JPH084346Y2 - 作業車用トランスミツシヨン装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、芝刈機等の小型作業車に好適した作業車
用トランスミツシヨン装置に関するものである。

〔従来の技術とその問題点〕

芝刈機等の小型作業車ではトランスミツシヨン装置を
極力コンパクトに構成することが要求され、そのための
各種の方策が工夫されて来ているが、ベアリングを介し
回転軸を支持するミツシヨンケース内壁面の軸受部は通
常規模の作業車のトランスミツシヨン装置におけると同
様にベアリングをその全長にわたり全周面で支承するも
のに形成されて来ている。

したがつてそのような軸受部付近でミツシヨンケース
内に設置される装置構成部材の設置スペースは、ミツシ
ヨンケースを拡張することによつて確保される。

〔考案課題〕

この考案は小型作業車用の簡易なトランスミツシヨン
装置には一方向にのみ回転する回転軸が設けられること
が多い事実に着目し、ミツシヨンケース内壁面の軸受部
を、その基本性能を低下させることなしにミツシヨンケ
ース内に部材設置スペースを提供するように形成して、
トランスミツシヨン装置のコンパクト化を得ることを課
題とする。

〔課題を解決するための手段〕

そのためにこの考案は添付図に例示するように、歯車
の噛合せにより互いに連動連結された２本の回転軸2,3
であってそれぞれ一方向にのみ回転する２本の回転軸2,
3を備える作業車用トランスミツシヨン装置において、
次のような手段を講じた。

すなわち前記両回転軸2,3のうちの少なくとも一方の
回転軸（図例では両回転軸2,3）をベアリング6,7を介し
て支持するミツシヨンケース内壁面の軸受部に、上記ベ
アリングの長さ方向及び周方向の一部分を非支承状態に
残す欠除部10,11を、歯車噛合せ部における回転反力が
加わらない回転軸々半部側で設け、該欠除部10,11によ
ってミツシヨンケース内に附与される空所を装置構成部
材13a,13c,14,25の設置スペースに構成した。

図例では駆動軸２と変速軸３といつた２本の回転軸の
各一端部をスリーブベアリング6,7を介し支持する軸受
部においてそれぞれ、この考案に従つた欠除部10,11が
設けられている。駆動軸２と変速軸３は、駆動軸２上に
固定設置した３個の駆動歯車4I,4II,4IIIと変速軸３上
に遊嵌設置した３個の変速歯車5I,5II,5IIIとをそれぞ
れ噛合せ、変速歯車5I,5II,5IIIを択一的に変速軸３に
対し結合して異なる３段の変速比のうちの一の変速比で
連動連結され、互に回転方向を異にしつつそれぞれが一
方向にのみ回転する回転軸となつている。

また図例では変速軸３が中空軸に形成され、クラツチ
９を介し変速軸３と結合される車軸８を、変速軸３を貫
通させて設けて、該変速軸３を直接には車軸８に支持さ
せた関係としており、ベアリング７は直接には車軸８と
ミツシヨンケース内壁面の軸受部間に介在させてある
が、クラツチ９の入り状態で変速軸３と車軸８とが同方
向に一体回転することからしてベアリング７を支承する
軸受部は実質的に、変速軸３のための軸受部となつてい
る。

さらに図例ではミツシヨンケース１が上下のケース半
部に２分され、前述の各ベアリング6,7は周方向の半部
宛を各ケース半部合せ面の半円状軸受部にて抱持させて
あり、両ケース半部の半円状軸受部の組合せにより前述
の各軸受部が形成されている。そして欠除部10は上方側
のケース半部の半円状軸受部の長さをベアリング６の長
さよりも小さくすることで設けられ、欠除部11は下方側
のケース半部の半円状軸受部の長さをベアリング７の長
さよりも小さくすることで設けられている。

〔作用〕

第２図は前述した駆動軸２と変速軸３とを横断面で切
断して画いた模式的な断面図で、前記駆動歯車4I−4III
と変速歯車5I−5IIIとを歯車4,5で表し、また変速軸３
を肉密軸として画いている。歯車4,5と軸2,3はそれぞ
れ、図示矢印の一方向に回転する。

歯車4,5の噛合せ回転からして生じる回転反力は各歯
車4,5の回転方向からして、歯車４側では図示矢印P₁の
ようであり歯車５側では図示矢印P₂のようであつて、駆
動軸２に対しては矢印P₁で表される歯車回転反力が、変
速軸３に対しては矢印P₂で表される歯車回転反力が、そ
れぞれ加わる。そしてミツシヨンケース内壁面の筒状を
なす軸受部において前記各欠除部10,11はそれぞれ前述
した通りに、歯車回転反力P₁，P₂が加わらない回転軸々
半部側で設けられている。

このように欠除部10,11が歯車回転反力P₁，P₂が加わ
らない軸半部に設けられていることからしてベアリング
6,7を介して軸2,3を安定支持するといつた機能が損なわ
れず、また欠除部10,11の形成範囲がベアリング6,7の長
さ方向の一部分に留められていることからして軸2,3が
ベアリング6,7と共に振れを起こすような事態も生じな
い。

ミツシヨンケース内壁面の軸受部に上記のような欠除
部10,11を設けると、同欠除部10,11を含むケース内壁面
部分が凹溝状に凹まされることになるから、欠除部10,1
1によつてミツシヨンケース内に附与されるスペースは
かなりの広さを占める。

〔実施例〕

図示実施例は芝刈機用のトランスミツシヨン装置とし
てこの考案を実施した例に係り、ミツシヨンケース１か
ら左右に延出させてある前記車軸８の延出端には図外の
左右の後輪を装備させることとされている。

芝刈機は通例のように、芝刈作業時には上記した左右
の後輪の駆動により芝刈機の前進自走を得、作業者は芝
刈機後部の操縦ハンドルを握りながら付いて歩くことに
よつて刈取作業を実施し、芝刈機を後退させる際には前
記クラツチ９を切り後輪の駆動を停止した状態で作業者
が、操縦ハンドルを後向きに引張ることにより後退を得
るものとされている。したがつて図示のトランスミツシ
ヨン装置は芝刈機一般においてそうであるように、前進
変速段のみを備え後進変速段は装備していないものに構
成されている。

ミツシヨンケース１の前記上方側ケース半部は１対の
ボールベアリング17,18を介し鉛直な入力軸19を支承装
備しており、この入力軸19の上端部には図外のエンジン
から伝動を受けるプーリー20を取付けてある。入力軸19
の下端には小傘歯車21を一体に設けてあり、この小傘歯
車21と噛合された大傘歯車22が前記駆動軸２上に固定設
置されている。

第１−７図が第１の実施例を示しており、駆動軸２は
第１図に示すようにその一端部を前記スリーブベアリン
グ６を介し前述欠除部10を備える軸受部に支持される
他、他端部をスリーブベアリング24を介し、ミツシヨン
ケース内壁面の欠除部は備えない軸受部に支持されてい
る。欠除部10によつてミツシヨンケース内に内壁面上で
附与される凹溝状の空所は装置構成部材の一つである次
のような抜止め板25、すなわちねじボルト12によつてミ
ツシヨンケース１の頂壁内面に固定され前記ボールベア
リング18の抜止めを行なう抜止め板25、の設置スペース
として利用されている。すなわち同抜止め板25は第１
図、及び２つ割りミツシヨンケース１の上方側のケース
半部の一部分を上下逆にして内面側を見せた第６図に示
すように、抜止め板25周端の一部が上記空所内に臨むこ
ととなるように配置されている。

中空の前記変速軸３は前述したようにそれを貫通させ
た車軸８を介しミツシヨンケース１に支持されており、
車軸８は第４図に示すように一端側をスリーブベアリン
グ７を介し、前記欠除部11を備える軸受部に支持されて
いる他、他端側でスリーブベアリング26を介し、ミツシ
ヨンケース内壁面上の欠除部は備えない軸受部に支持さ
れている。

第3,4図に示すように変速軸３上には前記変速歯車5I
−5III及び前記クラツチ９のクラツチスリーブ9aの他、
変速シフト用のシフタースリーブ27が設けられている。
また第３図に示すように変速軸３の外周面に形成した１
対の長溝穴28に摺動自在に収容して１対のシフトキー29
が設けられていて、これらのシフトキー29はシフタース
リーブ27に対し一体摺動可能に取付けられている。シフ
トキー29は例えば米国特許No.3,812,735等から周知であ
るキーシフト式変速装置のシフト部材を構成するもので
あつて、自由端側に設けられた図外のクラツチ突起によ
り変速歯車5I,5II,5IIIを択一的に変速軸３に対し結合
する。

第3,4図に示すようにミツシヨンケース１に鉛直軸線
まわりで回動自在に支持されたシフトフオーク30を、そ
の回動変位により変速軸３上でシフタースリーブ27を摺
動変位させうるように該スリーブ27に対し係合させてあ
る。このシフトフオーク30の下端部には第３−５図に示
すばね板製のデテントアーム13aを一体回動するように
係止させてあり、ミツシヨンケース１の内底面に向けて
延出させてある該デテントアーム13aの先端にはデテン
ト用のボール13bを保持させてある。ミツシヨンケース
１の内底面上にはボール13bがその半部で嵌合するデテ
ント穴31I,31II,33IIIを有するデテント板13cを固定設
置してあり、これによつてシフタースリーブ27を変速軸
３上の各変速作用位置で位置拘束するデテント手段13が
構成されている。そして第4,5図、及び２つ割りミツシ
ヨンケース１の下方側のケース半部を上側から見て画い
た第７図から明らかなように、前記欠除部11によつてミ
ツシヨンケース内に内壁面上で附与される凹溝状の空所
は、同空所内に上記デテント板13cの一部を臨ませて上
記デテントアーム13aが該空所内にまで回動することと
なるように図り、デテントアーム13a及びデテント板13c
の設置スペースとして利用されている。

なおシフトフオーク30は第３図に示すように、直状部
長さ方向の中央部でシフタースリーブ27の反対向きに張
出す張出し部30aを形成することで該部での厚さを確保
することにより逆に、直状部の中心線ないし回動軸線Ｙ
を極力シフタースリーブ27側に近接位置させて設けられ
ている。これは図示トランスミツシヨン装置を装備する
芝刈機において、ミツシヨンケース１の背壁部1aを極力
前方側に位置させ、もつて同背壁部1aの背後に位置させ
る機枠デツキの垂下部DNも極力前方に移して操縦者の靴
先が同垂下部に当たる不具合を避けようとする意図から
である。シフトフオーク30はミツシヨンケース１の上面
側で該フオーク30に係止させてあるシフトアーム33を介
し上記軸線Ｙまわりで回動操作されるが、上記のように
軸線Ｙをシフタースリーブ27側に近接配置してあること
からシフトフオーク30の支点とシフタースリーブ27に対
する作用点との間の間隔Ｌがそれだけ小さくされてお
り、対応してシフトフオーク30の回動操作力が軽減され
ることとなつている。

前記クラツチ９はクラツチフオーク35の回動変位によ
り摺動変位せしめられる前記クラツチスリーブ9aを備
え、適宜の機械式クラツチ、例えば中空変速軸３と車軸
８とを選択的に結合するボールであつてクラツチスリー
ブ9aの摺動変位によりクラツチ入れ位置と切り位置とに
変位せしめられるボールを備える周知構造のボールクラ
ツチ等、に構成される。

なお第１図において36は前記大傘歯車22と前記スリー
ブベアリング６端の鍔部6aとに両端を当てて駆動軸２上
に設置したスラストスリーブであり、傘歯車21,22の噛
合い回転から生じるスラストを上記鍔部6aを介してミツ
シヨンケース１の内壁面に受けさせるためのものであ
る。

次に第８図に図示の第２の実施例について説明する
と、本実施例では第１の実施例で設けた前記抜止め板25
に対応するカラー14を抜止め板25よりも厚さ及び外径を
大とするものに形成し、該カラー14によつて前記ベアリ
ング18の抜止めを行なわせる他、該カラー14を大傘歯車
22の端面に当てて傘歯車21,22の噛合い回転から生じる
スラストをカラー14に受けさせている。したがつて第１
図に図示の前記スラストスリーブ36に対応するスラスト
スリーブを、駆動軸２上から無くしている。

すなわち第２の実施例ではベアリング抜け及びスラス
ト受けを兼ねた寸法大のカラー14の設置スペースとして
欠除部10を設けることでミツシヨンケース内に附与され
る空所が利用されている。第２の実施例の他部の構造
は、第１の実施例の対応する部分と等しくされている。

〔考案の効果〕

この考案の作業車用トランスミツシヨン装置において
ミツシヨンケース内壁面の軸受部に設けられた欠除部1
0,11は、一方向にのみ回転する回転軸2,3のための軸受
部に設けられたものとして考案の作用の項で前述した通
り、回転軸の安定支持上及び振れ防止上に問題を生じさ
せず、軸受部の基本性能を低下させない。

そしてこの考案はそのような欠除部10,11を設けるこ
とでミツシヨンケース内に附与される空所を装置構成部
材13a,13c,14,25の設置スペースとして利用したから、
部材設置のために従来のものでミツシヨンケースに設け
られていた拡張部を設ける必要を無くすようにトランス
ミツシヨン装置をコンパクトとし、小型作業車に対し極
く好適したトランスミツシヨン装置を提供する。

【図面の簡単な説明】

第１図は第１の実施例を示す縦断正面図、第２図は同実
施例の一部分の模式的横断面図、第３図は第１図のIII
−III線に沿う一部省略断面図、第４図は第３図のIV−I
V線にほぼ沿う断面図、第５図は第４図のＶ−Ｖ線に沿
う一部省略断面図、第６図は２つ割りミツシヨンケース
の上方側のケース半部の一部分を上下逆にして画いた斜
視図、第７図は上記ミツシヨンケースの下方側のケース
半部の一部分を示す斜視図、第８図は第２の実施例を示
す縦断正面図である。 １……ミツシヨンケース、２……駆動軸（回転軸）、３
……変速軸（回転軸）、4I,4II,4III……駆動歯車、5I,
5II,5III……変速歯車、6,7……スリーブベアリング、
８……車軸、９……クラツチ、10,11……欠除部、12…
…ねじボルト、13……デテント手段、13a……デテント
アーム、13c……デテント板、14……カラー、15……ね
じボルト、25……抜止め板。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】歯車の噛合せにより互いに連動連結された
   ２本の回転軸であってそれぞれ一方向にのみ回転する２
   本の回転軸を備える作業車用トランスミツシヨン装置に
   おいて、前記両回転軸（2,3）のうちの少なくとも一方
   の回転軸をベアリング（6,7）を介して支持するミツシ
   ヨンケース内壁面の軸受部に、上記ベアリングの長さ方
   向及び周方向の一部分を非支承状態に残す欠除部（10,1
   1）を、歯車噛合せ部における回転反力が加わらない回
   転軸々半部側で設け、該欠除部（10,11）によってミツ
   シヨンケース内に附与される空所を装置構成部材（13a,
   13c,14,25）の設置スペースに構成してある作業車用ト
   ランスミツシヨン装置。