JPH09310078A - ベンゾチオフェンの微生物的分解方法 - Google Patents

ベンゾチオフェンの微生物的分解方法

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JPH09310078A
JPH09310078A JP12740296A JP12740296A JPH09310078A JP H09310078 A JPH09310078 A JP H09310078A JP 12740296 A JP12740296 A JP 12740296A JP 12740296 A JP12740296 A JP 12740296A JP H09310078 A JPH09310078 A JP H09310078A
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benzothiophene
strain
sulfoxide
microorganism
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JP12740296A
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Toshiya Hayano
俊哉 早野
Nobuhiro Takahashi
信弘 高橋
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Publication date
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    • Y02W30/00Technologies for solid waste management
    • Y02W30/50Reuse, recycling or recovery technologies
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  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Manufacture Of Porous Articles, And Recovery And Treatment Of Waste Products (AREA)
  • Production Of Liquid Hydrocarbon Mixture For Refining Petroleum (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 石油製品等の水−非混和性有機物中のベンゾ
チオフェンを効率よく硫酸塩にまで分解し、且つオクタ
ン価の維持に必要なオレフィン系炭化水素や芳香族炭化
水素を分解しない脱硫方法の提供。 【解決手段】 シュードモナス( Pseudomonas)属に属
しベンゾチオフェンを酸化する能力を有する微生物と、
バシルス(Bacillus)属に属しベンゾチオフェンスルホ
ンあるいはベンゾチオフェンスルホキシドを分解する能
力を有する微生物とを、この順序で又は同時に、ベンゾ
チオフェンを含有する非−水混和性有機物質と水性媒体
との2相混合物と、好気的条件下で接触せしめることを
特徴とする、水−非混和性有機物からベンゾチオフェン
を除去する方法。 【効果】 例えば石油製品中のベンゾチオフェンを室温
にて3日間で100ppm以上除去することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ベンゾチオフェ
ン、特に石油等の水−非混和性有機物質中に含有される
ベンゾチオフェンを微生物的に分解する方法、及びその
ための微生物に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、石油製品の燃焼に伴い発生する硫
黄酸化物(SOx)による酸性雨が、森林破壊などの環
境汚染を引き起し深刻な問題となっている。この問題を
解決する1つの手段として硫黄酸化物の生成の原因とな
る原料油中の硫黄化合物の含量を低下せしめる方法があ
り、水素化脱硫法、オクタゲイン法等が検討されてい
る。しかしながら、これらの方法の実用化のためには、
水素化脱硫を適用する場合の大幅なオクタン価の低下
や、オクタゲイン法を適用する場合の液収率の低下な
ど、それぞれの方法が抱える問題の解決が不可欠であ
る。
【0003】また、従来の水素化脱硫は高温、高圧下で
の工程を要するため、コスト面および安全面における改
善には限界がある。また、水素化脱硫の副産物である硫
化水素の処理も問題となる。これに対して、バイオ技術
を用いる場合、常温、常圧下で反応が行われるためエネ
ルギーコストが低く抑えられると同時に操作の安全性が
高く、また好気的バイオ脱硫により生成する硫酸イオン
は廃棄が容易であり、また肥料用硫安等として利用でき
る等の利点が存在する。
【0004】このため、微生物を用いた好気的脱硫装置
が開発され、商業的規模での軽油の脱硫に成功しつつあ
ることが報告されている(Kilbane, J.J. (1992)米国特
許No.5, 104, 801 ; Kilbane, J.J. (1989) S.Yunker
(ed.), Proceedings : 1989 Symposium on Biological
Processing of Coal and Coal-derived Substances. El
ectric Power Research Institute, Inc., Palo Alto,
Calif ; Kilbane, J.J.(1990) S. Yunker and K. Rhee
(ed.) Proceedings : 1990 First International Sympo
sium on the Biological Processing of Coal. Electri
c Power Research Institute, Inc., Palo Alto, Calif
; Denome, S. A., Olson, E.S. et al.(1993) Appl. E
nviron. Microbiol. 59, 2837-2843 ; Piddington, C.
S. et al. (1995) Appl. Environ. Microbiol. 61, 468
-475) 。
【0005】原料油や石油製品中に含有される硫黄酸化
物原因物質の重要なものとしてベンゾチオフェン及びメ
チルベンゾチオフェンが挙げられる。従って、微生物を
用いるバイオ脱硫においては、ベンゾチオフェンを分解
する能力を有する微生物が必要である。ベンゾチオフェ
ンを分解する微生物として、シュードモナスBT1株
(Saftlc, S.ら, Environ. Sci. (1992) Technol. 26,
1759-1763)、シュードモナスRE204株(Eaton, R.
W. ら (1994), J. Bateriol. 176, 3992-4002) 、シュ
ードモナスW1株 (Kropp, K.G. ら (1994), Appl. Env
iron. Microbiol. 60, 3624-3631) 、並びにシュードモ
ナスF株及びSB株 (Kropp, K.G. ら (1994), Environ
Sci Technol., 28, 1348-1356) が知られている。
【0006】しかしながら、ベンゾチオフェンを分解す
る能力を有する上記の微生物を用いて、水−非混和性有
機物中のベンゾチオフェンを硫酸イオンにまで分解する
方法は記載されていない。また、RE204株を除く他
の公知株のベンゾチオフェン分解速度は本発明のWF5
05株に比べて10分の1以下であり、ベンゾチオフェ
ン分解速度が本件発明のWF505株に比べて極めて低
い。他方、公知するRE204株は、ベンゾチオフェン
分解速度において、本発明のWF505株に匹敵する
が、それによる分解生成物がトランス−4−〔ヒドロキ
シ−2−チエニル〕−2−オキソブツ−3−エノエート
であり本願発明のWF505株の分解生成物と異り、ま
たそのために本発明の第二の微生物であるバシルス属微
生物と併用することにより、ベンゾチオフェンを硫酸塩
にまで分解するために使用することができない。さら
に、RE204株はFCN(fluid cracking naphtha)
等の石油製品のオクタン価の維持に必要なオレフィン系
炭化水素(1−オクタデセン等)および芳香族炭化水素
(エチルベンゼン、キシレン等)を分解するという致命
的欠点を有する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、水
−非混和性有機物中のベンゾチオフェンを効率よく硫酸
イオンにまで分解することができ、且つオクタン価の維
持に必要なオレフィンや芳香族炭化水素を分解しない、
新規な脱硫方法を提供しようとするものである。従って
本発明は、ベンゾチオフェン、特に水−不混和性有機物
質、例えば原料油や種々の石油製品中に含有されるベン
ゾチオフェンの微生物的除去方法、及びそれに使用する
ことができる微生物を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】従って本発明は、シュー
ドモナス(Pseudomonas)属に属し、ベンゾ
チオフェン1mg/時間/g乾燥菌体以上の速度でベンゾ
チオフェンを酸化する能力を有する微生物を、ベンゾチ
オフェン含有物と接触せしめることを特徴とする、ベン
ゾチオフェンの除去方法を提供する。さらに好ましく
は、本発明は、シュードモナス(Pseudomona
s)属に属し、ベンゾチオフェンをベンゾチオフェンス
ルホキシドに酸化する能力を有する微生物を、ベンゾチ
オフェンを含有する水−非混和性有機物質と水性媒体と
の2相混合物に作用せしめることによりベンゾチオフェ
ンをベンゾチオフェンスルホキシドに酸化し、該ベンゾ
チオフェンスルホキシドを水性媒体に移行せしめること
を特徴とする、水−非混和性有機物からベンゾチオフェ
ンを除去する方法を提供する。
【0009】本発明はまた、バシルス(Bacillu
s)属に属し、ベンゾチオフェンスルホンを分解する能
力を有する微生物を、ベンゾチオフェンスルホキシドあ
るいはベンゾチオフェンスルホン含有物と接触せしめる
ことを特徴とする、ベンゾチオフェンスルホンの除去方
法を提供する。さらに好ましくは、本発明は、シュード
モナス(Pseudomonas)属に属しベンゾチオ
フェンを酸化する能力を有する微生物と、バシルス(B
acillus)属に属しベンゾチオフェンスルホンを
分解する能力を有する微生物とを、この順序で又は同時
に、ベンゾチオフェン含有物に好気的条件下で接触せし
めることを特徴とする、ベンゾチオフェンの除去方法を
提供する。
【0010】さらに好ましくは、本発明は、シュードモ
ナス(Pseudomonas)属に属しベンゾチオフ
ェンを酸化する能力を有する微生物と、バシルス(Ba
cillus)属に属しベンゾチオフェンスルホンを分
解する能力を有する微生物とを、この順序で又は同時
に、ベンゾチオフェンを含有する非−水混和性有機物質
と水性媒体との2相混合物と、好気的条件下で接触せし
めることを特徴とする、水−非混和性有機物からベンゾ
チオフェンを除去する方法を提供する。
【0011】本発明は更にまた、シュードモナス(Ps
eudomonas)属に属し、ベンゾチオフェン1mg
/時間/g乾燥菌体、以上の速度でベンゾチオフェンを
ベンゾチオフェンスルホキシドに酸化する能力を有する
微生物を提供する。好ましくは、この微生物は、オレフ
ィン系炭化水素例えば1−オクタデセン、並びに芳香族
炭化水素、例えばエチルベンゼン及びキシレンをほとん
ど分解しない。本発明はまた、バシルス(Bacill
us)属に属し、ベンゾチオフェンスルホンを分解する
能力を有する微生物を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明方法を適用することができ
る対象物は非−水混和性有機物質であり、典型的には各
種石油原料や石油製品、例えばナフサ、ガソリン、灯
油、軽油等である。本発明に用いることができる微生物
は、シュードモナス(Pseudomonas)属に属
し、ベンゾチオフェンをベンゾチオフェンスルホキシド
に酸化することができる微生物、及びバシルス(Bac
illus)属に属し、ベンゾチオフェンスルホンを分
解することができる微生物である。前者の微生物として
は、例えばシュードモナスsp.(Pseudomon
as sp.)WF501株が挙げられ、後者の微生物
としてはバシルスsp.(Bacillus sp.)
WF501株が挙げられる。これらの微生物の分離方
法、菌学的性質、寄託に関する情報の詳細は実施例1に
記載する。
【0013】実施例2に記載するごとく、本発明の方法
によれば、まずシュードモナス属に属し、ベンゾチオフ
ェンをベンゾチオフェンスルホキシドに酸化することが
できる微生物(便宜上、第一の微生物と称する場合があ
る)によりベンゾチオフェンがベンゾチオフェンスルホ
キシドに酸化され、次いでベンゾチオフェンスルホキシ
ドが非生物的に酸化されてベンゾチオフェンスルホンと
なり、次にバシルス属に属し、ベンゾチオフェンスルホ
ンを分解することができる微生物(便宜上、第二の微生
物と称する場合がある)によりベンゾチオフェンスルホ
ンが分解され、そして最終的には、微生物的又は非微生
物的反応段階を経て硫黄は硫酸イオン(SO4 --)にま
で酸化されると推定される。
【0014】本発明の方法においては、水−非混和性の
有機物中に含有されるベンゾチオフェンを分解除去する
ために、水−非混和性有機物と水性媒体との2相混合系
において反応を行う。そして、水−非混和性有機物の脱
硫を目的とする場合、脱硫後の水−非混和性有機物を水
性媒体から分離して回収する必要がある。従って、水性
媒体に対する水−非混和性有機物の比率を多くする方が
好ましく、このような脱硫操作条件下では、前記微生物
の増殖は困難である。従って、本発明の好ましい態様に
よれば、増殖中の微生物を使用するよりも、増殖した後
の微生物菌体、例えば休止菌体、を使用するのが好まし
い。
【0015】微生物菌体の製造のためには、本発明の微
生物が培養できる任意の培地中で本発明の微生物を培養
すればよい。シュードモナス属微生物及びバシルス属微
生物を培養するための種々の培地が当業者により知られ
ており、そのような培地を使用すればよい。この様な培
地としては、例えばLB培地(1%トリプトン、0.5
%酵母エキス、1%NaCl)が挙げられるがこれらに
限定されない。
【0016】より一般的には、本発明において使用する
培地は、本発明の微生物が資化し得る炭素源、例えばグ
ルコース等、及び本発明の微生物が資化し得る窒素源を
含有し、窒素源としては有機窒素源、例えばペプトン、
肉エキス、酵母エキス、コーン・スチープ・リカー等、
無機窒素源、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウ
ム等を含有することができる。さらに所望により、ナト
リウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マ
グネシウムイオン等の陽イオンと硫酸イオン、塩素イオ
ン、リン酸イオン等の陰イオンとから成る無類を含むこ
ともできる。さらに、ビタミン類、核酸類等の微量要素
を含有することもできる。炭素源の濃度は、例えば0.
1〜10%程度であり、窒素源の濃度は、種類により異
るが、例えば0.01〜5%程度である。また、無核酸
類の濃度は、例えば0.001〜1%程度である。
【0017】本発明の微生物は、上記のごとき培地自体
の中で培養することもできるが、上記のごとき培地を基
礎培地とし、これに少量のベンゾチオフェンを添加して
培養することにより微生物を馴養し、ベンゾチオフェン
分解能の高い菌体を得ることもできる。この場合、基礎
培地に添加するベンゾチオフェンは液状炭化水素、例え
ばテトラデカン等に溶解した後に添加するのが好まし
い。例えば、テトラデカン等の液状炭化水素にベンゾチ
オフェンを100〜1000ppm 、好ましくは200〜
500ppm の濃度で溶解し、この液状炭化水素溶液を、
基礎培地100mlに対して100〜10ml添加するのが
好ましい。この場合には油/液2相混合培養系を構成す
る。
【0018】培養は好ましくは好気的条件下で行われ、
好気的条件は振とう、通気及び/又は撹拌等の常用手段
により達成される。培養温度は20〜40℃、好ましく
は25〜35℃であり、例えば約30℃である。培養時
間は、好ましくは菌体が十分に増殖する時間であり、例
えば6〜48時間、好ましくは12〜24時間である。
培養終了後、菌体を含有する培養液は、そのまま、脱硫
工程の2相混合物を形成するための水性媒体として使用
することもでき、一旦菌体を分離した後、それを適当な
水性媒体に懸濁して脱硫工程において使用することもで
きる。後者の場合には、培養液の量より少量の水性媒体
に菌体を懸濁することにより菌体濃度を高くして使用で
きるという利点がある。菌体の分離は、細菌の菌体を分
離するための常法、例えば遠心分離、濾過等の方法によ
り行うことができる。
【0019】水−非混和性有機物中のベンゾチオフェン
の除去、すなわち脱硫、の工程は、ベンゾチオフェンを
含有する水−非混和性有機物と本発明の第一の微生物の
菌体を含有する水性媒体とを混合することにより行うの
が好ましい。この場合、前記のごとく、微生物菌体を含
有する水性媒体としては、培養終了後の培養液をそのま
ま使用することができ、または一旦菌体を培養液から分
離した後、水性媒体に懸濁して使用することもできる。
この場合の水性媒体としては、培地、例えば前記の培
地、緩衝液等を使用することができる。
【0020】ベンゾチオフェンを含有する水−非混和性
有機物と菌体を含有する水性媒体との混合比は特に限定
されないが、水性媒体の比率を多くすればベンゾチオフ
ェンの除去効率が高くなる傾向があるが、他方、次の段
階で水−非混和性有機物と水性媒体との分離のコストが
上昇する。他方、水性媒体の比率が小さ過ぎると、水−
非混和性有機物と水性媒体との混合が不十分となる傾向
がある。従って、この混合比は、水−非混和性有機物と
水性媒体との合計体積に対する水性媒体の体積比が60
%〜10%程度が好ましく、さらに好ましくは40%〜
20%である。水性媒体の比率を小さくしながら、脱硫
効率を維持するには、水性媒体中の菌体濃度を高めるこ
とが好ましい。
【0021】水不混和性有機物と水性媒体との接触をよ
くし、脱硫効率を高めるためには、両者を一緒に混合す
ることが必要であり、そのための手段としては、撹拌機
による撹拌、通気(バブリング)、これら両者の併用等
が用いられる。第一の微生物によりベンゾチオフェンが
ベンゾチオフェンスルホキシドに酸化されるためには酸
素が必要であり、また、ベンゾチオフェンスルホキシド
は非生物的にベンゾチオフェンスルホンに酸化されると
考えられ、この段階においても酸素が必要であるから、
前記水−非混和性有機物と水性媒体との混合は、通気を
伴う手段、例えば通気による混合、又は通気と攪拌機に
よる撹拌との併用等が好ましい。通気や、攪拌機による
撹拌は常用手段により行うことができる。
【0022】上記の操作によりベンゾチオフェンが酸化
されて生成するベンゾチオフェンスルホキシド及びベン
ゾチオフェンスルホンはベンゾチオフェンに比べて水溶
解性が高いから、これらの反応生成物は、上記の混合操
作の間に水−非混和性有機物から水性媒体に移行する。
従って、次に水−非混和性有機物と水性媒体とを分離す
ることにより、水−非混和性有機物からのベンゾチオフ
ェンの除去、すなわち脱硫の目的はある程度達成され
る。従って、第一の微生物のみを使用する方法も本発明
の範囲に含まれる。
【0023】しかしながら、一旦生成したベンゾチオフ
ェンスルホキシドが非生物的にベンゾチオフェンに変化
し、水−非混和性有機物の方に逆移行する可能性があ
る。従って、効率よく脱硫を行うためには、ベンゾチオ
フェンスルホンをさらに分解して上記反応系から除去す
るのが好ましい。従って、本発明のもう1つの態様にお
いては、ベンゾチオフェンをベンゾチオフェンに酸化す
る第一の微生物(シュードモナス属微生物)のほかに、
ベンゾチオフェンスルホンをさらに分解する第二の微生
物であるバシルス属微生物を併用するのが好ましい。第
二の微生物は、第一の微生物と共に前記水性媒体に含有
せしめればよい。この様な水性媒体は、第一の微生物の
培養液と第二の微生物の培養液とを混合して調製するこ
ともでき、又はそれぞれの培養液から分離した菌体を同
一の水性媒体中に懸濁することによっても調製すること
ができる。
【0024】第一の微生物と第二の微生物とを併合する
場合の脱硫の操作及び条件は、第一の微生物のみを使用
する場合について前に詳細に説明したのと同様である。
さらに、ベンゾチオフェンスルホキシドやベンゾチオフ
ェンスルホンを含有する物質からこれらの硫黄化合物を
除去するには、第二の微生物のみを使用することができ
る。この場合操作方法及び条件も、第一の微生物を使用
する場合と同様にすればよい。本発明によれば、水−非
混和性有機物、例えばガソリン中に含有されるベンゾチ
オフェンを極めて効率よく分解して、再利用可能な硫酸
イオンに変換することができ、またガソリン中に含有さ
れることが必要なオレフィン系炭化水素や芳香族炭化水
素を分解しない。
【0025】
【実施例】次に、実施例により本願発明をさらに具体的
に説明する。実施例1ベンゾチオフェン分解菌の単離 試験管中5mlのFS1培地(表1)に各地より採集した
試料(液体試料の場合50μl、固体試料の場合50μ
g)を加え、200ppm の1−ベンゾチオフェン(以
下、ベンゾチオフェン)(和光純薬工業株式会社)を含
むテトラデカン(和光純薬工業株式会社)2mlを上層
し、30℃で振とう培養(振とう速度160rpm )を行
った(一次集積培養)。濁度計(富士工業株式会社)に
より一定時間毎に濁度を計り、菌体の増殖を観察した。
菌体の増殖が見られたものについて、その培養液50μ
lを採取し、新たに5mlのFS1培地に接種し前述と同
様の方法により二次集積培養を行った。さらに、同様の
手順を繰り返し三次、四次集積培養を行うことにより、
ベンゾチオフェンの分解活性をもつ菌株を集積した。
【0026】
【表1】
【0027】石油精製工場の土壌等から得た計930サ
ンプルを上記の処理にかけた結果、石油精製工場から採
取した1つのサンプルから、四次集積において微生物の
増殖が見られた。集積培養によって得られた培養液を適
当に希釈後、FS1/YEプレート(FS1/0.1%
yeast extract/1.5%寒天)に塗布
し、30℃で2日間インキュベートした。得られたコロ
ニーを目視で形態的に分類した。互いに形態的に異なる
5種類の菌株を単離し、それぞれWF501〜WF50
5株と命名した。これらのうち、いずれの菌株がベンゾ
チオフェンの分解に関与しているのかを明らかにする目
的で、それぞれについて集積培養に用いた二相系におい
ての増殖能をしらべた。
【0028】すなわち、複数の単離菌株の単コロニーを
拾い、それぞれ300μlの滅菌水に懸濁した。この懸
濁液10μlを用いて集積培養と同様の二相系培養法
(テトラデカン相中の初期ベンゾチオフェン濃度=50
0ppm )により、菌体のベンゾチオフェン資化能を調べ
た。この際に、菌体の増殖を濁度計で計るとともに、テ
トラデカン相中のベンゾチオフェン濃度をガスクロマト
グラフィーマススペクトル(GC−MS)(HEWLE
TT PACKARD社、ガスクロマトグラフMode
l5890、マススペクトルディテクターModel5
972)により測定し、菌体によるベンゾチオフェンの
分解能を調べた。
【0029】その結果、いずれの菌株も二相培養系で増
殖できない、即ちベンゾチオフェンを分解できないこと
が分かった。そこで、5種類の菌株の中の複数の株が一
緒になってベンゾチオフェンの分解に関わっている可能
性を想定し、3種以上の組み合わせを含む31通りの菌
株の組み合わせでのベンゾチオフェン資化能を二相培養
系で調べた。その結果、ベンゾチオフェンの資化のため
には、WF501株とWF505株が共存することが必
要であることが示された(図1)。また、GC−MSに
よる定量結果から、菌体の増殖に伴いテトラデカン相の
ベンゾチオフェンが減少していることが確かめられた
(図2)。
【0030】WF501とWF505株によるベンゾチ
オフェンの分解効率は、集積培養によって得られたWF
501〜WF505株の混合系による分解効率と同等
か、むしろ、より高いとの結果を得た。このことから、
ベンゾチオフェンの分解にはWF501およびWF50
5の2株のみが関与しているものと判断された。単離し
たベンゾチオフェン分解菌の分類同定のために、菌株の
諸性質を調べた。糖分解性はPYP基礎培地(日水製薬
株式会社)で、チトクロームオキシダーゼ活性はCYT
OCHROME−OXIDASE REAGENT(日
水製薬株式会社)でそれぞれ調べた。
【0031】グラム染色は活性汚泥診断薬(日本アルシ
ー株式会社)により行った。カタラーゼ活性は、スライ
ドガラスに塗布した菌体に過酸化水素(三菱瓦斯化学株
式会社)を滴下した際の発泡の有無により判定した。そ
の他の生化学的な性質については、IDテスト・NF−
18およびEB−20(日水製薬株式会社)によって調
べた。表2および表3に、WF501株及びWF505
株の諸性質をそれぞれまとめた。
【0032】表2および3に示した諸性質をBerge
yのManual(Bergey's Manual of Systematic Ba
cteriology (1984) Williams & Wilkins Edt.)と照らし
合わせた結果、WF501株はバシルス・sp(Bac
illus sp.)と、またWF505株はシュード
モナスsp.(Pseudomonas sp.)と分
類された。
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】なお、WF505株はWF505と命名さ
れ、工業技術院生命工学工業技術研究所に、平成8年4
月24日にFERM P−15601として寄託され、
WF501株はWF501と命名され、工業技術院生命
工学工業技術研究所に、平成8年4月24日にFERM
P−15600として寄託された。
【0036】実施例2WF501株及びWF505株
によるベンゾチオフェンの分解経路 (1)休止期細胞によるベンゾチオフェンの分解実験 実施例1より、WF501およびWF505株はそれぞ
れ単独ではベンゾチオフェンを資化できず、協同作用に
よりはじめて資化できることが明らかとなった。このこ
とから、両株がベンゾチオフェンを最終的にバクテリア
が硫黄源として取り込み可能な化合物(おそらく硫酸イ
オンと考えられる)に代謝する経路において役割分担を
していることが示唆された。
【0037】WF501およびWF505株それぞれの
休止期細胞を用いて、両株のベンゾチオフェン分解活性
を調べた(図3)。その結果、WF505株単独の活性
によりベンゾチオフェンが水溶性の化合物に変換され、
テトラデカン相より除去されることが明らかとなった。
一方、WF501株にはこのような活性は全く見出され
なかった。以上の実験から、ベンゾチオフェンの代謝の
第一段階がWF505株によって担われていること、ま
た、それ以降の代謝経路にWF501株が関与している
ことが強く示唆された。
【0038】なお、テトラデカン相中ベンゾチオフェン
初期濃度1000ppm の系でのWF505株によるベン
ゾチオフェン分解速度は約1.1mgベンゾチオフェン/
時間/g乾燥菌体と見積もられた(反応時間6から12
時間の直線性のある範囲で計算)。これは、本実験系に
おいては(テトラデカン相15ml、培地相15ml)乾燥
菌体1gを用いて1時間当たり約42ppm 相当のベンゾ
チオフェンが除去されることに相当する。
【0039】(2)WF505株によるベンゾチオフェ
ン代謝産物の同定 (a)モデル系におけるWF505株によるベンゾチオ
フェンの脱硫 WF505株の休止期細胞を用いたモデル実験系におい
て、ベンゾチオフェンの脱硫過程を定量的に追跡した。
LB培地で培養したWF505株(乾燥菌体重量で19
5mg)のFS1培地懸濁液15mlを500ml容量の三角
フラスコに入れ、15mlの1000ppm ベンゾチオフェ
ンを含むテトラデカンを上層し、30℃で48時間振と
うしながら(200rpm )ベンゾチオフェン分解反応を
行わせた。
【0040】反応後、遠心分離(15000rpm ,10
分間)により菌体を除去するとともに水相と溶媒相を分
離回収した。さらに、水相は1N塩酸によりpHを1.8
に調整後酢酸エチル抽出操作を行い、水相および酢酸エ
チル相としてそれぞれ分離回収した。各水相中の全硫黄
量はデジタル式微量硫黄分析装置(三菱化学株式会社)
により定量した。各溶媒相中の全硫黄量およびベンゾチ
オフェン代謝産物は、ガスクロマトグラフ−原子発光検
出器(GC−AED)(HEWLETT PACKAR
D社)およびGC−MS(日本電子株式会社)により定
量および同定した。
【0041】WF505株の作用により、48時間の反
応で250ppm のベンゾチオフェン由来の硫黄のうち1
70ppm がテトラデカン相から除去され、このうちの1
10ppm が水相に移行していることが分かった(図
4)。差し引き分の60ppm の硫黄は菌体に吸着された
かあるいは取り込まれたものと解釈される。即ち、この
実験ではWF505株により68%のベンゾチオフェン
由来の硫黄が油相から除去された。この際、菌体を添加
していないコントロール実験において、48時間反応
時、230ppm (92%)の硫黄がテトラデカン相に残
留していることを確認した。
【0042】反応後の水相の酢酸エチル抽出を行い、酢
酸エチル抽出後水相と酢酸エチル相それぞれについて全
硫黄量を測定した結果、前者に20ppm 、後者に80pp
m の硫黄が検出された。このことから、WF505株の
作用によってテトラデカン相から水相に移行したベンゾ
チオフェン代謝産物は酢酸エチルにより効率的に抽出さ
れる水溶性の化合物であることが示された。
【0043】(b)WF505株によるベンゾチオフェ
ン代謝産物の同定 WF505株のもつどのような触媒作用によってベンゾ
チオフェンの脱硫が起こるのかを明らかにするため、実
施例2(2)(a)で得られた酢酸エチル相に含まれる
化合物、即ちWF505株によるベンゾチオフェン代謝
産物の同定をGC−MSを用いて試みた。その結果、酢
酸エチル相からベンゾチオフェン自身、ベンゾチオフェ
ンスルホキシド、ベンゾチオフェンスルホンおよびベン
ゾナフトチオフェン(図5)が検出された。
【0044】
【化1】
【0045】ベンゾチオフェンスルホキシドおよびベン
ゾチオフェンスルホンが同定されたことにより、WF5
05株がベンゾチオフェンを酸化する活性を有すること
が明らかとなった。また、微量に検出されたベンゾナフ
トチオフェンは、ベンゾチオフェンスルホン2分子がW
F505株の作用によらない非生物的なDiels−A
lder型の縮合反応によって生成したものであると考
えられる。
【0046】酢酸エチル相から検出された化合物のう
ち、最も含量が多かった化合物はベンゾチオフェンであ
った。ベンゾチオフェンは難水溶性であり、菌体無添加
のコントロール実験でも水相へ移行することはなかった
が、WF505株の作用により溶解度が高くなったとの
結果を得た。反応時に、テトラデカン相と水相の界面に
エマルジョンが観察されたことから、WF505株によ
るベンゾチオフェンの水溶性の上昇の原因として、菌体
からの界面活性剤様物質の分泌が示唆された。このこと
から、前述のWF505株によるベンゾチオフェンの酸
化反応は、テトラデカン相と水相の界面のみならず水相
中で起こっていることが考えられ、このことが酸化反応
を効率的に行わせている要因になっている可能性が示唆
された。
【0047】また、ベンゾチオフェンスルホキシドは水
溶液中では非常に不安定なため、酸化の逆反応が起こり
ベンゾチオフェンへと変換される傾向にある。そのた
め、WF505株の触媒する酸化反応によって生成した
ベンゾチオフェンスルホキシドのほとんどが再びベンゾ
チオフェンへ変換され、多くのベンゾチオフェンが水相
に存在していた可能性が示唆された。一方で、一部のベ
ンゾチオフェンスルホキシドがさらに非生物反応で酸化
された結果ベンゾチオフェンスルホンが生成したものと
考えられた。
【0048】以上より、モデル系においてWF505株
のもつ活性により油相中のベンゾチオフェンが酸化され
ベンゾチオフェンスルホキシドが生成し、さらにその後
の非生物的反応によりベンゾチオフェンスルホンが生成
し、その結果として効率的な油相からのベンゾチオフェ
ンの除去即ち脱硫が起こることが示された。
【0049】(3)WF501株によるベンゾチオフェ
ンスルホンの分解 実施例2(2)でWF505株がベンゾチオフェンを酸
化し、ベンゾチオフェンスルホキシドおよびベンゾチオ
フェンスルホンが生成することを示した。ベンゾチオフ
ェンを唯一の硫黄源とする二相培養系においてWF50
1株とWF505株が協同作用によってベンゾチオフェ
ンを資化して生育することから、ベンゾチオフェンはさ
らに、いずれかの株のもつ触媒作用によって分解を受
け、最終的に硫酸イオンを生成するものと考えられた。
そこで、両株の休止期細胞についてベンゾチオフェンス
ルホンの分解活性を調べた。
【0050】(a)ベンゾチオフェンスルホンの合成 40ml酢酸(小宗化学薬品株式会社)/20ml31%過
酸化水素(三菱瓦斯化学株式会社)混合液に5gのベン
ゾチオフェン(和光純薬工業株式会社)を溶解し、15
分間温浴還流を行い、60mlの蒸留水を加えた後、4℃
で一晩静置することによりベンゾチオフェンスルホンを
結晶標品として得た。
【0051】(b)ベンゾチオフェンスルホンの分解実
400mlのLB培地で30℃24時間培養した菌体を遠
心分離(7000rpm,10分間)により集め、25ml
のFS1培地により洗浄し、再び遠心分離(12000
rpm ,10分間)により回収した。得られた菌体を20
0ppm のベンゾチオフェンスルホンを含む15mlのFS
1培地に懸濁し、500ml容量の三角フラスコ内で振と
うしながら(160rpm )30℃でベンゾチオフェン分
解反応を行った。
【0052】ベンゾチオフェンスルホンの定量は高速液
体クロマトグラフィー(HPLC)(島津製作所)によ
り行った。HPLCカラムは、SenshuPak O
DS−1151−SH(4.6φX150mm)(株式会
社センシュー科学)を用いた。反応試料は遠心分離後の
上清をフィルター濾過してHPLC分析にかけた。溶出
は、30分間で10%から50%のアセトニトリル勾配
をかける条件(流速1ml/min)で、また、ベンゾチオフ
ェンスルホンの検出は310nmの吸収波長で行った。こ
の条件での、ベンゾチオフェンスルホンの溶出時間は約
15分であった。
【0053】図6に示すようにWF505株(乾燥菌体
重量で180mg使用)がベンゾチオフェンスルホンの分
解活性をほとんど示さなかったのに対して、WF501
株(乾燥菌体重量で150mg使用)は明確な同分解活性
を示した。この実験系において、WF501株のベンゾ
チオフェンスルホン分解速度は0〜12時間反応時でお
よそ0.44mgベンゾチオフェンスルホン/時間/g乾
燥菌体と見積もられた。また、反応後の溶液は淡黄色を
呈していた。
【0054】前述のように、ベンゾチオフェンを酸化す
る活性をもつ菌株についてはいくつかの報告がなされて
いるが、本実験で見出されたベンゾチオフェンスルホン
を分解する菌株についての報告は例がない。前述のWF
505株についての結果とあわせて、WF501株とW
F505株によるベンゾチオフェンの協同的な代謝経路
として、次に示す仮説経路を提出する。
【0055】
【化2】
【0056】ベンゾチオフェンは、まずWF505株の
触媒作用によって酸化されベンゾチオフェンスルホキシ
ドへと変換される。スルホキシドは水溶液中では非常に
不安定であり、そのほとんどが、逆反応によりベンゾチ
オフェンに戻るが、一部がおそらく非生物的な反応によ
り(WF505株による触媒作用による可能性も考えら
れるが、現在のところは不明である)ベンゾチオフェン
スルホンへと変換される。
【0057】ベンゾチオフェンスルホンはWF501株
の触媒作用によりさらに代謝され、最終的には、おそら
くバクテリアが資化できる硫酸イオンにまで分解される
ものと考えられる。ベンゾチオフェンスルホンからの代
謝産物と硫酸イオン間の代謝経路においては再びWF5
05株が関与し代謝リレーが起こっている可能性もあり
うる。また、ベンゾチオフェンスルホンの一部は非生物
的なDiels−Alder型の縮合反応によってデッ
ドエンド産物としてのベンゾナフトチオフェンへと変換
される。なお、この反応によっても硫黄原子1個が除去
される。
【0058】実施例3WF505株と既存の株とのベ
ンゾチオフェン分解速度の比較 ベンゾチオフェンを他の化合物に変換する活性をもつ菌
株がいくつか報告されており、また、その代謝産物の同
定も進められている(Saftlc, S. et al. (1992) Envir
on. Sci. Technol. 26, 1759-1764 ; Eaton, R.W. et a
l. (1994) J.Bacteriol. 176, 3992-4002 ; Kropp, K.
G. et al. (1994) Appl. Environ. Microbiol. 60, 362
4-3631 ; Kropp, K.G. et al. (1994) Environ. Sci. T
echnol. 28, 1348-1356 ;表4)。多くの菌株はベンゾ
チオフェンを酸化する活性をもつ。
【0059】
【表4】
【0060】WF505株と既存の株(計5株)につい
てベンゾチオフェンの分解速度および菌体の耐久性の点
での性能の比較を試みた。それぞれの菌株の単コロニー
をプレートより拾い、LB培地(1%trypton
e,0.5% yeast extract,1%Na
Cl)に接種し30℃で一晩前培養した。前培養液を適
当量の(例えば1L)LB培地に1%容量接種し30℃
で一晩本培養した。遠心分離により(7000rpm ,1
0分間)回収した菌体を適量のFS1培地に懸濁し洗浄
後、再び遠心分離により集菌した。
【0061】菌体を適量のFS1培地に再懸濁し、以降
のベンゾチオフェン分解実験に用いた。300ml容量の
三角フラスコに15mlの菌体懸濁液を入れ、ベンゾチオ
フェンを溶解したテトラデカン15mlを上層し、30℃
で振とう(160rpm )することによりベンゾチオフェ
ンの分解を行った。テトラデカン相中のベンゾチオフェ
ン量はGC−MSにより定量した。また、同分解試験系
において各菌株の1−オクタデセン(和光純薬工業株式
会社)、エチルベンゼン(小宗化学薬品株式会社)およ
びキシレン(和光純薬工業株式会社)に対する影響を調
べた実験では、これら化合物をテトラデカン相に混合
し、定量はGC−MSにより行った。
【0062】
【表5】
【0063】まず、新鮮な菌体によるベンゾチオフェン
の分解速度に関しては、WF505株およびRE204
株の2株が他に対する優位性を示した(表5、一次分解
試験)。他の3株については、ベンゾチオフェン分解活
性が発現するために、長時間のベンゾチオフェンとの接
触などによる誘導が必要であることが示唆された。次
に、24時間一次分解試験に供した各菌体を遠心分離に
よって回収した後に同様の分解試験を行い、各菌体のベ
ンゾチオフェン分解についての残存活性、即ち菌体の耐
久性を調べたところ(表5、二次分解試験)、一次分解
試験で強いベンゾチオフェン分解活性を示したWF50
5株およびRE204株ともに、比較的高い残存活性を
もつことが示された。
【0064】実施例4WF505株およびRE204
株のオレフィンおよび芳香族化合物に対する影響 WF505株をはじめとした菌体を実際に石油製品の脱
硫に利用するためには、これらが石油製品中のベンゾチ
オフェンを分解する活性と同時にオレフィンや芳香族化
合物を非特異的に分解し、オクタン価を下げてしまう活
性をもたないことが大前提となる。そこで、WF505
株と実施例3で良好な性能を示したRE204株につい
て、ベンゾチオフェン分解試験系におけるオレフィンお
よび芳香族化合物に対する影響を調べた。
【0065】本実験では、オレフィンのモデル化合物と
して1−オクタデセン、芳香族化合物のモデルとしてエ
チルベンゼンおよびキシレンをそれぞれ用い、ベンゾチ
オフェン分解試験系に同時に混合して、WF505株お
よびRE204株のこれら化合物への影響を調べた。そ
の結果、両株ともに1−オクタデセンには全く影響を与
えなかった(図7)。一方、芳香族化合物に関しては、
WF505株は全く分解活性を示さなかったのに対し
て、RE204株はエチルベンゼンおよびキシレンに対
して強い分解活性を示した(図8,9)。
【0066】また、これらの有機化合物のもつ毒性によ
り両株が死滅してしまっていないことは、両株のベンゾ
チオフェン分解活性が保持されているとの観察により確
認した(図10)。RE204は、イソプロピルベンゼ
ンを最終的に2−ヒドロキシペンタ−2,4−ジエノレ
ートおよびイソブチレートに分解する活性をもつこと、
さらにイソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、トルエ
ンを炭素源およびエネルギー源として資化できることが
知られており(Eaton, R.W. et al (1994) J.Bacterio
l. 176, 3992-4002 ; Eaton, R.W. et al. (1986) J. B
acteriol. 168,123-131. )、芳香環を非特異的に攻撃
する活性をもつことが予想されたが、今回の実験結果は
これを支持するものであった。
【0067】以上、ベンゾチオフェン分解速度、菌体の
耐久性、オレフィン非分解性および芳香族化合物非分解
性に関する性能評価の結果、現在までに単離されている
ベンゾチオフェン分解菌のなかで、本研究で得たWF5
05株がもっとも実用に適するものであることが示され
た。
【0068】実施例5WF501株のオレフィンおよ
び芳香族化合物に対する影響 WF501株のオレフィンおよび芳香族化合物に対する
影響を、WF505株について行ったのと同様のモデル
実験系において調べた。その結果WF501株は、オレ
フィンおよび芳香族化合物に対する非特異的な分解活性
はもたないことが確認された(図11−13)。
【0069】実施例6モデル系におけるWF501株
およびWF505株によるベンゾチオフェン脱硫効率の
改善 石油製品の脱硫という実用により近いかたちの脱硫系を
想定し、また、より効率的な脱硫を目指して以下のいく
つかの点において系の改良を加えた上で脱硫試験を試み
た。LB培地800mlで30℃一晩培養したWF501
株およびWF505株それぞれの培養液を遠心分離(7
000rpm ,10分間)にかけて集めた菌体を40mlの
FS1培地で洗浄後、再び遠心分離(12000rpm ,
10分間)にかけて各菌体を回収した。得られた菌体を
それぞれ30mlのFS1培地に懸濁した。
【0070】100ml容量の三角フラスコにWF505
株菌体懸濁液7.5mlとFS1培地7.5mlを加えた反
応系(A)(乾燥菌体重量で67.5mgのWF505株
菌体を含む)、およびWF501株菌体懸濁液とWF5
05株菌体懸濁液を7.5mlずつ加えた反応系(B)
(乾燥菌体重量でそれぞれ82.5mgのWF501株お
よび67.5mgのWF505株菌体を含む)を各々2本
ずつ用意した。
【0071】これらにそれぞれ4倍容(60ml)の10
0ppm ベンゾチオフェンを含むテトラデカンを上層し、
スターラーにより撹拌しながら室温においてベンゾチオ
フェンの脱硫反応を行わせた。この際に、A,Bの1本
ずつについては、フラスコの内径にそってテフロンフィ
ルターチューブ(ポアフロン、孔径1.0μm、チュー
ブ外径2.0mm、内径1.0mm、フロン工業株式会社)
をコイル状(4巻)に設置しチューブ内に空気を送り込
みながら(圧力0.5kgf /cm2 )反応させた。また、
菌体無添加のものをコントロールとした。
【0072】○水相部分の容量の削減 実際のFCNの脱硫の際には、油相に対する(菌体を懸
濁する)水相の容量がより小さいことが望まれる。これ
までの実施例においては両者の比を1:1に固定してき
たが、本実施例では水相:油相を1:4にし、より油相
の容量が大きい系での脱硫を試みた。
【0073】○WF501株とWF505株共同利用 これまでの実施例において、WF505株単独の働きに
よりベンゾチオフェンの脱硫が可能であることが示され
たが、その代謝産物であるベンゾチオフェンスルホンを
さらに分解する活性をもつWF501株を共存させるこ
とによって、この脱硫の効率が上がるのか否かを調べ
た。
【0074】○反応系中の溶存酸素量の増量 WF505株の触媒する反応がベンゾチオフェンの酸化
反応であることから、反応系中の溶存酸素量を増加させ
ることにより反応の効率化が期待されたのでこの点を検
討した。系の改良に当たって最も工夫を要した点は、系
の溶存酸素量をいかに穏やかな条件で増加させることが
できるかであった。これは、多孔性テフロンチューブの
利用によって解決した。即ち、反応系に浸したコイル状
に巻いたテフロンチューブの中に空気を加圧しながら送
り込むことによって、チューブ内の空気(酸素)を効率
良く、しかも穏やかに反応液に溶解させることができ
た。
【0075】上述一連の実験結果を図14に示した。ま
ず、油相に対して水相の容量比を減らした結果、WF5
05株単独およびWF501株とWF505株の共存の
いずれの反応系においてもベンゾチオフェンのテトラデ
カン相からの除去はほとんど観察されなかった。この結
果のみから推測される原因としては、同系ではフラスコ
を振とうによって撹拌する系に比べエアレーション効率
が低下していること、溶媒(テトラデカン)量の増加に
伴い細胞毒性が強まったこと、あるいはこれら菌体によ
って触媒される反応は本来水相で起こるものと予想され
るが、水相の有効体積が減少した本実験系においては同
反応の効率が低下したことなどが考えられた。
【0076】次に、多孔性テフロンチューブを用いて反
応系の溶存酸素量を増加させた結果は、予想を上回る劇
的なものであった。前述の様に、スターラーのみの撹拌
によるエアレーションを行った系ではベンゾチオフェン
の油相からの除去はほとんど起こらなかったのに対し
て、空気を吹き込んだ系におけるWF505株単独での
ベンゾチオフェン脱硫効率は72時間反応時で71%で
あった。さらに、WF501株の共存の効果も顕著であ
り、この系での脱硫効率は72時間反応時で93%であ
った。これは、WF505株単独の系の約1.3倍の効
率である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、テトラデカンを炭素源とする油/水2
相系でのWF505株及びWF501株の単独培養又は
混合培養における増殖経過を示すグラフである。
【図2】図2は、テトラデカンを炭素源とする油/水2
相系でのWF505株及びWF501株の単独培養又は
混合培養におけるベンゾチオフェンの分解経過を示すグ
ラフである。
【図3】図3は、培養後の休止菌体を用いた場合の、W
F505株又はWF501株のベンゾチオフェンの分解
経過を示す。
【図4】図4は、WF505株をよりベンゾチオフェン
に作用させた場合の硫黄化合物の挙動を示す系統図であ
る。
【図5】図5は、WF505株をベンゾチオフェンに作
用させた場合の生成物のGC−MSのチャートである。
【図6】図6は、WF505株及びWF501株を単独
で又は併用してベンゾチオフェンスルホンに作用させた
場合のベンゾチオフェンスルホンの分解量の経過を示す
グラフである。
【図7】図7は、WF505株又はRE204株の1−
オクタデセンに対する作用を示すグラフである。
【図8】図8は、WF505株又はRE204株のエチ
ルベンゼンに対する作用を示すグラフである。
【図9】図9は、WF505株又はRE204株のキシ
レンに対する作用を示すグラフである。
【図10】図10は、WF505株及びRE204株に
よるベンゾチオフェンの分解経過を比較したグラフであ
る。
【図11】図11は、WF501株の1−オクタデセン
に対する作用を示すグラフである。
【図12】図12は、WF501株のエチルベンゼンに
対する作用を示すグラフである。
【図13】図13は、WF501株によるベンゾチオフ
ェンスルホンの分解過程を示すグラフである。
【図14】図14は、WF501株及びWF505株に
よるベンゾチオフェンの分解におけるエアレーションの
効果を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:07) (C12P 1/04 C12R 1:38)

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シュードモナス(Pseudomona
    s)属に属し、ベンゾチオフェン1mg/時間/g乾燥菌
    体、以上の速度でベンゾチオフェンを酸化する能力を有
    する微生物を、ベンゾチオフェン含有物と接触せしめる
    ことを特徴とする、ベンゾチオフェンの除去方法。
  2. 【請求項2】 シュードモナス(Pseudomona
    s)属に属し、ベンゾチオフェンをベンゾチオフェンス
    ルホキシドに酸化する能力を有する微生物を、ベンゾチ
    オフェンを含有する水−非混和性有機物質と水性媒体と
    の2相混合物に作用せしめることによりベンゾチオフェ
    ンをベンゾチオフェンスルホキシドに酸化し、該ベンゾ
    チオフェンスルホキシドを水性媒体に移行せしめること
    を特徴とする、水−非混和性有機物からベンゾチオフェ
    ンを除去する方法。
  3. 【請求項3】 バシルス(Bacillus)属に属
    し、ベンゾチオフェンスルホンあるいはベンゾチオフェ
    ンスルホキシドを分解する能力を有する微生物を、ベン
    ゾチオフェンスルホンあるいはベンゾチオフェンスルホ
    キシド含有物と接触せしめることを特徴とする、ベンゾ
    チオフェンスルホンあるいはベンゾチオフェンスルホキ
    シドの除去方法。
  4. 【請求項4】 シュードモナス(Pseudomona
    s)属に属しベンゾチオフェンを酸化する能力を有する
    微生物と、バシルス(Bacillus)属に属しベン
    ゾチオフェンスルホンあるいはベンゾチオフェンスルホ
    キシドを分解する能力を有する微生物とを、この順序で
    又は同時に、ベンゾチオフェン含有物に好気的条件下で
    接触せしめることを特徴とする、ベンゾチオフェンの除
    去方法。
  5. 【請求項5】 シュードモナス(Pseudomona
    s)属に属しベンゾチオフェンを酸化する能力を有する
    微生物と、バシルス(Bacillus)属に属しベン
    ゾチオフェンスルホンあるいはベンゾチオフェンスルホ
    キシドを分解する能力を有する微生物とを、この順序で
    又は同時に、ベンゾチオフェンを含有する非−水混和性
    有機物質と水性媒体との2相混合物と、好気的条件下で
    接触せしめることを特徴とする、水−非混和性有機物か
    らベンゾチオフェンを除去する方法。
  6. 【請求項6】 シュードモナス(Pseudomona
    s)属に属し、ベンゾチオフェンをベンゾチオフェンス
    ルホキシドに酸化する能力を有する微生物。
  7. 【請求項7】 バシルス(Bacillus)属に属
    し、ベンゾチオフェンスルホンあるいはベンゾチオフェ
    ンスルホキシドを分解する能力を有する微生物。
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