【発明の詳細な説明】
二重溝配列を備えた面シール
発明の分野
本発明は、一方は静止し他方は回転する、対向して相互作用する面型のシール
要素間で、流体静/動力学または空気静/動力学力を生成するために、密封され
た流体が使用される回転軸に対するシール装置に関する。これらの力は、シール
要素の僅かに分離した非接触作動を提供し、これにより低流体漏れを維持しなが
ら面磨耗と摩擦動力損失を最小化する。
発明の背景
ギャップ又は非接触面シールとも言われる回転流体膜面シールが、高速及び/
又は高圧回転装置に通常適用され、面接触する通常の機械的な面シールを使用す
ることにより、結果として過度の熱発生および磨耗となる。非接触作動により、
上昇速度と言われるある最低速度以上で軸が回転する度のこの望ましくない面接
触が避けられる。
上記非接触作動を達成する様々な方法がある。より一般的に使用される方法の
一つに、シール面の一方における浅い渦巻き状の溝パターンの構造が含まれる。
溝付き面と対向するシール面は、比較的平坦で滑らかである。これら2つのシー
ル面がシール間隙を規定する面領域はシール境界面と言われる。
シール面の一方上の上述した渦巻き状の溝パターンは、通常外周から内側に延
び、シール境界面の内径より大きな溝径と言われる特定の面直径において終端す
る。溝径と内部境界面の径との間の溝な
し領域は、流体の流出に対する制限としてふるまう。渦巻き状パターンにより供
給される流体はこの制限を通過せねばならず、シール面が分離される場合のみ通
過可能である。この作用方法は圧力の増大を介してなされる。面が接触状態にあ
ると、流体が制限にまさってだけ圧縮され、従って圧力が増大される。圧力によ
り、互いに面を保持する力よりも最終的に大きくなる分離力が生じる。その瞬間
に、シール面が分離し、流体の逃げを可能にする。シールの作動中、均衡が、渦
巻き汲み上げを介する流体の流入と、面分離を介する流体の流出の間でそれ自身
に確立される。従って、一方の面がその対向面に関連して回転している限り、と
いうことを意味する、シールが作動している限り面分離が存在する。
しかし、渦巻き汲み上げは、シール面間の分離量を決定する唯一の要因ではな
い。まさに渦巻きが溝径を通りシール境界面の溝なし位置へと流体を駆動可能な
ように、圧力差により可能にされる。境界面の溝付き端部と溝なし端部間に充分
な圧力差が存在する場合、流体は又、境界面の溝なし位置へと押され、それによ
り面を分離し、間隙を形成する。
一方は回転速度について、他方は圧力差についてシール面間で間隙が形成され
うる両方の方法は、両方の影響が作動シール上で組合わさるとしても、異なり別
個である。圧力差がなく、シール面の分離が面回転により厳密に発生する場合、
流体の流れによる力は、シールされた流体が液体の場合は、流体動力学力として
知られ、シールされた流体が気体の場合は、空気動力学力として知られている。
逆に、2つのシール面間に相互回転がなく、面分離が厳密にシール境界面の両
端間の圧力差の結果である場合、流体の流れによる力は、シールされた流体が液
体の場合は、流体静力学力と言われ、シールされた流体が気体の場合は、空気静
力学力と言われる。以下において、これら液体と気体効果という用語は、液体と
気体シールの両方を論じる場合、より慣用的に使用されるので、流体静力学およ
び流体動力学という用語は、液体と気体効果の両方に対して使用される。
典型的な渦巻き状の溝シールは、シール作動の全持続中の面接触の漏れと欠如
に関連した、受容可能な性能を提供する必要がある。それは、最高速度および最
高圧力においてだけでなく、静止時、始動時、加速時、装置暖機運転の期間、ま
たは停止時においても、シール作動の全持続中の面接触の漏れと欠如に関連した
、受容可能な性能を提供する必要がある。通常の作動状態において、圧力と速度
は一定に変化し、その結果、走行間隙に対する連続調整になる。これらの調整は
自動であり、すなわち渦巻き状の溝シールの鍵となる特性の一つがその自己調整
能力である。速度または圧力に変化があると、面間隙は新しい一組の状態へと自
動的に調整する。流体静力学力および流体動力学力によりこの調整が生じる。
速度および圧力の作動環境は通常非常に広く変化し、必要なシール設計は妥協
となるにちがいない。速度および圧力のゼロ付近において受容可能であるべきそ
の性能のために、それは作動速度および圧力のおいて最適ではない。これは単純
に、圧力および速度の両方
に関連して、速度がゼロおよび圧力差がゼロから作動状態へとシールを持ち上げ
ねばならない、という事実のためである。
特に、シール作動に重大なのは始動である。シールが遠心気体圧縮機に適用さ
れる場合、軸が回転し始める前に、全吸込圧力差がシール上に強いられることが
よくある。これは、シール面が摩擦で互いにロックすることにおいて危険性を示
す。流体静力学力が、シール面を接触状態に維持する圧力に打ち勝つのに不十分
である場合に、面ロックが生じる。面ロックにより、接触するシール面間の過度
の剥離摩擦が、重大な磨耗または内部シール構成部品の破損を引き起こし、シー
ル破壊へと導く可能性がある。
それには第1に、渦巻き状の溝は、全速度の非接触作動のために、シール面を
流体動力学的に分離することが可能でなければならない。これは通常、かなり短
く比較的深い渦巻き状の溝を必要とする。第2に、渦巻き状の溝は、面ロックを
防止するために、始動/停止に対して流体静力学的にシール面に負荷をかけない
ことが可能でなければならない。このためには、溝は長さにおいて延伸しなけれ
ばならない。延伸された溝は、全速度作動中に交替でより多くの分離と漏れを引
き起こす。短く比較的深い渦巻きを有する典型的な3.75インチの軸シールの全速
時の漏れは、1000psigおよび10000rpmにおいて約0.9SCFM(すなわち、標準立方
フィート/分)である。しかし、延伸された溝を有するそのようなシールに対す
る全速時の漏れは、同じ条件下で2.4SCFMと、前の値のほとんど3倍に達しうる
。必要以上の漏れの絶え間ない間接費は、かなりの作動コストを
示し、非常に望ましくない。
渦巻き状の溝設計の実施は、米国特許第3,109,658号に遡り、ここでは、気体
をシールすることが可能な液体障壁を発現させるために、2つの対向する渦巻き
状の溝が互いに対して油を汲み上げる。かかる配列は、気体をシールするために
流体力の利用において本質であるように、速度だけでなく圧力における能力にお
いて制限される。
別の周知の配列が、米国特許第3,499,653号において知られている。
局所渦巻き状の溝についてのこの境界面の設計は、流体静力学的効果に大いに関
与する。境界面ギャップは、溝なし端部でより狭く、渦巻き状の溝でより広い円
錐形で設計される。従って、渦巻き状の溝汲み上げが、より広いギャップを横切
ってより効果的でなくなるので、渦巻き状の溝と流体動力学力の効果は抑えられ
る。同様に、これはシールの安定性に影響し、その最高圧力および最高速度能力
を制限する。
更に周知の配列が、米国特許第4,212,475号により知られている。ここでは、
渦巻き状の溝自身が、流体動力学パターンだけでなく、流体静力学パターンとし
ての両方の作用をしようとし、ギャップの円錐形状の必要性を削除するために使
用され、そのため渦巻き状の溝の流体動力学力のかなりの度合いが、シール境界
面に自己配列特性を与えるために適用されうる。並列位置からの偏差が、シール
作動中に半径方向または接線方向に発生するかどうかに関係なく、自己配列特性
が、並列位置へと戻す方向にシール境界面を押す。これにより、結果として安定
性が改善され、性能が向上し、圧力および
速度に関連して制限を加える。
上記に要約したような周知の流体シールが、流体静力学および流体動力学シー
ル特性の両方を提供しようと試みられてきたが、それでもやはり、直接の面接触
を効果的に最小にし、または避け、且つシール間の面荷重を最小にし、そのため
に厳密な摩擦動力要求と面間の直接の摩擦磨耗を避けるように、アセンブリが最
低摩擦で始動できるようにしながら、シールの始動と停止を容易にさせる所望の
流体静力学特性を提供し、それと同時に、特に高速度および高圧力をもたらす広
範囲な作動条件下で、相対的に回転可能なシール面間の所望の流体動力学特性を
提供するために、これら流体静力学特性および流体動力学特性の組み合わせを最
適にするその能力に関して、周知のシールには欠陥がある。
従って、本発明の目的は、対向するシール面の一方に溝パターンを使用するタ
イプの、改善された流体シールを提供することであり、改善されたシールは、始
動から高速度および高圧力をもたらす条件までの範囲にある作動条件を含む、大
幅により広範囲の作動条件下で、改善されたシール性能を可能にするために、流
体静力学特性および流体動力学特性のより最適化された組み合わせを提供する。
本発明の改善されたシール配列において、溝パターン(通常、シール面の一方
のみで規定される)には、一方は他方よりも大幅に深い互いに連絡する第1と第
2の溝配列が含まれ、それにより、より深い配列が、所望の流体動力学特性を提
供するために特に効果的となり、一方でより浅い配列が、所望の流体静力学特性
を提供するた
めにより効果的となる。同時に、溝配列と、シールの低圧力側から溝パターンを
分離する溝なし環状ランド、または堰との間に浅い配列が一般に内挿されるよう
に、これらの配列が位置決めされ、それにより、所望の流体静力学および流体動
力学シール特性の両方が得られ、しかし同時に、堰を横切り低圧力側へのシール
流体(例えば、気体)の漏れが最小化され、そのためシールの性能効率が改善さ
れる。
加えて、このシール特性と性能特性の最適化が更に、シール面上に規定される
周囲ランドに相対して、溝パターンまたは構成を最適にすることにより改善され
、そのため対向するシール面間に形成される流体膜が、シール面の歪みを最小に
しながら、より一様な圧力分布とシール性能をもたらし、次にそれが、対向する
シール面間の直接接触および摩擦磨耗をさらに回避または最小にしながら、対向
するシール面間のギャップの最低幅に関して、シール性能を最適化する際の手助
けをする。
本発明の改善されたシールにおいて、手短に上述したように、溝パターンには
、シールの周囲の高圧力側から円周方向および半径の内方向に角度を付けて円周
に配列される、一連の溝により規定される深い溝配列が含まれ、その角度付き溝
は、渦巻き、円、または直線構造でありえる。これらの角度付き溝は、比較的深
く、シール面を横切った途中でのみ放射する。その半径方向の内端部において、
角度付けられた深い溝は、より深い溝配列の半径の内方向に位置決めされるが、
中間の溝なし環状ランド、または堰によりシールの低
圧力側から分離する浅い溝配列と連絡する。この浅い溝配列は、より深い溝配列
の小部分であり、シール境界面の半径方向の外側と内側境界との間に規定される
ような、その実質的に中央領域における対向するシール面間に、流体静力学力を
作り出すために効果的である深みを有する。好適な実施例において、隣接する溝
間の中間ランド領域が、溝の半径方向内端部に隣接する場合でさえも、実質的に
一定幅を維持するために、隣接する溝の側が通常互いに平列関係に延伸するよう
に、溝パターンと関連する全ての溝が形成され、これらのランドを越えて流れる
流体における圧迫膜効果を最大にし、従って推力軸受け支持を高めるために、こ
れらのランドにより、全速回転における、またはその近傍でのシール面接触の回
避がもたらされる。
上述したように、改善されたシール配列はまた、近接し、角度付けられた深い
溝の内端部から半径の内方向に放射する、円周方向に間隔を開けられた一連の浅
い溝により、浅い溝配列を好適に形成し、その浅い溝は堰において終端する。こ
れらの浅い溝は、中央シール面領域において改善された流体静力学シール特性を
提供し、特に浅い溝の半径方向内端部に隣接する、隣接する浅い溝の間のランド
領域を増大させ、高速回転中の対向するシール面間のより良い流体圧迫膜効果を
提供するために、深い溝よりも半径方向に相対して小さな角度(好適な実施例で
は、この角度はゼロである)で半径の内方向に角度付けられる。
流体静力学効果のある比較的浅い内部溝パターンに対する更なる
改善は、回転速度がゼロ又はその近傍である条件で、溝及び浅い溝パターン上に
形成される流体静力学的圧力場の、円周方向の不均一性の結果として生じる、如
何なるシール面歪みの減少および削除を目的としてなされる。この改善は、浅い
内部溝パターンの内端部を相互接続する狭く、浅い円周の溝である。かかる浅い
円周の溝は、円周方向に圧力場の不均一性を均一化するようふるまい、その結果
として、如何なる面歪みをも抑え、面間の分離の度合いが極端に低い場合でさえ
も、面対向接触がない、または最小の面対向接触のみで一様な面分離を生成する
。
本発明の他の目的及び趣旨は、以下の明細書を読み、添付図面を点検すること
に基づき、この一般的なタイプのシールについて当業者に明らかにすることであ
る。
図面の簡単な説明
図1は、回転軸に関連した、溝付き面シールのような、概ね従来の流体面シー
ル配列を示す中央部分断面図である。
図2は、図1におけるライン2−2に概略沿って、本発明の実施例による回転
シール・リングの面を示す図である。
図3は、より詳細に溝パターンを示すための、図2の一部の部分拡大図である
。
図4は、図3におけるライン4−4に概ね沿った部分断面図である。
図5と図6は、図3と図4にそれぞれ対応するが、その変形を示す図である。
図7は、図2に類似しているが、内部溝パターンの更なる変形を示す図である
。
図8は、図2に類似しているが、内部溝パターンの尚に更なるおよび好適な変
形を示す図である。
図9は、より詳細に溝パターンを示すための、図8の一部の部分拡大図である
。
図10は、図9におけるライン10−10に概ね沿った部分断面図である。
図11と図12は、図9と図10にそれぞれ対応するが、その変形を示す図で
ある。
いくつかの専門用語が、参照のみにおける便宜のために以下の説明で使用され
るが、限定はされない。例えは、「上方へ」、「下方へ」、「右方向へ」、およ
び「左方向へ」という用語は、参照される図面における方向を言う。「内方向へ
」および「外方向へ」という用語はそれぞれ、アセンブリおよびその表される部
品の幾何学中心に向かう、及びそこから離れる方向を言う。前記専門用語には、
特定的に述べられる用語、その派生語、および同様な意味の用語が含まれる。
発明の詳細な説明
図1を参照すると、典型的な溝付き面シール・アセンブリ10とその周辺が示
されている。この周辺は、ハウジング11と該ハウジングを介して延伸する回転可
能軸12からなる。シール・アセンブリ10は、環状空間13内に流体(圧縮ガスのよ
うな)を密封し、14における周
辺への流体の逃げを制限するために設けられる。シール・アセンブリの基本構成
部品には、軸12上に回転不可能に装着される環状回転可能シール・リング19の半
径方向に延伸する平坦面18、とは反対のシール関係にある半径方向に延伸する平
坦面17を有する環状で、軸方向には移動可能であるが、回転不可能なシール・リ
ング16が含まれる。リング19は通常、(図2の)矢印の方向に回転する。シール
・リング16は、ハウジング11の空洞21内に配置され、回転可能シール・リング19
に対して概ね同心に保持される。ハウジング11とシール・リング16の間には、リ
ング16だけでなく、空洞21の回りに等距離に配置された複数のバネの回転を防止
するための、従来的な回転防止装置(不図示)がある。バネ22はシール・リング
16をシール・リング19との係合方向へと押しつける。Oリング23が、シール・リ
ング16とハウジング11間の空間を密封する。シール・リング23が、同心にあり、
図示の軸12上にネジ込まれる締め付けナット25によるように、軸12上に固定され
るスリーブ24により軸位置に保持される。Oリング・シール26が、シール・リン
グ19と軸12との間の漏れを妨げる。
シール・リング19の半径方向に延伸する面18、およびシール・リング16の半径
方向に延伸する面17はシール関係にあり、その間で環状接触領域を規定し、これ
がシール境界面となる。このシール境界面27は、リング19の周囲の外径およびリ
ング16の内径により規定され、これらは、例示の実施例において、それぞれ、高
圧力流体および低圧力流体にさらされる直径となる。作動時に、シール・リング
19のシール面18に形成される溝パターン(以下に説明するような)により生成さ
れるような流体膜のために、非常に狭い間隙がシール面17-18間で維持される。
代替として、溝パターンは、シール・リング16のシール面17に形成することが可
能で、さらに効果的となる。前記狭い間隙は、摩擦熱および磨耗の発生を防止す
るシール面間の流体により維持されるが、狭い間隙は、空間13から領域14へのシ
ール流体の流出を制限する。
ここで図2を参照すると、面がそれ内に形成される溝配列31を有する、シール
・リング19のシール面18が例示されている。この溝配列31には、面18の半径方向
の外部位置に主に位置決めされる第1の溝パターン32が含まれる。この溝パター
ン32は通常、シール境界面における流体動力学力、および流体静力学力の両方を
もたらすが、流体動力学力を生成するための主要源であり、従って、本明細書内
で流体動力学的領域と言うことがよくある。溝配列31には又、溝パターン32の概
ね半径の内方向に配置され、境界面の径28と29の両方から半径方向に間隔を開け
られた領域である、面18の中央半径領域内に概ね位置決めされる、第2の溝パタ
ーン33も含まれる。この第2の溝パターンまたは領域33は、回転速度がゼロ近傍
の条件において、対向するシール面17-18間の流体静力学力をもたらすために主
に機能する。溝パターン32と33は、従来の製造技術を用いて面18に形成すること
ができる。
先ず流体動力学的溝パターン32を考慮すると、それは、その回りに概ね一様な
角度で間隔づけられる関係で、面18に形成される複数
の角度付き溝34により規定される。これらの溝34は、溝が円周方向および半径の
内方向にいっせいに放射するようにして、外径28から半径の内方向に開くように
全て角度付けられ、シール面の円周方向および半径方向の両方に関して角度づけ
られた関係を有している。溝が、外径28と交差する中央線36により表されるよう
に、角度付き溝34は通常、外径に対する接線に相対した鋭角で外径28の内方向に
開き、その鋭角はおよそ15°である。
各々の角度付き溝34は、一対の側または端部壁37と38により規定される。溝34
の内端部は、通常やや切り立って、面リングの中点Oの回りに生成されるような
、R4で示す半径の回りに規定される肩または迫台39において通常終端し、この
半径R4は、外部溝パターンの溝34に対する溝径を規定する。溝34の各々を規定
する対向する側壁37-38は、通常そして好適には、僅かに溝が半径の内方向に角
度を持つように互いに対して収束する。これらの側壁37-38は、直線、円弧、ま
たは渦巻き形状を含む異なる構造をとってもよい。側壁37-38が、円弧または渦
巻きとして規定された場合、その時は、側壁37は凸形構造であり、対向する側壁
38は凹形構造である。
例示し好適な実施例において、対向する側壁37-38は円構造であるが、好適に
は、異なる中点を有する異なる半径の回りに生成される。
例えば、図3を参照すると、溝34'の凹形側壁38'は、第1の中点C1を有する
R5で示される半径の回りに生成され、隣接する溝34の凸形側壁37は、同じ中点
C1の回りで振られる半径R6の回りに生成され、これにより、半径R6は、溝
34と34'の隣接する対の端部
37と38'を分離する垂直距離だけ半径R5を越える。このことにより結果として
リングの中心に向かって半径の内方向に角度を持つので、一定な横幅となる端部
37と38'間で規定されるような、平坦部またはランド41になる。
同様にして、溝34の凹形端部38も又、半径R5の回りに生成され、その半径は
、ここで第1の中点から間隔を開けられた第2の中点C2の回りに生成され、同
様に、次の溝34”の凸形端部37”は、第2の中点C2の回りで又振られる半径R
6の回りに生成され、これにより、端部38と37”間のランド41は、このランドが
リングの中心に向かって内方向に角度を持つので、やはりその間の一定な横寸法
を有する。それ自身の2つの中点が、中点Oの回りに同心にある円上に配置され
、全ての溝が同様にして生成される。
溝34の各々は、溝パターン33に対してかなり深く、その深さは図4に示すよう
に、溝34の概ね平坦な底部壁42により示されている。実線42で示すように、好適
な実施例における溝の深さは、溝34の長さにわたって大体一様である。
しかし、溝34はその長さにわたって円錐構造でありえる、そのため、図4の42
aと42bに示す点線で示す変形により線図で例示されるように、深さが長さにわた
って変化する。42aに示す溝の底部壁に関して、この溝は、半径方向の外端部で
その最大の深さを有し、半径方向の内端部でその最小の深さを有するが、その半
径方向の内端部での重要な肩または段39に結果としてなるために、半径方向の内
端部での深さはまだ十分である。更に、42aに示すこの変形について、
その長さの大体中途における溝の平均深さは、底部壁42で示す溝の一様な深さに
好適に大体対応する。42aに示すこの円錐状の変形において、半径方向の外端部
でのみぞの深さは、流体動力学力の効果を最小にするために充分に深い。この流
体動力学力の効果は、より中心に配置される面リングの領域における、溝34の半
径方向の内端部に隣接してより顕著であり、作動時に生じる通常の熱歪み(すな
わち、クラウニング)に抗するために、面リングの中心位置に対してより大きな
圧力を加えるために、より効果的であると思われる。
図4において、底部42bで示すような溝34の他の円錐状の変形に関して、この
変形において、溝34はその半径方向の外端部で最も浅く、肩または段39に隣接す
るその半径方向の内端部で最も深い。半径方向の外端部での溝の浅さは、流体の
溝のこの領域を効果的に欠乏させるためのようなものであり、やはりこの領域に
おける流体動力学効果を最小にし、そのため通常作動中に生じるリングの歪みに
対して増大圧力抵抗をもたらす意図のために、より大きな圧力が面リングの中心
のより近くに発現される。
ここで、流体静力学的溝の領域またはパターン33を考慮すると、この溝パター
ンは、流体動力学的溝パターン32の概ね半径の内方向に配置され、如何なる重大
な流体動力学効果を有するのを防止するために、概ね充分浅い深さである。この
流体静力学的溝パターン33には又、シール面18の中央半径領域に形成される複数
の角度付き溝44が含まれ、これらの溝44はシール面の回りに一様に角度付けて配
置される。溝44は、隣接して角度付き溝34の半径方向の内端部から
半径の内方向に放射し、段39を規定する直径から円周方向および半径の内方向に
いっせいに放射するように角度付けられる。従って、溝44は、シール面18の円周
方向、および半径方向の両方に関して、角度付けられる関係を有している。
図2および図3に示す実施例において、角度付き溝44は、外部溝34から逆の円
周方向に角度付けられ、それにより溝44の中央線46は、図3に示す実施例におい
て、約45゜である鋭角αで半径線45と交差する。
各々の溝44は、対向する端部または側壁47-48間で規定され、溝44の半径方向
の内端部は、切り立った肩または迫台49で終端し、肩または迫台は、中点Oの回
りに生成される半径R3上に概ね規定され、この半径R3は内部溝径を規定する
。
隣接する側壁48と47”のような隣接する溝の側壁は、隣接する溝34と34”間に
規定される平坦なランド41の延長にある、平坦なランド51をその間に規定する。
このランド51は、半径の内方向に放射し、更に環状の平坦なランド53に接続し、
ランド53は、内部面径29(すなわち、半径R2)と半径R3間で規定される。こ
のランド53は、溝がなく、径29で規定される低圧力領域へと横切るシール流体の
流れを充分に制限するための堰、として機能する。
半径方向45に対する溝44の傾斜配置方向(すなわち、角度α)は、溝がかなり
半径方向に向けられる流れ成分を有し、従ってこれらの溝44が、溝34よりも半径
方向45に対して緩やかな角度を有するように選択される。さらに特に、傾斜角α
は、好適には半径方向45に対
して約±45°の範囲内になるように選択される。これは隣接する溝の側壁(例
えば、側壁48と47”)の間で横に寸法を取られるようなランド領域を最大にし、
これにより比較的高速回転での作動の度に推力軸受効果を生成するために、その
間で圧力流体を止める、より効果的なランド51の生成を可能にする。すなわち、
圧迫膜効果が、高速振動または共振によるギャップ幅の変化に耐抗するために、
効果のあるランド51において生成される。実際、好適な実施例において、側壁48
と47”のような、隣接する溝44と44”の直に隣接する側壁は、互いに平列関係で
延伸するのが好ましい。同様に、次の溝44と44’の隣接する対の隣接する側壁47
と48’も又、互いに並列関係で延伸するのが好ましい。この必要性により、結果
として半径の内方向に放射するような、僅かに収束する関係にある各溝の対向す
る側壁47-48となり、大体一定で、それゆえランドが半径の内方向に放射するよ
うな最大幅である、各隣接対の溝44間のランド51となり、半径R3により規定さ
れる溝径にランドが出会う口でランド51の幅を最大にする。
各溝44を規定するために協働する側壁47-48の対は、製造上の便宜さのために
は直線であってもよいし、又は渦巻き、あるいは円形状で生成されてもよく、円
形状は、上述したような溝34のための側壁37-38の円形状と同様な方法で生成さ
れるのが好ましい。溝34と44の深さに関して、溝34は、溝44の深さよりも数倍大
きく、好適には溝44の深さの約5倍から約10倍にある深さを有する。さらに特
に、深い溝34は通常、約0.0001インチから約0.001インチの平均深さを有
するが、より実際的な最大深さは、好適てある約0.0001インチから約0.0003イン
チの深さに対して、約0.0005インチと思われ、浅い溝44は通常、約0.00001イン
チから約0.00008インチの深さを有し、好適には約0.00002インチから約0.00005
インチの深さを有する。
深い溝34、浅い溝44、およびランド53間の半径位置関係に関して、これらの関
係は、高圧力半径28(半径R1)と低圧力半径29(半径R2)との間で寸法付け
られるような、シール境界面27の半径幅ΔRに対して決定される。流体動力学的
な溝パターン32は通常、半径方向外部で半径寸法ΔRの約3分の1を占め、流体
静力学的な溝パターン33は通常、中間部で半径距離ΔRの約3分の1を占め、堰
53は通常、半径方向内部で距離ΔRの約3分の1を占める。しかし、浅い溝パタ
ーン33は、中間部で幅ΔRの4分の1から約2分の1のどこでも占有するように
、所望であれば、半径方向に狭くまたは広くすることのどちらかが可能であり、
それにより面リングの中央領域における流体圧力を最大にし、従来的な歪み、お
よび熱効果によるような作動時に通常生じるクラウニングに対して、増大された
耐抗性がもたらされる。
作動時には、外径28の周囲の高圧力流体が、深い溝34と浅い溝44へと流入する
が、ランドまたは堰53により更なる半径の内方向への流れから制限される。溝内
のこの圧力流体は、かなりの力の荷重軽減、または境界面領域27にわたって対向
するシール面17-18間の少しの分離をもたらすために、充分な流体静力学的圧力
を生成し、従って対向するシール面間に流体静力学力が生成される。少しの、し
か
し制御された量のシール流体は、堰53を越えてシールの低圧力側29へと通過する
。しかし、この流体静力学力の存在が、対向するシール面間の摩擦接触を大いに
最小にして、シール面摩擦をシール・ハウジング11または軸12に伝達する、シー
ル構造要素に強いられる応力を減少すること、および回転が開始される場合、対
向する相対的に回転可能なシール面17-18間の直接の摩擦接触をかなり減少、ま
たは削減することの両方により、シールの始動を大いに容易にする。
シール配列がより高い回転速度で作動する場合、高圧力流体が深い溝34に流入
し、対向する面17-18間のギャップ寸法、又は間隙を生成および増加させるため
に、浅い溝領域33およびランド41を越えて効果的に汲み出され、それにより面17
-18間の如何なる直接の摩擦接触を効果的に回避、または大いに最小にしながら
、面間の相対高速回転が可能となる。しかし、この高速回転の条件下でこれらの
対向する面間に生成される流体圧力の性質(すなわち、流体動力学力)は、隣接
する溝領域32と33間で、円周に配置される段39の付近におけるその最高圧力に左
右される。この圧力流体がシールのより低い圧力側へ逃れるために、圧力流体は
先ず、かなりの流れ抵抗を生成する浅い溝領域33を越えて流れねばならず、更に
又比較的広い堰、またはランド53を横切り流れなければならない。ランド53、お
よび曳い溝領域33により規定されるかなりの半径の広さが、システムの低圧力側
へのシール流体の逃げを妨害し、望ましい流体動力学力の発現を可能にし、一方
同時に、低圧力側へのシール流体の漏れの制卸され且つ受容可能な割合をもたら
す。
ここで図5および図6を参照すると、本発明の変形例が示されている。この変
形例において、図3および図4により示されるのと大体同じ方法で、構成され位
置決めされる半径方向の中間の一連の角度付き浅い溝44と隣接する、半径方向の
外部で一連の角度付き深い溝34を取り入れる溝パターンが、やはりシール面に設
けられる。しかし、図5−6のこの変形例においては、流体静力学的溝パターン
33’には更に、中点Oに対し同心の関係でシール面18に形成される浅い環状溝61
が含まれ、この環状溝61は、浅い溝44の半径方向の内端部に形成され、内端部を
連続的に接続する。この環状溝61は、半径方向の内部溝径である、半径R3を実
際上規定する内部環状壁62を有し、これにより溝なしランド53が、この境界壁62
から半径の内方向に放射する。溝61は、円周にわたって概ね一様な深さであり、
この深さは、好適には浅い溝44の深さにほぼ等しく対応する。
溝61は好適にはやや狭い半径幅であり、半径方向の内部境界壁62と半径方向の
外部境界壁63との間で規定されるその半径幅は通常、約1/16インチ、または
それより少ない付近にある。流体静力学的溝パターン33’に、図5−6に示され
るような浅い環状溝61が含まれる場合、これは、環状溝61の付近で円周状に圧力
を効果的に等しくする。従って、ランド41と51の存在において隣接する溝間に生
成される流体膜が、円周状にほぼ一様な大きさで維持されうる。圧力流体は溝34
,44だけでなく、環状溝61をもまた占有するので、これにより、円周方向におけ
る両方のシール面の歪みを最小にし、従って回転速度がゼロまたはその近傍の場
合の面接触を回避または最小
にしながら、より少ない漏れでより小さな流体静力学的面分離を可能にする。
高圧力流体は、流体静力学的条件において環状溝61にわたって連続的に存在す
るので、流体が半径方向にランド53を横切り低圧側29へと逃げるような流体の圧
力降下は、シール・リングの円周に延伸する一様な圧力勾配を生成し、それによ
り、ランド53の領域におけるシール・リングの円周の歪みも最小にし、従って波
打つ円周に延伸する形態へと変形させるシール・リングの傾向を最小にする。し
かし、流体動力学的条件下では、浅い溝領域33の全体は、全速度またはその近傍
での作動中に横切るシール流体の被制御の、および最小の漏れをもたらすために
、ランド53の延長として効果的に作用する。
図3に示され上述したような溝44は、溝34に対して逆に角度付けられるが、溝
44を図7に示すように、溝34と同じ円周方向に角度付けることも可能である。こ
の変形例において、内部の溝44はさらに好適には、約45°より大きくないこと
が好ましい角度αで半径方向と交差する中央線46を有し、溝44の中央線の傾斜は
好適には、図3および図7の位置に示す両極端内にあるように位置決めされる。
図7に示すように、溝44が、溝34と同じ円周方向に角度を持つ位置関係において
、内部の浅い溝44は、外部の深い溝34よりも鋭角に半径の内方向に角度付けられ
、それにより側壁47-48につながる側壁37-38が屈曲における不連続を規定する。
すなわち、隣接する側壁37,47、および38,48は連続的な屈曲または直線を規定
しないが、側壁の
合併を容易にするために、如何なる不連続も明らかに丸めることが可能である。
より大きな半径の内方向に向けられる傾斜を有する浅い溝44を設けることによ
り、溝44により、より効果的なランド領域51の形状が、高速回転中の改善された
圧迫膜効果をもたらすことを可能にし、同時に、始動中のような低速でシール回
転が生じる場合、溝44の保持される円周の鋭角が、対向するシール面17-18間の
ギャップにおける、少なくともある最小の流体動力学力の発生を可能にすると思
われ、それにより、外部の溝34により生成される流体動力学力の完全な効果によ
りギャップが広げられる前に、シール面17-18間の中央半径領域における流体シ
ールを改善し、外部の溝は、より高速度で完全に効果的になる。
さらに特に、上述したように異なる鋭角を有する浅い溝44、および深い溝34を
設けることにより、これにより、隣接する溝44の側端部間で垂直に寸法付けられ
るような、ランド51の幅Aが最大となり、隣接する溝34の側端部間で寸法付けら
れるような、ランド41の幅Bよりも大きくなることを可能にする。鋭角は、好適
にはランド幅Bの約1.3倍に等しいか、それより大きくなるように選択される
。
更に、図3の実施例で示されるように、逆円周方向に浅い溝44を傾斜させるこ
とにより、遮断に基づく不慮の逆圧力が、遮断に基づく圧縮機における回転の反
転を引き起こす場合のように、低圧力逆回転が生じる場合、対向するシール面間
の小ギャップにおけるいくらかの流体動力学力の発生をもたらすものと思われる
。ほとんどの
使用用途における回転のかかる反転は、比較的短時間でのみ生じ、通常、より低
い回転速度をもたらすので、浅い内部の溝44の逆角度付け配向が、対向するシー
ル面間の如何なるかなりの直接接触をも防止し、または少なくとも最小にするた
めに、少なくとも最小の流体動力学力の発生をもたらすものと思われる。
この図7の変形例により又、図5−6に示すのと同じ方法で環状溝61が好適に
もたらされる。
図2および図7は、深い溝34に対して横方向および前方にそれぞれ角度付けさ
れた浅い溝44を示すが、浅い溝の好適な変形例が示されている図8−10をここ
で参照する。この変形例(図8および図9を参照)において、浅い溝44は、角度
付き溝34の半径方向の内端部から直接に半径の内方向に放射して、溝の長さ方向
に延伸し、半径線を構成するために、中点Oへと交差する関係で内方向に放射す
るほぼ真っ直ぐな中央線46を各溝44が有するように、各溝44が位置決めされる。
各溝44は又、両方が好適には直線である対向する端部、または側壁47-48間で規
定される。隣接する側壁48と47”のような隣接する溝44の側壁は、隣接する溝34
と34”間に規定される平坦なランド41の延長である、平坦なランド51をその間に
規定する。このランド51は、半径の内方向に放射し、さらに環状平坦なランド53
に接続する。溝44の半径配置方向は、これが、隣接する溝の側壁(例えば、側壁
48と47”)間で横方向に寸法付けられるランド51の領域を最大にし、それにより
、比較的高速回転での作動の度に推力軸受け効果を生成するために、側壁間で圧
力流体を止めるためのより効果
的なランドの生成を可能にする(なぜなら、これらのランドを横切る最小横寸法
が比較的大きいので)ので、非常に望ましい。すなわち、圧迫膜効果は、高速度
が誘導する共振および振動により、ギャップ幅の変化に抵抗するために効果的で
あるランド51で生成される。実際、図8−10のこの好適な変形例において、側
壁48と47”のような隣接する溝44と44”の直接隣接する側壁は、好適には互いに
並列関係で延伸する。同様に、次の隣接する対の溝44と44’の隣接する側壁47と
48’も又、互いに並列関係で延伸する。この必要性により、結果として、各溝の
対向する側壁47-48が、半径の内方向に放射する際に僅かに収束する関係となり
、各隣接する対の溝44間のランド51の横幅が、ランド51が半径の内方向に放射す
る際にほぼ一定となり、半径R2で規定される溝径にランドが出会う口でランド
51の幅を最大にする。従って、隣接する溝44の側壁間、およびこれらの溝44の半
径方向間の並列関係が、ランド51の領域を最大にし、高速回転で、またはその近
傍で特に重要である、かなり改善された圧迫膜特性をもたらす。
ここで図11および図12を参照すると、浅い溝44の半径方向の内端部を連続
的に接続するための浅い溝61を含めるために変形された、図8−10の好適な変
形例が示されている。この環状溝は、図5および図6に関して、上述したのと同
じ方法で機能する。
本明細書にて例示し記載する本発明は、外径に配置された高圧力領域を有し、
それはほとんど一般的に直面する使用条件であるが、内部径が高圧力領域である
場合、溝パターンは、内部径から半径方
向に延伸することも可能である、ことはよく理解されるであろう。
本発明の特定の好適な実施例を例示目的のために詳細に開示してきたが、部品
の再配列を含む開示装置の変形または変更が、本発明の範囲内にあることが認識
されるであろう。