JPH0921717A - 回転軸の振動解析方法 - Google Patents

回転軸の振動解析方法

Info

Publication number
JPH0921717A
JPH0921717A JP17100995A JP17100995A JPH0921717A JP H0921717 A JPH0921717 A JP H0921717A JP 17100995 A JP17100995 A JP 17100995A JP 17100995 A JP17100995 A JP 17100995A JP H0921717 A JPH0921717 A JP H0921717A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rotating shaft
response
equation
shaft system
mode
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP17100995A
Other languages
English (en)
Inventor
Masayuki Ichimonji
正幸 一文字
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toshiba Corp filed Critical Toshiba Corp
Priority to JP17100995A priority Critical patent/JPH0921717A/ja
Publication of JPH0921717A publication Critical patent/JPH0921717A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Testing Of Balance (AREA)
  • Measurement Of Mechanical Vibrations Or Ultrasonic Waves (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】回転軸系の特性行列を厳密に考慮した上で、回
転軸系の不つり合いに対する応答倍率を直接かつ高精度
で評価可能とする。 【解決手段】ステップ1〜3により複素モード解析に必
要な固有値λj ,右固有ベクトルuj および左固有ベク
トルvj を求め、ステップ4以降はj=1,2,…,m
に従ってモードごとに計算を繰り返す。ステップ4で偏
心量ベクトルに右固有ベクトルuj を設定してから、ス
テップ5〜7の手順により回転数ごとに応答倍率を計算
する。 【外1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、回転機械を構成する回
転軸系の振動を解析により評価する回転軸の振動解析方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、ISO(国際標準化機構)では、
回転機械の振動評価の基準として共振倍率の導入が進め
られている。ISOに規定される共振倍率は実測に基づ
くもので、回転軸の回転速度(S)と振動振幅(V)の
関係を表すS−V線図から求める。すなわち、回転軸の
回転速度を加速して危険速度を通過させると、図7に示
すような共振曲線がS−V線図上に得られる。共振曲線
で振幅に極大値を与える回転速度が危険速度Ncrであ
る。極大値xcrに対して、直線x=xcr/21/2 と共振
曲線との交点P1 ,P2 における回転速度N1 ,N2
求める。このとき、共振倍率Qは、
【数1】Q=Ncr/(N2 −N1 ) ……(1) で与えられる。共振倍率は減衰率ζとの間に次の関係を
有する。
【0003】
【数2】 したがって、減衰率が微少(ζ《1)であるならば、
【数3】 が成り立つ。
【0004】共振倍率は、式(2)に見るように減衰率
ζの逆数にほぼ比例する量であり、不つり合いに対する
回転軸の振動の感度を表す評価値として重要である。I
SOでは共振倍率に対して図8に示すような評価基準を
与えている。
【0005】このように、回転軸の評価値として共振倍
率が導入されることから、回転機械の設計段階において
も共振倍率の予測を行っておく必要が生じてきた。共振
倍率の計算方法はISO以前から実用化されており、そ
の概要は次のようなものである。すなわち、回転軸とこ
れを支持する軸受を含む支持構造とからなる回転軸系に
ついて、有限要素法などによって離散化を行い、つぎの
ような形式の運動方程式を導く。
【0006】
【数4】 ここで、[M],[C],[K]はそれぞれ回転軸の質
量行列、減衰行列、剛性行列である。また、x,fはそ
れぞれ回転軸の変位ベクトルと外力ベクトルを表す。式
(1)の自由度をnとする。
【0007】回転軸の不つり合い振動を解析する場合に
は、外力として不つり合い力を考える。いま、回転軸の
不つり合いの分布を表すベクトルをwとすれば、不つり
合い力は、
【数5】 で与えられる。ただし、iは虚数単位である(i=(−
1)1/2 )。
【0008】式(4)において、行列[M],[K]を
対称行列とし、かつ減衰を微小として減衰行列[C]を
無視した上で、次の形式の実固有値問題を考える。
【0009】
【数6】ω2 [M]u=[K]u ……(6) ここで、ωは実固有値で被減衰固有角振動数に等しい。
また、uは固有ベクトルである。
【0010】式(6)の解として得られる固有ベクトル
i を固有価ωi の小さい順にu1,u2 ,…,um
する。mは採用するモード数であって、通常、m《nに
mをとる。m個の固有ベクトルを並べて、モード行列
[u]を作る。
【0011】
【数7】 [u]=[u1 ,u2 ,…,um ] ……(7) モード行列[u]と質量行列、剛性行列の間には直交性
と呼ばれる次の関係が成り立つ。
【0012】
【数8】 ここで、[u]T は[u]の転置である。また、
「m」,「k」は対角行列であって、それぞれj番目の
成分をmj ,kj とすれば、
【数9】 であって、mj ,kj の間には、
【数10】 の関係が成り立つ。
【0013】さらに、減衰行列についても式(8)と同
様な直交性が成り立つものと仮定する。
【0014】
【数11】 [u]T [C][u]=「c」 ……(11) このとき、対角行列「c」のj番目の成分cj は、j次
モードの減衰率をζj として
【数12】 cj =2ζj ωj ……(12) で表すことができる。
【0015】ここで、モード行列[u]を用いて、物理
座標における変移xからモード座標における変位φへの
座標変換を行う。
【0016】
【数13】 x=[u]φ ……(13) ただし、
【数14】 φ={φ1 ,φ2 ,…,φm } ……(14) 式(13)を式(4)に代入し、左側より[u]T を乗
じて、式(9),(11)の直交性を利用すると次式が
得られる。
【0017】
【数15】 式(15)に式(10),(12)を代入してj番目を
書き出すと、
【数16】 のようになる。
【0018】すなわち、式(4)で表わされるn自由度
の連立微分方程式は、固有ベクトルの直交性を用いるこ
とにより、式(16)のようなm組の1自由度微分方程
式に変換することができる。式(16)の応答φj ;j
=1,2,…,mが求められれば、式(13)により物
理座標における変位xが求められる。このとき、式(1
3)を展開すると、
【数17】 となる。ただし、xj はモード応答であって、
【数18】 xj =uj φj ;j=1,2,…,m ……(18) である。したがって、変位xは、モード応答xj の重ね
合せで表されることになる。
【0019】以上は近似モード解析の手順であるが、従
来の不つり合い応答解析では式(5)で表される外力に
対して近似モード解析の手法を適用している。式(1
6)に式(5)を代入すると、
【数19】 となるから、式(19)の応答φj は、
【数20】 で求められる。ここに、
【数21】
【数22】 このとき、Φj は近似モード法におけるj次モードの応
答倍率であって、
【数23】 において、最大値;
【数24】 をとる。式(24)は式(2)で表される共振倍率と一
致する。すなわち、解析において、共振倍率は応答倍率
の最大値として評価される。
【0020】以上が従来技術による応答倍率の計算方法
の概要である。この方法では応答解析の手法として取扱
いが容易な近似モード法を用いていることから、実用的
な手法として活用されている。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】従来技術では、応答倍
率を近似モード法による応答解析により求めているが、
近似モード法には次のような解析上の制約が存在する。
【0022】1.式(6)の実固有値問題が成立するた
めに、質量行列および剛性行列は対象行列である必要が
ある。
【0023】2.式(11)に示す減衰行列に関する直
交性が成り立つためには、厳密には減衰行列はレーリー
減衰形式でなければならない。
【0024】ところが、ジャーナル軸受に支持された回
転軸系では、軸受特性やジャイロ効果に起因して剛性行
列およびジャイロ行列を含む減衰行列の形式は一般に非
対象である。さらに、軸受による減衰は一般の構造物に
比較して強く、式(11)の直交性は成り立たない。し
たがって、近似モード法に基づく応答倍率の計算では結
果にかなりの誤差が含まれているものと言える。このた
め、ISOにおける共振倍率の制度化に伴って、より厳
密に回転軸の応答倍率を評価できる解析手段の開発が強
く望まれている。
【0025】特性行列(運動方程式における質量行列、
減衰行列および剛性行列の総称)の非対称性を考慮し、
かつ減衰行列に対して特定の制約を受けないで厳密な形
式で回転軸系の応答を求める方法としては、運動方程式
を直接解く直接法や固有ベクトルの計算に複素固有値問
題を用いる複素モード法が考えられる。
【0026】上記直接法は運動方程式(4)を時間積分
や逆行列演算などにより回転軸の応答を直接求めるもの
であるが、応答を求めるためには外力ベクトルfを定量
的に与える必要がある。応答倍率の極値である共振倍率
は、応答計算の繰り返しによってS−V線図を求めて実
測による場合と同様に式(1)に示す方法を用いて計算
することができるが、得られる回転軸の応答は外力の大
きさや分布に依存しているため、回転軸系の特性を表す
応答倍率を応答から抽出することは直接法では困難であ
る。
【0027】他方、上記複素モード法はモード座標へ固
有ベクトルを用いた1次変換を行う点では近似モードと
同一であるが、固有ベクトルの計算に一般性の高い複素
固有値問題によるところに特徴がある。この方法では固
有モードの分離がなされるので、応答をモードごとに計
算できる。しかしながら、複素固有ベクトルは減衰の存
在から一般に成分の間に位相差を有するため、応答倍率
を直接評価することができない。したがって、複素モー
ド法を用いる場合も、直接法と同様に特定の不つり合い
を仮定して応答解析を行ってS−V線を求め、式(1)
により共振倍率を評価することになる。
【0028】このように、S−V線から共振倍率を求め
る方法は、計算精度を向上させる上で有効な手段と考え
られるが、S−V線を求めるために危険速度近傍におい
て振幅の極大値が正しく得られるように細かい頻度で回
転数を増分させて応答計算を繰り返す必要がある。この
ため、非常に計算回数が多くなり、したがって計算時間
も近似モード法と比較して大幅に増大する問題点があ
る。さらに、この方法では共振倍率は評価できるもの
の、応答倍率を回転数の関数として求めることができな
い。回転軸系の評価は危険速度と定格回転数に着目して
行われる。共振倍率は危険速度における応答倍率であっ
て、危険速度に対する評価には有効なパラメータである
が、定格回転数についての評価には必ずしも適切なもの
とは言えない。定格回転数に関する評価値としては同様
に定格回転数における応答倍率が必要となり、従来技術
のように共振倍率のみでは不十分であるという問題点が
ある。
【0029】以上のような従来技術における問題点を考
慮して、本発明では回転軸系の特性行列を厳密に考慮し
た上で、応答倍率を直接かつ高精度で評価可能な回転軸
の振動解析方法を提供することを目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】上述のように、従来技術
における応答倍率の計算には近似モードが用いられてい
るために、正確な評価ができないという問題点を有して
いる。回転軸系の運動を定義する質量、減衰、剛性行列
の特性を厳密に評価することが可能な応答解析の手法と
しては、近似モード解析に対して複素モード法と呼ばれ
る手法が存在する。
【0031】この方法は複素固有値問題によって得られ
る右・左固有ベクトルの直交性を利用して、複素モード
空間で応答を評価する手法である。複素固有値問題は、
行列の非対称性を許容するとともに、減衰行列を厳密に
考慮できるので、複素モード法によれば回転軸の応答を
正確に計算することができる。
【0032】しかしながら、複素モード法では減衰を厳
密に考慮することから、軸の位置によって応答に移相の
ずれが生じるため、応答倍率をモード応答から直接評価
することができない。そこで、本発明では回転軸の偏心
の分布を右固有ベクトルに一致させることにより、この
問題を解決している。以下、採用した手法について数式
を用いて説明する。
【0033】2階の微分方程式である式(4)は1階の
微分方程式;
【数25】 と等価である。式(25)に対して、式(26)および
(27)の形式の2つの固有値問題を考える。
【0034】
【数26】
【数27】
【外1】
【0035】右・左固有ベクトルの間には、次のような
直交性が成立する。
【0036】
【数28】
【数29】 ここに、[u],[v]はそれぞれm次の右・左固有ベ
クトルからなるモード行列であって、
【数30】 [u]=[u1 ,u2 ,…,um ] ……(30)
【数31】 [v]=[v1 ,v2 ,…,vm ] ……(31) また、「λ」,「u」,「ν」はそれぞれ
【数32】
【数33】
【数34】 なる対角行列で、λj ,uj ,vj の間には次のような
関係が成り立つ。
【0037】
【数35】
【数36】
【数37】 λj =−μj /νj ……(37) ここで、右モード行列[u]を用いて、物理座標におけ
る変位xからモード座標における変位φへの座標変換を
行う。
【0038】
【数38】 ただし、
【数39】 φ={φ1 ,φ2 ,…,φm } ……(39) 式(38)を式(25)に代入し、左側より左固有モー
ド行列;
【数40】 を乗じて、式(28)、式(29)の直交性を利用する
【数41】 が得られる。式(41)を展開して式(37)の関係を
用いると、
【数42】 式(42)を解いて得られるモード座標上の応答φ式を
式(38)に代入して逆変換することにより、物理座標
上の応答xを求めることができる。
【0039】上記の応答解析手法は、複素固有値問題に
基づいていることから複素固有モード法と呼ばれるもの
で、質量、減衰、剛性行列が非対象である系に適用が可
能である上に、減衰を厳密に評価できる特徴を有してい
る。このため、複素モード法によれば近似モード解析に
おける障害を回避できるので、回転軸系の応答倍率解析
における計算精度を確保することができる。
【0040】
【外2】
【0041】このため、複素モード法を用いて不つり合
い力に対する回転軸系の応答倍率を評価するには、独特
の処理を加える必要がある。まず、
【数43】
【数44】 と置く。ωj は非減衰角固有振動数であり、ζj はj次
のモード減衰率を表す。ここで、式(42)を2階の微
分方程式に変換するとともに、係数の実数化をはかる。
すなわち、式(42)を時間に関して1回微分して、
【数45】 式(45)から式(42)を辺々差し引いて、式(4
3),(44)の関係を用いれば、
【数46】 が得られる。式(46)において左辺の係数は実数であ
るが、右辺の外力項は複素数であるので変数φj は複素
数である。
【0042】外力として式(5)で表される不つり合い
力を用いるとき、式(46)に対して、
【数47】 なる系を考える。式(47)の解ψj を用いて式(4
6)の応答φj を表せば、
【数48】 が得られる。
【0043】ところで、式(47)の解(定常応答)は
次式で与えられる。
【0044】
【数49】 ただし、
【数50】
【数51】 式(50)で与えられるΨj は式(21)で表される近
似モード法による応答倍率と同一の形式を有している。
【0045】ここで、式(35)よりμj を次のように
表す。
【0046】
【数52】 ただし、mj ,αj は、
【数53】
【数54】 なる量である。以下では数式の処理を簡略化するため、
右・左固有ベクトルの両方もしくはどちらか一方に対し
て次式が成り立つように正規化を施す。
【0047】
【数55】mj =1その上で、式(48),(49)か
ら式(46)の応答φj を求めると、
【数56】 となる。
【0048】式(56)に見るように、モード応答φj
は近似モード法の場合と同様に式(50)で表されるΨ
j に比例しているが、式(56)の右辺第2項(Ψj
かかる括弧内の数量)は複素固有値λj および回転速度
Ωの関数であることから、Ψj をそのまま応答倍率とみ
なすことはできない。さらに、式(56)の右辺第2項
は左固有ベクトルvj と不つり合いベクトルwj の積和
によって構成されるもので、固有ベトルと不つり合いベ
クトルの移相関係と強く結びついているため、係数とし
て評価することは困難である。
【0049】そこで、本発明では不つり合いベクトルに
対して特定の仮定を設けることにより、モード応答の定
量化をはかりこの障害を回避している。すなわち、不つ
り合いベクトルとして、wj
【数57】wj =[M]uj と置く。これは、回転軸の偏心の分布に右固有ベクトル
を仮定したものである。式(57)を式(56)に代入
すると、
【数58】 が得られる。このとき、物理座標上のモード応答x
j は、
【数59】
【外3】
【数60】
【数61】 ただし、
【数62】
【数63】
【数64】
【数65】 で、βrj,βijはそれぞれβj の実部および虚部であっ
て、βj は、
【数66】 で与えられる。また、Prj,Pij,Srj,Sijはそれぞ
れ次のような数である。
【0050】
【数67】
【数68】
【数69】
【数70】
【0051】式(62)〜(70)を式(59)に代入
して物理座標上のモード応答xj を求めると、
【数71】 となる。
【0052】右固有ベクトルから特定の自由度を取り出
して、
【数72】
【数73】 で表される。ただし、θj は、
【数74】 したがって、式(73)の調和振動の振幅;
【数75】
【数76】
【数77】
【0053】一方、複素固有値問題を回転軸系に適用す
る場合には実数の固有値が現われることがある。実固有
値は過減衰の状態を表すもので、共振点は伴わないこと
から共振倍率の解析では無視されるが、不つり合いに対
する応答は存在することから応答倍率としては評価の対
象となり得る。固有値が実数であるとき、固有ベクトル
の位相は同一であるので取扱いは容易で、応答倍率は、
【数78】 で求められる。
【0054】本発明による回転軸の振動解析方法では、
式(77)および(78)に示されるAj により応答倍
率を算出している。
【0055】
【作用】本発明においては、回転軸系の応答倍率の計算
に当たり、応答解析の手法として複素モード法を採用し
ている。この複素モード法では、物理座標からモード座
標への変換に固有ベクトルによる1次変換を行っている
が、固有ベクトルの計算には式(26),(27)で表
される複素固有値問題が用いられる。この複素固有値問
題は、回転軸系に独特な特性行列(特に、減衰行列、剛
性行列)の非対称性を許容する。さらに、減衰行列に対
して特定の制約を設けることなく、厳密に減衰行列を考
慮することができる。これにより、応答解析において特
性行列の対称性やレーリー減衰など近似的な取り扱いを
行っている従来技術と比較して、回転軸系の応答を正確
に評価することができる。
【0056】一般に、複素モード法では、減衰を厳密に
考慮することから固有モードに移相のずれが生ずるの
で、応答倍率を直接的に評価することができない。この
ため、本発明では式(57)に示すように不つり合い力
として回転軸の偏心量の分布に右固有ベクトルを設定す
ることにより、回転軸の不つり合い応答を定量化した上
で、特定の自由度に着目して式(77)に従って不つり
合い応答と偏心量の分布を表す右固有ベクトルの振幅と
の絶対値の比率から応答倍率を求める手順をとってい
る。この方法によれば回転数の関数として直接回転軸系
の応答倍率が評価されるので、短い時間で解析を行うこ
とが可能である。
【0057】
【実施例】以下、本発明による回転軸の振動解析方法の
実施例を図面を参照して説明する。
【0058】図1は本発明による回転軸の振動解析方法
の第1の実施例の手順を示すフローチャートである。図
1において、まず、ステップ1から3の操作により複素
モード解析に必要な複素固有値、右固有ベクトルおよび
左固有ベクトルを求める。ステップ1において回転軸系
の運動方程式(4)を表す特性行列[M],[C],
[K]を有限要素法に代表される離散化手法を用いて作
成する。続くステップ2および3では、ステップ1で作
成された特性行列に基づいて、それぞれ右固有値問題、
左固有値問題(式(26),(27)参照)を解いて、
mを採用モード数としてm対の複素固有値λj 、右固有
ベクトルuj 、左固有ベクトルvj (j=1,2,…,
m)を求める。
【0059】ステップ4以降はj=1,2,…,mの順
番に従ってモードごとに応答倍率の計算を繰り返す。ま
ず、ステップ4でモードjにおける回転軸の偏心量の分
布に右固有ベクトルuj を設定して、不つり合いベクト
ルを式(57)の形式とする。ここで、解析の対象とす
る回転数の範囲をΩ1 からΩ2 (Ω1 <Ω2 )として、
この範囲をn個に均等分割する。その上で、i=0,
1,…,nの順にステップ5からステップ7の操作を繰
り返して応答倍率を回転数の関数として求める。ステッ
プ5では変数iに対して回転数Ωを次式により求める。
【0060】
【数79】
【0061】
【外4】
【0062】図2は本実施例における計算結果を近似モ
ード法によるものと比較して示す。図中、実線は本実施
例による応答倍率線であり、波線は近似モード法による
応答倍率線である。本実施例における応答倍率の評価
は、ステップ6において求められた回転軸の振幅が最大
となる自由度について行っている。図2の応答倍率線図
の最大値により共振倍率を求めると、35.2となる。
一方、図7は前記の計算とは別個に行った直接法によっ
て求められたS−V線図である。図7から式(1)を用
いて共振倍率を求めると、Ncr=1611[RPM]に
対し、N1 ,N2はそれぞれ、1588,1633[R
PM]であるから、
【数80】 となって、本実施例の手法によって求めた値と良く一致
することが確認できる。
【0063】次に、第2の実施例について説明する。図
3(A),(B)は偏心量ベクトルとして右固有ベクト
ルを採用した場合における不つり合いベクトルの回転方
向を示す説明図である。回転軸の回転に伴いジャイロ効
果が発生すると、回転方向と同一方向に回転する同図
(A)に示す前回りモードと同図(B)に示す後回りモ
ードとが一対で現われる。ところが、回転方向にかかわ
らず式(57)では偏心量ベクトルとして右固有ベクト
ルを用いている。したがって、式(57)の不つり合い
力ではどちらのモードにおいてもモードの回転方向に不
つり合い力が回転することになる。実際には不つり合い
力の回転方向は、後回りモードの回転方向とは反対であ
ることから、後回りモードに関しては式(57)の形式
は不適切である。そこで、式(57)に対して、後回り
モードについて式(81)の形式をとることにより、不
つり合いベクトルの回転方向を逆転させる。
【0064】
【数81】
【0065】図4および図5は、第2の実施例の計算結
果を示す説明図である。図4は前回りモードと後回りモ
ードにおける不つり合い応答の相違を示すS−V線図で
ある。破線で示す前回りモードが危険速度において最大
値を示すのに対して、実線の後回りモードには極値は存
在せず、振幅は回転数に対して単調に増加していること
がわかる。一方、図5は後回りモードについて式(8
1)と式(57)による不つり合いベクトルの相違を、
応答倍率線で比較したものである。実線は式(81)に
よるもので、図4の後回りモードの応答と傾向が一致し
ている。これに対して破線で示す式(57)によるもの
は、極値を有し図4の前回りモードの応答と同様の傾向
を示しており、実際の現象とは異なることがわかる。
【0066】第1の実施例で説明したように。本発明に
よる応答倍率の計算は実機の振動評価で着目される自由
度について行われる。第1の実施例では軸系全体で応答
振幅が最大の自由度において応答倍率の評価を行ってい
るが、多くのスパンから構成される大規模な回転軸系で
は、個々のスパンについて振動の評価を行う必要があ
る。このような場合には、着目するスパンにおいて応答
振幅が最大となる自由度について応答倍率を評価すると
良い。
【0067】最大振幅の発生自由度はモードによって変
化するのに対して、実機では測定上の制約から特定の位
置で振動を評価することが一般的である。したがって、
本発明における応答倍率の計算においてもこのような測
定位置について自由度を選択して応答倍率を評価するこ
とが望まれる。測定位置としては次のようなものが考え
られる。
【0068】・回転軸上で、回転軸が支持される位置
(測定でオン・シャフトと呼ぶ) ・回転軸を支持する軸受の位置(測定でオン・ペデスタ
ルと呼ぶ)
【0069】応答倍率を評価する自由度を変化させる
と、自由度によって応答倍率に相違が生ずるおそれがあ
る。このような場合には選択した自由度について求めら
れた応答倍率の平均をとって回転軸系の応答倍率の代表
値とすることができる。
【0070】ところで、複素モード法は式(26),
(27)の複素固有値問題に基づいているが、複素固有
値問題は特定の回転数において求められる。ところが、
減衰行列や剛性行列は軸受特性やジャイロ効果から回転
数の関数となっている。
【0071】図6は回転数Ωと回転軸系の固有振動数ω
との関係を示すクリティカル・マップと呼ばれる線図で
ある。この図は、Ω=Ω0 ,Ω1 ,Ω2 ,Ω3 において
それぞれ固有振動数を求めた上で、各モードごとに対応
する固有振動数を結んで曲線を描いている。運搬直線Ω
=ωと各曲線との交点Ω=Ωc1,Ωc2,Ωc3が危険速度
である。
【0072】一般に、複素モード解析では、着目する固
有振動数における応答を正確に計算するには、この固有
振動数について固有対を正確に求める必要があるが、固
有振動数から離れた周波数領域においては固有対の精度
は大きな影響を有さない。すなわち、回転軸系において
は、危険速度における固有対が正確に評価されていれ
ば、全体の計算精度が確保できることになる。したがっ
て、対象とする回転数領域に存在する危険速度における
複素固有値および右・左固有ベクトルのみを抽出して複
素モード解析をすれば、この回転数領域全体について精
度良く応答倍率を計算することができる。
【0073】また、実固有値のモードは共振点を持たな
いので任意の回転数で評価しても差し支えないが、式
(78)に見るように応答倍率としては値を有する。こ
のモードは定格回転数において最も影響が大きいものと
考えられるので、前記実施例に見るように危険速度にお
ける固有振動特性を抽出して応答倍率を計算する場合に
は、実固有値のモードとして定格回転数におけるものを
選択すると、定格回転数における計算精度が向上でき
る。
【0074】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の請求項1
によれば、回転軸の不つり合いに対する応答解析を計算
するに当たり複素固有モード法が用いられて回転軸系に
独特の非対称な減衰行列や剛性行列を厳密に考慮できる
ことから正確な評価がなされる。
【0075】また、請求項1では回転軸の応答倍率は偏
心量ベクトルとして与えられた右固有ベクトルに対する
回転軸の応答と偏心量ベクトルである右固有ベクトルと
の比として直接算出されるので、計算を短時間で行うこ
とができる。
【0076】請求項2によれば、不つり合いベクトルに
おいて偏心量の分布に回転軸系の右固有ベクトルを用い
て回転軸系の不つり合い応答解析を行うに当たり、後ろ
回りモードにおいて振れ回り方向を反転させて不つり合
いベクトルを形成し、この不つり合いベクトルの振れ回
り方向を回転方向と一致させたことにより、ジャイロ効
果による後回りモードについて回転状態における応答倍
率をより正確に評価できる。
【0077】不つり合いに対する回転軸系の応答倍率は
回転軸系の位置によって異なっているが、本発明の請求
項3によれば、応答倍率の評価を振幅が最大の位置によ
って行うことから、最も厳しい状態における評価がなさ
れる。
【0078】また、本発明の請求項4によれば、スパン
ごとに応答倍率が求められるので、個々のスパンの特性
を評価することができる。
【0079】さらに、本発明の請求項5および6によれ
ば、計算結果を実測の応答倍率と直接比較することがで
きる。
【0080】本発明の請求項7によれば、回転軸系全体
について応答倍率の平均をとることにより、総合的に応
答倍率を評価できる。
【0081】一方、本発明の請求項8によれば、個々の
モードにおける応答倍率の計算に当たり固有モードに危
険速度モードを代用することにより、応答倍率の計算速
度を高速化することができる。
【0082】さらに本発明の請求項9によれば、過減衰
モードが考慮されるので、応答倍率の計算精度を向上す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る回転軸の振動解析方法の第1の実
施例の手順を示すフローチャート。
【図2】第1の実施例により求められた回転軸系の応答
倍率線図。
【図3】(A),(B)は本発明に係る回転軸の振動解
析方法の第2の実施例において前回りモードと後回りモ
ードにおける回転方向を示す説明図。
【図4】第2の実施例において前回りモードと後回りモ
ードにおける不つり合い応答の相違を示すS−V線図。
【図5】第2の実施例で後回りモードにおける応答倍率
を説明する応答倍率線図。
【図6】回転軸系における回転数と固有振動数の関係を
説明するクリティカル・マップ図。
【図7】回転軸系における不つり合い応答を説明するS
−V線図。
【図8】ISO規格における共振倍率の判定図。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回転軸の不つり合い振動を解析により評
    価する回転軸の振動解析方法において、前記回転軸と軸
    受を含む支持構造とからなる回転軸系に対し、複素固有
    振動解析により得られる右・左複素固有ベクトルの直交
    性を利用する複素モード法に基づく応答解析を用い、各
    モードごとに不つり合いベクトルにおいて偏心量の分布
    に右固有ベクトルを与え、求められたモード応答におけ
    る回転軸系の応答振幅と右固有ベクトルの振幅との比か
    ら不つり合いに対する回転軸系の応答倍率を評価するこ
    とを特徴とする回転軸の振動解析方法。
  2. 【請求項2】 不つり合いベクトルにおいて偏心量の分
    布に回転軸系の右固有ベクトルを用いて回転軸系の不つ
    り合い応答解析を行うに当たり、後ろ回りモードにおい
    て振れ回り方向を反転させて不つり合いベクトルを形成
    し、この不つり合いベクトルの振れ回り方向を回転方向
    と一致させたことを特徴とする請求項1記載の回転軸の
    振動解析方法。
  3. 【請求項3】 不つり合いに対する回転軸系の応答倍率
    を評価するに当たり、回転軸系の振幅が最大となる位置
    において前記応答倍率を評価することを特徴とする請求
    項1または2記載の回転軸の振動解析方法。
  4. 【請求項4】 不つり合いに対する回転軸系の応答倍率
    を評価するに当たり、回転軸系を構成するスパンで振幅
    が最大となる位置において前記応答倍率を評価すること
    を特徴とする請求項1または2記載の回転軸の振動解析
    方法。
  5. 【請求項5】 不つり合いに対する回転軸系の応答倍率
    を評価するに当たり、回転軸が支持される位置において
    前記応答倍率を評価することを特徴とする請求項1また
    は2記載の回転軸の振動解析方法。
  6. 【請求項6】 不つり合いに対する回転軸系の応答倍率
    を評価するに当たり、回転軸を支持する軸受の位置にお
    いて前記応答倍率を評価することを特徴とする請求項1
    または2記載の回転軸の振動解析方法。
  7. 【請求項7】 不つり合いに対する回転軸系の応答倍率
    を評価するに当たり、回転軸系の応答振幅と不つり合い
    ベクトルとの比を回転軸系に関する平均値をとって前記
    応答倍率を評価することを特徴とする請求項1または2
    記載の回転軸の振動解析方法。
  8. 【請求項8】 複素固有モード法を用いて回転軸系の不
    つり合い応答解析を行うに当たり、複素固有ベクトルと
    して危険速度解析によって求められた危険速度における
    複素固有ベクトルを用いることを特徴とする請求項1記
    載の回転軸の振動解析方法。
  9. 【請求項9】 危険速度における複素固有ベクトルを用
    いて回転軸系の不つり合い応答解析を行うに当たり、定
    格回転速度において実固有値が存在する場合、複素モー
    ド法で用いる固有モードとして前記実固有値に対応する
    実固有ベクトルを含めることを特徴とする請求項8記載
    の回転軸の振動解析方法。
JP17100995A 1995-07-06 1995-07-06 回転軸の振動解析方法 Pending JPH0921717A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP17100995A JPH0921717A (ja) 1995-07-06 1995-07-06 回転軸の振動解析方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP17100995A JPH0921717A (ja) 1995-07-06 1995-07-06 回転軸の振動解析方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH0921717A true JPH0921717A (ja) 1997-01-21

Family

ID=15915411

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP17100995A Pending JPH0921717A (ja) 1995-07-06 1995-07-06 回転軸の振動解析方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH0921717A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003014537A (ja) * 2000-12-19 2003-01-15 Nsk Ltd 回転装置の振動診断装置
CN114813150A (zh) * 2022-04-07 2022-07-29 潍柴动力股份有限公司 发动机曲轴化瓦风险监测方法、装置及***
WO2024028968A1 (ja) * 2022-08-02 2024-02-08 三菱電機株式会社 振動特性推定装置、回転バランス調整装置、振動特性推定方法および回転バランス調整方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003014537A (ja) * 2000-12-19 2003-01-15 Nsk Ltd 回転装置の振動診断装置
CN114813150A (zh) * 2022-04-07 2022-07-29 潍柴动力股份有限公司 发动机曲轴化瓦风险监测方法、装置及***
WO2024028968A1 (ja) * 2022-08-02 2024-02-08 三菱電機株式会社 振動特性推定装置、回転バランス調整装置、振動特性推定方法および回転バランス調整方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Hsieh et al. A modified transfer matrix method for the coupling lateral and torsional vibrations of symmetric rotor-bearing systems
US5214585A (en) Balancing method and product
Song et al. Traveling wave analysis of rotating cross-ply laminated cylindrical shells with arbitrary boundaries conditions via Rayleigh–Ritz method
Al-Shudeifat Stability analysis and backward whirl investigation of cracked rotors with time-varying stiffness
Filipović et al. Delayed resonator with speed feedback–design and performance analysis
Bucher Estimating the ratio between travelling and standing vibration waves under non-stationary conditions
CN111428409B (zh) 用于机械非线性振动分析的方程求解方法
Morton Modal balancing of flexible shafts without trial weights
Qinkai et al. Parametric instability of a rotating truncated conical shell subjected to periodic axial loads
Chouksey et al. Model updating of rotors supported on ball bearings and its application in response prediction and balancing
CN111382503B (zh) 弹性支承下旋转的柔性圆环的振动分析方法及***
Shravankumar et al. Detection of a fatigue crack in a rotor system using full-spectrum based estimation
Tomec et al. Analysis of static frictionless beam-to-beam contact using mortar method
JPH0921717A (ja) 回転軸の振動解析方法
Sarikaya et al. Response sensitivity of centrifugal pendulum vibration absorbers to symmetry-breaking absorber imperfections
Kim et al. Dynamic analysis of asymmetric bladed-rotors supported by anisotropic stator
Hu et al. Free vibration analysis of rotating twisted cylindrical thin panels
JP2008129726A (ja) 回転構造体の設計装置および設計方法
De Felice et al. Stability analysis of parametrically excited gyroscopic systems
Chao et al. Dynamic analysis of the optical disk drives equipped with an automatic ball balancer with consideration of torsional motions
Sarkheil et al. An improvement to motion equations of rotating truncated conical shells
Stoop et al. Multi-variable rotor dynamics optimization of an aerostatic spindle
CN116754134A (zh) 基于试验与仿真数据融合的转子不平衡状态识别方法
Batailly et al. Study of component mode synthesis methods in a rotor-stator interaction case
JP4513776B2 (ja) 地震応答解析方法