいずれか1つの平面型磁気素子であることを特徴
とする。
【0028】請求項1の平面型磁気素子に関して以下に
説明する。Feを含む磁性体層は、軟磁性かつ高飽和磁
化のポテンシャルを有する。本発明にあっては、Feを
含む磁性体層は、とくにFeを主要元素として含むこと
が好ましい。一方、薄膜の平面型磁気素子に適用する場
合には、成膜時や加熱を伴う工程、および異方性制御の
為の熱処理の際に、この磁性体層と接する膜からの影響
(膜成長に対する下地の影響、成膜時の界面でのMix
ing、加熱工程での固相拡散、膜応力による歪み)を
受けて、保磁力の増大や飽和磁化の低下といった軟磁性
体層としての特性劣化を生じ易い。その結果、磁気素子
の性能低下を招く。しかし、磁性体層と接する下地、層
間絶縁体層、または保護膜に陽性元素の窒化物を用いた
場合には、磁性体層の特性劣化が極めて小さい事が実験
で確認され、本発明はこれを応用したものである。これ
ら磁性体層と接する膜材料の磁気特性への影響は種々の
メカニズムにより生じるものと考えられるが、例えば、
磁性体層の微細構造変化による磁区構造の変化、もしく
は膜中の磁性元素の結合形態変化や原子配列のずれによ
る磁気モーメントの変化に係る現象と考えられる。
【0029】本発明に係る陽性元素の窒化物は、Feを
主成分とする磁性体材料との固相反応を生じ難いか、又
は反応した場合のFe等の磁性元素の磁気モーメントへ
の影響が小さいものと考えられる。逆磁歪効果に関係す
る応力については、成膜条件により、他の薄膜材料と同
レベルかそれ以上の制御性を有すると考えられる。
【0030】ここで陽性元素の窒化物とは、化合物を作
る元素のうち、陽イオンとなり得る元素の窒化物をい
う。具体的にはAl(アルミニウム)、Si(シリコ
ン)、Mg(マグネシウム)、Ti(チタン)、Zr
(ジルコニウム)、B(硼素)など、またはこれらを組
合わせた陽性元素と窒素との化合物をいう。以上の通
り、本発明によれば、ヒステリシス損失が小さく、磁気
飽和に関する特性にも優れた平面型磁気素子を提供する
事ができる。
【0031】請求項2の平面型磁気素子に関して以下に
説明する。陽性元素の窒化物を実質的に酸素を含まない
窒化物とすることにより、Feを主成分とする磁性体材
料との固相反応を生じ難いか、又は反応した場合のFe
等の磁性元素の磁気モーメントへの影響を小さくでき
る。ここで実質的に酸素を含まないとは、酸素量が 0で
あることを意味しない。反応性スパッタリング法やRF
マグネトロンスパッタリング法などによって薄膜を成膜
すると、通常若干量の酸素や炭素を含むことになるが、
実質的に平面型磁気素子の磁気特性に影響を与えない。
また、意図的に数原子%レベルの酸素や炭素を含有させ
た場合には磁気特性の低下がみられるが、ヒステリシス
損失が小さく、磁気飽和に関する特性にも優れていると
の本発明の効果は維持されていた。したがって、本発明
の効果を維持し得る範囲内で数原子%レベル以内の酸素
を含有することは、実質的に酸素を含まないことと言え
る。
【0032】請求項3の平面型磁気素子に関して以下に
説明する。陽性元素の窒化物がAlを主要元素とする窒
化物である場合に、前述の磁気特性の劣化がとくに小さ
い。その微視的メカニズムは明確ではないが、磁性体層
中でのFeと、Alとの反応性の低さに関係し、Feの
磁気モーメントへの影響が小さいためと推定される。
【0033】ここで、Alを主要元素とする窒化物と
は、陽性元素に占めるAlの割合が 50 原子%以上で、
陰性元素が実質的に窒素からなるセラミックスいう。具
体例としては、Al−Si−N、Al−Mg−N、Al
−Zr−N、Al−Ti−N、Al−B−Nあるいはこ
れらの複合体のAl−Si−Mg−N、Al−Si−Z
r−N等を挙げることができる。
【0034】請求項4の平面型磁気素子に関して以下に
説明する。平面型磁気素子を高周波で動作させる場合に
は、渦電流による損失が問題となる。この渦電流損失
は、とりわけ問題となる磁性体層の面内方向の磁束変化
による損失として、概ね層厚の 2乗に比例して増大す
る。したがって、この渦電流損失を低減する為には磁性
体層を薄層化する事が必要である。しかし、磁性体層の
層厚低減は素子の磁気飽和に関する特性を低下させるこ
とから、磁性体層を薄層に分離し、層間絶縁体層を介し
て積層構造とする方法が一般的に用いられている。この
様な方式では、積層数増大に伴って、磁性体層に接する
絶縁体層の影響は当然増大する。したがって、Fe系磁
性体層に対して陽性元素の窒化物系の層間絶縁体層を用
いた本発明は、磁性体層を積層して用いる請求項3の発
明の場合に特に有効となる。
【0035】本発明においては、磁性体層間に挿入する
層間絶縁体層の層厚が薄い程、層間絶縁体層に起因する
磁気抵抗上昇を抑え、磁性体層に加わるトータルの磁束
の低下を抑制できる。したがって、平面型磁気素子とし
てのインダクタンスを有効に確保できる。一方、層間絶
縁体層の層厚が薄過ぎる場合は、渦電流損失を抑える効
果が低減する。比抵抗値にもよるが、以上の兼ね合い
で、概ね 0.3から 3.0μm の層間絶縁体層と磁性体層と
の積層磁性体構造において実質的な効果が両立される。
【0036】請求項5の平面型磁気素子に関して以下に
説明する。窒化物を構成する陽性元素をM、窒素をNで
表したとき、その元素組成比を、M/N≦2.0 の範囲と
すると、磁性体層に対する絶縁体層として効果的な比抵
抗を有し、かつ比抵抗によっては、この層にも生じ得る
渦電流損失を抑え込んだ平面型磁気素子を得ることがで
きる。M/Nの下限は陽性元素と窒素との化学量論組成
比により決まる。しかし陰性元素の窒素が厳格に化学量
論組成比以上には入り込めないとも言い切れず、アモル
ファス膜故に化学量論組成比より若干多めの窒素が膜中
に取り込まれることもあり得る。したがって、「実質的
な化学量論組成比から 2.0の範囲にある」における「実
質的な」の意味は、そのような範囲も包含することを意
味する。
【0037】請求項6の平面型磁気素子において、実質
的な化学量論組成比≦M/N≦1.2の範囲とすると、陽
性元素の窒化膜、例えばAl−N系薄膜は、Feを主成
分とした磁性体層に対し比抵抗が 3桁以上大きな絶縁性
を有する。したがって、積層磁性膜構造の場合に、高周
波使用での渦電流損失を特に効果的に抑制できる。
【0038】また、請求項7の平面型磁気素子におい
て、 1.2<M/N≦3.0 の範囲とすると、以下の利点を
有する。Feを主元素とする磁性体層は、磁性体層とし
てのポテンシャルを有することに加え、酸を用いて容易
にウェットエッチング可能である。一方、請求項6の発
明で限定した組成範囲、即ち化学量論的組成かこれに近
い膜組成を有する陽性元素の窒化膜、例えばAl−N系
薄膜は、酸で容易にエッチングすることができない。
一方、 1.2<M/N≦3.0 の範囲のAl−N系薄膜は、
請求項6の発明の場合に比較して比抵抗は小さく、した
がって層間絶縁機能を持たせる為の層厚に関しては大き
めとなるが、相当の層厚が有れば、層間絶縁体層として
の機能を有する。さらにこの組成範囲のAl−N系薄膜
は、十分に実用レベルの、酸によるウェットエッチング
性を有する。したがって、磁性体層と絶縁体層の積層膜
状態での一括エッチングが可能となる等、加工性におい
て大きな特長を有する。窒素含有率が限定範囲にも満た
ないAl−Nでは、Al−Al間結合の割合がAl−N
間結合の割合を上回る為に金属結合的な電気伝導性が強
く、絶縁体層として最低限必要なレベルの比抵抗を確保
できない。請求項7の発明によれば、加工性に優れ設計
の自由度が大きく、かつ安価な平面型磁気素子を得るこ
とができる。
【0039】請求項6および請求項7の発明に関係する
Al−N系薄膜の比抵抗とウェットエッチング性につい
てさらに説明する。これらの特性は、膜のAl:N組成
比により概ね支配されると考える。その理由は、これら
の特性が、Al−Al結合とAl−N結合の存在比率に
依存するものと考えられるためである。他では、膜の欠
陥や微細構造が比抵抗やウェットエッチング性に影響す
るが、通常のスパッタ成膜条件(パワーや基板温度、ガ
ス圧)の範囲では支配的でないと考えられる。
【0040】請求項8の発明に関して以下に説明する。
先に述べた請求項6の発明に係る組成のAl−N系薄膜
は、混酸等の一般的なエッチャントでは現実的なエッチ
ングレイトを確保する事が困難である。一方、これと積
層するFe系の磁性体層は、混酸等のエッチャントによ
り容易にエッチングされる。これらの積層膜を一括でエ
ッチングした場合は、エッチングレートの差により、極
端なオーバーハングを生じてしまう。また、一層毎にP
EP工程と、夫々別のエッチング手段を用いる場合は工
程が長く、特に磁性体層の積層数を増やした場合には工
数の増加と歩留まりの低下により、生産性の低下が著し
い。絶縁体層としてここで限定した組成範囲のAl−N
膜を採用する場合、リフトオフを用いて積層膜の所定の
パターン部分を除去する方法を用いることにより、請求
項6の発明に係る平面型磁気素子を効率良く生産でき
る。
【0041】請求項9の発明に関して以下に説明する。
先に述べた請求項7の発明に係る組成のAl−N系薄膜
は、混酸等の一般的なエッチャントにより現実的なエッ
チングレイトを確保する事ができる。また、これと積層
するFe系の磁性体層も、混酸等のエッチャントにより
容易にエッチングされる。絶縁体層としてここで限定し
た組成範囲のAl−N膜を採用する場合、これらの膜の
加工性を最大限に利用し、積層膜の所定のパターン部分
を一括エッチングで除去する方法を用いる事により、特
に優れた生産性が得られる。
【0042】請求項10の発明の構造に関して以下に説
明する。絶縁層を介して磁性層を積層構造とする事によ
り、高周波動作での渦電流損失を低減できる事は先に述
べた通りである。しかしこの際、積層構造を加工したパ
ターン端部が電気的にショートしていると、渦電流がパ
ターン端部で各磁性層に渡って流れ、積層構造とした効
果が低減する。層間絶縁層の層厚は厚くても高々数ミク
ロンオーダーであり、一般的なパターン端部の断面構
造、即ち隣接膜どうしが特段の出っ張りや引っ込みを有
しない構造、若しくは磁性層が出っ張る構造では、パタ
ーン端部で磁性層の電気的ショートを生じ易い。それに
対して本発明の構造では、上記の問題点は極めて発生し
難い。当該断面構造の形成方法の一例について説明す
る。積層膜の一括エッチングによりパターン形成する場
合は、Fe系磁性体層のエッチングレートがAl−N系
層間絶縁体層のエッチングレートに比較して大きめとな
るエッチャントを用いる事により、本発明に係る断面構
造が得られる。また、リフトオフにより積層構造を加工
しパターン形成する場合は、リフトオフ後に、一括エッ
チングの場合と同様のエッチャントに当該部分を浸漬す
る事により、本発明に係る断面構造が得られる。
【0043】請求項11の平面型磁気素子と請求項12
の積層構造体について以下に説明する。先に述べた請求
項1ないし請求項7、および請求項10の平面型磁気素
子は、Fe系磁性体層の軟磁性に関する特性が、Al−
N系絶縁層との積層構造により劣化し難い事を応用した
ものである。一方、磁性層に関しては、Fe系、中でも
Fe−Co系、更に中でも特にFe−Co−Bと4B族
元素から成るヘテロアモルファス構造の磁性体層におい
て、特に良好な軟磁気特性が得られる事が確認されてい
る。Al−N系絶縁層は、前述のヘテロアモルファス構
造を有する磁性層への悪影響も小さい。したがって、請
求項1ないし請求項7、および請求項10の平面型磁気
素子に係る磁性体層の絶縁体層との積層構造体に対して
は、ここに挙げた磁性体層を適用した場合に最も効果的
な、即ち低損失でかつ磁気飽和に関する特性に優れた積
層構造体が得られる。したがって、低損失でかつ磁気飽
和に関する特性に優れた平面型磁気素子が得られる。
【0044】請求項13のDC/DCコンバータは、請
求項1ないし請求項7、請求項10および請求項11の
平面型磁気素子を用いることにより、従来の巻線型イン
ダクタに比較して薄型にでき、また従来の平面型インダ
ンタに比較して効率が向上する。
【0045】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を述べる。 実施例1 まず、Fe−Co−B−C系磁性体層とAl−N系絶縁
体層単体、又はこれらを用いた積層膜構造体としての特
性評価について説明する。Al−N系絶縁体層は、Al
とNとの組成比を変えて 6種類試作した。比較用の従来
例としては、Al−Nの代わりにSiO2 、Al
2 3 、Ta、ポリイミド膜を用いた。
【0046】評価は、磁気特性と加工性に関し実施し
た。磁気特性は、飽和磁化、保磁力と動作周波数での複
素透過率を評価した。加工性に関しては、混酸によるエ
ッチングレートを評価した。評価に用いた積層膜の構造
を図4に示す。積層膜の構造は、(A)基板4上に比較
しようとする膜材料の下地膜となる絶縁層2を 1層形成
し、その上に磁性体層1を成膜した場合(図4
(a))、(B)図4(a)に示す磁性体層の上層に、
下地膜と同様の膜を更に 1層成膜した場合(図4
(b))、(C)図4(b)に示す下地膜と同様の膜の
上層に更に磁性体層を成膜した場合(図4(c))の 3
通りとし、夫々の評価項目により使い分けた。
【0047】Fe−Co−B−C系磁性体層の成膜に
は、強磁性体材料成膜用のRFマグネトロンスパッタリ
ング装置を用い、ターゲットへの入力パワー; 5 kw/cm
2 、Ar圧力;0.5Pa 、基板温度; 100℃以下等に関す
る成膜条件は全ての成膜で同一とした。Al−N、Si
2 、Al2 3 、Taの成膜には、RFマグネトロン
スパッタリング装置を用いた。磁性体層の層厚は全て
1.5μm とし、下地膜、層間膜、保護膜の層厚は全て 0.
3μm とした。
【0048】Al−N膜は、Ar+N2 雰囲気中での反
応性スパッタリングで成膜した。その際、AlとNの組
成比は、スパッタリングガス中のN2 分圧により制御し
た。まず、共通条件として、成膜方式はRFマグネトロ
ンスパッタリング、基板温度は室温、背圧は 4×10-4Pa
以下、基板エッチングは 0.2W/cm2 、0.5Pa-Ar、10分の
各条件を設定した。次に個別条件として、N2 分圧を、
条件1は 30mPa、条件2は 35mPa、条件3は 40mPa、条
件4は 44mPa、条件5は 47mPaおよび条件6は50mPaに
設定した。なお、個別条件における入力パワーは 11 W/
cm2 、全圧は300mPa、層厚は 0.3μm にそれぞれ設定し
た。SiO2 、Al2 3 、Taの成膜には、Arをス
パッタリングガスとして用いた。ポリイミド膜の形成
は、前駆体であるポリアミック酸のワニスをスピンコー
トし、所定の条件で焼成する方法で行った。
【0049】以上述べた様に、Fe−Co−B−C系磁
性体層と各種Al−N系層間絶縁体層を用いて積層膜構
造体を作成し、評価した結果の一例を以下に述べる。評
価は、積層膜構造体を真空中 300℃で磁界中熱処理した
後に実施した。評価項目は、保磁力Hcと 5MHz動作
時のQ値である。また本実施例に用いたFe−Co−B
−C系磁性体層と各成膜条件のAl−N膜に関しては、
比抵抗とエッチングレートを評価した。エッチングレー
トは、 50 ℃の混酸( 75 重量%燐酸+ 15 重量%酢酸
+ 5%重量硝酸+水)を用いた場合につき測定した。
【0050】上記の特性評価に先立ち、まず、成膜条件
とAl−N膜組成(AlとNのモル比)との関係を求め
た。図5に結果を示す。膜中のAlとNは、できた膜を
硫酸で溶解した後、Alに関しては誘導結合型プラズマ
(ICP)発光分析機器で、Nに関してはNH3 のイオ
ンクロマトグラフィ分析機器により定量した。スパッタ
成膜時のN2 分圧により、Al/N組成比が変化するこ
とがわかる。
【0051】また図6に、上で得られたAl−N膜のA
l/N組成比と膜の比抵抗との関係を示す。比抵抗は、
Al−N膜を金属電極でサンドイッチし、絶縁抵抗計に
より測定した結果から求めた。
【0052】次に、積層構造体での磁気特性評価結果に
ついて述べる。表2より、Fe−Co−B−C系磁性体
層の下地膜および保護膜としてAl−Nを用いた場合
に、他の材料を用いた場合に比較して保磁力が小さいこ
とがわかる。また、第7図に例示する様に、今回成膜し
た範囲のAl−Nを用いた場合、Fe−Co−B−C系
磁性体層の保磁力には大差無く、いずれも良好な軟磁性
を示す事が確認された。また、積層構造体の飽和磁化に
関しても、本発明に係る構造体の場合は、他の絶縁体層
を用いた構造体に較べて同等、若しくは良好な値を示し
た。
【0053】
【表1】 次に、図4(c)の積層構造体で複素透過率を評価し
た。測定方法としては、インダクタンス法を用いた。5
MHz動作時の複素透過率から求めた損失(Q値の逆
数)とAl−N膜組成(Al/N比)との関係を図8に
示す。図8より、Alの比率が大きくなると損失が増大
する。これは、Al−N膜の比抵抗の低下による渦電流
損失の増加が原因と考えられる。比較対象として、磁性
体層の層間絶縁体層Al−Nを挟まない場合も同様に評
価した。その結果、請求項5の組成範囲のAl−Nにお
いては、比較対象に比べて十分小さい損失(良好なQ
値)を示す事が確認された。特に請求項6の組成範囲の
Al−Nを層間絶縁体層として用いた場合に効果が顕著
であった。これは、当該の組成範囲のAl−Nの場合、
Fe−Co−B−C系磁性体層より 3桁程度かそれ以上
大きな比抵抗を有する事によるものと考えられる。
【0054】次に、Fe−Co−B−C系磁性体層と各
Al−N膜の、混酸によるエッチングレート測定結果を
図9に示す。Al−N膜のエッチングレートは、Alの
比率が大きくなる膜組成側で増大する。請求項4のAl
−N膜の場合、混酸によるエッチングレイトが、現実の
製造プロセス上でも十分使用可能なものと言える。
【0055】また、請求項7のAl−N膜の場合、Fe
−Co−B−C系磁性体層のエッチングレイトに近く、
渦電流損失低減の為に積層多層膜構造とした場合でも、
エッチングレイト差により生じる膜のオーバーハングが
小さい。
【0056】以上説明した、Fe−Co−B−C系磁性
体層と各Al−N膜の単体、及び積層構造体の評価結果
を基にしてプレーナインダクタを作製した。図1に概略
構造を、図2(a)、(b)に主要部の断面図を示す。
図1に示すように、このプレーナインダクタは、平面コ
イル部分3がAl−N絶縁層2を介してFe−Co−B
−C系磁性体層1でサンドイッチ状にされている構造と
なっている。図2(a)は、基板4上に形成された平面
型磁気素子断面を示す。図2(b)は、磁性体層と層間
絶縁層の積層膜加工部を含む実施例の断面模式図である
が、請求項10の発明の説明で述べた方法により、パタ
ーン端部で、磁性体層に対して各絶縁体層が突出する構
造となっている。図2(c)は本実施例の平面型磁気素
子断面に於ける磁束の流れを模式的に示す。
【0057】次に、本発明実施例の平面型磁気素子作製
工程を以下に説明する。まず、Si(100)基板表層
に熱酸化膜を 700nm程度形成した。次の工程として、コ
イル下部の、Fe−Co−B−C磁性体層とAl−N絶
縁体層との積層成膜、及び素子間の分割溝部分、及び磁
性体層面内のスリット溝の加工を行った。積層膜は 4層
の磁性体層と、その上下及び層間絶縁体層の構造とし
た。積層膜の加工には、成膜したAl−NのAl/N組
成比により、リフトオフとエッチングを使い分けた。F
e−Co−B−C磁性体層は、複合ターゲットを用い
て、RFマグネトロンスパッタリングにより成膜した。
Al−N膜は、Al/N組成比が約 1.0、約 1.2、約
1.3、約 3.0の 4通りで成膜した。層厚は、夫々の組成
のAl/Nで、 0.05 μm から 5μm の範囲で試作し
た。積層膜部分の加工は、Al/N組成比が約 1.0、及
び約 1.2の場合にはリフトオフで、Al/N組成比が約
1.3、及び約 3.0の場合には混酸による直接エッチング
で行った。
【0058】引き続き、コイル下部積層磁性体層とコイ
ルとのギャップのSiO2 絶縁層形成、Cuコイル形
成、コイル保護膜ボンディングパッド部電極膜のMoと
Alの成膜、コイル溝部へのポリイミド樹脂埋め込み、
エッチバックCDEによるポリイミド樹脂平坦化、コイ
ル上部の絶縁層形成を行った。次に磁性体層、ボンディ
ングパッド部露出化の工程を行った。続いて、ダイシン
グ加工により、ウエハーから各素子単位に分離した。更
に、磁性体層への一軸異方性付与の為の磁界中熱処理を
経て、本発明の実施例となるプレーナインダクタが完成
した。
【0059】比較用の従来例としては、磁性体層の下地
及び層間絶縁体層として、SiO2、Al2 3 、T
a、ポリイミド膜を夫々用いた。絶縁体層材料以外、素
子の構造やディメンジョンに関しては、本発明実施例と
同一した。
【0060】本発明のプレーナインダクタは、低周波数
からMHz領域の高周波数まで、従来例に比較して良好
なQ値を示した。
【0061】また、Al/N組成比が概ね 1.2以下、層
厚が概ね 0.3μm から 3.0μm の範囲で、高周波数領域
のQ値が特に優れていた。また、Al/N組成比が概ね
1.2から 3.0の範囲で、層厚が概ね 0.3μm から3.0μm
の範囲の場合、積層膜の一括エッチングが容易に行
え、磁気素子の製造プロセス上、十分適用できる事が確
認できた。更に、磁性体層の磁気飽和に関係する直流重
畳特性も、従来例に比較して遜色無いか若しくは優れて
いた。
【0062】実施例2 Feを主成分とする、Fe−B−C等の他の磁性体層材
料を用いた場合も、Al−N系絶縁体層との組み合わせ
により、実施例1と同様、特性及び加工性に優れたプレ
ーナインダクタが得られた。また、Al−N系の絶縁体
層材料に、Si、Ti、Mg、Zr、Y(イットリウ
ム)等の陽性元素を添加した場合も、Alが主要元素で
ある範囲においては、本発明の特長が得られた。また、
Alとこれら陽性元素の合計をMとした場合、窒素Nと
の組成比が請求項5の範囲においては、夫々、Al−N
の場合と同様の特長を有する磁気素子が得られた。
【0063】実施例3 図10に昇圧チョッパ型のDC/DCコンバータ7の回
路図を示す。ここで平面型インダクタ8は入力チョーク
として用いられており、MOSFET9のチョッピング
により生じる誘起電圧を直流電圧に加えて昇圧を行うも
のである。ここでは、パルスジェネレータ10による矩
形波電圧をゲートに印加することでMOSFET9のス
イッチングを行っている。実際の種々のDC/DCコン
バータにおいては制御ICによりMOSFETのスイッ
チングを行えばよい。
【0064】
【発明の効果】請求項1および請求項2の発明は、Fe
を含む磁性体層と陽性元素の窒化物からなる絶縁体層と
の積層膜を用いるので、Feを含む磁性体層の軟磁性材
料としてのポテンシャルを十分に生かし、低保磁力でヒ
ステリシス損失が小さく、磁気飽和に関する特性にも優
れた平面型磁気素子を得ることができる。
【0065】請求項3の発明は、磁性体層がAlを主要
元素とする窒化物からなり、これと接する磁性体層の保
磁力とヒステリシス損失に及ぼす悪影響がとくに小さ
い。したがって、請求項1および請求項2の発明の特長
がとくに著しい平面型磁気素子を得ることができる。
【0066】請求項4の発明は、磁性体層と層間絶縁体
層が積層され、絶縁体層の層厚が 0.3μm から 3.0μm
の範囲にあるので、層間絶縁体層に起因する磁気抵抗を
抑制して、かつ磁性体層の面内方向の磁束変化による渦
電流損失を低減することができる。したがって、高効率
で、かつ平面型磁気素子としてのインダクタンスを有効
に確保できる。
【0067】請求項5の発明は、絶縁体層の元素組成比
M/Nが、実質的な化学量論組成比から2.0 の範囲にあ
るので、絶縁体層として十分大きな比抵抗を有し、比抵
抗によってはこの層にも生じ得る渦電流損失を抑え込ん
だ平面型磁気素子を得ることができる。
【0068】請求項6の発明は、絶縁体層の元素組成比
M/Nが、実質的な化学量論組成比から1.2 の範囲にあ
るので、とくに層間絶縁体層の比抵抗をFe系磁性体層
の比抵抗に対して十分大きくできる。したがって、積層
磁性膜構造をとる請求項4の発明において、渦電流損失
をとくに効果的に低減した平面型磁気素子を得ることが
できる。
【0069】請求項7の発明は、絶縁体層の元素組成比
が、 1.2<M/N≦3.0 の範囲にあるので、積層磁性膜
構造をとる請求項4の発明において、磁性体層と絶縁体
層の一括エッチングが可能となる。したがって、加工性
に優れ、設計の自由度の大きい平面型磁気素子を得るこ
とができる。
【0070】請求項8の発明は、実質的な化学量論組成
比≦M/N≦1.2 の範囲にある元素組成比を有する陽性
元素の窒化物から形成され、積層膜の所定のパターン部
分の除去はリフトオフ法を用いるので、各々1回のPE
Pとエッチングにより、積層磁性体層の所定のパターン
部分を除去できる。したがって、請求項6の平面型磁気
素子を安価に得ることができる。
【0071】請求項9の発明は、1.2 <M/N≦3.0 の
範囲にある元素組成比を有する陽性元素の窒化物から形
成され、積層膜の所定のパターン部分の除去は酸による
積層膜の一括エッチング法を用いるので、積層磁性体層
の所定のパターン部分を、リフトオフにも頼らずに容易
に除去できる。したがって、請求項7の平面型磁気素子
を容易に生産し、安価に得ることができる。
【0072】請求項10の発明は、パターン端部が、磁
性体層に対して各絶縁体層が突出する構造なので、パタ
ーン端部で磁性体層の電気的ショートの発生を抑えるこ
とができる。したがって、高周波動作での渦電流損失を
低減できる効果をより確実にした平面型磁気素子を得る
ことができる。
【0073】請求項11および請求項12の発明は、主
成分として、Fe、Fe−Co、またはFe−Co−B
と4B族元素からなる系のヘテロアモルファス膜を磁性
体層とするので、低損失でかつ磁気飽和に関する特性に
優れた積層構造体、または平面型磁気素子を得ることが
できる。
【0074】請求項13の発明は、請求項1ないし請求
項7、請求項10および請求項11の平面型磁気素子を
用いるので、薄型にでき、また従来に比較して効率が向
上したDC/DCコンバータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例の平面型インダクタ概略構造図で
ある。
【図2】(a)は、本発明実施例の平面型インダクタ断
面図である。(b)は、本発明実施例の平面型インダク
タ断面の磁性体層加工部を示す図である。(c)は、本
発明の実施例の平面型インダクタ断面の磁束を示す図で
ある。
【図3】従来の平面型インダクタ断面模式図
【図4】Fe−Co−B−C系磁性体層とAl−N絶縁
体層の積層構造体の断面図である。
【図5】スパッタガス中の窒素分圧とAl−N膜の組成
比との関係を示す図である。
【図6】層間絶縁Al−N膜組成比と比抵抗との関係を
示す図である。
【図7】層間絶縁Al−N膜組成比とFe−Co−B−
C系磁性体層の保磁力との関係を示す図である。
【図8】層間絶縁Al−N膜組成比とFe−Co−B−
C系磁性体層の損失との関係を示す図である。
【図9】Al−N膜組成比と混酸によるエッチングレー
トとの関係を示す図である。
【図10】昇圧チョッパ型のDC/DCコンバータの回
路図である。
【符号の説明】
1……磁性体層、2……Al−N絶縁層、3……平面コ
イル部分、3a……コイル導体部、4……基板、5……
絶縁層、6……ポリイミド層、7……DC/DCコンバ
ータ、8……平面型インダクタ、9……MOSFET、
10……パルスジェネレータ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 首藤 直樹 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Feを含む磁性体層と、前記磁性体より
    比抵抗の大きい材料からなる絶縁体層との積層膜と、前
    記磁性体層に磁界を印加するコイル導体部とを具備して
    なる平面型磁気素子において、 前記絶縁体層は、陽性元素の窒化物からなることを特徴
    とする平面型磁気素子。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の平面型磁気素子におい
    て、 前記陽性元素の窒化物は、実質的に酸素を含まない窒化
    物であることを特徴とする平面型磁気素子。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2記載の平面型磁
    気素子において、 前記陽性元素の窒化物はAlを主要元素とする窒化物で
    あることを特徴とする平面型磁気素子。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の平面型磁気素子におい
    て、 前記積層膜は複数の前記磁性体層と前記窒化物の層間絶
    縁体層とを積層してなる構造であることを特徴とし、か
    つ前記積層膜を構成する絶縁体層の層厚が 0.3μm から
    3.0μm の範囲にあることを特徴とする平面型磁気素
    子。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし請求項4のいずれか1項
    記載の平面型磁気素子において、 前記窒化物を構成する陽性元素をM、窒素をNで表した
    とき、その元素組成比M/Nが、実質的な化学量論組成
    比から 2.0の範囲にあることを特徴とする平面型磁気素
    子。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし請求項4のいずれか1項
    記載の平面型磁気素子において、 前記元素組成比M/Nが、実質的な化学量論組成比から
    1.2の範囲にあることを特徴とする平面型磁気素子。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし請求項4のいずれか1項
    記載の平面型磁気素子において、 前記元素組成比M/Nが、 1.2を超えて3.0 の範囲にあ
    ることを特徴とする平面型磁気素子。
  8. 【請求項8】 基板と、この基板上にFeを含む磁性体
    層と、この磁性体より比抵抗の大きい材料からなる絶縁
    体層との積層膜を形成する工程と、前記積層膜の所定の
    パターン部分を除去する工程と、前記磁性体層に磁界を
    印加するコイル導体部を形成する工程とを具備する平面
    型磁気素子の製造方法において、 前記絶縁体層は、陽性元素をM、窒素をNで表したと
    き、0.95≦M/N≦1.2の範囲にある元素組成比を有す
    る陽性元素の窒化物から形成され、前記積層膜の所定の
    パターン部分の除去はリフトオフ法を用いることを特徴
    とする平面型磁気素子の製造方法。
  9. 【請求項9】 基板と、この基板上にFeを含む磁性体
    層と、この磁性体より比抵抗の大きい材料からなる絶縁
    体層との積層膜を形成する工程と、前記積層膜の所定の
    パターン部分を除去する工程と、前記磁性体層に磁界を
    印加するコイル導体部を形成する工程とを具備する平面
    型磁気素子の製造方法において、 前記絶縁体層は、陽性元素をM、窒素をNで表したと
    き、1.2 <M/N≦3.0の範囲にある元素組成比を有す
    る陽性元素の窒化物から形成され、前記積層膜の所定の
    パターン部分の除去は酸による積層膜の一括エッチング
    法を用いることを特徴とする平面型磁気素子の製造方
    法。
  10. 【請求項10】 Feを含む磁性体層と、陽性元素の窒
    化物からなる前記磁性体より比抵抗の大きい絶縁体層と
    の積層膜と、前記磁性体層に磁界を印加するコイル導体
    部とを具備してなる平面型磁気素子であって、 前記平面型磁気素子は請求項8または請求項9記載の平
    面型磁気素子の製造方法により製造され、 前記磁性体層と前記絶縁体層との積層膜の加工後のパタ
    ーン端部は、磁性体層に対して各絶縁体層が突出する構
    造であることを特徴とする平面型磁気素子。
  11. 【請求項11】 請求項1ないし請求項7、および請求
    項10のいずれか1項記載の平面型磁気素子において、 前記Feを含む磁性体層は、主成分として、Fe、Fe
    −Co、またはFe−Co−Bと4B族元素からなる系
    のヘテロアモルファス膜であることを特徴とする平面型
    磁気素子。
  12. 【請求項12】 Feを含む磁性体層と、陽性元素の窒
    化物からなる前記磁性体より比抵抗の大きい絶縁体層と
    の積層構造体であって、 前記積層構造体は、前記磁性体層に磁界を印加するコイ
    ル導体部を具備して平面型磁気素子形成し、前記Feを
    含む磁性体層は、主成分としてFe、Fe−Co、また
    はFe−Co−Bと4B族元素からなる系のヘテロアモ
    ルファス膜であることを特徴とする積層構造体。
  13. 【請求項13】 チョークコイルとして動作する薄膜イ
    ンダクタを回路上に有するDC/DCコンバータにおい
    て、 前記薄膜インダクタは、請求項1ないし請求項7、請求
    項10および請求項11のいずれか1項記載の平面型磁
    気素子であることを特徴とするDC/DCコンバータ。
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