JPH08257837A - ねじ切り用のスローアウェイチップ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 旋削で使用されるねじ切り用のスローアウェ
イチップの切りくず処理性能の改善を図る。 【構成】 スローアウェイチップ１のボス面５と切れ刃
部との間に傾斜面８によって形成される段差を設ける。
傾斜面８は、ボス面５からすくい面７に向かい条痕状を
呈する凹凸の設けられた平面視鋸歯状の面とする。傾斜
面８のリード角βが十分に大きくなくとも、鋸歯傾角α
の作用により、傾斜面８に接触する切りくずは、切れ刃
６から離れようとする方向の変形力を受け、規則的なカ
ール状になって排出される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、旋削に使用されるねじ
切り用のスローアウェイチップのブレーカ形状に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】旋削に使用されるねじ切り用のスローア
ウェイチップの切りくず処理性を向上させるために、従
来より、さまざまなブレーカが実用されている。最も代
表的な例は、図６に示すようなリード形ブレーカと呼ば
れるもので、すくい面７とボス面５との間に段差を設
け、その段差を形成する傾斜面８の傾斜角，ねじの軸線
に対する傾斜面８の配置の傾き，切れ刃６からの距離な
どによって切りくずの排出方向や変形などを制御するも
のである。

【０００３】従来技術の第２は、図７に示すように、前
記図６のスローアウェイチップのすくい面７上に突起１
１を載置した突起形ブレーカであって、排出された切り
くずが突起１１に強力に接触するようにして、切りくず
の変形を促すものである。また、図８は、いわゆるディ
ンプル形ブレーカと呼ばれるものであって、切れ刃６に
沿って配設された凹み１３に切りくずが誘導される作用
を利用して、切りくず排出を制御しようとするものであ
る。突起形もディンプル形も、切れ刃付近での切りくず
拘束を狙うものであり、多くはリード形と複合して利用
される。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】旋削によるねじ切りで
は、１回の切込み量が少ないために切りくず厚さが薄く
なることや、山形をなす特殊な切れ刃形状などの関係か
ら、切りくずが伸びて絡みやすく、一般の旋削加工より
もはるかに切りくず処理は困難といえる。上記リード形
ブレーカは切りくずを拘束する力に乏しく、伸びた切り
くずが、バイトや工作物，あるいは旋盤の刃物台などに
絡まることがある。

【０００５】突起形やディンプル形のブレーカは、突起
やディンプルが切れ刃近傍に配設されるために切りくず
拘束力は高まるが、これら単独では広範囲の切削状況に
は対応しきれず、上記のようにリード形ブレーカと複合
した形で実用されている。

【０００６】本発明は、前記の如き状況に鑑みなされた
もので、ブレーカ形状によって切りくず流出を拘束して
方向付けすることにより、切りくず排出性の一層の改善
が図られるようにしたものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記の如き目的を達成す
るために、本発明は、三角形平板状をなすスローアウェ
イチップであって、その隅部に、ねじ山に合致する形状
に成形された切れ刃を有するねじ切り用のスローアウェ
イチップにおいて、切れ刃部をボス面より低位に後退さ
せ、切れ刃部とボス面との段差部には、切れ刃部のすく
い面からボス面に立上がる傾斜面を形成させ、この傾斜
面に、ボス面よりすくい面に向かう条痕状を呈する凹凸
を設けて、平面視鋸歯状の凹凸面とする。

【０００８】加うるに、このように形成された平面視鋸
歯状をなす凹凸の片側の傾斜面とねじの軸線の垂線とが
なす鋸歯傾角αと、ねじ切りの送り方向側に位置する切
れ刃とねじの軸線の垂線とがなすフランク角θとの関係
が、α≦θとなるようにする。さらに、突起の底部稜線
が切れ刃に対して、ある幅を保って配置された突起をす
くい面上に形成する。そしてその間隔は、切れ刃の先端
から離間するにしたがい平行または幅広となるように形
成する。

【０００９】

【作用】従来のリード形ブレーカは、傾斜面が、ねじの
軸線に対してどちらかというと平行する向きに配置され
るので、切りくずを切れ刃側（前側）に変形させようと
する力が作用するのに対し、本発明において、切りくず
は、凹凸の片側の傾斜面と接触し、その傾斜面が向いて
いる方向の作用により、送り側（横側）に曲がって変形
しようとする力を受けるようになる。さらに、凹凸の片
側を切れ刃のフランク角よりも小さくなるように角度形
成すれば、その作用は一層顕著であって、切りくずは切
れ刃より離れる方向の力を受け、無闇に伸びて絡まなく
なると同時に、規則的にカールした形状となり、切削条
件によっては適度の長さで分断するようになる。

【００１０】すくい面の切れ刃近くに配設した突起も、
小さな切込みに対して、上記と同様の作用によって優れ
たブレーカ効果を発揮する。さらに、上記凹凸付きの傾
斜面と複合することで、切りくずが突起を乗り越えてし
まうような切削状況のもとでも、今度はこの傾斜面によ
って良好な切りくず処理がなされるようになり、総合的
に広範囲の切削条件に適応できるブレーカが実現する。

【００１１】

【実施例】次に、本発明の一実施例について、図を参照
しながら説明する。

【００１２】図１ないし図３において、三角形平板状を
なすスローアウェイチップ１の中央には、上面２より下
面３に貫通する皿穴４が穿設されている。スローアウェ
イチップ１は、ねじ切りバイト本体に設けられたチップ
座に載置されたのち、皿穴４に挿入された皿ねじにより
ねじ止め固定される。上面２における皿穴４の周囲にあ
る平面がボス面５であり、ボス面５の外側に位置する３
ヵ所の隅部には切れ刃部が設けられる。この切れ刃部
は、前記ボス面５より下面３側に低位にあって、その外
縁からなる切れ刃６とすくい面７とにより構成される。
切れ刃６は、加工しようとするねじ山形状に合致する形
状に成形されているので、切削により切れ刃６形状がそ
のまま被加工物に転写されて、ねじが切られる。

【００１３】ボス面５とすくい面７との間は傾斜面８で
形成される段差となっているが、この傾斜面８は単なる
平面ではなく、ボス面５よりすくい面７に向かう条痕状
を呈する凹凸面となっており、平面視において鋸歯状の
模様を描いている。その詳細は図３に示される。

【００１４】図３において、前記傾斜面８は、ねじの軸
線の平行線９に対しリード角βだけ斜めに傾いて配置さ
れている。通常、リード角βは、０〜６０度の範囲が好
適するが、現実には実施に困難を伴なうことから、６０
度近くに設定されることは、まれである。

【００１５】最も一般的な外径ねじ切りでは、スローア
ウェイチップ１は、同図の左方へ切削送りされる。この
ようなねじ切りにおいてメートルねじを加工する場合、
傾斜面８は、送り方向に位置する切れ刃６ａよりも前側
に向いて配置されていることになる。リード角βが最大
となる６０度の場合でも切れ刃６ａに平行である。言い
換えれば、リード角βが０〜６０度の範囲においては、
リード角βの余角は、切れ刃６ａとねじの軸線の垂線１
０とにより形成されるフランク角θより小さくはならな
いということである。

【００１６】しかしながら、本発明における凹凸の付い
た傾斜面８は、リード角βが小さくとも、実質的にリー
ド角βを大きくする作用を持つものである。すなわち、
切れ刃６ａに対応する傾斜面８ａとねじの軸線の垂線１
０とがなす鋸歯傾角αの作用により、切れ刃６ａより排
出されて、ほぼこれに直交する方向にすくい面７上を流
出する切りくずが傾斜面８ａに接触して変形される。そ
の変形は、平坦のみからなる傾斜面の場合よりも横向き
に曲げを受ける変形である。鋸歯傾角αとフランク角θ
との関係がα≦θであれば、切りくずは、より切れ刃６
から離れる方向の変形力を受けることになり、良好な切
りくず排出が行なわれるようになる。

【００１７】なお上記は、ねじ切りの際の切込みを切れ
刃６ａおよび６ｂの両サイドにかけるラジアルインフィ
ード加工においても有効であるが、片方の切れ刃６ａの
みに切り込みをかけるフランクインフィード加工におい
て、その効果は顕著である。また、本実施例では凹凸面
は、鋸歯形状の一つである波形となっているが、非対称
な鋸歯形状とすることもできる。

【００１８】図４および図５は本発明の他の一実施例で
あり、同一箇所には同符号を付してある。このスローア
ウェイチップ１は、前記図１のものに、すくい面７上に
突起１１を付加したものである。突起１１の底部稜線１
２ａおよび１２ｂは、それぞれ切れ刃６ａおよび６ｂに
対し、ある幅を保って載置されるが、その間隔は、切れ
刃６の先端から離間するにしたがい平行または幅広とな
るように形成される。

【００１９】このように形成された幅の作用は、上記の
鋸歯傾角αの作用と同一であって、切りくずを切れ刃６
から離れる向きに変形せしめるものである。突起１１
は、切れ刃６に接近しているために、切込みの小さい切
削に優れたブレーカ効果を発揮し、凹凸付きの傾斜面８
は、突起１１を乗り越える切りくずに対して優れたブレ
ーカ効果を発揮する。

【００２０】

【発明の効果】本発明によれば、旋削によるねじ切りに
おいて、切りくずは、ブレーカの凹凸面に拘束されて切
れ刃から遠ざかる向きに流出する力を受ける。その結
果、コイル状にカールした切りくずとなり、良好な場合
には一定長さに分断される。切りくずの伸び絡み現象が
防止され、しかも、好ましい切りくず処理が、切削条件
の広い範囲でなされるようになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す斜視図である。

【図２】図１の、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面図であ
る。

【図３】図１の切れ刃部の拡大平面図である。

【図４】本発明の他の一実施例を示す斜視図である。

【図５】図４の、（ａ）は平面図、（ｂ）は正面図であ
る。

【図６】従来の一実施例を示す切れ刃部の拡大斜視図で
ある。

【図７】従来の他の一実施例を示す切れ刃部の拡大斜視
図である。

【図８】従来の他の一実施例を示す切れ刃部の拡大斜視
図である。

【符号の説明】

１ スローアウェイチップ ５ ボス面 ６ 切れ刃 ７ すくい面 ８ 傾斜面 １１ 突起 α 鋸歯傾角 β リード角 θ フランク角

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 三角形平板状をなし、その隅部には、ね
   じ山に合致する形状に切れ刃６が成形されて、この切れ
   刃６が被加工物に転写されることによって、ねじの旋削
   が行なわれるようにしたねじ切り用のスローアウェイチ
   ップ１において、 切れ刃部はボス面５より低位にあって、切れ刃部とボス
   面５との段差は、切れ刃部のすくい面７からボス面５に
   立上がる傾斜面８により形成されるとともに、この傾斜
   面８には、ボス面５よりすくい面７に向かい条痕状を呈
   する凹凸であって、平面視鋸歯状をなす凹凸が形成され
   ていることを特徴とするねじ切り用のスローアウェイチ
   ップ。
2. 【請求項２】 平面視鋸歯状をなす凹凸の片側の傾斜面
   ８ａとねじの軸線の垂線１０とがなす鋸歯傾角αと、ね
   じ切りの送り方向側に位置する切れ刃６ａとねじの軸線
   の垂線１０とがなすフランク角θとの関係は、α≦θで
   あることを特徴とする請求項１に記載のねじ切り用のス
   ローアウェイチップ。
3. 【請求項３】 切れ刃部のすくい面７上に突起１１が載
   置されるとともに、その底部稜線１２ａおよび１２ｂ
   は、それぞれ切れ刃６ａおよび６ｂに対して、ある幅を
   保って載置され、その間隔は、切れ刃６のねじ山先端か
   ら離間するにしたがい平行または幅広となるように形成
   されていることを特徴とする請求項１および請求項２に
   記載のねじ切り用のスローアウェイチップ。