JPH09268364A - オーステナイト系ステンレスに対する浸炭処理方法およびそれによって得られたオーステナイト系ステンレス製品 - Google Patents

オーステナイト系ステンレスに対する浸炭処理方法およびそれによって得られたオーステナイト系ステンレス製品

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JPH09268364A
JPH09268364A JP1401997A JP1401997A JPH09268364A JP H09268364 A JPH09268364 A JP H09268364A JP 1401997 A JP1401997 A JP 1401997A JP 1401997 A JP1401997 A JP 1401997A JP H09268364 A JPH09268364 A JP H09268364A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】母材の強度を低下させることなく、表面硬度を
大幅に向上させ、しかも、母材以上の耐食性を備えた硬
質表面層を形成することのできるオーステナイト系ステ
ンレスに対する浸炭処理方法を提供する。 【解決手段】浸炭処理に先立って、フッ素系ガス雰囲気
下でオーステナイト系ステンレスを加熱状態で保持し、
ついで浸炭処理の際の温度を400〜680℃の温度に
設定して浸炭処理するオーステナイト系ステンレスに対
する浸炭処理方法であって、上記オーステナイト系ステ
ンレスが、モリブデンを1〜6%含有する安定型オース
テナイト系ステンレスもしくはクロムを13〜25%含
有する安定型オーステナイト系ステンレスであり、上記
浸炭処理により母材以上の耐蝕性を有する浸炭硬化層を
形成するようにした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オーステナイト系
ステンレスに対して浸炭処理を施し、その表面を硬質化
するとともに、耐蝕性を向上させる浸炭処理方法および
それによって得られたオーステナイト系ステンレス製品
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】オーステナイト系ステンレスは、高耐蝕
性および高装飾性を有するため、広く使用されている。
例えば、ボルト,ナット,ねじ,ワッシャ,ピン等のフ
ァスナー類は、上記特性に鑑み、オーステナイト系ステ
ンレス材料によって構成されている。また、食品機械や
化学プラント,原子力分野等の高耐蝕性を要求される分
野の機械,設備においては、各種のシャフト類,インペ
ラー,金型,ばね,チェーン,バルブ部品等,多様な機
械部品にオーステナイト系ステンレス製品が適用されて
いる。しかしながら、上記のようなオーステナイト系ス
テンレス製品の多くは、一般の炭素鋼材と異なり、それ
自体の材料強度を最終形状に仕上げるまでの中間加工工
程における強化によって高めることが行われている。例
えば、プレス加工,押し出し成形加工,パンチング加工
等に代表される冷間,温間の加工によってオーステナイ
ト系ステンレス自体の結晶構造を緻密化させ、いわゆる
加工硬化により材料強度の向上が図られている。このよ
うな中間加工工程での材料強化では、ボルト,ナット等
においてはその形状に起因する制約があり、押し出し成
形加工等においては金型コスト等に起因する制約がある
ことから、その強化の程度におのずと限界が生ずる。し
たがって、ボルト,ナット,ねじ等のファスナー類やポ
ンプシャフト,ベアリング,ばねのようなオーステナイ
ト系ステンレス製品に、特別に表面剛性や焼付防止機能
が要求される時には、硬質クロムメッキやNi−P等
の湿式メッキを施したり、物理蒸着(physica
l vaper depositin,PVD)等の皮
膜コーティングを施したり、窒化,浸炭のような浸透
硬化処理を施すこと等が行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のような
湿式メッキや、PVD等のような皮膜コーティングで
は、製品表面に形成された皮膜の剥離等が生じ、製品寿
命がかえって短かくなるという問題を生じる。そこで、
浸炭のような浸透硬化処理の適用が検討される。
【0004】上記浸透硬化処理のうち、窒化処理は、オ
ーステナイト系ステンレス材料の表面から内部に窒素原
子を浸透させて、その表面に硬質窒化層を形成させると
いう方法である。ところが、この方法では、製品の表面
硬度は向上するものの、肝心の耐蝕性が低下するという
大きな問題がある。すなわち、窒化硬化層中では、オー
ステナイト系ステンレス材料自体が含有しているクロム
原子(このクロム原子によって耐蝕性の向上が実現され
る)が、CrN,Cr2 Nというクロム窒化物となって
消費され、母材中の固溶クロム量が低下することにより
耐蝕性が低下するものと考えられる。さらに、この窒化
物の生成によって、製品の表面が膨れたり、表面粗度が
悪くなったり、あるいは、磁性を帯びる等の問題も生ず
る。
【0005】また、上記浸透硬化処理の他の方法として
は、浸炭法が存在する。従来からよく行われている浸炭
法は、製品の表面を炭素分を含有するガスと接触させ、
表層部に炭素原子を浸透させ、硬質な浸炭層を形成させ
るものである。このような浸炭法においては、炭素原子
の浸透速度と固溶限度を考慮し、一般に、鉄のA1 変態
点である700℃以上の温度で処理が行われる。しか
し、この場合には、鉄の再結晶温度をはるかに越えた温
度(鉄の再結晶温度は略450℃)に長時間保持される
こととなり、加工硬化によって強化されたオーステナイ
ト系ステンレスの母材が再結晶等によって軟化し、製品
強度が著しく低下するという大きな欠点がある。しか
も、上記のような高温でオーステナイト系ステンレスに
浸炭すると、浸炭層にクロム炭化物が析出し、オーステ
ナイト系ステンレスの固溶クロム成分が炭化物の生成に
消費されることから、母材中の固溶クロム量が低下し、
著しい耐蝕性の低下を招くという問題もある。したがっ
て、オーステナイト系ステンレスに対する浸炭処理は、
現在までのところ全く行われていないのが実情である。
【0006】本発明は、このような事情に鑑みなされた
もので、母材の強度を低下させることなく、表面硬度を
大幅に向上させ、しかも、母材以上の耐蝕性を備えた硬
質表面層を形成することのできるオーステナイト系ステ
ンレスに対する浸炭処理方法およびそれによって得られ
たオーステナイト系ステンレス製品の提供をその目的と
する。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明のオーステナイト系ステンレスに対する浸炭
処理方法は、浸炭処理に先立って、フッ素系ガス雰囲気
下でオーステナイト系ステンレスを加熱状態で保持し、
ついで浸炭処理の際の温度を400〜680℃の温度に
設定して浸炭処理するオーステナイト系ステンレスに対
する浸炭処理方法であって、上記オーステナイト系ステ
ンレスが、モリブデンを1〜6重量%含有する安定型オ
ーステナイト系ステンレスもしくはクロムを13〜25
重量%含有する安定型オーステナイト系ステンレスであ
り、上記浸炭処理により母材以上の耐蝕性を有する浸炭
硬化層を形成することを要旨とする。
【0008】また、本発明のオーステナイト系ステンレ
ス製品は、母材が、モリブデンを1〜6重量%含有する
安定型オーステナイト系ステンレスもしくはクロムを1
3〜25重量%含有する安定型オーステナイト系ステン
レスから形成され、表面から5〜70μmの深さの表面
層が炭素原子の浸入によって硬化して浸炭硬化層に形成
され、この浸炭硬化層の硬度がマイクロビッカース硬度
で500〜1050(HV)に形成され、上記浸炭硬化
層が、クロム炭化物粒子が存在しないオーステナイト相
から形成され、母材以上の耐蝕性を有することを要旨と
する。
【0009】本発明者らは、オーステナイト系ステンレ
スに対する表面硬度を向上させるため、一連の研究を重
ねる過程で、浸炭処理に際し、フッ素系ガスで前処理す
ると、オーステナイト系ステンレスに対し、鋼のA1
態点以下の温度での浸炭処理が可能になるのではないか
と着想し、これに基づき一連の研究を重ねた。この研究
の過程で、前記の着想のように、浸炭処理に先立ち、ま
たは、浸炭処理と同時に、フッ素系ガスで処理すると、
従来、不可能視されていたステンレスへの浸炭処理が可
能になるのであり、特に、その浸炭処理の温度も従来の
ような700℃以上の高温ではなく、680℃以下の温
度、好適には500℃よりも低温側においても、効果的
に浸炭することができることを見いだした。そして、さ
らに研究を重ね、上記オーステナイト系ステンレスとし
て安定型ステンレスを用いることにより、浸炭前の中間
加工によってもフェライトが析出せず、オーステナイト
単相の状態が維持されることから、浸炭層の硬度が高く
かつ均一で、しかも、浸炭品には磁性が生じないことを
見いだした。しかも、上記安定型ステンレスのなかで
も、モリブデンを1〜6重量%含有する安定型ステンレ
スもしくはCrを13〜25重量%含有する安定型ステ
ンレスであれば、得られる浸炭層が母材以上の耐蝕性を
発揮することを突き止め、本発明に到達した。ここで、
安定型ステンレスとは、常温において、所定の製品形状
に加工を行っても金属組織的にフェライトが生成せず、
完全にオーステナイト相を呈するステンレスをいう。
【0010】このように、母材以上の耐蝕性を有する浸
炭層が得られる理由については、現状では明らかではな
いが、浸炭によって表層部に形成されたC濃化層に由来
した、障壁バンドが形成され、金属イオンの拡散が阻止
されるのが一因と推察される。そして、このようにする
ことにより、オーステナイト系ステンレス製品の表面か
ら5〜70μmの深さの表面層が浸炭硬化層に形成さ
れ、この浸炭硬化層の硬度が、マイクロビッカース硬度
で500〜1050Hvに形成される。しかも、上記浸
炭硬化層は、クロム炭化物が析出しないオーステナイト
相からなり、この浸炭硬化層は、母材以上の高度の耐蝕
性を発揮することを突き止めたのである。また、この浸
炭によって得られる製品は、従来、窒化処理で問題にな
っていた、表面の膨れや、表面粗度の悪化等の難点も生
じない。
【0011】上記モリブデンは、浸炭硬化層の耐食性向
上に寄与すると考えられるが、フェライト安定化元素と
して知られているように、オーステナイト系ステンレス
のオーステナイト相の安定化に対しては阻害要因とな
る。このため、モリブデンを多量に添加すると、Niや
N等のオーステナイト安定化元素の添加量を増大させる
必要があり、原料コストや製造コストのアップに結びつ
くことから、できるだけ少ない方がよい。したがって、
本発明では、モリブデンを1〜6重量%含有する安定型
オーステナイト系ステンレスが用いられるが、コスト面
を重視すると、SUS316系として規格化されている
材料のように、1.0〜3重量%程度の添加量とするこ
とが望ましい。
【0012】また、本発明において、クロム炭化物粒子
が存在しないオーステナイト相とは、金属材料の結晶構
造解析に普遍的に使用されるX線回折計(X−Ray
Diffraction meter)によって、Cr
236 ,Cr7 3 ,Cr32 等の結晶質の炭化物が
確認できないオーステナイト相をいう。すなわち、オー
ステナイト系ステンレスの基相であるオーステナイト相
(γ−相)は、その結晶構造が面心立方格子で格子定数
がa=3.59Åであることから、X線回折により特定
の回折ピークが得られる。これに対し、Cr236 は、
同じ面心立方格子であっても、格子定数がa=10.6
Åであり、Cr7 3 は、三方晶で格子定数がa=1
4.0Å,c=4.53Åであり、Cr3 2 は、斜方
晶で格子定数がa=5.53Å,b=2.821Å,c
=11.49Åである。このため、これらのクロム炭化
物は、上記オーステナイト相とは、結晶構造や格子定数
が異なり、上記オーステナイト相で得られる回折ピーク
とは異なる回折ピークを生じる。したがって、浸炭硬化
層にクロム炭化物が存在すると、X線回折によってオー
ステナイト相単相の場合には見られないクロム炭化物の
ピークが現出することになる。一方、本発明における浸
炭硬化層は、クロム炭化物が存在せず、炭素原子が侵入
固溶して母相のオーステナイト相の格子が等方に歪み膨
張したオーステナイト相となっていることから、X線回
折によってもクロム炭化物のピークが現れない。
【0013】また、本発明において安定型ステンレスと
は、上述したように、常温において、所定の製品形状に
加工を行っても金属組織的にフェライトが生成せず、オ
ーステナイト相を呈するステンレスをいい、図4に示
す、Cr当量とNi当量の関係図(Schaeffle
rの状態図)において、上記Cr当量およびNi当量が
図に示す領域(A)の範囲内にある組成のステンレスを
いう。なお、ここで、Cr当量およびNi当量は、それ
ぞれ下記の式(1)および(2)によって表される数値
をいう。
【0014】
【数1】 Cr当量=Cr重量%+Mo重量%+1.5×Si重量%+0.5×Nb重量% …(1)
【0015】
【数2】 Ni当量=Ni重量%+30×C重量%+0.5×Mn重量% …(2)
【0016】なお、本発明において、耐蝕性の判定は、
浸炭処理材と未処理の母材素材のサンプルを全く同一の
加速腐食環境下に、同一条件で保持し、腐食度を示す指
標の有意差をもって行う。ここで、加速腐食環境とは、
例えば、塩水噴霧,生理食塩水への浸漬,HCl水溶液
等の酸性溶液への浸漬等の環境があげられるが、特に限
定されるものではない。
【0017】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明の実施の形態につ
いて詳しく説明する。
【0018】本発明は、モリブデンを1〜6重量%含む
安定型オーステナイト系ステンレスもしくはCrを13
〜25重量%含有する安定型オーステナイト系ステンレ
スに対して、フッ素ガスを用いて前処理したのち、もし
くは、前処理と同時に、浸炭処理を施す。
【0019】上記安定型オーステナイト系ステンレスと
しては、例えば、モリブデンを1〜3重量%含有するS
US316,SUS316L,SUS317の他、さら
に5〜6重量%までのモリブデンを添加し、オーステナ
イト安定化元素であるNを0.1〜0.4重量%、Ni
を22〜25重量%まで含有するステンレスや、モリブ
デンを含まず、Crを13〜25重量%、Niを8〜2
2重量%程度含有するSUS304,SUS310等の
オーステナイト系ステンレス材料等があげられる。本発
明では、これらを母材という。
【0020】上記安定型オーステナイト系ステンレスに
おけるモリブデンの添加量は、浸炭硬化層の耐食性向上
の観点から、1〜6重量%の範囲が好ましいが、上述し
たように、コスト面を重視すると、1〜3重量%の範囲
がより好ましい。
【0021】このような安定型オーステナイト系ステン
レス材料は、ボルト,ナット,ねじ,ワッシャー,ピン
等のようなファスナー類等に多く使用される。本発明に
おいて、オーステナイト系ステンレス製品とは、上記の
ようなファスナー類を含む他、チェーン類,時計のケー
ス,紡績用の杼(シャトル)の先端,微細な歯車,ナイ
フ等の他、幅広い産業分野で使用される機械部品を含む
ものとする。
【0022】つぎに、上記のようなオーステナイト系ス
テンレスに対し、浸炭処理に先立って、フッ素系ガス雰
囲気下でフッ化処理が行われる。なお、上記フッ化処理
は、浸炭処理と同時に行ってもよい。このフッ化処理に
は、フッ素系ガスが用いられる。上記フッ素系ガスとし
ては、NF3 ,BF3 ,CF4 ,HF,SF6 ,C2
6 ,WF6 ,CHF3 ,SiF4,ClF3 等からなる
フッ素化合物ガスがあげられ、これらは、単独でもしく
は2種以上併せて使用される。また、これらのガス以外
に、分子内にフッ素(F)を含む他のフッ素系ガスも上
記フッ素系ガスとして用いることができる。また、この
ようなフッ素化合物ガスを熱分解装置で熱分解させて生
成させたF2 ガスや、あらかじめ作られたF2 ガスも上
記フッ素系ガスとして用いることができる。このような
フッ素化合物ガスとF2 ガスとは、場合によって混合使
用される。そして、上記フッ素化合物ガス,F2 ガス等
のフッ素系ガスは、それのみで用いることもできるが、
通常はN2 ガス等の不活性ガスで希釈されて使用され
る。このような希釈されたガスにおけるフッ素系ガス自
身の濃度は、容量基準で、例えば、10000〜100
000ppmであり、好ましくは20000〜7000
0ppm、より好ましくは、30000〜50000p
pmである。このフッ素系ガスとして最も実用性を備え
ているのはNF 3 である。上記NF3 は、常温でガス状
であり、化学的安定性が高く取扱いが容易である。この
ようなNF3 ガスは、通常、上記N2 ガスと組み合わせ
て、上記の濃度範囲内で用いられる。
【0023】上記フッ化処理についてより詳しく述べる
と、本発明では、まず、炉内にバージン(未処理)のオ
ーステナイト系ステンレスを入れ、上記濃度のフッ素系
ガス雰囲気下に、加熱状態で保持し、フッ化処理する。
この場合、加熱保持は、オーステナイト系ステンレス自
体を、例えば、250〜600℃、好適には、250〜
500℃の温度に保持することによって行われる。上記
フッ素系ガス雰囲気中での上記オーステナイト系ステン
レスの保持時間は、通常は、十数分〜数十分に設定され
る。オーステナイト系ステンレスをこのようなフッ素系
ガス雰囲気下で処理することにより、オーステナイト系
ステンレスの表面に形成された、Cr23 を含む不働
態皮膜がフッ化膜に変化する。このフッ化膜は、上記不
働態皮膜に比べ、浸炭に用いる炭素原子の浸透を容易に
すると予想され、オーステナイト系ステンレスの表面
は、上記フッ化処理によって炭素原子の浸透の容易な表
面状態になるものと推測される。
【0024】つぎに、上記のようなフッ化処理を行った
後、浸炭処理を行う。浸炭処理は上記オーステナイト系
ステンレス自体を400〜680℃の温度、好適には4
00〜600℃の温度、より好適には400〜500℃
の温度に加熱し、CO+H2混合ガスからなる浸炭用ガ
ス、または、RX〔RXの成分は、CO:23体積%+
CO2 :1体積%+H2 :31体積%+H2 O:1体積
%+残部:N2 〕ガスからなる浸炭用ガス等を用い、炉
内を浸炭用ガス雰囲気にして行われる。このように、本
発明では、浸炭処理をオーステナイト系ステンレスの芯
部の軟化・溶体化を生起させない低温で行うのである。
なお、浸炭用ガスとしてCO+H2 混合ガスを用いる場
合には、上記CO+H2 混合ガスの濃度は、COが2〜
10体積%、H2 が30〜40体積%、残部N2 が好ま
しい。
【0025】上記のようなフッ化処理および浸炭処理
は、例えば、図1に示すような金属製のマッフル炉で行
われる。すなわち、このマッフル炉内において、まずフ
ッ化処理をし、ついで浸炭処理を行う。図1において、
1はマッフル炉、2はその外殻、3はヒータ、4は内容
器、5はガス導入管、6は排気管、7はモーター、8は
ファン、11は金網製のかご、13は真空ポンプ、14
は排ガス処理装置、15,16はボンベ、17は流量
計、18はバルブである。このマッフル炉1内に、オー
ステナイト系ステンレス製品10を入れ、ボンベ16を
流路に接続しNF3等のフッ素系ガスを上記マッフル炉
1内に導入して加熱しながらフッ化処理をし、ついで排
気管6からそのガスを真空ポンプ13の作用で引き出し
排ガス処理装置14内で無毒化して外部に放出する。つ
ぎに、ボンベ15を流路に接続しマッフル炉1内に先に
述べた浸炭用ガスを導入して浸炭処理を行い、その後、
排気管6、排ガス処理装置14を経由してガスを外部に
排出する。この一連の作業によりフッ化処理と浸炭処理
がなされる。
【0026】このように処理することにより、オーステ
ナイト系ステンレスの表面に「炭素」の拡散浸透層(浸
炭硬化層)が深く均一に形成される。この浸炭硬化層
は、母相であるオーステナイト相中に、多量の炭素原子
が固溶して格子歪を起こした状態となっており、母材に
比べて著しく硬度の向上を実現し、しかも母材以上の耐
蝕性を発揮する。
【0027】代表的なオーステナイト系ステンレスであ
るSUS316板片をサンプルとして用い、これを図1
に示すマッフル炉1内に入れてフッ化処理および浸炭処
理を行った。すなわち、まず、NF3 +N2 (NF3
10体積%,N2 :90体積%)のフッ素系ガス雰囲気
下において、350℃で20分間フッ化処理し、つい
で、上記フッ素系ガスを炉から排出したのち、浸炭用ガ
スであるCO+CO2 +H2 混合ガス(CO:38体積
%+CO2 :2体積%+H2 :60体積%)を炉内に導
入し、450℃で18時間保持し、浸炭処理した。その
結果、SUS316板材の表面に、表面硬度Hv=85
0(芯部Hv=220〜230)、深さ20μmの浸炭
硬化層が形成された。この浸炭硬化層が形成されたサン
プルをJIS 2371の塩水噴霧試験に供したとこ
ろ、480時間を越えても全く発錆しなかった。さら
に、上記浸炭硬化層は、ステンレス組織の耐腐食試験に
用いられるビルラ試薬(酸性ピクリン酸アルコール溶
液)でもエッチングされず、王水によってかろうじてエ
ッチングされた。しかも、上記硬化サンプルは、表面粗
度もほとんど悪化せず、膨れによる寸法変化ならびに磁
性も生じていなかった。
【0028】そして、本発明者らは、オーステナイト系
ステンレス片の種類、浸炭処理温度等を種々に組み合わ
せてさらに調査した結果、浸炭処理温度が680℃を越
えると、上述のように、オーステナイト系ステンレスの
芯部の軟化が極端に生じやすくなるうえ、硬化層の耐蝕
性が大幅に低下することを確認した。すなわち、耐蝕性
の見地からいえば、浸炭処理温度は680℃以下が好ま
しく、さらに好適には500℃以下に設定すると、より
好結果がもたらされる。また、これよりも好ましい浸炭
処理温度は、400〜500℃である。
【0029】本発明においては、浸炭処理の温度が高く
なり、特に450℃を越えると、たとえわずかでもCr
236 等の炭化物が浸炭硬化層の表面に析出するという
現象が生じる。しかし、このような場合であっても、そ
の浸炭処理品をHF+HNO 3 溶液,HCl+HNO3
溶液等の強酸に浸漬して酸洗することにより、上記析出
炭化物が除去され、母材以上の耐蝕性と、通常は、ビッ
カース硬度Hv=850以上の高い表面硬度が確保され
る。すなわち、上記のように浸炭処理されたオーステナ
イト系ステンレス製品は、その表面に形成された浸炭硬
化層の表面が浸炭によって黒色になるとともに、浸炭雰
囲気中に存在する少量の酸素原子により、上記浸炭硬化
層の最表面層に鉄系内部酸化層が形成される場合があ
る。しかし、このような内部酸化層は、上述の、HF+
HNO3 溶液,HCl+HNO3 溶液等の強酸に浸漬し
て酸洗し、上記析出炭化物を除去することにより除去で
き、酸洗による除去後は、母材以上の耐蝕性と、Hv=
850以上の表面硬度とが確保される。そして、上記強
酸への浸漬処理によって、内部酸化層が除去されたオー
ステナイト系ステンレス製品は、浸炭処理を施す前と同
様の光輝状態を示すようになる。図2に示すX線回折チ
ャートCは、SUS316板材を480℃で浸炭処理を
した後、濃度5体積%HF+15体積%HNO3 溶液の
強酸に20分間浸漬して酸洗した処理品のX線回折チャ
ートであり、上記炭化物は全く観察されていないことが
わかる。
【0030】これについてより詳しく述べる。すなわ
ち、、浸炭処理後に、その処理品の表面をよく観察する
と、最表層において、表面から深さ2〜3μmに暗色を
呈する層が存在し、これがオーステナイト系ステンレス
の内部酸化層であることがX線回折によって確かめられ
たのである。これは、つぎのように考えられる。すなわ
ち、400〜500℃の範囲でのCOを含む雰囲気下で
は、浸炭反応(2CO→CO2 +C)とFeの酸化反応
(4CO2 +3Fe→4CO+Fe3 4 )とが同時に
共存して起こりうる領域であり、このために浸炭処理に
より上記内部酸化層が形成されたものと考えられる。こ
のようなオーステナイト系ステンレスの内部酸化層は、
700℃以上の温度で処理する従来の浸炭処理法ではみ
られなかったものである。
【0031】例えば、480℃で12時間浸炭処理を行
ったSUS316L(C含量:0.02重量%,Cr含
量:17.5重量%,Ni含量:12.0重量%,Mo
含量:2.0重量%)系ソケットボルト,ならびにワッ
シャの例で述べると、硬化層深さは30μm、表面硬度
はマイクロビッカースでHv=910を示したが、表面
は黒色であった。つぎに、これら黒色の浸炭処理品を5
0℃に加温した5体積%HF+25体積%HNO3 溶液
に20分間浸漬して酸洗した後、ソフトブラストをかけ
ることにより、ほぼ浸炭処理を施す前の光輝状態の外観
が得られた。これをJIS 2371の塩水噴霧試験に
供したところ、2000時間を過ぎても全く発錆せず、
さらに、有機,無機の耐酸試験並びに生理食塩水に対す
る溶出試験では、母材以上の耐蝕性を発揮することが確
認されたのである。
【0032】上記酸洗に用いる処理液としては、特に限
定されるものではなく、フッ酸,硝酸,塩酸,硫酸等各
種のものが用いられる。これらは、単独で用いてもよい
が、上述したように、硝酸+フッ酸,硝酸+塩酸,硫酸
+硝酸等の混合液として用いることもできる。また、こ
れらは常温で用いることもできるが、高温溶液として用
いてもよい。さらに、硝酸,硫酸等の電解溶液を使用し
た電解処理を行ってもよい。
【0033】このように、本発明の浸炭処理によれば、
処理品は、オーステナイト系ステンレス母材よりも高い
耐蝕性を発揮するのであるが、これは、つぎにあげる二
つの理由によると考えられる。すなわち、まず第1に、
本発明においては、浸炭に先立って、フッ化処理を施す
ことによって、浸炭処理の際の温度を680℃以下の低
温で行うことが可能となるのであるが、このような低温
による浸炭処理によって、オーステナイト系ステンレス
内に存在する固溶クロム成分(これが耐蝕性を発揮す
る)がCr7 3 やCr236 等の炭化物として析出し
にくくなって、その析出量が低くなり、それによってオ
ーステナイト系ステンレス内に残存する固溶クロム成分
が多くなる。これにより、母材の耐蝕性の低下が防止さ
れる。これは、SUS316材をNF3 :10体積%+
2 :90体積%のフッ素系ガス雰囲気下300℃で4
0分フッ化処理したのち、CO:32体積%+CO2
3体積%+H2 :65体積%の浸炭用ガス雰囲気下にお
いて600℃で4時間浸炭処理したもの(X線回折チャ
ートを図3に示す)、450℃で16時間浸炭処理した
もの(図2に示すX線回折チャートB)の硬化層のX線
回折結果を、未処理品(図2に示すX線回折チャート
A)のそれと対照することによって裏付けられる。すな
わち、図から明らかなように、図3に示す600℃での
浸炭処理品においては、Cr236 のピークがシャープ
で高い。これは、上記クロム炭化物が比較的多く析出
し、オーステナイト系ステンレス内に残存する固溶クロ
ム成分が少なくなっていることを意味する。これに対し
て450℃で浸炭処理したもの(図2に示すB)におい
ては、Cr236 のピークがほとんど認められないこと
から、上記炭化物の析出量が著しく少なく、したがっ
て、オーステナイト系ステンレス内に残存する固溶クロ
ム成分が多く、耐蝕性が高いものとみられる。第2に、
モリブデンを1〜6重量%含有する安定型ステンレスも
しくはクロムを13〜25重量%含有する安定型オース
テナイト系ステンレスを用いたことから、表層部に形成
されたC濃化層に由来した障壁バンドが形成され、金属
イオンの拡散が阻止されること、およびオーステナイト
系ステンレスの耐酸性の向上に寄与しうるモリブデン添
加の効果等により、浸炭硬化層が母材以上の耐蝕性を発
揮するものと考えられる。
【0034】また、浸炭処理品の硬度の向上は、炭素原
子の浸透によるオーステナイト格子歪み発生に起因する
ことが考えられる。これは、450℃での浸炭処理品の
X線回折におけるオーステナイト相のピーク位置(図2
に示すB)、および480℃で浸炭処理後酸洗品のオー
ステナイト相のピーク位置(図2に示すC)が、SUS
316未処理品のオーステナイト相のピーク位置(図2
に示すA)よりも低角度側(左側)にシフトしており、
上記浸炭処理品(図2に示すBおよびC)にはオーステ
ナイト格子歪が生じていることが明らかであることから
裏付けられる。なお、上記X線回折は、RINT150
0装置を用い、50kV,200mA,Cuターゲッ
ト,条件下に行った。
【0035】なお、上記浸炭硬化層は、500℃以下の
低温領域においては、オーステナイト組織下でのCの拡
散速度が相当遅いため、厚膜を得るにはかなりの時間を
要する。例えば、最も硬化層が厚くなるSUS316L
系の場合でも、浸炭処理温度490℃では、処理時間1
2時間で37μmの浸炭硬化層ができるが、さらに12
時間浸炭しても、全浸炭硬化層は49μmにしかならな
い。したがって、70μmを越える硬化層深さを得るた
めには、70時間以上を要することになる。おそらく、
このような長時間処理は経済性を失うであろう。しか
し、できるだけ深い硬化層を要求されるドリルタッピン
グの場合であっても、40μmの硬化層が形成されてい
れば、厚み2.3tのSPCC(冷延鋼板)が充分ドリ
リング可能であり、経済性を失わない処理時間の範囲
で、有用な浸炭硬化層を得ることができる。
【0036】また、480℃で16時間浸炭処理したも
の(D)、450℃で浸炭処理後酸洗したもの(E)、
および600℃で浸炭処理したもの(F)の、浸炭硬化
層中の炭素濃度のEPMA分析結果をそれぞれ図5〜図
7に示す。本発明における代表的な温度範囲である48
0℃で浸炭処理したもの(D)〔図5〕および450℃
で処理したもの(E)〔図6〕では、最大炭素濃度は、
1.8〜2.0重量%に達している。これに対し、60
0℃で処理したもの(F)〔図7〕においては、最大炭
素濃度が1.03重量%と低い。このように、本発明で
は、浸炭硬化層の炭素濃度が非常に高いことがもうひと
つの特徴であり、高硬度の浸炭硬化層が形成される一因
となっている。なお、本発明において形成される浸炭硬
化層において、炭素濃度が最大になるところは、図5〜
図7のEPMA分析結果からも明らかなように最表面で
ある。この表面の最大炭素濃度は、浸炭処理の際の雰囲
気ガスのカーボンポテンシャルによって変化するが、本
発明で好適に実施される温度領域である400〜500
℃での処理によって形成される浸炭硬化層では、最大炭
素濃度が1.2〜2.6重量%の範囲をとることが判明
している。そして、上記浸炭硬化層中の炭素濃度を、最
大が1.7〜2.6重量%にしたときには、表面硬度の
向上効果が一層大きくなる。
【0037】
【発明の効果】以上のように、本発明は、浸炭処理に先
立って、または、浸炭処理と同時に、フッ素系ガス雰囲
気下でオーステナイト系ステンレスを加熱状態で保持す
るため、浸炭処理の際の温度を400〜680℃の低温
にすることができる。したがって、オーステナイト系ス
テンレスの有する高い加工性等を全く損なうことなく、
高い表面硬度を実現するとともに、母材以上の高い耐蝕
性も得ることができる。そして、本発明では、浸炭処理
によって上記のような表面硬度を向上させることから、
窒化処理によって生じていた表面粗度の悪化現象や、膨
れに基づく寸法精度の低下ならびに、磁性を帯びる等の
不都合を全く生じない。
【0038】このようにして得られたオーステナイト系
ステンレス製品は、オーステナイト系ステンレス製品の
表面から5〜70μmの深さの表面層が、炭素原子の浸
入によって硬化して浸炭硬化層に形成され、この浸炭硬
化層の硬度がマイクロビッカース硬度で、500〜11
80(Hv)、好適には、500〜1050(Hv)に
形成されている。しかも、上記浸炭硬化層は、クロム炭
化物が析出せずオーステナイト相から形成されているた
め、得られる製品は、最表層部のC濃化バンドの形成に
より、母材以上の耐蝕性を発揮する。そのため、ボル
ト,ナット,ねじ等のファスナー類から、一般産業分野
において使用される、機械部品、すなわち、各種のシャ
フト類やインペラー,ベアリング,ばね類,バルブ部品
等,多様な機械部品に有用である。また、特に、食品機
械,化学プラント,半導体工業等の分野に用いられる機
械部品用材料として有望である。
【0039】つぎに、実施例について説明する。
【0040】
【実施例】実施例としてSUS316(Cr含量:17
重量%,Ni含量:13.5重量%,Mo含量:2.5
重量%,C含量:0.07重量%,残部:Fe)の圧延
板片(2.5t×15×15)およびSUS304(C
r含量:18.5重量%,Ni含量:8.5重量%,C
含量:0.08重量%,残部:Fe)の圧延板片(2.
5t×15×15)をそれぞれ複数個準備した。これら
の材料の芯部硬度は、SUS316材でHv=220〜
230,SUS304材でHv=170〜180であっ
た。これらの材料を、図1に示す炉で、320℃に加熱
した時点で、NF3 :20体積%+残部:N2 混合ガス
を15分間吹き込んでフッ化処理した後、N2 ガスによ
りパージし、480℃に昇温した。ついで、H2 :31
体積%+CO:21体積%+CO2 :1体積%+残部:
2 の浸炭性ガスを導入し、その雰囲気中で15時間保
持して浸炭処理を行った。さらに続いて、これら処理品
を、55℃に加温した3体積%HF+15体積%HNO
3 溶液に30分間浸漬し、クリーニングした。
【0041】これらの浸炭硬化層深さと表面硬度を測定
した結果、SUS316材では、浸炭硬化層深さ32μ
m,表面硬度Hv=980であり、SUS304材で
は、浸炭硬化層深さ28μm,表面硬度Hv=1080
であった。
【0042】上記SUS316材およびSUS304材
の浸炭品と、それぞれの未処理品の板片をサンプルと
し、このサンプルを、50℃に加温した5体積%HCl
水溶液に浸漬して3時間経過した後の溶液中の金属イオ
ン溶出濃度を原子吸光分析法により定量し、耐蝕性の評
価を行った。その結果を下記の表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】上記表1の結果からわかるとおり、SUS
316材の浸炭処理品は、未処理材(すなわち母材)よ
りも格段に良好な耐蝕性を発揮した。また、SUS30
4材においても、浸炭処理品は、未処理材よりも良好な
耐蝕性を発揮した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の浸炭処理に用いる炉の構成図である。
【図2】SUS316未処理品,SUS316板材の浸
炭処理を450℃で行った処理品およびSUS316板
材の浸炭処理を480℃で行った後、強酸浸漬処理を行
った処理品のX線回折チャートである。
【図3】SUS316板材の浸炭処理を600℃で行っ
た処理品のX線回折図である。
【図4】Cr当量とNi当量の関係を示す線図である。
【図5】SUS316板材に、浸炭処理を480℃で行
った処理品のEPMA分析結果である。
【図6】SUS316板材に、浸炭処理を450℃で行
った処理品のEPMA分析結果である。
【図7】SUS316板材に、浸炭処理を600℃で行
った処理品のEPMA分析結果である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 浸炭処理に先立って、フッ素系ガス雰囲
    気下でオーステナイト系ステンレスを加熱状態で保持
    し、ついで浸炭処理の際の温度を400〜680℃の温
    度に設定して浸炭処理するオーステナイト系ステンレス
    に対する浸炭処理方法であって、上記オーステナイト系
    ステンレスが、モリブデンを1〜6重量%含有する安定
    型オーステナイト系ステンレスもしくはクロムを13〜
    25重量%含有する安定型オーステナイト系ステンレス
    であり、上記浸炭処理により母材以上の耐蝕性を有する
    浸炭硬化層を形成することを特徴とするオーステナイト
    系ステンレスに対する浸炭処理方法。
  2. 【請求項2】 浸炭処理の際の温度が、400〜500
    ℃に設定されている請求項1記載のオーステナイト系ス
    テンレスに対する浸炭処理方法。
  3. 【請求項3】 フッ素系ガス雰囲気下における上記加熱
    が、オーステナイト系ステンレスを250〜500℃の
    温度範囲にして行われる請求項1または2記載のオース
    テナイト系ステンレスに対する浸炭処理方法。
  4. 【請求項4】 浸炭処理ののち、酸洗処理を行う請求項
    1〜3のいずれか一項に記載のオーステナイト系ステン
    レスに対する浸炭処理方法。
  5. 【請求項5】 母材が、モリブデンを1〜6重量%含有
    する安定型オーステナイト系ステンレスもしくはクロム
    を13〜25重量%含有する安定型オーステナイト系ス
    テンレスから形成され、表面から5〜70μmの深さの
    表面層が炭素原子の浸入によって硬化して浸炭硬化層に
    形成され、この浸炭硬化層の硬度がマイクロビッカース
    硬度で500〜1050(Hv)に形成され、上記浸炭
    硬化層が、クロム炭化物粒子が存在しないオーステナイ
    ト相から形成され、母材以上の耐蝕性を有することを特
    徴とするオーステナイト系ステンレス製品。
  6. 【請求項6】 浸炭硬化層中の最大炭素濃度が1.2〜
    2.6重量%である請求項5記載のオーステナイト系ス
    テンレス製品。
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