JPH09249647A - It−143物質、及びその用途 - Google Patents

It−143物質、及びその用途

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JPH09249647A
JPH09249647A JP5773596A JP5773596A JPH09249647A JP H09249647 A JPH09249647 A JP H09249647A JP 5773596 A JP5773596 A JP 5773596A JP 5773596 A JP5773596 A JP 5773596A JP H09249647 A JPH09249647 A JP H09249647A
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JP
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substance
formula
methanol
streptomyces
culture
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JP5773596A
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English (en)
Inventor
Akira Urakawa
晃 浦川
Toru Sasaki
徹 佐々木
Kenichiro Yoshida
健一郎 吉田
Toshiya Ootani
敏矢 大谷
Rei U
レイ ウ
Yun U
ユン ウ
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Taiho Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Taiho Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】優れた抗菌活性、抗真菌活性及び抗腫瘍活性を
有する化合物、該化合物を有効成分とする抗菌剤、抗真
菌剤及び抗腫瘍剤を提供することを目的とする。 【手段】一般式(1): 【化1】 (式中、Rはメチル基または水素原子を示す。)で表さ
れるIT−143物質またはその塩、該物質または薬学
上許容される塩を有効成分とする抗菌剤・抗真菌剤・抗
腫瘍剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は新規なIT−143
物質及びそれらの塩に関する。当該物質はともに優れた
抗菌活性、抗真菌活性及び抗腫瘍活性を有しており、抗
菌剤、抗真菌剤及び抗腫瘍剤として有用である。
【0002】また本発明は、IT−143物質またはそ
れらの薬学上許容される塩を有効成分とする抗菌剤、抗
真菌剤及び抗腫瘍剤に関する。
【0003】
【従来の技術】ピエリシジンA1−A4、ピエリシジンB
1−B4、ピエリシジンC1−C4、ピエリシジンD1−D4
〔アグリカルチュラル アンド バイオロジカル ケミ
ストリー(Agricultural and Bio
logical Chemistry)41,849−
853,1977、アグリカルチュラル アンド バイ
オロジカル ケミストリー(Agricultural
and Bio1ogical Chemistr
y)41,855−862,1977)〕など、放線菌
によって生産されるピエリシジン化合物は数多く知られ
ているが、これらはいずれも、その構造上の類似性か
ら、ミトコンドリアの電子伝達系の複合体1を阻害して
殺虫活性を示すものである。
【0004】最近ではこれらピエリシジン骨格にグルコ
ースやラムノースといった糖の結合した化合物も数多く
見いだされ、抗菌活性や抗腫瘍活性などの報告が相次い
でいる〔ザ ジャーナル オブ アンチバイオティクス
(The Journalof Antibiotic
s)40,149−156,1987、ザ ジャーナル
オブ アンチバイオティクス(The Journa
l of Antibiotics 43,1341−
1343,1990)〕。
【0005】加えて近年の目覚ましい癌遺伝子研究の成
果から、癌遣伝子産物が正常な細胞内情報伝達系の制御
機構を狂わせ、情報伝達の異常亢進を引き起こしている
と考えられるようになった。特にこの情報伝達の一段階
であるイノシトールリン脂質代謝回転(PI‐turn
over)は細胞増殖因子やホルモンによって促進され
るため、これを阻害することで情報の過剰な伝達が抑制
され、抗腫瘍作用が期待される。実際、ピエリシジンB
1のN−オキサイド〔ザ ジャーナル オブアンチバイ
オティクス(The Journal of Anti
biotics)44,1283−1285,199
1)〕にはこのイノシトールリン脂質代謝回転の阻害活
性があり、こういった意味からピエリシジン系統の化合
物には新たな抗腫瘍剤としての期待が高まっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、優れ
た抗菌活性、抗真菌活性及び抗腫瘍活性を有し、医薬品
として有用な新規物質、IT−143物質を提供するこ
とにある。
【0007】また本発明は、IT−143物質またはそ
れらの薬学上許容される塩を有効成分とする抗菌剤、抗
真菌剤及び抗腫瘍剤を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、医薬品と
して有用な新規物質を放線菌の代謝物中に求めて研究を
重ねていたところ、ストレプトミセス(Strepto
myces)属に属するある菌株が、優れた抗菌活性、
抗真菌活性及び抗腫瘍活性を併せ持つ新規物質IT−1
43を産生することを見出して、本発明を完成するに至
った。
【0009】即ち本発明は、下記一般式(1):
【0010】
【化2】
【0011】(式中、Rは水素原子またはメチル基を示
す。)で表されるIT−143物質またはその塩に関す
る。本発明において、特に言及する場合を除いて、IT
−143物質という場合には、式(1)中Rがメチル基
である物質(以下、IT−143−A物質と称する。)
またはRが水素原子である物質(以下、IT−143−
B物質と称する。)のいずれか少なくとも一方を意味す
るものとする。
【0012】本発明の上記物質(1)は、従来公知のピ
エリシジン化合物に比べて、ピリジン環上の2位の側鎖
の末端に新たな共役二重結合を有し、側鎖をより延長し
た新規な構造を持ち、かつ優れた抗菌作用、抗真菌作用
及び抗腫瘍作用を有する。
【0013】また本発明は、式(1)で示されるIT−
143物質またはそれらの薬学上許容される塩を有効成
分とする抗菌剤、抗真菌剤及び抗腫瘍剤に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】一般式(1)で示される本発明の
IT−143物質は次のような理化学的性質を有する。
【0015】(1)式(1)中、Rがメチル基の場合
(IT−143−A物質) 1)性状:淡黄色油状物質 2)分子式:C2943NO4 3)分子量:469 4)比旋光度:メタノール中、c=0.18の濃度で測
定。 [α]D 25=−13.9゜ 5)紫外線吸収スペクトル:メタノール中14.4μg
/mlの濃度で測定のスペクトルを図1に示す。 λmax(nm)(ε):204(45,600)、235
(34,300) 6)赤外線吸収スペクトル:KBr錠剤法で測定のスペ
クトルを図2に示す。 νmax(cm-1):3401、2927、1588、1
473、1413、1385、1359、1250、1
191、1127、1048 7)マススペクトル(FAB−MS):FABマススペ
クトルを図3、図4に示す。 8)1H−NMRスペクトル(400MHz):図5に
示す。 9)13C−NMRスペクトル(100MHz):図6に
示す(重クロロホルム中でTMSを基準物質として測
定。)。 10)溶解性:メタノール、クロロホルム、アセトン、酢
酸エチル、ジメチルスルホキシドに可溶。水に不溶。 11)薄層クロマトグラフィー上でのRf値:シリカゲル
プレート60F254Art.5715(メルク社製)を
用い、展開溶媒としてクロロホルム/アセトン(20:
1)の場合、Rf値は0.67。ベンゼン/酢酸エチル
(10:1)の場合、Rf値は0.39。 12)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)における
保持時間(Rt):逆相系シリカゲルカラム(Iner
tsil ODS−2,150×4.6mm,I.
D.,GLサイエンス社製)を用い、移動相アセトニト
リル/水(70:30)、流速1.0ml/min、検
出210nmで分析したところ、Rt38.0分にピー
クとして検出される。
【0016】(2)式(1)中、Rが水素原子の場合
(IT−143−B物質) 1)性状:淡黄色油状物質 2)分子式:C2841NO4 3)分子量:455 4)比旋光度:メタノール中、c=0.11の濃度で測
定。 [α]D 25=−26.3゜ 5)紫外線吸収スペクトル:メタノール中11.4μg
/mlの濃度で測定のスペクトルを図7に示す。 λmax(nm)(ε):204(47,600)、239
(48,100) 6)赤外線吸収スペクトル:KBr錠剤法で測定のスペ
クトルを図8に示す。 νmax(cm-1):3401、2932、1588、1
474、1413、1386、1192、1127、1
048 7)マススペクトル(FAB−MS):図9、図10に
示す。 8)1H−NMRスペクトル(400MHz):図11
に示す。 9)13C−NMRスペクトル(100MHz):図12
に示す(重クロロホルム中でTMSを基準物質として測
定。)。 10)溶解性:メタノール、クロロホルム、アセトン、酢
酸エチル、ジメチルスルホキシドに可溶。水に不溶。 11)薄層クロマトグラフィー上でのRf値:シリカゲル
プレート60F254Art.5715(メルク社製)を
用い、展開溶媒としてクロロホルム/アセトン(20:
1)の場合、Rf値は0.63。ベンゼン/酢酸エチル
(10:1)の場合、Rf値は0.37。 12)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)における
保持時間(Rt):逆相系シリカゲルカラム(Iner
tsil ODS−2,150×4.6mm,I.
D.,GLサイエンス社製)を用い、移動相アセトニト
リル/水(70:30)、流速1.0ml/min、検
出210nmで分析したところ、Rt26.9分にピー
クとして検出される。
【0017】本発明でいう塩としては、IT−143物
質の酸付加塩が例示される。酸付加塩を形成し得る酸と
しては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸などの
無機酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、
リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マロン酸などの有機酸が
例示される。
【0018】本発明のIT−143物質の製造方法は特
に制限されず、一般式(1)に示される構造に基づいて
化学的手法など常法により製造することができる。好ま
しくは、IT−143物質を生産する能力を有する菌
株、より好ましくはIT−143−A物質の生産菌また
はIT−143−B物質の生産菌を適当な条件下で培養
することによって製造する方法である。
【0019】IT−143物質を生産する能力を有する
菌株としては、ストレプトミセス(Streptomy
ces)属に属する菌株が挙げられる。
【0020】本発明は、ストレプトミセス属に属するこ
れらの菌を培養し、培養物を回収することによって得る
ことができるIT−143物質をも包含するものであ
る。
【0021】このストレプトミセス属に属する菌の一例
としては、ストレプトミセス エスピー.IT−143
(Streptomyces sp.IT−143)株
が例示できる。この菌株は、本発明者らが中華人民共和
国四川省合江(Hejiang Sichuan Province)の土壌から
新たに分離したストレプトミセス属に属する菌株であ
り、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に微
生物の表示「Strain lT−143」、受託番号
(FERM BP−4957)として寄託されている。
【0022】また、本発明はかかるIT−143物質を
産生する能力を有するストレプトミセス属に属する菌に
関するものである。
【0023】かかるIT−143株について、インター
ナショナル ジャーナル オブ システィマティック
バクテリオロジー(International Jo
urnal of Systematic Bacte
riology),16(3),313−340(19
60)に記載の方法に準じて検討した菌学的性質は次の
通りである。
【0024】・ストレプトミセス エスピー.IT−1
43株の菌学的性質 (a)形態: 1)胞子形成菌糸の分枝法;単軸分枝 2)胞子形成の形態;直状(straight)又は屈
曲状(flexibilis)、胞子の形は円筒状 3)胞子の数;10胞子以下 4)胞子の表面構造;平滑(smooth) 5)胞子の大きさ;0.4〜0.5×0.5〜0.6μ
m 6)鞭毛胞子の有無;無 7)胞子のうの有無;無 8)胞子柄の着生位置;気菌糸 9)菌核形成性の有無;無。
【0025】(b)各種培地における生育状態:各種培
地における生育状態を表1及び表2に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】分類色名は財団法人日本色彩研究所監修
「標準色彩図表A,1981年」で示した。なお、詳細
な色はコンテイナー・コーポレーション・オブ・アメリ
カ(Container Corporation o
f America)の「ザ・カラー・ハーモニー・マ
ニュアル(The Color Harmony Ma
nual),第4版,1985年」の色コードで()内
につけ加えた。
【0029】(c)生理的性質: 1)生育温度範囲;20〜37℃の温度範囲で良好に生
育する。 2)ゼラチンの液化(グルコース・ペプトン・ゼラチン
培地、27℃);陽性 3)ゼラチンの液化(単純ゼラチン培地、20℃);陰
性 4)ミルクの凝固(37℃);陰性 5)ミルクのペプトン化(37℃);陰性 6)メラニン様色素の生成;チロシン寒天(ISP−
7)培地上、ペプトン・酵母工キス・鉄寒天(ISP一
6)培地上、トリプトン・酵母エキス(ISP一1)液
体培地中すべての培地で陽性 7)硫化水素の産生〔ペプトン・酵母エキス・鉄寒天
(ISP−6)に0.5%酵母エキスを添加した培
地〕;陽性 8)澱粉の加水分解(スターチ・無機塩寒天、ISP−
4培地);陽性 9)硝酸塩の還元(1%硝酸カリウム含有ブイヨン、I
SP一8培地);陰性 10)セルロースの分解;陰性。
【0030】(d)炭素源の利用性(プリードハム・ゴ
トリーブ寒天、ISP−9培地):D−グルコース、イ
ノシトール、D−ガラクトース、溶性澱粉、デキストリ
ン、グリセロール及びマルトースを利用してよく発育す
る。L−アラビノース、D−キシロース、シュクロー
ス、D−フラクトース、D−マンニトール、L−ラムノ
ース、ラフィノース及びサリシンは利用できない。
【0031】(e)菌体組成:日本放線菌学会編「放線
菌の同定実験法,62−70頁,1985年」に記載の
薄層クロマトグラフィー法により全菌体中の酸加水分解
物を分析した結果、LL−型のジアミノピメリン酸が検
出された。
【0032】以上の菌学的性質、特に基生菌糸より多数
の胞子の連鎖を有する気菌糸を形成し、細胞壁組成のア
ミノ酸がLL−ジアミノピメリン酸であり、鞭毛胞子や
胞子のう等を形成しない性質を有することから、本菌株
はストレプトミセス属に属することが明らかである。よ
って本菌株をストレプトミセス エスピー.IT−14
3(Streptomyces sp.IT−143)
と称することとした。
【0033】本発明のIT−143物質は、例えば上記
ストレプトミセス エスピー.IT−143株又はその
変異株等のストレプトミセス属に属する各種のIT−1
43物質を生産し得る菌を適当な培地で培養し、次に培
養物から本発明物質を含む粗抽出物を得、そこからIT
−143物質を単離、精製することにより製造すること
ができる。
【0034】本発明は、このようなIT−143物質の
製造方法に関するものでもある。上記微生物の培養は通
常一般の微生物の培養に準じて行われるが、好ましくは
液体培養による振盪培養法、通気撹拌培養法等の好気的
条件下で行なわれる。
【0035】培養に用いられる培地としては、IT−1
43物質を生産し得る菌が利用できる栄養源を含有する
培地であればよく、各種の合成培地、天然培地等のいず
れをも用いることができる。培地の炭素源としてはグル
コース、シュクロース、フラクトース、グリセリン、デ
キストリン、澱粉、糖蜜、コーン・スティープ・リカ
ー、有機酸等を単独又は二種以上組み合わせたものが;
窒素源としてはファーマメディア、ペプトン、肉エキ
ス、酵母エキス、大豆粉、カゼイン、アミノ酸、尿素な
どの有機窒素源、硝酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等
の無機窒素源を単独又は二種以上組み合わせたものが用
いられる。また、培地にはナトリウム塩、カリウム塩、
マグネシウム塩、リン酸塩、その他重金属塩等を必要に
応じて適宜添加してもよい。
【0036】なお、培地の発泡の著しい時は、例えば大
豆油、亜麻仁油等の植物油、オクタデカノール、テトラ
デカノール、ヘプタデカノール等の高級アルコール類、
各種シリコン化合物などの消泡剤を適宜培地中に添加す
ることもできる。
【0037】培地のpHは中性付近とするのが好まし
い。
【0038】培養温度はIT−143物質を生産し得る
菌が良好に生育する温度、通常20〜37℃、好ましく
は25〜30℃付近に保つのがよい。培養時間は、液体
振盪培養及び通気撹拌培養のいずれの場合も5日間程度
が好ましい。
【0039】上述した各種の培養条件は、使用微生物の
種類や特性、外部条件等に応じて適宜変更でき、またそ
れぞれに応じて上記範囲から最適条件を適宜選択、調節
することができる。
【0040】培養物からのIT−143物質を含む粗抽
出物の分離は、発酵生産物を採取する一般的な方法に準
じて行うことができ、例えば溶媒抽出、液体交換、クロ
マトグラフィー、結晶化等の通常の手段を単独又は二種
以上を任意の順序に組み合わせて用いることができる。
【0041】より詳しくは、以下の方法を用いることが
できる。すなわち、上記培養により生産されるIT−1
43物質は主として培養菌体中に存在するので、常法に
従い、まず濾過、遠心分離等を行って、培養濾液と菌体
固形分とを分離し、得られたIT−143物質を含む菌
体固形分についてメタノール、アセトン等の溶媒を用い
てIT−143物質の溶出を行う。次いで、減圧下に溶
媒を留去すればIT−143物質を含む粗濃縮液を得る
ことができる。この粗濃縮液に酢酸エチル、クロロホル
ム、ブタノール等の水と混合しない有機溶媒を加えてI
T−143物質を有機溶媒層に転溶させ、得られた溶媒
層に芒硝を加えて脱水した後、溶媒を減圧下で留去すれ
ばIT−143物質を含む粗抽出物を得ることができ
る。更に培養濾液についても同様の操作をすれば粗抽出
物を得ることができる。また、必要に応じて水酸化ナト
リウム又は塩酸にてpHを調節したり、工業用食塩を加
えることにより、抽出効率を高くしたり、エマルジョン
生成防止などの方法を講じることができる。
【0042】更に、粗抽出物からIT−143物質を単
離、精製するためには、通常の脂溶性低分子物質の単
離、精製手段、例えば活性炭、シリカゲル、アルミナ、
マクロポーラス非イオン系吸着樹脂等の吸着剤による種
々の吸着クロマトグラフィーまたはODS−結合型シリ
カゲル等を用いる逆相クロマトグラフィー等が使用でき
る。これらのうち、溶出溶媒にクロロホルム、酢酸エチ
ル、クロロホルム/メタノール、クロロホルム/アセト
ン、酢酸エチル/ベンゼン等の混合溶媒系を用いるシリ
カゲルクロマトグラフィー、及びアセトニトリル/水、
メタノール/水等の混合溶媒系を溶出に用いる逆相クロ
マトグラフィーが特に好ましい。また、更に精製を必要
とする場合には、上記クロマトグラフィーを繰り返し行
うか又は溶出溶媒としてクロロホルム、メタノール等を
用いたセファデックスLH−20(ファルマシア社製)
によるゲル濾過クロマトグラフィー等を適宜組み合わせ
て行うことにより、高純度のIT−143物質を得るこ
とができる。
【0043】なお、精製工程中、IT−143物質の存
在確認はシリカゲル,セルロース等の薄相クロマトグラ
フィーを用い、各種展開溶媒で展開させた後、紫外吸収
(254nm)による蛍光発色によって検出する方法と
逆相系シリカゲル等の充填カラムを用いた高速液体クロ
マトグラフィー(HPLC)を用いて検出する方法とを
併用して行うのが好ましい。
【0044】又、ヒト鼻咽喉癌由来の株化培養KB細胞
を3日間薬剤(IT−143物質を含有し得る組成物)
と接触させたときの殺細胞効果を調べることによって
も、IT−143物質の存在を確認することができる。
【0045】本発明のIT−143物質またはそれらの
薬学上許容される塩は、それ単独でもしくは薬学的に許
容される種々の添加剤とともに、抗菌剤、抗真菌剤また
は抗腫瘍剤として用いることができる。
【0046】IT−143物質には、異性体として鏡像
異性体(エナンチオマー)が存在し、本発明の抗菌剤、
抗真菌剤または抗腫瘍剤には、その異性体のいずれか一
種、もしくはそれらが混合して含まれていてもよい。
【0047】本発明でいう薬学的に許容される塩として
は、例えば塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸等の無機酸
の塩、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リ
ンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マロン酸等の有機酸の塩な
どが挙げられる。
【0048】本発明の抗菌剤、抗真菌剤または抗腫瘍剤
の組成は特に制限されることなく、目的に応じて調製す
ることができる。その形態も特に制限されるものではな
く、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、乳剤
等の経口剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、貼付剤等の外用
剤、点眼剤などの種々の形態が例示される。
【0049】注射剤として調製する場合、添加剤を適当
量配合してもよく、添加剤としてはpH調整剤、緩衝
剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤などが例示され
る。該製剤は、静脈内、筋肉内、皮下または腹腔内に投
与される。また、経口剤として調製する場合の添加剤と
しては、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、矯臭剤、矯
味剤などが挙げられ、坐剤として調製する場合の添加剤
としては、基剤、界面活性剤などが、また軟膏剤として
調製する場合の添加剤としては、ワセリン、流動パラフ
ィン等の基剤、安定化剤、湿潤剤、保存剤などが挙げら
れる。貼付剤を製造する場合は、通常の支持体に上記軟
膏等を常法により塗布すればよい。支持体としては、
綿、スフ、化学繊維からなる織布、不織布や軟質塩化ビ
ニル、ポリエチレン、ポリウレタン等のフィルムあるい
は発泡体シートが適当である。
【0050】上記添加剤としては、各々の製剤を調製す
る際に通常使用される添加剤のすべてが挙げられ、これ
らの適当な量が用いられる。
【0051】上記の各種製剤中に配合される有効成分で
あるIT−143物質またはこれらの薬理学上許容され
る塩の量は、適応症、投与される患者の症状、年齢、性
別、体重、投与形態などに応じて適宜選択することがで
き、通常1日0.005〜20mgを1回または2〜4
回程度に分けて投与することができる。
【0052】
【実施例】以下に実施例を挙げて更に具体的に本発明を
説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定され
るものではない。
【0053】
【実施例1】 IT−143−A物質またはIT−143−B物質の取
得方法(1) (a)培養工程 グルコース0.5%、可溶性澱粉2.4%、牛肉エキス
0.3%、酵母エキス0.5%、ペプトン0.5%、コ
ーン・スティープ・リカー0.4%、塩化コバルト0.
002%、炭酸カルシウム0.4%よりなる培地(pH
7.2)100mlを500ml容の三角フラスコに分
注し、滅菌(121℃,15分間)後、ストレプトミセ
ス エスピー.IT−143株(受託番号FERM B
P−4957)を一白金耳接種し、27℃で3日間振盪
培養した(毎分220回転、振幅7cm)。次にグルコ
ース1.0%、酵母エキス0.4%、麦芽エキス1.0
%、ファーマメディア1.0%よりなる培地(pH7.
3)を500ml容の三角フラスコに100mlずつ分
注し、滅菌(121℃,15分間)後、上記の種菌を5
%(v/v)の割合で加え、27℃で5日間回転振盪培
養した(220回転、振幅7cm)。
【0054】(b)分離工程 培養終了後、直ちに培養液を遠心(2800回転,5
℃,10分間)分離後、濾液部分と菌体部分に分離し
た。得られた培養濾液(8.7リットル,pH8.4)
を希塩酸でpH8.0に調整し、酢酸エチル(16.5
リットル)で2回撹拌抽出した。また菌体部分はアセト
ン(2リットル)で2回撹拌抽出し、濃過(2800回
転,5℃,10分間)後、このアセトン抽出液を減圧濃
縮してアセトンを留去し、酢酸エチル(9リットル)で
3回撹拌抽出した。更にこの2つの酢酸エチル抽出液を
合わせ、無水硫酸ナトリウムで脱水後、減圧濃縮して、
黄褐色油状の粗抽出物(4.3g)を得た。
【0055】(c)単離、精製工程 上記粗抽出物をクロロホルム(5ml)に溶解し、シリ
カゲル(メルク社製「キーゼルゲル」、26.0×6.
2cm,i.d.)カラムに吸着させ、溶出溶媒クロロ
ホルム/アセトン(100:0−2:1)を用いた段階
溶出法にて溶出した。溶出画分の薄相クロマトグラフィ
ー法での検出並びにKB細胞に対する殺細胞効果を調べ
ることにより、IT−143−A物質及びIT−143
−B物質を含む活性画分を確認した。この活性画分を集
め、溶媒を留去後乾固して、淡黄色油状物質(1359
mg)を得た。
【0056】得られた油状物質をメタノール(10m
l)に溶解し、その一部をODS結合型シリカゲルカラ
ム(山善社製「YMC−ODS」、50.0×1.5c
m,i.d)に吸着させ、加圧下、溶出溶媒アセトニト
リル/水(70:30)及びアセトニトリル/水(8
0:20)の組成を用いる段階溶出を行った。溶出画分
を前述したHPLC法並びにKB細胞に対する殺細胞効
果で検出した結果、IT−143−A物質はアセトニト
リル/水(80:20)で溶出され、IT−143−B
物質はアセトニトリル/水(70:30)で溶出され
た。
【0057】各物質の溶出画分をそれぞれ集め、有機溶
媒を減圧下留去した後、水溶液を凍結乾燥し、淡黄色油
状のIT−143−A物質(4.0mg)、及び淡黄色
油状のIT−143−B物質(2.4mg)を得た。
【0058】
【実施例2】 IT−143−A物質またはIT−143−B物質の取
得方法(2) (a)培養工程 グリセロール2.0%、デキストリン2.0%、酵母エ
キス0.3%、ソイトン1.0%、硫酸アンモニウム
0.2%、炭酸カルシウム0.2%よりなる培地(pH
7.0)を500ml容の三角フラスコに100mlず
つ分注し、滅菌(121℃,15分聞)後、実施例1に
示したと同様の方法で得られた種菌を1.5%(v/
v)の割合で加え、27℃で5日間回転振盪培養した
(220回転、振幅7cm)。
【0059】(b)分離工程 培養終了後、直ちに培養液を遠心分離(2800回転,
5℃,10分間)し、濾液部分と菌体部分に分離した。
得られた菌体をアセトン(12リットル)で3回撹拌抽
出し、このアセトン抽出液を減圧濃縮してアセトンを留
去した後、酢酸エチル(6リットル)で3回撹拌抽出し
た。この酢酸エチル抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水
後、減圧濃縮して、黄褐色油状の粗抽出物(11.2
g)を得た。
【0060】(c)単離、精製工程:上記粗抽出物をク
ロロホルム(15ml)に溶解し、シリカゲル(メルク
社製「キーゼルゲル」、47.0×7.5cm,i.
d.)カラムに吸着させ、クロロホルムで溶出した。溶
出画分の薄相クロマトグラフィー法での検出並びにKB
細胞に対する殺細胞効果を調べることにより、IT−1
43−A物質及びIT−143−B物質を含む活性画分
を確認した。この活性画分を集め、溶媒を留去後乾固し
て、淡黄色油状物質(7.7g)を得た。
【0061】得られた油状物質をメタノール(15m
l)に溶解し、その一部をODS結合型シリカゲル(山
善社製「YMC−ODS」、33.0×5.0cm,
i.d)カラムに吸着させ、常圧にて、溶出溶媒アセト
ニトリル/水(75:25)、(80:20)及び(9
0:10)の組成比からなる段階溶出を行った。溶出画
分を前述したHPLC法並びにKB細胞に対する殺細胞
効果で検出した結果、IT−143−A物質はアセトニ
トリル/水(90:10)て溶出され、IT−143−
B物質はアセトニトリル/水(80:20)で溶出され
た。各物質を含むそれぞれの溶出画分を集め有機溶媒を
減圧下留去し、水溶液を酢酸エチル(150ml)でそ
れぞれ3回抽出した。
【0062】この結果IT−143−A物質(35.9
mg)、IT−143−B物質(37.3mg)を得
た。
【0063】
【試験例】本発明のIT−143−A物質、IT−14
3−B物質の抗菌・抗真菌活性及び抗腫瘍活性は次の通
りである。
【0064】
【薬理試験例1】 −抗菌・抗真菌活性− 本発明物質の各種細菌・真菌類に対する最小発育阻止濃
度(MIC)を系列寒天平板希釈法により測定した。
【0065】すなわち、細菌類(Micrococcus luteus A
TCC 10240、細胞数106個/ml)に対してはミュラー
・ヒントン(Maeller−Hinton)寒天培地
(Difco社製)で、37℃、18時聞培養後の最小
発育阻止濃度(MIC,μg/ml)をもって表示し
た。また真菌類(Aspergillus fumigatus Hl1-20, BSL4
1, BCL70,Ttichophyton rubrum IFO 5807:細胞数10
6個/ml)については、サブロー(Sabourau
d)寒天培地(日水製薬社製)で、30℃、42時聞培
養後の最小発育阻止濃度をもって表示した。
【0066】IT−143−A物質の結果を表3に示
す。
【0067】
【表3】
【0068】また、IT−143−B物質については、
Micrococcus luteus ATCC 10240 における最小発育阻止
濃度が6.25μg/mlであった。
【0069】
【薬理試験例2】 −抗腫瘍活性− 本発明のIT−143−A物質、IT−143−B物質
のヒト鼻咽喉癌由来の株化培養細胞(KB細胞)に対す
る50%増殖抑制濃度(IC50)を測定した。すなわ
ち、ヒト鼻咽喉癌由来KB細胞(2×103細胞/we
ll)を10%仔牛血清を添加したイーグルズ ミニマ
ル エッセンシャル メディウム(Eagle’s m
inimal essential medium,I
CN FLOW社製)を用い、炭酸ガスインキュべ一タ
ー(5%CO2)中37℃で一晩培養した。本発明化合
物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解後、10
ng/mlから1×10-3ng/mlまでの濃度になる
ように添加し、3日間培養後、クリスタルバイオレット
で染色し、無処理群との比較によりIC50値を求めた。
【0070】その結果、IT−143−A物質及びIT
−143−B物質のIC50値はそれぞれ0.36ng/
ml及び1.1ng/mlであった。
【0071】
【発明の効果】本発明のIT−143物質(IT−14
3−A物質、IT−143−B物質)はともに優れた抗
菌活性、抗真菌活性及び抗腫瘍活性を有する新規化合物
であり、抗菌剤及び抗腫瘍剤といった医薬品として有用
である。また、当該物質は抗腫瘍活性を持つことから抗
ウイルス活性をも有すると考えられ、抗ウイルス剤とし
ても有用である。また、本発明は、有用な抗菌剤、抗真
菌剤及び抗腫瘍剤を提供する。本発明で用いるストレプ
トミセス属に属する菌は、かかる医学上有用な化合物を
産生する能力を有する有用な菌株である。
【0072】なお、本発明には以下の実施態様も含まれ
る。 (1)IT−143物質を生産し得るストレプトミセス
属に属する菌 (2)ストレプトミセス属に属するIT−143物質の
生産菌 (3)ストレプトミセス エスピー.IT−143(S
treptomycessp.IT−143)株である
IT−143物質の生産菌 (4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の菌を培養
し、培養物からIT−143物質を採取することを特徴
とするIT−143物質の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【図1】IT−143−A物質の紫外線吸収スペクトル
(メタノール中14.4μg/ml濃度での測定)を示
す。
【図2】IT−143−A物質の赤外線吸収スペクトル
(KBr錠剤法使用)を示す。
【図3】IT−143−A物質のFAB−MSスペクト
ル(ポジティブ[M+H]+)を示す(Solvent:MeOH、
Matrix:m-NBA)。
【図4】IT−143−A物質のFAB−MSスペクト
ル(ネガティブ[M−H]-)を示す(Solvent:MeOH、
Matrix:m-NBA)。
【図5】IT−143−A物質の1H−NMRスペクト
ル(400MHz)を示す。
【図6】IT−143−A物質の13C−NMRスペクト
ル(100MHz)を示す。
【図7】IT−143−B物質の紫外線吸収スペクトル
(メタノール中11.4μg/ml濃度での測定)を示
す。
【図8】IT−143−B物質の赤外線吸収スペクトル
(KBr錠剤法使用)を示す。
【図9】IT−143−B物質のFAB−MSスペクト
ル(ポジティブ[M+H]+)を示す(Solvent:MeOH、
Matrix:m-NBA)。
【図10】IT−143−B物質のFAB−MSスペク
トル(ネガティブ[M−H]-)を示す(Solvent:MeO
H、Matrix:m-NBA)。
【図11】IT−143−B物質の1H−NMRスペク
トル(400MHz)を示す。
【図12】IT−143−B物質の13C−NMRスペク
トル(100MHz)を示す。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成9年3月13日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正内容】
【0011】(式中、Rは水素原子またはメチル基を示
す。)で表されるIT−143物質またはそれらの塩に
関する。本発明において、特に言及する場合を除いて、
IT−143物質という場合には、式(1)中Rがメチ
ル基である物質(以下、IT−143−A物質と称す
る。)またはRが水素原子である物質(以下、IT−1
43−B物質と称する。)のいずれか少なくとも一方を
意味するものとする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正内容】
【0012】本発明の上記物質(1)は、従来公知のピ
エリシジン化合物に比べて、ピリジン環上の位の側鎖
の末端に新たな共役二重結合を有し、側鎖をより延長し
た新規な構造を持ち、かつ優れた抗菌作用、抗真菌作用
及び抗腫瘍作用を有する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正内容】
【0015】(1)式(1)中、Rがメチル基の場合
(IT−143−A物質) 1)性状:淡黄色油状物質 2)分子式:C2943NO4 3)分子量:469 4)比旋光度:メタノール中、c=0.18の濃度で測
定。 [α]D 25=−13.9゜ 5)紫外線吸収スペクトル:メタノール中14.4μg
/mlの濃度で測定のスペクトルを図1に示す。 λmax(nm)(ε):204(45,600)、235
(34,300) 6)赤外線吸収スペクトル:KBr錠剤法で測定のスペ
クトルを図2に示す。 νmax(cm-1):3401、2927、1588、1
473、1413、1385、1359、1250、1
191、1127、1048 7)マススペクトル(FAB−MS):FABマススペ
クトルを図3、図4に示す。 8)1H−NMRスペクトル(400MHz):図5に
示す。 9)13C−NMRスペクトル(100MHz):図6に
示す(重クロロホルム中でTMSを基準物質として測
定。)。 10)溶解性:メタノール、クロロホルム、アセトン、酢
酸エチル、ジメチルスルホキシドに可溶。水に不溶。 11)薄層クロマトグラフィー上でのRf値:シリカゲル
プレート60F254Art.5715(メルク社製)を
用い、展開溶媒としてクロロホルム/アセトン(20:
1)の場合、Rf値は0.67。ベンゼン/酢酸エチル
(10:1)の場合、Rf値は0.39。 12)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)における
保持時間(Rt):逆相系シリカゲルカラム(Iner
tsil ODS−2,150×4.6mm,i.
d.,GLサイエンス社製)を用い、移動相アセトニト
リル/水(70:30)、流速1.0ml/min、検
出210nmで分析したところ、Rt38.0分にピー
クとして検出される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正内容】
【0016】(2)式(1)中、Rが水素原子の場合
(IT−143−B物質) 1)性状:淡黄色油状物質 2)分子式:C2841NO4 3)分子量:455 4)比旋光度:メタノール中、c=0.11の濃度で測
定。 [α]D 25=−26.3゜ 5)紫外線吸収スペクトル:メタノール中11.4μg
/mlの濃度で測定のスペクトルを図7に示す。 λmax(nm)(ε):204(47,600)、239
(48,100) 6)赤外線吸収スペクトル:KBr錠剤法で測定のスペ
クトルを図8に示す。 νmax(cm-1):3401、2932、1588、1
474、1413、1386、1192、1127、1
048 7)マススペクトル(FAB−MS):図9、図10に
示す。 8)1H−NMRスペクトル(400MHz):図11
に示す。 9)13C−NMRスペクトル(100MHz):図12
に示す(重クロロホルム中でTMSを基準物質として測
定。)。 10)溶解性:メタノール、クロロホルム、アセトン、酢
酸エチル、ジメチルスルホキシドに可溶。水に不溶。 11)薄層クロマトグラフィー上でのRf値:シリカゲル
プレート60F254Art.5715(メルク社製)を
用い、展開溶媒としてクロロホルム/アセトン(20:
1)の場合、Rf値は0.63。ベンゼン/酢酸エチル
(10:1)の場合、Rf値は0.37。 12)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)における
保持時間(Rt):逆相系シリカゲルカラム(Iner
tsil ODS−2,150×4.6mm,i.
d.,GLサイエンス社製)を用い、移動相アセトニト
リル/水(70:30)、流速1.0ml/min、検
出210nmで分析したところ、Rt26.9分にピー
クとして検出される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正内容】
【0021】このストレプトミセス属に属する菌の一例
としては、ストレプトミセス エスピー.IT−143
(Streptomyces sp.IT−143)株
が例示できる。この菌株は、本発明者らが中華人民共和
国四川省合江(Hejiang Sichuan Province)の土壌から
新たに分離したストレプトミセス属に属する菌株であ
り、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に微
生物の表示「Strain T−143」、受託番号
(FERM BP−4957)として寄託されている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正内容】
【0026】
【表1】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正内容】
【0029】(c)生理的性質: 1)生育温度範囲;20〜37℃の温度範囲で良好に生
育する。 2)ゼラチンの液化(グルコース・ペプトン・ゼラチン
培地、27℃);陽性 3)ゼラチンの液化(単純ゼラチン培地、20℃);陰
性 4)ミルクの凝固(37℃);陰性 5)ミルクのペプトン化(37℃);陰性 6)メラニン様色素の生成;チロシン寒天(ISP−
7)培地上、ペプトン・酵母工キス・鉄寒天(ISP
6)培地上、トリプトン・酵母エキス(ISP1)液
体培地中すべての培地で陽性 7)硫化水素の産生〔ペプトン・酵母エキス・鉄寒天
(ISP−6)に0.5%酵母エキスを添加した培
地〕;陽性 8)澱粉の加水分解(スターチ・無機塩寒天、ISP−
4培地);陽性 9)硝酸塩の還元(1%硝酸カリウム含有ブイヨン、I
SP8培地);陰性 10)セルロースの分解;陰性。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正内容】
【0030】(d)炭素源の利用性(プリードハム・ゴ
トリーブ寒天、ISP−9培地):D−グルコース、イ
ノシトール、D−ガラクトース、溶性澱粉、デキストリ
ン、グリセロール及びマルトースを利用してよく発育す
る。L−アラビノース、D−キシロース、シュクロー
ス、D−フルクトース、D−マンニトール、L−ラムノ
ース、ラフィノース及びサリシンは利用できない。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正内容】
【0035】培養に用いられる培地としては、IT−1
43物質を生産し得る菌が利用できる栄養源を含有する
培地であればよく、各種の合成培地、天然培地等のいず
れをも用いることができる。培地の炭素源としてはグル
コース、シュクロース、フルクトース、グリセリン、デ
キストリン、澱粉、糖蜜、コーン・スティープ・リカ
ー、有機酸等を単独又は二種以上組み合わせたものが;
窒素源としてはファーマメディア、ペプトン、肉エキ
ス、酵母エキス、大豆粉、カゼイン、アミノ酸、尿素な
どの有機窒素源、硝酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等
の無機窒素源を単独又は二種以上組み合わせたものが用
いられる。また、培地にはナトリウム塩、カリウム塩、
マグネシウム塩、リン酸塩、その他重金属塩等を必要に
応じて適宜添加してもよい。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正内容】
【0043】なお、精製工程中、IT−143物質の存
在確認はシリカゲル,セルロース等の薄層クロマトグラ
フィーを用い、各種展開溶媒で展開させた後、紫外吸収
(254nm)による蛍光発色によって検出する方法と
逆相系シリカゲル等の充填カラムを用いた高速液体クロ
マトグラフィー(HPLC)を用いて検出する方法とを
併用して行うのが好ましい。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正内容】
【0054】(b)分離工程 培養終了後、直ちに培養液を遠心(2800回転,5
℃,10分間)分離後、濾液部分と菌体部分に分離し
た。得られた培養濾液(8.7リットル,pH8.4)
を希塩酸でpH8.0に調整し、酢酸エチル(16.5
リットル)で2回攪拌抽出した。また菌体部分はアセト
ン(2リットル)で2回攪拌抽出し、5℃下で2800
回転の遠心処理を10分間行った後、得られたアセトン
抽出液を減圧濃縮してアセトンを留去し、酢酸エチル
(9リットル)で3回攪拌抽出した。更にこの2つの酢
酸エチル抽出液を合わせ、無水硫酸ナトリウムで脱水
後、減圧濃縮して、黄褐色油状の粗抽出物(4.3g)
を得た。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正内容】
【0055】(c)単離、精製工程 上記粗抽出物をクロロホルム(5ml)に溶解し、シリ
カゲル(メルク社製「キーゼルゲル」、26.0×6.
2cm,i.d.)カラムに吸着させ、溶出溶媒クロロ
ホルム/アセトン(100:0−2:1)を用いた段階
溶出法にて溶出した。溶出画分の薄層クロマトグラフィ
ー法での検出並びにKB細胞に対する殺細胞効果を調べ
ることにより、IT−143−A物質及びIT−143
−B物質を含む活性画分を確認した。この活性画分を集
め、溶媒を留去後乾固して、淡黄色油状物質(1359
mg)を得た。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正内容】
【0056】得られた油状物質をメタノール(10m
l)に溶解し、その一部をODS結合型シリカゲルカラ
ム(山善社製「YMC−ODS」、50.0×1.5c
m,i.d)に吸着させ、加圧下、溶出溶媒アセトニ
トリル/水(70:30)及びアセトニトリル/水(8
0:20)の組成を用いる段階溶出を行った。溶出画分
を前述したHPLC法並びにKB細胞に対する殺細胞効
果で検出した結果、IT−143−A物質はアセトニト
リル/水(80:20)で溶出され、IT−143−B
物質はアセトニトリル/水(70:30)で溶出され
た。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正内容】
【0058】
【実施例2】 IT−143−A物質またはIT−143−B物質の取
得方法(2) (a)培養工程 グリセロール2.0%、デキストリン2.0%、酵母エ
キス0.3%、ソイトン1.0%、硫酸アンモニウム
0.2%、炭酸カルシウム0.2%よりなる培地(pH
7.0)を500ml容の三角フラスコに100mlず
つ分注し、滅菌(121℃,15分間)後、実施例1に
示したと同様の方法で得られた種菌を1.5%(v/
v)の割合で加え、27℃で5日間回転振盪培養した
(220回転、振幅7cm)。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正内容】
【0060】(c)単離、精製工程:上記粗抽出物をク
ロロホルム(15ml)に溶解し、シリカゲル(メルク
社製「キーゼルゲル」、47.0×7.5cm,i.
d.)カラムに吸着させ、クロロホルムで溶出した。溶
出画分の薄層クロマトグラフィー法での検出並びにKB
細胞に対する殺細胞効果を調べることにより、IT−1
43−A物質及びIT−143−B物質を含む活性画分
を確認した。この活性画分を集め、溶媒を留去後乾固し
て、淡黄色油状物質(7.7g)を得た。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正内容】
【0061】得られた油状物質をメタノール(15m
l)に溶解し、その一部をODS結合型シリカゲル(山
善社製「YMC−ODS」、33.0×5.0cm,
i.d)カラムに吸着させ、常圧にて、溶出溶媒アセ
トニトリル/水(75:25)、(80:20)及び
(90:10)の組成比からなる段階溶出を行った。溶
出画分を前述したHPLC法並びにKB細胞に対する殺
細胞効果で検出した結果、IT−143−A物質はアセ
トニトリル/水(90:10)溶出され、IT−14
3−B物質はアセトニトリル/水(80:20)で溶出
された。各物質を含むそれぞれの溶出画分を集め有機溶
媒を減圧下留去し、水溶液を酢酸エチル(150ml)
でそれぞれ3回抽出した。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正内容】
【0065】すなわち、細菌類(Micrococcus luteus A
TCC 10240、細胞数106個/ml)に対してはミュラー
・ヒントン(Mueller−Hinton)寒天培地
(Difco社製)で、37℃、18時間培養後の最小
発育阻止濃度(MIC,μg/ml)をもって表示し
た。また真菌類(Aspergillus fumigatus Hl1-20, BSL4
1, BCL70,Trichophyton rubrum IFO 5807:細胞数10
6個/ml)については、サブロー(Sabourau
d)寒天培地(日水製薬社製)で、30℃、42時間
養後の最小発育阻止濃度をもって表示した。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正内容】
【0067】
【表3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:465) (72)発明者 ウ レイ 徳島県徳島市川内町加賀須野463−10 (72)発明者 ウ ユン 徳島県徳島市川内町加賀須野463−10

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(1): 【化1】 (式中、Rはメチル基または水素原子を示す。)で表さ
    れるIT−143物質またはそれらの塩。
  2. 【請求項2】ストレプトミセス属に属する菌を培養し、
    培養物を回収することによって得ることができる請求項
    1記載のIT−143物質またはそれらの塩。
  3. 【請求項3】ストレプトミセス属に属する菌が、ストレ
    プトミセス エスピー.IT−143(Strepto
    myces sp.IT−143)株であることを特徴
    とする請求項2記載のIT−143物質またはそれらの
    塩。
  4. 【請求項4】請求項1乃至3のいずれかに記載のIT−
    143物質またはそれらの薬学上許容される塩を有効成
    分とする抗菌剤。
  5. 【請求項5】請求項1乃至3のいずれかに記載のIT−
    143物質またはそれらの薬学上許容される塩を有効成
    分とする抗真菌剤。
  6. 【請求項6】請求項1乃至3のいずれかに記載のIT−
    143物質またはそれらの薬学上許容される塩を有効成
    分とする抗腫瘍剤。
JP5773596A 1996-03-14 1996-03-14 It−143物質、及びその用途 Pending JPH09249647A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009008508A1 (ja) 2007-07-11 2009-01-15 Microbial Chemistry Research Foundation スルフォスチン、及びスルフォスチン関連化合物を有効成分とした抗腫瘍剤

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WO2009008508A1 (ja) 2007-07-11 2009-01-15 Microbial Chemistry Research Foundation スルフォスチン、及びスルフォスチン関連化合物を有効成分とした抗腫瘍剤

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