JPH09296214A - 固体成形オーステンパー処理方法及び装置 - Google Patents

固体成形オーステンパー処理方法及び装置

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JPH09296214A
JPH09296214A JP13274996A JP13274996A JPH09296214A JP H09296214 A JPH09296214 A JP H09296214A JP 13274996 A JP13274996 A JP 13274996A JP 13274996 A JP13274996 A JP 13274996A JP H09296214 A JPH09296214 A JP H09296214A
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JP
Japan
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austempering
temperature
treated
heat treatment
forming
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Application number
JP13274996A
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English (en)
Inventor
Shin Takeda
伸 武田
Mareto Kato
希人 加藤
Toshiki Hiromura
敏樹 廣村
Norio Kamiya
典男 神谷
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Aisin Corp
Original Assignee
Aisin Seiki Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 比較的厚みの厚い被処理材であっても,歪み
を発生させることなく,十分な冷却速度で急冷すること
ができ,かつ所望のオーステンパー処理温度を確保する
ことができる,固体成形オーステンパー処理方法及び装
置を提供すること。 【解決手段】 被処理材をオーステナイト域(A3 点以
上)まで加熱し,次いで所望のオーステンパー処理温度
2 より低い温度T1 に設定した成形熱処理型により被
処理材を挟持して,該被処理材を急冷する。次いで,上
記成形熱処理型をオーステンパー処理温度T2 に加熱
し,上記被処理材をオーステンパー処理温度T2 に保持
してベーナイト変態させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は,プレス成形と同時にオーステン
パー処理を行う固体成形オーステンパー処理方法及びそ
の装置に関する。
【0002】
【従来技術】一般に,オーステンパー処理は,後述する
図1に示したTTT線図に記載した一点鎖線Bで表すよ
うに,炭素鋼や鋳鉄等の被処理材を,オーステナイト域
(符号A3 点以上)まで加熱し,次いで,約250〜4
50℃程度のオーステンパー処理温度まで,パーライト
変態を阻止するように急冷し,次いで被処理材を上記オ
ーステンパー処理温度に保持することにより,過冷オー
ステナイト組織をベーナイト組織に恒温変態させる熱処
理方法である。ベーナイト変態は,S1 曲線に達した時
点で開始され,S2 曲線に達した時点で完了する。
【0003】このオーステンパー処理は,通常の焼入れ
−焼戻し処理と同等又はそれ以上の強度及び靱性を得る
ことができ,被処理材の特性を向上させる熱処理として
非常に有効である。また,オーステンパー処理後の被処
理材の硬度は,オーステンパー処理温度に相関があり,
その温度条件を最適な温度に設定することによって,所
望の硬度を得ることができる。
【0004】このオーステンパー処理を実施するための
具体的処理方法としては,従来より次のような方法があ
る。第1の方法は,オーステナイト域に加熱した被処理
材を,所望のオーステンパー処理温度に保持した塩浴槽
に焼入れ,そのまま保持する方法である。第2の方法
は,例えば特開昭59−110719号公報に示されて
いるごとく,オーステナイト域に加熱した被処理材を,
オーステンパー処理温度よりも低い温度に設定した予備
塩浴槽中に焼入れて急冷した後,オーステンパー処理温
度に保持した別の恒温処理用塩浴槽中に被処理材を移し
て保持する方法である。
【0005】第3の方法は,特開平4−41615号公
報に示されているごとく,オーステナイト域に加熱した
被処理材を,一つの流動層内において,Heガスによっ
て急冷した後,HeガスをN2 ガスに置換して恒温処理
する方法である。第4の方法は,特開平6−10814
3号公報に示されているごとく,オーステンパー処理温
度に保持した成形熱処理型を用いて,オーステナイト域
に加熱した被処理材を成形すると同時に急冷し,そのま
ま被処理材を挟持して恒温処理する方法である。
【0006】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記従来の種
々のオーステンパー処理方法においては,次の問題があ
る。即ち,上記第1の方法においては,オーステンパー
処理温度と同じ温度の塩浴槽において被処理材の急冷処
理を行う。そのため,被処理材の厚みが厚い場合や焼入
れ性が悪い場合には,冷却速度が遅くなって,パーライ
トが発生しやすいという問題がある。
【0007】また,上記塩浴槽は,硝酸塩等の塩浴を用
いるため,処理後の被処理材表面に付着した塩浴を除去
するための洗浄工程を必要とする。そのため,洗浄設備
を設けることが必要である。さらには,環境汚染防止の
観点から,洗浄に伴う廃液の処理設備をも設ける必要が
ある。それ故,多大な設備コストが必要とされる。
【0008】上記第2の方法においては,急冷用と高温
変態用の2つの処理浴槽を用いるため,冷却速度の向上
を図ることができる。しかしながら,この方法において
は,上記第1の方法と同様の洗浄工程追加に伴う問題が
あると共に,これら浴槽間を短時間で被処理材を移し変
える工程も必要である。そのため,さらに上記被処理材
移し変え用設備のコストも必要となる。
【0009】上記第3の方法においては,冷却用の媒体
として,熱伝導度の小さいHeガスを用いるため,上記
第1の方法と同様に,冷却不足になりやすいという問題
がある。また,この方法においては,ターボファン,熱
交換器等を備えた流動層炉という特殊な装置が必要とな
るため,設備コストが非常に高くなる。また,上記第1
〜第3の方法においては,冷媒が液体又は気体であるた
め,被処理材に歪みが発生しやすいという問題もある。
【0010】上記第4の方法においては,冷媒に金型を
使って成形と同時に冷却し,そのまま挟持した状態で恒
温処理を行う。そのため,急冷処理に伴う被処理材の歪
み発生を防止することができ,また上記洗浄工程等は全
く必要でないという利点がある。
【0011】しかしながら,上記急冷処理は,上記オー
ステンパー処理温度に保持した状態の金型により行う。
そのため,被処理材が厚肉材の場合や焼入れ性の悪い材
料である場合には,冷却不足となりやすく,パーライト
が発生しやすい。したがって,この第4の方法の利点を
実際に生かすことができる被処理材は,厚みが薄いもの
や焼入れ性の高いものに限定されてしまう。
【0012】本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてな
されたもので,比較的厚みの厚い被処理材であっても,
歪みを発生させることなく,十分な冷却速度で急冷する
ことができ,かつ所望のオーステンパー処理温度を確保
することができる,固体成形オーステンパー処理方法及
び装置を提供しようとするものである。
【0013】
【課題の解決手段】請求項1の発明は,被処理材をオー
ステナイト域まで加熱し,次いで所望のオーステンパー
処理温度より低い温度に設定した成形熱処理型により上
記被処理材を挟持して,該被処理材を急冷し,次いで,
上記成形熱処理型を上記オーステンパー処理温度に加熱
し,上記被処理材をオーステンパー処理温度に保持して
ベーナイト変態させることを特徴とする固体成形オース
テンパー処理方法にある。
【0014】本発明において最も注目すべきことは,上
記被処理材の急冷処理及び恒温処理は,上記被処理材を
成形熱処理型により挟持することにより行い,かつ,該
成形熱処理型の温度は,まず上記オーステンパー処理温
度よりも低く設定しておき,上記急冷後にオーステンパ
ー処理温度まで加熱することである。
【0015】上記オーステナイト域とは,いわゆるオー
ステナイト変態点以上の温度で被処理材の組織が均一オ
ーステナイト組織になる領域をいい,通常約800℃〜
約1400℃の範囲内の温度である。この温度域は,被
処理材の炭素量等の成分組成によって変動するものであ
る。
【0016】上記オーステンパー処理温度は,後述する
図1に示したTTT線図における,S1 曲線のノーズ
(符号N点)よりも低く,かつ,マルテンサイト変態点
(符号Ms点)よりも高い温度の範囲内で選択する。即
ち,恒温変態によってベーナイト変態が起こる温度範囲
内において,所望の硬度に対応する温度を選択する。
【0017】また,上記成形熱処理型の最初の温度は,
上記オーステンパー処理温度よりも低く設定するが,マ
ルテンサイト変態点よりは高い温度にすることが好まし
い。マルテンサイトより低い温度に設定している場合に
は,被処理材の温度もマルテンサイト変態点以下に急冷
されるおそれがある。この場合には,被処理材がマルテ
ンサイト変態をおこしてしまい,ベーナイト組織が得ら
れない。
【0018】次に,本発明における作用につき説明す
る。本発明のオーステンパー処理方法においては,上記
成形熱処理型によって被処理材を挟持することにより,
上記急冷及びベーナイト変態処理を行う。即ち,被処理
材は,熱処理期間中,常に上記被処理材に挟持されてい
る。そのため,被処理材は,急冷によるいわゆる焼入れ
歪み等の発生を起こすことがない。
【0019】また,上記成形熱処理型の最初の温度は,
上記所望のオーステンパー処理温度よりも低い温度に設
定してある。そのため,上記被処理材の急冷処理は,従
来よりも速い冷却速度により行うことができ,かつ,確
実にオーステンパー処理温度まで冷却することができ
る。
【0020】即ち,冷却速度は,冷媒の温度と被処理材
の温度との差が大きいほど速い。そして,本発明の場合
には,被処理材がオーステンパー処理温度に達するま
で,常に一定以上の温度差が維持されている。そのた
め,十分に速い冷却速度が得られる。それ故,被処理材
は,パーライト変態を起こすことなく,上記オーステン
パー処理温度と同等または,それ以下の温度まで急冷さ
れ,過冷オーステナイト組織の状態に保持される。
【0021】また,被処理材を急冷した後には,上記成
形熱処理型の温度を所望のオーステンパー処理温度まで
加熱する。このとき,被処理材は,上記のごとく十分に
オーステンパー処理温度又はそれ以下の温度に達してい
る。そのため,被処理材は,上記成形熱処理型の温度の
上昇に伴って速やかに所望の温度に到達し,保持され
る。それ故,被処理材は,確実に所望の温度でベーナイ
ト化され,所望の硬度等の特性を得ることができる。
【0022】次に,請求項2の発明のように,上記被処
理材は,上記急冷によって上記オーステンパー処理温度
よりも低い温度まで一旦冷却されてもよい。即ち,最も
理想的には,図1における一点鎖線Bに示すごとく,被
処理材を所望のオーステンパー処理温度まで急冷し,そ
の後その温度にそのまま保持することが望ましい。
【0023】しかし,現実にはこれを実現させることは
困難であり,一旦オーステンパー処理温度を超えて冷却
されてもよい。この場合にも,急冷後の成形熱処理型の
上記加熱によっ被処理材を速やかにオーステンパー処理
温度に保持することにより,十分に所望のベーナイト組
織を得ることができる。ただし,被処理材の温度がマル
テンサイト変態点よりも低くならないように注意するこ
とが必要である。
【0024】また,請求項3の発明のように,上記急冷
後の上記被処理材の温度は,該被処理材が変態を開始す
るまでに,上記オーステンパー処理温度に達しているこ
とが好ましい。即ち,被処理材の急冷後の時間が,後述
する図1のTTT線図におけるS1 曲線に到達するまで
の間に,被処理材の温度がオーステンパー処理温度に到
達していることが好ましい。これにより,さらに確実に
処理のベーナイト変態をさせることができる。
【0025】また,請求項4の発明のように,上記オー
ステンパー処理温度は,一定の温度であることが好まし
い。即ち,被処理材が変態を開始した時点から変態が完
了するまでの温度が常に一定であることが好ましい。こ
の場合には,より安定的に所望のベーナイト変態を起こ
させることができ,被処理材の所望の特性を確実に得る
ことができる。
【0026】一方,上記変態開始時点から変態完了時点
までのオーステンパー処理温度を変化させた場合には,
被処理材における所望の特性を得ることが困難であると
いう問題がある。ただし,一定の昇温速度又は冷却速度
でオーステンパー処理温度を変化させることにより,所
望特性が得られるということを予め把握できている場合
には,積極的にオーステンパー処理温度を上記速度で変
化させることが有効な場合もある。
【0027】また,請求項5の発明のように,上記被処
理材を急冷した後の上記成形熱処理型の温度は,上記オ
ーステンパー処理温度よりも高い温度に一旦上昇させ,
その後上記オーステンパー処理温度に冷却,保持するこ
ともできる。この場合には,被処理材が一旦オーステン
パー処理温度よりも低い温度にまで冷却された場合に,
オーステンパー処理温度まで短期間で加熱することがで
きる。
【0028】次に,請求項6の発明のように,請求項1
〜5のいずれか1項の固体成形オーステンパー処理方法
を実施するための装置であって,該装置は,被処理材を
成形するための上下一対の成形熱処理型と,該成形熱処
理型の内部に配設した,加熱用のヒータと,冷却管とよ
りなることを特徴とする固体成形オーステンパー処理装
置がある。
【0029】本発明の装置において最も注目すべきこと
は,上記成形熱処理型の内部には,上記ヒータと冷却管
とが配設されていることである。上記ヒータとしては,
シーズヒータ,その他の種々の加熱装置を用いることが
できる。また,上記冷却管は,この中に冷却水,冷却空
気等を循環させることにより,上記成形熱処理型を急速
に冷却する冷却装置として機能させることができる。
【0030】したがって,本発明のオーステンパー処理
装置においては,上記ヒータによって,成形熱処理型の
温度を所定の温度に保持し,かつ,オーステンパー処理
温度を迅速に加熱することができる。また連続して繰り
返し固体成形オーステンパー処理を行う際には,上記冷
却管によって,成形熱処理型の温度をオーステンパー処
理温度から急冷時の温度へ急速に冷却させることがで
き,作業効率を向上させることができる。
【0031】また,請求項6の発明のように,上記成形
熱処理型は,被処理材を部分的にオーステンパー処理す
るベーナイト化部と,被処理材を部分的にマルテンサイ
ト化するマルテンサイト化部とを有し,上記ベーナイト
化部には上記ヒータを,上記マルテンサイト化部には上
記冷却管をそれぞれ内蔵している構造にすることもでき
る。
【0032】この場合には,被処理材に対して,マルテ
ンサイト化処理とベーナイト化処理とを同時に行うこと
ができる。これにより,極めて硬度の高いマルテンサイ
ト組織の部分と,非常に靱性の高いベーナイト組織の部
分とを併せ持つ優れた材料を得ることができる。
【0033】また,請求項7の発明のように,上記成形
熱処理型は,被処理材に接触する型面部と,該型面部の
内部に配置した高熱伝導材とよりなり,上記ヒータ及び
上記冷却管は,上記高熱伝導材の内部に配設してあるこ
とが好ましい。これにより,効率よく成形熱処理型の加
熱及び温度保持を行うことができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
実施形態例1 本発明の実施形態例にかかる固体成形オーステンパー処
理方法及び装置につき,図1〜図4を用いて説明する。
本例においては,図2に示すごとく,被処理材8の中央
部分に凹状部85を設けるための成形を行うと同時に,
被処理材8全体に対してオーステンパー処理を行った。
【0035】本例の固体成形オーステンパー処理方法を
図1に示したTTT線図により説明する。図1は,横軸
に時間,縦軸に温度を取り,恒温変態開始点を示すS1
曲線,恒温変態完了点を示すS2 曲線,オーステナイト
変態点A3 ,及びマルテンサイト変態点Msを示してい
る。
【0036】本例の固体成形オーステンパー処理方法に
おいては,図1に示すごとく,被処理材8をオーステナ
イト域(A3 点以上)の温度T3 まで加熱し,次いで所
望のオーステンパー処理温度T2 より低い温度T1 に設
定した成形熱処理型50(図3,図4)により被処理材
8を成形すると共に挟持して,該被処理材8を急冷す
る。次いで,成形熱処理型50を上記オーステンパー処
理温度T2 に加熱し,被処理材8をオーステンパー処理
温度T2 に保持してベーナイト変態させる。
【0037】次に,上記方法を実施するための装置5
は,図3,図4に示すごとく,被処理材8を成形するた
めの上下一対の成形熱処理型50と,該成形熱処理型5
0の内部に配設した,加熱用のヒータ53と,冷却管5
4とよりなる。上下の成形熱処理型50は,上下一対の
型509に対して,それぞれ断熱板58を介して配設さ
れている。また,図3,図4に示すごとく,成形熱処理
型50の周囲にも,断熱板58を配設している。
【0038】そして,図3,図4に示すごとく,成形熱
処理型50は,被処理材8に接触する型面部51と,該
型面部51の内部に配置した銅製の高熱伝導材52とよ
りなり,ヒータ53及び冷却管54は,高熱伝導材52
の内部に配設してある。また,上下の成形熱処理型50
の型面部51の中央部には,被処理材8の凹状部85を
成形するための突起部501とへこみ部502とをそれ
ぞれ設けてある。
【0039】ヒータ53は,いわゆるシーズヒータであ
り,上下の成形熱処理型50に対して6本ずつ配設して
ある。また,冷却管54は,図3,図4に示すごとく,
上記高熱伝導材52の内部における上記型面部51との
境界近傍に設けてある。そして,その経路は,図4に示
すごとく,均等に冷却できるようにジグザグに配置して
ある。また,冷却管54は,冷却用IR送風装置(図示
略)に連結してある。
【0040】次に,上記装置5によって,上記方法を実
施する際の手順を説明する。まず,図1に示すごとく,
上記成形熱処理型50内のヒータ53を用いて,成形熱
処理型50の温度をオーステンパー処理温度T2 よりも
低い温度T1 に設定する。一方,成形及び熱処理を施す
前の平坦な形状の被処理材8をオーステナイト域の温度
3 まで加熱しておく。
【0041】次いで,固体成形オーステンパー処理を開
始する際には,図3に示すごとく,処理前の被処理材8
を下側の成形熱処理型50上に速やかにセットする。次
いで,上側の成形熱処理型50を下降させて,被処理材
8を成形すると共に挟持し,これを急冷する。即ち,被
処理材の温度は,図1に示した実線Eに沿って急激に低
くなる。
【0042】次いで,上記ヒータ53の出力を上げて成
形熱処理型50の温度を急速に上昇させて,オーステン
パー処理温度T2 とする。即ち,成形熱処理型50の温
度は,図1に示した二点鎖線Dに沿って変化し,オース
テンパー処理温度T2 に達する。これにより,急冷され
た被処理材8の温度は,図1の実線Eに示すごとく,成
形熱処理型50の温度上昇と共に上昇し,オーステンパ
ー処理温度T2 に達する。
【0043】上記挟持状態を保持することにより,被処
理材8の温度は一定のまま図1の実線Eに沿って推移
し,曲線S1 に到達した時点でベーナイト変態が開始さ
れ,曲線S2 に到達した時点でベーナイト変態が完了す
る。その後,成形熱処理型50を開いて被処理材8を取
り出し,放冷する。これにより,一連の固体成形オース
テンパー処理が完了し,被処理材8は,所望の硬度を有
するベーナイト組織に改質される。
【0044】上記のごとく,本例においては,成形熱処
理型50の温度をオーステンパー処理温度よりも低い温
度T1 に設定した状態で被処理材8を急冷し,その後,
成形熱処理型50の温度を速やかにオーステンパー処理
温度T2 まで加熱する。そのため,従来よりも厚みの厚
い被処理材,或いは焼入れ性の悪い被処理材をも,非常
に速い冷却速度で急冷することができ,確実にベーナイ
ト変態させることができる。それ故,本例においては,
オーステンパー処理可能範囲を拡大することができる。
【0045】これに対し,本例の被処理材8を従来の方
法により固体成形オーステンパー処理した場合には,冷
却速度が遅く,所望のベーナイト変態を完全に得ること
ができない。具体的には,上記成形熱処理型50の温度
を予めオーステンパー処理温度T2 に設定しておき,上
記急冷及び保持を行った結果は次のようになった。
【0046】即ち,図1の点線Cに示すごとく,被処理
材8は,本例の場合よりも遅い冷却速度で冷却された。
その結果,被処理材8の厚み方向の中央部分には,パー
ライト組織が発生し,十分なベーナイト変態が得られな
かった。このことから,本例の方法及び装置によれば,
従来よりも速い冷却速度が得られることがわかる。
【0047】尚,本装置5によって,続けて固体成形オ
ーステンパー処理を行う際には,上記被処理材8を成形
熱処理型50から取り外した時点で,上記冷却管54に
冷却用エアーを通風させる。これにより,成形熱処理型
50の温度は,速やかに所望の温度T1 に冷却される。
そのため,非常に短いサイクルタイムで連続的に上記一
連の処理を行うことができる。
【0048】実施形態例2 本例においては,実施形態例1の方法及び装置5を用い
て,炭素鋼S70Cについて,従来法の場合に比べて,
処理可能厚みをどの程度まで向上させることができるか
を調べた。
【0049】具体的には,本例の方法は,予め成形熱処
理型50の温度を260〜320℃の範囲でセットして
おき,被処理材の急冷後,オーステンパー処理温度であ
る390℃に加熱し,保持することとした。一方,従来
の方法としては,成形熱処理型50の温度を最初から3
90℃に設定して一連の処理を行うこととした。尚,こ
の炭素鋼S70Cは,その硬度を向上させてHV400
〜460にするためには約380〜400℃の温度によ
りオーステンパー処理を行えばよいことがわかってい
る。
【0050】また,オーステンパー処理が確実に行える
か否かの判定は,便宜上,上記成形熱処理型50により
被処理材を挟持して急冷した時点で水冷し,オーステナ
イト組織がパーライトに変化していないか否かにより判
断した。即ち,水冷後にパーライトが発生している場合
には,上記急冷時に既にパーライト変態しており,それ
までの冷却速度が遅いことを示す。
【0051】このような判定方法を用いて被処理材の厚
みを徐々に変更し,本例及び従来の方法でそれぞれ繰り
返し評価した。その結果,実施形態例1と同様の本例の
方法により処理したものは,3.6mmの厚みのものま
では,上記水冷後にパーライトが見られず,十分な速さ
で急冷されていることがわかった。一方,従来の方法に
より処理したものは,2.0mmまでは良好であった
が,これを超える厚みのものについては,パーライトが
発生していた。
【0052】また,3.6mm厚みの被処理材を,途中
で水冷することなく,本例の方法により固体成形オース
テンパー処理を最後まで行い,組織観察と硬度測定を行
った。その結果,組織は確実にベーナイト組織に変態し
ており,硬度もHV420〜460であって,非常に良
好であった。
【0053】実施形態例3 本例においては,図5にしめすごとく,自動車のクラッ
チに使用されるダイヤフラムスプリング7を固体成形オ
ーステンパー処理する具体例につき説明する。このダイ
ヤフラムスプリング7は,図5に示すごとく,頭部を切
り取った円錐上の形状を呈している。そして,その内周
部72は,非常に高い硬度が要求されており,一方,本
体部71は高い靱性が要求されている。
【0054】そのため,ダイヤフラムスプリング7の内
周部72は,普通の焼入れ処理によりマルテンサイト組
織を得ることが必要であり,一方,本体部71は,オー
ステンパー処理によってベーナイト組織を得ることが必
要である。このような,ベーナイト組織とマルテンサイ
ト組織を一体的に併せもつ部品を成形すると共に熱処理
する本例の装置6を図6に示す。
【0055】本例の装置6は,上下の型609にセット
した上下一対の成形熱処理型60と,その内部に配設し
たヒータ63及び冷却管64とよりなる。また,ヒータ
63は成形熱処理型60の外周側に,冷却管64はその
内周側に,それぞれ分けて配設してある。そして,ヒー
タ63を配設したベーナイト化部601と,冷却管64
を配設したマルテンサイト化部602との間には,断熱
板68を介在させてある。
【0056】この装置6においてダイヤフラムスプリン
グ7を処理するに当たっては,まず,上記冷却間64に
冷却水を流し続けてマルテンサイト化部601を十分に
冷却しておくと共に,上記ヒータ63を制御してベーナ
イト化部602をオーステンパー処理温度よりも低い温
度に保持しておく。
【0057】次いで,予めオーステナイト域に加熱して
おいた被処理材70を上下の成形熱処理型60の間に速
やかにセットし(図6左側),上側の成形熱処理型60
を下降させる(図6右側)。これにより,マルテンサイ
ト化部601に挟持された部分の被処理材70は,マル
テンサイト変態点以下まで十分に急冷されて,マルテン
サイト変態を起こす。
【0058】一方ベーナイト化部602に挟持された部
分の被処理材70は,オーステンパー処理温度より少し
低い温度まで十分に急冷され過冷オーステナイト組織が
維持される。次いで,上記ヒータ63を制御して,ベー
ナイト化部602の温度をオーステンパー処理温度まで
急速に加熱し,保持する。これにより,ベーナイト化部
502に挟持された部分の被処理材70は,オーステン
パー処理温度に保持され,十分ベーナイト変態を起こ
す。
【0059】このような一連の処理によって,被処理材
70は,内周部71がマルテンサイト組織であり,本体
部72がベーナイト組織である複合的な性質を有する優
れたダイヤフラムスプリング7となる。即ち,上記本体
部71は,上記のごとく,ベーナイト化部601の温度
を急冷時と恒温変態時とにおいて変化させるという本発
明の方法を用いて処理されている。そのため,確実にベ
ーナイト変態した組織を得ることができる。
【0060】
【発明の効果】上述のごとく,本発明によれば,比較的
厚みの厚い被処理材であっても,歪みを発生させること
なく,十分な冷却速度で急冷することができ,かつ所望
のオーステンパー処理温度を確保することができる,固
体成形オーステンパー処理方法及び装置を提供すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1における,オーステンパー処理温
度条件を示したTTT線図。
【図2】実施形態例1における,被処理材の形状を示す
説明図。
【図3】実施形態例1における,固体成形オーステンパ
ー処理装置の縦断面図。
【図4】実施形態例1における,成形熱処理型(下側)
の平面図。
【図5】実施形態例3における,ダイヤフラムスプリン
グの斜視図。
【図6】実施形態例3における,固体成形オーステンパ
ー処理装置の構成を示す説明図。
【符号の説明】
5,6...固体成形オーステンパー処理装置, 50,60...成形熱処理型, 51...型面部, 52...高熱伝導材, 53,63...ヒータ, 54,64...冷却管, 58,68...断熱板, 601...マルテンサイト化部, 602...ベーナイト化部, 7...ダイヤフラムスプリング, 8,70...被処理材,
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 神谷 典男 愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイシ ン精機株式会社内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被処理材をオーステナイト域まで加熱
    し,次いで所望のオーステンパー処理温度より低い温度
    に設定した成形熱処理型により上記被処理材を挟持し
    て,該被処理材を急冷し,次いで,上記成形熱処理型を
    上記オーステンパー処理温度に加熱し,上記被処理材を
    オーステンパー処理温度に保持してベーナイト変態させ
    ることを特徴とする固体成形オーステンパー処理方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において,上記被処理材は,上
    記急冷によって上記オーステンパー処理温度よりも低い
    温度まで一旦冷却されることを特徴とする固体成形オー
    ステンパー処理方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において,上記急冷後の
    上記被処理材の温度は,該被処理材が変態を開始するま
    でに,上記オーステンパー処理温度に達していることを
    特徴とする固体成形オーステンパー処理方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項において,
    上記オーステンパー処理温度は,一定の温度であること
    を特徴とする固体成形オーステンパー処理方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項において,
    上記被処理材を急冷した後の上記成形熱処理型の温度
    は,上記オーステンパー処理温度よりも高い温度に一旦
    上昇させ,その後上記オーステンパー処理温度に冷却,
    保持することを特徴とする固体成形オーステンパー処理
    方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項の固体成形
    オーステンパー処理方法を実施するための装置であっ
    て,該装置は,被処理材を成形するための上下一対の成
    形熱処理型と,該成形熱処理型の内部に配設した,加熱
    用のヒータと,冷却管とよりなることを特徴とする固体
    成形オーステンパー処理装置。
  7. 【請求項7】 請求項6において,上記成形熱処理型
    は,被処理材を部分的にオーステンパー処理するベーナ
    イト化部と,被処理材を部分的にマルテンサイト化する
    マルテンサイト化部とを有し,上記ベーナイト化部には
    上記ヒータを,上記マルテンサイト化部には上記冷却管
    をそれぞれ内蔵していることを特徴とする固体成形オー
    ステンパー処理装置。
  8. 【請求項8】 請求項6又は7において,上記成形熱処
    理型は,被処理材に接触する型面部と,該型面部の内部
    に配置した高熱伝導材とよりなり,上記ヒータ及び上記
    冷却管は,上記高熱伝導材の内部に配設してあることを
    特徴とする固体成形オーステンパー処理装置。
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