JPH08283867A - 伸線用過共析鋼線材の製造方法 - Google Patents

伸線用過共析鋼線材の製造方法

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JPH08283867A
JPH08283867A JP11382195A JP11382195A JPH08283867A JP H08283867 A JPH08283867 A JP H08283867A JP 11382195 A JP11382195 A JP 11382195A JP 11382195 A JP11382195 A JP 11382195A JP H08283867 A JPH08283867 A JP H08283867A
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temp
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temperature
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JP11382195A
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Yoshihiro Ofuji
善弘 大藤
Kenji Aihara
賢治 相原
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高い伸線加工性,延性を持つ伸線用過共析鋼
線材を工業的規模で安定製造できる手段を確立する。 【構成】 細径高強度鋼線伸線用の線材を製造するに当
り、重量割合でC:0.9超〜 1.2%,Si:0.1〜 1.5%,M
n:0.1〜 1.5%,Cr:0〜 1.0%を含む過共析鋼線材を
素材として用いると共に、最終伸線前のパテンティング
処理工程において、まず1123〜1373Kのオ−ステナイト
域温度に加熱してから“恒温変態曲線におけるパ−ライ
ト変態温度を切らない範囲の冷却速度”で1023〜 823K
の温度範囲に冷却し、この温度域で加工度:15〜80%の
塑性加工を行った後、 823〜 923Kであってしかも「12
33− 380X≦T≦1293− 380X」なる式〔但し、 T:変
態温度(K),X:鋼のC含有量(%)〕を満足する温
度域で変態させ、 線材の組織を初析フェライト及び初析
セメンタイトの両者を含まないパ−ライト組織とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、伸線加工性及び延性
に優れた“細径高強度鋼線伸線用の過共析鋼線材”を製
造する方法に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】高強度を必要とするタイヤ用の
コ−ドワイヤ−等には、一般に直径が0.2mm 前後の細径
高炭素鋼フィラメントをストランドに撚ったものが使用
されてきたが、近年の高性能化要求に応えるべく最近は
フィラメント強度:3.14GPa(320kgf/mm2)前後の細径高強
度鋼線が多用されるようになっている。
【0003】このコ−ドワイヤ−は、一般に次の工程で
製造されている。即ち、まず、直径が 5.5mmφ程度の高
炭素鋼線材を素材とし、これにパテンティング(LP)
と伸線の処理を繰り返し施して 1.2mmφ前後の線材とし
た後、約1173Kの温度に加熱してから873K前後
の鉛浴に浸漬するという条件の最終パテンティング工程
にて引張強さが1.23GPa(125kgf/mm2)前後の伸線用鋼線
材とする。次いで、この伸線用鋼線材に酸洗とメッキの
処理を施してから 0.2mmφ前後まで伸線し、引張強さ:
3.14GPa(320kgf/mm2)前後の強度を持つ最終製品ワイヤ
−とする。
【0004】しかしながら、従来採用されていた上記工
程・条件では、加えられる伸線加工度εは 3.2{但しε
= Ln(母材の面積/伸線材の断面積)}程度が限度であ
り、製品強度向上のために伸線加工度εを更に上げるこ
とは延性不足のため不可能であった。
【0005】そこで、特開平3−240919号公報に
は、高炭素鋼線材の伸線加工性を向上させる熱処理方法
が提案されている。この方法は、 0.7〜 0.9%(以降、
成分割合を表す%は重量%とする)のCを含有する鋼線
材をAc3点以上のオ−ステナイト域に加熱し、恒温変態
曲線のパ−ライト変態開始温度を切らない冷却速度でA
e1点以下773K以上の温度域に冷却した“過冷オ−ス
テナイト状態の線材”を、加工度20%以上で加工した
後に変態させて伸線用の鋼線材とする技術手法にて成る
ものであるが、この場合には過冷オ−ステナイトの加工
がなされるのでパ−ライトコロニ−が5μm前後まで微
細化され、そのため引張強さ:1.13GPa(115kgf/mm2)ク
ラスの伸線用素材が得られる。そして、この伸線用素材
は、最終的には伸線加工度ε:4.9近くまで伸線すること
ができ、それ故 4.02GPa(410kgf/mm2)程度の引張強さを
持つ最終製品ワイヤ−を得ることができる。但し、パ−
ライトコロニ−とはパ−ライト中のセメンタイト板が一
定方向にそろっている範囲を言う。
【0006】しかし、一方で、上記方法によった場合に
は変態時に初析フェライトが生成することとなり、これ
が最終伸線過程での延性低下や加工硬化不足の原因とな
るため、その後の最終製品ワイヤ−への伸線工程で更な
る高強度化を達成する上での阻害要因となった。従っ
て、前記方法にて得られる“引張強さが1.13GPa(115kgf
/mm2)クラスの伸線加工性が良好な伸線用素材”でも付
加可能な伸線加工度の限度は前述したε=4.9 を超える
ものではなく、この伸線用素材を限度一杯の伸線加工度
ε:4.9近くまで伸線したとしても引張強さが最高で4.02
GPa(410kgf/mm2)程度の最終製品ワイヤ−しか得ること
ができなかった。その上、高い加工度で伸線を行うこと
が内部欠陥を誘発する原因となって最終製品ワイヤ−の
延性が低くなると共に、疲労強度も劣化するという問題
も指摘された。
【0007】ところで、従前から、高炭素鋼線の強度向
上にC含有量を更に高めるのが効果的であることが知ら
れており、この方法によると安価にして高い効果が得ら
れることから工業的にも望ましい強度向上策と考えられ
た。しかしながら、C含有量が 0.9%を超えるような過
共析鋼では、伸線素材を得るためのパテンティング処理
を行う際、オ−ステナイト域からの冷却過程でパ−ライ
ト変態に先立ってオ−ステナイト粒界に沿って脆い初析
セメンタイトが生成するという問題があった。そのた
め、この素材をそのまま伸線加工すると前記初析セメン
タイトに沿って粒界割れが発生し、断線が頻発した。こ
のように、過共析鋼において生成する初析セメンタイト
は伸線加工性劣化の大きな原因となるため、コ−ドワイ
ヤ−等の素材に過共析鋼を使用することは実際上敬遠さ
れる傾向にあった。
【0008】もっとも、近年、過共析鋼の伸線加工性を
向上させようとの提案も幾つかなされている。例えば、
特開平5−295448号公報には、1.1 〜1.3 %のC
を含有する過共析鋼を線材圧延した後、1223〜10
23Kで巻取り、その後直ちに773〜923Kに保持
された溶融塩浴中に浸漬して該溶融塩浴中で変態を完了
させ、これにより初析セメンタイトを含まないパ−ライ
ト組織を得る方法が開示されている。しかし、この方法
では初析セメンタイトを含まない過共析鋼線材を得るこ
とができるので大いなる伸線加工性の向上が期待された
が、実際にはそれほど十分な伸線加工性,延性は達成さ
れず、細径高強度鋼線伸線用の線材として満足できるも
のは得られなかった。
【0009】このように、従来の技術では、十分に高い
伸線加工性,延性を持つ伸線用過共析鋼線材を工業的に
安定生産することは不可能であった。そこで、本発明の
目的は、高い伸線加工性,延性を持つ伸線用過共析鋼線
材を工業的規模で安定製造できる手段を確立することに
置かれた。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的
を達成すべく研究を進めて行く過程で、「前述した特開
平3−240919号公報所載の技術に照らして考える
ならば、 前記特開平5−295448号公報所載の方法
で十分な伸線加工性,延性を得ることができなかった理
由は“形成されるパ−ライトコロニ−の微細化不足”に
ある」との推論を立て、微細なパ−ライトコロニ−を得
るために過冷オ−ステナイト域で加工した後に変態させ
る実験を種々繰り返した。その結果、過冷オ−ステナイ
ト域で加工した後に変態を行わせてパ−ライトコロニ−
の微細化を図ろうとすると、今度は、C含有量が 0.9%
を超える過共析鋼の場合であっても変態温度によっては
初析フェライト又は初析セメンタイトの生成を招くこと
が明らかとなった。
【0011】この初析フェライトや初析セメンタイト
は、強度が高くかつ伸線加工性の優れた鋼線材を得る上
では有害なものである。そこで、更に、過冷オ−ステナ
イト域で加工した後にパ−ライト変態させる工程を採用
した場合でも初析フェライトや初析セメンタイトが生成
しない“C濃度と変態温度の組み合わせ条件”が存在す
るか否かの検討を行った。そして、「素材鋼のC含有率
(量)に応じてパ−ライト変態温度を適切に選びさえす
れば、 オ−ステナイト域から恒温変態曲線におけるパ−
ライト変態開始温度を切らない冷却速度範囲で冷却した
“過冷オ−ステナイト組織を有する過共析鋼線材”を特
定の加工度で加工した後、 所定の温度範囲で変態させる
と、 初析フェライト,初析セメンタイトが生成せず、 か
つパ−ライトコロニ−サイズが 5.0μm以下の微細なパ
テンティング組織が得られる」という新たな知見を得る
ことができた。
【0012】即ち、本発明者等は、表1に示す成分組成
を有した真空溶解鋼の熱間圧延線材から直径5mm,高さ
7mmの円柱状試験片を複数個作成し、次いでこれらを真
空中にて1273Kの温度に誘導加熱してオ−ステナイ
ト化してから、恒温変態曲線におけるパ−ライト変態温
度を切らない範囲の冷却速度で923Kまで冷却し、こ
の温度で加工度40%の塑性加工(圧延)を施した後、
それぞれを948K,923K,898K,873K,
848K,823Kに等温保持し変態させた。
【0013】
【表1】
【0014】そして、冷却後の試料を研磨し、ピクラ−
ルでエッチングしてから走査型電子顕微鏡を用いて組織
観察を行い、初析フェライト,初析セメンタイトの生成
状況を観察した。この観察結果を図1に示す。
【0015】この図1から、初析フェライト,初析セメ
ンタイトの生成状況とC含有量並びに変態温度との関係
を明確に把握することができる。即ち、図1のハッチン
グを付した領域が初析フェライト,初析セメンタイトの
生成しない領域であり、この領域より左側では初析フェ
ライトが生成し、右側では初析セメンタイトが生成す
る。このハッチングを付した領域をC含有量と変態温度
との関係で数式化すると、下記 (1)式のようになる。 1233−380X ≦ T ≦ 1293−380X ……(1) 〔但し、 T:変態温度(K),X:鋼のC含有量
(%)〕 なお、この領域は後述する本発明に係る化学成分組成の
過共析鋼の何れにも当てはまるものであった。
【0016】本発明は、上記知見事項等に基づいてなさ
れたものであり、「細径高強度鋼線伸線用の線材を製造
するに当り、 重量割合でC: 0.9超〜 1.2%, Si:
0.1〜 1.5%, Mn: 0.1〜 1.5%,Cr:0〜 1.0%
を含む過共析鋼線材を素材として用いると共に、 これか
ら前記伸線用線材を得るための最終伸線前のパテンティ
ング処理工程において、 まず1123〜1373Kのオ
−ステナイト域温度に加熱してから“恒温変態曲線にお
けるパ−ライト変態温度を切らない範囲の冷却速度”で
1023〜823Kの温度範囲に冷却し、この温度域で
加工度:15〜80%の塑性加工を行った後、 823〜
923Kの温度範囲内であってしかも式 1233−380X ≦ T ≦ 1293−380X 〔但し、 T:変態温度(K),X:鋼のC含有量
(%)〕を満足する温度域で変態させ、 線材の組織を初
析フェライト及び初析セメンタイトの両者を含まないパ
−ライト組織とすることによって、 高い伸線加工性,延
性を有する伸線用過共析鋼線材を安定製造できるように
した点」に大きな特徴を有している。
【0017】なお、前記過冷オ−ステナイト域にて施す
「塑性加工」は、“圧延機を使った圧延”又は“温間ダ
イスを使った引抜き" あるいはその他の適宜方法で実施
すれば良い。
【0018】続いて、本発明において素材の化学成分組
成及び処理条件を前記の如くに限定した理由を、その作
用と共に説明する。
【作用】
(A) 素材の化学成分組成 a) C 変態温度が823〜923Kでかつ前記 (1)式の条件を
満足するC含有量の範囲は0.82〜 1.2%である。しかし
ながら、C含有量が 0.9%以下では伸線後の強度が4.12
GPa(420kgf/mm2)に達しない。従って、C含有量は 0.9
超〜 1.2%と定めた。
【0019】b) Si Siは鋼線材の強度上昇に有効な成分であるほか、脱酸剤
として必要な成分でもある。しかし、その含有量が 0.1
%未満であると十分な脱酸効果が得られず、一方、1.5
%を超えてSiを含有させると伸線加工性が低下する。従
って、Si含有量は 0.1〜 1.5%と定めた。
【0020】c) Mn Mnも鋼線材の強度上昇に有効な成分であるほか、脱酸剤
としても必要な成分である。しかし、その含有量が 0.1
%未満であると十分な脱酸効果が得られず、一方、1.5
%を超えてMnを含有させるとパ−ライトの延性が低下す
る。従って、Mn含有量は 0.1〜 1.5%と定めた。
【0021】d) Cr 素材鋼にCrを添加しなくても目標とする強度,絞り値を
得ることができるが、Cr添加を行うとパ−ライトのラメ
ラ間隔が狭まり鋼線材の強度を一層安定に向上させるこ
とが可能となる。しかしながら、Cr含有量が 1.0%を超
えると伸線加工性が低下することから、Cr含有量は0〜
1.0%と定めた。
【0022】(B) 製造条件 さて、本発明法の素材として供される上記化学成分組成
の過共析鋼線材は、通常通り、転炉溶製,連続鋳造,熱
間圧延によって製造することができる(通常は直径:5.5
mmの線材とされる)。
【0023】そして、本発明法では、まず上記素材鋼線
材は1123〜1373Kのオ−ステナイト域温度に加
熱される。ここで、加熱温度を1123K以上としたの
は、オ−ステナイト中に炭化物を完全に固溶させるため
である。一方、加熱温度が1373Kを超えるとオ−ス
テナイト粒が粗大化し、微細なパ−ライトコロニ−の組
織が得られない。
【0024】上記オ−ステナイト域温度に加熱した素材
鋼線材は、続いて“恒温変態曲線におけるパ−ライト変
態開始温度を切らない範囲の冷却速度”で1023〜8
23Kの温度にまで冷却される。この冷却は加工終了ま
でパ−ライト変態を開始させないためのものであり、そ
の際の冷却速度は“恒温変態曲線におけるパ−ライト変
態開始温度を切らない範囲の冷却速度”であれば特に制
限されるものではない。なお、パ−ライト変態を開始さ
せない冷却速度は、AISI規格−C1080鋼(C:
0.80%,Si:0.20%,Mn:0.45%)の場合でも、通常、
180℃/秒以上であれば十分である。
【0025】ところで、合金元素であるSi,Mn,Crは恒
温変態曲線におけるパ−ライト変態開始温度を長時間側
へ移動させるため、これら合金元素の添加量を増加する
ことによって冷却速度を遅くすることが可能である。従
って、例えばC:0.93%,Si:0.24%,Mn:0.80%,C
r:0.30%の化学成分組成の鋼では、冷却速度が30℃
/秒以上であればパ−ライト変態は起こらない。
【0026】このようにして1023〜823Kの加工
温度にまで冷却された素材鋼線材には、次いで加工度:
15〜80%の塑性加工が施される。この塑性加工とし
ては“圧延機を使った圧延”が好ましいと言えるが、
“温間ダイスを使った引抜き”や“その他の加工方法”
を適用しても差し支えがないことは勿論である。
【0027】なお、このときの加工温度を1023〜8
23Kと、また加工度を15〜80%とそれぞれ定めた
理由は次の通りである。即ち、本発明者等は、C:0.93
%,Si:0.24%,Mn:0.80%,Cr:0.30%の化学成分組
成の真空溶解鋼の熱間圧延線材から直径5mm,高さ7mm
の円柱状試験片を複数個作成し、次いでこれらを真空中
にて1273Kの温度に誘導加熱してオ−ステナイト化
してから、恒温変態曲線におけるパ−ライト変態温度を
切らない範囲の冷却速度で種々の加工温度まで冷却し、
この温度で種々加工度の塑性加工(圧延)を施した後、
873Kに等温保持し変態させた。そして、冷却後の試
料を研磨し、ピクラ−ルでエッチングしてから走査型電
子顕微鏡を用いて組織観察を行い、パ−ライトコロニ−
サイズを調査した。ここで、パ−ライトコロニ−サイズ
は伸線加工性,延性に大きな影響を及ぼす因子であり、
このパ−ライトコロニ−サイズが5μm以下にまで微細
化されないと十分な伸線加工性,延性を得ることができ
ない。このようにして把握した「パ−ライトコロニ−サ
イズに及ぼす加工温度,加工度の影響」を図2にまとめ
て示す。
【0028】図2に示される結果からも明らかなよう
に、加工温度が1023K以下、加工度が15%以上の
範囲でパ−ライトコロニ−サイズの微細化(5.0μm以
下)が達成されことが分かる。
【0029】一方、上記加工温度が823K未満である
と伸線加工性が低下し、また上記加工度が80%を超え
るとパ−ライトの層状組織の発達が不十分となってやは
り伸線加工性が低下することも確認された。なお、上記
条件は本発明に係る化学成分組成の過共析鋼の何れにも
当てはまることは確認済である。従って、上記塑性加工
における加工温度を1023〜823K、加工度を15
〜80%にそれぞれ限定した。
【0030】次に、上記の条件で塑性加工を終了後、線
材は823〜923Kの温度範囲内であって、かつ式 1233−380X ≦ T ≦ 1293−380X 〔但し、 T:変態温度(K),X:鋼のC含有量
(%)〕の条件を満足する温度域で変態せしめられる。
ここで、変態温度が823K(550℃)未満ではベイ
ナイトを生成して伸線加工性が劣化する。また、変態温
度が923Kを超えるとパ−ライトのラメラ間隔が広く
なってやはり伸線加工性が劣化する。更に、前記式で示
した条件を満たさない温度範囲では初析フェライト又は
初析セメンタイトが生成するため、これによって伸線加
工性が低下する。
【0031】次いで、本発明を実施例により説明する。
【実施例】まず、表2に示す化学成分組成の鋼A〜Rを
それぞれ150kg真空溶解炉で溶製し、熱間圧延により
直径:5.5mmφの素材鋼線材に圧延した。
【0032】
【表2】
【0033】次に、これら素材鋼線材を冷間伸線によっ
て直径:2.3mmφにまで加工し、これを表3及び表4に示
した条件で加工・熱処理して伸線用鋼線材(母材)を得
た。そして、これら各母材の組織検査と機械的性質の調
査を行うと共に、これらを伸線限界まで伸線し、その限
界加工度及び伸線材の機械的性質を調査した。これらの
調査結果を表3及び表4に併せて示す。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】表3及び表4に示される結果からは、次の
ことを確認することができる。即ち、試験番号1,2,
4,5,7,8,24は、変態温度が図1に示した初析フ
ェライト又は初析セメンタイトを生成する領域であるた
め、得られる母材の限界加工度が低く、また伸線材は十
分な強度を得られない。また、試験番号21では、変態温
度が923Kを超えているため得られる母材の限界加工
度が低い。
【0037】一方、試験番号9は、加熱温度が1123
K未満であったため炭化物が完全に固溶せず、従って母
材の限界加工度が低く、また伸線材は十分な強度を得ら
れない。逆に、試験番号12は、加熱温度が1373Kを
超えたため、得られる母材のパ−ライトブロックの大き
さが5μm以下にならず、限界加工度が低い。
【0038】試験番号14は、加工温度が1023Kを超
えているため、得られる母材のパ−ライトコロニ−の大
きさが5μm以下にならず、やはり限界加工度が低い。
試験番号15は、加工温度が823K未満であるために得
られる母材の限界加工度が低くなっている。
【0039】そして、試験番号16は、加工度が15%未
満であるため、得られる母材のパ−ライトコロニ−の大
きさが5μm以下にならず、限界加工度が低い。また、
試験番号20は、加工度が80%を超えるために得られる
母材の限界加工度が低くなっている。
【0040】試験番号28は、Si含有率が 1.5%を、試験
番号31はMn含有率が 1.5%を、そして試験番号33はCr含
有率が 1.0%をそれぞれ超えているので得られる母材の
限界加工度が低く、そのため伸線材の強度は低くなって
いる。
【0041】これに対して、本発明の規定条件に従って
製造された母材(伸線用過共析鋼線材)は何れも限界加
工度が高く、更に伸線材は引張強さ:4.12GPa(420kgf/mm
2)以上の強度を持ち、絞り値も40%以上の値を示すな
ど、優れた特性が得られていることが分かる。
【0042】
【効果の総括】以上に説明した如く、この発明によれ
ば、高強度でかつ伸線加工性に優れた伸線加工用過共析
鋼線材を安定製造することが可能となるなど、産業上有
用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】素材鋼線材のC含有率並びにパ−ライト変態温
度と初析フェライト,初析セメンタイトの生成状況との
関係を示したグラフである。
【図2】パ−ライト変態前の塑性加工における加工温
度,加工量がパ−ライトコロニ−サイズに及ぼす影響を
示したグラフである。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細径高強度鋼線伸線用の線材を製造する
    に当り、重量割合でC: 0.9超〜 1.2%, Si: 0.1
    〜 1.5%, Mn: 0.1〜 1.5%,Cr:0〜 1.0%を含
    む過共析鋼線材を素材として用いると共に、これから前
    記伸線用線材を得るための最終伸線前のパテンティング
    処理工程において、まず1123〜1373Kのオ−ス
    テナイト域温度に加熱してから“恒温変態曲線における
    パ−ライト変態温度を切らない範囲の冷却速度”で10
    23〜823Kの温度範囲に冷却し、この温度域で加工
    度:15〜80%の塑性加工を行った後、823〜92
    3Kの温度範囲内であってしかも下記式を満足する温度
    域で変態させ、線材の組織を初析フェライト及び初析セ
    メンタイトの両者を含まないパ−ライト組織とすること
    を特徴とする、伸線用過共析鋼線材の製造方法。 1233−380X ≦ T ≦ 1293−380X 〔但し、 T:変態温度(K),X:鋼のC含有量
    (%)〕
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Cited By (9)

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