JPH09103481A - 生体適合性に優れた表面を有する医療用具およびその製造方法 - Google Patents

生体適合性に優れた表面を有する医療用具およびその製造方法

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JPH09103481A
JPH09103481A JP8275101A JP27510196A JPH09103481A JP H09103481 A JPH09103481 A JP H09103481A JP 8275101 A JP8275101 A JP 8275101A JP 27510196 A JP27510196 A JP 27510196A JP H09103481 A JPH09103481 A JP H09103481A
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JP
Japan
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hydrophilic polymer
group
azido
film
azide
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JP8275101A
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English (en)
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Takehisa Matsuda
武久 松田
Kazuhiko Inoue
和彦 井上
Nobutaka Tani
敍孝 谷
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 医用機能性と経済性を有し、かつ生体適合性
に優れた表面を有する医療用具を製造する。 【解決手段】 アジド基を有する親水性高分子またはア
ジド基を有する親水性高分子および2個以上のアジド基
を有する化合物と親水性高分子からなる組成物を医療用
具の表面に存在させたのち、光照射することにより、該
親水性高分子をチッ素原子を介する共有結合によって医
療用具の表面に結合させて生体適合性に優れた表面にす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生体適合性に優れ
た表面を有する医療用具およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、医学の進歩とともに数多くの医療
用具が開発されている。これらの医療用具には、医用機
能性、生体適合性および経済性が要求される。
【0003】前記医用機能性とは、たとえば血液バッグ
のばあいには血液を貯蔵する機能、人工腎臓用透析膜や
濾過膜のばあいには血液を透析または濾過する機能、人
工心臓のばあいには血液ポンプとしての機能、コンタク
トレンズのばあいにはレンズとしての機能などのよう
に、その用具の形状や力学的特性によって支配される性
質である。
【0004】また、前記生体適合性とは、医療用具が生
体組織や体液などの生体成分と接触したときにそれら生
体成分にダメ―ジを与えない性質、すなわち安全性を確
保する性質であるが、これは生体組織や体液など生体成
分と接触する医療用具の表面、とくに数10Åの極表面
の性状によって支配される性質である。
【0005】現在開発されている医療用具には、医用機
能性は満たしているが、生体適合性が不充分なため、そ
の使用方法が限定される欠点がある。とくに、血液と接
触する医療用具では、血液と接触する部位に血栓が形成
したり、補体を活性化するなどの大きな欠点がある。
【0006】このような現状を踏まえ、医療用具の表面
改質により、医用機能性を確保しながら生体適合性を向
上させようとする研究が積極的に進められている。
【0007】たとえば、材料表面に放射線照射やグロー
放電処理を行ない、アクリルアミドやエチレングリコー
ルなどの親水性モノマーをグラフト重合することにより
表面を親水性とし、生体適合性を向上させる方法があ
る。
【0008】しかし、この方法では、装置が高価なため
経済性に劣ったり、中空状の内面や複雑な形状を有する
ばあいには均質にグラフトすることが困難であったり、
親水性高分子自体をグラフトすることは困難であるなど
多くの欠点を有する。
【0009】また、生理活性物質を利用する例として、
ヘパリンを医療用具表面から徐放させたり、ウロキナー
ゼを表面に固定して、血栓形成を防ぐ方法が開発されて
いる。
【0010】しかし、これらの方法では、ヘパリンが徐
放し終ったりウロキナーゼが失活すると血栓が形成する
点、さらに成形方法や医療用具の基材が限定され、かつ
高価になるなどの欠点がある。
【0011】一方、アジド基などの感光性基を有する化
合物は、写真、印刷技術、接着、塗装技術などの分野で
は広く応用されており、とくにフォトレジスト方面にお
いて数多くのアジド化合物が実用化されている。しか
し、このような技術を生体適合性を有する医療用具に応
用しようとする試みはなされていない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来、医用
機能性と経済性を有し、かつ生体適合性に優れた表面を
有する医療用具が開発されていないという問題を解決す
るためになされたものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、生体適合
性に優れた表面を医療用具の表面に安定的かつ経済的に
付与する方法について鋭意研究を重ねた結果、アジド基
を有する親水性高分子またはアジド基を有する親水性高
分子および2個以上のアジド基を有する化合物と親水性
高分子とからなる組成物を材料表面に存在させ、短時間
光照射することにより、アジド基が反応性に富むナイト
レン基に転化し、材料表面と親水性高分子、あるいはそ
れに加えて親水性高分子間に、チッ素原子を介する共有
結合が生成し、親水性高分子よりなる層が材料表面に固
定され、前記問題が解決されることを見出し、本発明を
完成するに至った。
【0014】すなわち、本発明は、親水性高分子がチッ
素原子を介する共有結合によって表面に固定されている
ことを特徴とする生体適合性に優れた表面を有する医療
用具、およびアジド基を有する親水性高分子またはアジ
ド基を有する親水性高分子および2個以上のアジド基を
有する化合物と親水性高分子からなる組成物を材料表面
に存在させたのち、光照射することにより、該親水性高
分子を材料表面に結合させることを特徴とする生体適合
性にすぐれた表面を有する医療用具の製造方法に関す
る。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明においては、前述のごと
く、医療用具を構成する材料表面と親水性高分子、ある
いはそれに加えて親水性高分子間にチッ素原子を介する
共有結合を形成せしめ、前記材料表面に親水性高分子よ
りなる層が固定されるが、前記チッ素原子を介する共有
結合は、アジド基を有する化合物中のアジド基の反応に
より形成される。
【0016】前記アジド基を有する化合物の例として
は、たとえばカルボニルアジド基を有する化合物(R−
CON3)、スルホニルアジド基を有する化合物(R−
SO23)、芳香族アジド基を有する化合物
【0017】
【化1】
【0018】などがあげられるが、安定性のよい芳香族
アジド基を有する化合物またはスルホニルアジド基を有
する化合物が好ましい。また、より長波長(>320n
m)の光でナイトレンに転化できる点で、ニトロ基のよ
うな電子吸引性置換基を有する芳香族アジド基を有する
化合物、i線またはg線感光性のビスアジド化合物がさ
らに好ましい。
【0019】このようなアジド基を有する化合物のうち
2個以上のアジド基を有する化合物の具体例としては、
たとえば表1に示すような一般のビスアジド化合物、1
分子中に2個以上のアジド基を導入したアジド化ポリマ
ーなどがあげられるが、これらに限定されるものではな
い。
【0020】
【表1】
【0021】前記親水性高分子の例としては、たとえば
一般の合成親水性高分子、蛋白質、多糖類、その他の生
体適合性に優れた高分子があげられるが、これらに限定
されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2
種以上併用してもよい。
【0022】前記合成親水性高分子の具体例としては、
たとえばポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルア
ミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコー
ル、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリ
ル酸、ポリビニル硫酸、ポリアリルアミンあるいはこれ
らの共重合体などがあげられるが、これらに限定される
わけではない。体液成分が吸着しにくいという点から、
ポリエチレングリコールなどのノニオン系のものが好ま
しい。なかでも、補体の活性化が少ないという点から水
酸基を持たないポリアクリルアミド、ポリジメチルアク
リルアミドなどのアクリルアミド系のものがさらに好ま
しい。
【0023】前記蛋白質の具体例としては、たとえばア
ルブミン、コラーゲン、ゼラチン;ウロキナーゼ、スト
レプトキナーゼ、プラスミノーゲンアクチベータなどの
酵素類などがあげられるが、これらに限定されるもので
はない。これらのうちでは、組織適合性に優れていると
いう点からはコラーゲンが好ましい。
【0024】前記多糖類の具体例としては、たとえばヘ
パリン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタ
ン硫酸、デキストラン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫
酸などがあげられる。これらのうちでは、血栓形成抑制
作用という点からはヘパリンが好ましい。
【0025】前記その他の生体適合性に優れた高分子の
具体例としては、たとえばキチン、プロスタグランジ
ン、その誘導体などがあげられる。
【0026】前記親水性高分子は、チッ素原子を介する
共有結合で医療用具の表面に固定されるが、前記結合
は、アジド基に光照射することにより生成したナイトレ
ン基が、次式に示すような化学反応、すなわち式(1)
で表わされる水素引抜反応、式(2)で表わされる2重
結合への付加やC−H結合への挿入、および式(3)で
表わされるカップリング反応を行なうことにより生成す
るものである。
【0027】
【化2】
【0028】なお、ナイトレン基は極めて反応性が高い
ために、前記反応以外での結合が少数生成するばあいも
ありうるが、実質的に親水性高分子が前記結合を介して
医療用具の表面に固定されているばあいには、本発明の
範囲に含まれる。
【0029】また、前記の反応が親水性高分子間に生
じ、架橋が生じるばあいがあるが、このようなばあいも
本発明の範囲に入る。なお、親水性高分子の水溶性が高
いばあいには、このような架橋を積極的に生じさせるば
あいもある。
【0030】本発明にいう医療用具とは、生体組織や体
液などの生体成分と接触して用いられるものである。こ
のような医療用具の具体例としては、たとえば血液バッ
グ、採尿バッグ、輸血セット、縫合糸、ドレーンチュー
ブ、各種カテーテル、ブラッドアクセス、血液回路、人
工血管、人工腎臓、人工心肺、人工弁、血漿交換膜、各
種吸着体、CAPD、IABP、ペースメーカー、人工
関節、人工骨頭、歯科材料、眼内レンズ、ソフトコンタ
クトレンズ、各種シャントなどがあげられるが、これら
に限定されるわけではない。
【0031】これら医療用具において、全表面が親水性
高分子を有する表面であってもよく、生体組織や体液な
どの生体成分と接触する部位のみが親水性高分子を有す
る表面からなっていてもよい。
【0032】つぎに、本発明の医療用具の製法について
説明する。
【0033】本発明に用いるアジド基を有する親水性高
分子において、アジド基の数は1個以上であるが、医療
用具の表面との結合安定性、および親水性高分子間の架
橋による親水性高分子層の安定性の点で、アジド基は複
数個あることが好ましい。
【0034】アジド基を有する親水性高分子はつぎの方
法で調製される。すなわち、親水性高分子の官能基とア
ジド基を有する化合物の他の官能基とを反応させてアジ
ド基を導入する。
【0035】たとえば、親水性高分子のカルボキシル基
に対して、アミノ基を有するアジド化合物を縮合試薬を
用いて縮合させる方法、親水性高分子の水酸基に対し
て、酸クロリド基あるいはアルデヒド基を有するアジド
化合物を反応させる方法、親水性高分子のアミノ基に対
して、カルボキシル基を有するアジド化合物を縮合試薬
を用いて縮合させる方法、N−ヒドロキシコハク酸イミ
ドエステル基あるいはエポキシ基を有するアジド化合物
を反応させる方法などがあげられる。
【0036】また、ポリアクリルアミドの様にアミド基
以外に活性な官能基を有しないものは、周知の方法(ホ
フマン分解)でアミド基をアミノ基に変換し、このアミ
ノ基を利用してアジド基を導入することができる。
【0037】アジド基を導入した親水性高分子を材料表
面に存在させる方法としては、アジド基を導入した親水
性高分子の水溶液またはコロイド溶液と材料表面とを接
触させ、材料表面に吸着させる方法、アジド基を導入し
た親水性高分子をメタノールのような揮発性有機溶媒に
溶解あるいはけん濁し、この液を材料表面に塗布あるい
は噴霧したのち乾燥し、親水性高分子の薄層を材料表面
に形成させる方法などがあげられるがこれらに限定され
るものではない。
【0038】また、前記アジド基を有する化合物と親水
性高分子とからなる組成物を材料表面に存在させる方法
として、たとえば該組成物をメタノールのような揮発性
有機溶媒に溶解あるいは懸濁させ、この液を材料表面に
塗布あるいは噴霧したのち乾燥させ、該組成物の薄層を
材料表面に形成させる方法、該組成物の水溶液またはコ
ロイド溶液と材料表面を接触させ、材料表面に吸着させ
る方法などがあげられる。また、アジド基を有する化合
物を材料表面に存在させたのち、そのうえに親水性高分
子を存在させるなどしてもよい。
【0039】前記親水性高分子の材料表面への結合は、
たとえば、アジド基を有する親水性高分子を材料表面に
存在させたのち、光照射することにより、容易に行なう
ことができる。またアジド基を導入する特別な操作が不
要な点および非固定物の洗浄による除去が容易な点で、
2個以上のアジド基を有する化合物と該親水性高分子と
からなる組成物を用いるのが好ましい。
【0040】前記光照射に用いる光源としては、一般的
に紫外線を発する高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀
灯などの各種水銀灯、エキシマレーザーなどを用いるこ
とができるが、i線あるいはg線感光性のビスアジド化
合物を用いるばあいや、ニトロ基を有する芳香族アジド
基を有する化合物のように320nm以上の光でナイト
レン基が生成するばあいには、フィルターにより短波長
域をカットすることにより、短波長紫外線による親水性
高分子や材料への影響を軽減することができる。この方
法によると、蛋白質などの親水性高分子を用いるばあい
にとくに好ましい。
【0041】なお、ナイトレン基の反応は極めて短時間
で完了するため、紫外線の照射時間は5分以内でよい。
【0042】光照射の方法は、親水性高分子を存在させ
た材料表面に直接照射する方法、または紫外線透過性を
有する材料のばあいは、親水性高分子を存在させた表面
と反対側より照射することもできる。
【0043】また、光ファイバーを利用することによ
り、複雑な形状を有する用具の内部表面の任意の部位に
照射することができる。
【0044】
【実施例】つぎに実施例を用いて本発明をさらに詳しく
説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0045】実施例1 N,N−ジメチルアクリルアミド4重量部(以下、部と
いう)に対してアクリルアミド1部を用い、アセトン
中、過酸化ベンゾイルおよびN,N−ジメチル−p−ト
ルイジルをレドックス系開始剤とする共重合を行なっ
た。生成した白沈をろ別し、アセトンで充分洗浄し、
N,N−ジメチルアクリルアミド−アクリルアミド共重
合体(以下、PDMAという)をえた。
【0046】このようにしてえられたPDMAを周知の
方法でホフマン分解し、アミド基をアミノ基に変換した
(田中浩雄他、高分子論文集、33、No.6、309
頁(1976)、「ポリアクリルアミドのホフマン分
解」、他参照)。反応混合溶液を大量のアセトン中に注
ぎ、ポリマーを回収した。該乾燥したポリマーを少量の
水に溶かし、塩酸酸性としたのち、アセトンより再沈殿
し、アミノ基を導入したPDMA(以下、アミノ化PD
MAという)をえた。
【0047】このようにしてえられたアミノ化PDMA
100mgを10mlの水に溶かし、トリエチルアミ
ンを加えてアミノ基を遊離し、のちに示す水溶性アジド
化合物Sulfo−SANPAH(略号、PIERCE
社製)100mgを加えて溶かし、遮光下、室温で1晩
放置した。反応溶液を、分画分子量1000の透析膜で
透析して低分子不純物を除去したのち、凍結乾燥し、ア
ジド基を導入したPDMA(以下、アジド化PDMA1
という)をえた。
【0048】このようにしてえられたアジド化PDMA
1のメタノール溶液(約1重量%)を調製し、この溶液
約25μlを、約2cm2に切取った資料フィルム上に
塗布、展開したのち、風乾して溶媒を留去した。アジド
化PDMA1をキャストしたフィルム面に、高圧水銀灯
を用いて紫外線を1分間照射した。こののちフィルムを
メタノール、水で充分洗浄した。資料フィルムとして、
ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリウレ
タン製の各フィルムを用いた。
【0049】光照射によりアジド化PDMA1に基づく
親水性高分子層を有するフィルム表面は、水ぬれ性が顕
著に改善され、ESCAによる表面分析の結果、表面よ
り数10Å以上にわたり、ほとんど均質な該親水性高分
子層が形成されていることが確認された。
【0050】えられた該親水性高分子層を有するフィル
ムと、この層を有さない元のフィルムとを健常人全血よ
り調製した多血小板血漿に浸漬し、37℃で1時間イン
キュベートしたのち、生理食塩水でリンスし、グルタル
アルデヒドで固定した。これらのフィルム上の血小板粘
着を観察したところ、親水性高分子層を有さない元のフ
ィルムには数多くの血小板が粘着していたが、該親水性
高分子層を有するフィルム面には、ほとんど血小板が粘
着していなかった。
【0051】実施例2 アミノ化PDMA 100mgと、のちに示すアジド化
合物ANB−NOS(略号、PIERCE社製)80m
gを用いたほかは実施例1と同様にしてアジド基を導入
したPDMA(以下、アジド化PDMA2という)をえ
た。ただし、溶媒として、水のかわりにメタノールを用
いた。溶媒を留去し、乾燥したのちに少量の水に溶か
し、実施例1と同様に透析してアジド化PDMA2を精
製した。ついで実施例1と同様にしてえたアジド化PD
MA2に基づく親水性高分子層を有するフィルム表面
は、水ぬれ性が顕著に改善され、血小板の粘着もほとん
ど見られなかった。また、ESCAによる表面解析で
も、実施例1と同様、数10Å以上の親水性高分子層が
形成されていることが確認された。
【0052】実施例3 アミノ化PDMA 100mgと、のちに示すアジド化
合物HSAB(略号、p−アジド安息香酸と、N−ヒド
ロキシコハク酸イミドとを、ジオキサン中、N,N′−
ジシクロヘキシルカルボジイミドを用いて脱水縮合する
ことによりえた)65mgとを用いたほかは、実施例2
と同様にして、アジド基を導入したPDMA(以下、ア
ジド化PDMA3という)をえた。ただし、HSABは
少量のテトラヒドロフラン(THF)に溶解して加え
た。以下、実施例2と同様にしてアジド化PDMA3の
精製を行なった。実施例1と同様にしてえられたアジド
化PDMA3に基づく親水性高分子層を有するフィルム
表面は、水ぬれ性が顕著に改善され、血小板の粘着もほ
とんど見られなかった。また、ESCAによる表面解析
でも、実施例1と同様、数10Å以上の親水性高分子層
が形成されていることが確認された。
【0053】実施例4 平均分子量約4万のポリアクリルアミドを実施例1と同
様の方法でホフマン分解し、アミド基の一部をアミノ基
に変換した。反応混合溶液を大量のメタノール中に注
ぎ、ポリマーを回収した。該乾燥したポリマーを少量の
水に溶かし、塩酸酸性としたのち、メタノールより再沈
殿し、アミノ基を導入したポリアクリルアミド(以下、
アミノ化PAAmという)をえた。アミノ化PAAmと
Sulfo−SANPAHを用い、実施例1と同様にし
て、アジド基を導入したポリアクリルアミド(以下、ア
ジド化PAAmという)をえた。
【0054】このようにしてえられたアジド化PAAm
の水溶液(1重量%)を調製し、資料フィルムを浸漬し
て1時間放置した。資料フィルムを浸漬したまま、溶液
を透過して、高圧水銀灯より紫外線を5分間照射した。
フィルムを取出し充分水洗した。資料フィルムとしてテ
フロンフィルム、ポリスチレンフィルムを用いた。えら
れたアジド化PAAmに基づく親水性高分子層を有する
フィルム表面は、水ぬれ性が顕著に改善され、血小板の
粘着もほとんど見られなかった。また、ESCAによる
表面解析により、数10Å以上の該親水性高分子層がフ
ィルム表面に形成されていることが確認された。
【0055】実施例5 牛血清アルブミン1gを0.15molリン酸緩衝液
(pH8.5)に溶かし、約10重量%溶液とした。こ
れに水溶性アジド化合物Sulfo−SANPAH 1
0mgを加えて溶かし、遮光下、冷蔵庫中で放置し、ア
ルブミンにアジド基を導入した。
【0056】この溶液中に、約2cm2に切取ったポリ
スチレンフィルムを1時間浸漬し、アジド基を導入した
アルブミンをフィルム表面に吸着させた。
【0057】フィルムを取出し、生理食塩水でリンスし
たのち、高圧水銀灯を用いて紫外線を5分間照射した。
ただし、紫外フィルターを用い310nm以下をカット
して照射した。
【0058】フィルムを生理食塩水で充分洗浄した。
【0059】えられたアルブミン層を有するフィルム表
面は、水ぬれ性が顕著に改善され、血小板の粘着もほと
んど見られなかった。また、ESCAによる表面解析の
結果、数10Å以上のアルブミン層が形成されているこ
とが確認された。
【0060】参考例1 実施例1でえられたPDMA 10部に対して、ビスア
ジド化合物2,6−ジ−(4′−アジドベンジリデン)
−シクロヘキサノン1部を混合してメタノールに溶か
し、約1重量%溶液を調製した。ポリエチレンテレフタ
レートフィルムを資料フィルムとし、以下実施例1のば
あいと同様に実施した。フィルム表面の水ぬれ性は顕著
に改善され、血小板の粘着もほとんど見られなかった。
ESCAによる表面解析の結果、数10Å以上のPDM
Aに基づく親水性高分子層が形成されていることが確認
された。
【0061】参考例2 アセトン中、過酸化ベンゾイルおよびN,N−ジメチル
−p−トルイジルをレドックス系開始剤として、N,N
−ジメチルアクリルアミドモノマー((株)興人製)を
重合し、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)(以
下、PDMAAという)をえた。このようにしてえたP
DMAA 95部(重量比)に対して、ビスアジド化合
物として2,6−ジ−(4′−アジドベンジリデン)−
シクロヘキサノン5部(重量比)を混合してメタノール
に溶かし、約0.1重量%溶液を調製した。
【0062】この溶液約20μlを、約2cm2に切取
った試料フィルム上に塗布、展開したのち、風乾して溶
媒を留去した。このようにしてビスアジド化合物を含ん
だPDMAAをキャストしたフィルム面に、高圧水銀灯
を用いて紫外線を1分間照射した。こののちフィルムを
メタノール、水で充分洗浄した。前記試料フィルムとし
て、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンまたは
ポリウレタンからなる各フィルムを用いた。
【0063】光照射によりPDMAAに基づく親水性高
分子層を固定したフィルム表面は、水ぬれ性が顕著に改
善され、血小板の粘着もほとんどみられなかった。ま
た、ESCAによる表面分析の結果、表面より数10Å
以上にわたり、ほとんど均質な該親水性高分子層が形成
されていることが確認された。
【0064】参考例3 牛血清アルブミン1gを0.15molリン酸緩衝液
(pH8.5)に溶かし、約10重量%溶液とした。こ
れに、水溶性ビスアジド化合物である4,4′−ジアジ
ドスチルベン−2,2′−ジスルホン酸ソーダ10mg
を加えて溶かした。
【0065】この溶液中に、約2cm2に切取ったポリ
スチレンフィルムを1時間浸漬し、水溶性ビスアジド化
合物を含んだアルブミンをフィルム表面に吸着させた。
【0066】フィルムを取出し、生理食塩水でリンスし
たのち、高圧水銀灯を用いて紫外線を5分間照射した。
ただし、紫外フィルターを用い310nm以下をカット
して照射した。ついでフィルムを生理食塩水で充分洗浄
した。
【0067】このようにしてえたアルブミン層を有する
フィルム表面は、水ぬれ性が顕著に改善され、血小板の
粘着もほとんど見られなかった。また、ESCAによる
表面解析の結果、数10Å以上のアルブミン層が形成さ
れていることが確認された。
【0068】
【化3】
【0069】
【発明の効果】本発明の生体適合性に優れた親水性高分
子よりなる表面を有する医療用具は、生体組織や体液な
どの生体成分と接触したばあいに優れた生体適合性を示
し、高い安全性を有するものである。
【0070】本発明の方法により、アジド基を有する親
水性高分子またはアジド基を有する親水性高分子および
2個以上のアジド基を有する化合物と親水性高分子とか
らなる組成物を、材料表面に存在させたのち、光照射す
ることにより、親水性高分子をその表面に簡単に固定で
きるため、既存の医療用具をはじめこれまで生体適合性
に欠け医療用具としては適していない材料にも容易に生
体適合性表面を付与することが可能となり、広範な材料
が医療用具として使用可能となる。さらに、医療用具の
極表面の改質であるため、その医療用具の有する医用機
能性や経済性にはほとんど影響を与えない利点もある。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 親水性高分子がチッ素原子を介する共有
    結合によって表面に固定されていることを特徴とする生
    体適合性に優れた表面を有する医療用具。
  2. 【請求項2】 アジド基を有する親水性高分子またはア
    ジド基を有する親水性高分子および2個以上のアジド基
    を有する化合物と親水性高分子からなる組成物を材料表
    面に存在させたのち、光照射することにより、該親水性
    高分子を材料表面に結合させることを特徴とする生体適
    合性に優れた表面を有する医療用具の製造方法。
JP8275101A 1989-05-11 1996-10-17 生体適合性に優れた表面を有する医療用具およびその製造方法 Pending JPH09103481A (ja)

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