JPH09143081A - 血漿分離フィルター、それを用いる血漿分離方法および血漿分離装置 - Google Patents

血漿分離フィルター、それを用いる血漿分離方法および血漿分離装置

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JPH09143081A
JPH09143081A JP8144730A JP14473096A JPH09143081A JP H09143081 A JPH09143081 A JP H09143081A JP 8144730 A JP8144730 A JP 8144730A JP 14473096 A JP14473096 A JP 14473096A JP H09143081 A JPH09143081 A JP H09143081A
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blood
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 血球およびヘモグロビンの混入のない血漿
を、効率的、簡便かつ迅速に提供すること。 【解決手段】 少量の血液からでも簡便、迅速かつ安全
に血液中の血球成分を損傷することなく、血液中と同じ
蛋白質濃度を有する血漿を分離することが可能な血漿分
離フィルター、血漿分離方法、および血漿分離装置を提
供する。極細繊維の集合体の平均動水半径が0.5μm
〜3.0μmとなるように、および血液成分の流路径
(D)と血液の流路長(L)との比(L/D)が、0.
15〜6となるように、入口と出口とを有する容器に充
填されている、血漿分離フィルター、このフィルターを
用いる血漿分離方法および血漿分離装置が提供される。
臨床検査の自動化、迅速化、安全性の向上に対して大き
く寄与し得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、血漿分離フィル
ター、該フィルターを用いる血液分離方法および該フィ
ルターを備えた血漿分離装置に関する。さらに詳細に
は、血球および/またはヘモグロビンを実質的に含有せ
ず、血液中とほぼ同一の蛋白質および電解質組成を有す
る、血液検査等に必要な少量の血漿を簡便、迅速かつ安
全に採取し得る血漿分離フィルター、該フィルターを用
いる血液分離方法および該フィルターを備えた血漿分離
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】血液中の成分を測定する、いわゆる生化
学検査は、各種疾患の診断・経過観察に広く利用され、
臨床検査として重要な地位を占めている。その分析技術
は、近年著しく進歩している。例えば、各種自動分析機
械器具の開発により、多数の検体が精度よく迅速に分析
できるようになった。
【0003】しかし、生化学検査の分野においては、赤
血球等の混入が目的物質の分析を妨害するため、予め血
液から分離された血漿または血清が用いられる。血漿あ
るいは血清は予め、患者あるいは被験者から血液を採取
し、次に、血球成分をいったん凝集させ、遠心分離して
得られている。凝固、遠心分離は操作に時間がかかり、
臨床検査時間の短縮化を妨るばかりでなく大型の遠心分
離機が必要となる。従って、大きな病院を除いて、臨床
検査は外部の業者に委託されているのが現状である。こ
の結果、検査結果の入手まで数日を要する。
【0004】このように、多くの臨床検査の過程が自動
化されているにも関わらず、血漿の分離は未だ人手に頼
っているのが現状である。従って、血漿の分離操作は、
臨床検査を非効率にするばかりでなく、従業者が血液と
接触して感染するなどの危険にさらされているという問
題点がある。
【0005】上記の問題点を解決する手段として、一般
にドライケミストリーと呼ばれる技術が知られている。
これは、ガラス繊維などの極細繊維フィルターからなる
血清分離層とその下層に位置する反応層とから成り立つ
小型プレートに、微量の血液を滴下すると、血清分離層
にて血清が分離され、その下層の反応層にて反応、発色
し、これを分光光度計にて測定する。このドライケミス
トリーは、液状の発色試薬を使わず、遠心分離による面
倒な血清採取も必要としない簡便な方法であるが、測定
できる項目が、液状試薬を用いる一般の生化学分析や免
疫分析に比べ数が限られていること、一つのプレートに
一つの検査項目を用いるため複数の項目を検査するため
に多数のプレートを用いなければならず、簡便である割
に時間的メリットが少ないこと、高価であることなどか
ら、広く普及するには至っていない。
【0006】血漿を迅速に得るための手段として、膜に
よる分離法がある。特開昭53−72691には、一端
が閉塞された細かいチユーブ状フィルター素子(孔径0.
05〜0.5μm)を濾材として、血液から血漿を分離する
方法が開示されている。しかし、この方法では、血球が
フィルター素子表面に付着することにより血漿の濾過に
きわめて長時間を要するだけでなく、血漿中に含まれる
タンパク質などの成分の透過率が悪い。他方、濾過速度
を速くするために濾過圧を高くすると溶血(赤血球膜が
破れ内部のヘモグロビンが放出されること)が起こるな
どの問題がある。 さらに、特開昭60−11166に
は、中空繊維束を用いた濾過カートリッジ(孔径0.05〜
1μm)を使用し、血液から血漿を分離する方法が提案
されている。しかし、この方法では、血漿分離作業の準
備としてプライミング(生理食塩水などで中空糸膜を濡
らす)作業を行う必要があり、血漿分離の作業そのもの
より準備作業に手間がかかるばかりでなく、得られた血
漿が生理食塩水などで希釈され、正確な分析データが得
られないという問題点を有する。
【0007】上記の膜による分離法は、分子サイズによ
る分離法であるため、血液中の蛋白質など比較的分子量
の大きい物質の透過性が低くなる。そのため、血漿中に
含まれる蛋白質の組成が、分離前の蛋白質の組成を正確
に反映しないなどの問題を生じる。また、膜の孔径を大
きくし過ぎると赤血球の目詰まりによる溶血の問題があ
る。
【0008】上記とは別に繊維状フィルターを用い臨床
検査用血清あるいは血漿分離技術が種々提案されてい
る。特開昭61−38608には体積ろ過効果を用いた
繊維質からなる固液分離器具が開示されている。この固
液分離器具は繊維質に血液を加圧して流すことにより、
血漿を得ることが出来る。しかし、圧力損失が大きく濾
材の抵抗が大きいため血漿を得るまでに数分要する。ま
た、血液中の蛋白質が繊維に吸着され、初期の得られた
血漿のタンパク質濃度が低下するという問題があるた
め、まだ実用化には至っていない。
【0009】特開平4−208856および特開平5−
196620には、ポリアクリルエステル誘導体および
ポリエチレングリコールとを含有するガラス繊維と、レ
クチン含浸層とを有する分離フィルター、そのフィルタ
ーを用いる血清または血漿成分の分離回収方法、および
その分離フィルターを用いる血清あるいは血漿分離器具
が開示されている。これらの方法および器具は遠心分離
を用いずに臨床検査用の血清あるいは血漿を採取できる
ものの、得られる血清あるいは血漿の量が100μl前
後と少ない上、分離に必要な時間も2分前後である。従
って、遠心分離に比べ時間が十分に短縮はされていると
はいえない。さらに、これらの技術は、分離材としてガ
ラス繊維を用いているため、ガラス繊維からの金属イオ
ンの溶出や血液成分の繊維への吸着のため、得られた血
漿中の電解質、リン、脂質の濃度が分離前の血液中の濃
度と大きく異なるという欠点を有する。このため、これ
らの技術も広く普及するには至っていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】以上説明した通り、臨
床検査用途として、小量の血液から短時間に、効率的、
安全に、血漿・血清成分を分離するフィルターとして充
分な性能を有するものは存在しないのが現状である。
【0011】
【課題を解決するための手段】本願発明は、簡便・迅速
・安全に血液から分離することが可能で、かつ組立性に
優れた血漿あるいは血清分離フィルターを提供すること
を目的とする。本願発明によれば、血液中の血球を損傷
することなく、血液中と同一の成分組成を有する血漿あ
るいは血清成分を得ることができる。本願発明は極細繊
維の集合体を用いて血液成分を分離することを提供す
る。本願発明の極細繊維の集合体による血漿あるいは血
清の分離のメカニズムは、極細繊維の集合体中を移動す
る赤血球と血漿あるいは血清の移動速度とに差を生じさ
せることである。この移動速度の差異は、極細繊維の素
材、平均繊雑直径および繊維間隙部の大きさ、血球分離
層の長さ、極細繊維の形態、血液の流動方向、繊維の表
面状態の改良等の因子を最適化することによって、達成
される。その結果、血液中の血漿あるいは血清が赤血球
などの血球成分から分離され、回収される。また、本願
発明のフィルターは圧力損失が低いために、血液が迅速
に処理され、得られた血漿あるいは血清の電解質やタン
パク質の濃度が血液を分離する前の濃度と実質的に同じ
である。従って、本願発明により、通常の遠心分離によ
って得られる血漿あるいは血清と同等の血漿あるいは血
清を得ることが可能である。以下に本発明を詳細に説明
する。
【0012】本願発明は、血漿分離フィルターに関す
る。本願発明のフィルターは、入口と出口とを有する容
器に極細繊維の集合体が装着されたフィルターであっ
て、該フィルターは、以下の特性を有する: (1)該装着された極細繊維の集合体の血液の流路径
(D)と血液の流路長(L)との比(L/D)が、0.
15〜6である;および、(2)該装着された極細繊維の
集合体の平均動水半径が0.5〜3.0μmである。
【0013】好適な実施態様においては、本願発明の血
漿分離フィルターは、赤血球濃度が6〜8×109個/
mlである新鮮牛血液を0.2〜0.4Kg/cm2の圧力
で分離し、分離開始から該装着された極細繊維の集合体
の間隙体積の10%に相当する量の血漿を回収したとき
に、(a)血漿中の赤血球濃度が分離前の血液中の赤血球
濃度に対して0.1%以下である;および(b) 実質的
に赤血球が溶血していない、という特性を有する。
【0014】さらに、本願発明のフィルターは、上記条
件で血漿を回収したときに、該分離された血漿中の電解
質濃度が、遠心分離で得られた血漿中の電解質濃度と比
較して90%以上保持されている、あるいは該分離され
た血漿中の蛋白質濃度が、遠心分離で得られた血漿中の
蛋白質濃度と比較して90%以上保持されているという
特性を有する。
【0015】好適な実施態様においては、前記極細繊維
がポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、または
ポリエチレンである。
【0016】さらに、好適な実施態様においては、前記
極細繊維の集合体が不織布である。
【0017】また、好適な実施態様においては、前記不
織布が単独であるいは積層されて前記容器に装着されて
おり、該装着された極細繊維の集合体の該不織布の面ま
たは積層された不織布の平面に対して、血液がほぼ平行
に流れるように構成されている。
【0018】さらに好適な実施態様においては、容器お
よび不織布が円盤状であり、入口が該円盤状の不織布の
円周部側面全面にわたって血液を供給し得るように構成
されており、かつ出口が、円盤状の不織布の中心部から
血漿が流出するように構成されている。
【0019】また、本願発明は、極細繊維に親水化剤が
固定されているフィルターに関する。
【0020】好適な実施態様においては、親水化剤が極
細繊維の表面に固定されている。
【0021】さらに好適な実施態様においては、前記親
水化剤がポリビニルピロリドンである。そして、このフ
ィルターは以下の特性: (1)該装着された極細繊維の集合体の血液の流路径
(D)と血液の流路長(L)との比(L/D)が、0.
15〜6である;および、(2)該装着された極細繊維の
集合体の平均動水半径が0.5〜3.0μmであるを有
している。
【0022】好適な実施態様においては、極細繊維に親
水化剤が固定されているフィルターは以下の特性:赤血
球濃度が6〜8×109個/mlである新鮮牛血液を
0.2〜0.4Kg/cm2の圧力で分離し、分離開始から
該装着された極細繊維の集合体の間隙体積の10%に相
当する量の血漿を回収したときに、(a)血漿中の赤血球
濃度が分離前の血液中の赤血球濃度に対して0.1%以
下である;および(b)実質的に赤血球が溶血していな
い;という特性を有する。
【0023】さらに、本願発明の極細繊維に親水化剤が
固定されているフィルターは、上記条件で血漿を回収し
たときに、該分離された血漿中の電解質濃度が、遠心分
離で得られた血漿中の電解質の濃度と比較して90%以
上保持されている、あるいは該分離された血漿中の蛋白
質濃度が、遠心分離した血漿中の蛋白質濃度と比較して
90%以上保持されているという特性を有する。
【0024】好適な実施態様においては、前記極細繊維
がポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、または
ポリエチレンである。
【0025】さらに、好適な実施態様においては、前記
極細繊維の集合体が不織布である。
【0026】また、好適な実施態様においては、前記不
織布が単独であるいは積層されて前記容器に装着されて
おり、該装着された極細繊維の集合体の該不織布の面ま
たは積層された不織布の平面に対して、血液がほぼ平行
に流れるように構成されている。
【0027】さらに好適な実施態様においては、容器お
よび不織布が円盤状であり、入口が該円盤状の不織布の
円周部側面全面にわたって血液を供給し得るように構成
されており、かつ出口が、円盤状の不織布の中心部から
血漿が流出するように構成されている。
【0028】また、本願発明は、上記の特性を有する血
漿分離フィルター、あるいは、親水化剤で極細繊維が固
定されている血漿分離フィルターを用いて血漿を分離す
る方法に関する。
【0029】好適な実施態様においては、不織布が単独
であるいは積層されて前記容器に装着されているフィル
ターが用いられる。
【0030】さらに好適な実施態様においては、処理す
る血液の線速度が、0.05〜50cm/分である。
【0031】さらに本願発明は、上記の特性を有する血
漿分離フィルター、あるいは、親水化剤で極細繊維が固
定されている血漿分離フィルターを有する血漿分離装置
に関する。
【0032】好適な実施態様においては、本願発明の装
置は、さらに、前記フィルターに血液を供給する血液供
給手段、該供給された血液から血漿を分離するために該
フィルターに供給された血液を加圧する加圧手段、およ
び分離された血漿を回収する血漿回収手段、を有する。
【0033】さらに好適な実施態様においては、本願発
明の装置は分離された血漿中の血球および/またはヘモ
グロビンを検出する血球および/またはヘモグロビン検
出手段、血球および/またはヘモグロビンが混入する血
漿を分別するための切替手段、および、分別された血球
および/またはヘモグロビンが混入する血漿を回収する
血球および/またはヘモグロビン混入血漿回収手段、を
有する。
【0034】好適な実施態様においては、本願発明の装
置には、前記フィルターが前記血液供給手段と血漿回収
手段との間に着脱自在に取り付けられている。
【0035】また、好適な実施態様においては、本願発
明の装置は、一定量の血液を供給する血液供給手段およ
び/または一定量の血漿を回収する血漿回収手段あるい
は該両方の手段を有する。
【0036】
【発明の実施の形態】本願発明で用いる血液は、一般
に、血球、血漿等の成分を含むものをいう。血液は、
人、ウシ、ヤギ、イヌ、ウサギなど由来を問わない。血
液はそのまま用いられ得、また抗凝固剤や赤血球凝集剤
などの添加剤を加えた血液も用いられ得る。さらに、血
液に添加剤を加えずに放置した場合、あるいは凝固剤を
添加した場合には、血液中のフィブリノーゲンがフィブ
リンに変化し、血液の凝固が進行するが、これらの凝固
性の血液もそのまま用いられ得る。さらに、遠心分離な
どの処理をした後に、さらに化学的処理した血液も用い
られ得る。
【0037】なお、本願発明でいう血漿とは、実質的に
血球成分を含まない血漿をいう。従って、厳密に血球成
分をまったく含有しない血漿に限定されない。さらに、
血液を凝固させた後に血液中の固形分を分離、除去した
場合、フィブリノーゲンを含有しない血清が得られる。
本願発明では、特に区別して使用しない場合は、用語
「血漿」は血清を含むものとする。
【0038】以下、血漿分離フィルター、血漿分離方法
および血漿分離装置の順で説明する。
【0039】(血漿分離フィルター)本願発明の血漿分
離フィルターは、入口と出口とを有する容器に極細繊維
の集合体が装着されており、この装着された極細繊維の
集合体の平均動水半径は、好ましくは0.5μm〜3.
0μmである。さらに好ましくは0.5〜2.5μmで
あり、特に好ましくは0.5〜2.0μmである。ここ
で、平均動水半径とは、装着された極細繊維の集合体の
空隙が非円形の場合、直径に代わる概念として表され、
以下のように定義される: 平均動水半径=管路の断面積/管の周の長さ =管中の流体の容積/液体に接する管の内表面積 =多孔質体の間隙体積/多孔質体の空孔の表面積 本願発明において、動水半径は下記の式(1)により計
算される: DH=R×(ρ−rm)/4rm (1) DH:装着された極細繊維の集合体の平均動水半径(μ
m) R :極細繊維の平均繊維直径(μm) ρ :極細繊維の密度(g/cm3) rm:装着された極細繊維の集合体の平均嵩密度(g/
cm3) 式(1)に示されるように、装着された極細繊維の集合
体の平均動水半径DHは、同じ素材の極細繊維を用いた
場合(つまり、ρが一定の場合)、Rおよびrmにより
決定される。
【0040】上記平均動水半径が3.0μmを超える場合
には、血球が繊維間隙を通過し易くなる。この場合は、
血液から白血球を除去する白血球除去フィルターまたは
白血球分離フィルターなどの従来のフィルターと同様の
効果を与えるにすぎない。白血球(一部血小板を含む)
のように特異的な粘着性をもつ成分のみが極細繊維の集
合体に吸着除去されることになる。
【0041】平均動水半径が0.5μm未満の場合、フィ
ルター内の繊維間隙、すなわち、血液の流路が狭くなり
すぎて血球成分が目詰まりを起こし易い。また、通過す
る液量を増加しようとしてフィルターに圧力をかけると
圧力損失が大きくなり、赤血球の溶血が生じ易くなる。
【0042】なお、平均動水半径0.5μm〜3.0μ
mの範囲においては、平均動水半径が小さいほど血漿成
分のように粒子径が小さいものの透過性に影響を与える
ことがない。他方、血球成分のような粒子径の大きいも
のはフィルター内を通過しにくくなる。従って、平均動
水半径は0.5μm〜2.8μmが好ましく、特に好ま
しくは、0.5μm〜2.0μmである。
【0043】さらに、本願発明の極細繊維の集合体の動
水半径は、血液の供給側から血漿の出口側に至る軸方向
にわたって一定であり得、また、極細繊維の集合体の部
分により変化させ得る。また、動水半径は、血液の入口
から通過液の出口に向かって徐々に小さくされ得る。こ
のことにより、血漿の出口付近での血球成分と血漿成分
との分離効率が高くされ得る。
【0044】なお、本願発明において、平均動水半径と
いうときは、入口と出口とを有する容器に装着された状
態の極細繊維の集合体であって、実質的に血漿分離に関
与し得る極細繊維の集合体における平均動水半径をい
う。従って、例えば、図2の空隙16を埋めるための基
材17として極細繊維の集合体を用いた場合(図3)
は、基材17の極細繊維の集合体は血漿分離に関与し得
ないので、この部分を除いた部分の平均動水半径をい
う。
【0045】このことを別の側面からみると、フィルタ
ーに装着された極細繊維の集合体を全体としてみたとき
に、上記好ましい範囲外の平均動水半径となる場合があ
ることを示している。しかし、この場合であっても血漿
を分離し得るということは、少なくとも装着された極細
繊維の集合体の一部が、上記好適な範囲の平均動水半径
を有することを示すことに他ならない。
【0046】本願発明においては、血漿分離用の極細繊
維の集合体の前に血液中の異物を取り除くプレフィルタ
ーを設置し得る。これらのプレフィルターの平均細孔径
や平均動水半径は当然、該極細繊維の集合体の平均動水
半径より大きくなるが、フィルター全体としての平均動
水半径にはプレフイルターの平均孔径は考慮せず、メイ
ンフィルター部分の平均動水半径を用いなければならな
い。
【0047】本願発明において、極細繊維の集合体は、
極細繊維が不規則に集合した状態をいう。この状態は、
例えば、綿状、不織布状、織布状、編布状の極細繊維
を、単独で、あるいは組み合わせて、例えば圧縮するこ
とにより得られ得る。フィルターに装着する極細繊維
は、成形性、加工性、取り扱いの容易さ、および成形後
のチャネリングや偏流の起こり難さの点から、好ましく
は、不織布状または綿状の極細繊維である。特に、不織
布状であることが好ましい。極細繊維の集合体をフィル
ターケースに充填したとき、均一性が保たれ易く、また
部分的な粗密が出来難く、血液の流れが均等になるから
である。
【0048】極細繊維の素材は特に限定されず、例え
ば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミドまたは
ポリエチレンなどが挙げられる。好ましくは、疎水性の
ポリプロピレンやポリエステル系の素材(例えば、ポリ
エチレンテレフタレート)が使用され得る。
【0049】これらの素材は血液と接触するとき、血漿
あるいは血清の成分を吸着したり、逆に血漿あるいは血
清中に素材の一部が溶出することがなく好ましい。従来
技術の項で述べたようにガラス繊維を用いる血漿あるい
は血清分離フィルターを用いると、ガラス繊維中から金
属イオンが溶出したり、リンや脂質がガラス繊維に吸着
するため、これらの物質を測定することが出来なかっ
た。
【0050】本願発明における血球分離層の長さは5m
m以上が好ましい。血球分離層の長さとは極細繊維の集
合体と血液とが接触するところから、血液(血漿あるい
は血清)が極細繊維の集合体と離れるところまでの長さ
をいう。前述したように、本願発明は、極細繊維の集合
体中における血液成分の移動速度の差を利用して、血球
と血漿とを分離している。血球分離層の入口側からの加
圧、あるいは出口側からの減圧、あるいは両方を同時に
行うことにより、血液を極細繊維の集合体中で移動させ
る。このとき、血球成分は、極細繊維の間隙を極細繊維
と衝突を繰り返す。粘着性をもつ白血球や血小板は極細
繊維に吸着し、赤血球は粘着性を持たないので、変形を
繰り返しながら移動する。他方、血漿あるいは血清は、
液性成分であるので、赤血球より早く極細繊維中を移動
し、出口に早く到達する。このとき、血球分離層の長さ
が5mm未満であると、血球と血漿の移動距離に充分な
差が生じず、両者の分離が不十分となるので好ましくな
い。血球分離層の長さは長いほど、血球と血漿の分離効
率は高くなるが、他方で、圧力損失が大きくなる、ある
いは必要な極細繊維の量や血液量が増加するという問題
が生じる。従って、必要とする血漿あるいは血清量、用
いる血液量、フィルターの大きさの限度等により、血液
分離層の長さは決定されるが、理論上の上限値は存在し
ない。
【0051】不織布を用いる場合、血液が不織布の平面
(積層された不織布の平面)に対して平行に流動するこ
とが好ましい。一般に不織布をフィルターとして用いる
場合、処理液体の流動方向は不織布の平面(積層された
不織布の平面)に対して垂直方向とされている。しか
し、本発明においては、不織布の面に対して平行に血液
を流動させることにより、血球と血漿成分の分離効率が
向上する。不織布の平面方向に対して平行に血液を流す
と、血液が入口から出口まで流れるときに、全流路長に
わたって、極細繊維の切れ目がなく、そのために、血液
の流れの均一性が向上するためと考えられるが、この理
由に限定されない。
【0052】極細繊維に親水化剤が固定されたものも、
本願発明のフィルターとして用いられ得る。親水化剤の
固定は、物理的あるいは化学的に行われ得る。親水化剤
を繊維表面に固定することにより、極細繊維と血液との
親和性が高まる。従って、血液を血球と血漿とに分離す
る際、圧力損失が低下し、分離速度が早められ得る。親
水化剤としては、血漿あるいは血清に混入しても分析を
妨害しないものであれば、特に限定されない。ポリビニ
ルピロリドンが好ましい。ポリビニルピロリドンは、分
子量が比較的大きいため溶出速度が比較的遅いものの、
血液中に溶出する。しかし、血液成分の分析に影響しな
い。ポリビニルピロリドンの固定化方法は特に限定され
なず、公知の方法が用いられ得る。例えばポリビニルピ
ロリドンの水溶液を極細繊維の集合体に浸した後に乾燥
することで容易に繊維表面に物理的に固定化できる。ま
た、このようなポリビニルピロリドンを物理的に表面に
固定化した極細繊維の集合体を加熱処理、放射線処理す
ることにより容易にポリビニルピロリドンどうしを架橋
させ得る。架橋することにより、血液中へのポリビニル
ピロリドンの溶出をより低く抑え得る。
【0053】加熱処理する場合、その方法は特に限定さ
れない。例えば、オートクレーブ処理のように加圧下に
おいて加熱する方法、あるいは恒温槽内に放置する方法
等が挙げられる。また、加熱処理の温度も特に限定され
ないが、70℃以上が好ましく、100℃以上がさらに
好ましい。加熱温度は高いほど架橋の効率が向上する。
上限温度は、用いる極細繊維の性質、ポリビニルピロリ
ドン自体の耐熱性などにより、一義的に決まらないが、
200℃以下が好ましく、150℃以下がさらに好まし
い。加熱時間は、架橋を充分に行うため、長い方が好ま
しいが、用いる極細繊維の性質、ポリビニルピロリドン
の変性の面から制限を受ける。一般的には、20分以上
2時間以下が好ましい。また、加熱による架橋は、極細
繊維が親水化剤水溶液に浸漬している場合(WET状
態)、あるいは浸漬後乾燥した場合(DRY状態)のい
ずれにおいても行われ得る。いずれの場合においても、
ポリビニルピロリドンが極細繊維に固定され得る。未反
応のポリビニルピロリドンは水で洗浄することにより取
り除かれ得る。
【0054】放射線を用いて親水化剤を固定する方法も
特に限定されない。例えば、γ線照射や電子線照射、コ
ロナ放電等が挙げられる。処理できる厚みや、操作性の
面からγ線照射が好ましい。照射量についても、ポリビ
ニルピロリドンが充分に架橋される照射量であれば特に
限定されない。放射線照射による極細繊維素材やポリビ
ニルピロリドン自体の変性を起こさない範囲として10
KGy以上、50KGy以下が好ましい。また、放射線
照射はWET状態あるいはDRY状態で行われ得る。未
反応のポリビニルピロリドンは、水洗浄等で取り除かれ
得る。
【0055】ポリビニルピロリドンは種々の分子量のも
のが入手され得る。血液中への溶出を避けるために、大
きい分子量のものを用いることが特に好ましい。
【0056】この親水化剤が固定された極細繊維の集合
体を用いてフィルターを作製する。
【0057】フィルターの作製は、綿状、不織布状、織
布状、編布状の極細繊維を、単独で、あるいは組み合わ
せて、積層し、圧縮することにより行い得る。
【0058】本願発明において、フィルターの容器の形
状は特に限定されない。直方体状、円盤状、円筒状、円
錐台状、扇型状などが挙げられる。これらのうち、直方
体状、円盤状あるいは扇形状のフィルターを用いて極細
繊維の集合体の面に対して平行に流す場合分離性能が向
上する。直方体状の場合、一方の端面から他方の端面に
血液を流す、あるいは、円盤状に形成し、その周囲面か
ら中心に向かって血液を流す。これらの形状の容器で不
織布を押圧することにより、フィルターをシールし得
る。従って、接着剤を用いる必要がなくなるので特に好
ましい。中でも、円盤状あるいは扇形状の場合には血液
が移動するに従って、血液の流路の断面積が徐々に小さ
くなるため、血液成分の横方向への移動のムラが小さく
なるのでより好ましい。特に円盤状のフィルターは操作
性に優れ、最も好ましい。なお、円盤状の容器の場合、
装着される不織布も円盤状となる。この円盤状の不織布
の円周部全面にわたって血液を供給し得るように血液の
入口を構成することが好ましい。例えば、円盤状の不織
布と円盤状の容器の円周部に隙間を設け、かかる隙間に
連通する1個または複数個の入口が容器の側面、上面あ
るいは下面に開口し得る。
【0059】本願発明のフィルターに用いる極細繊維の
平均繊維直径は、好ましくは、0.5〜3.5μmであ
り、さらに好ましくは0.5〜2.8μmであり、特に
好ましくは0.5〜2.0μmである。
【0060】上記の平均繊維直径を有する極細繊維は、
メルトブローなどの通常の極細繊維紡糸法により得られ
得る。
【0061】ここで、極細繊維の平均繊維直径は、極細
繊維の集合体を2000倍の電子顕微鏡で撮影した写真
の中からランダムに選択した50本の極細繊維の径をノ
ギスまたはスケールルーペで計測して求めた値の平均値
をいう。
【0062】繊維の平均繊維直径が3.5μmを超える
と、極細繊維の集合体の単位体積あたりの繊維の長さが
短くなる結果、繊維と繊維との交絡箇所が少なくなり、
繊維間隙が大きくなる。その結果、血球のように粒子径
の大きな成分も極細繊維の集合体を通過しやすくなり、
血球と血漿の分離が悪くなる。さらに白血球や血小板に
対する吸着性が低下する。
【0063】極細繊維の平均繊維直径が0.5μm未満
の場合には、単位体積あたりの繊維の長さが長くなる結
果、繊維と繊維との交絡箇所が多くなり繊維間隙が小さ
くなる。その結果、血球がフィルターに詰まり易くな
る。さらに極細繊維の集合体の圧力損失が大きくなるた
めに赤血球の溶血が起こり易くなる。
【0064】本願発明に用いられる装着された極細繊維
の集合体の平均嵩密度は、好ましくは0.15〜0.6
0g/cm3であり、さらに好ましくは0.18〜0.
50g/cm3であり、特に好ましくは0.25〜0.
40g/cm3である。
【0065】ここで、極細繊維の集合体の平均嵩密度と
は、極細繊維の集合体の重量を極細繊維の集合体の容積
で除した値をいう。
【0066】平均嵩密度が0.15g/cm3より小さ
い場合、極細繊維の集合体の紡糸直後の平均嵩密度(た
とえばメルトブロー紡糸法の場合、0.08〜0.10
g/cm3)との差が小さいため、極細繊維の集合体の
圧縮率が小さくなる。従って、装着された極細繊維の集
合体において部分的に疎密が発生し易く、血液の通過速
度にむらが生じ得る。また、平均的に繊維間隙が大きい
ため、血液と血漿との分離が不十分になる。
【0067】装着された極細繊維の集合体の平均嵩密度
が0.60g/cm3より大きい場合、極細繊維の集合
体の製造に特殊な加熱圧縮などの工程を必要とし、圧縮
加工工程が複雑になる。さらに、装着された極細繊維の
集合体の繊維間隙が小さくなるために血球成分がフィル
ターに目詰まりを起こし易く、そして、極細繊維の集合
体の圧力損失が大きくなるために、赤血球の溶血が起こ
り易くなる。
【0068】なお、平均嵩密度0.15〜0.60g/
cm3の範囲において、平均嵩密度を大きくすることに
より、極細繊維の集合体の均一度は、より向上する。他
方、加工性は低下するので、好ましくは0.18〜0.
50g/cm3であり、特に好ましくは0.25〜0.
40g/cm3である。
【0069】本願発明のフィルターに装着される極細繊
維の集合体の嵩密度は部分的に変化させ得る。例えば、
フィルターの容器の入口から出口に向かって、装着され
た極細繊維の集合体の嵩密度を徐々に大きくし得る。こ
のようにすると、血液成分が出口に向かって移動するに
従って血球と血漿との分離性が向上される。
【0070】本願発明の装置のフィルターに装着される
極細繊維の集合体の血液成分の流路径(D)に対する流
路長(L)の比(L/D)は、0.15〜6である。好
ましくは0.25〜4であり、特に好ましくは0.5〜
2である。
【0071】ここで、血液成分の流路長(L)とは、血
液が極細繊維に接触してから、血漿が極細繊維を離脱す
るまでの極細繊維の集合体内部の直線距離(通常、極細
繊維の集合体の長さ)をいう。また、血液成分の流路径
(D)とは、流路長の方向と垂直方向をなす血液入口部
の極細繊維の集合体表面の断面積の円相当直径をいう。
【0072】円相当直径は、断面積(A)から、次式
(2)により求める。
【0073】D=2(A/π)1/2 (2) なお、極細繊維の集合体表面は、厳密には極細繊維の折
れ曲がりに起因する小さな凸凹を有するが、上記断面積
はこの凸凹を無視して、平面として算出する。また、極
細繊維の折れ曲がりに起因する凸凹以外に、極細繊維の
集合体の表面加工などにより形成された大きな凸凹を有
する場合は、上記断面積は、凸凹部を平均化した平面と
して算出する。
【0074】L/Dが0.15より小さい場合、流路が
短すぎて血液中の各成分の移動距離が短くなる。さら
に、断面積が大きいため血液中の各成分の移動速度が横
方向にムラを生じる。従って、血球成分と血漿成分との
分離が不十分になる。
【0075】L/Dが6を超える場合、分離効率は向上
するが、移動距離が長くなるために圧力損失が高くな
り、赤血球の溶血が生じ得る。
【0076】本願発明のフィルターは、以下の特性を有
する。
【0077】赤血球濃度が6〜8×109個/mlであ
る新鮮牛血液を0.2〜0.4Kg/cm2の圧力で分離
し、分離開始から該装着された極細繊維の集合体の間隙
体積の10%に相当する量の血漿を回収したときに、
(a)血漿中の赤血球濃度が分離前の血液中の赤血球濃度
に対して0.1%以下である;および(b)実質的に赤血
球が溶血していない。
【0078】さらに、分離された血漿中の電解質濃度
が、遠心分離で得られた血漿中の電解質濃度と比較して
90%以上保持されている。
【0079】本願発明において、血漿分離フィルターに
て分離された血漿中の電解質濃度が、通常の遠心分離し
て得られた血漿中の電解質濃度と比較して90%以上保
持されていることが好ましい。つまり、フィルター分離
後の電解質濃度の減少が遠心分離した場合と比較して1
0%以内であることが好ましい。5%以内であれば、よ
り好ましい。血漿中の電解質濃度の減少が10%を越え
ると、生化学診断の信頼性が低くなり好ましくない。生
化学検査の測定精度からみて、両者の差が10%以内で
あれば、事実上を問題を生じるレベルでなく、5%以内
であればほとんど問題はない。ここで、血漿とは、採血
で得られた血液に抗凝固剤を添加した後、遠心分離して
得られた上清いう。なお、遠心分離は、1000G、10分
間行う。
【0080】本願発明においては、血漿分離フィルター
にて分離された血漿の採取初期および採取終了時の蛋白
質濃度が、90%以上保持されていることが好ましい。
つまり、フィルター分離後の蛋白質濃度の減少が遠心分
離した場合と比較して10%以内であることが好まし
い。5%以内であれば、より好ましい。血漿中の蛋白質
濃度の減少が10%を越えると、生化学診断の信頼性が
低下すると共に、採取初期と採取終了時の値が異なり正
確な診断が出来なくなることがある。また、タンパク質
濃度の差が10%を越えると、血漿タンパク質の組成が
大きく変動する事があり、病状の診断に用いることが出
来なくなることがあり好ましくない。通常10%以内の
差であれば、臨床診断上、大きな問題はなく、5%以内
の差であれば測定の誤差範囲内におさまるので好まし
い。
【0081】本願発明のフィルターの容器の材質は特に
限定されず、例えば、金属、ガラス、プラスチック類、
たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポ
リカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ABS
樹脂などが挙げられる。内部の状態を観察する場合に
は、透明、半透明の材質を選択すればよい。加工性、割
れにくさ、軽量の点からはプラスチック類が好ましい。
【0082】以下、本願発明の血漿分離装置に用いられ
るフィルターを、図面を用いて説明する。本願発明のフ
ィルターは、最も単純には、図1に示される。図1は、
入口12、および出口13を有する容器15に、円筒形
の扁平の極細繊維の集合体14が装着されたフィルター
11を示す図である。このフィルター11においては、
極細繊維が圧縮されて、容器15の内周部表面と極細繊
維の集合体14の外周部表面との間が適当な空隙16を
有するように装着されている。この装着された極細繊維
の集合体14の外周部は、血液が通過し得る適当な孔を
有する、例えばプラスチックの板で構成され得る。円筒
形に装着された極細繊維の集合体14の外周部の上部に
ある容器15の入口12から血液を供給すると、空隙1
6を通って、血液が装着された極細繊維の集合体14に
均一に供給され、極細繊維の集合体14の外周部から中
心部に向かって血液が流れ、その間に血漿と血球とに分
離され、容器15の中心部にある出口13から血漿が回
収される。以下、単に、極細繊維の集合体14というと
きは、フィルターに装着された極細繊維の集合体を意味
する。
【0083】別の実施態様として、図2のフィルター1
1がある。このフィルター11は、円筒形の容器15に
装着された円筒形の極細繊維の集合体14を有する。容
器15の入口12から血液を供給し、極細繊維の集合体
14で分離された血漿が、容器15の出口13から回収
される。入口12と出口13は、それぞれ、任意の位置
に配置され得る。
【0084】図1のフィルターと同様に、図2の円筒形
の極細繊維の集合体14においても、入口12の近傍
に、空隙16を有し得る。空隙16は、血液の供給、加
圧を均等に行う場合等に配置され得る。
【0085】図3のフィルター11は、図2のフィルタ
ー11の空隙16に、適当な基材17を配置したフィル
ターである。配置される基材17としては、極細繊維の
集合体14の繊維間隙よりも大きな繊維間隙を有する基
材であり、血液中の全成分を通過させ得るものであれ
ば、どのようなものでも使用され得る。この基材は、例
えば、板状、紙状、繊維状等の形状の濾材であり得る。
図1のフィルターにおいても、空隙16には、基材17
が配置され得る。
【0086】図4のフィルター11は、開口部18と出
口13を有する容器15に、極細繊維の集合体14が装
着されたフィルターである。
【0087】フィルター11は、以下に述べる血液の供
給手段および/または血漿回収手段とに着脱自在に取り
付けられ得る。また、別の実施態様として、図5(a)
および図5(b)に例示すように、容器15は、入口1
2または開口部18を有する部分(図5の15a)と、
極細繊維の集合体14を有する部分と、出口13を有す
る部分(図5の15b)との3部分とから構成され、各
部分が着脱自在に構成され得る。この構成により、装着
される極細繊維の集合体の部分のみが交換され得る。交
換され得る極細繊維の集合体部分は、血液透過可能な膜
などで被覆され得、着脱自在な形で嵌合可能なカセット
の形態とされ得る。着脱自在な装着手段としては、嵌
合、螺合などの手段、マグネットによる手段などがあり
得る。これらの着脱は自動的に行われ得る。
【0088】上述のように、本願発明のフィルターが極
細繊維を積層して作製される場合には、血液を流す方向
は、フィルターは積層面に対してほぼ垂直か、あるいは
積層面に対してほぼ平行であり得る。前者の場合は柱状
あるいは錘状の形状が適している。例えば円柱状のフィ
ルター(図2〜4)の上部から下部に向かって血液を流
す場合、あるいは頂点部分を円錐状に切除した円錐台状
のフィルターを用いて円錐の底面から頂点方向に向かっ
て血液を流す場合等が該当する。後者の場合は、円盤状
に積層したフィルター(例えば、図1)を用いて、積層
面に平行に周囲から中心に向かって、あるいは平板状に
積層したフィルターの一方の側面から対抗する側面方向
に向かって、血液を流す場合が該当する。円錐台状、あ
るいは円盤状のフィルターは、血液が移動するに従っ
て、血液の流路の断面積が徐々に小さくなるため、血液
成分の移動速度が速くなり、横方向への血液成分の移動
のムラが小さくなるので、血液の分離効率が向上する。
【0089】本願発明のフィルターは複数個連結され得
る。直列に連結すると分離能が向上する。並列に連結す
ると処理する血液量が増大する。
【0090】さらに、フィルターと血液のサンプリング
容器とを結合させて使用され得る。このようなサンプリ
ング容器と結合したフィルターは、一定量の血液を採取
してフィルターに供給する手段および使用したフィルタ
ーを自動的に交換する手段を有する自動分析装置に用い
られ得る。 (血漿分離方法)血漿を分離する方法は、出口における
圧力損失が0.03〜5kg/cm2である。この値
は、フィルターの形状、血液の処理速度に依存する。
【0091】圧力損失が0.03kg/cm2より小さ
い場合には、極細繊維の集合体内の血液に対する負荷が
小さい。従って、疎水性が高い極細繊維を使用した場合
には血液を極細繊維の集合体内に送ることができない、
あるいは処理に時間がかかりすぎるという問題がある。
また、極細繊維の集合体内の血球成分と血漿成分との移
動速度に差が生じず、血漿の分離が不十分となる。
【0092】圧力損失が5kg/cm2より大きい場
合、血液の流速が大きすぎる。従って、血漿と血球との
通過時間の差が小さいため、血漿が分離されないことが
ある。さらに、圧力がかかるために、赤血球が溶血した
り、フィルターあるいは装置が損傷する場合がある。
【0093】上記範囲内では圧力を大きくすると得られ
る血漿量が多くなり、血漿を得る時間が短縮される。他
方で、溶血の可能性があるので、0.05〜3kg/c
2の範囲が好ましい。0.1〜1kg/cm2の範囲が
より好ましい。
【0094】本願発明の血漿分離方法においては、処理
血液量と極細繊維の総面積との割合は、特に限定されな
いが、血液1mlあたり、0.1〜3m2が好ましい。
処理血液量と極細繊維の総面積との割合血液1mlあた
り、0.1m2より小さい場合、血漿の分離効率が悪く
なる。処理血液量と極細繊維の総面積との割合が血液1
mlあたり3m2より大きい場合は、血液量が少なすぎ
るため、血液の送液および血漿の回収が困難になる。さ
らに、極細繊維に血漿蛋白が吸着される結果、血漿成分
中の蛋白成分が、元の血液中の蛋白成分を正確に反映し
ない場合が生じる。さらに、圧力損失も起こりやすくな
る。
【0095】上記範囲内では極細繊維の表面積を大きく
すると得られる血漿量が多くなる。他方で、繊維に吸着
される蛋白量も増加する。従って、上記割合は、0.2
〜2m2の範囲が好ましい。0.3〜1.5m2の範囲が
より好ましい。
【0096】本願発明の血漿分離方法においては、血液
の処理の線速度は、特に限定されるわけではないが、
0.05から50cm/分程度である。線速度が、0.
05cm/分より小さいと、極細繊維の集合体中を血液
成分が通過する時間が長くなる。その結果、分離した血
漿と血球が移動中に拡散して、分離が不十分になる。
【0097】処理線速度が50cm/分より大きいと、
圧力損失が大きくなり、赤血球が溶血する。
【0098】なお、円盤状(例えば図1)の外周部から
中心部に向かって送液する場合、あるいは円錐状の容器
を用いて、円錐の頂点方向に向かって送液する場合に
は、場所により線速度が異なる。このような場合の線速
度は、血液が極細繊維と接触してから離れるまでの平均
処理線速度をいう。
【0099】本願発明の血漿分離方法においては、処理
する血液量(B)と極細繊維の集合体の間隙体積(A)
との比(B/A)は、0.2以上であることが好まし
い。比が0.2より小さい(血液の容量が間隙体積の2
0%より小さい)場合、血液量が少なすぎるため、血液
の送液および血漿の回収が困難になる。さらに、極細繊
維に血漿蛋白が吸着される結果、血漿成分中の蛋白成分
が、元の血液中の蛋白成分を正確に反映しない場合が生
じる。比は0.5以上が好ましく、0.7以上が特に好
ましい。
【0100】本願発明の血漿分離方法においては、血液
を供給、加圧する方法として、ピストン、加圧空気など
を用い得る。また血液成分とは反応しない液体、例えば
混合を防ぐために粘度の高い液体、パラフィン、グリセ
リンなどを用いて押し出す方法がある。加圧空気あるい
はパラフィンなどを用いる方法は、処理する血液量が極
細繊維の集合体の間隙体積よりも少ない容量である場合
に適する。しかし、加圧空気の場合は、極細繊維の集合
体中の間隙で生じる表面張力のために極細繊維の集合体
中の血液が流動できなくなる場合がある。これに対し
て、パラフィンあるいはグリセリンを用いる方法は、表
面張力の問題が生じないので、好ましい。
【0101】(血漿分離装置)本願発明の血漿分離装置
は、血漿分離フィルターを含み、好ましくは該フィルタ
ーに血液を供給する血液供給手段、供給された血液を加
圧する加圧手段、および分離された血漿を回収する血漿
回収手段を含む。さらに、分離された血漿中の血球およ
び/またはヘモグロビンを検出する検出手段、血球およ
び/またはヘモグロビンが混入する血漿を分別するため
の切替手段、血球および/またはヘモグロビンが混入す
る血漿を回収する血球および/またはヘモグロビン含有
血漿回収手段、血球および/またはヘモグロビンが混入
しないことが確認された血漿を回収する血漿回収手段を
含み得る。さらに、上記血液供給手段は一定量の血液を
供給する血液供給手段であり得、血漿回収手段は一定量
の血漿を回収する血漿回収手段であり得る。以下に上記
の各手段について説明する。
【0102】<血液供給手段>本願発明の装置におい
て、血液をフィルターに供給する手段としては、既知の
手段が使用され得る。例えば、ポンプを用いて血液を供
給する手段、血液の入った容器を加圧し、その圧力を利
用して血液を供給する手段、フィルターの内部を減圧
し、血液保存容器から圧力差を利用して血液を供給する
手段(例えば、真空ポンプを用いる方法、あるいは図6
(b)において、ピストンを上方に移動してシリンダー
内部を減圧し、入口12より血液を導く方法)などが挙
げられる。もちろん、ピペットなどの手動により血液を
供給する手段も含まれ得る。血液をフィルターに供給す
る手段は、フィルターの入口に接続され得る。接続方法
は、血液が漏出しない方法であればいかなる方法をも使
用され得る。例えば、血液供給手段の血液の出口と、フ
ィルターの入口とが嵌合、継合、あるいは螺合し得る構
成とすることにより接続され得る。
【0103】さらに、血液供給手段の出口を密閉し、フ
ィルターの入口に穿孔可能な手段を配置する構成とし得
る。逆に、フィルターの入口を密閉し、血液供給手段に
穿孔可能な手段を配置する構成とし得る。穿孔可能な手
段としては、中空で管状のもの、例えば、注射針などが
挙げられる。いずれの場合も、穿孔により血液がフィル
ターに供給され得るようになる。このような穿孔可能な
接続手段は、血液供給の自動化、血液との接触を避ける
場合に特に有効である。近年用いられている真空採血管
で採取した血液から血漿を分離する場合は、血液の入っ
た真空採血管を直接、フィルターの密閉された入口に穿
孔する。フィルターの容器内を減圧することにより、血
液がフィルターに装着された極細繊維の集合体に供給さ
れる。血液が供給されたら真空採血管を引き抜き、フィ
ルターの入口側から加圧するという装置も可能である。
【0104】血液の供給手段は、一定量の血液を供給す
る供給手段であり得る。例えば、ローラーポンプ、シリ
ンダーポンプ等の一定量の血液供給装置が用いられ得
る。血液が一定流量供給されたときに、供給手段を停止
させ得る。たとえば、血液の貯留装置にセンサーを設
け、血液貯留槽の血液の減少量を測定して、供給手段を
停止させ得る。
【0105】本願発明の装置により処理される血液成分
の容量(上記供給手段による血液の供給量)は、好まし
くは、フィルターに装着された極細繊維の集合体の間隙
体積の20%以上であり、さらに好ましくは50%以上であ
り、特に好ましくは70%以上である。20%未満である場
合、装着された極細繊維の集合体内に血液を送ることが
困難となり得、血漿成分の一部が間隙中に残留したまま
回収されないおそれがある。ここで、装着された極細繊
維の集合体の間隙体積は、装着された極細繊維の集合体
の体積−(装着された極細繊維の集合体の総重量/装着
された極細繊維の密度)として定義される。
【0106】<加圧手段>装着された極細繊維の集合体
に保持または供給された血液は、この装着された極細繊
維の集合体の血液側を加圧および/または透過液側を減
圧することにより、この装着された極細繊維の集合体内
を透過液側に移動し、血漿と血球との移動速度の差を利
用して血漿と血球とに分離される。このとき、血球成分
である白血球および血小板は装着された極細繊維の集合
体に吸着される。加圧および減圧する方法は特に限定さ
れない。ポンプによる加圧、気体例えば加圧空気による
加圧、血液成分と反応および相溶しない液体(例えば、
パラフィン、グリセリンなど)を加圧して押し出す方
法、あるいは真空ポンプやシリンダーを用いて吸引する
方法などが挙げられる。血液成分と相溶しないパラフィ
ンなどで押し出す方法は、特に血液の量が少ないときに
有効であり、血液成分の表面張力による流動性の問題を
生じることがないので好ましい。
【0107】加圧手段を有する分離装置の一例を図6
(a)および図6(b)に示す。図6(a)の装置で
は、フィルターの開口部18から容器15の内壁13と
気密に密接する密接手段22を有する摺動可能な加圧手
段24を挿入して、開口部18から供給した血液を加圧
する。加圧された血液は、極細繊維の集合体14を通過
する間に分離され、出口13から血漿が回収される。
【0108】図6(b)の装置では、フィルター11の
容器15の内壁19と気密に密接する密接手段22を有
する加圧手段24が摺動可能にとりつけらている。この
装置は、入口12に弁20が設けられている。そして加
圧手段24の上方への移動に伴い、内部が減圧されて弁
20が開き、血液が入口12から供給される。さらに加
圧手段24の下方への移動に伴い、入口12の弁20を
閉じると同時に血液が加圧され、血漿が分離される。こ
の手順を繰り返すことにより、連続的に血漿が分離され
得る。この場合、ピストンへの加圧手段としては公知の
手段が用いられ得る。
【0109】本願発明の装置においては、血液供給手段
が加圧手段としても使用され得る。図7はその一例を示
す図である。図7では、フィルター11の入口12と、
血液供給手段25とが接続されている装置である。血液
供給手段25は、その内壁23と気密に密接する密接手
段22とを有する部材24が配置されており、内部に血
液26が貯留されている。部材24を下に押し下げる
と、血液26がフィルター11に供給され、加圧され
て、血漿が分離される。従って、血液供給手段25は、
同時に加圧手段24を有し、加圧手段としても使用され
得る。例えば、注射用シリンジが、具体的な例である。
【0110】加圧あるいは減圧手段を用いる場合、血漿
および血球の移動速度を調節するため、加圧および減圧
の程度を調整する圧力調整手段が備えられ得る。装着さ
れた極細繊維の集合体の前後にポンプを配設し、溶血が
起きないように圧力を調節し得る。この場合、特に装着
された極細繊維の集合体を通過する前の血液成分の圧力
と、通過後の血漿成分の圧力とがそれぞれ独立して調節
され得る。このとき、加圧および減圧の程度はコンピュ
ーターなどで自動制御され得る。
【0111】上記加圧および/または減圧による圧力損
失(フィルターの入口と出口の圧力差)は、極細繊維の
集合体の形状や血液の処理速度に依存するが、好ましく
は0.03〜5kg/cm2であり、さらに好ましくは0.05〜3kg
/cm2であり、特に好ましくは0.1〜1kg/cm2である。差
圧が0.03kg/cm2未満の場合、処理時間が長くなったり、
血漿の分離が不十分となるおそれがある。このとき、疎
水性の高い極細繊維を使用していると、極細繊維の集合
体の中に血液を送ることが困難となり得る。差圧が5kg
/cm2を超える場合、血漿が装着された極細繊維の集合体
内を通過する時間と、血球が装着された極細繊維の集合
体内を通過する時間との差が短くなるため、血球が混入
し、血漿の回収が困難となり得る。さらに、赤血球が溶
血したり、装置や装着された極細繊維の集合体に損傷が
生じるおそれがある。
【0112】<回収手段>極細繊維の集合体によって分
離され、透過液側に移動した血漿は、検査などに使用す
るために回収される。回収する手段としては、既知の手
段をとり得る。例えば、フィルター内で血液に付与され
た差圧をそのまま利用して、あるいはポンプなどで透過
液を吸い込んでまたは透過液を送り出して、分離された
血漿が試料容器に回収され得る。分離された血漿は、フ
ィルターの出口の直下において、試料容器に回収され得
る。あるいは、中空の管を出口に接続して試料容器に導
入し得る。フィルターの出口と回収手段とを接続する場
合、上記の血液の供給手段とフィルターとの接続手段と
同様の手段が用いられ得る。
【0113】試料容器などに蓄えられた血漿は検査試料
として供される。試料容器としては、チューブ、バイア
ルなどが挙げられ、その材質は得られた血漿の保存に影
響がなければいずれの材料をも使用し得る。例えば、上
記フィルターに使用する容器と同様の材料が使用され得
る。
【0114】極細繊維の集合体による血漿の分離に際し
て、時間経過とともに遅れて血球が透過してくるため、
分離された血漿中に血球が混入することがある。さらに
操作条件によっては赤血球が装着された極細繊維の集合
体中で破壊され、溶出したヘモグロビンが透過液中に混
入することがある。臨床検査などのために血漿を分離す
る際、得られる血漿に血球やヘモグロビンが混入するこ
とは避けなければならない。透過液の血漿中に血球やヘ
モグロビンがある一定量以上に混入すると、得られた血
漿は臨床検査試料として使用し得ない。
【0115】上記の問題点を解決するため、血球を含有
しない最初の透過液(血漿)をあらかじめ選択された量
で回収し得る。例えば、本願明細書中に記載される条件
下において、装着された極細繊維の集合体の間隙体積の
10%に相当する容量の血漿を回収することにより、実質
的に血球を含有しない血漿が得られ得る。このような定
量は、例えば、上記血液の供給量の測定と同様に、液量
計を血漿回収容器に配置して行い得る。液量は、例えば
センサーで検出することにより測定され得る。血漿が一
定量回収された後に、血漿回収容器を移動させて同一の
血漿サンプルをいくつかに分取し得る。この移動は手動
または自動により行われ得る。この場合、いったん血漿
をプールして一定量を分注する手段が使用され得る。さ
らに、一定量の血漿が得られたときに、血液供給手段、
加圧手段を停止するように装置を構成し得る。これらの
制御はコンピューターを用いて行われ得る。あるいは、
一定量を回収した後には、下記で説明する切替手段によ
り、透過してくる血漿を廃棄または他の容器に回収し得
るように配置し得る。なお、以下に述べる血球および/
またはヘモグロビン検出手段を設けるときは、血漿定量
装置は、血球および/またはヘモグロビン含有試料を回
収する容器への出口付近に、あるいは血漿試料容器内に
配置することが好ましい。
【0116】<血球および/またはヘモグロビン検出手
段>上記のように血漿に血球などが混入すると検査試料
として使用し得ない。従って、本願発明の装置は、好ま
しくは、透過液側に血球および/またはヘモグロビンを
検出する血球および/またはヘモグロビン検出手段を配
置し得る。透過液中に血球および/またはヘモグロビン
が検出された際には、加圧、血液供給を停止し、血球お
よび/またはヘモグロビンが混入する血漿を回収または
廃棄する回収手段にラインを切替えるようにし得る。こ
のことにより、血球やヘモグロビンの混入がなく、臨床
検査試料として有用な血漿が確実に得られ得る。なお、
血球が検出された血漿、または遅れて透過した血球成分
は生体または被験体に戻し得る。
【0117】血漿透過液中の血球および/またはヘモグ
ロビン(血球および/またはヘモグロビン)の検出手段
としては、光学的手段、化学反応による発色手段などが
挙げられる。簡便には、血球および/またはヘモグロビ
ンは直接、光学的手段により検出され得る。例えば、血
漿中に血球が混入すると光透過性が低下する、あるい
は、ヘモグロビンが混入すると血漿が赤色化するという
現象がみられる。いずれの場合も光学的手段により検出
され得る。例えば、光学方式により一定値以上の漏血を
検出する漏血センサーなどが使用され得る。漏血センサ
ーとは、溶液中の血球やヘモグロビンを検出するセンサ
ーであり、例えば、分光光度計により溶液の一定波長の
吸光度または透過度を測定する。具体的には、溶液中の
血球による濁度(例えば、波長630nmの吸光度)、ある
いは、ヘモグロビンの吸光度(例えば、波長430nmの吸
光度)を測定することにより、溶液中の血球および/ま
たはヘモグロビンの漏出が検出され得る。
【0118】化学反応による発色手段としては、血球お
よび/またはヘモグロビンとの化学反応による発色を利
用する方法がある。この発色は光学的手段により検出し
得る。例えば、ヘモグロビンのペルオキシダーゼ様作用
を利用する方法が挙げられる。適切な過酸化物および色
原体を選択することにより、感度が調節され得る。
【0119】本願発明の目的を考慮すれば、血球および
/またはヘモグロビンの検出が可能であれば、光学的手
段以外の手段が用いられ得る。例えば、電気的細胞計数
器であるセルカウンターにより血球の検出を行い得る。
【0120】血球および/またはヘモグロビン検出手段
のうち、光学的手段は、血漿の流路である出口から回収
手段までの間に配置され得る。例えば、センサーを外部
から挿入し、直接血漿と接触させて血球および/または
ヘモグロビンを検出し得る。あるいは、血漿の流路であ
る配管を挟むように配置し、一方から光、レーザーなど
を発光させ、他方でこの発光光を受け、血球および/ま
たはヘモグロビンを検出し得る。この場合、配管は光が
透過できる透明性であるものが好ましい。光透過性が良
好でない配管を用いるときは、配管のみの光透過性を予
め測定しておけばよい。また、配管に微細なサンプリン
グによる検出手段を設け、血漿を採取して上記の発色試
薬、例えば試験紙で血球および/またはヘモグロビンの
混入が検出され得る。血球および/またはヘモグロビン
を検出したとき、切替手段により血球および/またはヘ
モグロビン含有血漿を廃棄または回収し得る。さらに、
この血球および/またはヘモグロビン検出手段は、血液
供給手段、加圧手段、あるいは下記の切替手段と連結さ
れ得、供給または加圧の停止、切替手段による廃棄また
は回収などの処理と連動され得る。
【0121】血漿は、一般に、溶血がない場合でも若干
のヘモグロビンを含有しており、その濃度には個体差が
ある。また、近年多く使われている真空採血管を用いた
採血では、採血時に多少の溶血が起きることが知られて
いる。しかし、この程度の低濃度で血漿中にヘモグロビ
ンが含まれていても、臨床検査データにさほど影響を与
えないことがわかっている。従って、血漿中に含まれる
血球あるいはヘモグロビン濃度には許容範囲があり、そ
の範囲内で血球および/またはヘモグロビンが含まれて
いても特に問題がない。例えば、得られた血漿中の赤血
球濃度は、分離前の血液中の赤血球濃度に対して0.1%
以下であれば、許容され得る。
【0122】従って、本願発明の装置においては、血球
および/またはヘモグロビン検出手段が、一定の濃度を
越えた血球および/またはヘモグロビン濃度を検出した
ときに、切替手段を作動させて、血球および/またはヘ
モグロビンが多く混入した血漿を廃棄し、あるいは血液
の供給または加圧の停止するように、接続され得る。
【0123】<切替手段>血球および/またはヘモグロ
ビンが混入する血漿を分別するための切替手段は、出口
以降に配置される。この切替手段としては、切替コッ
ク、切替バルブなどが挙げられる。切替手段は自動また
は手動のいずれをも採用し得る。自動の場合、血漿が切
替手段を通過する前の位置に、血球および/またはヘモ
グロビン検出手段を配置させる。切替手段は血球および
/またはヘモグロビン検出手段と連結される。血漿中の
血球および/またはヘモグロビンが予め設定した値を超
えた時に、血球および/またはヘモグロビン検出手段か
らのシグナルにより切替手段が作動し、血漿を回収する
ラインから血球および/またはヘモグロビンが混入する
血漿を回収または廃棄するラインに切り替える。回収、
廃棄手段としては、上記の血漿回収手段が用いられ得
る。
【0124】(作用)本願発明における血球と血漿の分
離機構は、主に両成分の極細繊維の集合体中における移
動速度の差を利用したものである。極細繊維の集合体中
における移動速度は、血漿成分のほうが血球成分よりも
大きい。従って、極細繊維の集合体に血液を供給し、圧
力をかけることにより、血漿が血球より先に移動し、一
定の距離を移動した後、両者は完全に分離する。従っ
て、まず、血漿が流出し、ついで血球が流出するので、
この時間差を利用して血漿を回収し得る。
【0125】上記のように、本願発明は、血液成分の比
重の差を利用する遠心分離法、あるいは血液成分のサイ
ズの差を利用する膜分離法とは根本的に異なる。さら
に、極細繊維に対する血液成分の吸着性のみを利用する
白血球の分離法ともまた異なる。
【0126】
【発明の効果】本願発明の血漿分離装置は、血漿と血球
の移動速度の差を利用している。従って、得られる血漿
成分は希釈を受けたり、成分が変わることなく、遠心分
離から得られる血漿となんら変わることがない。さら
に、透過液側に血球および/またはヘモグロビンの検出
装置と、これに連動したコックを備えることにより、試
料採取用血漿に血球および/またはヘモグロビンが混入
することが防止される。このように本願発明の装置によ
れば、血球および/またはヘモグロビンの混入がない血
漿試料を効率的、簡便、迅速かつ安全に得ることができ
る。従って、本願発明の装置は、臨床検査用など、少量
の血液を短時間で血漿または血清に分離することが要求
される分野において有用である。また、本願発明の血漿
分離装置は、従来人手に頼っていた臨床検査用血漿試料
の採取の自動化を可能とし、臨床検査の自動化、迅速
化、安全性の向上に対して大きく寄与し得る。
【0127】以下、実施例をあげて本願発明を具体的に
説明するが、本願発明はこれに限定されるものではな
い。
【0128】
【実施例】実施例においては、極細繊維の集合体とし
て、通常のメルトブロー法により紡糸したポリエチレン
テレフタレート製の極細繊維(密度:1.38g/cm
3)からなる不織布を使用した。牛血液として、採血後
8時間以内の新鮮牛血液を用いたが、採血直後に血液の
凝固を防止するために、抗凝固剤(ACD:クエン酸デ
キストロース)を加えた。この牛血液中の赤血球濃度は
7.2×109個/ml、白血球濃度は6.8×106
/ml、血小板濃度は2.1×108個/mlであっ
た。
【0129】血漿分離フィルターの性能を、血漿中の混
入血球(赤血球、白血球、血小板)濃度、赤血球の溶血
の有無、並びに、血液成分(血清アミラーゼ、総コレス
テロール、中性脂肪、尿素窒素、血糖、総蛋白質濃度、
アルブミン)を分析して、評価した。なお、上記の牛血
液を遠心分離して得た血漿を比較の対象とした。
【0130】血漿中の混入血球濃度は、コールターカウ
ンター法により測定した。各血球の検出限度は赤血球濃
度で2×105個/ml、白血球濃度で1×105個/m
l、血小板濃度で1×106個/mlであった。
【0131】溶血は、O−トルイジン法を用い、血漿中
のへモグロビン濃度を測定して検出した。
【0132】各血液成分の分析は以下の方法で行った。
【0133】(i)血清アミラーゼ:G5CNP法 (ii)総コレステロール:コレステロールオキシダーゼ・
ペルオキシダーゼ発色法 (iii)中性脂肪:LPL・グリセロール3リン酸オキシ
ダーゼ・ペルオキシダーゼ発色法 (iv)尿素窒素:ウレアーゼ・インドフェノール法 (v)血糖:グルコースオキシダーゼ・ペルオキシダーゼ
発色法 (vi)総蛋白質濃度:ビューレット法 (vii)アルブミン:BCG(ブロムクレゾールグリー
ン)法
【0134】(実施例1)図1に示すような血漿分離フ
ィルターを作製した。入口として容器の上面端部に直径
1.0mmの穴、出口として底面中央部に直径1.0m
mの穴を有し、容器内部の直径52.0mm、厚さ2.
0mmのアクリル製の円盤状容器を準備した。この容器
に、極細繊維の集合体として平均繊維直径1.8μmの
ポリエチレンテレフタレート製の極細繊維からなる不織
布(目付50g/m2、厚さ約2mm)1.4g(14
枚を重層)を、直径50.0mm、厚さ2.0mmとな
るように重層した。同時に、極細繊維の集合体の外周部
表面と容器の内周部表面との間に幅1.0mmの隙間を
設けた。作製されたフィルターは、極細繊維の集合体の
容積:約3.9cm3、隙間の容積:約0.32cm3
あった。この血漿分離フィルター中の極細繊維の総表面
積、極細繊維の集合体の平均嵩密度、平均動水半径、間
隙体積及びL/Dはそれぞれ表1に記載した通りであ
る。それぞれの値は、以下の式で計算した。ポリエチレ
ンテレフタレートの密度は、上記のように、1.38g
/cm3である。
【0135】 総表面積=4×極細繊維の集合体の重量/(極細繊維の密度×平均繊維直径) =4×1.4g/(1.38g/cm3×1.8μm)=2.3m2 平均嵩密度=極細繊維の集合体の重量/極細繊維の集合体の容積 =1.4g/3.9cm3=0.36g/cm3 平均動水半径=平均繊維直径×(極細繊維の密度−平均嵩密度) /(4×平均嵩密度) =1.8μm×(1.38g/cm3−0.36g/cm3) /(4×0.36g/cm3)=1.28μm 間隙体積=極細繊維の集合体の容積−(極細繊維の集合体の重量/極細繊維の密 度) =3.9cm3−(1.4g÷1.38g/cm3)=2.9cm3 L/D(血液成分の流路長/血液成分の流路径) =L/2(血液入口部の極細繊維の集合体表面の断面積/π)0.5 =(2.5cm)/2((5.0cm×π×0,2cm)÷π)0.5 =1.25 上記の血漿分離フィルターに牛血液4mlを容器の入口
から注入し、極細繊維の集合体の外周部表面と容器の内
周部表面の隙間に充填した後、0.2kg/cm2の圧
力をかけ牛血液を押し出した。牛血液は極細繊維の集合
体の外周部表面から入り、極細繊維の集合体の内部を外
周部から円心部に向かって水平方向に移動し、加圧後2
0秒経過して、容器の出口から血漿が流出し始め、さら
にその後4秒経過して流出液中に赤血球が混入し始め
た。よって、流出し始めて約2秒間の血漿を採取し、
0.29mlを得た。平均処理線速度は75mm/分
(=25mm/20秒)であった。
【0136】上記で得られた0.29mlの血漿中の赤
血球、白血球、血小板濃度は検出限度以下であった。よ
って、分離前の牛血液中の赤血球濃度に対する得られた
血漿中の赤血球濃度(以下赤血球混入率)は0.003
%(=(2×105÷7.2×109)×100)以下で
あった。また得られた血漿のヘモグロビン濃度は5mg
/dlであり、血漿成分の分析結果は表1の通りであっ
た。
【0137】(実施例2)実施例1と同様に血漿分離フ
ィルターを作製した。ただし、不織布の充填量は0.8
g(8枚を重層)とした。
【0138】上記の血漿分離フィルター中の極細繊維の
総表面積、極細繊維の集合体の平均嵩密度、平均動水半
径、間隙体積及びL/Dはそれぞれ表1に記載した通り
である。
【0139】上記の血漿分離フィルターを用いて実施例
1と同様に血漿分離を行った。血漿は加圧後15秒経過
してから流出し始め、さらにその後2秒経過してから赤
血球か混入し始めた。よって、流出し始めて約1.5秒
間の血漿を採取し、0.33mlを得た。平均処理線速
度は100mm/分であった。
【0140】上記で得られた0.33mlの血漿中の白
血球及び血小板濃度は検出限度以下であり、赤血球濃度
は3×105個/mlであった。よって、赤血球混入率
は0.004%であった。また、得られた血漿のヘモグ
ロビン濃度は検出限度以下であり、血漿成分の分析結果
は表1の通りであった。
【0141】(実施例3)図3に示すような血漿分離フ
ィルターを作製した。入口として容器の上面端部に直径
1.0mmの穴、出口として底面中央部に直径1.0m
mの穴を有し、容器内部の直径29.0mm、厚さ6.
5mmのポリプロピロレン製の円柱状容器を準備した。
この容器に、極細繊維の集合体として平均繊維直径0.
8μmのポリエチレンテレフタレート製の極細繊維から
なる不織布(目付50g/m2、厚さ約3mm)1.2
g(12枚を重層)を、直径29.0mm、厚さ6.0
mmとなるように、極細繊維の集合体の上表面と容器の
内面上部表面に厚さ0.5mmの隙間を設けて充填し、
隙間には平均繊維直径10μmのポリエチレンテレフタ
レート製の極細繊維よりなる不織布(目付50g/
2、厚さ約1mm)0.33g(2枚を重層)を充填
した血漿分離フィルターを作製した(極細繊維の集合体
の容積:約4.0cm3、隙間の容積:約0.33c
3)。
【0142】上記の血漿分離フィルター中の極細繊維の
総表面積、極細繊維の集合体の平均嵩密度、平均動水半
径、間隙体積及びL/Dはそれぞれ表1に記載した通り
である。
【0143】上記の血漿分離フィルターに牛血液4ml
を容器の入口から注入し、極細繊維の集合体の上表面と
容器の内面上部の隙間の極細繊維に充填した後、0.4
kg/cm2の圧力をかけ牛血液を押し出した。牛血液
は極細繊維の集合体の上表面から入り、極細繊維の集合
体の内部を下方向に向かって移動し、加圧後30秒経過
して容器の出口から血漿が流出し始め、さらにその後5
秒経過した時点で流出液中に赤血球が混入し始めた。よ
って、流出し始めて約3秒間の血漿を採取し、0.31
mlを得た。平均処理線速度は12mm/分であった。
【0144】上記で得られた0.31mlの血漿中の血
球濃度は全て検出限度以下であった。よって、赤血球混
入率は0.003%以下であった。また、得られた血漿
のヘモグロビン濃震度は8mg/dlであり、血漿成分
の分析結果は表1の通りであった。
【0145】(実施例4)図1に示すような血漿分離フ
ィルターを作製した。入口として容器の上面端部に直径
1.0mmの穴、出口として底面中央部に直径1.0m
mの穴を有し、容器内部の直径134mm、厚さ0.3
0mmのアクリル製の円盤状容器を準備した。この容器
に、極細繊維の集合体として平均繊維直径3.0μmの
ポリエチレンテレフタレート製の極細繊維からなる不織
布(目付50g/m2、厚さ2mm)2.0g(3枚を
重層)を、直径130mm、厚さ0.30mmとなるよ
うに重層した。同時に、極細繊維の集合体の外周部と容
器の内周部との間に幅2.0mmの隙間を設けて、図1
に示すような血漿分離フィルターを作製した(極細繊維
の集合体の容積:約4.0cm3、隙間の容積:約0.
25cm3)。
【0146】上記の血漿分離フィルター中の極細繊維の
総表面積、極細繊維の集合体の平均嵩密度、平均動水半
径、間隙体積及びL/Dはそれぞれ表1に記載した通り
である。
【0147】上記の血漿分離フィルターを用いて実施例
1と同様に血漿分離を行った。ただし、0.4kg/c
2の圧力をかけて牛血液を押し出した。血漿は加圧後
120秒経過してから流出し始め、さらにその後18秒
経過してから赤血球が混入し始めた。よって、流出開始
から12秒間、血漿を採取し、0.26mlを得た。平
均処理線速度は32.5mm/分であった。
【0148】上記で得られた0.26mlの血漿中の白
血球及び血小板濃度は検出限度以下であり、赤血球濃度
は2.9×108個/mlであった。よって、赤血球混
入率は0.04%であった。また、得られた血漿のヘモ
グロビン濃度は4mg/dlであり、血漿成分の分析結
果は表1の通りであった。
【0149】(実施例5)図2に示すような血漿分離フ
ィルターを作製した。入口として容器の上面端部に直径
1.0mmの穴、出口として底面中央部に直径1.0m
mの穴を有し、容器内部の直径15,2mm、厚さ24
mmのポリプロピレン製の円柱状容器を準備した。この
容器に、極細繊維の集合体として平均繊維直径1.8μ
mのポリエチレンテレフタレート製の極細繊維からなる
綿1.4gを、直径15.2mm、厚さ22mmとなる
ように、極細繊維の集合体の上表面と容器の内面上部表
面に厚さ2.0mmの隙間を設けて充填した血漿分離フ
ィルターを作製した(極細繊維の集合体の容積:約4.
0cm3、隙間の容積:約0.36cm3)。
【0150】上記の血漿分離フィルター中の極細繊維の
総表面積、極細繊維の集合体の平均嵩密度、平均動水半
径、間隙体積及びL/Dはそれぞれ表1に記載した通り
である。
【0151】上記の血漿分離フィルターに牛血液4ml
を容器の入口から注入し、極細繊維の集合体の上表面と
容器の内面上部の隙間に充填した後、0.4kg/cm
2の圧力をかけ牛血液を押し出した。生血液は極細繊維
の集合体の上表面から入り、極細繊維の集合体の内部を
下方向に向かって移動し、血漿は加圧後300秒経過し
てから流出し始め、さらにその後70秒経過してから赤
血球が混入し始めた。よって、流出し始めから30秒間
の血漿を採取し、0.30mlを得た。平均処理線速度
は4.4mm/分であった。
【0152】上記で得られた0.30mlの血漿中の血
球濃度は全て検出限度以下であった。よって、赤血球混
入率は0.003%以下であった。また、得られた血漿
のヘモグロビン濃度は6mg/dlであり、血漿成分の
分析結果は表1の通りであった。
【0153】(実施例6)実施例3と同様に血漿分薙フ
ィルターを作製した。ただし、極細繊維の集合体として
極細繊維の集合体として平均繊維直径0.8μmのポリ
エチレンテレフタレート製の極細繊維からなる綿を用い
た。
【0154】上記の血漿分離フィルター中の極細繊維の
総表面積、極細繊維の集合体の平均嵩密度、平均動水半
径、間隙体積及びL/Dは実施例3と同一であり、それ
ぞれ表1に記載した通りである。
【0155】上記の血漿分離フィルターを用いて実施例
3と同様に血漿分離を行った。血漿は加圧後880秒経
過してから流出し始め、その後さらに115秒経過して
から赤血球が混入し始めた。よって、流出し始めて90
秒間の血漿を採取し、0.31mlを得た。平均処理線
速度は0.41mm/分であった。
【0156】上記で得られた0.31mlの血漿中の血
球濃度は全て検出限度以下であった。よって、赤血球混
入率は0.003%以下であった。また、得られた血漿
のヘモグロビン濃度は10m g/dlであり、血漿成
分の分析結果は表1の通りであった。
【0157】(実施例7)実施例5と同様に血漿分離フ
ィルターを作製した。ただし、容器内部の直径10.0
mm、厚さ55.0mmの容器を用い、極細繊維の集合
体として平均繊維直径3.2μmの極細繊維からなる綿
2.0gを、直径10.0mm、厚さ51.0mmとな
るように、極細繊維の集合体の上表面と容器内の上面部
に厚さ4.0mmの隙間を設けた(極細繊維の集合体の
容積:約4.0cm3、隙間の容積:約0.31c
3)。
【0158】上記の血漿分離フィルター中の極細繊維の
総表面積、極細繊維の集合体の平均嵩密度、平均動水半
径、間隙体積及びL/Dはそれぞれ表1に記載した通り
である。
【0159】上記の血漿分離フィルターを用いて実施例
5と同様に血漿分離を行った。血漿加圧後264秒経過
してから流出し、その後さらに25秒経過してから赤血
球が混入し始めた。よって、流出し始めてから22秒間
の血漿を採取し、0.26mlを得た。平均処理線速度
は11.6mm/分であった。
【0160】上記で得られた0.26mlの血漿中の白
血球及び血小板濃度は検出限度以下であり、赤血球濃度
は4.3×108個/mlであった。よって、赤血球混
入率は0.06%であった。また、得られた血漿のヘモ
グロビン濃度は検出限度以下であり、血漿成分の分析結
果は表1の通りであった。
【0161】(実施例8)実施例5と同様に血漿分離フ
ィルターを作製した。ただし、極細繊維からなる綿の充
填量を0.8gとした。このフィルターの極細繊維の総
表面積、極細繊維の集合体の平均嵩密度、平均動水半
径、間隙体積及びL/Dはそれぞれ表1に記載してい
る。
【0162】この血漿分離フィルターを用いて実施例5
と同様に血漿分離を行った。血漿は加圧後約150秒経
過してから流出し始め、その後さらに20秒経過してか
ら赤血球が混入し始めた。よって、流出し始めてから1
7秒間、血漿を採取し、0.34mlを得た。平均処理
線速度は8.8mm/分であった。
【0163】上記で得られた0.34mlの血漿中の白
血球及び血小板濃度は検出限度以下であり、赤血球濃度
は2.2×108個/mlであった。よって、赤血球混
入率は0.03%であった。また、得られた血漿のヘモ
グロビン濃度は検出限度以下であり、血漿成分の分析結
果は表1の通りであった。
【0164】
【表1】
【0165】(比較例1)実施例1と同様に血漿分離フ
ィルターを作製した。ただし、極細繊維の集合体として
平均繊維直径2.5μmの極細繊維からなる不織布(目
付50g/m2、厚さ2mm)0.8g(8枚を重層)
を充填した。このフィルター中の極細繊維の総表面積、
極細繊維の集合体の平均嵩密度、平均動水半径、間隙体
積及びL/Dはそれぞれ表2に記載した通りである。
【0166】上記の血漿分離フィルターを用いて実施例
1と同様に血漿分離を行った。流出液は加圧後10秒経
過して出始めたが、流出液には初めから血球が混入して
いた。流出し始めて約1.0秒間の流出液を採取し、
0.33mlを得た。
【0167】上記で得られた0.33mlの流出液中の
白血球及び血小板濃度は検出限度以下であったが、赤血
球濃度は3.8×108個/mlであった。よって、赤
血球混入率は5.3%であった。また、得られた流出液
の血漿中のヘモグロビン濃度は検出限度以下であった。
血漿成分の分析は省略した。
【0168】(比較例2)実施例1と同様に血漿分離フ
ィルターを作製した。但し、極細繊維の集合体として平
均繊維直径1.0mmの極細繊維からなる不織布(目付
50g/m2、厚さ2mm)2.0g(20枚を重層)
を充填した。この血漿分離フィルター中の極細繊維の総
表面積、極細繊維の集合体の平均嵩密度、平均動水半
径、間隙体積及びL/Dはそれぞれ表2に記載した通り
である。
【0169】上記の血漿分離フィルターを用いて実施例
1と同様に血漿分離を行った。但し、0.4kg/cm
2で加圧した。流出液は加圧後1365秒経過して出始
めたが、流出液は初めから赤色を呈していた。流出し始
めて1600秒間の流出液を採取し、0.26mlを得
た。
【0170】上記で得られた0.26mlの流出液中の
血球濃度は全て検出限度以下であったが、流出液の血漿
中のヘモグロビン濃度は95mg/dlであった。血漿
成分の分析は省略した。
【0171】(比較例3)実施例3と同様に血漿分離フ
ィルターを作製した。但し、容器内部の直径50.0m
m、厚さ2.3mmのアクリル製の円柱状容器に、極細
繊維の集合体として平均繊維直径1.8μmのポリエチ
レンテレフタレート製の極細繊維からなる不織布(目付
50g/m2、厚さ約1mm)1.4g(14枚を重
層)を、直径50.0mm、厚さ2.0mmとなるよう
に、極細繊維の集合体の上表面と容器の内面上部表面に
厚さ0.3mmの隙間を設けて充填し、隙間には平均繊
維直径10μmのポリエチレンテレフタレート製の極細
繊維からなる不織布(目付50g/m2、厚さ約1m
m)0.17g(1枚)を充填した血漿分離フィルター
を作製した(極細繊維の集合体の容積:3.9cm3
隙間の容積:0.59cm3)。
【0172】上記の血漿分離フィルター中の極細繊維の
総表面積、極細繊維の集合体の平均嵩密度、平均動水半
径、間隙体積及びL/Dはそれぞれ表2に記載した通り
である。
【0173】上記の血漿分離フィルターを用いて実施例
3と同様に血漿分離を行った。流出液は加圧後15秒経
過して出始めたが、流出液には初めから血球が混入して
いた。流出し始めて約1.5秒の流出液を採取し、0.
30mlを得た。
【0174】上記で得られた0.30mlの流出液中の
白血球及び血小板濃度は検出限度以下であったが、赤血
球濃度は6.9×109個/mlであった。よって、赤
血球混入率は55%であった。また、得られた流出液の
血漿中のヘモグロビン濃度は検出限度以下であった。血
液成分の分析は省略した。
【0175】(比較例4)実施例5と同様に血漿分離フ
ィルターを作製した。但し、容器内部の直径8.0m
m、厚さ86.0mmのポリプロピレン製容器に、極細
繊維の集合体を直径8.0mm、厚さ80.0mmとな
るように、極細繊維の集合体の上表面と容器内の上面部
に厚さ6.0mmの隙間を設けて充填した(極細繊維の
集合体の容積:4.0cm3、隙間の容積:0.30c
3)。この血漿分離フイルター中の極細繊維の総表面
積、極細繊維の集合体の平均嵩密度、平均動水半径、間
隙体積及びL/Dはそれぞれ表2に記載した通りであ
る。
【0176】上記の血漿分離フィルターを用いて実施例
5と同様に血漿分離を行った。流出液は加圧後1920
秒経過して出始めたが、流出液は初めから赤色を呈して
いた。流出し始めて3600秒間の流出液を得たが、
0.25mlしか得られなかった。
【0177】上記で得られた0.25mlの流出液中の
血球濃度は全て検出限度以下であったが、流出液の血漿
中のへモグロビン濃度は75mg/dlであった。血漿
成分の分析は省略した。
【0178】(比較例5)実施例1と同じ血漿分離フィ
ルターを作製し、実施例1と同様に血漿分離を行った。
但し、用いた牛血液の量を0.5mlとした。
【0179】血液を全て極細繊維内に送っても、透過液
を得ることが出来なかった。そこで、さらに加圧空気を
容器入口から送ったが、加圧空気は極細繊維内を血液よ
り早く通過し、出口には空気を含んだ泡状の血液しか得
られなかった。これは、極細繊維の集合体の間隙体積
3.0mlに比べ、処理する血液量が少なすぎて、均一
に血液を送液出来なかったためと考えられた。
【0180】(比較例6)実施例3と同様に血漿分離フ
ィルターを作製した。ただし、容器内部の直径35.0
mm、厚さ4.6mmのポリプロピレン製容器に、極細
繊維の集合体として平均繊維直径1.8μmのポリエチ
レンテレフタレート製の極細繊維からなる不織布(目付
50g/m2、厚さ1mm)0.87g(18枚を重
層)を、直径35.0mm、厚さ4.2mmとなるよう
に、極細繊維の集合体の上表面と容器内の上面部に厚さ
0.4mmの隙間を設けて充填し、隙間には平均繊維直
径10μmのポリエチレンテレフタレート製の極細繊維
からなる不織布(目付50g/m2、厚さ1mm)0.
87g(1枚を重層)を充填した(極細繊維の集合体の
容積:4.0cm3、隙間の容積:0.38cm3)。
【0181】上記の血漿分離フィルター中の極細繊維の
総表面積、極細繊維の集合体の平均嵩密度、平均動水半
径、間隙体積及びL/Dはそれぞれ表2に記載した通り
である。
【0182】上記の血漿分離フィルターを用いて実施例
3と同様に血漿分離を行った。流出液は加圧後15秒経
過して出始めたか、流出液には初めから赤血球が混入し
ていた。流出し始めて約1.5秒間の流出液を採取し、
0.34mlを得た。平均処理線速度は16.8mm/
分であった。
【0183】上記で得られた0.34mlの流出液中の
白血球及び血小板濃度は検出限度以下であったが、赤血
球濃度は1.1×109個/mlであった。よって、赤
血球残存量は15%であった。また、得られた流出液の
血漿中のヘモグロビン濃度は検出限度以下であった。血
漿成分の分析は省略した。
【0184】
【表2】
【0185】(実施例9)実施例1と同じ円盤状容器
に、平均繊維直径1.5μmのポリエチレンテレフタレ
ート極細繊維不織布2gを直径50mm、厚さ2.0m
mに切断し、容器の内周部表面との間に1.0mmの隙
間を設けて充填した。このときの平均動水半径はl.0
4μmである。
【0186】これに抗凝固剤としてACD液を加えた、
ヘマトクリット45%の牛血液を容器の外周部から内側
へ、0.5kg/cm2の圧力で送液した。血液は容器
内を不織布面に対して水平方向に極細繊維の集合体内を
通過し、約30秒後に出口から血漿が透過してきた。血
漿の透過は約45秒間続き、その後は透過液中に血球が
混入し始めた。従って、血球の混入のない血漿は加圧後
30秒から45秒間採取でき、その総量は0.7mlで
あった。得られた血漿のへモグロビン濃度は3mg/d
l以下で溶血は認められなかった。また、血球分析器で
測定した赤血球、白血球、血小板も全て検出限界以下で
あった。得られた血漿の生化学分析値を表3に示す。採
取初期の透過液、採取終了時の透過液、極細繊維の集合
体の間隙体積の10%にあたる0.25mlを集めたサンプ
ル、および同一の血液を遠心分離して得られた血漿を比
較したところ、それらの間で有意差が認められなかっ
た。また、得られた血漿中のフィブリノーゲン量をセル
ロースアセテート電気泳動により定量したところ、遠心
分離により得られた血漿中の濃度の約30%に減少して
いたが、完全に除かれていなかった。一昼夜放置したと
き、フィブリンの析出は認められなかった。
【0187】(実施例10)実施例9で用いたものと同
じフィルターを使用した。これに抗凝固剤を加えず採血
直後のヘマトクリット47%のヒト血液を、0.5kg
/cm2の圧力で送液した。血液は容器内を不織布の面
に対して水平方向に極細繊維の集合体内を通過し、約3
5秒後に出口から透過液が得られた。透過液には約55
秒後から血球が混入し始めた。血球の混入のない透過液
は加圧後35秒から20秒間採取でき、その総量は1.
0m1であった。得られた透過液のヘモグロビン濃度は
3mg/dL以下で溶血は認められなかった。また、血
球分析器で測定した赤血球、白血球、血小板も全て検出
限界以下であった。得られた透過液の生化学分析値を表
3に示す。採取初期の透過液、採取終了時の透過液、極
細繊維の集合体の間隙体積の10%にあたる0.25mlを集
めたサンプル、および同一の血液を凝固後遠心分離して
得られた血清を比較したところ、それらの間で有意差が
認められなかった。
【0188】また、得られた透過液中にフィブリノーゲ
ンは検出されず、得られた液体は血漿でなく、血清であ
った。同一人からヘパリンを抗凝固剤として加えた血液
を遠心分離して得られた血漿中のフィブリノーゲン濃度
は220mg/dLであった。
【0189】ヒト血液を用いた以外は、実施例1と同一
の実験を行ったにも係わらず、採取できた透過液量に違
いが認められたのは、赤血球の大きさがヒトとウシとで
は異なるためと考えられる。また、フィブリノーゲンが
完全に除去されているのは、抗凝固剤を添加していない
ため、フィルターに吸着したためと考えられる。
【0190】(実施例11)実施例1で用いたポリエチ
レンテレフタレートの極細繊維の不織布を0.1%のポ
リビニルピロリドンK-90(BASF社製のコリドンK-90、分
子量36万)溶液に浸漬し、ウエットの状態のまま50KG
yのγ線照射を行った。γ線照射後の不織布を純水で洗
浄し、架橋しなかったポリビニルピロリドンを除去し、
乾燥し、表面にポリビニルピロリドンが固定された不織
布を得た。この不織布を実施例1と同様にして容器に充
填し、実施例10と同様の実験を行った。血液は、容器
内を不織布の積層面に対して平行に移動し、約15秒後
に血漿が出口からでてきた。約25秒後から血球が混入
し始めた。血球が混入していない血漿は、約10秒間採
取できた。その総量は1.2mlであった。得られた血漿中
のヘモグロビン濃度は3mg/dl以下であり、溶血は認めら
れなかった。また、血球分析器で測定した赤血球、白血
球、血小板もすべて検出限界以下であった。得られた血
漿の分析値を表3に示した。採取初期の透過液、採取終
了時の透過液、極細繊維の集合体の間隙体積の10%に
あたる0.25mlを集めたサンプル、および同一の血液を凝
固後遠心分離して得られた血清を比較したところ、それ
らの間で有意差が認められなかった。
【0191】得られた血漿中のフィブリノーゲンの量を
セルロースアセテート電気泳動により測定したところ、
遠心分離により得られた血漿中の濃度の約20%に減少
していたが、完全に除かれていなかった。一昼夜放置し
たとき、フィブリンの析出は認められなかった。
【0192】ポリビニルピロリドンを極細繊維に固定す
ることにより、血液の極細繊維に対する親和性が向上
し、血液が通過する際の抵抗が減少し、血漿が分離され
てくるまでの時間が短縮された。
【0193】(比較例7)ガラス繊維濾紙(糸径0.8
〜2.5μm)を約2mm角に裁断し、水を加えてミキ
サーにて撹拌し、脱水後、図4に示すような5mLのシ
リンジ容器に充填率0.5g/cm3となるように充填
した。平均動水半径は1.45μmである(ガラス繊維
の比重2.2)。これに、実施例1と同様に、抗凝固剤
としてACD液を加え、ヘマトクリット45%の牛血液
を、容器の上部から0.5kg/cm2の圧力で送液し
た。血液は容器内の上部から下部に向かって極細繊維の
集合体内を通過し、約60秒後に出口から血漿が透過し
てきた。血漿の透過は約90秒後まで続き、その後は血
漿中に血球が混入し始めた。血球の混入のない血漿は加
圧後60秒から30秒間採取でき、その総量は0.2m
lであった。得られた血漿のヘモグロビン濃度は3mg
/dL以下で溶血は認められなかった。また、血球分析
器で測定した赤血球、白血球、血小板も全て検出限界以
下であった。得られた血漿の生化学分析値を表3に示
す。採取初期の透過液、採取終了時の透過液、得られた
0.2mlのサンプルおよび同一の血液を遠心分離して得ら
れた血漿を比較した。得られた0.2mlのサンプルを使用
したのは極細繊維の集合体の間隙体積の10%にあたる
0.25mlを集めたサンプルが得られなかったからである。
採取初期の透過液は、総タンパク質濃度が他に比べて有
意に低かったほか、電解質や脂質の測定値が遠心分離血
漿と測定値が異なった。これは、タンパク質、電解質、
脂質がガラス繊維に吸着するほか、電解質の一部がガラ
ス繊維から血漿中に溶出するためと考えられる。また、
得られた血漿中のフィブリノーゲンの量をセルロースア
セテート電気泳動法により求めたところ、遠心分離で得
られた血漿中の濃度の約30%に減少していたが、完全
に除かれてはいなかった。一昼夜放置したときに、フィ
ブリンの析出は認められなかった。結果を表3に示す。
【0194】(比較例8)実施例1と同様の容器に糸径
3.5μmのポリエチレンテレフタレート不織布を2.
4g充填した。このときの平均動水半径は1.13μm
である。これに実施例1と同様の方法で血液を送液した
ところ、約45秒後に透過液が得られたが、この透過液
には初期から赤血球が含まれ、血漿の分離は出来なかっ
た。この原因は、繊維径が3.5μmと大きく、そのた
め、繊維間隙を赤血球が通り抜けるときの変形度が小さ
く、赤血球と血漿の移動速度差が生じなかったためと考
えられる。結果を表3に示す。
【0195】
【表3】
【0196】(実施例12)図8は、本願発明の装置の
構成の一例を示す模式図である。容器31は血液試料を
収納する容器である。容器31は、血液を供給するため
のライン(またはチューブ)32を介して血漿分離フィ
ルター11に接続されている。また、容器31は、加圧
空気の供給ライン33と接続されている。
【0197】容器31には、密閉できる着脱自在な蓋3
4が取り付けられている。容器31はさらに攪拌機能ま
たは振盪機能を有し得る。容器31またはライン32に
は抗血液凝固剤を供給するラインが取り付けられ得る
(図示せず)。
【0198】容器31中の血液26は、コンプレッサー
35からライン33を通じて送られた加圧空気により押
し出され、ライン32を通ってフィルター11に供給さ
れる。加圧空気の圧力はコンプレッサー35により調節
される。
【0199】フィルター11に供給された血液は、容器
31へ送られた加圧空気による圧力で極細繊維の集合体
14内を通過し、この中で、血漿と血球に分離される。
フィルター11の透過液側より流出した血漿は、三方コ
ック36を経て血漿回収のためのライン(またはチュー
ブ)37を通り、試料血漿を収納する容器38に回収さ
れる。
【0200】フィルター11の透過液側には、血球およ
び/またはヘモグロビンの混入を検出する血球および/
またはヘモグロビン検出手段40が取り付けられてい
る。血球および/またはヘモグロビン検出手段40に加
え、さらに化学反応による方法あるいはセルカウンター
による血球および/またはヘモグロビンの混入を検出す
るのためのサンプリング口を設け得る。透過液の血漿中
に血球および/またはヘモグロビンが検出されると、三
方コック36(例えば、電磁作用により開閉し得る3ポ
ートバルブであり得る)を切り替え、透過液を廃液(ま
たは回収)ライン41を経て廃液(または回収)タンク
42へ送る。同時に、容器31への加圧空気の供給を停
止し、血漿分離の操作を終了する。
【0201】これらの手段は、血球および/またはヘモ
グロビン検出手段と連結され得、たとえば、血球および
/またはヘモグロビンが検出されると自動的に血漿分離
操作を終了するように連結され得る。
【0202】さらに、血液送液ライン32および血漿送
液ライン37には、洗浄水としての純粋を供給する純水
供給ライン43、および装置を乾燥するための乾燥空気
を供給する乾燥空気供給ライン44が接続され得る。こ
の他に、本願発明の装置を洗浄する方法としては、回転
ブラシでガラス器具などを機械的にブラッシングする方
法、ジェット噴流による洗浄器であってノズルを通して
高圧の水流を流す方法、超音波による方法などが挙げら
れる。これらの洗浄方法は、単独であるいは組み合わせ
て用いられ得る。上記の方法で、血漿分離操作終了後の
ラインの洗浄および乾燥が速やかに行われ、連続して次
の血液試料が処理され得る。
【0203】なお、血漿分離装置を構成する各ラインに
は、上記三方コック36の他に、流体の流れ方向を切り
替えるためのコック、チャンバー、圧力センサーのよう
な各種部材が配設され得る(図示せず)。
【0204】上記フィルター11はホルダーなどに着脱
自在に取り付けられ得る(例えば、図5参照)。マグネ
ットによる保持および解除が適用され得る。フィルター
11は、入口側部分と(図5、15a)、出口側部分
(図5、15b)と、極細繊維の集合体(図5、14)
を含む部分との3つの部分で、それぞれが別個に着脱自
在に構成され得る。装着される極細繊維の集合体を含む
部分を着脱自在とすることにより、使い捨てとされ得、
汚染が防止され得る。このように装着される極細繊維の
重合体を含む部分が着脱自在であれば、ラインの洗浄お
よび乾燥も効率的であり得る。
【0205】本願発明の装置はまた、一定量の血液試料
を自動的に血漿分離用のフィルターに流入させる機構を
有し得る。これには例えば上記の定量ポンプが用いられ
得る。さらに、フィルターまたはその各構成部分(装着
される極細繊維の集合体を含む部分など)を自動的に交
換する機構を有し得る。また、従来の血漿分離装置の血
漿分離器(極細繊維の集合体)部分を上記の装着される
極細繊維の集合体を含む部分またはフィルターで置換し
た構造でもあり得る。さらに、分離性能の向上が所望で
あれば該フィルターを直列に連結し得、処理すべき血液
量を増加したい場合には並列に連結し得る。
【0206】(実施例13)本願発明の装置は血液の供
給から回収まで自動化され得、大量の数量の血液試料か
ら血漿を分離し得る。例えば、図9は、本願発明の装置
を自動化する構成の一例を示す模式図である。自動化に
より、多種類の血液サンプルが同時に処理され得る。
【0207】図9において、血液サンプルはラック48
に並べられ、血液供給ライン32の入口が血液サンプル
26のほぼ底面にくるように配置される。フィルター1
1はホルダー45に固定されている。血液供給ライン3
2の末端は、フィルター11の入口と気密に嵌合するよ
うに構成されており、血液供給ライン32の先端が機械
的圧力で押圧され、フィルターの入口と気密に嵌合され
る。同様に、血漿回収ライン37の先端は、フィルター
11の出口と気密に嵌合するように構成されており、血
漿回収ライン37の先端は機械的圧力で押圧され、フィ
ルター11の出口と気密に嵌合される。次に、ラインの
出口には血漿の回収手段である血漿を受けるサンプル容
器38がラック50に並べられ、自動的に配置される。
【0208】このようにしてラインが連結され、血漿を
受けるサンプル容器が配置されると、血液供給手段であ
る血液供給ポンプ46が作動する。一定量の血液が流れ
た時に血液供給ポンプ46が停止する。血液供給ポンプ
46が停止すると、バルブ47が血液供給ライン32を
遮断する。全部の血液供給ポンプ46が停止するとコン
プレッサー35が作動し、コンプレッサー35から圧縮
空気がフィルター11に供給される。血液は空気圧によ
り極細繊維の集合体14を通過し、血漿が分離される。
【0209】フィルター11の出口には、血球および/
またはヘモグロビン検出手段40が配置されている。血
球および/またはヘモグロビンが検出されると、その下
流にある血球および/またはヘモグロビン切替手段であ
る三方コック36が切り替わり、血球および/またはヘ
モグロビンを含む血漿を血球および/またはヘモグロビ
ン混入血漿の回収ライン41に導く。同時に、空気供給
バルブ47が切り替わり、加圧を停止する。血球および
/またはヘモグロビンが検出されると、そのサンプル容
器にはマークがつけられ、次のサンプルの準備がなされ
る。
【0210】血漿回収ライン37の末端には液量計49
が配置され、一定量が回収されると、切替手段36を切
り替え、不要な血漿を血球および/またはヘモグロビン
混入血漿の回収ライン41に導く。同時に加圧空気の供
給バルブ47を切り替えて加圧を停止する。すべてのバ
ルブが切り替わるとコンプレッサー35は停止する。
【0211】血漿を回収したサンプル容器38から、血
漿回収手段の末端であるラインを引き抜く。サンプル容
器38には蓋がされ、保存される。
【0212】フィルター11の入口と気密に嵌合してい
る血液供給ライン32の末端は、機械的圧力で引き離さ
れる。フィルター11の出口と気密に嵌合した血漿回収
ライン37の先端も機械的圧力で引き離される。こうし
て各手段から切り離されたフィルター11はホルダーか
ら離され、廃棄される。
【0213】次いで、ラインの洗浄を行う。フィルター
11の代わりに、血液供給ライン32の末端および血漿
回収ライン37の先端と気密に嵌合し得る中空状の容器
が配置される。洗浄液を受ける容器が、血漿回収手段の
末端であるライン37の出口に自動的にセットされる。
血液の供給が終了した血液サンプル供給容器51を並べ
たラック48は移動し、血液サンプル供給容器51は廃
棄される。代わりに、洗浄液を入れた容器がラック48
に並べられ、血液供給ライン32の入口が洗浄液のほぼ
底面にくるようにセットされる。
【0214】次に、バルブ47が、洗浄液を供給するよ
うに切り替えられ、血液供給ポンプ46が作動してライ
ン32、37、41を洗浄する。切替手段のバルブ36
を、それぞれ血漿回収ライン37および血球および/ま
たはヘモグロビン混入血漿回収ライン41に切り替え、
洗浄する。
【0215】洗浄終了後、コンプレッサー35が作動し
て空気を供給し、一定時間ラインを乾燥する。その後、
洗浄水を並べたラックおよび、洗浄液を受けた容器を並
べたラックが移動し、血液サンプルを並べたラック4
8、血漿回収のための容器を並べたラックが所定の位置
に配置される。さらに、洗浄時に用いる中空状の容器の
代わりに、フィルター11が上記の方法で配置される。
そして、上記操作が繰り返される。
【0216】これらの操作の順序は、任意に変更され
得、また、洗浄液を回収する手段は上記に限定されるこ
となく、個々の容器でなくともよい。いずれにせよ、こ
のような自動化の装置の任意の改変もまた、本願発明に
包含される。
【0217】(実施例14)本願発明の装置は、通常少
なくとも、(A)フィルター、血液供給手段、血液加圧
手段、および血漿回収手段を有する。これらの手段の他
には、(a)一定量の血液を供給するための手段、
(b)一定量の血漿を回収するための手段、(c)血球
および/またはヘモグロビンを検出するための手段、
(d)切替手段、(e)血球および/またはヘモグロビ
ンが混入する血漿を回収する手段などが任意に組み合わ
され得る。本願発明の装置において、各手段は互いに連
動可能とし得る。さらに、各手段は、それらの作動を停
止する手段と連動し得るように構成され得る。これらの
手段の組み合わせは、血漿の使用目的、所望の血漿レベ
ル、装置の規模などによって任意に変更し得る。例え
ば、以下の手段を組み合わせた装置が代表的である。
(1)(A)に加えて(a)を有する装置。(2)
(A)に加えて、(b)を有する装置。(3)(A)に
加えて、(a)および(b)を有する装置;この装置で
は、使用するフィルターの種類などによって予め選択し
た量の血液の供給および血漿の回収を行うことにより、
迅速かつ簡便に試料が得られる。(4)(A)に加え
て、(c)、(d)および(e)を有する装置;このと
き(c)、(d)および(e)は通常互いに連動可能で
ある。(5)Aに加えて、(b)〜(e)の全てを有す
る装置。(6)Aに加えて、(a)〜(e)の全てを有
する装置;これは、本願発明の装置のうち、最も精度の
高い血漿分離を行い得る装置の一例である。
【0218】本願発明の血漿分離装置による血液の平均
処理線速度(フィルターの入口から出口までの平均処理
線速度)は、特に限定されるわけではないが、好ましく
は0.5〜500mm/分である。処理線速度が遅い場合は多数
の検体を処理するのに不都合であり、速すぎる場合に
は、差圧の増加により溶血するおそれがある。
【0219】(実施例15:自動分析システムとの接
続)自動分析システムとは、血液分析の各過程における
操作を、順序良く統合してシステム化することである。
すなわち、検体の採量から分析をへてデータの記録に至
る全過程を自動化したシステムのことである。自動分析
システムは、分析方式によって、フローシステムおよび
ディスクリートシステムの2つのシステムに分けられ
る。本願発明の血漿分離装置はこれらのシステムに接続
することができる。すなわち、フローシステムにおいて
は、いくつかの部品がポリエチレン管で連結されてお
り、分析されるべき試料がこの連結しているチューブを
流れていくうちに分析および記録されるが、本願発明の
装置はこのシステムのサンプラー部分と接続することが
できる。一方、ディスクリートシステムは個々の検体を
それぞれ独立した反応管で分析する方式であり、フロー
システムと同様に、サンプラー部分に本願発明の装置が
接続され得る。あるいは、本願発明の装置により別個に
得られた血漿をサンプルとして用い、これらの自動分析
システムに供給してもよい。この場合、従来の自動分析
システムをそのまま使用することができる。自動分析シ
ステムのサンプラー部分と本願発明の血漿分離装置、例
えば、図9の装置の血漿回収ライン37と接続され得
る。
【0220】(実施例16)実施例1の血漿分離フィル
ターに、血液供給手段および加圧手段を有するシリンジ
を取り付け、図7の血漿分離装置を作製した。
【0221】牛血液4mlを容器の入口から注入し、フ
ィルターに装着した極細繊維の集合体の外周部表面と容
器の内周部表面との空隙に牛血液を充填した後、0.2
kg/cm2の圧力をかけて牛血液を押し出した。牛血
液は装着された極細繊維の集合体の外周部表面から入
り、この極細繊維の集合体の内部を外周部から円心部に
向かって水平方向に移動した。加圧後20秒経過して、
容器の出口から血漿が流出し始めた。この分離された血
漿を、連続的にサンプリングした。赤血球の混入のない
血漿が0.5ml得られた。平均処理線速度は75mm
/分(=25mm/20秒)であった。
【0222】流出初期にサンプリングした血漿を0.4
ml集め、血漿中の混入血球(赤血球、白血球、血小
板)濃度、赤血球の溶血の有無、並びに、血液成分(血
清アミラーゼ、総コレステロール、中性脂肪、尿素窒
素、血糖)を分析して、装置を評価した。表4に結果を
示した。
【0223】
【表4】
【0224】分離前の牛血液中の赤血球濃度に対する得
られた血漿中の赤血球濃度(以下赤血球混入率)は上記
検出限度を考慮すると、0.003%(=2×105÷
7.2×109)×100)以下であった。赤血球の溶
血はなく、得られた血漿のヘモグロビン濃度は5mg/
dlであり、許容範囲であった。また、血液成分の分析
結果も従来の遠心分離法と変わらず、本願発明の装置の
有効性が証明された。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本願発明の血漿分離装置に使用される
フィルターの一例を示す図である。
【図2】図2は、本願発明の血漿分離装置に使用される
フィルターの一例を示す図である。
【図3】図3は、図2のフィルターの空隙部分に基材を
配置したフィルターである。
【図4】図4は、本願発明の血漿分離装置に使用される
フィルターの一例を示す図である。
【図5】図5は、本願発明の血漿分離装置に使用される
フィルターの一例を示す図である。
【図6】図6は、図4のフィルターに、加圧手段を加え
た装置である。
【図7】図7は、図1のフィルターに、血液の供給およ
び加圧手段を接続した装置である。
【図8】図8は、本願発明の血漿分離装置の一例を示す
模式図である。
【図9】図9は、本願発明の血漿分離装置を自動化する
構成の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
11:フィルター 12:入口 13:出口 14:極細繊維の集合体 15:容器 16:空隙 17:基材 18:開口部 19:容器の内壁 22:密接手段 24:加圧手段 25:血液供給手段 26:血液 31:血液供給手段の容器 32:血液供給ライン 33:加圧空気供給ライン 34:蓋 35:コンプレッサー 36:三方コックまたは切替バルブ 37:血漿回収ライン 38:試料血漿回収容器 40:血球および/またはヘモグロビン検出手段 41:廃液回収ライン 42:廃液回収タンク 43:純水供給ライン 44:乾燥空気供給ライン 45:フィルターホルダー 46:血液供給ポンプ 47:バルブ 48:血液サンプル供給容器ラック 49:液量計 50:試料血漿回収容器ラック 51:血液サンプル供給容器
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年8月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0185
【補正方法】変更
【補正内容】
【0185】(実施例9)実施例1と同じ円盤状容器
に、平均繊維直径1.5μmのポリエチレンテレフタレ
ート極細繊維不織布2gを直径50mm、厚さ2.0m
mに切断し、容器の内周部表面との間に1.0mmの隙
間を設けて充填した。このときの平均動水半径は0.6
μmである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0195
【補正方法】変更
【補正内容】
【0195】
【表3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B01D 39/16 B01D 23/10 A G01N 33/48 29/08 520C 540A (72)発明者 大野 仁 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内

Claims (25)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 入口と出口とを有する容器に極細繊維の
    集合体が装着されたフィルターであって、該フィルター
    は、以下の特性を有する: (1)該装着された極細繊維の集合体の血液の流路径
    (D)と血液の流路長(L)との比(L/D)が、0.
    15〜6である; (2)該装着された極細繊維の集合体の平均動水半径が
    0.5〜3.0μmである; (3)赤血球濃度が6〜8×109個/mlである新鮮牛血
    液を0.2〜0.4Kg/cm2の圧力で分離し、分離開始
    から該装着された極細繊維の集合体の間隙体積の10%
    に相当する量の血漿を回収したときに、(a)血漿中の赤
    血球濃度が分離前の血液中の赤血球濃度に対して0.1
    %以下である;および(b)実質的に赤血球が溶血してい
    ない。
  2. 【請求項2】 前記極細繊維がポリエステル、ポリプロ
    ピレン、ポリアミド、またはポリエチレンである、請求
    項1に記載の血漿分離フィルター。
  3. 【請求項3】 前記極細繊維の集合体が不織布である、
    請求項1または2に記載の血漿分離フィルター。
  4. 【請求項4】 前記不織布が単独であるいは積層されて
    前記容器に装着されており、該装着された極細繊維の集
    合体の該不織布の面または積層された不織布の平面に対
    して、血液がほぼ平行に流れるように構成されている、
    請求項3に記載の血漿分離フィルター。
  5. 【請求項5】 前記容器および前記不織布が円盤状であ
    り、入口が該円盤状の不織布の円周部側面全面にわたっ
    て血液を供給し得るように構成されており、かつ出口が
    円盤状の不織布の中心部から血漿が流出するように構成
    されている、請求項4に記載の血漿分離フィルター。
  6. 【請求項6】 入口と出口とを有する容器に極細繊維の
    集合体が装着されたフィルターであって、該フィルター
    は、以下の特性を有する: (1)該装着された極細繊維の集合体の血液の流路径
    (D)と血液の流路長(L)との比(L/D)が、0.
    15〜6である; (2)該装着された極細繊維の集合体の平均動水半径が
    0.5〜3.0μmである; (3)該極細繊維に親水化剤が固定されている。
  7. 【請求項7】 前記親水化剤が極細繊維の表面に固定さ
    れている、請求項6に記載の血漿分離フィルター。
  8. 【請求項8】 前記親水化剤がポリビニルピロリドンで
    ある、請求項6または7に記載の血漿分離フィルター。
  9. 【請求項9】 前記フィルターが以下の特性:赤血球濃
    度が6〜8×109個/mlである新鮮牛血液を0.2
    〜0.4Kg/cm2の圧力で分離し、分離開始から該装着
    された極細繊維の集合体の間隙体積の10%に相当する
    量の血漿を回収したときに、 (a)血漿中の赤血球濃度が分離前の血液中の赤血球濃度
    に対して0.1%以下である;および(b)実質的に赤血
    球が溶血していない;を有する、請求項6ないし8のい
    ずれかの項に記載の血漿分離フィルター。
  10. 【請求項10】 前記極細繊維の集合体が不織布であ
    る、請求項6ないし9のいずれかの項に記載の血漿分離
    フィルター。
  11. 【請求項11】 前記不織布が単独であるいは積層され
    て前記容器に装着されており、該装着された不織布の平
    面または積層された不織布の平面に対して、血液がほぼ
    平行に流れるように構成されている、請求項10に記載
    の血漿分離フィルター。
  12. 【請求項12】 前記容器および前記不織布が円盤状で
    あり、血液の入口が円盤状の不織布の円周部側面全面に
    わたって血液を供給し得るように構成されており、かつ
    出口が円盤状の不織布の中心部から分離された血漿が流
    出するように構成されている、請求項11に記載の血漿
    分離フィルター。
  13. 【請求項13】 前記フィルターが、赤血球濃度が6〜
    8×109個/mlである新鮮牛血液を0.2〜0.4K
    g/cm2の圧力で分離し、分離開始から該装着された極
    細繊維の集合体の間隙体積の10%に相当する量の血漿
    を回収したときに、該分離された血漿中の電解質濃度
    が、遠心分離で得られた血漿中の電解質濃度と比較して
    90%以上保持されている、請求項1から12のいずれ
    かの項に記載の血漿分離フィルター。
  14. 【請求項14】 前記フィルターが、赤血球濃度が6〜
    8×109個/mlである新鮮牛血液を0.2〜0.4K
    g/cm2の圧力で分離し、分離開始から該装着された極
    細繊維の集合体の間隙体積の10%に相当する量の血漿
    を回収したときに、該分離された血漿中の蛋白質濃度
    が、遠心分離で得られた血漿中の蛋白質濃度と比較して
    90%以上保持されている、請求項1から13のいずれ
    かの項に記載のフィルター。
  15. 【請求項15】 入口と出口とを有する容器に極細繊維
    の集合体が装着された血漿分離フィルターを用いて血漿
    を分離する方法であって、該方法は、血漿分離フィルタ
    ーに血液を供給する工程、および、該フィルターを加圧
    する工程を含み、出口における圧力損失が0.03〜5
    kg/cm2である方法:ここで、該血漿分離フィルタ
    ーは、以下の特性を有する(1)該装着された極細繊維の
    集合体の血液の流路径(D)と血液の流路長(L)との
    比(L/D)が、0.15〜6である;および、(2)該
    装着された極細繊維の集合体の平均動水半径が0.5〜
    3.0μmである。
  16. 【請求項16】 前記血漿分離フィルターが、以下の特
    性:赤血球濃度が6〜8×109個/mlである新鮮牛
    血液を0.2〜0.4Kg/cm2の圧力で分離し、分離開
    始から前記装着された極細繊維の集合体の間隙体積の1
    0%に相当する量の血漿を回収したときに、 (a)血漿中の赤血球濃度が分離前の血液中の赤血球濃度
    に対して0.1%以下である;および(b)実質的に赤血
    球が溶血していない;を有する、請求項15に記載の血
    漿分離方法。
  17. 【請求項17】 前記血漿分離フィルターの前記極細繊
    維に親水化剤が固定されている請求項15または16に
    記載の血漿分離方法。
  18. 【請求項18】 処理する血液の線速度が、0.05〜
    50cm/分である、請求項15ないし17いずれかの
    項に記載の血漿分離方法。
  19. 【請求項19】入口と出口とを有する容器に極細繊維の
    集合体が装着された血漿分離フィルターを有する血漿分
    離装置であって、該フィルターが以下の特性: (1)該装着された極細繊維の集合体の血液の流路径
    (D)と血液の流路長(L)との比(L/D)が、0.
    15〜6である;および、(2)該装着された極細繊維の
    集合体の平均動水半径が0.5〜3.0μmである;を
    有する、血漿分離装置。
  20. 【請求項20】 前記血漿分離フィルターが、(2)赤血
    球濃度が6〜8×109個/mlである新鮮牛血液を
    0.2〜0.4Kg/cm2の圧力で分離し、分離開始から
    前記装着された極細繊維の集合体の間隙体積の10%に
    相当する量の血漿を回収したときに、以下の特性: (a)血漿中の赤血球濃度が分離前の血液中の赤血球濃度
    に対して0.1%以下である;および(b)実質的に赤血
    球が溶血していない;を有する、請求項19に記載の血
    漿分離装置。
  21. 【請求項21】 前記血漿分離フィルターの前記極細繊
    維に親水化剤が固定されている請求項19または20に
    記載の血漿分離装置。
  22. 【請求項22】 前記血漿分離フィルターに、血液を供
    給する血液供給手段、該供給された血液を分離するため
    に該フィルターに供給された血液を加圧する加圧手段、
    および、分離された血漿を回収する血漿回収手段を有す
    る、請求項19ないし21のいずれかの項に記載の血漿
    分離装置。
  23. 【請求項23】 さらに、分離された血漿中の血球およ
    び/またはヘモグロビンを検出する血球および/または
    ヘモグロビン検出手段、血球および/またはヘモグロビ
    ンが混入する血漿を分別するための切替手段、および分
    別された血球および/またはヘモグロビンが混入する血
    漿を回収する血球および/またはヘモグロビン混入血漿
    回収手段、を有する請求項22に記載の血漿分離装置;
  24. 【請求項24】 前記フィルターが、前記血液供給手段
    と血漿回収手段との間に着脱自在に取り付けられてい
    る、請求項22または23に記載の血漿分離装置。
  25. 【請求項25】 前記装置が、一定量の血液を供給する
    血液供給手段および/または一定量の血漿を回収する血
    漿回収手段を有する請求項22から24のいずれかの項
    に記載の血漿分離装置。
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