JPH09224399A - 誘導モータの制御装置 - Google Patents

誘導モータの制御装置

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JPH09224399A
JPH09224399A JP8028158A JP2815896A JPH09224399A JP H09224399 A JPH09224399 A JP H09224399A JP 8028158 A JP8028158 A JP 8028158A JP 2815896 A JP2815896 A JP 2815896A JP H09224399 A JPH09224399 A JP H09224399A
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primary current
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magnetic flux
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Application number
JP8028158A
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English (en)
Inventor
Naoki Ishii
直樹 石井
Takayuki Ishikawa
隆之 石川
Masaaki Tsuzuki
正明 都築
Yasushi Kusaka
康 日下
Katsumi Kondo
勝美 近藤
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Toyota Motor Corp
Soken Inc
Original Assignee
Nippon Soken Inc
Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 1次周波数に対応した回転行列を用いて補正
し、又は1次電流の位相遅れ相当分に対応する過去の1
次磁束推定値をトルク推定時に用いてトルク推定誤差を
補正して、制御演算を精度よく行うことを目的とする。 【解決手段】 3相/2相変換手段52b によりd−q変
換された1次電流i1d ,i1q について、周波数変換器11
にて1次周波数fを得、さらに位相補償部10にて位相遅
延角を算出し、1次電流i1d,i1q と回転行列に基づいて
位相補償された1次電流検出値i1d',i1q' を得るか、若
しくは位相補償部30に積分器54a,54b からの1次磁束φ
1d, φ1qを入力し、位相補償された1次磁束φ1d' とφ
1q' がベクトル積を得るための乗算器に入力され、位相
補償されない1次電流値i1d,i1q はそのまま乗算器に入
力され1次電流値の位相遅れを補償するように構成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は誘導モータの制御装
置に関し、特に、モータの1次電流を検出し、1次電流
の位相を補償し、補償された1次電流検出値をフィード
バックしてモータを制御する誘導モータの制御装置に関
する。
【0002】
【従来の技術】通常、誘導モータの制御をデジタル制御
装置で構成した場合には、1次電流等の取り込み値から
磁束やトルク等の制御諸量を推定し、推定値と制御目標
値との比較からインバータへのスイッチング指令信号を
決定し出力する。ところで、近年、デジタル演算素子の
性能が向上して高速演算処理が可能になって来たため、
提唱されている各種制御法のデジタル化が進んでおり、
全デジタル化された誘導モータの制御装置も報告されて
いる。
【0003】図6はアナログフィルタを組み込んだシス
テムブロック図であり、図7はデジタルフィルタを組み
込んだシステムブロック図である。図中、41は電流検
出器、42はアナログフィルタ、43はA/D変換器、
44は制御演算手段、45はインバータ、46は誘導モ
ータ(IM)、47はデジタルフィルタ、である。電流
検出器41により誘導モータ46に流れる1次電流を検
出し、制御演算手段44における制御演算の制御方法を
デジタル化するには、アナログ量である1次電流検出値
をデジタル量に変換するためのA/D変換器43が必要
である。
【0004】通常、フィルタは電流検出器41からA/
D変換器43までのワイヤハーネス部等にて電流検出波
形に重畳するノイズ成分を除去するために設けられるも
のであり、図6に示すようにA/D変換器43の前段の
アナログ量にハードウェアによるローパスフィルタ42
を配置したり、図7に示すようにA/D変換後のデジタ
ル値にローパス・フィルタ47を組み込む方法が一般的
である。
【0005】上述のシステムではA/D変換器43で取
り込んだ1次電流検出値は、後段の制御演算手段44に
て各制御アルゴリズムに基づいた制御演算に用いられ
る。例えば、誘導モータの制御に広く適用されいるベク
トル制御では、1次電流の指令値と検出値とを比較して
PWM信号を形成してトルク制御を実現している。ま
た、従来公知の文献として、例えば長岡技術科学大学の
高橋勲氏が提唱する「瞬時空間磁束ベクトル制御法」
(長岡技術科学大学研究報告書、第8号1986,第4
3〜50頁参照)がある。この制御法では、1次磁束推
定値と1次電流検出値とのベクトル積から出力トルクを
推定し、出力トルクの指令値と推定値とを比較して電圧
ベクトルを形成してトルク制御を実現している。
【0006】この瞬時空間磁束ベクトル制御法は、以下
のようにして、誘導モータの1次電流検出値等から誘導
モータの1次磁束を推定し、1次磁束推定値と1次電流
検出値とから出力トルクを推定する磁束演算形の制御法
であり、トルク制御を高速に行えることが特徴である。
しかしながら、本制御法には以下に詳述するように、フ
ィルタ手段を経た後の1次電流の位相遅れによる誤差の
補償に関しては述べていない。
【0007】本制御法では、3相誘導モータにおいて、
1次磁束ベクトルをφ1とし、出力トルクをTとする
と、 φ1=∫(V1−R1×i1)dt ・・・・(1) T=φ1×i1 ・・・・(2) で表される。ここで、 V1:1次電圧ベクトル i1:1次電流ベクトル R1:1次巻線抵抗 である。以下に、瞬時空間磁束ベクトル制御方法の制御
原理について、図面に沿って概略的に説明する。
【0008】図8は瞬時空間磁束ベクトル制御法を適用
した従来の誘導モータの制御装置のシステム構成図であ
る。図示のように、システムは、3相インバータ50、
1次電圧検出手段50a、1次電流検出手段50b、3
相インバータにより制御される3相誘導モータ51、1
次電圧検出値の3相/2相変換手段52a、1次電流検
出値の3相/2相変換手段52b、1次電流検出値と1
次電圧検出値の3相/2相変換後の値を制御演算処理し
て3相インバータを制御するための電圧ベクトルを形成
する瞬時空間磁束ベクトル形成手段60とで構成され
る。
【0009】1次電圧の3相/2相変換手段52aは3
相誘導モータの各相電圧V1を入力しd−q軸の変数で
表現するために電圧V1d,V1qに変換する。一方、
1次電流の3相/2相変換手段52bは3相誘導モータ
の各相電流i1を入力しd−q軸の変数で表現するため
に電流i1d,i1qに変換する。瞬時空間磁束ベクト
ル形成手段60の動作は概略以下のようになる。即ち、
1次電圧検出値及び1次電流検出値を入力した後、d−
q変換された電圧V1d,V1qと、電流i1d,i1
qに基づいて、電圧についてd軸成分の積分器54a及
びq軸成分の積分器54bと、1次磁束の大きさを求め
る絶対値算出手段55と、乗算器等を用いて磁束(φ)
及びトルク(T)について所定の演算を行う。
【0010】この演算結果と入力された1次磁束(φ
1)の指令値及びトルク(T)の指令値との差を、超過
及び不足の2レベルの過不足判定を行うための2値ヒス
テリシス比較器57と3値ヒステリシス比較器56によ
りそれぞれ2値化及び3値化し、これらの値(τ),
(φ)と、磁束角比較器58により6値化された磁束の
鎖交ベクトル角(θ)とにより、最適スイッチングテー
ブルを参照し、出力電圧ベクトルUU,VU,WUをイ
ンバータ50に出力する。
【0011】また、電圧降下演算部53a,53bは3
相/2相変換手段52bの変換後の1次電流を用いて1
次巻線抵抗での電圧降下分を演算する。積分器54a,
54bは、さらに詳しくは3相/2相変換手段52aの
変換後の1次電圧から電圧降下演算部で得られた電圧降
下分を減じた諸量の時間積分を行って、(1)式の1次
磁束φ1d,φ1qを求める。
【0012】図9は図8の3相インバータのスイッチン
グ状態を示す図である。図示の3相インバータ50は、
正母線71aと、負母線71bと、72aと72b、7
3aと73b、74aと74bで各々一対となるU,
V,W相の3組みの切換スイッチ(例えば、半導体スイ
ッチング素子)と、これらの切換スイッチに正母線71
a、負母線71bを介して接続されている直流電源70
とを備える。
【0013】このような構成で各切換スイッチを切り換
えて3相誘導モータに正母線側、或いは負母線側の電圧
を印加する。この場合、一対となった各切換スイッチは
上下同時に導通することはない。ここで、上段の切換ス
イッチ72a,73a,74aが導通する場合を
「1」、下段の切換スイッチ72b,73b,74bが
導通する場合を「0」とする。このように規定してU,
V,W相で順に導通状態を表現すると、図9に示す切換
スイッチの状態例では、72aは下段導通で「0」、7
3aは上段導通で「1」、74aは下段導通で「0」と
なり、その結果、(010)と表現される。
【0014】図10は図8は3相インバータ50より3
相誘導モータ51に印加される電圧ベクトルの説明図で
ある。図示のように、各切換スイッチの導通状態により
3相誘導モータ51には、大きさが等しく、方向の異な
る電圧ベクトルが印加される。即ち、各切換スイッチの
導通状態により3相誘導モータには全部で8種類(10
0,110,010,011,001,101,11
1,000)の電圧ベクトルを印加することができる。
これらの電圧ベクトルの内で6種類(100,110,
010,011,001,101)は大きさが等しく、
方向の異なる電圧ベクトルである。そして他の2種類に
ついては、(000)の場合は3相誘導モータには負母
線71b側の電圧が、(111)の場合は正母線71a
側の電圧が印加され、大きさと方向を持たない電圧ベク
トルとなる。
【0015】図11は瞬時空間磁束ベクトル形成手段6
0の1次磁束ベクトルの状態の説明図である。ここで、
1次巻線抵抗による電圧降下分を省略すると、図示のよ
うに1次磁束は1次電圧つまり電圧ベクトルのベクトル
和で表現することができる。上述した絶対値算出手段5
5は積分器54a,54bで得られた1次磁束φ1dと
φ1qに基づき、 (φ1d2 +φ1q2 1/2 ・・・・・(3) を、つまり1次磁束推定値の大きさを求める。
【0016】上述の2値ヒステリシス比較器に対応する
磁束判定手段57は、絶対値算出手段55において
(3)式で求めた1次磁束推定値の大きさと1次磁束指
令値との差をとり、過不足を判定する。そして過不足の
判定結果を用いて、1次磁束を増加させたい場合には磁
束円の外周方向(外に向かう矢印参照)の電圧ベクトル
を、減少させたい場合には内周方向(内に向かう矢印参
照)の電圧ベクトルを時々刻々に出力することにより、
1次磁束を一定のヒステリシス幅を持った磁束円に近似
させて制御することができる。
【0017】図12は1次磁束ベクトルの磁束象限の説
明図である。図示のように、1次磁束のd−q座標系を
6等分割して磁束象限を判断する。図8の磁束角比較器
に対応する磁束象限判定手段58は、積分器54a,5
4bで得られた1次磁束φ1dとφ1qに基づき、1次
磁束ベクトルの位相θを求め、1次磁束ベクトルが上記
の6分割されたいずれの象限に存在しているかを判定
し、この判定結果をスイッチングテーブル59に出力す
る。
【0018】図8の3値ヒステリシス比較器に対応する
トルク判定手段56は、(2)式に示すように、1次磁
束φ1dとφ1qと1次電流i1d及びi1qとのベク
トル積で算出される誘導モータの出力トルクの推定値
と、入力された出力トルクの指令値との差をとり過不足
を判定する。2レベルインバータの場合は出力できる電
圧ベクトルの大きさが1種類であるため、過不足判定
は、超過、適正、不足の3レベルで行いスイッチングテ
ーブルへ出力する。
【0019】誘導モータのトルクは凡そスベリに比例す
るため、出力トルクを増加させたい場合には1次磁束の
回転方向の電圧ベクトル(誘導モータを正回転方向に回
転させる電圧ベクトル)を、減少させたい場合には逆回
転方向に回転させる電圧ベクトルを出力することによ
り、出力トルクを制御することができる。本制御では以
上説明したトルク判定手段56、磁束判定手段57、磁
束象限判定手段58の3つの判定結果から、最終的に3
相インバータ50に出力する電圧ベクトルを選択する。
【0020】図13は図8のスイッチングテーブル59
で選択される電圧ベクトルのテーブルを示す図である。
図示のように、スイッチングテーブルには、トルク過不
足判定及び磁束過不足判定の判定結果に対して、各磁束
象限で選択すべき電圧ベクトルが予め設定されており、
この電圧ベクトル(UU,VU,WU)が、トルク判定
手段56、磁束判定手段57、磁束象限判定手段58に
おける各判定結果により選択され、3相インバータ50
に出力される。
【0021】なお、瞬時空間磁束ベクトル形成手段60
を実現する手段は、ハードウェアで構成してもよく、D
SP(デジタル信号処理プロセッサ)等で処理してもよ
い。また、1次電圧は直接検出せずに、3相インバータ
の直流部電圧と、出力した電圧ベクトルとから、一意的
に算出してもよい。さらに、誘導モータの制御装置の他
の公知文献として、例えば特開昭64─1497号公報
がある。この文献ではローパスフィルタを経た後の位相
遅れを補正する方法について開示しており、この方法で
は、フィルタの伝達遅角の周波数特性を予め記憶させて
おき、この記憶データとフィルタ出力を波形整形したも
のとに基づきPWM信号を制御するものである。
【0022】しかしながら、この方法では、1次電流の
零クロス点での1次電圧の極性を検出及び判別すること
により1次電流と1次電圧との位相差を推定し、最適な
位相差(高力率)で誘導モータを制御する方法であり、
フィルタによる1次電流の位相遅れに相当する分だけ1
次電圧の極性検出タイミングをずらし、1次電流の位相
遅れによる1次電圧判別誤差を解消するものである。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、誘導モ
ータに流れる1次電流を、A/D変換器を介して制御演
算に適用する従来のモータの制御装置では、1次電流の
検出誤差が磁束やトルク等の推定精度低下の要因とな
り、その結果として不安定現象の発生、トルク制御精度
の低下等の問題が生じている。
【0024】ところで、1次電流に検出誤差が発生する
要因は、1次電流検出器で発生する誤差に起因する場合
と、1次電流検出器からA/D変換器までのワイヤハー
ネス部で1次電流検出波形に重畳するノイズに起因する
場合とある。これらの要因の内、ワイヤハーネス部に重
畳するノイズに関しては、図6及び図7の従来技術で説
明したように、ローパスフィルタによる対策が一般的に
行われている。一方、ローパスフィルタは高周波成分を
除去するためのものであるため、位相遅れの影響は低周
波領域では小さく高周波領域では大きくなる。このよう
にローパスフィルタは位相特性を持っているため、実際
に誘導モータに流れる1次電流と1次電流検出値との間
に位相差(位相の遅れ)が発生する。そして位相差が発
生した1次電流検出値を使って制御演算を行うので、1
次磁束やトルク等の制御諸量の推定精度が低下し、その
結果前述の問題が発生する。
【0025】図14は1次磁束ベクトルと1次電流ベク
トルの関係の説明図(その1)であり、図15は1次磁
束ベクトルと1次電流ベクトルの関係の説明図(その
2)である。ここで、具体的に瞬時空間磁束ベクトル制
御法におけるトルク推定精度低下について図面を用いて
以下に説明する。この制御法では、前述の(2)式に示
すように、1次磁束推定値と1次電流検出値とのベクト
ル積から出力トルクを推定している。
【0026】これらの図中、斜線を施した領域(|T|
及び|T|’参照)がベクトル積の大きさ、つまり出力
トルクの推定値の大きさを表している。ここで、図14
の1次電流(i1)81aに位相差(位相遅れ)が生じ
た場合には、図15の1次電流(i1’)81bのよう
に表され、図14の斜線領域と図15の斜線領域を比較
すれば明らかなように、位相遅れのない場合と比較して
出力トルクの推定値が小さく算出されることになる。
【0027】前述のように、本制御では、出力トルクの
推定値と指令値とを比較して電圧ベクトルを形成してい
る。従って、1次電流検出値に位相遅れが生じた場合に
は、出力トルクを実際の出力トルクよりも小さく推定す
ることになり、更には出力トルクを増加させる電圧ベク
トルを選択して出力することになる。その結果、出力ト
ルクの指令値に対して過剰な出力トルクが発生すること
になり、トルク制御精度が低下することになる。そして
前述したように、出力トルクの過剰度合いは周波数が高
くなる程顕著になる。
【0028】本発明の目的は、ローパスフィルタでの1
次電流検出値の位相差(位相遅れ)を補償するに際し
て、1次周波数に対応した回転行列を用いて補正し、若
しくは1次電流の位相遅れ相当分に対応する過去の1次
磁束推定値をトルク推定時に用いて位相遅れによるトル
ク推定誤差を補正することにより、制御演算を精度よく
行い、制御性を向上させることが可能な制御装置を提供
することである。
【0029】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明に
よれば、フィルタによる位相差(位相遅れ)を含む1次
電流の1次周波数に対応した回転行列(回転ベクトル)
を求め、位相補償されない1次電流と乗じることで位相
補償するものであり、若しくは1次電流の位相遅れに相
当する過去の1次磁束推定値をトルク推定時に用い、現
在の1次電流値とで1次電流の位相遅れによるトルク推
定値誤差を解消する。
【0030】図5(A),(B),(C)は本発明の効
果を説明するために各手段での1次電流検出波形の関係
を説明する波形図である。(A)及び(B)に示すよう
に、誘導モータに流れる1次電流値91と、1次電流検
出手段で検出された1次電流検出波形92とを便宜上基
本波で表している。(B)に示すような1次電流検出波
形92の位相遅れは、1次電流検出手段からA/D変換
手段までのワイヤハーネス部にて1次電流検出波形に重
畳するノイズ成分を除去するためのフィルタ手段(ロー
パスフィルタ)に起因する。
【0031】前述のようにローパスフィルタはノイズ成
分の除去を目的としているために高周波成分をカットす
るが、使用する周波数帯によっては基本波成分の位相遅
れを伴う。この位相遅れを伴った1次電流検出波形92
に対して、(C)に示すように、本発明では1次電流位
相補償手段にてフィルタの位相特性を予め把握してお
き、算出される遅延時間に相当する位相角を補償する。
以上の各手段の働きにより位相補償後の1次電流検出波
形93の位相と、モータに流れる1次電流の位相とを一
致させ、その結果として精度良い制御演算ができるよう
になる。
【0032】
【発明の実施の形態】本発明の第1の実施形態を図面に
沿って以下に説明する。図1は本発明の第1の実施形態
の基本構成ブロック図である。まず、周波数算出手段5
は、1次電流検出手段1で検出された1次電流検出値を
フィルタ2を経てA/D変換された電流値i1について
1次周波数を算出する。本実施形態では1次電流検出値
の一周期の時間をタイマで計数して算出する。なお、1
次周波数の算出には1次電流検出値を用いず、1次電圧
値或いは1次磁束値など1次周波数を算出できる他の諸
量を用いてもよい。また、周波数算出手段5はタイマに
よらず、電圧電流方程式を変形した演算式から導出する
など、他の手法で実現させることもできる。なお、制御
演算手段6とインバータ7は前述の従来と同様なので、
説明を省略する。
【0033】位相補償手段4は、まず周波数算出手段5
で算出した1次周波数と、予め把握してあるフィルタ手
段2の位相特性とから、1次電流について現時点でのフ
ィルタ手段での遅延位相角を算出する。そして、算出し
た遅延位相角を下記の(4)式に示す回転行列に代入し
て現時点での位相補償行列を算出する。なお、本実施形
態では3相/2相変換後の1次電流検出値に対する回転
行列を適用した。
【0034】
【数1】
【0035】次に、(4)式で算出した回転行列を、下
記の(5)式に示すように検出した1次電流検出値の行
列式に乗じることにより、1次電流検出値を遅延位相角
θ分だけ進角させて補償する。ここで、i1’は位相補
償されて1次電値であり、図2のi1d’及びi1q’
に対応する。
【0036】
【数2】
【0037】図2は図1のシステム構成図であり、上述
の第1の実施形態を瞬時空間磁束ベクトル制御法に適用
した場合のシステム構成図である。図中の10は位相補
償部であり図1の位相補償手段が対応し、11は周波数
算出部であり図1の周波数算出手段が対応する。他の構
成要素については図8と同様であるため説明を省略す
る。
【0038】図示のように、3相/2相変換手段52b
によりd−q変換された1次電流i1d,i1qについ
て、周波数変換器11にて1次周波数fを得、さらに位
相補償部10にて位相遅延角を算出し、1次電流i1
d,i1qと(4)式の回転行列に基づいて(5)式に
示すように位相補償された1次電流検出値i1d’及び
i1q’を得る。
【0039】位相補償部10からの位相補償された1次
電流検出値i1d’及びi1q’は電圧降下演算部53
a,53b及び乗算器等に入力され、以降は前述の図8
の説明と同様に作用する。以上説明したように、位相遅
れを伴った1次電流検出値i1d及びi1qの代わり
に、位相補償した1次電流検出値i1d’及びi1q’
を以降の制御演算に用いることにより、1次電流検出値
に位相遅れが生じる場合にも、1次電流検出値の位相遅
れを要因とした誤差が発生しない制御演算が可能とな
る。
【0040】図3は本発明の第2の実施形態の基本構成
ブロック図である。上述の第1の実施形態1では、1次
電流検出値自身にて位相補償を行う場合の一例を示した
が、第2の実施形態では1次電流以外の諸量(例えば出
力トルク)に対して位相を補償することにより、1次電
流検出値に位相補償を行った場合と同等の効果を得るこ
とが可能な例である。
【0041】即ち、前述のように瞬時空間磁束ベクトル
制御法では、出力トルクは(2)式に示すように、1次
磁束推定値(φ1)と1次電流検出値(i1)とのベク
トル積で表されるため、前述のように1次電流検出値に
位相遅れが伴うと、1次磁束ベクトルと1次電流ベクト
ルとの挟角を小さく見積もってしまうことになり、その
結果、ベクトル積後の出力トルクの推定値の大きさに誤
差が生じる(図14及び図15参照)。
【0042】第2の実施形態では1次電流は位相遅れの
補償をせずに1次磁束推定値の位相を遅角補償して相対
的に1次電流検出値との挟角を補償し、1次電流検出値
の位相に進角補償を行った場合と同等の効果を得ること
ができるようにする。即ち、第1の実施形態ではフィル
タによる1次電流の位相遅れを1次周波数に対応した回
転行列を用いて補正したが、第2の実施形態では、
(2)式のトルク推定式を構成する1次電流値と1次磁
束推定値との2値の内で、1次電流の位相遅れ相当分に
対応する過去の1次磁束推定値をトルク推定時に用いる
ことにより、1次電流の位相遅れによるトルク推定誤差
を解消する。
【0043】図3において、説明を簡素化するための便
宜上、1次電流検出手段20、1次電圧検出手段21の
後のフィルタ手段及びA/D変換手段は省略する。ま
ず、1次磁束推定値の位相補償手段23ではフィルタ手
段で発生する遅延時間に相当する時間の過去のトルク推
定値を、過去の演算周期でメモリに予め記憶しておいた
1次磁束推定値の中から読み出す。デジタル制御では各
制御値が離散値であるため、遅延時間に相当する過去の
時間に最寄りの1次磁束推定値を読み出して位相補償手
段23に入力している。なお、制御精度を確保するため
に、遅延時間に相当する過去の時間の前後の1次磁束推
定値から各種の補間を用いて算出してもよい。そして、
現演算周期にて推定した1次磁束推定値は、以降の演算
周期の1次磁束位相補償手段で用いるために記憶する。
【0044】制御演算手段24では1次磁束の位相補償
手段23で遅角補償された1次磁束推定値(図4のφ1
d’,φ1q’)と、位相補償されていない1次電流検
出値(図4のi1d,i1q)とのベクトル積により出
力トルクの大きさを推定し、その結果を出力トルクの指
令値(図4のT指令値)と比較判定して、磁束判定、磁
束象限判定結果とを合わせてスイッチングテーブルから
電圧ベクトルを選択して3相インバータに出力する。
【0045】図4は図3のシステム構成図である。図中
の30は位相補償部であり、図3の位相補償手段23が
対応する。位相補償部30には積分器54a,54bか
らの1次磁束φ1d,φ1qが入力され、位相補償され
た1次磁束φ1d’とφ1q’はベクトル積を得るため
の乗算器に入力される。一方、位相補償されない1次電
流値i1d,i1qはそのまま乗算器に入力され位相補
償されたものとのベクトル積が求められる。その結果と
入力されたトルク指令値(T指令値)とをトルク判定手
段56にて比較判定し、磁束判定、磁束象限判定結果と
を合わせてスイッチングテーブルから電圧ベクトルを選
択して3相インバータに出力する。さらに積分器54
a,54bからの1次磁束φ1d,φ1qはそのまま位
相補償されずに絶対値算出手段55に入力される。他の
構成要素については従来の図8と同様なので説明を省略
する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の基本構成ブロック図
である。
【図2】図1のシステム構成図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の基本構成ブロックで
ある。
【図4】図3のシステム構成図である。
【図5】モータに流れる1次電流波形(A)と、フィル
タ通過後の1次電流波形(B)及び位相補償後の1次電
流波形(C)の関係の説明図である。
【図6】アナログフィルタを組み込んだシステムブロッ
ク図である。
【図7】デジタルフィルタを組み込んだシステムブロッ
ク図である。
【図8】従来の瞬時空間磁束ベクトル制御法を適用した
誘導モータ制御装置のシステム構成図である。
【図9】図8の3相インバータのスイッチング状態の説
明図である。
【図10】図8は3相インバータから3相誘導モータに
印加される電圧ベクトルの説明図である。
【図11】1次磁束ベクトルの状態説明図である。
【図12】1次磁束ベクトルの磁束象限の説明図であ
る。
【図13】電圧ベクトルを選択するスイッチングテーブ
ルの説明図でる。
【図14】1次磁束ベクトルと1次電流ベクトルとの関
係の説明図(その1)である。
【図15】1次磁束ベクトルと1次電流ベクトルとの関
係の説明図(その2)である。
【符号の説明】
1,20…1次電流検出手段 21…1次電圧検出手段 2…フィルタ手段 3…A/D変換手段 4,23…位相補償手段 5…周波数算出手段 6,24…制御演算手段 7…インバータ 8…誘導モータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 都築 正明 愛知県西尾市下羽角町岩谷14番地 株式会 社日本自動車部品総合研究所内 (72)発明者 日下 康 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 近藤 勝美 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インバータにより誘導モータの出力トル
    クを制御する誘導モータの制御装置であって、 前記誘導モータに流れる1次電流を検出する1次電流検
    出手段と、 前記1次電流検出手段による1次電流検出値に重畳する
    ノイズ成分を除去するフィルタ手段と、 前記フィルタ手段からのアナログ量の1次電流検出値を
    デジタル量に変換するA/D変換手段と、 前記デジタル量の1次電流検出値を含む1次側の電気諸
    量から1次周波数を算出する周波数算出手段と、 前記A/D変換手段の出力と前記周波数算出手段の出力
    に基づき、前記1次周波数の算出値に応じて回転角が変
    化する回転ベクトルに、前記フィルタ手段を経た1次電
    流検出値を乗ずることにより位相補償された1次電流を
    得、前記フィルタ手段における1次電流検出値の位相遅
    れを補償する位相補償手段と、 を具備することを特徴とする誘導モータの制御装置。
  2. 【請求項2】 インバータにより誘導モータの出力トル
    クを制御する誘導モータの制御装置であって、 前記誘導モータに流れる1次電流を検出する1次電流検
    出手段と、 前記誘導モータに流れる1次電圧を検出する1次電圧検
    出手段と、 前記1次電流検出手段による1次電流検出値に重畳する
    ノイズ成分を除去するフィルタ手段と、 前記フィルタ手段からのアナログ量の1次電流検出値を
    デジタル量に変換するA/D変換手段と、 前記1次電流検出手段及び1次電圧検出手段の検出値か
    ら得られた1次磁束推定値を一旦記憶し、記憶した1次
    磁束推定値の中から1次電流検出値の位相遅れ時間に相
    当する過去の1次磁束推定値を読み出し、読み出した過
    去の1次磁束推定値と現時点の1次電流検出値を用いて
    出力トルクを推定することにより、前記フィルタ手段に
    おける1次電流検出値の位相遅れを補償する位相補償手
    段と、 を具備することを特徴とする誘導モータの制御装置。
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