JPH083753A - AlN基板用無電解Ni系メッキ液 - Google Patents

AlN基板用無電解Ni系メッキ液

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JPH083753A
JPH083753A JP13186594A JP13186594A JPH083753A JP H083753 A JPH083753 A JP H083753A JP 13186594 A JP13186594 A JP 13186594A JP 13186594 A JP13186594 A JP 13186594A JP H083753 A JPH083753 A JP H083753A
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plating
plating solution
water
electroless
aln substrate
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JP13186594A
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Inventor
Yasuyuki Morita
康之 森田
Masato Hamada
正人 浜田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 Niイオン源として(含結晶水)硫酸ニッケ
ル、(含結晶水)塩化ニッケル又は(含結晶水)酢酸ニ
ッケル、錯化剤として(含結晶水)エチレンジアミン、
還元剤として(含結晶水)次亜りん酸ナトリウム、有機
酸又は有機酸塩として乳酸、コハク酸ナトリウム、酢酸
ナトリウムのうち少なくとも1種を含みさらに(d)チ
オ尿素及び/又はマロン酸タリウムを含んでいるAlN
基板用無電解Niメッキ液。 【効果】 無電解メッキ法により、AlN基板を腐食す
ることなく、また前記AlN基板に微細な配線が形成さ
れている場合でも、ブリードを発生させることなくその
配線に、膜密着性や硬度等の特性に優れたNi含有メッ
キ被膜を選択的、かつより迅速に形成することができ
る。そのため、前記Ni系メッキ液を使用した場合、メ
ッキ処理の際の歩留りを大きく向上させることができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はAlN基板用無電解Ni
系メッキ液に関し、より詳細には、例えばICパッケー
ジ等の製造工程でAlN基板にNiメッキ処理を施す際
等に有用なAlN基板用無電解Ni系メッキ液に関す
る。
【0002】
【従来の技術】外部から電流を流して、溶液中の金属イ
オンを陰極上に還元、析出させる電気メッキに対し、外
部電流を使わずに溶液中の金属イオンを被メッキ体表面
に還元析出させる方法を、一般に化学メッキと呼んでい
る。この化学メッキは、さらにイオン置換に基づく浸漬
メッキと化学還元剤を用いる無電解メッキとに大別され
る。
【0003】前記浸漬メッキは、例えばNi等の金属を
金のような貴金属のイオンを含有する溶液中に浸漬し、
いわゆる置換反応によってNi上に金を析出させる方法
であり、一旦Ni表面が金で覆われるとメッキの成長も
止まるため、厚メッキが難しいという問題点がある。
【0004】一方前記無電解メッキは、溶液中に析出さ
せる金属の塩、その金属と錯体を形成させるための錯化
剤、金属錯体を還元して金属単体を還元析出させるため
の還元剤、溶液中のpHの変動を抑制するためのpH緩
衝剤、pHの値を一定値にするためのpH調整剤、及び
溶液を安定化させるための安定化剤等を混合した溶液中
に被メッキ体を浸漬し、前記被メッキ体表面に金属を還
元析出させる方法である。
【0005】この方法の問題点としては、電流の代わ
りに還元剤で金属を還元析出させるので、電解メッキに
比べるとコストが高くなること、メッキ速度を速めよ
うとするとメッキ浴中に粉末状態で金属が析出してしま
う虞れがあるためメッキ速度を余り速くすることができ
ないこと等が挙げられる。
【0006】しかし一方、電源や電極等が不要で、メ
ッキ液中に被メッキ体を浸漬するだけで、密着力、均質
性等に優れた均一厚さの被膜が得られること、メッキ
膜の厚さやその物性等を、メッキ液組成等のメッキ処理
条件を変化させることにより制御し易く、要求特性に合
致する被膜の形成が可能であること、いかなる形状の
ものにも、付き回りよくメッキすることが可能であるこ
と、プラスチック、ガラス、セラミックス等のような
非導電性物質にも直接メッキすることが可能であるこ
と、等の優れた特徴を有するため広く工業的に利用され
ている。
【0007】被メッキ体に前記した無電解メッキ処理を
施した場合に、溶液中でどのような反応が進行し、メッ
キ被膜が形成されるかについて、完全にその機構が解明
されているわけではない。
【0008】しかし、例えば還元剤として次亜りん酸塩
を用い、セラミックス基板等に無電解Niメッキ処理を
施した場合には、溶液中で下記の化1式〜化3式に示す
化学反応が進行するといわれている。
【0009】
【化1】Ni2++H2 PO2 -+H2 O → Ni+H2
PO3 -+2H+
【0010】
【化2】H2 PO2 -+H2 O → H2 PO3 -+H2
【0011】
【化3】H2 PO2 -+H → P+H2 O+OH- 上記化1式に示したように、次亜りん酸イオン中のリン
の酸化が進行して、Niが還元され、被メッキ体表面に
析出する。このとき、化2式の反応も同時に進行し、水
が還元されて水素が発生する。化1式に示したNiの還
元析出については、実際には水素も関与しており、上記
化2式の反応で一旦還元された水素原子がNiイオンに
電子を受け渡すことによりNiが還元されるといわれて
いる。さらに、次亜りん酸については不均化反応が進行
し、化2式に示したように一部のリンが酸化されると同
時に、化3式に示したように他の一部のリンは還元され
てリンが析出する。すなわち、化2式の反応で一旦還元
された水素原子は、次亜りん酸イオン中のリンに対して
も電子を放出し、これにより次亜りん酸イオン中のリン
も還元される。このため、析出被膜は通常Niとリンと
の合金となる。このNi合金は、Ni単独の被膜と比較
すると、被膜の硬度、基板との密着性等により優れると
いう特性を有する。
【0012】無電解Niメッキでは、上述したような反
応によりメッキ被膜の析出反応が進行すると考えられる
が、この析出反応により優れた耐摩耗性や耐熱性を有す
る被膜が形成されるため、工業的に利用されると同時に
古くから研究されてきており、その反応機構も次第に明
らかになりつつある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】このように無電解メッ
キは広く利用されているにもかかわらず、この無電解N
iメッキ処理を施す対象となる被メッキ体は限られてい
た。すなわち、用いられる被メッキ体は、Al23
やCu板、Au板のように比較的酸や塩基に対して安定
であり、また高温溶液中に長時間浸漬させた場合でも基
板の腐食が起こりにくいものが殆どである。従って従来
においては、上記した被メッキ体を対象として90〜1
00℃程度の高温域でメッキ処理を施すことが可能であ
った。
【0014】なお最近では、プリント配線板等のメッキ
にも用いられるようになってきており、この場合には被
膜を形成する温度は低温であることが望ましいため、3
0〜60℃程度の低温でメッキ処理を施すことができる
低温用のNi系メッキ液も開発されてきている。しか
し、これらNi系メッキ液も比較的耐食性を有する被メ
ッキ体を対象としており、AlN基板のように化学的に
不安定な基板を対象としていなかった。従来から使用さ
れている高温域でメッキ処理を行うNi系メッキ液の組
成を下記の表1に、また低温域でメッキ処理を行うNi
系メッキ液の組成を下記の表2に示す。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】CuやWペーストを用いて同時焼成するこ
とにより形成された配線、又はスパッタ法等の方法を用
いて形成された配線を表面に有するAlN基板の配線等
に無電解メッキ処理を施そうとする場合、上記表1及び
表2に示したような従来から用いられているNi系メッ
キ液のどれを用いた場合でも、金属配線部分以外の場所
にメッキ被膜が形成されるブリード現象が発生したり、
AlN基板自体が溶解したり、又は溶液の自己分解反応
が発生したりした。前記自己分解反応が発生すると粉末
状のNiや箔片状のNiが溶液中に還元析出するように
なり、このために析出した粉末が基板上に付着したり、
溶液中のNi濃度が変化して被膜形成のための条件が変
化することになり、メッキ速度が極端に低下したりする
ことになる。
【0018】このようにAlN基板表面の金属配線のみ
にメッキ処理が施されるような条件を見つけることは難
しく、特に着色剤等としてAlN基板中にW等の金属が
含有されている場合には、前記金属が露出している部分
にメッキ被膜が形成され、この部分を起点にしてメッキ
被膜が広がって行くため、前記ブリード現象を防止する
ことが難しかった。なお、AlN基板中に存在するW等
の着色剤は、通常AlN基板中を紫外線等が透過してS
i基板等が劣化するのを防止するために、添加されてい
るものである。
【0019】そこで本発明らは、先にNiイオン源とし
て(含結晶水)硫酸ニッケル、(含結晶水)塩化ニッケ
ル又は(含結晶水)酢酸ニッケル、錯化剤として(含結
晶水)エチレンジアミン、第2錯化剤として乳酸、及び
還元剤として(含結晶水)次亜りん酸ナトリウムを含ん
でいるAlN基板用無電解Ni系メッキ液を提案した
(特願平5−298590号)。
【0020】前記したAlN基板用無電解Ni系メッキ
液は、AlN基板を腐食することなく、無電解メッキ法
によりAlN基板に形成された配線に、膜の硬度等の特
性に優れたNi含有メッキ被膜を選択的、かつ迅速に形
成することができるという優れた特性を有するが、微細
配線に対するメッキ性の点、メッキ被膜の形成速度の
点、メッキ中に発生する水素量の抑制という点で改良の
余地があった。
【0021】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは、微
細配線に対するメッキ性の向上、メッキ被膜の形成速度
の増加、メッキ中に発生する水素量のさらなる抑制及び
メッキ歩留の向上を目的として検討を行ったところ、メ
ッキ液中に添加することによりメッキ液の安定性やメッ
キ被膜の形成速度の増加にに対して効果があることは記
載されているものの、前記したメッキ液(低温還元無電
解メッキ用メッキ液)については使用されたことのない
チオ尿素、及びマロン酸タリウムを前記メッキ液に添加
することにより、上記した目的をほぼ達成できることを
見出し本発明を完成するに至った。
【0022】すなわち本発明に係るAlN基板用無電解
Niメッキ液は、(a)Niイオン源として(含結晶
水)硫酸ニッケル、(含結晶水)塩化ニッケル又は(含
結晶水)酢酸ニッケル、(b)錯化剤として(含結晶
水)エチレンジアミン、(d)還元剤として(含結晶
水)次亜りん酸ナトリウム、(c)有機酸又は有機酸塩
として乳酸、コハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウムのう
ち少なくとも1種を含みさらに(d)チオ尿素及び/又
はマロン酸タリウムを含んでいることを特徴としてい
る。
【0023】本発明において、Niイオン源として使用
される(含結晶水)硫酸ニッケル、(含結晶水)塩化ニ
ッケル又は(含結晶水)酢酸ニッケルの前記Ni系メッ
キ液中の濃度は、0.01〜0.10モル/リットル程
度が好ましい。ここで、例えば硫酸ニッケルが(含結晶
水)硫酸ニッケルと記載されているのは、硫酸ニッケル
が結晶水を含むものであっても、無水物であってもよい
ことを意味している。これはその他の化合物においても
同様である。以下、(含結晶水)が付加されている化合
物については、(含結晶水)を省略して表示することに
するが、実際には結晶水を含む化合物も含まれる。
【0024】前記硫酸ニッケル、塩化ニッケル又は酢酸
ニッケルの前記Ni系メッキ液中の濃度が0.01モル
/リットル未満であると、該Ni系メッキ液中のNiイ
オン濃度が低下するためにNi被膜の形成が難しくな
り、メッキ被膜の形成速度が低下し、他方前記硫酸ニッ
ケル又は塩化ニッケルの前記Ni系メッキ液中の濃度が
0.10モル/リットルを超えると、溶液中で粉末状又
は箔片状のNiが析出し易くなり、却って析出速度が低
下する。
【0025】錯化剤として使用されるエチレンジアミン
の前記Ni系メッキ液中の濃度は、0.05〜0.20
モル/リットル程度が好ましい。エチレンジアミンのN
i系メッキ液中の濃度が0.05モル/リットル未満で
あると、Ni2+と完全に錯体を形成することができず、
Niイオンの自己分解が発生し易くなり、他方エチレン
ジアミンのNi系メッキ液中の濃度が0.20モル/リ
ットルを超えると錯化剤の量が多くなり過ぎるため、N
iの安定な錯体が形成されて、Niが析出しにくくな
る。
【0026】還元剤として使用される次亜りん酸ナトリ
ウムの前記Ni系メッキ液中の濃度は、0.05〜0.
30モル/リットルが好ましい。次亜りん酸ナトリウム
の前記Ni系メッキ液中の濃度が0.05モル/リット
ル未満であると、還元力が弱く、Niの析出が起こら
ず、他方次亜りん酸ナトリウムの前記Ni系メッキ液中
の濃度が0.30モル/リットルを超えると、化1式に
示した次亜リン酸イオンの酸化反応が進行し、また遊離
Niイオンの量も増加するため、同様にNiの析出量が
減少する。
【0027】有機酸として使用される乳酸の前記Ni系
メッキ液中の濃度は、0.15〜0.30モル/リット
ル程度が好ましい。乳酸の前記Ni系メッキ液中の濃度
が0.15モル/リットル未満であると、Niの析出速
度は高いが前記Ni系メッキ液のpHが不安定になり安
定な速度でメッキ被膜が形成されなくなり、またブリー
ド現象も発生し易く、他方乳酸の前記Ni系メッキ液中
の濃度が0.30モル/リットルを超えると、全体とし
て錯化剤の量が多くなりすぎるためNiの析出量が抑制
される。この乳酸は、錯化剤としての役割やpH調整剤
としての役目を果たす。前記乳酸はキラル中心を有する
ので、2種の光学異性体が存在するが、本発明ではいず
れのものを使用しても良く、また通常市販されているラ
セミ体を使用しても良い。
【0028】有機酸として使用されるコハク酸ナトリウ
ム、又は酢酸ナトリウムの前記Ni系メッキ液中の濃度
は、0.05〜0.30モル/リットル程度が好まし
い。有機酸の前記Ni系メッキ液中の濃度が0.05モ
ル/リットル未満であると、これら有機酸のナトリウム
塩は主としてpH緩衝剤として作用する働きを持つにも
拘らずpH緩衝作用を起こさず、メッキ液中のpH変動
を激しくさせ、他方前記有機酸の前記Ni系メッキ液中
の濃度が0.3モル/リットルを超えると、Ni塩と安
定な化合物を形成するため、析出速度の低下を引き起こ
す。
【0029】図1はチオ尿素又はマロン酸タリウムを前
記Niイオン源、前記錯化剤、前記還元剤、前記有機
酸、及び有機酸塩を含むメッキ液に添加したときのチオ
尿素又はマロン酸タリウムの添加量とNi析出量との関
係を示したグラフである。図1に示したように、チオ尿
素の場合は0.2〜0.6mg/リットルの範囲でNi
析出量が最も多く、マロン酸タリウムの場合は0.2〜
0.8mg/リットルの範囲でNi析出量が最も多いこ
とがわかる。なおNi析出量は2500mm2 の金属下
地膜が形成されているAlN基板をメッキ液に15分間
浸漬し、Niメッキ被膜を形成させたときの析出量であ
る。
【0030】このように前記Ni系メッキ液中のチオ尿
素の濃度は、0.2〜0.6mg/リットルが好まし
く、チオ尿素の前記Niメッキ中の濃度が0.2mg/
リットル未満であると、Niの析出量が減少し、また水
素発生量が多くなるため微細配線部分にブリードが発生
し易く、他方チオ尿素の前記Ni系メッキ液中の濃度が
0.6mg/リットルを超えても、同様にNiの析出量
が減少する。
【0031】また前記Niメッキ中のマロン酸タリウム
の濃度は0.2〜0.8mg/リットルが好ましく、マ
ロン酸タリウムの前記Ni系メッキ液中の濃度が0.2
mg/リットル未満であると、Niの析出量が減少し、
他方マロン酸タリウムの前記Ni系メッキ液中の濃度が
0.8mg/リットルを超えても、同様にNiの析出量
が減少する。
【0032】本発明に係るAlN基板用無電解Ni系メ
ッキ液では、通常前記Niイオン源、前記錯化剤、前記
還元剤、前記有機酸、前記有機酸塩、チオ尿素、及びマ
ロン酸タリウムを用いて適当な組み合わせで混合し、酸
を添加してpHを調整したものであるが、基板上に形成
された下地の金属の種類やメッキ層の厚さ等の条件によ
っては、他の添加剤を添加してもよい。ここで、前記し
たpHの調整に用いる酸は塩酸が好ましい。硫酸や硝酸
を用いた場合には、硫酸中のSO4 2- イオンや硝酸中の
NO3 -イオンが、形成されているNi錯体の安定性に悪
影響を与えるため、好ましくない。特に、NO3 -イオン
の場合は、Ni(NO32 が安定な塩を形成するので
好ましくない。また前記添加剤としては、pH緩衝剤の
役目を果たす有機酸塩やpH調整剤の役目を果たす有機
酸等が挙げられる。
【0033】次に、このAlN基板用無電解Ni系メッ
キ液を用いてAlN基板にメッキ処理を施す方法につい
て説明する。
【0034】図2は、チオ尿素を0.4mg/リット
ル、及びマロン酸タリウムを0.5mg/リットルの濃
度になるように前記Niイオン源、前記錯化剤、前記還
元剤、前記有機酸、及び有機酸塩を含むメッキ液に添
加、混合した際の前記メッキ液の温度又は前記メッキ液
のpHとNi析出量との関係を示したグラフである。い
ずれの場合もNi析出時にはpHを6.00、温度を6
0℃に設定している。
【0035】図2に示したように、チオ尿素及びマロン
酸タリウムを添加、混合する際の好ましい温度は60〜
70℃、好ましいpHは6〜7であり、混合の際にその
温度範囲やpHの範囲をはずれると析出量が少なくなる
ことがわかる。
【0036】また優れた特性を有する均質な被膜を形成
するためには、メッキ処理時にpHを6〜7、温度を6
0〜80℃に設定し、メッキ処理を行っている間は前記
Ni系メッキ液の設定温度を±1℃以内、設定pHを±
0.05以内に保つのが好ましい。またNi系メッキ液
の撹拌やAlN基板の回転を十分に行って、常にAlN
基板に新鮮な溶液が供給されるようする必要がある。さ
らに、窒素又はアルゴンガスを前記Ni系メッキ液に吹
き込むことにより溶存酸素を除去する必要もある。
【0037】
【作用】本発明に係るAlN基板用無電解Niメッキ液
によれば、(a)Niイオン源として(含結晶水)硫酸
ニッケル、(含結晶水)塩化ニッケル又は(含結晶水)
酢酸ニッケル、(b)錯化剤として(含結晶水)エチレ
ンジアミン、(d)還元剤として(含結晶水)次亜りん
酸ナトリウム、(c)有機酸又は有機酸塩として乳酸、
コハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウムのうち少なくとも
1種を含みさらに(d)チオ尿素及び/又はマロン酸タ
リウムを含んでおり、無電解メッキ法により、AlN基
板を腐食することなく、また前記AlN基板に微細な配
線が形成されている場合でも、ブリードを発生させるこ
となくその配線に、膜密着性や硬度等の特性に優れたN
i含有メッキ被膜が選択的、かつより迅速に形成され
る。
【0038】
【実施例及び比較例】以下、本発明に係るAlN基板用
無電解Niメッキ液を用い、AlN基板に無電解Niメ
ッキ処理を施した場合について説明する。なお比較例と
して、本発明に係る無電解Ni系メッキ液の組成と異な
る組成の無電解Ni系メッキ液を用いてメッキ被膜を形
成した場合についても説明する。
【0039】AlN基板としては、粒界にカルシウムア
ルミニウム酸化物やカルシウムイットリウムアルミニウ
ム酸化物等を有する(株)住友金属セラミックス製のA
lN基板を用いた。そして、このAlN基板に、所定の
配線パターン及びパッドパターンになるように、スパッ
タ法により順次Ti、Mo、Cuの被膜をそれぞれ0.
05μm、0.5μm、0.5μmの厚さで形成し、メ
ッキ被膜形成のための下地金属層とした。この配線の最
小線幅は30μmで線間の距離は20μmであり、その
総面積は2500mm2 であった。
【0040】この下地金属層の上に下記の表3及び表4
に示した組成の無電解Ni系メッキ液を用いてメッキ被
膜を形成したわけであるが、まず基本的成分(Niイオ
ン源、錯化剤、還元剤)として、それぞれ塩化ニッケル
6水塩(NiCl2 ・6H2O)、次亜リン酸ナトリウ
ム1水塩(NaH2 PO2 ・H2 O)、エチレンジアミ
ン(en)を用い、下記の表3及び表4に示した濃度に
調整した。この濃度は、Ni−ロッシェル塩錯体からN
iを化学的に還元させる時に、皮膜析出量が最大となる
値を選択している。
【0041】また有機酸と有機酸塩についても表3及び
表4に示すものを用い、濃度は乳酸を0.16モル/リ
ットル、EDTA・2Naを0.01モル/リットルと
し、有機酸塩はすべて0.08モル/リットルとした。
この濃度に設定した理由は、同じくNi−ロッシェル塩
錯体溶液中のpH緩衝剤の適性濃度がそれぞれ0.07
5モル/リットルであったため、ほぼ同一濃度に調整し
てその効果の比較検討するためである。さらに本実施例
においては、チオ尿素の濃度を0.4mg/リットル、
マロン酸タリウムの濃度を0.5mg/リットルとし
た。この添加量は図1に示したチオ尿素、及びマロン酸
タリウムの添加量とNi析出量との関係から最もNi析
出量が多くなる濃度を選んだものである。
【0042】実施例及び比較例に係るNi系メッキ液の
調製は以下のようにして行った。まず500mlビーカ
ーに基本的成分をそれぞれ添加した。添加量は全体で1
リットルにした場合に表3及び表4に示した濃度になる
ような量である。これらの成分をよく撹拌して混合し、
pHが6.4〜6.6の範囲になるように希塩酸を用い
て調整した。その後、表3及び表4に示した有機酸、有
機酸塩、チオ尿素、及びマロン酸タリウムを設定濃度に
なるように添加し、1リットルのメスフラスコにメスア
ップした後に、後述する所定のpHに調整した。これ
は、一度にすべての試薬を調合した後にメスアップし、
pH調整を行うと、溶液に強い緩衝作用が働き、pH調
製が困難になり、これによってメッキ液の液性が変化す
るおそれがあるからである。
【0043】このNi系メッキ液に上記方法により得ら
れた金属薄膜を有するAlN基板を浸漬してメッキ処理
を施した。このとき、前記Ni系メッキ液の温度を60
±1℃以内、pHを6.00±0.01以内に保ち、該
Ni系メッキ液の撹拌や前記AlN基板の回転を十分に
行い、常にAlN基板に新鮮な溶液が供給されるように
した。また、メッキ処理を施している間は、窒素を前記
Ni系メッキ液に吹き込み、溶存酸素を除去した。メッ
キ処理時間は15分であった。
【0044】次に、前記メッキ処理によりメッキ被膜が
形成された前記AlN基板を、混酸溶液で濃硝酸(キシ
ダ化学(株)製の特級試薬)25mlと濃硫酸(キシダ
化学(株)製の特級試薬)25mlとを混合した後に純
水で希釈して100mlとした溶液に浸漬し、メッキ被
膜を溶解させた。そして、このメッキ被膜が溶解した溶
液中の金属イオン濃度をICP(Inductively Coupled
Plasma) 発光分光分析により測定して、溶解したNiイ
オンとPイオンの濃度を求め、Ni析出量とPの含有量
を求めた。
【0045】このAlN基板の混酸溶液中への浸漬によ
り、下地金属層のMo、Cu等やAlN基板自体も腐食
溶解したが、NiイオンとPイオンの定量分析には、特
に影響を及ぼさなかった。結果を下記の表3及び表4に
示す。
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】上記表3及び表4において、メッキ被膜を
溶解させた溶液中にPイオンが検出されているのは、次
亜リン酸ナトリウムがNiメッキ被膜が形成される際に
同時に析出し、Niとの合金を形成しているためであ
る。
【0049】表3及び表4よりわかる通り、基本成分に
有機酸及び有機酸塩が添加され、さらにチオ尿素又はマ
ロン酸タリウムが添加されている実施例に係るAlN基
板用無電解Ni系メッキ液では、前記化合物が添加され
ていない比較例に係るメッキ液に比べてNiの析出量が
多くなっており、特にチオ尿素及びマロン酸タリウムの
両方を添加した場合により析出量が多くなっている。ま
た、有機酸塩としてコハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウ
ムが添加された系がNi析出量が増加している。この結
果より、実施例に係る3種類の基本成分に有機酸又は有
機酸塩として乳酸、コハク酸ナトリウム、又は酢酸ナト
リウムを加え、さらにチオ尿素及びマロン酸タリウムを
加えた組成を基本的な組成とする無電解Ni系メッキ液
が析出量が多くNi系メッキ液として優れた特性を有す
ることがわかる。また、微細な配線部においてもビリー
ド現象は全く見られず、配線部分のみにメッキ被膜が形
成されていた。
【0050】次に、その表面に2500mm2 の面積で
銅が印刷されたアルミナ基板を用い、上記表3及び表4
に示した実施例及び比較例に係るAlN基板用無電解N
iメッキ液のうちのいくつかのものと同様の組成のメッ
キ液について、メッキ処理を施す際の水素の発生量を測
定した。なお、他の比較例として市販品のメッキ液を使
用して、同様に水素の発生量を測定した。
【0051】水素発生量の測定方法は、以下に説明する
方法により行った。すなわち、その一部にチューブを通
す貫通孔が形成され、該貫通孔にチューブが差し込まれ
た平板状の蓋を作製し、メッキ液が入れられた容器に前
記平板状の蓋を設置し、前記容器をチューブ以外からガ
スが漏れないように密封した。次に、その内部を水で充
満させたメスシリンダを水槽にいれて逆さの状態にし、
前記メスシリンダの内部にチューブの先端を入れ、メッ
キ反応により発生した水素ガスをメスシリンダの内部に
捕集してその容量を測定した。
【0052】市販品のメッキ液は、比較例13〜16に
ついてはワールドメタル(株)製リンデンSA、比較例
17〜20については、奥野製薬(株)製トップニコロ
ンUを使用し、比較例13、17の場合は前記市販のメ
ッキ液をそのまま使用し、比較例14、18の場合は前
記市販のメッキ液にチオ尿素を0.4mg/リットル加
え、比較例15、19の場合は前記市販のメッキ液にマ
ロン酸タリウムを0.5mg/リットル加え、比較例1
6、20の場合は前記市販のメッキ液にチオ尿素を0.
4mg/リットル、及びマロン酸タリウムを0.5mg
/リットル加え、それぞれメッキ液として使用した。使
用方法はメーカーの指定した方法をそのまま採用した。
その他の実施例、比較例は表3及び表4に示した実施
例、比較例の場合と同様の条件のメッキ液を使用してい
る。
【0053】前記市販品についてはその組成の分析を試
みたがはっきりわからなかった。しかし、実施例に係る
AlN基板用無電解Niメッキ液とは明らかに異なって
おり、錯化剤としてロッシェル塩が使用されているとい
うことのみがわかっている。
【0054】
【表5】
【0055】表5に示した結果より明らかなように、市
販品についてはいずれの添加剤を加えた場合において
も、水素発生量は未添加のメッキ液の場合と大差なく、
水素発生量の抑制効果は認められなかったが、実施例に
係るAlN基板用無電解Niメッキ液においては、水素
発生量が大きく減少しており、Ni析出量も増加してい
る。このように実施例に係るAlN基板用無電解Niメ
ッキ液を使用することにより、水素の発生が抑制される
ので、メッキ被膜と下地金属層との間に発生する水素に
よりメッキ被膜の膜密着性が低下することはない。
【0056】また、実施例3、比較例3、13、16、
17、20の場合と同様の組成を有するメッキ液を用
い、前記した表3及び表4に示した実施例及び比較例の
実施の際に用いたAlN基板上にメッキ被膜を形成し、
その歩留りを測定した。メッキ被膜を形成した回数は、
それぞれ12回である。メッキ処理されたAlN基板の
微細配線にブリード現象が全く発生せず、配線部分にメ
ッキ被膜が4μm程度以上の厚さで形成されているもの
を良好な製品とした。
【0057】その結果、実施例3の場合は歩留が98%
と非常に大きな値を示したのに対し、比較例3では88
%、比較例13では80%、比較例16では85%、比
較例17では80%、比較例20では85%と小さな値
であった。このように市販のメッキ液にチオ尿素及びマ
ロン酸タリウムを添加することにより歩留は向上する
が、実施例に係るAlN基板用無電解Niメッキ液と比
較するとかなり小さな歩留りに留まっていることがわか
った。
【0058】
【発明の効果】以上詳述したように本発明に係るAlN
基板用無電解Niメッキ液にあっては、(a)Niイオ
ン源として(含結晶水)硫酸ニッケル、(含結晶水)塩
化ニッケル又は(含結晶水)酢酸ニッケル、(b)錯化
剤として(含結晶水)エチレンジアミン、(d)還元剤
として(含結晶水)次亜りん酸ナトリウム、(c)有機
酸又は有機酸塩として乳酸、コハク酸ナトリウム、酢酸
ナトリウムのうち少なくとも1種を含みさらに(d)チ
オ尿素及び/又はマロン酸タリウムを含んでおり、無電
解メッキ法により、AlN基板を腐食することなく、ま
た前記AlN基板に微細な配線が形成されている場合で
も、ブリードを発生させることなくその配線に、膜密着
性や硬度等の特性に優れたNi含有メッキ被膜を選択
的、かつより迅速に形成することができる。そのため、
前記Ni系メッキ液を使用した場合、メッキ処理の際の
歩留りを大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】チオ尿素又はマロン酸タリウムをNiイオン
源、錯化剤、還元剤、有機酸、及び有機酸塩を含むメッ
キ液に添加したときのチオ尿素又はマロン酸タリウムの
添加量とNi析出量との関係を示したグラフである。
【図2】チオ尿素及びマロン酸タリウムを所定の量、N
iイオン源、錯化剤、還元剤、有機酸、及び有機酸塩を
含むメッキ液に添加、混合した際の前記メッキ液の温度
又は前記メッキ液のpHとNi析出量との関係を示した
グラフである。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)Niイオン源として(含結晶水)
    硫酸ニッケル、(含結晶水)塩化ニッケル又は(含結晶
    水)酢酸ニッケル、 (b)錯化剤として(含結晶水)エチレンジアミン、 (d)還元剤として(含結晶水)次亜りん酸ナトリウ
    ム、 (c)有機酸又は有機酸塩として乳酸、コハク酸ナトリ
    ウム、酢酸ナトリウムのうち少なくとも1種を含みさら
    に(d)チオ尿素及び/又はマロン酸タリウムを含んで
    いることを特徴とするAlN基板用無電解Ni系メッキ
    液。
JP13186594A 1994-06-14 1994-06-14 AlN基板用無電解Ni系メッキ液 Pending JPH083753A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004024985A1 (ja) * 2002-09-11 2004-03-25 Inspire Technology Resource Management Corporation 無電解メッキ液、及びこれを用いた無電解メッキ方法及び無電解メッキ被処理物
CN106381483A (zh) * 2016-09-15 2017-02-08 池明星 一种镍沉积工艺
JP2019007047A (ja) * 2017-06-23 2019-01-17 上村工業株式会社 無電解ニッケル−リンめっき皮膜及び無電解ニッケル−リンめっき浴

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