JPH08320091A - 油井管ネジ継手 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ピン先端にリングを有し、かかるリングを装
入するためのグルーブを有するカップリングからなるネ
ジ継手において、リング装入グルーブに発生する応力を
できるだけ低減することを目的とする。 【構成】 内面に雌ネジを持つカップリングと、外面に
雄ネジを持つピンとを螺合する管ネジ継手において、ネ
ジ部に続き、ショルダー部、シール部の順番で形成され
るネジなし部を有し、かかる管同士の先端間、または管
先端とカップリングショルダーとの間にリングを介在さ
せ、該リングを装入する第一のグルーブをカップリング
に刻設し、かつ、前記カップリングショルダー部直上に
第二のグルーブを刻設することを特徴とする油井管ネジ
継手。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は原油採掘に使用する油井
管などにおいて、内面にプラスチックコーティングを施
したパイプをコーティングに損傷を与えることなく螺合
でき、尚かつ、締結部においても継手母材自身も内面流
体による損傷を防止できるネジ継手に関する。

【０００２】

【従来の技術】油井掘削において、原油回収効率を向上
させるために油井内にチュービングを通して水を注入す
る、いわゆるウォーターインジェクションウェルの開発
が盛んになってきた。通常の水、または海水をそのまま
低合金の油井管に注入すると、含有酸素の影響で鋼管が
著しく腐食し、短期間の間に鋼管の崩壊を招く。注入水
を脱気する場合もあるが、必ずしも十分でない場合もあ
り、最も信頼性の高い方法は１３Ｃｒ鋼などの耐食材料
を使用することであるが、これでは３倍以上ものコスト
増を招く。

【０００３】ここで、近年検討し始められたものが普通
鋼に樹脂をコーティングして内面の腐食流体から母材を
保護する内面コーティングチュービングである。かかる
内面コーティングチュービングではネジ継手による締結
部にも耐食機能が必要であり、近年いろいろな研究がさ
れてきた。

【０００４】例えば実開昭５８−１４２４７５号公報に
見られるようなピン先端にリングを配置させたものが一
般的であるが、内面コーティング用継手の場合、繰り返
しの締め、緩めに対してコーティングの損傷を防止する
ため、リングの材質はテフロンリングなどの可塑性樹脂
であることが望ましい。しかし、このような構造でリン
グに可塑性樹脂を用いた場合、トルクショルダーとして
の役割は期待できない。これを解決するために外部にト
ルクショルダーを設けた例えば実開平４−４９２９０号
公報があるが、管端部にアプセットと呼ばれる熱間加工
を施す必要があり、高価になる。

【０００５】このような両方の問題、即ち、トルクスト
ッパー機能があり、尚かつ安価な継手の開発例として、
特開昭６２−９８０８８号公報、実開平４−６３８８４
号公報、米国特許５，２３６，２３０号明細書記載の発
明がある。これらの発明の中で言及されていない点にリ
ングの装着のし易さ、装着後のリングの安定性がある
が、一般的にリング装入溝が深いほど安定している。特
に米国特許５，２３６，２３０号に見られるような管端
同士が両方から突き合わせるようにリングを挟み込む場
合、リング安定性の観点からグルーブを深くとることは
実際の使用を念頭に置いたとき極めて重要な設計要因で
ある。

【０００６】しかしながら、図１に示すようにグルーブ
を深くすればするほどカップリング断面積が薄くなり、
特に軸力下ではかかるグルーブ底には降伏点を超えるよ
うな応力が集中する。このような状況下でリングのシー
ル機能が不十分であったり、あるいは何らかの要因でリ
ングが未装着であった場合など内面の腐食性流体が容易
に応力集中部を攻撃することになり、油井管では致命的
なＳＳＣ（硫化物応力腐食割れ）を誘発する原因にもな
る。これらを防止する一手段としてグルーブ部のコーナ
ーＲ（半径）を大きくとるなど設計ノウハウに属する工
夫はあったが、積極的リンググルーブの応力低下を狙っ
た発明は皆無であった。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】このような技術の現状
において本発明は、ピン先端にリングを有し、かかるリ
ングを装入するためのグルーブを有するカップリングか
らなるネジ継手において、リング装入グルーブに発生す
る応力をできるだけ低減する油井管ネジ継手を提供する
ことを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は内面に雌ネジを
持つカップリングと、外面に雄ネジを持つピンとを螺合
する管ネジ継手において、ネジ部に続き、ショルダー
部、シール部の順番で形成されるネジなし部を有し、か
かる管同士の先端間、または管先端とカップリングショ
ルダーとの間にリングを介在させ、該リングを装入する
第一のグルーブをカップリングに刻設し、尚かつ、前記
カップリングショルダー部直上に第二のグルーブを刻設
したことを特徴とし、また、前記第二のグルーブ深さを
カップリング第一ネジの谷深さより浅くすること、ある
いはさらに、第一のグルーブ内径を第二のグルーブ内径
より小さくしたことを特徴とするものであって、これに
より、第一のグルーブに発生する応力を最小限に抑制す
ることができる。

【０００９】

【実施例】以下に本発明を図に示す実施例に基づいて詳
細に説明する。図２は本発明によるネジ継手を示し、図
（ｂ）は図（ａ）の要部（円の部分）拡大図である。図
においてネジ継手はカップリング１、ピン２からなり、
ピンはネジ部３に続き、ショルダー部４とそれに続く、
シール部５を有し、リング６は相対するピン２の先端に
挟み込まれるように配置されている。ここでカップリン
グには第一のグループ＝リング装入グルーブ７が刻設さ
れており、ショルダー直上には第二のグルーブ＝応力緩
和グルーブ８が刻設されている。９は母材を保護するコ
ーティングを意味する。

【００１０】ここでショルダー部４とシール部５の構造
は過負荷なトルク下、あるいは圧縮荷重下で余分なトル
ク、圧縮荷重がショルダー部で吸収されるためにシール
部に悪影響を及ぼさないという最適な構造であり、尚か
つカップリング両サイドのショルダー間公差、及びピン
シール部軸方向の公差を適宜制御することでリングの圧
縮率を正確に制御することもできる。

【００１１】グルーブ８でリング装入用グルーブ７の応
力を緩和できるメカニズムについて説明する。図３
（ａ）は応力緩和グルーブがない場合の軸方向応力の流
れを模式的に表したものである。ネジ部で伝達された応
力はシール部直上のカップリング部でカップリング断面
積が大きくなると同時に拡散され、リング装入用グルー
ブにぶつかり、リング底部で応力集中を起こす。この応
力が材料のＳＳＣに対する限界値を超えるとグルーブ底
が起点となり硫化物応力腐食割れを起こす危険がある。

【００１２】これに対し、図３（ｂ）に示すように応力
緩和グルーブ８が存在すると応力の流れはグルーブ７に
まで到達されにくくなり、結果としてグルーブ７での応
力集中は緩和される。

【００１３】このような効果を有限要素法を使い定量的
に表したものを図４に示す。応力緩和グルーブ８を設け
ることによりリング装入グルーブの応力は有意義に低下
していることが判る。応力緩和グルーブ底には応力は集
中することになるが、かかるグルーブ面が直接腐食性流
体にさらされることはなく、実使用上問題はない。

【００１４】次に応力緩和グルーブ８深さ、及びリング
装入グルーブ７深さをカップリング１の第一ネジの谷深
さより浅くする理由は、カップリングの継手強度をグル
ーブを持たない本来のカップリング強度と同等に維持す
るためである。この設計により、カップリングの危険断
面は減少することなく、継手強度は維持される。

【００１５】図２は本発明によるネジ継手の内、ピン内
面及び先端部にコーティングを施した例である。通常、
かかる継手は内面コーティングパイプと併用して用いら
れることが多い。効果としてはパイプ母材、継手部いず
れも内面の流体に直接触れることはなく、流体が腐食性
であった場合、管体または継手部の耐蝕性を向上させる
ことができる。このような構造はカップリング部が直接
内部流体に触れないため、カップリング部にコーティン
グを施す必要がなく、コストの面からもより好適であ
り、実開平４−６３８８４号公報記載の考案と同様であ
るが、これにはリング装入グルーブの応力緩和措置は講
じられておらず、本発明と異なる。また、図５（ａ），
（ｂ）は管先端とカップリングの間にリング６，６を介
した例であるが、応力緩和グルーブを有している点で本
発明に含まれる。

【００１６】発明リング形状について前記実開昭５８−
１４２４７５号公報で言及しているが、内圧降下時のリ
ングの飛び出し、あるいは軸方向の圧縮によるリングの
はみ出しを防止するにはかかる形状は有効であるが、リ
ングの材質が弾性体など鋼に比べて著しく柔らかい場
合、トルク制御機能を有さず、前述したようにトルクス
トッパーとリング装着グルーブの応力緩和措置が必要と
なる。それを具現化する技術として図６を示す。これも
本発明に含まれる。

【００１７】

【発明の効果】以上説明したように本発明はシール部に
隣接するショルダー部直上に応力緩和グルーブを設ける
ことにより、軸応力の流れをリング装入グルーブから遠
ざける効果が起こり、結果としてリング装入グルーブに
発生する最大応力を低減することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】一般的なネジ継手構造の説明図。

【図２】（ａ）は本発明のネジ継手部の端面、（ｂ）は
その要部拡大図を示す。

【図３】継手部軸方向応力の流れを示す模式図であり、
（ａ）は応力緩和グルーブがない場合、（ｂ）はそれが
ある場合を示す。

【図４】リング装入グルーブにおける応力集中を有限要
素法を用いて定量的に表わした図であり、（ａ）は継手
構造の模式図、（ｂ）はリング装入グルーブ径と、最大
相当応力との関係を示す図。

【図５】本発明ネジ継手の他の例であり、（ａ）はその
断面、（ｂ）は要部拡大図。

【図６】本発明の別の構成を示すネジ継手要部を示す。

【符号の説明】

１ カップリング ２ ピン ３ ネジ部 ４ ショルダー部 ５ シール部 ６ リング ７ リング装入グルーブ ８ 応力緩和グルーブ ９ コーティング

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 内面に雌ネジを持つカップリングと、外
   面に雄ネジを持つピンとを螺合する管ネジ継手におい
   て、ネジ部に続き、ショルダー部、シール部の順番で形
   成されるネジなし部を有し、かかる管同士の先端間、ま
   たは管先端とカップリングショルダーとの間にリングを
   介在させ、該リングを装入する第一のグルーブをカップ
   リングに刻設し、かつ、前記カップリングショルダー部
   直上に第二のグルーブを刻設することを特徴とする油井
   管ネジ継手。
2. 【請求項２】 前記したネジ継手において、第一，第二
   のグルーブ深さをカップリング第一ネジの谷深さより浅
   くすることを特徴とする請求項１記載の油井管ネジ継
   手。
3. 【請求項３】 前記したネジ継手において、ピン内面、
   及びピン先端面に樹脂やＦＲＰをコーティングしたこと
   を特徴とするネジ継手。