JPH09313591A - 抗菌性生体適用物品及びその製造方法 - Google Patents

抗菌性生体適用物品及びその製造方法

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JPH09313591A
JPH09313591A JP8133255A JP13325596A JPH09313591A JP H09313591 A JPH09313591 A JP H09313591A JP 8133255 A JP8133255 A JP 8133255A JP 13325596 A JP13325596 A JP 13325596A JP H09313591 A JPH09313591 A JP H09313591A
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article
titanium
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Application number
JP8133255A
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English (en)
Inventor
Yasushi Iwamoto
泰志 岩本
Akinori Ebe
明憲 江部
Osamu Imai
今井  修
Kiyoshi Ogata
潔 緒方
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Nissin Electric Co Ltd
Original Assignee
Nissin Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高分子材料からなる生体適用物品に抗菌活性を
有する金属膜を被覆した抗菌性生体適用物品であって、
人体に対して安全であるとともに実用上十分な抗菌活性
を有し、しかも金属膜がこの物品上に密着性良く形成さ
れている抗菌性生体適用物品及びその製造方法を提供す
る。 【解決手段】シリコンゴム、ポリテトラフルオロエチレ
ン、ポリウレタン、ポリエチレン及びポリプロピレンの
1又は2以上からなる生体適用物品Sの、装着状態で生
体組織と接触する部分に、チタン層、白金層がこの順に
形成された積層膜、チタン層、白金層、銀層がこの順に
形成された積層膜、チタン層、白金層、金層がこの順に
形成された積層膜、チタン層、金層、銀層がこの順に形
成された積層膜、チタン層、窒化チタン層、銀層がこの
順に形成された積層膜又は窒化チタン層、銀層がこの順
に形成された積層膜Mが被覆されている抗菌性生体適用
物品及びその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生体組織と接触さ
せて用いる医療用物品等の生体適用物品であって、抗菌
活性を有する抗菌性生体適用物品及びその製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】人工歯根、人工関節、人工血管、人工心
臓弁等の生体に埋入される物品やカテーテル等の生体に
一時留置される物品の材料には、金属、セラミック、高
分子材料等が採用されている。このうち高分子材料は、
他の材料にない柔軟性を有することから多用されている
が、中でも人体に対する安全性の観点から、生体組織に
対して不活性なシリコンゴム、ポリテトラフルオロエチ
レン(PTFE)、ポリウレタン等が一般に用いられて
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】また、生体組織は本来
細菌等を排除しようとする機能を有するが、生体組織に
不活性な材料からなる物品を体内に埋入或いは留置等す
ると、生体組織と該物品とがなじまないために該物品表
面部分には生体組織の有する前記抵抗力が発揮され難
い。そして、該物品表面部分に細菌等が侵入するとその
部分で繁殖し易くなる。
【0004】このように、生体組織と接触させて用いる
生体適用物品は、人体に対して安全であるとともに該物
品を生体に適用することによる細菌等の繁殖を抑制でき
ることが求められる。そこで、銀、金、白金等の、抗菌
活性を有するとともに人体に対し安全な金属をセラミッ
クに担持させたものを高分子材料に練り込んで成形する
ことが試みられている。
【0005】しかし、この方法は担持体のセラミックが
人体に対し有害であったり、付与できる金属の量に限界
があり金属の種類によっては十分な抗菌活性が得られな
かったりする場合がある。また、金属を練り込んだ高分
子材料からなる物品を、医療用物品の滅菌方法として一
般に行われているように高温高圧蒸気滅菌すると、練り
込まれた金属が溶出することがあり、該物品の滅菌方法
が制限される。
【0006】また、前記高分子物品を銀、金、白金等の
抗菌性金属膜で被覆する方法も試みられているが、高分
子材料と金属という性質が大きく異なる材料を組み合わ
せているため該両者の十分な密着性を得ることが難し
い。特に銀、金、白金等の貴金属は化学的に安定である
ため、このことからも高分子材料との密着性を十分なも
のにすることは難しい。
【0007】このため、前記金属膜と高分子物品との間
に、該両者の密着性を向上させるために中間膜を形成す
ることが試みられているが、十分な密着性が得られなか
ったり、十分な密着性が得られても中間膜の材料が人体
に対して有害或いは安全性が確認されていない等のこと
から実用化には至っていない。そこで本発明は、高分子
材料からなる生体適用物品に抗菌活性を有する金属膜を
被覆した抗菌性生体適用物品であって、人体に対して安
全であるとともに実用上十分な抗菌活性を有し、しかも
該金属膜が該物品上に密着性良く形成されている抗菌性
生体適用物品及びその製造方法を提供することを目的と
する。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に本発明は、シリコンゴム、ポリテトラフルオロエチレ
ン、ポリウレタン、ポリエチレン及びポリプロピレンか
ら選ばれた少なくとも1種の高分子材料からなる生体適
用物品の、装着状態において生体組織と接触する部分
に、 (a)チタン層及び白金層がこの順に形成された積層膜 (b)チタン層、白金層及び銀層がこの順に形成された
積層膜 (c)チタン層、白金層及び金層がこの順に形成された
積層膜 (d)チタン層、金層及び銀層がこの順に形成された積
層膜 (e)チタン層、窒化チタン層及び銀層がこの順に形成
された積層膜 (f)窒化チタン層及び銀層がこの順に形成された積層
膜 のいずれかの積層膜が被覆されていることを特徴とする
抗菌性生体適用物品を提供する。
【0009】また、前記課題を解決するために本発明
は、シリコンゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ
ウレタン、ポリエチレン及びポリプロピレンから選ばれ
た少なくとも1種の高分子材料からなる生体適用物品
の、装着状態において生体組織と接触する部分に、 (a)チタン層及び白金層がこの順に形成された積層膜 (b)チタン層、白金層及び銀層がこの順に形成された
積層膜 (c)チタン層、白金層及び金層がこの順に形成された
積層膜 (d)チタン層、金層及び銀層がこの順に形成された積
層膜 (e)チタン層、窒化チタン層及び銀層がこの順に形成
された積層膜 (f)窒化チタン層及び銀層がこの順に形成された積層
膜 のいずれかの積層膜を被覆することを特徴とする抗菌性
生体適用物品の製造方法を提供する。
【0010】前記本発明の抗菌性生体適用物品及びその
製造方法において、前記積層膜は、前記物品の、装着状
態において生体組織と接する部分のみならず、該部分に
加えてその他の部分上にも形成しても構わない。前記本
発明の抗菌性生体適用物品及びその製造方法によると、
生体適用物品の、少なくとも装着状態において生体組織
と接触する部分に抗菌活性を有する銀、金又は白金層が
形成されているため、該物品の生体組織との接触部分に
おいて十分な抗菌活性を発揮することができる抗菌性生
体適用物品が得られる。また、前記生体適用物品の材料
である高分子物質はいずれも生体組織に対して不活性で
人体に対して安全なものであり、また、いずれの膜材料
も人体に対して安全なものであるため、全体として人体
に対して安全な抗菌性生体適用物品が得られる。さら
に、前記(a)〜(f)の積層膜において、最も外側の
層を構成する抗菌性金属である銀、金又は白金はいずれ
も化学的に安定であるため、これらの膜は高分子物品と
の密着性が劣るが、いずれの積層膜も高分子物品と接触
する層が該物品との密着性が比較的良好なチタン層又は
窒化チタン層であり、また、前記積層膜内の各層間の密
着性も良好であるため、全体として前記高分子からなる
生体適用物品上に密着性良く形成されている。
【0011】本発明の抗菌性生体適用物品において、積
層膜全体の膜厚は100μm以下、より好ましくは10
μm以下であることが考えられる。これは、膜厚が10
0μmより大きい場合、膜に大きな応力が発生して膜密
着力が低下したり、高分子からなる生体適用物品の柔軟
性が損なわれたりするからである。また、前記積層膜の
最外層である銀層、金層又は白金層の層厚は積層膜全体
が前記膜厚になる範囲で10nm以上、より好ましくは
50nm以上であることが考えられる。これは最外層の
層厚が10nmより小さい場合、使用中に高温高圧蒸気
滅菌や摩耗等により膜中金属が除々に消失して抗菌活性
が低減する恐れがあるからである。
【0012】また、前記積層膜の最外層と生体適用物品
との間に形成される各中間層の厚さは積層膜全体が前記
膜厚になる範囲で1nm以上、より好ましくは3nm以
上であることが考えられる。これは各中間層の層厚が1
nmより小さい場合、十分な膜密着性が得られないから
である。本発明方法において、前記積層膜の生体適用物
品と接する最も内側の層の形成は、イオンプレーティン
グ法、マルチアーク蒸着法、各種CVD法等のドライプ
ロセスで行うことができる。前記積層膜の生体適用物品
と直接接しない各層は、前記ドライプロセスや電解めっ
き法、無電解めっき法等のウエットプロセスにより形成
することができる。
【0013】本発明の抗菌性生体適用物品及び製造方法
において、前記生体適用物品の前記(a)〜(f)のい
ずれかの積層膜を形成する表面に、膜形成に先立ち窒素
ガス、酸素ガス及び不活性ガス(ヘリウム(He)ガ
ス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリ
プトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガス等)のうち
少なくとも1種のガスのイオンを照射し、該表面部分に
これらのイオンが照射された層を形成することが考えら
れる。
【0014】これにより、前記生体適用物品表面のイオ
ン照射された部分の原子が活性化されて、その上に形成
する積層膜との密着性が向上する。また、イオン照射は
低温プロセスであるため、この方法は耐熱性が比較的劣
る高分子材料と金属膜との密着性を向上させる方法とし
て適当なものである。また、いずれの照射イオンも人体
に対して安全なものである。
【0015】この場合、イオン加速エネルギは50eV
以上5keV以下とし、イオン照射量は5×1014io
ns/cm2 以上1×1018ions/cm2 以下とす
ることが考えられる。これは、イオン加速エネルギやイ
オン照射量が、このような下限値より小さいとイオン照
射による十分な効果が得られず膜密着性を十分向上させ
難く、このような上限値より大きいと比較的耐熱性に劣
る高分子物品に熱的等の損傷を与え、該物品の有する諸
特性を劣化させる恐れがあるからである。
【0016】なお、イオン照射はイオン源を用いて行え
るほか、該イオン照射に用いるイオンの原料ガスのプラ
ズマに前記生体適用物品を曝しても行うことができる。
この場合、例えば高周波プラズマ発生装置、直流放電プ
ラズマ発生装置等を用いてプラズマを発生させるが、高
周波放電プラズマ発生装置を用いる場合、印加電力は5
0W以上1kW以下が望ましく、直流放電プラズマ発生
装置を用いる場合、印加電圧は50V以上1kV以下が
望ましい。これは、このような下限値より小さいと安定
してプラズマを発生させ難く、このような上限値より大
きいと高分子からなる生体適用物品に熱的等の損傷を与
え、該物品の特性を劣化させる恐れがあるからである。
【0017】生体適用物品への前記積層膜形成に先立
ち、該物品表面に前記ガスのイオンを照射する場合、前
記積層膜の生体適用物品と接する最も内側の層の形成
は、イオンプレーティング法、マルチアーク蒸着法、各
種CVD法に加えて真空蒸着法及びスパッタ蒸着法等の
ドライプロセスで行うことができる。前記積層膜の生体
適用物品と直接接しない各層は、前記ドライプロセスや
電解めっき法、無電解めっき法等のウェットプロセスに
より形成することができる。
【0018】また、本発明の抗菌性生体適用物品及びそ
の製造方法において、前記生体適用物品上への前記
(a)、(b)、(c)、(d)又は(e)の積層膜形
成開始時に、すなわち最内層であるチタン層形成開始時
に、前記物品に対しチタン層構成物質を付与するととも
に、不活性ガスのうち少なくとも1種のガスのイオンを
照射し、また、前記生体適用物品上への前記(f)の積
層膜形成開始時に、すなわち最内層である窒化チタン層
形成開始時に、前記物品に対し窒化チタン層構成物質を
付与するとともに、窒素ガス及び不活性ガスのうち少な
くとも1種のガスのイオンを照射することが考えられ
る。
【0019】これによると、前記高分子からなる物品の
表面が活性化されるとともに、前記物品と前記最内層
(チタン層又は窒化チタン層)との界面部分に該両者の
混合層が形成されるため、前記高分子からなる生体適用
物品と前記積層膜との密着性は一層良好なものとなる。
なお、イオン照射は最内層であるチタン層や、窒化チタ
ン層の形成開始時のみならず、該チタン層や窒化チタン
層形成時全体を通して適用してもよく、さらには、その
後積層膜形成終了時まで任意の期間続けてよく、最内層
形成終了後も続ける場合は、本発明の抗菌性生体適用物
品は、生体適用物品と最内層との間だけでなく、最内層
とその上層との間又は積層膜が3層からなる場合には各
層間にも混合層を有するものとなり、積層膜の生体適用
物品に対する密着性は一層良好なものとなる。
【0020】この場合、イオン照射時の加速エネルギは
50eV以上10keV以下、より好ましくは100e
V以上5keV以下とすることが望ましい。これは、こ
のような下限値より小さいと混合層が形成され難く、積
層膜の膜密着性を十分向上させることが困難だからであ
り、このような上限値より大きいと高分子からなる生体
適用物品に熱的等の損傷を与え、該物品の有する諸特性
を劣化させる恐れがあるからである。
【0021】また、生体適用物品に到達する膜構成原子
数(A)とイオン数(I)との比(A/I比)は0.1
以上500以下とすることが望ましい。これは、A/I
比が0.1より小さいと照射イオンにより膜構成原子が
スパッタされて膜堆積が困難になったり、膜内に空孔の
ような欠陥が多く生じるようになるからであり、A/I
比が500より大きいと、密着性を向上させることがで
きるだけの十分な厚さの混合層を形成し難いからであ
る。
【0022】前記積層膜中の少なくとも最内層を含む層
形成を、層構成物質を付与するとともに前記イオンを照
射することで行う場合、層構成物質の付与は真空蒸着
法、スパッタ蒸着法等により行うことができる。前記積
層膜の生体適用物品と直接接しない各層は真空蒸着法、
スパッタ蒸着法、イオンプレーティング法、マルチアー
ク蒸着法、各種CVD法等のドライプロセス及び電解め
っき法、無電解めっき法等のウェットプロセスにより形
成することができる。
【0023】本発明方法において、イオン照射に用いる
ことができるイオン源はバケット型イオン源、カウフマ
ン型イオン源等を例示することができ、特に限定されな
い。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかる抗菌性生体
適用物品を製造した具体的実施例及びそれにより得られ
た抗菌性生体適用物品について、図面を参照して説明す
る。以下に説明する実施例1、2及び比較例1、2にお
いては、図1に概略構成を示す成膜装置を用いて抗菌性
生体適用物品を製造した。この装置は、真空槽1を有
し、真空槽1内には被成膜物品Sを保持する治具2が設
置され、治具2に対向する位置には、3台の蒸発源3
a、3b、3c及びイオン源4が設けられている。ま
た、治具2付近には膜厚モニタ5及びイオン電流測定器
6(ここではファラデーカップ)が配置されている。ま
た、真空槽1には排気装置11が付設され、槽1内を所
定の真空度にすることができる。なお、図示しないが、
治具2には生体に適用するための被成膜物品Sを冷却す
るための冷却機構並びに複雑な構造の被成膜物品上にも
均一な成膜が行えるようにするための回転機構及び(又
は)歳差運動機構が設けられている。
【0025】また、以下に説明する実施例3において
は、図2に概略構成を示す成膜装置を用いて抗菌性生体
適用物品を製造した。この装置はイオンプレーティング
装置であり、真空槽1´を有し、真空槽1´内には被成
膜物品Sを保持する治具2´が設置され、治具2´に対
向する位置には3台の蒸発源3a´、3b´、3c´が
設けられている。また、治具2´と蒸発源3a´、3b
´、3c´との間には高周波アンテナ81が設けられ、
アンテナ81には高周波電源82が接続されている。真
空槽1´にはプラズマ原料ガス供給部9が付設され、高
周波アンテナ81付近にプラズマ原料ガスを導入できる
ようになっている。また、真空槽1´には排気装置11
´が付設され、槽1´内を所定の真空度にすることがで
きる。なお、図示しないが、治具2´は図1の装置にお
ける治具2と同様に物品冷却機構並びに回転機構及び
(又は)歳差運動機構を有するものである。 実施例1 被成膜物品Sとしてシリコンゴムからなる医療用物品を
用いた。物品Sを図1の装置の真空槽1内に搬入し、治
具2に保持させた。
【0026】物品S上への積層膜形成に先立ち、イオン
源4からアルゴンイオンを加速エネルギ1keV、イオ
ン照射量1×1016ions/cm2 として物品Sに照
射した。イオン照射時の槽1内の真空度は5×10-5
orrとした。このようにして、物品S表面部分にアル
ゴンイオン照射による活性化層S1を形成した。なお、
ここではイオン源4を用いたイオン照射により活性化層
S1を形成したが、図1中、2点鎖線で示すように、治
具2を挟み対向する位置に設けられた電極71a、71
b、これらの間に直流電圧を印加するための直流電源7
2及び電極71a、71b間にプラズマ原料ガスを供給
するためのプラズマ原料ガス供給部73からなるプラズ
マ発生装置7を備え、ガス供給部73からアルゴンガス
を電極71a、71b間に供給するとともに、この電極
間に電圧印加して導入したアルゴンガスをプラズマ化さ
せ、このプラズマに物品Sを曝すことで物品S表面への
イオン照射を行い、層S1を形成してもよい。
【0027】次いで、槽1内を排気装置11の運転にて
5×10-6Torrの真空度とし、蒸発源3aからチタ
ンを蒸発させて物品S(層S1)上に厚さ100nmの
チタン層を形成した後、蒸発源3bから白金を蒸発させ
て、該チタン層上に厚さ100nmの白金層を形成し、
さらに、蒸発源3cから銀を蒸発させて、該白金層上に
厚さ800nmの銀層を形成した。各層厚は膜厚モニタ
5でモニタすることで制御した。
【0028】このようにして、図3(A)に示すよう
に、シリコンゴムからなる生体適用物品S表面部分にア
ルゴンイオン照射による活性化層S1を有し、層S1上
にチタン層L1、白金層L2及び銀層L3がこの順に積
層された膜Mを有する抗菌性生体適用物品が得られた。 実施例2 前記本発明実施例1において、アルゴンイオン照射によ
る物品Sの前処理を行わず、またチタン層S1形成を、
物品Sに対し、蒸発源3からチタンを蒸発させるととも
にイオン源4からアルゴンイオンを照射することで行っ
た。このアルゴンイオン照射は、イオン加速エネルギを
1keVとし、A/I比が10になるようにして行っ
た。イオン照射時の槽1内の真空度は5×10-5Tor
rとした。その他の条件は実施例1と同様にして、図3
(B)に示すように、シリコンゴムからなる生体適用物
品S上にチタン層L1、白金層L2及び銀層L3がこの
順に積層された膜Mを有し、チタン層L1と物品Sとの
界面部分に該両者の混合層mを有する抗菌性生体適用物
品が得られた。A/I比は、膜厚モニタ5により蒸発原
子数をモニタし、ファラデーカップ6で照射イオン数を
モニタすることで調整した。 実施例3 被成膜物品Sとしてシリコンゴムからなる医療用物品を
用いた。物品Sを図2の装置の真空槽1´内に搬入し、
治具2´に保持させた。次いで、槽1´内を排気装置1
1´の運転にて5×10-6Torrの真空度とし、蒸発
源3a´からチタンを蒸発させた。それとともに、プラ
ズマ原料ガス供給部9からアルゴンガスを槽1´内に導
入し、電源82から高周波電力をアンテナ81に供給し
て前記導入したアルゴンガスをプラズマ化させた。この
プラズマによりチタン蒸着粒子の一部をイオン化し、該
イオンを中性の蒸着粒子とともに物品S上に照射して、
物品S上に厚さ100nmのチタン層を形成した。
【0029】次いで、該チタン層形成と同様にして、但
し蒸発源3a´からチタンを蒸発させるのに代えて蒸発
源3b´から白金を蒸発させて、該チタン層上に厚さ1
00nmの白金層を形成した。さらに、該チタン層形成
と同様にして、但し蒸発源3a´からチタンを蒸発させ
るのに代えて蒸発源3c´から銀を蒸発させて、該白金
層上に厚さ800nmの銀層を形成した。
【0030】このようにして、図3(C)に示すよう
に、シリコンゴムからなる生体適用物品S上にチタン層
L1´、白金層L2´及び銀層L3´がこの順に積層さ
れた膜M´を有する抗菌性生体適用物品が得られた。な
お、前記実施例1、2及び3においては生体適用物品の
略全露出表面に積層膜を形成したが、装着状態において
生体組織と接触する部分にのみ積層膜を形成する場合
や、該部分及びその他の部分の一部に積層膜を形成する
場合には、膜形成しない部分を適当な方法で遮蔽した状
態で成膜を行えばよい。 比較例1図1の装置を用い、前記実施例1と同様のシリ
コンゴムからなる生体適用物品 S上に、イオン照射を併用しない単なる真空蒸着法によ
り膜厚1μmの銀膜を形成した。 比較例2 図1の装置を用い、前記実施例1と同様のシリコンゴム
からなる生体適用物品S上に、単なる真空蒸着法により
厚さ100nmのチタン層及び厚さ800nmの銀層が
この順に形成された積層膜を形成した。
【0031】なお、前記比較例1、2ではイオン照射に
よる物品Sの前処理は行っていない。次に、前記実施例
1、2、3及び比較例1、2により得られた抗菌性生体
適用物品について、成膜直後及び通常の高温高圧蒸気滅
菌後の膜密着性をテープ引き剥がし試験(クロスカット
法)によりそれぞれ調べた。結果を次表に示す。 成膜直後 高温高圧蒸気滅菌後 実施例1 剥離なし 剥離なし 実施例2 剥離なし 剥離なし 実施例3 剥離なし 剥離なし 比較例1 剥離した 剥離した 比較例2 剥離した 剥離した このように、本発明実施例1、2、3による抗菌性生体
適用物品はいずれも、成膜直後に良好な膜密着性を示
し、高温高圧蒸気滅菌後も膜密着性の低下はみられなか
った。一方、物品S上に化学的に安定な銀膜のみを形成
した比較例1による抗菌性生体適用物品、並びに物品S
上にチタン層及び化学的に安定な銀層を形成し、該両者
を密着させるための中間層を形成しなかった比較例2に
よる抗菌性生体適用物品では成膜直後から膜剥離が生じ
た。
【0032】次に、実施例1の抗菌性生体適用物品と同
様の抗菌性積層膜を形成したシリコンゴム小片及びこの
積層膜を形成していないシリコンゴム小片の大腸菌に対
する抗菌活性を評価した。抗菌活性の評価はJIS L
1902-1990 で定めるシエークフラスコ法により、生
菌数の変化を経時的に調べることで行った。結果を次表
に示す。表中の数値は生菌数をCFU(colony forming
unit) /mlで示したものである。 培養時間(時間) 0 8 24 48 抗菌性積層膜形成 3.7 ×106 8.4 ×105 検出限界以下 検出限界以下 未処理 3.7 ×106 1.9 ×106 1.1 ×106 1.1 ×106 このように、実施例1と同様の積層膜を形成したシリコ
ンゴム小片を大腸菌の菌液に添加した場合、振盪培養開
始後24時間で生菌数は検出限界以下となり、優れた抗
菌活性を示したが、このような積層膜を有さない未処理
のシリコンゴム小片では生菌数の変化はみられなかっ
た。
【0033】なお、実施例1、2及び3により得られた
抗菌性生体適用物品に代えて、チタン層及び白金層がこ
の順に形成された積層膜を有するシリコンゴム生体適用
物品、チタン層、白金層及び金層がこの順に形成された
積層膜を有するシリコンゴム生体適用物品、チタン層、
金層及び銀層がこの順に形成された積層膜を有するシリ
コンゴム生体適用物品、チタン層、窒化チタン層及び銀
層がこの順に形成された積層膜を有するシリコンゴム生
体適用物品、窒化チタン層及び銀層がこの順に形成され
た積層膜を有するシリコンゴム生体適用物品のそれぞれ
についても、前記と同様にして密着性及び大腸菌に対す
る抗菌活性を調べたところ、実施例1、2及び3と同様
に良好な膜密着性が得られ、また実施例1と同様に良好
な抗菌活性が得られた。
【0034】
【発明の効果】本発明方法によると、高分子材料からな
る生体適用物品に抗菌活性を有する金属膜を被覆した抗
菌性生体適用物品であって、人体に対して安全であると
ともに実用上十分な抗菌活性を有し、しかも該金属膜が
該物品上に密着性良く形成されている抗菌性生体適用物
品及びその製造方法を提供することができる。
【0035】さらに説明すると、本発明の抗菌性生体適
用物品及びその製造方法によると、次のような効果が得
られる。 (i)人体に安全な材料で構成されていることから、安
全性に優れる抗菌性生体適用物品が得られる。 (ii) 抗菌活性を有する金属が生体適用物品上に膜とし
て付与されているため、十分な抗菌活性を得ることがで
きるとともに、高温高圧蒸気滅菌によっても該金属が溶
出し難く、有効な抗菌活性が維持される。 (iii)形成された積層膜が密着性に優れるため、該膜の
有する抗菌活性が長期にわたり維持されるとともに、体
内で金属片が剥離するといった危険を回避することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る抗菌性生体適用物品を製造するこ
とができる成膜装置の1例の概略構成を示す図である。
【図2】本発明に係る抗菌性生体適用物品を製造するこ
とができる成膜装置の他の例の概略構成を示す図であ
る。
【図3】図(A)は、本発明に係る抗菌性生体適用物品
の1例の一部の拡大断面図であり、図(B)は、本発明
に係る抗菌性生体適用物品の他の例の一部の拡大断面図
であり、図(C)は、本発明に係る抗菌性生体適用物品
のさらに他の例の一部の拡大断面図である。
【符号の説明】
1、1´ 真空槽 11、11´ 排気装置 2、2´ 治具 3a、3b、3c、3a´、3b´、3c´ 蒸発源 4 イオン源 5 膜厚モニタ 6 ファラデーカップ 7 プラズマ発生装置 71a、71b 電極 72 直流電源 73 プラズマ原料ガス供給部 81 高周波アンテナ 82 高周波電源 9 プラズマ原料ガス供給部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 緒方 潔 京都市右京区梅津高畝町47番地 日新電機 株式会社内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリコンゴム、ポリテトラフルオロエチ
    レン、ポリウレタン、ポリエチレン及びポリプロピレン
    から選ばれた少なくとも1種の高分子材料からなる生体
    適用物品の、装着状態において生体組織と接触する部分
    に、 (a)チタン層及び白金層がこの順に形成された積層膜 (b)チタン層、白金層及び銀層がこの順に形成された
    積層膜 (c)チタン層、白金層及び金層がこの順に形成された
    積層膜 (d)チタン層、金層及び銀層がこの順に形成された積
    層膜 (e)チタン層、窒化チタン層及び銀層がこの順に形成
    された積層膜 (f)窒化チタン層及び銀層がこの順に形成された積層
    膜 のいずれかの積層膜が被覆されていることを特徴とする
    抗菌性生体適用物品。
  2. 【請求項2】 前記生体適用物品が、前記いずれかの積
    層膜が被覆される表面部分に窒素ガス、酸素ガス及び不
    活性ガスのうち少なくとも1種のガスのイオンが照射さ
    れた層を有するものである請求項1記載の抗菌性生体適
    用物品。
  3. 【請求項3】 前記(a)、(b)、(c)、(d)又
    は(e)の積層膜における前記チタン層が、前記生体適
    用物品に前記チタン層構成物質を付与するとともに、チ
    タン層形成開始時に不活性ガスのうち少なくとも1種の
    ガスのイオンを照射して形成されたものである請求項1
    又は2記載の抗菌性生体適用物品。
  4. 【請求項4】 前記(f)の積層膜における前記窒化チ
    タン層が、前記生体適用物品に前記窒化チタン層構成物
    質を付与するとともに、窒化チタン層形成開始時に窒素
    ガス及び不活性ガスのうち少なくとも1種のガスのイオ
    ンを照射して形成されたものである請求項1又は2記載
    の抗菌性生体適用物品。
  5. 【請求項5】 シリコンゴム、ポリテトラフルオロエチ
    レン、ポリウレタン、ポリエチレン及びポリプロピレン
    から選ばれた少なくとも1種の高分子材料からなる生体
    適用物品の、装着状態において生体組織と接触する部分
    に、 (a)チタン層及び白金層がこの順に形成された積層膜 (b)チタン層、白金層及び銀層がこの順に形成された
    積層膜 (c)チタン層、白金層及び金層がこの順に形成された
    積層膜 (d)チタン層、金層及び銀層がこの順に形成された積
    層膜 (e)チタン層、窒化チタン層及び銀層がこの順に形成
    された積層膜 (f)窒化チタン層及び銀層がこの順に形成された積層
    膜 のいずれかの積層膜を被覆することを特徴とする抗菌性
    生体適用物品の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記生体適用物品の前記いずれかの積層
    膜を形成する表面に窒素ガス、酸素ガス及び不活性ガス
    のうち少なくとも1種のガスのイオンを照射した後、前
    記いずれかの積層膜を被覆する請求項5記載の抗菌性生
    体適用物品の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記生体適用物品上への前記(a)、
    (b)、(c)、(d)又は(e)の積層膜の前記チタ
    ン層形成開始時に、前記物品に対し前記チタン層構成物
    質を付与するとともに、不活性ガスのうち少なくとも1
    種のガスのイオンを照射する請求項5又は6記載の抗菌
    性生体適用物品の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記生体適用物品上への前記(f)の積
    層膜の前記窒化チタン層形成開始時に、前記物品に対し
    前記窒化チタン層構成物質を付与するとともに、窒素ガ
    ス及び不活性ガスのうち少なくとも1種のガスのイオン
    を照射する請求項5又は6記載の抗菌性生体適用物品の
    製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN104046951A (zh) * 2014-06-13 2014-09-17 西安交通大学 一种在医用钛合金表面制备镨掺杂氮化钛涂层的方法

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