JPH08315740A - 画像表示装置及びその製造方法 - Google Patents

画像表示装置及びその製造方法

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JPH08315740A
JPH08315740A JP7134590A JP13459095A JPH08315740A JP H08315740 A JPH08315740 A JP H08315740A JP 7134590 A JP7134590 A JP 7134590A JP 13459095 A JP13459095 A JP 13459095A JP H08315740 A JPH08315740 A JP H08315740A
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Japan
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glass substrate
cathode
display device
image display
type image
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Application number
JP7134590A
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English (en)
Inventor
Shigeo Suzuki
茂夫 鈴木
Hiroshi Watanabe
拓 渡邉
Mitsuo Asabe
光男 浅辺
Hiroki Kono
宏樹 河野
Kazuo Takahashi
一夫 高橋
Yoshirou Abe
由朗 安部
Kazunori Hirao
和則 平尾
Hidenobu Shintaku
秀信 新宅
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Publication date
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  • Gas-Filled Discharge Tubes (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 直流気体放電型画像表示装置として、溶射法
によって形成された陰極を備える表示装置及びその製造
方法を提供する。 【構成】 表面ガラス基板と、表面ガラス基板に対向し
て間に放電ガスが封入されて配置された背面ガラス基板
と、背面ガラス基板の上に形成された複数の線電極を含
む陽極群と、陽極群に直交するように該表面ガラス基板
の上に配置された複数の線電極からなる陰極群と、陽極
群及び該陰極群の交点にそれぞれに対応して設けられた
複数の放電セルと、を備え、リフレッシュ駆動方式また
はメモリ駆動方式によって動作される直流気体放電型画
像表示装置において、陰極群を溶射法によって形成す
る。陰極は、アルミニウム、ニッケルまたはそれらの合
金から構成され、放電ガスはHe及びXeの混合ガスで
ある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、画像表示装置及びその
製造方法に関し、具体的には、カラーテレビジョン受像
機やディスプレイ等に使用する希ガス放電発光を利用し
た直流気体放電型画像表示装置及びその製造方法に関す
る。特に、そのような画像表示装置で使用される放電電
極及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プラズマディスプレイパネル(以下、P
DPとする)などの気体放電型画像表示装置は、平面型
の画像表示装置として、コンピュータなどの情報端末機
器で利用されている。鮮明な画像表示が可能であるこ
と、及び液晶パネルに比べて視野角の広さなどの点で優
位性を有していることなどから、その応用分野が拡大し
てきている。テレビ受像機の大型化が進むにつれて、ブ
ラウン管や液晶パネルを用いた投射型テレビが商品化さ
れてきている。しかし、そのような従来の投射型テレビ
は、いずれも画面の輝度や装置の大きさに課題が残って
いる。
【0003】一方、PDPは、奥行きを大幅に薄型化で
きる画像表示装置として脚光を浴びつつある。さらに最
近では、そのカラー化技術が著しく向上している。この
結果、PDPは、ブラウン管に代わる画像表示装置とし
て、特にハイビジョン用の直視型壁掛けテレビを実現す
る画像表示装置の最右翼として注目されている。そのよ
うな状況の中で、PDPの忠実な色再現性の向上及び寿
命の向上が要求されている。
【0004】図20は、典型的な直流PDP500の構
成を示す斜視図である。
【0005】直流型PDP500では、透明ガラス等よ
りなる表面ガラス基板39と背面ガラス基板40との間
に、複数の放電セル41を構成している。それぞれの放
電セル41の内部には、所定の色の光を発する蛍光体4
2が設けられている。放電セル41の内部でガス放電を
生じさせて紫外線を発生させ、その紫外線を蛍光体42
に放射することによって、カラー表示を行う。
【0006】具体的には、表面ガラス基板39の背面ガ
ラス基板40に対向する面の上には、複数の陰極線43
がお互いに並行に設けられている。背面ガラス基板40
の表面ガラス基板39に対向する面の上には、陰極線4
3に直交するように、複数の陽極線44がお互いに並行
に設けられている。陰極線43及び陽極線44の交点の
それぞれが、一つの放電セル41に対応している。各放
電セル41は、隔壁45によって他の放電セル41から
分離され、一つ一つが微細な放電管を形成している。各
放電セル41には、適当な配列でそれぞれ赤(R)、緑
(G)、青(B)の蛍光体42が塗布されている。隔壁
45は、表面ガラス基板39と背面ガラス基板40との
間隔を所定の値に保つとともに、隣接する放電セル41
の間の混色を防ぐ。
【0007】背面ガラス基板40の上には、さらに絶縁
層46が形成されている。絶縁層46は、それぞれの放
電セル41に相当する箇所では陽極線44を露出させ、
それ以外の箇所では陽極線44を覆うように形成されて
いる。また、放電電流を制限するためのセル抵抗(図2
0には不図示)を各放電セル41に設けてもよい。
【0008】各放電セル41の内部には、紫外線を放射
する放電ガスが封入されている。例えば、ヘリウムとキ
セノンとの混合ガスを、封入ガス圧力が数百Torr程度に
なるように封入する。
【0009】上記構成を有する直流PDP500におい
て、一つの陰極線43及び一つの陽極線44を任意に選
択してそれらの間に電圧を印加すると、その交点に相当
する位置の放電セル41において放電が生じる。具体的
には、陰極線43から電子が飛び出し、放電セル41内
部の放電ガスを電離しながら陽極線44に達する。この
様な放電を生じさせるために印加される電圧を、書き込
み電圧という。放電にともなう放電ガスの電離によって
生じる紫外線によって蛍光体42が励起し、各セルで所
定の色の発光が生じる。これによって、カラー表示が行
われる。
【0010】図21は、図20に示す直流PDP500
を、リフレッシュ駆動方式で駆動する場合における電圧
パルスの印加方法を示す。
【0011】直流PDP500には、計n本の陰極線4
3K1〜43Kn(総称する場合には、参照番号43を
使用する)、及び計m本の陽極線44A1〜44Am
(総称する場合には、参照番号44を使用する)が設け
られている。陰極線43及び陽極線44のそれぞれの交
点が、放電セル41に相当する。
【0012】リフレッシュ駆動方式では、陰極線43K
1〜43Knへ順次時分割で負のパルス電圧48を印加
して、陰極線43を順次選択する。この動作を走査と呼
び、陰極線43を走査線と呼ぶことがある。
【0013】さらに、いずれか一つの陰極線43の選択
に同期して、選択された陰極線に沿った放電セル41の
うちで発光させるべき放電セル41に対応する陽極線4
4を選択する。これは、選択すべき陽極線44に正のパ
ルス電圧51を印加することにより行う。したがって、
すべての陽極線44を同時に選択すれば、一本の陰極線
43上の全ての放電セル41が同時に選択されて発光す
る。選択された陰極線43が表示すべき情報に応じて陽
極線44を適宜選択することにより、発光を任意のパタ
ーンで生じさせることができ、画像表示装置としての動
作が実現される。
【0014】リフレッシュ駆動方式では、書き込み電圧
の印加時にのみ発光が生じ、この発光を利用して画像を
表示する。陰極線43の本数が増加すると、陰極線43
一本当りのパルス印加時間が短くなる。これより、それ
ぞれの放電セル41における発光時間は、陰極線43の
本数に反比例して小さくなる。そのため、陰極線の本数
が増加するほど、表示される画像の輝度も低くなる。
【0015】メモリ駆動方式は、リフレッシュ駆動方式
における上述の問題点を解決しようとするものである。
【0016】一般に、書き込み電圧の印加により放電セ
ル41内で放電が起きると、荷電粒子が放電セル41内
に残留する。それによって、書き込み電圧が印加されな
くなっても、一定期間(通常は数マイクロ秒)にわたっ
て、当初の書き込み電圧(Vw)より低い電圧(Vm)
にて放電を維持できる。メモリ駆動方式は、この現象を
利用してPDPを動作させる。
【0017】図22は、図20に示す直流PDP500
を、メモリ駆動方式で駆動する場合における電圧パルス
の印加方法を示す。
【0018】メモリ駆動方式においても、リフレッシュ
駆動方式と同じように、陰極への負のパルス電圧52の
印加及び陽極への正のパルス電圧53の印加によって、
所定の放電セル41に選択的に振幅Vwの書き込み電圧
54を印加して放電を生じさせる。それに加えて、書き
込み電圧54に引き続いて、さらに振幅Vmの維持パル
ス電圧55を陰極に続けて印加して、放電時間を延長さ
せる。
【0019】このように、メモリ駆動方式では、維持パ
ルス電圧55の印加によって陰極線の数に依存しないで
連続的な発光を生じさせることができる。これより、書
き込み電圧印加時の発光のみを利用したリフレッシュ駆
動方式に比べて、表示される画像の輝度をより高めるこ
とができる。例えば、テレビ表示用として十分な値であ
る150cd/m2以上の輝度が達成される。
【0020】維持パルス電圧55の振幅Vmは、その印
加に先立って書き込み電圧54が印加されている場合に
放電が生じる(放電セルが点灯する)電圧Vpd以上で
あって、維持パルス電圧55の印加に先立って書き込み
電圧54が印加されていない場合に放電が生じない(放
電セルが点灯しない)電圧Vxt以下に、設定する必要
がある。これらの電圧差(Vxt−Vpd)はメモリー
マージンと呼ばれ、通常20V程度である。
【0021】メモリ駆動方式では、安定した放電電圧を
得ることが、直流PDPの安定した動作を実現する上で
きわめて重要である。放電電圧は、陰極線43によって
大きく影響される。したがって、直流PDPにおいて
は、PDP点灯時の低電力化、動作の長期安定性、ある
いはメモリマージンの確保のために、陰極線43は非常
に重要な構成要素である。
【0022】陰極線43は、金属系、酸化物系等の種々
の材料から構成することができるが、従来はNiまたは
その合金を用いて形成される。また、陰極線43は、従
来は主にスクリーン印刷によって形成される。
【0023】さらに、放電電圧を低減して直流PDPの
消費電力を低減するために、スクリーン印刷によって形
成された金属電極の表面に、仕事関数の低い材料を被着
させる構成が、例えば、特公平2−7136号公報、特
公平5−11381号公報あるいは特公平5−1138
2号公報に示されている。
【0024】図23(a)及び23(b)は、特公平2
−7136号公報に示されている陰極線59の構成を模
式的に示す。図23(a)は、図23(b)に示す線2
3a−23a’に沿った断面図である。
【0025】陰極線59は、基体金属56、及びその上
に形成された多孔質付着層57から構成される。基体金
属56は、スクリーン印刷によって所定のパターン(図
23(b)ではストライプ状)に形成されている。アル
カリ土類金属元素の酸化物または硫化物、あるいはアル
カリ土類金属元素とアルミニウムとの複合金属酸化物よ
り成る多孔質付着層57は、プラズマ溶射法により、放
電セルの配置に対応した所定のパターンで、基体金属5
6の表面に形成されている。また、図23(b)の例で
は、多孔質付着層57は円形に形成されている。多孔質
付着層57に含まれる孔の内部には、少なくとも遊離し
たアルカリ土類金属元素58が点在している。
【0026】この様な構成においては、電気的絶縁物、
あるいは融点が高く仕事関数が小さい材料を、電子放出
材料として使用する。これによって、放電電圧が低減し
て、消費電力が低減される。上述の例では、多孔質付着
層57を構成する酸化物や硫化物が、電子放出材料とし
て機能する仕事関数の低い材料である。
【0027】これらの材料からなる多孔質付着層57を
スクリーン印刷によって形成する場合、実際に陰極線と
して機能させるためには、遊離金属の発生を促す工程と
して、スクリーン印刷で所定の形状に形成した後にかな
りの高温での溶融及び活性化処理を行う必要がある。一
方、プラズマ溶射で多孔質付着層57を形成する場合に
は、プラズマ溶射工程自身が高温で行われるために、あ
らためて高温プロセスを実施する必要がない。したがっ
て、ガラス基板の上に基体金属56及び多孔質付着層5
7を被着させた後に、ガラス基板に大きな熱負荷を与え
ることなく、放電電圧が低い陰極線を形成することがで
きる。
【0028】
【発明が解決しようとする課題】上述のように陰極線を
主にスクリーン印刷で形成すれば、比較的簡単な製造装
置で直流PDPを製造することができる。しかし、その
一方で、スクリーン印刷による陰極線の形成には、以下
のような問題点が存在する。
【0029】(1)陰極線の線抵抗による電圧降下 直流PDPでは、一般に陰極線を順次走査する。この過
程で、1本の陰極線上の多数の放電セルが同時に選択さ
れて点灯すると、その放電によって流れる電流が陰極線
を通じて電源に流れ込む。このため、陰極線の電源供給
側の端部とその反対側の端部との間で、陰極線の線抵抗
による電圧差が発生する。その結果、電源供給側端部か
ら遠くなるほど、実際に放電セルに印加される電圧が低
くなる。リフレッシュ駆動方式では、この電圧差が輝度
差として現れるため、表示される画像の質が悪化する。
メモリ駆動方式では、この電圧差のためにメモリーマー
ジンが著しく悪化する。
【0030】例えば、電極ピッチが200μm、陰極が
長さ575μm×幅150μmであり、放電ガスとして
He−Xe10%が圧力350Torrで放電セル内に
封入されている場合、一つの放電セル当たりに流れる放
電電流は、60μA程度である。アルミ印刷ペーストで
形成された厚さ50μmの陰極線のシート抵抗値は、4
0mΩ程度になる。上記の条件でNTSC方式ワイドテ
レビに必要な約900本の陽極を有する直流PDPを構
成すると、陰極線の電源供給側端部と反対側端部との間
での電圧差は、約6Vにもなる。これは、陰極線の電源
供給側端部に比べて、反対側端部ではメモリマージンが
6V低下することを意味する。
【0031】このように、大きな電圧降下をもたらす陰
極線の線抵抗は、メモリマージンを低下させる一因とな
っている。
【0032】陰極線をスクリーン印刷により形成する場
合、一般に、金属粉にガラス粉などの結着剤が混練され
て形成されている印刷用金属ペースト(ガラスフリッ
ト)を使用する。そのため、所定のパターンにスクリー
ン印刷されたペーストを焼成して陰極線を形成すると、
金属粒子表面が溶融されたガラスによって被覆される。
このために、導電率が金属本来の値の約数分の一に低下
して、線抵抗が増加する。したがって、スクリーン印刷
で形成した陰極線では、画面サイズが大きくなるほどガ
ラスフリットの影響が顕著に現れて線抵抗が大きくな
り、陰極線に流れる電流による電圧降下が大きくなる。
この結果、陰極線の長さ方向での輝度の低下や不点灯放
電セルの発生など、表示される画像の質が劣化する。こ
れらの問題を解決するためには駆動電圧回路の大型化が
必要になり、製造コストやサイズの低減が困難になる。
【0033】(2)点灯期間中の駆動電圧の変動 限られた駆動電圧範囲内でPDPを駆動させるメモリ駆
動方式では、点灯期間中の駆動電圧の変動もできる限り
小さくする必要がある。しかし、例えば、スクリーン印
刷で形成されたアルミ陰極を有するPDPをメモリ駆動
方式で駆動する場合、駆動時間が家庭用テレビとして必
要な3万時間に達するまでに駆動電圧が約15Vも変動
し、点灯期間中にメモリマージンを著しく低下(−15
V)させる。これは、以下の理由によると推定される。
前述したように、スクリーン印刷で形成された陰極線の
表面は、一般にペーストに含まれるガラスにより覆われ
ている。駆動中にこのガラス被覆が放電により除去され
るにつれて、清浄な金属表面が現れ、駆動電圧が変動す
る。
【0034】したがって、線抵抗及び点灯期間中の駆動
電圧の変動を低減するためには、直流PDPの陰極線
を、あらかじめできる限り純金属に近い状態に形成する
必要がある。
【0035】陰極線を蒸着法により形成することも可能
であるが、形成できる膜厚が薄く所定の線抵抗が得られ
ないこと、及び真空蒸着装置が必要であるため製造コス
トが増加するという問題点が存在する。
【0036】スクリーン印刷に比べて、プラズマ溶射法
は、粉末の陰極線材料を高温プラズマ状態のジェット気
流のなかに投入して粉末材料を溶融状態にした上で、ジ
ェット気流のエネルギーを利用して高速で基板に付着さ
せる。スクリーン印刷のようなガラスフリットの混入
は、溶射法では基本的には生じない。
【0037】しかしながら、溶射法には、特有のプロセ
ス上の課題が存在する。特に比重量の小さい粉末粒子を
用いる溶射の場合や、大面積に亘って微細パターンを形
成する場合には、溶射法の原理そのものに起因する課題
が多い。そのため、実際上は溶射法は、高精度な直流P
DPの陰極形成方法として実用化できない。
【0038】図24は、プラズマ溶射による陰極線の形
成方法を模式的に示す。金属等の載置台65の上にPD
Pの表面ガラス基板となるガラス基板60を直接載せ、
ガラス基板60の上方に設けたプラズマ溶射トーチ61
より、高温高速の陰極線材料粒子62をガラス基板60
に衝突させる。これによって、ガラス基板60の表面に
陰極線材料の厚膜を形成する。トーチ61あるいは基板
60を図24の矢印64方向に順次トラバースして、ガ
ラス基板60の全面を溶射する。この場合、実際の陰極
線63は、形成された厚膜からリフトオフ法などを用い
て形成するのが一般的である。
【0039】しかし、上述の従来のプラズマ溶射法で
は、微細ピッチ及び微細幅で、ガラス基板60の全面に
亘り断線なく陰極線63を形成することが困難である。
また、陰極線63が形成されるガラス基板60は、通
常、面積が約1m×約1mと大きいが厚みが2〜3mm
程度と薄い。この様な薄肉大面積のガラス基板60にプ
ラズマ溶射を行うと、溶射成膜が行われている領域とそ
れ以外の領域とで大きな温度差が生じ、その熱応力のた
めにガラス基板60が破損してしまうことがある。さら
に、ガラス基板60の全面にわたって均一な膜厚を得る
ことが困難であるため、放電特性の不均一性が発生する
ことがある。特に、比重量の小さい金属を用いて幅の細
い陰極線63を大面積に亘って形成しようとする場合に
は、陰極線63の適切な特性を確保することが困難であ
る。
【0040】また、上記(1)に述べた課題は、溶射プ
ロセスを用いて陰極線を形成する場合にも同様に発生す
る。これは、従来技術において溶射プロセスを用いて陰
極線を形成する場合であっても、陰極線の母線(基体金
属)そのものはスクリーン印刷で形成され、実際に溶射
によって形成されるのは母線の表面を被覆する電子放出
材料層だけであるためである。
【0041】本発明は上記課題を解決するためになされ
たものであり、その目的は、(1)長期間にわたって動
作しても駆動電圧の変動が少ない低抵抗の陰極線を有
し、長期間にわたって安定した動作を確保できる直流気
体放電型画像表示装置、ならびに(2)その製造方法を
提供することである。
【0042】
【課題を解決するための手段】本発明の直流気体放電型
画像表示装置は、表面ガラス基板と、該表面ガラス基板
に対向して、その間に放電ガスが封入されて配置されて
いる背面ガラス基板と、該背面ガラス基板の上に形成さ
れた複数の線電極を含む陽極群と、該陽極群に直交する
ように該表面ガラス基板の上に配置された複数の線電極
からなる陰極群と、該陽極群及び該陰極群の交点のそれ
ぞれに対応して設けられた複数の放電セルと、を備えて
おり、該陰極群に含まれる線電極が、所定の陰極材料の
粒子を溶射装置からガラス基板に向けて溶射する溶射法
によって形成されていて、そのことにより上記目的が達
成される。
【0043】ある実施例では、前記陰極群に含まれる線
電極が、前記表面ガラス基板の表面に形成された溝の底
部に形成されている。
【0044】他の実施例では、前記陰極線に含まれる線
電極のそれぞれの幅がW、厚さがhであるときに、前記
陰極材料は、前記溶射装置に供給される一次粒子の平均
直径dが、上限がh/2及びW/9のうちの小さい値で
あって下限が10μmである範囲内にあるように選択さ
れている。
【0045】さらに他の実施例では、前記溶射法は、プ
ラズマ溶射法である。
【0046】さらに他の実施例では、前記陰極材料が、
アルミニウム、ニッケル、アルミニウム合金及びニッケ
ル合金からなるグループから選択されている。
【0047】さらに他の実施例では、前記放電ガスがH
eとXeとの混合ガスである。
【0048】さらに他の実施例では、前記陰極群に含ま
れる線電極のそれぞれは、溶射された前記陰極材料の粒
子が偏平して積層することによって形成されている。
【0049】さらに他の実施例では、前記陰極群に含ま
れる線電極のそれぞれは、前記溶射法によって形成され
た金属母線と、金属、金属酸化物及び金属硫化物からな
るグループから選択された材料によって該金属母線の表
面に形成された上部被膜と、を含んでいる。好ましく
は、前記上部被膜が、溶射法によって形成されている。
また、前記酸化物は、ペロブスカイト構造のLa1-X
XMO3(ただしMはCoまたはMn)であってもよ
い。さらに好ましくは、前記金属母線は、溶射された粒
子が偏平して積層することによって形成されている。
【0050】さらに他の実施例では、前記陰極群が、溶
射法の実施後にさらに400℃以上の温度における焼成
工程を経て形成されている。
【0051】本発明の他の局面によれば、直流気体放電
型画像表示装置の製造方法が、表面ガラス基板と、該表
面ガラス基板に対向して、その間に放電ガスが封入され
て配置されている背面ガラス基板と、該背面ガラス基板
の上に形成された複数の線電極を含む陽極群と、該陽極
群に直交するように該表面ガラス基板の上に配置された
複数の線電極からなる陰極群と、該陽極群及び該陰極群
の交点にそれぞれに対応して設けられた複数の放電セル
と、を備える直流気体放電型画像表示装置の製造方法で
あって、前記陰極群を形成する工程が、(a)ガラス基
板の表面にマスクフィルムを形成する工程と、(b)該
マスクフィルムに所定のパターンで開口部を形成する工
程と、(c)該マスクフィルムの上面に配置された溶射
トーチから所定の陰極材料を溶射するとともに、該溶射
トーチ及び該ガラス基板の少なくとも一方を所定のパタ
ーンで移動させて、該ガラス基板の表面のうちで該開口
部に相当する箇所に該陰極群に含まれている線電極とな
る溶射膜を堆積させる工程と、(d)該マスクフィルム
を該ガラス基板の表面から除去する工程と、を含有して
おり、そのことによって上記目的が達成される。
【0052】ある実施例では、前記工程(c)が、前記
開口部に相当する前記ガラス基板の表面を粗面化する工
程をさらに包含する。あるいは、前記工程(c)が、前
記開口部に相当する前記ガラス基板の表面に所定の深さ
の溝を形成する工程をさらに包含し、前記溶射膜が該溝
の底部に堆積される。
【0053】他の実施例では、前記工程(c)におい
て、前記ガラス基板を断熱手段を介して載置台の上に配
置して溶射工程が行われる。
【0054】さらに他の実施例では、前記工程(c)に
おいて、溶射時間の経過とともに、前記溶射トーチから
の前記陰極材料の供給レート、あるいは該溶射トーチ及
び前記ガラス基板の少なくとも一方の移動速度を制御し
て、前記溶射膜の堆積速度を実質的に一定に保つ。
【0055】
【作用】本発明に従えば、直流気体放電型画像表示装置
の陰極線を溶射法によって形成する。溶射法によって形
成された陰極線は、若干の酸化物を除けば、ほとんど純
粋な金属粒子(溶射粒子)によって構成されている。こ
のため、その線抵抗が大幅に低減される。
【0056】請求項2に記載のように、表面ガラス基板
の表面に所定パターンで溝を形成し、陰極線をその溝の
底部に形成すれば、放電が繰り返し発生しても、陰極線
の構成材料が広い範囲にわたって飛散することがない。
そのため、放電の経過にともなう放電面積の増加が生じ
ない。
【0057】溶射工程の実施にあたって、溶射装置に供
給される陰極材料(溶射材料)の一次粒子の平均直径d
が、請求項3に記載されているように、形成される陰極
線の幅W及び厚さhに対して、上限がh/2及びW/9
のうちの小さい値であって下限が10μmである範囲内
にあるように設定する。これによって、溶射粒子が、一
次粒子の平均直径dの約3倍に偏平化された径を有する
ような状態でガラス基板の表面に付着するようになる。
【0058】請求項4に規定されているように、溶射工
程としてプラズマ溶射を行えば、ファインパターンの陰
極線を緻密に、かつガラス基板への付着力が強固になる
ように形成することができる。また、プラズマ溶射で
は、広範囲の材料を制御性よく取り扱うことができる。
【0059】さらに、本発明にしたがって形成される陰
極線は、請求項7に記載のように、金属母線とその表面
に形成された上部被膜とからなる構成であってもよい。
このような構成の陰極線では、金属母線によって陰極線
の低抵抗率化を達成できる。同時に、上部被膜を形成す
る材料としてスパッタレートが小さい材料を選ぶことに
よって、放電収縮が抑制される。
【0060】請求項12に示すように、溶射による陰極
線の形成後にさらに焼成工程を実施すれば、溶射膜(陰
極線)の構造がより緻密化される。
【0061】請求項14に記載のように、陰極線を溶射
によって形成するのに先立って、その形成箇所に相当す
るガラス基板の表面を粗面化すれば、形成される溶射膜
(陰極線)とガラス基板との付着力がさらに強固にな
る。
【0062】請求項15に記載のように、陰極線を溶射
によって形成するのに先立って、その形成箇所に相当す
るガラス基板の表面に溝を形成して、その溝の底部に陰
極線を形成すれば、放電が繰り返し発生しても、陰極線
の構成材料が広い範囲にわたって飛散することがない。
そのため、放電の経過にともなう放電面積の増加が生じ
ない。
【0063】請求項16に記載のように、溶射対象であ
るガラス基板を断熱手段を介して載置台の上に置き、そ
の状態で溶射工程を行えば、溶射によってガラス基板に
与えられる熱が急速に載置台側に伝わるのを妨げること
ができる。これによって、ガラス基板表面において、溶
射が実際に行われている領域とそれ以外の領域との間で
の温度差が低減され、ガラス基板に与えられる熱負荷が
低減される。
【0064】溶射材料のガラス基板への付着効率は、基
板温度の上昇とともに次第に増大する。しかし、請求項
17に記載のように、溶射トーチからの陰極材料の供給
レート、あるいは溶射トーチ及びガラス基板の少なくと
も一方の移動速度を制御して、溶射膜の堆積速度が溶射
時間の経過にかかわらず実質的に一定になるようにする
ことによって、溶射工程の進行にともなって溶射対象で
あるガラス基板に熱が蓄積されて基板温度が次第に上昇
しても、実質的に一定の膜厚で溶射膜(陰極線)を形成
することができる。
【0065】
【実施例】
(実施例1)図1は、本発明の第1の実施例におけるP
DPの陰極の製造方法を模式的に示す図である。具体的
には、プラズマ溶射法を用いてガラス基板に金属アルミ
ニウムの陰極線を形成する。
【0066】プラズマ溶射トーチ100は、水冷された
陰極1と水冷された陽極2とを有する。両電極1及び2
の間に電源3によって直流電圧を印加して、アーク放電
4を発生させる。プラズマ溶射トーチ100の後部に設
けられた供給ポート5aから、プラズマ作動ガス5が供
給される。供給されたプラズマ作動ガス5は、陰極1及
び陽極2の間に発生しているアーク放電4によって加熱
電離され、プラズマジェット6としてノズル7から噴出
される。プラズマ作動ガス5としては、アルゴン、ヘリ
ウム、水素などが使用できる。例えば、本実施例ではア
ルゴンを用いる。
【0067】陰極線の材料となる溶射材料8は、粉末状
態でその供給ポート9からキャリアガスにのせてプラズ
マジェット6の中に吹き込まれる。溶射材料は、ノズル
7の外側にあたる図1の領域X付近でプラズマジェット
6に混合する。この結果、溶射材料8はプラズマジェッ
ト7のエネルギーによって加熱溶融し、かつ加速され
て、ガラス基板10の表面に高速で衝突する。これによ
って、ガラス基板10の表面に被膜を形成する。
【0068】ガラス基板10は、画像表示装置(PD
P)の表面ガラスとして機能するものであり、例えば、
厚み2mm程度のソーダガラス等が用いられる。このガ
ラス基板10の表面には、図1に示すように形成される
べき陰極線13のパターンに対応したパターンで設けら
れた開口部12を有するマスクフィルム11が張りつけ
られている。このマスクフィルム11を介してガラス基
板10の上面より溶射することにより、ガラス基板10
の表面のうちで開口部12の底部に相当する箇所にの
み、所定の厚みを有する陰極線13が形成される。溶射
成膜後にマスクフィルム11を剥離することによって、
所定のパターンの陰極線13が形成されたガラス基板1
0を得る。マスクフィルム11の厚さは、形成される陰
極線の厚さより少し厚い50μm程度にする。
【0069】また、本実施例での溶射材料8は純度99
%の粉末状金属アルミニウムであり、その粉末の平均粒
径は約20μmである。
【0070】溶射材料8が平均粒径20μm程度の金属
アルミニウム粉末である場合には、小さい入射角度でプ
ラズマジェット6へ投入されることが好ましい。図1の
プラズマ溶射トーチ100では、構成上の制約条件も考
慮して、入射角度θ=30°に設定されている。
【0071】また、溶射材料8の供給ポート9をノズル
7の周囲に複数個均等な角度間隔で設ければ、プラズマ
ジェット6の分布やそこへの溶射材料の混合状態が均等
化され、より良好な膜質を有する陰極線(溶射膜)13
を形成することができる。
【0072】プラズマ溶射の代わりに、アーク溶射で陰
極線の形成を行うこともできる。ただし、ファインパタ
ーンの陰極線を緻密に、かつガラス基板への付着力が強
固になるように形成するためには、プラズマ溶射法のほ
うが好ましい。さらに、プラズマ溶射法では、広範囲な
材料を制御性よく取り扱うことができる。
【0073】図2(a)〜2(f)は、本発明にしたが
ってプラズマ溶射法により陰極線を表面ガラス基板上に
形成するプロセスを示す。
【0074】まず、図2(a)に示すように、ガラス基
板10の表面にマスクフィルム11を張り合わせる。マ
スクフィルム11としては、例えば東京応化工業(株)
製のドライフィルム「BFシリーズ」などを用いること
ができる。次に、図2(b)に示すように、マスクフィ
ルム11に露光及びエッチング工程によって、開口部1
2を、形成されるべき陰極線パターンに対応したパター
ンに形成する。
【0075】さらに、図2(c)に示すように、このよ
うに開口部12が形成されたマスクフィルム11を介し
て基板10の上面にブラスト粒子14を衝突させて、サ
ンドブラスト加工を施す。これによって、図2(d)に
示すように、基板10の表面のうちで開口部12に相当
する部分の表面10aが粗面化される。この粗面化の好
ましい程度は溶射材料や溶射条件等に依存して変化する
が、典型的には、中心線平均粗さRaが約1であるよう
な粗面を形成することが望ましい。
【0076】次に、図2(e)に示すように、マスクフ
ィルム11に設けられた開口部12を介してプラズマ溶
射によって溶射材料8をガラス基板10の表面に衝突さ
せ、陰極材料の成膜を行う。これによって、開口部12
に相当する基板10の表面に、付着力の強固な溶射膜、
すなわち陰極線13が形成される。一方、マスクフィル
ム11の表面に到達した溶射粒子は、マスクフィルム1
1の弾性によって反跳する。したがって、開口部12に
相当する箇所以外のガラス基板10の表面には、溶射膜
13は堆積されない。溶射過程終了後にマスクフィルム
11を剥離すれば、図2(f)のように、基板10の表
面に所定のパターンで陰極線13が形成されている。
【0077】この様にして陰極線13が形成されたガラ
ス基板10に、外部回路との接続用取り出し電極をスク
リーン印刷法によりさらに形成する。そして、別工程で
形成した背面ガラス基板とガラス基板10とを封着し
て、図20に示す構成を得る。両基板の間隙を真空引き
した後に、放電ガスとして機能するHe−Xeの混合ガ
スを所定圧力まで封入して、直流PDPが完成される。
【0078】この様な方法で形成された陰極線13は、
図3に示すような粒子の積層構造を有する。すなわち、
溶融状態でガラス基板10の表面に高速で衝突した溶射
材料の粒子が、水平方向(ガラス基板10の表面に平行
な方向)に偏平した状態で積層して、陰極線13を形成
している。陰極線13の幅Wは、典型的には150μm
以下、例えば約100μmであり、厚さhは、典型的に
は10〜30μm、例えば約30μmである。
【0079】サンドブラスト加工によってガラス基板1
0の表面を粗面化するのは、形成される陰極線13とガ
ラス基板10との付着力を大きくするためである。付着
力が十分に大きくないと、製造工程中にハンドリングな
どによって陰極線13に作用する機械的な負荷によって
陰極線13の剥離あるいは断線等が発生し、陰極線13
としての機能が確保できない場合が生じる。特に、本実
施例のように、金属粒子をガラス面に溶射して成膜する
場合には、形成される金属溶射膜(陰極線)とガラス基
板との熱膨張差が大きく、付着力が小さくなることがあ
る。
【0080】サンドブラスト加工の代わりに、陰極線材
料の溶射に先立って、ガラス基板10との付着力の強い
材料をまず溶射して極めて薄い膜を形成し、その後に所
定の金属材料を溶射してもよい。この様ないわゆる中間
層的な役割を果たし得る材料としては、例えば酸化クロ
ムあるいは酸化クロムにシリカを混合した材料などが考
えられ、優れた付着力を確保できる。
【0081】あるいは、充分な付着力が確保できる場合
には、このようなサンドブラスト加工やそれに代わる処
理を、全く省略することもできる。
【0082】図4は、プラズマ溶射法により形成した陰
極線の比抵抗ρと膜厚hとの関係を示す。ただし、陰極
線の幅Wは150μmで一定としている。プロット△
は、従来のスクリーン印刷法で形成した陰極線における
値であり、具体的には4.0×10-4Ω・cmである。
また、プロット○は、プラズマ溶射法で形成した段階に
おける値であり、プロット●は、取り出し電極を形成す
るための焼成工程後における値である。また、金属アル
ミニウムのバルク材料の値(2.65×10-6Ω・c
m)も、図4に示している。上記のそれぞれについて、
陰極線の線抵抗を測定し、その測定値に陰極線の断面積
(膜厚×幅)を掛けて長さで除した値を比抵抗値として
いる。
【0083】図4より明らかなように、溶射法での比抵
抗は膜厚hの増加につれて減少するが、ある膜厚値以上
ではほぼ一定になる。膜厚30μmの陰極を例にとって
みると、溶射法で得られる比抵抗は、スクリーン印刷法
の場合の約1/10と低い値である。この差は、以下の
原因による。すなわち、溶射法で形成される膜の成分
は、若干の酸化物を除けば殆ど純粋な金属アルミニウム
材料である。それに対してスクリーン印刷法では、非導
電物質であるガラスフリット等の不純物が必ず混入して
しまうために、アルミニウム金属の粒子同士の直接接触
が阻害されて導電率の低下がもたらされる。
【0084】プラズマ溶射法で膜厚hの増加につれて比
抵抗が減少するのは、積層される粒子同士が物理的に接
触する確率が増すことによると考えられる。図4に示す
例では、溶射粒子として直径20μmの材料を用いてい
るが、さらに微細な径を有する粒子を使用すれば、さら
なる低抵抗化が可能である。
【0085】プラズマ溶射法で陰極線を形成する場合で
も、溶射工程中に金属アルミニウムが酸化すると、形成
される陰極線の電気抵抗が増加してしまう。溶射工程時
にプラズマ溶射トーチから溶射対象となるガラス基板に
至る空間(成膜場)を減圧することによって、このよう
な溶射膜の酸化を防止することができる。
【0086】次に、プラズマ溶射工程で形成された陰極
線に対する焼成プロセスの影響を検討する。図4のプロ
ット●は、プラズマ溶射によって形成した陰極線を、温
度400℃で焼成した場合に得られた比抵抗値を示す。
この温度は、図20に示す構成において、陰極側の表面
ガラス基板39と陽極側の背面ガラス基板40とをフリ
ットガラスで封着する温度である。
【0087】本発明にしたがってプラズマ溶射法によっ
て形成された陰極線では、焼成工程を受けない段階の比
抵抗(プロット○)が、すでにスクリーン印刷による従
来の陰極線の値の約1/10である。加えて、焼成工程
後の比抵抗(プロット●)は、焼成前(プロット○)の
値に比べてさらに30〜50%減少する。同時に、膜厚
も約30%程度減少する。
【0088】また、焼成温度レベルの影響を検討するた
めに、焼成温度580℃で同様な焼成工程を実施した別
のサンプルについて同様な測定を行ったところ、アルミ
陰極の焼成後の線抵抗は、焼成前の1/3に減少した。
ただし、このときの焼成は大気中で行い、1時間で常温
から580℃まで昇温し、10分間その温度を保った後
に1時間で再び常温へ降温させた。
【0089】580℃で焼成したサンプルについて、焼
成工程の前後における溶射膜(陰極線)の断面を走査電
子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、焼成後の溶
射膜は、焼成前に比べてより緻密な層状構造をなしてい
た。これは、溶射直後に膜の中に含まれる未溶融粒子、
あるいは成膜時の急冷過程で層状にならなかった粒子が
融点以下の温度で溶融する、いわゆる融点降下現象が発
生したためと考えられる。
【0090】さらに、上記SEM観察を行ったサンプル
について、焼成工程の前後における溶射膜の組成の変化
をX線マイクロ分析法(XMA)で分析した。その結
果、焼成後は、溶射膜中の酸素の含有量がわずかに減少
していた。これは、溶射直後には酸化していたアルミの
一部が、焼成工程によって還元されたことを示す。しか
し、その酸素の含有量の変化量は、陰極線の比抵抗の大
幅な減少を説明できるほど大きくはない。陰極線の比抵
抗低下の主な原因は、このような酸化アルミの還元では
なく、焼成によって溶射膜の膜質がより緻密になったこ
とであると考えられる。
【0091】スクリーン印刷法で形成した陰極線に対し
ても、同様な焼成工程を行ってその前後で比抵抗の変化
を測定した。しかし、スクリーン印刷法によって形成さ
れたアルミニウム陰極線の比抵抗は、焼成工程後に減少
することはなく、むしろ場合によっては増加する場合が
あるなどの不安定であった。このように、焼成工程によ
って比抵抗が減少するという現象は、溶射によって形成
された陰極線に特有のものである。
【0092】以上の結果より、プラズマ溶射法によって
形成された陰極線の比抵抗は、スクリーン印刷法によっ
て形成された陰極線の比抵抗の1/10であり、さらに
大気中における温度400℃以上の焼成工程で、さらに
その半分以下に低減できる。
【0093】図5は、メモリ駆動方式において、スクリ
ーン印刷及びプラズマ溶射のそれぞれによって結成され
た陰極線における電圧降下を示す。横軸が示す陰極線上
のドット位置はPDPの画面の大きさ(陰極線の長さ)
に対応し、例えばNTSC方式の26インチサイズのワ
イドテレビに相当するドット数は約900であり、また
40インチサイズに相当するドット数は約1400であ
る。なお、図5のデータは、各放電セルでの放電電流が
60μAという条件で、計算によって求めたものであ
る。
【0094】図5に示す電圧降下値には、陰極線の比抵
抗値の差がそのまま現れている。例えば、26インチサ
イズでは、スクリーン印刷法による陰極では6Vの電圧
降下が発生する。このような大きな電圧降下は、画面の
両端で極端な輝度差、メモリマージンの減少、不点灯画
素の発生等の原因となり、これらに起因する表示画像の
質の低下をもたらす。一方、プラズマ溶射法による陰極
では、26インチサイズでもその電圧降下は約1Vと小
さな値である。この程度の電圧降下の影響は他の構成要
素の機能によって十分に補償することができ、スクリー
ン印刷法のような課題は発生せずに、極めて良好な画像
を提供できる。なお、以上の説明では、ひとつの陰極線
について、駆動期間中のある時間での現象に着目してい
る。
【0095】図5に示すデータは、駆動回路がPDPの
片側にのみ設けられた場合である。駆動回路をPDPの
両側にそれぞれ設ければ、陰極線における電圧降下は、
最大で図5のデータの約半分以下になる。しかし、製造
コストや回路サイズ等を考えると、PDPの両側に駆動
回路を形成する方式は実現性が極めて小さい。
【0096】次に、長期ライフ試験として、長期点灯期
間にわたってPDPを点灯させた場合の駆動電圧の変動
を検討した。この場合の長期点灯期間とは、例えば、家
庭用テレビの寿命として一般に要求される3万時間程度
を意味する。
【0097】図6は、メモリ駆動方式で直流PDPを長
時間点灯させた場合の駆動電圧の変動を示すものであ
る。ひとつのPDPについて、同一パネル内の陰極線を
スクリーン印刷法及びプラズマ溶射法で作り分けて、そ
れぞれの陰極線について駆動電圧の変動を測定した。な
お、図6のデータは、各セルのサイズが約300μm×
約300μm、放電ギャップが約200μmで、放電ガ
スHe−Xe10%がガス圧350Torrで封入され
ている直流PDPにおいて、各放電セルにおける放電電
流が50μAであるような直流連続放電を生じさせて測
定されたものである。また、図6のプロットは画素10
ドット分の駆動電圧の平均値を示している。
【0098】一般に、点灯時間の経過とともに、陰極線
が放電によりスパッタされて飛散し、陰極線の周囲のガ
ラス基板表面に付着する。これによって、放電に関与す
る陰極面積が実質的に増加して、駆動電圧が変化するこ
とがある。図6に示すデータの測定にあたっては、この
ようなスパッタによる放電面積の広がりを抑えるため
に、ガラス基板の表面に溝パターンを形成して、その溝
の底面に陰極材料をスクリーン印刷法あるいはプラズマ
溶射法によって成膜して、陰極線を形成した。
【0099】図6より、測定開始時に比べて1万時間経
過後の時点では、スクリーン印刷法で形成した陰極線で
は駆動電圧が約10V低下しているのに対して、プラズ
マ溶射法で形成した陰極線における駆動電圧の低下量
は、その半分の5V程度である。さらに同様の測定を継
続した結果、3万時間経過時において、スクリーン印刷
法で形成した陰極線の駆動電圧の低下量は約15V、プ
ラズマ溶射法で形成した陰極線の駆動電圧の低下量は約
8Vとなった。
【0100】このように、スクリーン印刷法で陰極線を
形成すると、長期間の駆動にともなう駆動電圧の低下に
よってメモリ駆動方式での駆動が困難になり、PDPの
画像表示装置としての機能が1万時間程度までしか確保
できない。これに対して、本発明のようにプラズマ溶射
法で陰極線を形成すれば、リフレッシュ駆動方式及びメ
モリ駆動方式のいずれにおいても、メモリマージンを十
分に確保して、高画質な画像表示を安定して実現でき
る。この特徴は、特に後者のメモリ駆動方式において顕
著に認められる。
【0101】上記の本実施例の説明では、陰極線を金属
アルミニウムで形成している。これは、フルカラーの画
像表示を実現するための放電ガスとして適しているHe
−Xe混合ガスに対して金属アルミニウムのスパッタ率
が低く、この場合の陰極材料として優れているためであ
る。
【0102】陰極線を形成するための溶射材料として、
アルミニウムなどの比重量及び融点が低い材料を用いる
場合、図1に示すように、プラズマジェット6が噴出さ
れた後に溶射材料粉末が投入されるいわゆる外挿式を用
いたプラズマ溶射装置100の構成は、優れた性質を有
する陰極線を形成するために適している。しかし、比重
量が非常に小さくかつ更に微細な粒子を用いる場合に
は、溶射材料がプラズマジェット6内に十分に入り込ま
ないことがある。そのような場合には、未溶融状態の溶
射材料の基板10表面への付着や溶射効率の低下などの
問題が生じる。
【0103】このような問題を解決するためには、あら
かじめ適切な形状を有するように加工した微細粒子を用
いればよい。図7(a)及び図7(b)は、そのような
加工過程による粒子形状の変化例を示している。
【0104】具体的には、図7(a)に示すような平均
直径がdの一次粒子16をポリビニルアルコール(PV
A)などを用いてお互いに結合させて、複数の一次粒子
16の集合体である加工粒子17を形成する。図7
(b)に示すように、加工粒子17は平均直径D(D>
d)を有する。発明者らの実験によれば、40kW級の
プラズマ溶射装置を用いる場合、一次粒子16の平均直
径dの値によらず、加工粒子17の平均直径Dが30μ
m以上になるように一次粒子16を加工することによ
り、溶射粒子がプラズマジェット6の中へ均一に投入さ
れて良質な溶射膜(陰極線)が形成される。これによ
り、非常に微細な一次粒子の使用も可能になる。
【0105】それぞれの溶射粒子がガラス基板10に衝
突した後に偏平する過程に着目すると、十分に緻密でか
つガラス基板10への付着力が十分に強い溶射膜(陰極
線)を得るためには、基板付着時の粒子の径が、一次粒
子16の平均直径dの約3倍に偏平化されていることが
望ましい。さらに、上記のように一次粒子16が偏平化
されて、その平均直径dの約3倍の径を有する状態で溶
射材料がガラス基板10の表面に付着するという条件に
おいて、ガラス基板10との付着力が十分に確保できる
とともに電気抵抗が最低レベルにまで低減されるような
緻密な溶射膜を得るためには、陰極線の厚さ方向に3層
以上の偏平粒子が積層されている場合、または陰極線の
幅方向に3個以上の偏平粒子が付着していることが望ま
しい。溶射膜(陰極線)の内部の溶射粒子がそのような
状態で存在している場合に、ガラス基板への付着力及び
電気抵抗の点で最も最適な、緻密な溶射膜(陰極線)が
形成される。
【0106】このような条件を達成するように一次粒子
16の平均直径d及び溶射条件を選定すれば、PDPの
陰極線として機能させた場合に十分に良好な特性を発揮
できる溶射膜が形成される。すなわち、基板10の表面
に形成される陰極線のライン幅W、膜厚hに対して、一
次粒子の平均直径dが、上限がh/2及びW/9のうち
の小さい値であって下限が10μmである範囲内にある
ような溶射粉末を用いれば、良好な膜質の陰極を形成で
きる。ここで、平均直径dの下限値である10μmとい
う値は、供給ポート9の内部で、溶射材料の粉末を効率
的に搬送するために必要な最小値として決定されたもの
である。
【0107】(実施例2)図8(a)〜8(c)を参照
して、本発明の第2の実施例を説明する。
【0108】プラズマ溶射法でガラス基板10の表面に
形成した陰極線13は、図8(a)に示すように、スク
リーン印刷による陰極線に比べて表面13aが粗い。そ
のため、陰極線13の表面13aの突起部に放電が集中
して、陰極線13のある部分が集中的に消耗してしまう
ことがある。
【0109】そこで、本実施例では、プラズマ溶射によ
って形成した陰極線13の表面の凹凸をなくすために、
陰極線13が形成されたガラス基板10を、図8(b)
に示すようにエッチング溶液19に浸して、エッチング
処理を行う。具体的には、エッチング溶液19は1.0
%水酸化ナトリウム水溶液であり、ガラス基板10をそ
の中に15分間浸してエッチングを行う。その後に、取
り出したガラス基板10を、流水中で10分間洗浄す
る。
【0110】このようなエッチング処理によって、陰極
線13が図8(c)に示すように平滑化された表面13
bを有するようになる。具体的には、プラズマ溶射によ
って形成されたままの表面13aの平均表面粗さRaが
約4であるのに対して、エッチング処理後の表面13b
の平均表面粗さRaは、約2に減少する。これによっ
て、陰極線13の表面での放電の集中が抑制されて、P
DPの放電電圧の長期安定化が実現される。
【0111】なお、陰極線13の表面の平坦化は、上述
のような溶液を利用したエッチングの他に、研削など機
械的プロセスによっても実現できる。
【0112】(実施例3)図9を参照して、本発明の第
3の実施例を説明する。
【0113】上述の実施例では、純金属(アルミニウ
ム)によって陰極線13を形成している。しかし、使用
する放電ガスの種類や圧力、電極の構成などの条件によ
っては、このような純金属の陰極線で放電を生じさせる
と、放電電圧が高い、スパッタレートが大きい、放電収
縮が発生するなどの問題点が生じる。
【0114】放電収縮を抑制するためには、スパッタレ
ートが小さい材料、例えば誘電体材料によって陰極線を
構成すればよい。しかし、誘電体は絶縁材料であるため
に、誘電体材料だけで陰極線を形成することはできな
い。
【0115】そこで、本実施例では、低抵抗金属である
アルミニウムによる母線15aの上に誘電体材料からな
る上部被膜15bを形成して、2層構造の陰極線15を
構成する。
【0116】具体的には、まず、プラズマ溶射法によっ
て金属アルミニウムの粉末をガラス基板10上に溶射し
て、アルミニウムの母線15aを形成する。このとき、
母線15aの厚さは、典型的には30〜40μmであ
る。次に、母線15aの上に、金属アルミと誘電体との
混合物からなる上部被膜15bを、溶射法あるいは他の
方法によって積層する。最後に、温度400℃以上で焼
成して、陰極線15を形成する。なお、図9では上部被
膜15bは一層しか形成していないが、さらに多くの膜
を積層した構造であってもよい。
【0117】上記のように、陰極線15のうちで少なく
とも母線15aをプラズマ溶射法にて形成することによ
り、陰極線15の低抵抗化を図れる。プラズマ溶射法の
対象となる材料は、特に特定のものに限定されない。
【0118】また、上部被膜15bをプラズマ溶射法で
形成する場合には、本実施例では、例えば平均直径7μ
mのアルミナ粉末を溶射することができる。あるいは、
その構造がLa1-XSrXMO3(ただしMはCoまたは
Mn)で表されるペロブスカイト型酸化物からなる上部
被膜15bを、溶射法あるいは他の方法によって母線1
5aの表面に形成してもよい。このような場合でも、少
なくとも母線15aをプラズマ溶射法で形成すれば、よ
り少ない量の不純物しか含有しない陰極線15を形成す
ることができる。
【0119】本実施例のような多層構造の陰極線を形成
することによって、陰極線を低抵抗か実現されるととも
に、放電収縮が抑制される。この結果、より優れた特性
を有する陰極線が形成され、PDPの放電電圧を長期に
わたって安定させることが可能になる。
【0120】(実施例4)図10を参照して、本発明の
第4の実施例を説明する。
【0121】図10は、本発明の第4の実施例における
プラズマ溶射によるPDPの陰極の形成を模式的に示す
図である。本実施例で使用するプラズマ溶射トーチ20
0は、基本的に、図1に示した第1の実施例におけるプ
ラズマ溶射トーチ100と同様の構成及び機能を有して
いる。図1及び10において、同様の構成要素には同じ
参照番号を付しており、その詳細な説明はここでは省略
する。
【0122】本実施例のプラズマ溶射トーチ200が第
1の実施例のプラズマ溶射トーチ100と異なっている
のは、溶射材料8がノズル7の内部でプラズマジェット
6に垂直かつ直接に供給されるように、溶射材料8の粉
末の供給ポート209がノズル7の内壁に垂直に配置さ
れている点である。すなわち、プラズマ溶射トーチ20
0は内挿型の構成を有している。
【0123】内挿式プラズマ溶射トーチ200では、溶
射材料8の粉末がノズル7の外側でプラズマジェット6
に投入される外挿式プラズマ溶射トーチ100に比べ
て、溶射材料が確実に溶融されるという利点がある。た
だし、溶射材料8の供給ポート209の径が小さすぎた
り、キャリアガスの流量が不足していると、供給ポート
209の内部で溶射材料8の粉末が溶融してその内壁に
付着してしまうことがある。その場合には、動作効率の
低下や、一旦付着した溶射材料の塊が脱落してガラス基
板10の上に供給されることによる陰極線(溶射膜)1
3の膜質の劣化などが生じることがある。したがって、
そのような不利益が生じないように、溶射材料8の供給
ポート209の径やキャリアガスの流量などを最適化す
る必要がある。
【0124】また、図10の構成では、溶射材料8の供
給ポート209が一方向にしか設けられていない。これ
に対して、複数の供給ポートをノズル7の周囲に均等な
角度間隔で設ければ、プラズマジェット6の分布やそこ
への溶射材料の混合状態が均等化され、より良好な膜質
を有する陰極線(溶射膜)13を形成することができ
る。
【0125】(実施例5)図11を参照して、本発明の
第5の実施例を説明する。
【0126】図11は、本発明の第5の実施例における
プラズマ溶射によるPDPの陰極の形成を模式的に示す
図である。本実施例で使用するプラズマ溶射トーチ30
0は、基本的に、図10に示した第2の実施例における
プラズマ溶射トーチ200と同様の構成及び機能を有し
ている。図10及び11において、同様の構成要素には
同じ参照番号を付しており、その詳細な説明はここでは
省略する。
【0127】本実施例のプラズマ溶射トーチ300が第
2の実施例のプラズマ溶射トーチ200と異なっている
のは、プラズマ溶射トーチ300の下部に雰囲気を制御
するための外套317が設けられている点である。この
外套317は、プラズマ溶射トーチ300のノズル出口
318の下部から溶射対象になるガラス基板10の上面
近傍までの空間を囲むように設けられる。
【0128】さらに、外套317の内部には、不活性ガ
ス319を導入ポート320から導入する。不活性ガス
319としては、アルゴン、ヘリウムなどを使用するこ
とができる。あるいは、不活性ガスに代えて、還元性ガ
ス、例えば水素ガスなどを導入してもよい。
【0129】ガラス基板10の上面と外套317の下端
321との間には、空間322が設けられている。プラ
ズマジェット6のガスや導入された不活性ガス319、
さらには溶射粒子8のうちでガラス基板10に付着しな
かった粒子などが、この空間322を通じて外部空間に
排出される。
【0130】外套317を有しないプラズマ溶射トーチ
で溶射を行う場合、例えば大気中でアルミニウムをガラ
ス基板10に溶射すると、ガラス基板10の上面の近傍
でプラズマジェット6の内部に取り込まれた大気中の酸
素によって、形成された溶射膜(陰極線)13が酸化さ
れる。これに対して、本実施例のプラズマ溶射トーチ3
00では、プラズマジェット6の周囲が外套317によ
って覆われ、さらにその内部に不活性ガス319あるい
は還元性ガスが導入されているので、溶射膜の酸化が生
じない。これによって、陰極線への酸化物の混入による
電気抵抗の増加が防止されて、より優れた特性を有する
陰極線を形成することができる。
【0131】(実施例6)図12(a)〜12(f)
は、本発明にしたがってプラズマ溶射法により陰極線を
表面ガラス基板上に形成する他のプロセスを示す。
【0132】まず、図12(a)に示すように、ガラス
基板20の表面にマスクフィルム21を張り合わせる。
マスクフィルム21としては、例えば東京応化工業
(株)製のドライフィルム「BFシリーズ」などを用い
ることができる。次に、図12(b)に示すように、マ
スクフィルム21に露光及びエッチング工程によって、
開口部22を、形成されるべき陰極線パターンに対応し
たパターンに形成する。
【0133】さらに、図12(c)に示すように、この
ように開口部22が形成されたマスクフィルム21を介
してガラス基板20の上面にブラスト粒子24を衝突さ
せて、サンドブラスト加工を施す。これによって、ガラ
ス基板20の表面のうちで開口部22に相当する部分
に、図12(d)に示す様な溝25を形成する。サンド
ブラスト加工は、溝25を形成すると同時に溝25の底
部を粗面化する。この粗面化の好ましい程度は溶射材料
や溶射条件等に依存して変化するが、典型的には、中心
線平均粗さRaが約1であるような粗面を形成すること
が望ましい。先に第1の実施例に関連して説明したよう
に、このようなガラス基板表面の粗面化によって、形成
される陰極線とガラス基板との付着力を大きくすること
ができる。
【0134】次に、図12(e)に示すように、マスク
フィルム21に設けられた開口部22を介してプラズマ
溶射によって溶射材料28をガラス基板20の表面に衝
突させ、陰極材料の成膜を行う。これによって、開口部
22に相当する基板10の溝25の底部に、付着力の強
固な溶射膜、すなわち陰極線23が形成される。一方、
マスクフィルム21の表面に到達した溶射粒子は、マス
クフィルム21の弾性によって反跳する。したがって、
開口部22に相当する箇所以外のガラス基板20の表面
には、溶射膜23は堆積されない。溶射過程終了後にマ
スクフィルム21を剥離すれば、図12(f)のよう
に、基板20の溝25の底部のみに陰極線23が形成さ
れている。
【0135】第1の実施例にて前述したように、長期点
灯期間、例えば3万時間程度にわたってPDPを連続し
て動作させると、従来のスクリーン印刷で形成された陰
極線では駆動電圧が大きく低下する。そのような経時変
化の要因の一つとして、陰極線材料のスパッタによる放
電面積の増加が考えられる。これに対して、本実施例の
ように溝25の内部に陰極線23を形成すれば、スパッ
タによる放電面積の増加が抑制されるので、放電電圧の
変動を抑制することができる。
【0136】しかし、従来のスクリーン印刷でこの様な
溝25の内部に陰極線を形成すると、図13(a)に示
すように、溝25の側壁31の近傍では陰極材料30が
基板20の表面近くまで充填されてしまう。このため、
放電にともなうスパッタによって陰極材料30が溝25
の外に飛散してしまい、前述の効果が十分発揮されな
い。
【0137】それに対して、本実施例のようにプラズマ
溶射法によれば、図13(b)に示すように溶射膜23
は溝25の底部29のみに形成される。これは、溶射に
よる成膜が原理的に成膜粒子の運動の直進性を利用して
いるためであり、溝25の側壁31への溶射粒子の付着
を抑制することができるからである。
【0138】図14は、本実施例にしたがって形成した
陰極線23を形成したガラス基板20の、取り出し電極
32付近の構成を模式的に示す断面図である。
【0139】陰極線23は溝25の底部29に形成され
ているので、ガラス基板20上の取出し電極32と陰極
線23との間には段差33が生じている。したがって、
このままでは、両者の間の電気的接続が達成されない。
【0140】そこで、取出し電極32と陰極線23とを
電気的に導通させるため、溶射工程後に、この段差33
の存在する領域に導電性ペースト材34をモールドす
る。導電性ペースト材34としては、例えばニッケルペ
ーストを用いることができる。導電性ペースト材34の
モールド後に温度580℃で焼成工程を実施して、モー
ルドした導電性ペースト材34を、陰極線23と取り出
し電極32とを接続する接続線として機能させる。この
焼成工程は、導電性ペースト材の焼成と同時に、第1の
実施例で述べた溶射膜(陰極線)23の特性の改善も行
うものであり、陰極線抵抗値の改善にも貢献する。
【0141】表1には、金属アルミニウム陰極線につい
て、ガラス基板の表面に陰極線を形成する平面構造と、
溝の底部に陰極線を形成する溝構造とのそれぞれにおけ
る連続点灯3万時間後の陰極線における電圧降下の値を
示している。表1には、それぞれの構造について、陰極
線をプラズマ溶射によって形成した場合及びスクリーン
印刷によって形成した場合のそれぞれの値を示してい
る。なお、表1のデータは、各セルのサイズが約300
μm×約300μm、放電ギャップが約200μmであ
って、放電ガスHe−Xe10%がガス圧350Tor
rで封入されている直流PDPにおいて、各放電セルに
おける放電電流が50μAであるような直流連続放電を
生じさせて、測定されたものである。
【0142】これより、溝構造の場合には、スクリーン
印刷、プラズマ溶射のどちらで形成した場合でも、平面
構造に比べて電圧降下が小さい。さらに、溝構造の陰極
線をプラズマ溶射で形成した場合が電圧降下は最も小さ
く、駆動電圧の経時変化の抑制に優れていることがわか
る。
【0143】
【表1】
【0144】(実施例7)図15〜19を参照して、本
発明の第7の実施例として、本発明におけるプラズマ溶
射による陰極線の形成プロセスをさらに説明する。
【0145】図15は、本発明にしたがってガラス基板
432の上に陰極線をプラズマ溶射によって形成する製
造プロセスを模式的に示す図である。具体的には、溶射
対象になる長方形(基本的にはワイド画面に対応する)
のガラス基板432を、形成される陰極線に直角な方
向、すなわちガラス基板432の短手方向から見た図で
ある。
【0146】ガラス基板432は、金属などで形成され
た載置台433の上に、治具434を介して載せられて
いる。載置台433とガラス基板432との間は、1m
m程度の空気層435が設けられている。ガラス基板4
32の上部にはプラズマ溶射トーチ436が配置せられ
ており、このトーチ436から、溶射粒子を含んだプラ
ズマジェット437がガラス基板432に衝突してい
る。
【0147】一般にガラス基板432のサイズが大きい
ので、陰極線の形成にあたっては、プラズマ溶射トーチ
436を所定速度で所定のパターンにしたがって移動さ
せて、ガラス基板432の上面全体がプラズマジェット
437で溶射されて成膜がなされる。図15に示す構成
では、陰極線が図面に対して垂直方向に多数形成されて
いる。そのためプラズマ溶射トーチ436をまず図面に
垂直な方向に移動して、1ライン分の陰極線を形成す
る。次に、図15の矢印438の方向に所定ピッチだけ
プラズマ溶射トーチ436を移動させて、同様な溶射を
行って次の陰極線を形成する。これらの動きを繰り返す
ことによって、ガラス基板432の上面全体に成膜す
る。
【0148】あるいは、プラズマ溶射トーチ436の代
わりにガラス基板432(あるいは載置台433)を動
かして、相対的に上記と同じパターンの動きを実現して
もよい。
【0149】比較のために、従来技術における溶射工程
の一例を図17及び図18を参照して説明する。具体的
には、図17は、溶射対象になる長方形(基本的にはワ
イド画面に対応する)のガラス基板432’を、形成さ
れる陰極線に直角な方向、すなわちガラス基板432’
の短手方向から見た図である。従来技術においては、溶
射対象になるガラス基板432’は金属性の載置台43
3’の上に直接設置される。これは、プラズマ溶射トー
チ436’から噴射されたプラズマジェット437’に
よってガラス基板432’に与えられる熱負荷を、でき
るだけ速やかに載置台433’に逃すためである。
【0150】図18は、図17の各点a′,b′及び
c′におけるガラス基板432’の裏面の温度変化を示
す図である。図18の横軸は溶射が進行して行く時間に
対応し、縦軸は各点での温度を示している。すなわち、
図18の曲線A’は、図17における点a′の温度変化
を示し、同じく曲線B′及びC′はそれぞれ点b′及び
点c′点の温度変化を示している。図18より明らかな
ように、それぞれの点の温度は、プラズマ溶射トーチ4
36′が移動してプラズマジェット437’がその点に
近づくにつれて上昇し、その点の真上を通過するときに
最大温度を示し、遠ざかるにつれて減少する。
【0151】上記のこの温度プロファイルの上昇下降の
勾配は、載置台433′への熱移動が速やかであればあ
るほど急峻である。そのため、プラズマ溶射工程中にお
ける基板裏面の最高温度(プラズマ溶射トーチが直上に
位置するときの温度)とプラズマ溶射トーチ436’の
通過後の温度との差、すなわち図18におけるTgap’
が非常に大きくなる。この大きな温度差は、ガラス基板
433’の上において、溶射工程が実施されている領域
とそれ以外の領域との間で熱応力を発生させる。この熱
応力は、ガラス基板432′に作用してその破壊を生じ
させる。
【0152】また、この様な従来技術においては、載置
台433′側への熱移動が速やかであるために、ガラス
基板432’の裏面での最高到達温度Tmaxの値を小さ
くすることができる。しかし、ガラス基板432’の表
面では、瞬間的には大きな熱負荷が印加されること、及
びガラスの熱伝導が悪いことによって、依然として非常
に高温になる部分が存在する。このため、ガラス基板4
32’の表面と裏面との間の温度差が大きくなり、その
熱応力によって、ガラス基板432’の破壊が生じるこ
とがある。
【0153】図15に示す本実施例では、上記のような
従来技術の問題点を解決するために、プラズマ溶射トー
チ436からガラス基板432に与えられる熱負荷を、
載置台433側に急激に逃さない様な構成になってい
る。具体的には、載置台433とガラス基板432との
間に薄い空気層435を設けることにより、従来例の様
な急峻な温度変化を抑制する。
【0154】図16は、図15の各点a,b及びcにお
けるガラス基板432の裏面の温度変化を示す図であ
る。図18と同様に、図16の横軸は溶射が進行して行
く時間に対応し、縦軸は各点での温度を示している。す
なわち、図16の曲線Aは、図15における点aの温度
変化を示し、同じく曲線B及びCはそれぞれ点b及び点
c点の温度変化を示している。
【0155】図16より明らかなように、図15におけ
る各点a、b及びcの間の距離を図17の点a′、b′
及びc′の間の距離と同じくとっても、その温度変化プ
ロファイルはそれぞれ曲線A,B及びCの様になる。こ
の結果、プラズマ溶射工程中における基板裏面の最高温
度(プラズマ溶射トーチが直上に位置するときの温度)
とプラズマ溶射トーチ436の通過後の温度との差、す
なわち図16におけるTgapが、従来技術における同様
な温度差Tgap’に比べて小さくなる。この温度差Tgap
によるガラス基板432の破壊は、生じない。小さい温
度差Tgapしか発生しない理由は、ガラス基板432と載
置台433との間の空気層435が断熱層の役割を果た
し、載置台433側への急峻な熱移動が抑制されるから
である。
【0156】空気層435は、載置台433とガラス基
板432との間における閉空間を構成する。開空間が形
成されるとガラス基板432の裏面の温度上昇によって
自然対流が発生し、それによる載置台433への熱伝達
が促進されて、断熱効果が阻害されてしまう。また、閉
空間が構成される場合でも、空気層435の厚みが大き
すぎると自然対流が発生して十分な断熱効果が得られな
くなる。したがって、良好な断熱効果を得るためには、
空気層435の厚さは約1mm以下であることが望まし
い。
【0157】なお、空気層435の代わりに、断熱性に
優れた材料で形成された断熱ボードなど、他の断熱手段
を設けても良い。
【0158】次に、溶射工程の進行にともなうガラス基
板への熱の蓄積の影響に関して説明する。
【0159】図16より、プラズマ溶射工程の進行につ
れて、ガラス基板432の表面における最高温度が、図
16に実線Dで示すように次第に上昇する。これは、断
熱効果によって、溶射にともなう熱がガラス基板432
の内部に次第に蓄積されてくるためである。この熱の蓄
積によるガラス基板432の温度上昇にともなって、溶
射対象であるガラス基板432の表面状態が、溶射成膜
の進行につれて必然的に変化する。そのため、溶射され
た粒子の基板表面への付着状態が変化する。
【0160】図19は、ガラス基板の上に陰極線をプラ
ズマ溶射によって形成する場合の、基板温度、溶射膜の
膜厚、溶射材料の供給レートと溶射進行時間との関係を
示す。具体的には、図19の横軸は、溶射の進行時間に
対応したガラス基板432の上での陰極線の位置を表わ
す。曲線B及びEは各位置でのガラス基板432の裏面
の最高到達温度であり、曲線C及びFは成膜される溶射
膜(陰極線)の膜厚である。また、曲線A及びDは、プ
ラズマ溶射トーチからの単位時間あたりの溶射材料の供
給量(すなわち、供給レート)を示す。また、それぞれ
のデータにおいて、点線で示された曲線B,C及びAは
従来技術における結果を示し、実線E,F及びDは本実
施例における結果を示す。
【0161】従来技術では、プラズマ溶射トーチからの
溶射材料の供給レートは、溶射工程の経過時間にかかわ
らず、一般に曲線Aに示すように一定である。また、ガ
ラス基板あるいはプラズマ溶射トーチの移動速度も、一
般には一定に保たれる。一方、ガラス基板における最高
温度は、溶射時間の経過とともに、曲線Bに示すように
次第に上昇していく。プラズマ溶射トーチからの溶射材
料の供給レートが一定であると、溶射によって成膜され
る膜の厚さは、曲線Cのように次第に増加する。これ
は、本実施例で溶射材料として用いる金属アルミニウム
粒子の付着効率が、基板温度の上昇につれて増加するた
めである。この結果、ガラス基板の前面にわたって均一
に溶射膜(陰極線)を形成することができなくなる。
【0162】そこで、本実施例では、プラズマ溶射トー
チからの溶射材料の供給レートを、グラフDに示すよう
に溶射工程の経過にしたがって次第に減少させる。これ
によって、プラズマジェットによってガラス基板に伝達
される熱量が次第に減少していくので、グラフEの如く
に基板最高温度の上昇が抑えられる。この結果、溶射に
よって形成される膜の厚さが、グラフFの如くに溶射工
程の進行にかかわらずほぼ一定となる。
【0163】プラズマ溶射トーチからの溶射材料の供給
レートを減少させる具体的方法としては、プラズマジェ
ットの出力を減少させる方法や溶射材料の供給量を減少
させる方法がある。あるいは、プラズマ溶射トーチある
いはガラス基板の移動速度を次第に速くして、ガラス基
板単位面積に対する溶射材料の供給量を相対的に減少さ
せることによって、プラズマ溶射トーチからの溶射材料
の供給量を次第に減少させるのと等価な効果を得ること
もできる。本実施例では、比較的容易に実現できるプラ
ズマ溶射トーチあるいはガラス基板の移動速度の制御に
よって、上記の溶射材料の供給量の制御を行っている。
【0164】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
直流気体放電型画像表示装置の陰極線を溶射法によって
形成する。従来技術であるスクリーン印刷法によって陰
極線を形成すると、非導電物質であるガラスフリット
(印刷用金属ペースト)が必然的に陰極線の中に混入し
てしまう。このため、陰極線の電気抵抗が増加する。こ
れに対して、本発明にしたがって溶射法によって形成さ
れた陰極線は、若干の酸化物を除けば、ほとんど純粋な
金属粒子(溶射粒子)によって構成されている。このた
め、その線抵抗が大幅に低減される。これによって、リ
フレッシュ駆動方式あるいはメモリ駆動方式のいずれで
表示装置を駆動する場合でも、陰極線に沿った電圧降下
に起因する表示画面の輝度のむらや不点灯画素の発生、
さらにメモリマージンの低下などの原因による画質の劣
化が防がれる。特に、従来のスクリーン印刷による方法
に比べて、メモリマージンを長期間にわたって確保で
き、また駆動電圧の変動を小さく抑えることができるの
で、表示装置としての信頼性が大幅に向上する。
【0165】請求項2に記載のように、表面ガラス基板
の表面に所定パターンで溝を形成し、陰極線をその溝の
底部に形成すれば、放電が繰り返し発生しても、陰極線
の構成材料が広い範囲にわたって飛散することがない。
そのため、放電の経過にともなう放電面積の増加が生じ
ない。これによって、放電面積の増加にともなう放電電
圧の変動を抑制して、長期間にわたって安定した表示装
置の動作を実現することができる。
【0166】溶射工程の実施にあたって、溶射装置に供
給される陰極材料(溶射材料)の一次粒子の平均直径d
が、請求項3に記載されているように、形成される陰極
線の幅W及び厚さhに対して、上限がh/2及びW/9
のうちの小さい値であって下限が10μmである範囲内
にあるように設定する。これによって、溶射粒子が、一
次粒子の平均直径dの約3倍に偏平化された径を有する
ような状態でガラス基板の表面に付着するようになる。
この結果、ガラス基板との付着力が十分に確保できると
ともに、電気抵抗が非常に低いレベルにまで低減される
ような、緻密な溶射膜を得ることができる。
【0167】溶射工程として、請求項4に記載されてい
るようにプラズマ溶射を行えば、ファインパターンの陰
極線を緻密に、かつガラス基板への付着力が強固になる
ように形成することができる。また、プラズマ溶射で
は、広範囲の材料を制御性よく取り扱うことができる。
したがって、よりすぐれた特性を有する陰極線を、高い
再現性で形成することができる。
【0168】さらに、本発明にしたがって形成される陰
極線は、請求項7に記載のように、金属母線とその表面
に形成された上部被膜とからなる構成であってもよい。
このような構成の陰極線では、金属母線によって陰極線
の低抵抗率化を達成できる。同時に、上部被膜を形成す
る材料としてスパッタレートが小さい材料を選ぶことに
よって、放電収縮が抑制される。
【0169】請求項12に示すように、溶射による陰極
線の形成後にさらに焼成工程を実施すれば、溶射膜(陰
極線)の構造がより緻密化される。これによって、陰極
線のさらなる低抵抗化が実現される。
【0170】請求項14に記載のように、陰極線を溶射
によって形成するのに先立って、その形成箇所に相当す
るガラス基板の表面を粗面化すれば、形成される溶射膜
(陰極線)とガラス基板との付着力がさらに強固にな
る。これによって、製造工程中にハンドリング等にとも
なって何らかの機械的な負荷が溶射膜に加わっても、溶
射膜(陰極線)の剥離や断線などの問題が生じない。
【0171】請求項15に記載のように、陰極線を溶射
によって形成するのに先立って、その形成箇所に相当す
るガラス基板の表面に溝を形成して、その溝の底部に陰
極線を形成すれば、放電が繰り返し発生しても、陰極線
の構成材料が広い範囲にわたって飛散することがない。
そのため、放電の経過にともなう放電面積の増加が生じ
ない。これによって、放電面積の増加にともなう放電電
圧の変動を抑制して、長期間にわたって安定した表示装
置の動作を実現することができる。
【0172】請求項16に記載のように、溶射対象であ
るガラス基板を断熱手段を介して載置台の上に置き、そ
の状態で溶射工程を行えば、溶射によってガラス基板に
与えられる熱が急速に載置台側に伝わるのを妨げること
ができる。これによって、ガラス基板表面において、溶
射が実際に行われている領域とそれ以外の領域との間で
の温度差が低減され、ガラス基板に与えられる熱負荷が
低減される。これによって、熱負荷にともなうガラス基
板の破損を防ぐことができる。
【0173】溶射材料のガラス基板への付着効率は、基
板温度の上昇とともに次第に増大する。しかし、請求項
17に記載のように、溶射トーチからの陰極材料の供給
レート、あるいは溶射トーチ及びガラス基板の少なくと
も一方の移動速度を制御して、溶射膜の堆積速度が溶射
時間の経過にかかわらず実質的に一定になるようにする
ことによって、溶射工程の進行にともなって溶射対象で
あるガラス基板に熱が蓄積されて基板温度が次第に上昇
しても、実質的に一定の膜厚で溶射膜(陰極線)を形成
することができる。これによって、大型の表示装置を形
成する場合であっても、大面積の表示画面の全体にわた
って均質な溶射膜(陰極線)を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例における直流PDPの陰
極線の製造方法を模式的に示す図である。
【図2】(a)〜(f)は、本発明の第1の実施例にお
けるPDPの陰極線の製造工程を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例によって形成される陰極
線の模式的な断面図である。
【図4】陰極線の厚さと比抵抗との関係を示す図であ
る。
【図5】メモリ駆動方式における陰極線での電圧降下を
示す図である。
【図6】メモリ駆動方式における長時間点灯時の駆動電
圧の変動を示す図である。
【図7】(a)及び(b)は、溶射材料に対する加工工
程の実施による溶射材料粒子の形状の変化を模式的に示
す図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明の第2の実施例にお
ける直流PDPの陰極線の製造方法を模式的に示す図で
ある。
【図9】本発明の第3の実施例によって形成される陰極
線の模式的な断面図である。
【図10】本発明の第4の実施例における直流PDPの
陰極線の製造方法を模式的に示す図である。
【図11】本発明の第5の実施例における直流PDPの
陰極線の製造方法を模式的に示す図である。
【図12】(a)〜(f)は、本発明の第6の実施例に
おける直流PDPの陰極線の製造工程を示す断面図であ
る。
【図13】(a)は、従来のスクリーン印刷によって溝
の内部に陰極線を構成した場合の典型的な断面図であ
り、(b)は、本発明の第6の実施例によって溝の中に
陰極線を形成した場合の断面図である。
【図14】本発明の第6の実施例によって形成される陰
極線に対する取り出し電極の形状を模式的に示す断面図
である。
【図15】本発明にしたがってガラス基板の上に陰極線
をプラズマ溶射によって形成する製造プロセスを模式的
に示す図である。
【図16】図15に示すプラズマ照射工程における基板
温度の変化を示す図である。
【図17】従来技術にしたがってガラス基板の上に陰極
線をプラズマ溶射によって形成する製造プロセスを模式
的に示す図である。
【図18】図17に示す従来技術のプラズマ照射工程に
おける基板温度の変化を示す図である。
【図19】ガラス基板の上に陰極線をプラズマ溶射によ
って形成する場合の、基板温度、溶射膜の膜厚、溶射材
料の供給レートと溶射進行時間との関係を示す図であ
る。
【図20】直流PDPの構成を示す斜視図である。
【図21】直流PDPのリフレッシュ駆動方式を示す図
である。
【図22】直流PDPのメモリ駆動方式を示す図であ
る。
【図23】(a)は、従来技術の溶射法によって形成さ
れた陰極線の断面図であり、(b)は、その斜視図であ
る。
【図24】溶射法によりガラス基板の表面に陰極線を形
成するプロセスを模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
1 陰極 2 陽極 3 電源 4 アーク放電 5 プラズマ作動ガス 5a プラズマ作動ガスの供給ポート 6、437、437’ プラズマジェット 7 ノズル 8、28 溶射材料 9、209 溶射材料の供給ポート 10、20、60、432、432’ ガラス基板 11、21 マスクフィルム 12、22 開口部 13、23、43、43K1〜43Kn、59、63
陰極線 14、24 ブラスト粒子 15 2層構造の陰極線 15a 母線 15b 上層被膜 16 一次粒子 17 加工粒子 19 エッチング溶液 25 溝 29 溝の底部 30 陰極材料 31 溝の側壁 32 取り出し電極 33 段差 34 導電性ペースト材 39 表面ガラス基板 40 背面ガラス基板 41 放電セル 42 蛍光体 44、44A1〜44Am 陽極線 45 隔壁 46 絶縁層 54 書き込み電圧 55 維持パルス電圧 61、100、200、300、436、436’ プ
ラズマ溶射トーチ 62 陰極線材料粒子 65、433、433’ 載置台 317 外套 319 不活性ガス 320 不活性ガスの導入ポート 434 治具 435 空気層 500 直流プラズマディスプレィパネル(PDP)
フロントページの続き (72)発明者 河野 宏樹 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 高橋 一夫 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 安部 由朗 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 平尾 和則 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 新宅 秀信 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面ガラス基板と、 該表面ガラス基板に対向して、その間に放電ガスが封入
    されて配置されている背面ガラス基板と、 該背面ガラス基板の上に形成された複数の線電極を含む
    陽極群と、 該陽極群に直交するように該表面ガラス基板の上に配置
    された複数の線電極からなる陰極群と、 該陽極群及び該陰極群の交点のそれぞれに対応して設け
    られた複数の放電セルと、 を備えており、該陰極群に含まれる線電極が、所定の陰
    極材料の粒子を溶射装置からガラス基板に向けて溶射す
    る溶射法によって形成されている直流気体放電型画像表
    示装置。
  2. 【請求項2】 前記陰極群に含まれる線電極が、前記表
    面ガラス基板の表面に形成された溝の底部に形成されて
    いる請求項1の直流気体放電型画像表示装置。
  3. 【請求項3】 前記陰極線に含まれる線電極のそれぞれ
    の幅がW、厚さがhであるときに、前記陰極材料は、前
    記溶射装置に供給される一次粒子の平均直径dが、上限
    がh/2及びW/9のうちの小さい値であって下限が1
    0μmである範囲内にあるように選択されている請求項
    1または2の直流気体放電型画像表示装置。
  4. 【請求項4】 前記溶射法は、プラズマ溶射法である請
    求項1〜3のいずれかの直流気体放電型画像表示装置。
  5. 【請求項5】 前記陰極材料が、アルミニウム、ニッケ
    ル、アルミニウム合金及びニッケル合金からなるグルー
    プから選択されている請求項1〜4のいずれかの直流気
    体放電型画像表示装置。
  6. 【請求項6】 前記放電ガスがHeとXeとの混合ガス
    である請求項1〜5のいずれかの直流気体放電型画像表
    示装置。
  7. 【請求項7】 前記陰極群に含まれる線電極のそれぞれ
    は、 前記溶射法によって形成された金属母線と、 金属、金属酸化物及び金属硫化物からなるグループから
    選択された材料によって該金属母線の表面に形成された
    上部被膜と、 を含んでいる請求項1〜6のいずれかの直流気体放電型
    画像表示装置。
  8. 【請求項8】 前記上部被膜が、溶射法によって形成さ
    れている請求項7の直流気体放電型画像表示装置。
  9. 【請求項9】 前記酸化物は、ペロブスカイト構造のL
    1-XSrXMO3(ただしMはCoまたはMn)である
    請求項7または8の直流気体放電型画像表示装置。
  10. 【請求項10】 前記陰極群に含まれる線電極のそれぞ
    れは、溶射された前記陰極材料の粒子が偏平して積層す
    ることによって形成されている請求項1〜6の直流気体
    放電型画像表示装置。
  11. 【請求項11】 前記金属母線は、溶射された粒子が偏
    平して積層することによって形成されている請求項7〜
    9の直流気体放電型画像表示装置。
  12. 【請求項12】 前記陰極群が、溶射法の実施後にさら
    に400℃以上の温度における焼成工程を経て形成され
    ている請求項1〜11のいずれかの直流気体放電型画像
    表示装置。
  13. 【請求項13】 表面ガラス基板と、 該表面ガラス基板に対向して、その間に放電ガスが封入
    されて配置されている背面ガラス基板と、 該背面ガラス基板の上に形成された複数の線電極を含む
    陽極群と、 該陽極群に直交するように該表面ガラス基板の上に配置
    された複数の線電極からなる陰極群と、 該陽極群及び該陰極群の交点にそれぞれに対応して設け
    られた複数の放電セルと、 を備える直流気体放電型画像表示装置の製造方法であっ
    て、 前記陰極群を形成する工程が、 (a)ガラス基板の表面にマスクフィルムを形成する工
    程と、 (b)該マスクフィルムに所定のパターンで開口部を形
    成する工程と、 (c)該マスクフィルムの上面に配置された溶射トーチ
    から所定の陰極材料を溶射するとともに、該溶射トーチ
    及び該ガラス基板の少なくとも一方を所定のパターンで
    移動させて、該ガラス基板の表面のうちで該開口部に相
    当する箇所に該陰極群に含まれている線電極となる溶射
    膜を堆積させる工程と、 (d)該マスクフィルムを該ガラス基板の表面から除去
    する工程と、 を含有する直流気体放電型画像表示装置の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記工程(c)が、前記開口部に相当
    する前記ガラス基板の表面を粗面化する工程をさらに包
    含する請求項13の直流気体放電型画像表示装置の製造
    方法。
  15. 【請求項15】 前記工程(c)が、前記開口部に相当
    する前記ガラス基板の表面に所定の深さの溝を形成する
    工程をさらに包含し、前記溶射膜が該溝の底部に堆積さ
    れる請求項13の直流気体放電型画像表示装置の製造方
    法。
  16. 【請求項16】 前記工程(c)において、前記ガラス
    基板を断熱手段を介して載置台の上に配置して溶射工程
    が行われる請求項13〜15の直流気体放電型画像表示
    装置の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記工程(c)において、溶射時間の
    経過とともに、前記溶射トーチからの前記陰極材料の供
    給レート、あるいは該溶射トーチ及び前記ガラス基板の
    少なくとも一方の移動速度を制御して、前記溶射膜の堆
    積速度を実質的に一定に保つ請求項13〜16の直流気
    体放電型画像表示装置の製造方法。
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