JPH08337815A - 強度と靱性に優れるCr−Mo鋼の製造方法 - Google Patents
強度と靱性に優れるCr−Mo鋼の製造方法Info
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Abstract
れたCr−Mo鋼を直接焼入れ法によって製造する。 【構成】C:0.05〜0.20wt%、 Si:0.30wt%以下、
Mn:1.00wt%以下、 Cr:1.00〜3.50wt%、Mo:0.
40〜2.00wt%、 N:0.0200wt%以下を含有し、残部
はFeおよび不可避的不純物の組成からなる鋼片を、 950
〜1100℃に加熱し、未再結晶温度域における累積圧下率
が20%以上、かつ圧延終了温度がAr3点以上の条件で
圧延し、直ちに500℃以下の温度に焼き入れ後、室温
まで冷却し、その後600℃以上の温度で焼もどす。
Description
方法に関するもので、とくに強度と靱性に優れるCr−
Mo鋼の製造方法に関するものである。
度に優れているために、石油精製プラント、化学プラン
トなどの高温高圧水素雰囲気下で使用される圧力容器用
材料として多用されている。これらのプラントは、近
年、効率化の観点から、より高温高圧化の条件で操業さ
れる傾向にある。このため、Cr−Mo鋼には、一層高
い強度が要求されるようになってきた。また、安全操業
の観点から、圧力容器の脆性破壊を防止するべく、より
高い靱性が要求されるようにもなってきた。なお、この
靱性に関しては、圧力容器の定期点検で実施される耐圧
試験が常温で行われることから、高温の操業温度のみな
らず常温での特性も必要である。このように、圧力容器
用に使用されるCr−Mo鋼は、その使用環境の変化に
よって、従来よりも一層、強度、靱性に優れた材質が必
要とされるようになってきた。
て、従来から一般的に知られている各種の再加熱処理
(焼入れ、焼なまし、焼きならし)法を適用すると、細
粒で良好な靱性は得られるものの、十分な強度が得られ
ないという問題があった。そこで、強度を向上させるた
めの試みが、これまでにもいくつか行われてきた。例え
ば、熱間圧延後に直接焼入れを行う、いわゆる直接焼入
れ法が、特公平1−29853号公報および特公平2−
9647号公報に開示されている。この直接焼入れ法
は、再加熱工程を含まない熱処理方法であるので、省エ
ネルギーの上からは勿論のこと、生産性、経済性の上か
らも多くの利点を有する製造技術である。
従来の直接焼入れ法では、上記再加熱熱処理法に比べ
て、鋼の高強度化は図られるものの、圧延後組織の結晶
粒が粗大であるため、靱性が低いという問題があった。
さらに、この方法では、結晶粒が粗大であることに起因
して、焼もどし脆化感受性が高く、使用中の脆化も懸念
されていた。このように、従来の再加熱熱処理法あるい
は直接焼入れ法によるCr−Mo鋼の製造技術では、い
ずれも、高強度かつ高靱性の材質が得られず、また焼も
どし脆化感受性が小さい材質のものが得られないという
問題があった。
の材質上の問題に鑑み開発されたものであり、強度およ
び靱性について有利に改善したCr−Mo鋼の製造方法
を提案することを目的とする。
目的を達成すべく、成分組成、熱間圧延および直接焼入
れの条件が強度および靱性に及ぼす影響について鋭意研
究を重ねた結果、以下の知見を得るに到った。 未再結晶域で20%以上の累積圧下率を付与し、直接
焼入れすることによって、変態強化、組織微細化が図ら
れ、強度と靱性がともに向上する。未再結晶域圧延で得
られるγ粒径は、再加熱熱処理のものほど細かくはなら
ないので、耐焼もどし脆化感受性の低下が懸念された
が、この焼もどし脆化はSi量を0.30wt%以下に制
御することによって抑制できる。 加熱温度を、従来の直接焼入れ法の加熱温度(110
0℃以上)よりも低くすることによって、結晶粒の微細
化が図られ、靱性、耐焼もどし脆化感受性が向上する。 加熱温度を、再加熱熱処理法(再加熱温度は、一般に
900〜950℃)より高くすることによって、Cr ,
Mo ,V ,Nb ,Tiなどの合金元素の固溶、拡散が促
進され、焼もどし軟化抵抗が増加し、高い強度が得られ
る。
あり、その要旨構成は以下のとおりである。 1)C:0.05〜0.20wt%、 Si:0.30wt%以下、Mn:
1.00wt%以下、 Cr:1.00〜3.50wt%、Mo:0.40〜
2.00wt%、 N:0.0200wt%以下を含有し、残部はFe
および不可避的不純物の組成からなる鋼片を、 950〜11
00℃に加熱し、未再結晶温度域における累積圧下率が2
0%以上、かつ圧延終了温度がAr3点以上の条件で圧延
し、直ちに500℃以下の温度に焼き入れ後、室温まで
冷却し、その後600℃以上の温度で焼もどすことを特
徴とする強度と靱性に優れるCr−Mo鋼の製造方法。
%以下、Mn:1.00wt%以下、 Cr:1.00〜3.50wt
%、Mo:0.40〜2.00wt%、 N:0.0200wt%以下を含
み、かつCu:0.50wt%以下、 Ni:0.50wt%以下、
B:0.0003〜0.0030wt%、V:0.05〜0.40wt%、Nb:0.
003 〜0.050 wt%、Ti:0.003 〜0.015 wt%、Al:0.00
5 〜0.050 wt%、Ca:0.0005〜0.0100wt%、REM :0.00
05〜0.0200wt%のうちから選んだ1種または2種以上を
含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる
鋼片を、 950〜1100℃に加熱し、未再結晶温度域におけ
る累積圧下率が20%以上、かつ圧延終了温度がAr3点
以上の条件で圧延し、直ちに500℃以下の温度に焼き
入れ後、室温まで冷却し、その後600℃以上の温度で
焼もどすことを特徴とする強度と靱性に優れるCr−M
o鋼の製造方法。
りに限定した理由について説明する。 C:0.05〜0.20wt% Cは,強度確保に有効な元素であり、少なくとも0.0
5wt%の含有が必要である。一方、0.20wt%を超え
て過剰に含有した場合には、溶接性の劣化が大きくなる
ので、0.05〜0.20wt%、好ましくは0.10〜
0.16wt%とする。
て過剰に含有すると焼もどし脆化感受性を高くするので
0.30wt%以下、好ましくは0.15wt%以下とす
る。
多過ぎると焼もどし脆化感受性を高め、溶接性を低下さ
せるので、1.00wt%以下、好ましくは0.80wt%
以下とする。
に有効な元素であり、少なくとも1.00wt%以上の添
加が必要である。一方、3.50wt%を超えて添加する
と、溶接性、クリープ強度を低下させるので、1.00
〜3.50wt%の範囲に限定する。
向上に有効な元素であり、その効果を発揮させるために
は0.40wt%以上の添加が必要である。一方、2.0
0wt%を超えて添加すると、その効果が飽和し、不経済
であるとともに、溶接性を低下させるので、0.40〜
2.00wt%の範囲に限定する。なお、好ましい添加範
囲は0.50〜1.50wt%である。
200wt%を超えて含有すると靱性が急激に低下する。
また、N量が多くなると、Bを添加した鋼では、BNを
形成してBの焼入れ性を低下させ、Ti添加鋼ではTi
Nを形成し、低温加熱でのTiの固溶(Tiによる析出
強化)を妨げることになるので、N量は0.0200wt
%以下、好ましくは0.0060wt%以下とする。
るが、0.50wt%を超えて添加すると、焼もどし脆化
感受性を増大させるので0.50wt%以下、好ましくは
0.30wt%以下とする。
るが、0.50wt%を超えて添加すると、焼もどし脆化
感受性を増大させるので0.50wt%以下、好ましくは
0.30wt%以下とする。
せるのに有用な元素である。これらの添加効果を発揮さ
せるためには、0.0003wt%以上の添加が必要であ
るが、0.0030wt%を超えて添加しても焼入れ性は
かえって低下し、とくに靱性が低下するので、0.00
03〜0.0030、好ましくは0.0005〜0.0
015wt%の範囲とする.
を析出し、常温および高温の強度を向上させ、耐水索侵
食性を高める元素である。これらの効果を発揮させるた
めには、少なくとも0.05wt%の添加量が必要であ
る。一方、0.40wt%を超えて過剰に添加しても、そ
の効果は飽和する傾向にあり、そのうえ靱性および溶接
性を低下させるので、0.05〜0.40wt%、好まし
くは0.10〜0.35wt%とする。
物を析出して、常温および高温における強度を向上さ
せ、耐水索侵食性を高める元素である。これらの効果を
発揮させるためには、少なくとも0.003wt%の添加
量が必要である。一方、0.050wt%を超えて過剰に
添加しても、その効果は飽和する傾向にあり、その上靱
性および溶接性を低下させるので、0.003〜0.0
50wt%、好ましくは0.005〜0.025wt%とす
る。
物を析出して、常温および高温における強度を向上さ
せ、耐水索侵食性を高める元素である。これらの効果を
発揮させるためには、少なくとも0.003wt%の添加
量が必要である。一方、0.015wt%を超えて過剰に
添加しても、その効果は飽和する傾向にあり、その上靱
性および溶接性を低下させるので、0.003〜0.0
15wt%、好ましくは0.008〜0.012%とす
る。
における粗粒化抑制に有効な元素であり、これらの効果
を発揮させるためには、0.005wt%以上の添加が必
要である。一方、0.050wt%を超えて過剰に添加す
るとクリープ強度を低下させる。したがって、Alの添
加量は0.005〜0.050wt%、好ましくは0.0
10〜0.025wt%の範囲とする.
有用な元素であり、これらの効果を発揮させるために
は、0.0005wt%以上の添加が必要である。一方、
これらの元素を過剰に添加すると鋼の清浄度を悪くし靱
性をかえって低下させる。したがって、Caの添加量は
0.0005〜0.0100wt%、好ましくは0.00
10〜0.0050wt%とする。
靱性を高めるのに有用な元素であり、これらの効果を発
揮させるためには、0.0005wt%以上の添加が必要
である。一方、これらの元素を過剰に添加すると鋼の清
浄度を悪くし靱性をかえって低下させる。このため、R
EMの添加量は0.0005〜0.0200wt%、好ま
しくは0.0010〜0.0080wt%とする。
は低いほどよいが、Pは焼もどし脆化を抑制するうえか
ら0.015wt%以下、Sは良好な靱性を確保するうえ
から0.008wt%以下に低減するのが望ましい。
炉または電気炉で溶製した後、必要に応じて取鍋精錬や
真空脱ガス処理を施し、造塊−分塊法あるいは連続鋳造
法で鋳込み鋼片にする。この鋼片を加熱したのち、熱間
圧延および直接焼入れを施すことにより製造する。以下
に、この発明に従う製造方法について説明する。 ・加熱温度: 950〜1100℃ 加熱温度が、950℃未満ではCr,Mo ,Vの固溶、
拡散が十分に行われないので、良好な焼入性と高い焼も
どし軟化抵抗が得られない。また、950℃未満では、
Nb,Tiの析出強化作用も発揮されない。このため、
十分な強度を確保するためには、再加熱熱処理法より高
い、950℃以上の加熱が必要である。一方、1100
℃を超える温度で加熱すると、γ粒が粗大化し過ぎ、圧
延工程で十分に微細化できなくなり靱性が低下する。し
たがって、加熱温度は950〜1100℃、好ましくは
1030〜1100℃とする。
0%以上 加熱されたスラブは複数パスの圧下により熱間圧延され
る。この熱間圧延において、加工γの焼入れにより、変
態強化、組織微細化を図り、強度および靱性の向上を達
成するためには、未再結晶温度域で少なくとも20%以
上の累積圧下率が必要である。したがって、未再結晶域
での累積圧下率は、20%以上、好ましくは25 %以
上とする。なお、この発明において、加熱温度の低下に
よる強度上でのマイナス面は、未再結晶温度域における
累積圧下率:20%以上という、上記手段の採用によっ
て十分解消される。
後に急冷を行っても良好な焼入れ性が得られないため、
強度、靱性が低下する。したがって、圧延終了温度はA
r3点以上とする。
れ後、室温まで冷却 圧延後の焼入れは、噴水による強冷が望ましく、加速冷
却設備などによる能率的な焼入れが好ましい。冷却停止
温度は、低いと微細な焼入れ組織が得られるのに対し、
500℃を超えると粗大な組織を形成し、強度、靱性を
低下させる。したがって、冷却停止温度は500℃以
下、好ましくは450℃以下とする。また、焼入れ後、
室温まで冷却するのは、変態を完全に終了させてから焼
もどしを行いうことにより、良好な強靱性を得るためで
ある。
理を行う。この目的を達成するためには、焼もどし温度
を600℃以上とする必要がある。なお、好ましい焼も
どし温度は、625〜725℃がよい。
で、加熱、熱間圧延、、直接焼入れ(水冷)を行い、室
温まで冷却した後、焼もどしを行った。また、比較のた
めに、一部のものについては、上記直接焼入れに代わ
り、圧延後空冷−再加熱焼入れの処理を行った。これら
焼入れ処理後に、690℃で24時間保持の条件で焼も
どし処理を行った。
性、シャルピー衝撃特性およびGEタイプのステップク
ーリング処理(焼もどし脆化特性測定のための加速熱処
理)後の脆化量△vTrsを調査した。これらの試験結
果を表2に併せて示す。また図1は、これらのデータか
ら、室温における引張強さ(TS)と破面遷移温度(v
Trs)との関係プロットしたものである。図1におい
て、●印が発明法、○印が比較法でそれぞれ製造した材
料の特性である。
がって製造したCr−Mo鋼は、直接焼入れ条件が不適
切な比較法よりも靱性に優れ、再加熱焼入れによる比較
法よりも強度が高いことがわかる。さらに、この発明法
にしたがって製造したCr−Mo鋼は、直接焼入れ条件
が不適切な比較法によるものよりも△vTrsが小さ
く、焼もどし脆化感受性が小さいことがわかる。なお、
Cr、Mo含有量が過少である鋼(F)では、直接焼入
れ条件が適正であっても、機械的性質の向上はほとんど
認められないこと、また、Mn含有量が過多である鋼
(G)は、直接焼入れ条件が適正であっても、△vTr
Sが大きく、焼もどし脆化感受性が大きいことがわか
る。
に優れ、焼もどし脆化感受性が小さいCr−Mo鋼を、
直接焼入れ法により製造することが可能となる。したが
って、この発明によれば、より高温高圧水素雰囲気下で
使用される圧力容器用材料を省エネルギー工程で効率的
に製造できるので、極めて大きな工業的寄与がもたらさ
れる。
(vTrs)との関係を示すグラフである。
Claims (2)
- 【請求項1】 C:0.05〜0.20wt%、 Si:0.30wt%以下、 Mn:1.00wt%以下、 Cr:1.00〜3.50wt%、 Mo:0.40〜2.00wt%、 N:0.0200wt%以下を含有
し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる鋼片
を、 950〜1100℃に加熱し、未再結晶温度域における累
積圧下率が20%以上、かつ圧延終了温度がAr3点以上
の条件で圧延し、直ちに500℃以下の温度に焼き入れ
後、室温まで冷却し、その後600℃以上の温度で焼も
どすことを特徴とする強度と靱性に優れるCr−Mo鋼
の製造方法。 - 【請求項2】 C:0.05〜0.20wt%、 Si:0.30wt%以下、 Mn:1.00wt%以下、 Cr:1.00〜3.50wt%、 Mo:0.40〜2.00wt%、 N:0.0200wt%以下を含み、
かつCu:0.50wt%以下、 Ni:0.50wt%以下、 B:0.0003〜0.0030wt%、V:0.05〜0.40wt%、 Nb:0.003 〜0.050 wt%、Ti:0.003 〜0.015 wt%、 Al:0.005 〜0.050 wt%、Ca:0.0005〜0.0100wt%、 REM :0.0005〜0.0200wt%のうちから選んだ1種または
2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組
成からなる鋼片を、 950〜1100℃に加熱し、未再結晶温
度域における累積圧下率が20%以上、かつ圧延終了温
度がAr3点以上の条件で圧延し、直ちに500℃以下の
温度に焼き入れ後、室温まで冷却し、その後600℃以
上の温度で焼もどすことを特徴とする強度と靱性に優れ
るCr−Mo鋼の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14308695A JP3620099B2 (ja) | 1995-06-09 | 1995-06-09 | 強度と靱性に優れるCr−Mo鋼の製造方法 |
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JP3620099B2 JP3620099B2 (ja) | 2005-02-16 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010037655A (ja) * | 2008-07-09 | 2010-02-18 | Nippon Steel Corp | 耐水素性に優れた高圧水素ガス貯蔵容器用鋼およびその製造方法 |
CN102080187A (zh) * | 2010-12-21 | 2011-06-01 | 南阳汉冶特钢有限公司 | 一种大厚度Cr-Mo系12Cr2Mo1R容器钢及其生产方法 |
CN107475620A (zh) * | 2017-07-26 | 2017-12-15 | 舞阳钢铁有限责任公司 | 低温压力容器用调质型A537Cl2钢板及其生产方法 |
CN108034887A (zh) * | 2017-12-01 | 2018-05-15 | 宁波诚泰汽车部件有限公司 | 一种高性能合金钢材料及其制备方法 |
-
1995
- 1995-06-09 JP JP14308695A patent/JP3620099B2/ja not_active Expired - Fee Related
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