JPH09194316A - ナス科植物の土壌病害防除剤及びその防除方法 - Google Patents

ナス科植物の土壌病害防除剤及びその防除方法

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JPH09194316A
JPH09194316A JP8006695A JP669596A JPH09194316A JP H09194316 A JPH09194316 A JP H09194316A JP 8006695 A JP8006695 A JP 8006695A JP 669596 A JP669596 A JP 669596A JP H09194316 A JPH09194316 A JP H09194316A
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soil
disease
tobacco
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plant
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Kazuharu Koga
一治 古賀
Hidenori Hara
秀紀 原
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Japan Tobacco Inc
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Japan Tobacco Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 植物体に悪影響を及ぼさず、タバコ等のナ
ス科の植物の栽培後期までその根部に安定して定着し、
更に温室・野外のいずれの実験においても本病防除効果
が高いナス科植物の土壌病害防除剤並びにその土壌病害
防除方法を提供することにある。 【解決手段】 ナス科植物の土壌病害を防除する性質を
有するスフィンゴモナス・パシモビリス(Sphingomonas
paucimobilis)に属する微生物及び/又はその培養物を
有効成分として含有することを特徴とするナス科植物の
土壌病害防除剤及びその微生物を用いたナス科植物の土
壌病害防除方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、学名スフィンゴモ
ナス・パシモビリス(旧名:シュードモナス・パシモビ
リス)に属する微生物を有効成分として含有するナス科
植物の土壌病害防除剤(特にシュードモナス・ソラナセ
アラム(Pseudomonas solanacearum)が原因となるタバ
コ立枯病及びナス科植物青枯病の防除剤)、並びに該微
生物を用いたナス科植物の土壌病害防除方法に関する。
【0002】
【従来の技術】植物病原細菌の1種であるシュ−ドモナ
ス・ソラナセアラム(Pseudomonas solanacearum)の寄
生によって起こるタバコ立枯病あるいはナス科植物青枯
病(以下本病と略す)は、タバコ、トマト、ナス、ピ−
マン等の多くの作物で被害が多い。
【0003】本病原細菌(以下立枯病菌と略す)は、土
壌中で長期間生存しやすく、いったん植物体に感染する
と増殖が速いので、防除が極めて困難なものである。そ
のような理由から、作物病害の中でも難防除病害の一つ
とされている。
【0004】現在用いられている本病の防除対策は、耕
種的防除方法として抵抗性品種の利用、有機物の施用、
土壌の耕うんなどがあげられるが、安定した防除効果を
示さないことが多い。また、土壌くん蒸剤、例えばクロ
ルピクリンや臭化メチルなどの薬剤が化学的防除方法と
して用いられている。しかしながら、近年、これらの薬
剤の使用は、刺激臭による公害の発生、環境汚染および
オゾン層の破壊の原因となることや、土壌中の病原菌だ
けでなく有用な微生物までも死滅させることから、より
安全で効果の高い防除剤及び防除方法が求められてき
た。
【0005】一方、自然の土壌中には、多くの微生物が
存在し、お互いに影響を及ぼし合いながら生態系を形成
している。これらの微生物の中には、病原菌に対して拮
抗作用を示す微生物が多数存在することが明らかになっ
ている。安全で効果的な防除方法を提供するために、こ
れらの拮抗性の土壌微生物を用いて本病を防除する試み
が広く行われている。
【0006】その例を示すと、立枯病に対しては、シュ
ードモナス・プチーダ(Pseudomonas putida)を用いる
方法(日本植物病理学会報 (1990) 56巻:404)、シュ
ードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescen
s)を用いる方法(Revista de Microbiologia (1989) V
ol.20:18-26)、弱病原性のシュ−ドモナス・ソラナセ
アラム バクテリオシン産生菌株(Pseudomonas solana
cearum)を用いる方法(特開平1−16579号公報)
等があげられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記のシュードモナス
・プチーダあるいはシュードモナス・フルオレセンスを
用いた例では、これらの拮抗細菌が立枯病菌に対して培
地上で抗菌活性を示し、温室内の短期実験で発病抑制効
果が認められている。しかし、実際の病原菌の汚染畑で
は防除効果が認められなかったり、栽培後期に防除効果
が著しく低下する例がほとんどであった。従って、栽培
期間の長いナス科植物に使用して後期まで満足する防除
効果を示すものは、今のところ認められていない。
【0008】また、上記弱病原性の立枯病菌、バクテリ
オシン産生菌OM2菌株を用いた例では、処理した菌株
の根部への定着に18℃以上の温度条件が必要なことが明
らかになった(日本植物病理学会報 (1989)55:511)。
一般のタバコ畑の移植時期は3月にあたり、この18℃以
上の温度条件を満たせないことから、処理した菌が減少
しやすかった。そのために、本病の防除効果が低かった
り、不安定になることが認められた。
【0009】以上のように、現時点では、タバコ等のナ
ス科の植物の根に栽培後期まで安定して定着し、本病に
対して安定して高い防除効果を示す実用性のある微生物
は見い出されていない。
【0010】従って、本発明の目的は、植物体に悪影響
を及ぼさず、タバコ等のナス科の植物の栽培後期までそ
の根部に安定して定着し、更に温室・野外のいずれの実
験においても本病防除効果が高い土壌病害防除剤(特
に、タバコ立枯病及びナス科植物青枯病の防除剤)並び
にその土壌病害防除方法を提供することにある。
【0011】
【問題を解決するための手段】本発明者らは、さらに研
究を進め、従来までの研究に使用されている微生物と異
なり、本病防除に有効な微生物を分離した。すなわち、
タバコ根部から分離したスフィンゴモナス・パシモビリ
スに属する細菌が、植物体に悪影響を及ぼさず、タバコ
等のナス科の植物の栽培後期までその根部に安定して定
着し、温室・野外のいずれの実験においても本病防除効
果が高いことを発見した。即ち、本発明の構成を下記に
示す。 (1) ナス科植物の土壌病害を防除する性質を有する
スフィンゴモナス・パシモビリス(Sphingomonas paucim
obilis)に属する微生物及び/又はその培養物を有効成
分として含有することを特徴とするナス科植物の土壌病
害防除剤。 (2) スフィンゴモナス・パシモビリス(Sphingomona
s paucimobilis)に属する微生物が、スフィンゴモナス
・パシモビリスA260菌株である前記(1)に記載の
ナス科植物の土壌病害防除剤。 (3) スフィンゴモナス・パシモビリス(Sphingomona
s paucimobilis)に属する微生物が、スフィンゴモナス
・パシモビリスA266菌株である前記(1)に記載の
ナス科植物の土壌病害防除剤。 (4) 土壌病害が、シュードモナス・ソラナセアラム
(Pseudomonas solanacearum)が原因で起こるタバコ立
枯病及びナス科植物青枯病である前記(1)〜(3)の
いずれか1つに記載のナス科植物の土壌病害防除剤。
【0012】(5) 前記(1)〜(4)のいずれか1
つに記載のナス科植物の土壌病害防除剤を、ナス科植物
の根部、栽培地及び/又はその土壌に導入する工程を含
むことを特徴とするナス科植物の土壌病害防除方法。 (6) 土壌病害が、シュードモナス・ソラナセアラム
(Pseudomonas solanacearum)が原因で起こるタバコ立
枯病及びナス科植物青枯病である前記(5)に記載のナ
ス科植物の土壌病害防除方法。
【0013】スフィンゴモナス属細菌に関する特許とし
ては、本属菌から抽出されるB細胞賦活剤スフィンゴ糖
脂質(特開平6-145189)、本属菌を用いたビオチン(特
開平6-133790)、マロニル−7−アミノセファロスポラ
ン酸誘導体(特開平6-46835)の生産など、有用微生物
として物質生産の面で利用されている。さらに、シュ−
ドモナス・パシモビリス(Pseudomonas paucimobilis)
においては、多くの作物を宿主範囲にもつ病原糸状菌バ
ーティシリュウム・ダリエ(Verticillium dahliae)に
対して培地上で抗糸状菌活性をしめす菌株が分離されて
いる(Journalof Phytopathology(Berlin) (1994) 141-
1:99-110)。このように、植物病原糸状菌バーティシリ
ウム菌、フザリウム菌に対して抗菌活性をもつ菌株が分
離されているが、実際に圃場レベルで病害防除に利用さ
れた例は知られていない。さらに、これまで発明者が知
る限り、スフィンゴモナス・パシモビリスに属する細菌
が植物の病害、更に細菌病の病害防除に用いられた例、
更にナス科の植物の細菌病の病害防除に用いられた例は
みられない。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明において、「スフィンゴモ
ナス・パシモビリスに属する微生物」をナス科植物の根
部、栽培地及び/又はその土壌に存在させることで、ナ
ス科植物の土壌病害(特に、タバコ立枯病及びナス科植
物青枯病)を防除する性質を有する。更に、スフィンゴ
モナス・パシモビリスに属するこのような性質を有する
微生物は、試験すべき菌株を植物の根部、栽培地及び/
又はその土壌に存在させ、ナス科植物の土壌病害を防除
する性質を有すると認められる菌株を自然界または公知
のスフィンゴモナス・パシモビリスに属する微生物の中
から選抜することによって、再現性良く入手することが
できる。このような選抜法としては、後述する実施例1
の方法及びこれらと同等と認められる方法が挙げられ
る。以下の記述によって本発明が限定的に解釈されない
ことを前提として、上記微生物によってナス科植物の土
壌病害が防除できる理由は、上記微生物が植物の根に定
着し、土壌の病原菌の植物体への侵入を防ぐとともに、
植物体に該土壌の病原菌に対する抵抗性を誘導するので
はないかと考えられる。
【0015】本発明において、上記性質を有するスフィ
ンゴモナス・パシモビリスに属する微生物としては、具
体的には、後述する実施例において記載されているスフ
ィンゴモナス・パシモビリスA260菌株(以下、「A
260菌株」という)及びスフィンゴモナス・パシモビ
リスA266菌株(以下、「A266菌株」という)が
挙げられる。
【0016】本発明において、「防除」とは、病害の予
防のみならず、病害の除去をも含む意味で用いるものと
する。また、「根部」とは、植物を栽培した場合に土壌
中または水耕液中にあって水分や栄養分の吸収を行う部
分をいうものとする。本発明の土壌病害防除剤及び防除
方法が適用可能なナス科植物としては、例えばタバコ、
ナス、トマト、ピーマン、ジャガイモ、トウガラシ、ペ
ピーノ等が挙げられ、立枯病菌の宿主植物には適用可能
である。
【0017】本発明における上記スフィンゴモナス・パ
シモビリスの培養は、特別な培養基を用いる必要がな
く、培地の種類および培養条件を含めて任意のものであ
りうる。培地としては、アルブミン培地(新編土壌微生
物実験法P380 土壌微生物研究会編)、キングB培
地(J. Lab. Clin. Med.(1954) vol.44, 301-307)、M
523培地(Phytopathology(1954) vol.44, 969-976)
あるいは肉エキス培地など一般的な培地が挙げられる。
また、液体培地以外に寒天入りの斜面培地及び平板培地
等を用いてもよい。それら培養によって増殖させ、所望
の菌体量を得ることができる。
【0018】培地の炭素源としては、本発明による微生
物が同化しうるあらゆるものが利用できる。具体的に
は、グルコース、ガラクトース、ラクトース、アラビノ
ース、マンノース、麦芽エキス澱粉加水分解物などの糖
の他に、該微生物が利用し得る各種の合成または天然炭
素源がある。窒素源にしても同様に、ペプトン、肉エキ
ス、酵母エキス等の有機窒素含有物をはじめ、該微生物
が利用しうる各種の合成または天然物が利用可能であ
る。微生物培養の定法に従って、食塩、リン酸塩などの
無機塩類、カルシウム、マグネシウム、鉄などの金属の
塩類、ビタミン、アミノ酸などの微量栄養源も必要に応
じて添加することができる。
【0019】培養は、振とう培養、静置培養、通気培養
などの好気的条件下で行なうことができる。培養温度
は、20〜30℃、好ましくは25〜28℃、培地のp
Hは、pH5〜8、好ましくはpH6〜7、培養期間
は、1〜5日間、好ましくは2〜3日間が適当である。
本発明による土壌病害防除剤(以下単に「防除剤」とも
いう)において、微生物が生菌として適用される場合、
上記微生物を水1mlあたり106 〜1010個、好まし
くは107 〜109 個の濃度で、苗を本畑に移植する7
日前から移植後の1ヵ月までの間に植物体の根部に1回
〜複数回、浸漬処理、灌注処理または灌流処理等をする
ことによって適用されることが好ましい。浸漬処理によ
る場合には、浸漬時間は30分〜3時間、好ましくは1
時間〜1時間30分である。また灌注処理または灌流処
理による場合には、移植前苗1株あたり5〜20ml、
移植後は苗1株あたり50〜200mlを適用すること
が好ましい。また、微生物の培養物として適用される場
合には、菌体を依然として含んだものとして適用される
のが好ましく、その適用時期及び適用量は上記生菌の場
合に準じて適宜決定される。
【0020】更に、本発明の好ましい態様によれば、上
記微生物またはその培養物を土壌に混和または撹拌散布
したのち、ナス科植物を移植してもよい。この場合の混
和または撹拌散布の時期およびその量は、移植の1ヶ月
前から直前の間に土壌1g当たり菌体105 個以上とな
るように混和するのが好ましい。
【0021】本発明において、スフィンゴモナス・パシ
モビリスの培養物とは、その微生物の培養物の培養懸濁
液、生菌、培養ろ液、またはその土壌病害防除に有効な
成分の抽出液をいうものとする。
【0022】本発明による土壌病害防除剤は、いわゆる
担体と組み合わされて、農薬組成物とされてもよい。好
ましい担体の例としては、所望によりpH緩衝液を加え
た水溶性溶媒、スキムミルクなどの保護剤とともに凍結
乾燥後タルクなどの助剤を加えた粉末剤、顆粒剤、並び
にバーミキュライトなどの多孔質体等が挙げられる。本
発明の土壌病害防除剤は、液体、粉末、錠剤、シート等
のいずれの形態をも採ることができる。本発明の土壌病
害防除剤は、他の有効成分と組み合わされてもよい。他
の有効成分は特に限定されるものではないが、例えば殺
虫剤、除草剤、殺菌剤等が挙げられる。また、本発明の
土壌病害防除剤は、土壌改良材、堆肥、肥料等と組み合
わせた組成物とされてもよい。土壌病害防除剤として処
方された際の微生物およびその培養物の量、さらには適
用時期及び適用量は上記生菌の場合に準じて適宜決定さ
れる。
【0023】
【実施例】以下に実施例をあげて本発明の内容を説明す
る。しかし、本発明の内容がこれらに限定されるもので
はない。 実施例1 スフィンゴモナス・パシモビリスの分離・選抜方法 全国のタバコ畑からタバコ根部を採取した。そして、タ
バコ根面あるいは根圏から数多くの細菌株を分離した。
具体的には、健全なタバコ根部を掘り取り、ハサミで根
部を切り離し、付着している土壌を振り落とした。約1
cmの長さに切断した根を10mlの滅菌蒸留水に入れ、ミ
キサ−で攪拌した後、得られた懸濁液を1白金耳取り、
アルブミン培地(エッグアルブミン 0.25g、グルコ−ス
1.0g 、リン酸二カリウム 0.5g 、硫酸マグネシウム・
7水和物 0.2g, 硫酸鉄 痕跡, 寒天 1000ml, pH6.8〜7.
0:新編土壌微生物実験法(1992)土壌微生物研究会編、
養賢堂)あるいはキングB培地(プロテオ−スペプトン
No3 20.0g 、リン酸二カリウム 1.5g, 硫酸マグネ
シウム 1.5g, グリセリン 10.0ml, 蒸留水 1000ml:J.
Lab. Clin. Med(1954)Vol.44:301〜307)上に画線し
た。28℃、3日間培養後、得られた単一のコロニ−を-8
0℃のフリ−ザ−で保存した。このようにして、根面に
良く定着すると考えられる細菌を得た。
【0024】そして1)細菌自体が作物に対して病原性
あるいは悪影響を与えない、2)立枯病菌による病気の
発生を圃場で栽培後期まで効果的に抑制する、などの性
質を有している有用な菌株を温室あるいは圃場試験で選
抜した。
【0025】具体的には、植物体への影響及び効果の評
価法として、タバコ(品種:BY4)の8〜9枚苗を供
試し、細菌株をキングB液体培地で培養後、培養液をタ
バコ苗の根部に灌注接種し、土壌を入れた4寸鉢に移植
した。さらに、立枯病菌液を移植苗の株元に土壌灌注接
種後、30℃に設定した温室内で定期的に立枯病の発生に
ついて調査し、防除効果の高い有用な細菌株を選抜し
た。次に、温室内で高い防除効果を有する菌株を、キン
グB液体培地で培養後、遠心集菌し(×10,000g,15
分)、滅菌水中に109CFU/mlの濃度で懸濁した後、タバ
コ(品種:つくば2号)の9枚苗根部に灌注接種し、立
枯病菌の汚染畑(汚染菌濃度103 CFU/1g乾土)
に、4月下旬に移植した。その後、タバコ栽培後期まで
発病調査を行ない、後期まで効果が持続する細菌株のみ
を最終的に選抜した。その結果、秋田県平鹿郡大雄村に
おいて、タバコ(みちのく1号)の根部から有用細菌A2
60及びA266菌株を得た。なお、A260菌株はアルブミン培
地、A266菌株はキングB培地を供試して分離した細菌で
ある この方法により得られたA260菌株の細菌学的性質を
第1表、A266菌株の細菌学的性質を第2表にそれぞ
れ示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】上記A260菌株、A266菌株を、Micr
obiol. Immunol.(1990) Vol.34(2):99-119により、スフ
ィンゴモナス・パシモビリス(Sphingomonas paucimobi
lis)と同定した。
【0029】実施例2 A260菌株をキングB液体培地で28℃、2日間振とう
培養した後、約109CFU/mlに調整した。タバコ苗(ブラ
イトイエロー4)は、36本植えの塩化ビニール製のポッ
トで栽培した9葉苗を20本ずつ供試した。菌培養液の接
種は、株当たり10mlを株元に灌注接種した。接種したタ
バコ苗は、12時間、28℃の温室内で栽培した後、直径12
cmの素焼鉢に肥土を使用して移植し、30℃の温室内で栽
培した。移植2週間後に、立枯病菌(シュードモナス・
ソラナセアラム)液(106CFU/ml)を株当たり20mlずつ
株元に灌注接種した。対照として、上記のA260菌株
の接種の代わりに、キングB液体培地のみを同様にタバ
コ株元に灌注接種したタバコを供試した。接種2週間後
に立枯病の発病状況を調査した。発病程度は、第3表が
示すように0から5までの6段階とし、以下の式により
平均罹病指数を求め、防除率を算出した。また、発病率
は、発病株数を供試本数で割った値に100をかけるこ
とにより算出した。それらの結果を第4表に示す。
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】第4表の結果から明らかなように対照区よ
りも本細菌処理区の方が発病率が有意に低かった(t検
定、5%水準)。平均罹病指数も処理区の方が有意に低
く(t検定、1%水準)、立枯菌接種2週間後の防除率
は、63.1%であった。
【0033】実施例3 本細菌株A260をキングB液体培地で28℃、2日間振
とう培養した後、遠心集菌(10,000×g,10分間)し、滅
菌水中に109CFU/mlの濃度で懸濁した。実施例2と同様
の方法でタバコを栽培し、本細菌懸濁液を同様に接種し
た。実施例2と同様の方法で立枯病菌を接種し、それか
ら2週間後に発病を調査した。対照として、本細菌株の
懸濁液の代わりに滅菌蒸留水のみを接種したタバコを供
試した。発病程度の評価は、実施例2と同様に行い、そ
の結果は第5表に示す。
【0034】
【表5】
【0035】第5表の結果から明らかなように対照区よ
りも本細菌処理区の方が発病率が有意に低かった(t検
定、5%水準)。平均罹病指数も処理区の方が有意に低
く(t検定、5%水準)、立枯病菌接種2週間後の防除
率は、60.0%であった。
【0036】実施例4 本細菌株A260をキングB液体培地で28℃、2日間振
とう培養した後、遠心集菌(10,000×g,10分間)し、滅
菌水中に109CFU/mlの濃度で懸濁した。菌濃度は、キン
グB平板培地によって確認した。タバコ苗(つくば2
号)は、36本植えの塩化ビニール製のポットで栽培し、
本畑に移植する大きさの9葉苗を供試した。菌懸濁液の
接種は、以下の処理によって実施した。 (1)移植前処理:移植1日前に菌懸濁液(109CFU/ml)
を株当たり10ml株元灌注接種した後に本畑に移植した。 (2)移植前処理+土寄時処理:(1)の様に移植前処
理したタバコ株に、(1)と同様の方法で培養、遠心集
菌した菌体を蒸留水に懸濁し(108CFU/ml)、土寄時に
株当たり200mlずつ土壌灌注接種した。 (3)対照区:菌懸濁液の代わりに滅菌蒸留水のみを移
植前に(1)と同様の方法で処理したタバコ苗を移植し
た。移植前処理したタバコ苗は、12時間、28℃の温室内
で栽培した後、立枯病菌汚染畑(103CFU/1g乾土)に、4
月14日移植した。土寄時の処理は、5月20日に実施
した。移植後、通常の耕作方法によって栽培し、定期的
に立枯病の発病を実施例2と同様に調査した。その結果
を第6表及び第7表に示す。
【0037】
【表6】
【0038】
【表7】
【0039】第6、7表の結果から明らかなように、対
照区よりも本細菌懸濁液処理区の方が発病率、平均罹病
指数ともに有意(5%水準)に低く、防除率も栽培後期
まで安定していた。調査本数のばらつきは、ウイルス病
による被害のために各々の試験区で欠株が生じたためで
ある。
【0040】実施例5 本細菌株A266をキングB液体培地で28℃、2日間振
とう培養した後、約10 9CFU/mlに調整した。タバコ苗
(ブライトイエロー4)は、36本植えの塩化ビニール製
のポットで栽培した9葉苗を20本ずつ供試した。菌培養
液の接種は、株当たり10mlを株元に灌注接種した。接種
したタバコ苗は、12時間、28℃の温室内で栽培した後、
直径12cmの素焼鉢に肥土を使用して移植し、30℃の温室
内で栽培した。移植2週間後に、立枯病菌液(106CFU/m
l)を株当たり20mlずつ株元に灌注接種した。対照とし
て、A266菌培養液の代わりに、キングB液体培地の
みを同様にタバコ株元に灌注接種したタバコを供試し
た。接種2週間後に立枯病の発病状況を調査した。発病
程度は、前記実施例2に示すとうりに調査し、その結果
を第8表に示した。
【0041】
【表8】
【0042】第8表の結果から明らかなように対照区よ
りも本細菌処理区の方が発病率が有意に低かった(t検
定、5%水準)。平均罹病指数も処理区の方が有意に低
く(t検定、1%水準)、立枯菌接種2週間後の防除率
は、70.8%であった。
【0043】実施例6 本細菌株A266をキングB液体培地で28℃、2日間振
とう培養した後、遠心集菌(10,000×g,10分間)し、滅
菌水中に109CFU/mlの濃度で懸濁した。実施例5と同様
の方法でタバコを栽培し、菌懸濁液を同様に接種した。
実施例5と同様の方法で立枯病菌を接種し、2週間後に
発病を調査した。対照として、細菌株A266の代わり
に滅菌蒸留水のみを接種したタバコを供試した。発病の
調査は、前記実施例2と同様に行い、その結果を第9表
に示す。
【0044】
【表9】
【0045】第9表の結果から明らかなように対照区よ
りも本細菌処理区の方が発病率が有意に低かった(t検
定、5%水準)。平均罹病指数も処理区の方が有意に低
く(t検定、5%水準)、立枯病菌接種2週間後の防除
率は、72.0%であった。
【0046】実施例7 本細菌株A266をキングB液体培地で28℃、2日間振
とう培養した後、遠心集菌(10,000×g,10分間)し、滅
菌水中に109CFU/mlの濃度で懸濁した。菌濃度は、キン
グB平板培地によって確認した。タバコ苗(つくば2
号)は、36本植えの塩化ビニール製のポットで栽培し、
本畑に移植する大きさの9葉苗を供試した。菌懸濁液の
接種は、以下の処理によって実施した。 (1)移植前処理:移植1日前に菌懸濁液(109CFU/ml)
を株当たり10ml株元灌注接種した後に本畑に移植した。 (2)移植前処理+土寄時処理:(1)の様に移植前処
理したタバコ株に、(1)と同様の方法で培養、遠心集
菌した菌体を蒸留水に懸濁し(108CFU/ml)、土寄時に
株当たり200mlずつ土壌灌注接種した。 (3)対照区:本細菌株A266の懸濁液の代わりに、
滅菌蒸留水のみを移植前に(1)と同様の方法で処理し
たタバコ苗を移植した。移植前処理したタバコ苗は、12
時間、28℃の温室内で栽培した後、立枯病菌汚染畑(10
3CFU/1g乾土)に、4月14日移植した。土寄時の処理
は、5月20日に実施した。移植後、通常の耕作方法に
よって栽培し、定期的に立枯病の発病を前記実施例2と
同様に調査した。その結果を第10表、第11表に示
す。
【0047】
【表10】
【0048】
【表11】
【0049】第10、11表の結果から明らかなよう
に、対照区よりも本細菌懸濁液処理区の方が発病率、平
均罹病指数ともに有意(5%水準)に低く、防除率も栽
培後期まで安定していた。調査本数のばらつきは、ウイ
ルス病による被害のために各々の試験区に欠株が生じた
ためである。
【0050】
【発明の効果】本発明により、植物体に悪影響を及ぼさ
ず、タバコ等のナス科の植物の栽培後期までその根圏に
安定して定着し、更に温室・野外のいずれの実験におい
ても本病防除効果が高いナス科植物の土壌病害防除剤並
びにその防除方法を提供することができる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ナス科植物の土壌病害を防除する性質を
    有するスフィンゴモナス・パシモビリス(Sphingomonas
    paucimobilis)に属する微生物及び/又はその培養物を
    有効成分として含有することを特徴とするナス科植物の
    土壌病害防除剤。
  2. 【請求項2】 スフィンゴモナス・パシモビリス(Sphin
    gomonas paucimobilis)に属する微生物が、スフィンゴ
    モナス・パシモビリスA260菌株である請求項1に記
    載のナス科植物の土壌病害防除剤。
  3. 【請求項3】 スフィンゴモナス・パシモビリス(Sphin
    gomonas paucimobilis)に属する微生物が、スフィンゴ
    モナス・パシモビリスA266菌株である請求項1に記
    載のナス科植物の土壌病害防除剤。
  4. 【請求項4】 土壌病害が、シュードモナス・ソラナセ
    アラム(Pseudomonas solanacearum)が原因で起こるタ
    バコ立枯病及びナス科植物青枯病である請求項1〜3の
    いずれか1項に記載のナス科植物の土壌病害防除剤。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載のナ
    ス科植物の土壌病害防除剤を、ナス科植物の根部、栽培
    地及び/又はその土壌に導入する工程を含むことを特徴
    とするナス科植物の土壌病害防除方法。
  6. 【請求項6】 土壌病害が、シュードモナス・ソラナセ
    アラム(Pseudomonas solanacearum)が原因で起こるタ
    バコ立枯病及びナス科植物青枯病である請求項5に記載
    のナス科植物の土壌病害防除方法。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017169555A (ja) * 2016-03-18 2017-09-28 学校法人東京農業大学 ペピーノ台木接ぎ木トマト、ペピーノ台木接ぎ木トマトの作成方法及びトマトの土壌病害防除方法
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