JPH0913149A - 深絞り性および張出し性に優れたプレス成形用オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents
深絞り性および張出し性に優れたプレス成形用オーステナイト系ステンレス鋼Info
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Abstract
以下に抑制したOおよび20ppm 以下に抑制したSと共に
含み、かつNi当量が21.0〜23.0の範囲を満足し、残部は
実質的にFeの組成になり、しかも清浄度を 0.020%以下
とする。 【効果】 従来に比べ、格段に優れた深絞り性および張
出し性が得られる。
Description
テナイト系ステンレス鋼に関し、特にその深絞り性およ
び張出し性の向上を図ろうとするものである。
テナイト系ステンレス鋼としては、SUS 301 やSUS 304
などが知られている。これらのステンレス鋼は、冷間加
工により歪み誘起マルテンサイトが生成し、著しい加工
硬化を示す。このため、プレス加工における張り出し性
には著しく優れるものの、深絞り加工後に、放置した製
品に割れ、いわゆる時期割れが発生するところに問題を
残していた。
51-29854号公報では、Si、MnおよびCuを適量添加して加
工硬化性を高める一方で、固溶炭素量と固溶窒素量との
合計を0.04wt%未満とすることによって時期割れ感受性
を鈍化したオーステナイト系ステンレス鋼が提案されて
いる。また、特公平1-40102号公報には、AlとCuを複合
添加すると共にSi含有量を低減させることによって深絞
り性をさらに改良した、深絞り性の極めて良好なオース
テナイトステンレス鋼が提案されていて、その成分組成
は、C:0.05wt%以下、Si:0.5 wt%未満、Mn:3.0 wt
%以下、Cr:15.0〜19.0wt%、Ni:6.0 〜9.0wt%、C
u:3.0 wt%以下およびAl:0.5 〜3.0 wt%を含み、残
部実質的に鉄よりなる。
た特公平1-40102号公報に開示のステンレス鋼では、形
状が複雑で過酷なプレス加工においては、やはり十分な
深絞り性および張出し性は得難く、またAlを0.5 wt%以
上含有するために表面疵が発生し易いという問題があっ
た。また、特公昭51-29854号公報に開示されているステ
ンレス鋼では、固溶Cと固溶Nとの合計量を0.04wt%未
満としているため、このレベルでは耐時期割れ性には優
れるものの深絞り性自体が劣ることから、複雑で苛酷な
プレス加工の場合、中間熱処理が不可欠となるという問
題があった。このような背景の下で、近年では、経済性
や複雑な表面形状に対処するという観点から、中間熱処
理を必要とすることなく各種の形状にプレス加工が可能
な、いわゆる深絞り性に優れると共に張出し性にも優れ
たオーステナイト系ステンレス鋼の開発が強く望まれて
いた。
利に克服し、上記の要請に十分に応え得る、優れた深絞
り性と張出し性とを兼ね備えるプレス成形用オーステナ
イト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
の目的を達成すべく、オーステナイト系ステンレス鋼の
成分組成に関し、綿密な検討を行った。その結果、準安
定オーステナイト系ステンレス鋼に、少量のAlとCuとを
複合添加し、かつCおよびNi当量を所定の範囲に制限す
ると共に、不可避不純物としてのO,Sの混入を極力抑
制することが、所期した目的の達成に極めて有効である
ことの知見を得た。本発明は、上記の知見に立脚するも
のである。
以下に抑制したOおよび20ppm 以下に抑制したSと共に
含み、かつ下記式で示されるNi当量が21.0〜23.0の範囲
を満足し、残部は実質的にFeの組成になり、しかも清浄
度が 0.020%以下であることを特徴とする深絞り性およ
び張出し性に優れたプレス成形用オーステナイト系ステ
ンレス鋼(第1発明)である。 記 Ni当量(wt%) = 12.6(C+N)+0.35Si+1.05Mn+Ni+0.65
Cr+0.6Cu −0.4Al
ppm 以下に抑制したSと共に含み、かつ下記式で示され
るNi当量が21.0〜23.0の範囲を満足し、残部は実質的に
Feの組成になり、しかも清浄度が 0.020%以下であるこ
とを特徴とする深絞り性および張出し性に優れたプレス
成形用オーステナイト系ステンレス鋼(第2発明)であ
る。 記 Ni当量(wt%) = 12.6(C+N)+0.35Si+1.05Mn+Ni+0.65
Cr+0.98Mo+0.6Cu −0.4Al
第2発明において、その成分組成のうちの残部鉄に代替
する形で、さらにB:0.0010〜0.020 wt%を含有するこ
とを特徴とする深絞り性および張出し性に優れたプレス
成形用オーステナイト系ステンレス鋼(第3発明)であ
る。
した理由について説明する。 C:0.01〜0.10wt% Cは、強力なオーステナイト生成元素であるだけでな
く、オーステナイト相および加工誘起マルテンサイト相
の強化に極めて有効であって、深絞り性および張出し性
の向上には必須の成分であり、少なくとも0.01wt%、好
ましくは0.03wt%以上が必要である。しかし、0.10wt%
を超えると、時期割れ感受性および粒界腐食感受性が共
に高まるので、上限は0.10wt%、好ましくは0.08wt%と
する。
が、1.0 wt%を超えると時期割れが発生し易くなるた
め、1.0 wt%以下とする。なお、下限は、製鋼作業時に
おける脱酸の観点から、0.05wt%とすることが好まし
い。
オーステナイト相の安定化に寄与する成分であり、好ま
しくは0.10wt%以上を必要とするが、3.0 wt%を超える
と、オーステナイト相が安定になりすぎかえって深絞り
性の劣化を招くので、3.0 wt%以下とする。
熱間加工性の低下を招き、一方10.0wt%を超えると、プ
レス加工時にマルテンサイト相が生成し難くなるため、
6.0 〜10.0wt%の範囲に限定する。
方19.0wt%を超えるとδフェライトが生成し熱間加工性
が低下するため、15.0〜19.0wt%の範囲に限定する。
しく向上させる有用成分であるが、含有量が1.0 wt%未
満では、その添加効果に乏しく、一方、4.0 wt%を超え
ると、熱間加工性が阻害されるため、1.0 〜4.0 wt%の
範囲に限定する。
0.2 wt%より少ないとその改善効果に乏しいだけでな
く、時期割れ感受性が高まり、一方、2.5 wt%を超える
と、δフェライトが生成して熱間加工性および深絞り性
の劣化を招くので、0.2 〜2.5 wt%の範囲に限定する。
なお、深絞り性および耐時期割れ性が共に最も向上する
のは、Al:0.5 〜1.0 wt%の範囲である。
有効であるが、Alを含有する成分系では、Nが0.05wt%
を超えるとAlN が多量に析出し、耐時期割れ性および深
絞り性が劣化するため、0.05wt%以下とする。
ることが清浄度を低く抑えるために必要である。通常の
オーステナイトステンレス鋼では30〜50ppm のOを含む
が、過酷なプレス成形に供するためにはOを抑え介在物
を低減させる必要があるので、O量は20ppm 以下とす
る。
た介在物となる。Sが20ppm を超えるとMnSの量が増
し、かつ寸法も大きくなり、プレス成形時の破断起点と
なるので、Sは20ppm 以下とする。
明したが、本発明で所期した目的を達成するためには、
上記の成分調整だけでは不十分で、次に述べるNi当量お
よび清浄度を所定の範囲に制限することが肝要である。
まず、Ni当量について説明すると、このNi当量は、加工
誘起マルテンサイト変態の起こりにくさを示す指標であ
り、このNi当量が高いとオーステナイト相が安定にな
る。ここに、下記式で示されるNi当量が、21.0wt%未満
では、固溶化熱処理の状態で既にマルテンサイト相が生
成するようになり、深絞り性, 張出し性が共に劣化する
ようになる。一方、このNi当量が23.0wt%を超えると加
工誘起マルテンサイトの生成量が少なくなり、超深絞り
性は得られない。従って、Ni当量は21.0〜23.0wt%の範
囲に制限することが重要である。 記 Ni当量(wt%) = 12.6(C+N)+0.35Si+1.05Mn+Ni+0.65
Cr+(0.98Mo)+0.6Cu −0.4Al なお、本発明における上記のNi当量式は、引張試験で30
%の伸びを付与した試験片のマルテンサイト量をフェラ
イトスコープにてその相対量を求め、オーステナイト安
定度の指標である平山のNi当量式にCuとAlの項を追加
し、整理した式である。
中には、不可避に混入する不純物に起因して種々の介在
物が形成される。かかる介在物のうち、特に酸化物系介
在物や硫化物系介在物の量が多くなると、プレス加工時
に割れの起点となり、本発明で所期したほど良好な深絞
り性や張出し性が期待できなくなる。そこで、本発明で
は、下記式で示される清浄度dを 0.020%以下に規制す
ることによって、酸化物系介在物や硫化物系介在物に起
因した上記の悪弊を排除することにしたのである。 記 d={n/(p×f)}× 100 ここで、p:視野内のガラス板上の総格子点数 f:視野数 n:f個の視野における全介在物によって占められる格
子点中心の数
浄度を制限することによって、優れた深絞り性および張
出し性を得ることができるが、本発明ではさらに、必要
に応じてMoやBを下記の範囲で含有させることもでき
る。
く知られている。従って、本発明においては、適量のMo
を使うことによって耐食性の一層の向上を図ることがで
きる。この耐食性の向上のためには少なくとも0.03wt%
の添加が必要である。一方、3.0 wt%を超えると、δフ
ェライトが多量に生成して熱間加工性および深絞り性の
劣化を招くので、Moは0.03〜3.0 wt%の範囲に限定す
る。
性を向上させるのに極めて有効な成分であるが、含有量
が0.0010wt%未満ではその添加効果に乏しく、一方0.02
0 wt%を超えると、耐食性が劣化するため、含有させる
場合には0.0010〜0.020 wt%の範囲に限定する。
イト系ステンレス鋼スラブを、通常の熱間圧延および冷
間圧延にて、1.0 mm厚に仕上げ、ついで1100,30秒の焼
鈍を施した。ここに、各合金鋼の溶製は、電気炉で溶解
後、AOD 炉でSを0.001 wt%まで低減したのち、再度仕
上げ脱炭し、ついで一定時間放置して介在物を浮上させ
ることにより行った。かくして得られた焼鈍板の片面に
保護ビニールを貼り、50mmφ平底ポンチによる円筒状深
絞り試験を行った。保護ビニール貼り面をポンチ側とす
ることにより、深絞りカップ底部の張出し変形を均一化
でき、張出し変形量も多くなる。この試験により、限界
絞り比(LDR)が2.20以上か、それ未満かで、深絞り
性の優劣を評価した。また張り出し性は、絞り比=2.20
のカップ底部の張出し部を目視で観察し、介在物に起因
した割れ発生の有無で評価した(試験数 100個)。
(No. 1〜4)はいずれも、LDR≧2.20を示し、また
カップ底部の張出し部には介在物に起因した割れの発生
もなく、深絞り性と張出し性に優れていることが確かめ
られた。これに対し、No. 5の比較鋼は、LDRは2.20
以上示すものの清浄度が0.020%を超えているため、絞
り比=2.20のカップ底部に割れ(100個中7個割れ)が認
められた。また、No. 6の比較鋼は、AlとCuを含んでい
ないSUS 304 鋼であるため、LDRが2.20未満であり、
介在物起因の割れの評価まで至らなかった。
深絞り性と張出し性が格段に優れたプレス成形用オース
テナイト系ステンレス鋼を得ることができ、オーステナ
イト系ステンレス鋼の汎用性の一層の拡大が可能とな
る。
Claims (3)
- 【請求項1】 C:0.01〜0.10wt%、 Si:1.0 wt%以下、 Mn:3.0 wt%以下、 Ni:6.0 〜10.0wt%、 Cr:15.0〜19.0wt%、 Cu:1.0 〜4.0 wt%、 Al:0.2 〜2.5 wt%およびN:0.05wt%以下を、 20ppm 以下に抑制したOおよび20ppm 以下に抑制したS
と共に含み、かつ下記式で示されるNi当量が21.0〜23.0
の範囲を満足し、残部は実質的にFeの組成になり、しか
も清浄度が 0.020%以下であることを特徴とする深絞り
性および張出し性に優れたプレス成形用オーステナイト
系ステンレス鋼。 記 Ni当量(wt%) = 12.6(C+N)+0.35Si+1.05Mn+Ni+0.65
Cr+0.6Cu −0.4Al - 【請求項2】 C:0.01〜0.10wt%、 Si:1.0 wt%以下、 Mn:3.0 wt%以下、 Ni:6.0 〜10.0wt%、 Cr:15.0〜19.0wt%、 Mo:0.03〜3.0 wt%、 Cu:1.0 〜4.0 wt%、 Al:0.2 〜2.5 wt%および N:0.05wt%以下を、 20ppm 以下に抑制したOおよび20ppm 以下に抑制したS
と共に含み、かつ下記式で示されるNi当量が21.0〜23.0
の範囲を満足し、残部は実質的にFeの組成になり、しか
も清浄度が 0.020%以下であることを特徴とする深絞り
性および張出し性に優れたプレス成形用オーステナイト
系ステンレス鋼。 記 Ni当量(wt%) = 12.6(C+N)+0.35Si+1.05Mn+Ni+0.65
Cr+0.98Mo+0.6Cu −0.4Al - 【請求項3】請求項1または2に記載の鋼において、そ
の成分組成のうちの残部鉄に代替する形で、さらにB:
0.0010〜0.020 wt%を含有することを特徴とする深絞り
性および張出し性に優れたプレス成形用オーステナイト
系ステンレス鋼。
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